JP2013211254A - リチウムイオン二次電池用負極材料、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)平均粒子径が5〜35μmで、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛、(B)平均粒子径が2〜25μmで、平均アスペクト比が2.0未満であるバルクメソフェーズ黒鉛化物、及び(C)平均粒子径が1〜15μmでかつ前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が5.0以上である鱗片状黒鉛を特定の質量割合で含むリチウムイオン二次電池用負極材料、これを用いるリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池。
【選択図】図1
Description
扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合または結合させてなり、粒子に細孔を有する黒鉛粒子(特許文献2)。
直径方向に垂直な方向に黒鉛のベーサル面が層状に配列したブルックス・テーラー型の単結晶からなるメソカーボン小球体の黒鉛化物(特許文献3)。
天然黒鉛粒子を球状化または楕円体状化してなる造粒物の黒鉛粒子間の空隙に炭素質物が充填してなる複合黒鉛粒子、または、該造粒物の表面を炭素質物が被覆してなる複合黒鉛粒子(特許文献4)。
バルクメソフェ−ズピッチを粉砕、酸化、炭化、黒鉛化してなる塊状の黒鉛粒子(特許文献5)。
メソフェーズ小球体黒鉛化品と、該黒鉛化品より平均粒子径が小さい非鱗片状黒鉛質粒子(メソフェーズ小球体破砕品の黒鉛化品)を混合した負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極(特許文献7)。
メソフェーズ小球体の黒鉛化粒子の親水化物と、低結晶性の炭素材料を被覆した複合黒鉛質炭素材料を混合したリチウム二次電池用負極材料(特許文献8)。
非黒鉛性炭素で被覆された、平均粒径が10〜30μmの球状または楕円体状の黒鉛と、平均粒径が1〜10μmの一次粒子(扁片状)である黒鉛を混合した負極材料を用いたリチウム二次電池用負極(特許文献9)。
非黒鉛質炭素材料で被覆した黒鉛材料と天然黒鉛材料を混合した負極材料を用いた非水電解液二次電池(特許文献11)。
平均粒径が8μm以上のメソフェーズ球状黒鉛と、その隙間を埋めるように平均粒径が3μm以下のメソフェーズ微小球状黒鉛を7.5重量%以下含有させてなる負極材料を用いたリチウム二次電池(特許文献12)。
黒鉛、第一の非黒鉛炭素材料と、これらより小粒子径のアセチレンブラックの混合体を負極材料に用いた非水電解液二次電池(特許文献13)。
メソカーボンマイクロビーズの黒鉛化物と、該黒鉛化物より平均粒子径が小さい人造黒鉛粉末を混合した負極材料を用いた非水電解液二次電池(特許文献14)。
また本願出願人はこれまでに特許文献15を提案している。
1. (A)平均粒子径が5〜35μmで、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛、
(B)平均粒子径が2〜25μmで、平均アスペクト比が2.0未満であるバルクメソフェーズ黒鉛化物、及び
(C)平均粒子径が1〜15μmでありかつ前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が5.0以上である鱗片状黒鉛を、下記式(1)および下記式(2)を満たす質量割合で含む、リチウムイオン二次電池用負極材料:
a:b=(60〜95):(40〜5) (1)
(a+b):c=(85以上〜100未満):(15以下〜0超) (2)
ここで、a、bおよびcは、前記(A)、前記(B)および前記(C)各成分の質量を示す。
2. 前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)が、その表面の少なくとも一部に炭素質材料または黒鉛質材料が付着した、球状化または楕円体状化天然黒鉛を含む上記1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
3. 前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)が、タール類及び/又はピッチ類を熱処理し、粉砕、酸化、炭化、黒鉛化してなるバルクメソフェーズ黒鉛化物を含む上記1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
4. 前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径が、前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
5. 前記鱗片状黒鉛(C)が、その表面の少なくとも一部に炭素質材料が付着した、鱗片状黒鉛を含む上記1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
6. 前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)、前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および前記鱗片状黒鉛(C)のうちの少なくとも一つ又は全部が、その表面に金属酸化物が埋設されたものを含む上記1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
7. 上記1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を活物質の主要構成素材として用い、該活物質層の密度が1.7g/cm3以上である、リチウムイオン二次電池負極。
8. 前記リチウムイオン二次電池負極のX線回折における(004)面の回折ピーク強度I004と(110)面の回折ピーク強度I110の比I004/I110が20以下である上記7に記載のリチウムイオン二次電池負極。
9. 上記7又は8に記載のリチウムイオン二次電池負極を有するリチウムイオン二次電池。
リチウムイオン二次電池(以下、単に、二次電池とも記す)は、通常、電解液(非水電解質)、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば、二次電池缶内に封入されている。負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用する。充電時には、リチウムイオンが負極に吸蔵され、放電時には負極からリチウムイオンが離脱する電池機構によっている。
