JP5551883B2 - メソフェーズ小球体および炭素材料の製造方法ならびにリチウムイオン二次電池 - Google Patents
メソフェーズ小球体および炭素材料の製造方法ならびにリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
一般的には負極材料の粒子径を微細化することで、これらの特性を改善できると考えられている。本発明者も、メソフェーズ小球体の黒鉛材料の粒子径を小さくすれば、急速充放電特性やサイクル特性の向上に有効であるという知見を得ている。
なお、特許文献5には、得られるメソフェーズ小球体の粒径に、コールタール中のフリーカーボンが影響を及ぼす旨が記載され、コールタールは通常1〜4%程度のフリーカーボン(一次QI分)を含むことが記載されている。そして、実施例には、唯一、フリーカーボン含有率が2.0%のコールタールを用いたことが記載されている。
なお、特許文献6には、フリーカーボンを1質量%含有するコールタールピッチを用いる実施例が記載されているものの、それと異なるフリーカーボン含有率については記載されていない。
1. キノリン不溶分が1質量%未満のピッチ類100質量部と、平均粒子径が0.01μm以上1μm未満の金属、半金属およびこれらの化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属類粒子0.05〜5質量部とのみからなる混合物を加熱して、前記金属類粒子をメソフェーズ小球体の表面に付着させ、
得られたメソフェーズ小球体を700〜3300℃で焼成して炭素材料(A)を得る、炭素材料の製造方法。
2. 前記メソフェーズ小球体の平均粒子径が2〜50μmである上記1に記載の炭素材料の製造方法。
3. 前記メソフェーズ小球体の平均アスペクト比が1.3未満である上記1または2に記載の炭素材料の製造方法。
4. 前記メソフェーズ小球体を2500〜3300℃で焼成する、上記1〜3のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
6. 前記金属類粒子が前記メソフェーズ小球体の表面に直接付着する、上記1〜5のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
7. 前記炭素材料(A)の形状が球状である、上記1〜6のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
8. 上記1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた炭素材料(A)に、炭素質材料(B)の炭化物を付着させて炭素