本発明の二次電池は、負極材料として本発明の負極材料を用いること以外、特に限定されず、非水電解質、正極、セパレータなどの他の電池構成要素については一般的な二次電池の要素に準じる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料(本発明の負極材料)は、
(A)平均粒子径が5〜35μmで、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛、
(B)平均粒子径が2〜25μmで、平均アスペクト比が2.0未満であるバルクメソフェーズ黒鉛化物、及び
(C)平均粒子径が1〜15μmでありかつ前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が5.0以上である鱗片状黒鉛を、下記式(1)および下記式(2)を満たす質量割合で含む、リチウムイオン二次電池用負極材料である。
a:b=(60〜95):(40〜5) (1)
(a+b):c=(85以上〜100未満):(15以下〜0超) (2)
ここで、a、bおよびcは、前記(A)、前記(B)および前記(C)各成分の質量を示す。
本発明の負極材料は、特定の球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)と、2種の黒鉛(B)、(C)とを特定量比で含む。
金属酸化物が埋設された態様としては、例えば、球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)、鱗片状黒鉛(C)自体に金属酸化物が埋設している場合;これらの黒鉛に炭素質材料、黒鉛質材料が付着し、その炭素質材料または黒鉛質材料の内部または表面に金属酸化物が埋設した場合;これらの組合わせが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄が挙げられる。
金属酸化物は微粒子であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。金属酸化物の大きさは、黒鉛(A)(B)(C)、これらに付着することができる炭素質材料、黒鉛質材料よりも小さいものとすることができる。
金属酸化物を埋設させる方法としては、例えば、原料と金属酸化物との混合物に対して圧縮力、せん断力を繰り返し付与し、メカノケミカル処理を行う方法が挙げられる。
黒鉛(A)〜(C)について以下に詳述する。
本発明で用いられる球状化または楕円体状化天然黒鉛(以下、「略球状天然黒鉛」とも称する)(A)は、平均粒子径が5〜35μmであり、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化された天然黒鉛である。
略球状天然黒鉛(A)の形状は球状又は楕円体状であれば特に制限されない。
また略球状天然黒鉛(A)は天然黒鉛を球状化又は楕円体状化させたものであればその製造について特に制限されない。扁平状、鱗片状の天然黒鉛を湾曲させたり、折畳んで略式球状化したもの、または、複数の鱗片状の天然黒鉛を同心円状、キャベツ状に造粒し球状化したものが好ましい。
略球状天然黒鉛(A)の平均粒子径(体積換算の平均粒子径)は、5〜35μmであり、特に10〜30μmであることが好ましい。5μm以上であれば、活物質層の密度を高めることができ、体積当たりの放電容量が向上する。そして、35μm以下であると、急速充電性やサイクル特性が向上する。
また、略球状天然黒鉛(A)は、結晶性が高いがゆえに、二次電池の負極活物質に用いた場合に、高い放電容量を示すことができる。略球状天然黒鉛(A)単独を負極材料としたときの放電容量は、負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、およそ350mAh/g以上、好ましくは360mAh/g以上である。
略球状天然黒鉛(A)の比表面積は、大きすぎると二次電池の初期充放電効率の低下を招くため、比表面積で20m2/g以下が好ましく、10m2/g以下がより好ましい。
略球状天然黒鉛(A1)に付着した炭素質材料としては、例えば、石炭系または石油系の重質油、タール類、ピッチ類や、フェノール樹脂等の樹脂類を最終的に500℃以上1500℃未満で加熱処理してなる炭化物が挙げられる。炭素質材料の付着量は略球状天然黒鉛(A)100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。
略球状天然黒鉛(A2)に付着した黒鉛質材料としては、例えば、石炭系または石油系の重質油、タール類、ピッチ類や、フェノール樹脂等の樹脂類を1500℃以上3300℃未満で加熱処理してなる黒鉛化物が挙げられる。黒鉛質材料の付着量は略球状天然黒鉛(A)100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、特に5〜20質量部であることが好ましい。
なお、炭素質材料前駆体またはこれらの溶液を略球状天然黒鉛(A)に接触させる際には、攪拌、加熱、減圧を施すことができる。
埋設方法としては、例えば、略球状天然黒鉛(A1)または(A2)に前記金属酸化物の微粒子の共存下で、機械的外力を加える方法が例示され、下記の球状化処理が可能な装置のうち圧縮せん断式加工装置を用いることによって製造可能である。
金属酸化物の量は、略球状天然黒鉛(A1)または(A2)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2質量部である。
略球状天然黒鉛(A)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で用いられるバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)は、粒子内部が緻密な人造黒鉛粒子である。
バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径(体積換算で)は2〜25μmであり、特に3〜20μmであることが好ましい。2μm未満の場合は、初期充放電効率の低下が生じることがある。25μm超の場合、活物質層を高密度にするために高い圧力を必要とし、集電体である銅箔の変形、伸び、破断といった問題を生じることがある。特に、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径が、球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)の平均粒子径よりも小さい場合に、低い圧力で活物質層を高密度にすることができ望ましい。
バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)単独を二次電池の負極活物質に用いた場合の放電容量は、負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、320mAh/g以上、好ましくは330mAh/g以上である。
バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)のアスペクト比をできるだけ1.0に近づける、すなわち真球に近い形状に近づけるうえでは、石炭系のタール及び/又はピッチを加熱して得られるメソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)を原料とし、これを粉砕、酸化、炭化及び黒鉛化してなるバルクメソフェーズ黒鉛化物が特に好ましい。この製造方法を例示すると、石炭系のタール、ピッチを250〜400℃で熱処理し重合させ、これを粉砕したのち、空気中で300〜500℃で加熱して粒子表面を酸化させて不融化を行う。その後、不活性雰囲気にて500〜1300℃で炭化したのち、2500〜3300℃で黒鉛化を行う。
比較的低い温度で熱処理されたバルクメソフェーズは、結晶構造がランダムであり、粉砕後のアスペクト比を小さくするのに有効である。この状態では溶融性が残存しているため、酸化によって不融化処理を行い、段階的に熱処理して粉砕形状を維持したまま黒鉛化するのである。
タール、ピッチ類を熱処理し、粉砕、酸化、炭化及び黒鉛化してなるバルクメソフェーズ黒鉛化物の量はバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)全量中50〜100質量%とすることができる。
使用できる炭素質材料は上記と同様である。炭素質材料の付着量はバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。
使用できる黒鉛質材料は上記と同様である。黒鉛質材料の付着量はバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、特に5〜20質量部であることが好ましい。
金属酸化物の量は、略球状天然黒鉛(B1)または(B2)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2質量部である。
バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で用いられる鱗片状黒鉛(C)は、鱗片状の人造黒鉛もしくは天然黒鉛である。鱗片状黒鉛(C)は複数個が積層した状態であってもよいが、単一粒子として分散している状態が好ましい。鱗片形状の途中で屈曲した状態や、粒子端部が丸められた状態であってもよい。鱗片状黒鉛(C)の平均粒子径は、前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径より小さくなければならず、その体積換算の平均粒子径は1〜15μmであり、特に3〜10μmであることが好ましい。1μm以上であれば、電解液の反応性を抑え、高い初期充放電効率を得ることができる。そして、15μm以下であると、急速放電性やサイクル特性が向上する。鱗片状黒鉛(C)の平均粒子径が、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径より大きい場合、活物質層を高密度化したときに、負極内に充分な空隙が確保されず、リチウムイオンの拡散性が低下し、急速充電性、急速放電性、サイクル特性の低下を引起す。
また、鱗片状黒鉛(C)は、結晶性が高いがゆえに、二次電池の負極活物質に用いた場合に、高い放電容量:を示す。鱗片状黒鉛(C)単独を負極材料としたときの放電容量は、負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、およそ350mAh/g以上、好ましくは360mAh/g以上である。
鱗片状黒鉛(C)の比表面積は、大きすぎると二次電池の初期充放電効率の低下を招くため、比表面積で20m2/g以下が好ましく、10m2/g以下がより好ましい。
鱗片状黒鉛(C1)に付着した炭素質材料としては、前述の略球状天然黒鉛(A1)と同様のものが例示され、炭素質材料の付着量は鱗片状黒鉛(C)100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。
鱗片状黒鉛(C)に付着する炭素質材料がその内部や表面に上記の金属酸化物(例えば、これを金属酸化物の微粒子として)を、有することが好ましく、埋設させることがより好ましい態様として挙げられる。
埋設方法としては、鱗片状黒鉛(C)または炭素質材料が付着した鱗片状黒鉛(C1)に前記金属酸化物の微粒子の共存下で、機械的外力を加える方法が例示され、下記の球状化処理が可能な装置のうち圧縮せん断式加工装置を用いることによって製造可能である。
この場合の前記金属酸化物の量は、鱗片状黒鉛(C)または炭素質材料が付着した鱗片状黒鉛(C1)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2質量部である。
鱗片状黒鉛(C)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料(以下、単に、負極材料とも記す)は、本質的に上記(A)、(B)および(C)の3成分を、下式(1)および(2)を満たす特定割合で含む。
a:b=(60〜95):(40〜5) (1)
(a+b):c=(85以上〜100未満):(15以下〜0超) (2)
ここで、a、bおよびcは、前記(A)、(B)および(C)各成分の質量を示す。0超とは0を超える値であることを示す。
一方、a:bが95超:5未満である場合には、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)による黒鉛の配向防止効果が小さく、活物質に占める球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)が過剰になり、高密度化に伴って黒鉛が潰れ、黒鉛が一方向に配向してしまう。このため、リチウムイオンのイオン拡散性が低下し、急速充電性、急速放電性、サイクル特性の低下を引き起こす。また、活物質層の表面が閉塞しやすく、電解液の浸透性が低下して、二次電池の生産性が低下するほか、活物質層内部において、電解液の枯渇を生じたり、充電膨張が大きくなって黒鉛粒子の接触が保てなくなることにより、サイクル特性が低下する。
(a+b):cが85未満:15超である場合には、鱗片状黒鉛(C)が過剰であり、負極層内の黒鉛粒子間の空隙が小さくなる、あるいは、鱗片状黒鉛(C)が一方向に配向してしまうことにより、リチウムイオンのイオン拡散性が低下し、急速放電性、サイクル特性の低下を引き起こす。
(a+b):cの値は、好ましくは(a+b):c=(87〜99):(13〜1)、さらに好ましくは(a+b):c=(93〜98):(7〜2)である。
上記(A)、(B)および(C)の3成分からなる本発明の負極材料の放電容量は、負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、およそ355mAh/g以上、好ましくは360mAh/g以上である。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下、単に負極とも記す)の作製は、通常の負極の作製方法に準じて行うことができるが、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる作製方法であれば何ら制限されない。
負極の作製には、前記負極材料に結合剤を加えた負極合剤を用いることができる。結合剤としては、電解質に対して化学的安定性、電気化学的安定性を有するものを用いることが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、さらにはカルボキシメチルセルロース等が用いられる。これらを併用することもできる。結合剤は、通常、負極合剤の全量中1〜20質量%の割合であることが好ましい。
負極の作製には、負極作製用の通常の溶媒であるN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水、アルコール等を用いることができる。
より具体的には、例えば、前記負極材料の粒子、フッ素系樹脂粉末またはスチレンブタジエンゴムの水分散剤と溶媒を混合してスラリーとした後、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合して、負極合剤ペーストを調製する。これを集電体に塗布、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に集電体に接着する。負極合剤層の膜厚は10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電体との接着強度をさらに高めることができる。
負極合剤層の密度は、負極の体積容量を高めることから、1.70g/cm3以上、特に1.75g/cm3以上であることが好ましい。
負極に用いる集電体の形状は特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタル等の網状物等が好ましい。集電体の材質としては、銅、ステンレス、ニッケル等が好ましい。集電体の厚みは、箔状の場合、好ましくは5〜20μmである。
本発明の負極材料は、高い密度でありながら、黒鉛の潰れや配向が抑えられている。負極の配向度は、X線回折によって定量的に評価することができ、以下にその測定方法を説明する。
負極合剤層の密度を1.70〜1.75g/cm3に調整した負極を、2cm2の円盤状に打ち抜き、これを硝子板の上に負極合剤層が上向きとなるように貼りつける。この試料にX線を照射し、回折させると、黒鉛の結晶面に対応した回折ピークが現れる。複数の回折ピークのうち、(004)面に由来する2θ=54.6°付近のピーク強度I004と(110)面に由来する2θ=77.4°付近のピーク強度I110の比 I004/I110を配向度の指標とすることができる。負極の配向度が低いほど、充電時の負極の膨張率が小さく、また、電解液の浸透性や流動性にも優れ、リチウムイオン二次電池の急速充電性、急速放電性、サイクル特性等が良好となる。
本発明の負極の配向度(I004/I110)は、負極合剤層の密度が1.70〜1.75g/cm3において、20以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記負極を用いて形成される。
本発明の二次電池は、前記負極を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については、一般的な二次電池の要素に準じる。すなわち、電解液、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。そして負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には負極からリチウムイオンが離脱する。
本発明の二次電池に使用される正極は、例えば正極材料と結合剤および導電材よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布することにより形成される。正極の材料(正極活物質)としては、リチウム化合物が用いられるが、充分な量のリチウムを吸蔵/脱離し得るものを選択するのが好ましい。例えば、リチウ含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物、その他のリチウム化合物、化学式MXMo6OS8−Y(式中Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、Mは少なくとも一種の遷移金属元素である)で表されるシュブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維等を用いることができる。前記バナジウム酸化物はV2O5、V6O13、V2O4、V3O8等である。
M1、M2で示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Sn等であり、好ましいのはCo、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Al等である。好ましい具体例は、LiCoO2 、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.9 Co0.1O2、LiNi0.5Co0.5O2等である。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を所望の金属酸化物の組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
正極は、例えば、前記リチウム化合物、結合剤、および正極に導電性を付与するための導電材よりなる正極合剤を、集電体の片面または両面に塗布して正極合剤層を形成して作製される。結合剤としては、負極の作製に使用されるものと同じものが使用可能である。導電材としては、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が使用される。
集電体の形状は特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが好ましい。集電体の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。その厚さは、箔状の場合、10〜40μmが好適である。
本発明の二次電池に用いる非水電解質(電解液)は、通常の非水電解液に使用される電解質塩である。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF2OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN[(CF3)2CHOSO2]2、LiB[C6H3(CF3)2]4、LiAlCl4、LiSiF5等のリチウム塩を用いることができる。特にLiPF6、LiBF4が酸化安定性の点から好ましい。
電解液の電解質塩濃度は0.1〜5mol/Lが好ましく、0.5〜3mol/Lがより好ましい。
非水電解質液を構成する溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート、1,1−または1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテル等のエーテル、スルホラン、メチルスルホラン等のチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−2−オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイト等の非プロトン性有機溶媒等を用いることができる。
高分子固体電解質中の非水溶媒(可塑剤)の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。10質量%未満であると導電率が低くなり、90質量%を超えると機械的強度が弱くなり、製膜しにくくなる。
セパレータの材質は特に限定されるものではないが、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜等が挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
さらに、負極と正極の外側に非水電解質を配するようにしてもよい。
高分子電解質電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
実施例および比較例においては、図1に示すような構成の評価用のボタン型二次電池を作製して評価した。該電池は、本発明の目的に基づき、公知の方法に準拠して作製することができる。
〔球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)の調製〕
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均アスペクト比1.4、平均粒子径18μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、比表面積5.0m2/g)を準備した。
コールタールピッチを不活性雰囲気中で12時間かけて400℃に昇温し熱処理したのち、不活性雰囲気中で常温まで自然冷却した。得られたバルクメソフェーズを粉砕し、平均アスペクト比1.6、平均粒子径15μmの塊状に賦形した。次いで、空気中280℃で15分熱処理して表面を酸化させ、不融化処理を行ったのち、非酸化性雰囲気中で900℃で6時間、3000℃で5時間かけて黒鉛化処理を行い、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)を調製した。
得られたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の粒子形状は、粉砕時の形状を維持していた。平均格子面間隔d002は0.3362nm、比表面積は1.0m2/gであった。
天然黒鉛を粉砕して、平均粒子径5μm、平均アスペクト比が20、d002が0.3357nm、比表面積が9.5m2/gに調整した。
前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)75質量部、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)20質量部および鱗片状黒鉛(C)5質量部を混合し、負極材料を調製した。
前記負極材料98質量部、結合剤カルボキシメチルセルロース1質量部およびスチレンブタジエンゴム1質量部を水に入れ、攪拌して負極合剤ペーストを調製した。
前記負極合剤ペーストを、厚さ16μmの銅箔上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中90℃で分散媒の水を蒸発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をハンドプレスによって12kN/cm2(120MPa)で加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打抜くことで、銅箔に密着した負極合剤層(厚み60μm)を有する作用電極を作製した。負極合剤層の密度は1.75g/cm3であった。作用電極には伸び、変形がなく、断面から見た集電体に凹みがなかった。
リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電体と、該集電体に密着したリチウム金属箔(厚さ0.5mm)からなる対極(正極)を作製した。
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚さ20μm)に含浸させ、電解液が含浸されたセパレータを作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
外装カップ1と外装缶3は、その周縁部において絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。その内部に外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円筒状の対極(正極)4、電解液が含浸したセパレータ5、負極合剤からなる円盤状の作用電極(負極)2および銅箔からなる集電体7bが積層された電池である。
評価電池は、電解液が含浸したセパレータ5を、集電体7bに密着した作用電極2と、集電材7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、作用電極2を外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉して作製した。
評価電池は、実電池において、負極活物質として使用可能な黒鉛質物粒子を含有する作用電極2と、リチウム金属箔とからなる対極4とから構成される電池である。
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から質量当たりの充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から質量当たりの放電容量を求めた。これを第1サイクルとした。第1サイクルにおける充電容量と放電容量から、次式により初期充放電効率を計算した。
初期充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100
なおこの試験では、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料から離脱する過程を放電とした。
第1サイクルに引続き、第2サイクルにて急速充電を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで、電流値を第1サイクルの5倍の4.5mAとして、定電流充電を行い、定電流充電容量を求め、次式から急速充電率を計算した。
急速充電率(%)=(第2サイクルにおける定電流充電容量/第1サイクルにおける放電容量)×100
別の評価電池を用い、第1サイクルに引続き、第2サイクルにて急速放電を行なった。前記同様に、第1サイクルを行った後、第1サイクルと同様に充電し、次いで、電流値
を第1サイクルの20倍の18mAとして、回路電圧が1.5Vに達するまで、定電流放電を行った。この間の通電量から質量当たりの放電容量を求め、次式により急速放電率を計算した。
急速放電率(%)=(第2サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電容量)×100
質量当たりの放電容量、急速充電率、急速放電率を評価した評価電池とは別の評価電池を作製し、以下のような評価を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで4.0mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分間休止した。次に4.0mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。50回充放電を繰返し、得られた質量当たりの放電容量から、次式を用いてサイクル特性を計算した。
サイクル特性(%)=(第50サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電容量)×100
[配向度]
評価電池に供した作用電極と同じものをX線回折分析し、(004)面に由来する2θ=54.6°付近のピーク強度I004と(110)面に由来する2θ=77.4°付近のピーク強度I110の比I004/I110を配向度として測定した。
表1に示すように、作用電極に実施例1の負極材料を用いて得られた評価電池は、活物質層の密度を高くすることができ、かつ、高い質量当たりの放電容量を示す。このため、体積当たりの放電容量を大幅に向上させることができる。その高い密度においても、急速充電率、急速放電率およびサイクル特性は優れた結果を維持している。
〔炭素質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)の調製〕
実施例1で用いた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)100質量部に、軟化点120℃のピッチ粉末(平均粒子径2μm)3質量部およびケッチェンブラック(平均粒子径30nm)0.1質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間30分の条件で、圧縮力、せん断力を繰り返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた試料を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気中1000℃で3時間かけて焼成を行った。得られた球状化または楕円体状化天然黒鉛はその表面の大部分に炭化物が膜状に付着していた。
実施例1で用いた鱗片状黒鉛(C)についても前記と同様の条件で炭素質材料を付着させた。得られた鱗片状黒鉛の表面の大部分に炭化物が膜状に付着していることを確認した。
実施例2において、炭素質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および炭素質材料を付着させた鱗片状黒鉛(C1)の質量割合を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
本発明の規定する質量割合に入る負極材料によって作用電極を作製した場合、負極合剤層の密度を高くすることができ、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のいずれもが優れていた。
実施例1で用いた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2で用いた炭素質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例1で用いたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例1で用いた鱗片状黒鉛(C)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2で用いた炭素質材料を付着させた鱗片状黒鉛(C1)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2において、炭素質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および炭素質材料を付着させた鱗片状黒鉛(C1)の質量割合を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
本発明の規定する質量割合を逸脱した負極材料によって作用電極を作製した場合、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のうちのいずれかが不十分であった。
〔黒鉛質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A2−1)の調製〕
実施例1で用いた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)100質量部に、軟化点120℃のピッチ粉末(平均粒子径2μm)25質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間30分の条件で、圧縮力、せん断力を繰り返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた試料を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気中1000℃で3時間かけて焼成を行った。次いで、非酸化性雰囲気中3000℃で5時間かけて黒鉛化処理を行い、黒鉛質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A2−1)を調製した。得られた球状化または楕円体状化天然黒鉛はその表面の大部分に黒鉛化物が膜状に付着していた。
得られた黒鉛質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A2−1)の平均粒子径は19μm、平均格子面間隔d002は0.3357nm、比表面積は1.2m2/gであった。
〔金属酸化物微粒子を埋設させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3)の調製〕
実施例2で用いた炭素質を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)100質量部に、シリカ粉末(平均粒子径50nm)0.5質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間30分の条件で、圧縮力、せん断力を繰り返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3)は表面の炭化物の被膜にシリカ粉末が均一に埋設されていた。
実施例2で用いた炭素質を付着させた鱗片状黒鉛(C1)についても前記と同様の条件でシリカ粉末を埋設させた。得られた鱗片状黒鉛(C1’)は、表面の炭化物の被膜にシリカ粉末が均一に埋設されていた。
実施例7において、(A1−1)又は(A3)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)、および、(C1)又は(C1’)の組み合わせを表1に示すように変更した以外は実施例7と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例7において、金属酸化物微粒子を埋設させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および/または金属酸化物微粒子を埋設させた鱗片状黒鉛(C1’)の平均粒子径を表1に示すように変更した以外は実施例7と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例7において、(A3)、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および(C1’)の平均粒子径を表1に示すように変更した以外は実施例7と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2において、鱗片状黒鉛(C1)に代えて下記の平均アスペクト比が小さい非造粒型黒鉛を試作し用いた。
コールタールピッチを不活性雰囲気中450℃で90分間加熱処理し、メソフェーズ小球体をピッチマトリックス中に35質量%生成させた。その後、タール中油を用いて、メソフェーズ小球体を溶解抽出し、濾過によって分離し、窒素雰囲気中120℃で乾燥した。これを窒素雰囲気中600℃で3時間加熱処理して、メソフェーズ小球体焼成物を調製した。
この焼成物を粉砕し、黒鉛るつぼに充填して、非酸化性雰囲気下、3150℃で5時間かけて黒鉛化した。次いで、得られた黒鉛化物100質量部に、シリカ粉末(平均粒子径50nm)0.5質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間30分の条件で、圧縮力、せん断力を繰り返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた黒鉛の表面にはシリカ粉末が均一に埋設されていた。
得られた非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛化物は、平均アスペクト比が1.2の角が取れた塊状であり、平均粒子径は5μm、平均格子面間隔d002は0.3360nm、比表面積は4.2m2/gであった。
鱗片状黒鉛(C1)を前記の非造粒型黒鉛に変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2において、鱗片状黒鉛(C1)に代えて下記の平均アスペクト比が小さい造粒型黒鉛を試作し用いた。
コークス粒子(平均粒子系5μm)80質量部とコールタールピッチ20質量部を、ニ軸ニーダーを用いて、200℃で1時間混練した。混練生成物を200℃で箱型に成形した後、非酸化性雰囲気下、3150℃で5時間かけて黒鉛化を行った。得られた黒鉛化物を粉砕し、造粒型黒鉛を調製した。
得られた造粒型黒鉛は、平均アスペクト比が1.7の塊状集合体であり、平均粒子径は15μm、平均格子面間隔d002は0.3358nm、比表面積は3.2m2/gであった。
鱗片状黒鉛(C1)を前記の造粒型黒鉛に変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例2において、(A1−1)、および、(C1)の組み合わせを表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
〔金属酸化物微粒子を埋設させたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1’)の調製〕
実施例2で用いたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B)についても実施例2で用いたA1-1と同様にして炭化物を付着させた。次いで、得られた炭素質材料が付着されたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1)に、実施例7で用いた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3)と同様にしてシリカ粉末を均一に埋設させ、金属酸化物微粒子を埋設させたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1’)を調製した。
実施例2において、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)を調製する際に、バルクメソフェーズの粉砕方式を変えて、平均アスペクト比と平均粒子径を変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示す。
実施例7で調製した金属酸化物微粒子を埋設させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3)、実施例16で調製した金属酸化物微粒子を埋設させたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1’)および実施例7で調製した金属酸化物微粒子を埋設させた鱗片状黒鉛(C1’)を用いて、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
〔金属酸化物微粒子を埋設させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3’)の調製〕
金属酸化物としてシリカに替えてアルミナを用いた以外は、実施例7と同様にして、アルミナを埋設させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A3’)を調製した。
実施例2において、炭素質材料を付着させた球状化または楕円体状化天然黒鉛(A1−1)を上記(A3’)に変更した以外は、実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
〔金属酸化物微粒子を埋設させたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1’’)の調製〕
実施例16において金属酸化物としてシリカに替えて酸化チタンを用いた以外は、実施例16と同様にして酸化チタンを埋設させたバルクメソフェーズ黒鉛化物(B1’’)を調製した。
実施例2において、バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)を前記(B1’’)に変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
〔金属酸化物微粒子を埋設させた鱗片状黒鉛(C1’’)の調製〕
金属酸化物としてシリカに替えてアルミナを用いた以外は、実施例7と同様にして、アルミナを埋設させた鱗片状黒鉛(C1’’)を調製した。
実施例2において、炭素質材料を付着させた鱗片状黒鉛(C1)を前記(C1’’)に変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
(メソフェーズ小球体黒鉛化物の調製)
コールタールピッチを不活性雰囲気中450℃で90分間加熱処理し、メソフェーズ小球体をピッチマトリックス中に35質量%生成させた。その後、タール中油を用いて、メソフェーズ小球体を溶解抽出し、濾過によって分離し、窒素雰囲気中120℃で乾燥した。これを窒素雰囲気中600℃で3時間加熱処理して、メソフェーズ小球体焼成物を調製した。
この焼成物を粉砕し、黒鉛るつぼに充填して、非酸化性雰囲気下、3000℃で5時間かけて黒鉛化して、メソフェーズ小球体黒鉛化物を得た。
実施例1において、バルクメソフェーズ黒鉛化合物(B)を上記のとおり調製したメソフェーズ小球体黒鉛化物に変更した以外は実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
実施例2において、バルクメソフェーズ黒鉛化合物(B)を比較例15で調製したメソフェーズ小球体黒鉛化物に変更した以外は実施例2と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表2に示す。
2 作用電極(負極)
3 外装缶
4 対極(正極)
5 セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a、7b 集電体
Claims (9)
- (A)平均粒子径が5〜35μmで、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛、
(B)平均粒子径が2〜25μmで、平均アスペクト比が2.0未満であるバルクメソフェーズ黒鉛化物、及び
(C)平均粒子径が1〜15μmでありかつ前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が5.0以上である鱗片状黒鉛を、下記式(1)および下記式(2)を満たす質量割合で含む、リチウムイオン二次電池用負極材料:
a:b=(60〜95):(40〜5) (1)
(a+b):c=(85以上〜100未満):(15以下〜0超) (2)
ここで、a、bおよびcは、前記(A)、前記(B)および前記(C)各成分の質量を示す。 - 前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)が、その表面の少なくとも一部に炭素質材料または黒鉛質材料が付着した、球状化または楕円体状化天然黒鉛を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)が、タール類及び/又はピッチ類を熱処理し、粉砕、酸化、炭化、黒鉛化してなるバルクメソフェーズ黒鉛化物を含む請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)の平均粒子径が、前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記鱗片状黒鉛(C)が、その表面の少なくとも一部に炭素質材料が付着した、鱗片状黒鉛を含む請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(A)、前記バルクメソフェーズ黒鉛化物(B)および前記鱗片状黒鉛(C)のうちの少なくとも一つ又は全部が、その表面に金属酸化物が埋設されたものを含む請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を活物質の主要構成素材として用い、該活物質層の密度が1.7g/cm3以上である、リチウムイオン二次電池負極。
- 前記リチウムイオン二次電池負極のX線回折における(004)面の回折ピーク強度I004と(110)面の回折ピーク強度I110の比I004/I110が20以下である請求項7に記載のリチウムイオン二次電池負極。
- 請求項7又8に記載のリチウムイオン二次電池負極を有するリチウムイオン二次電池。
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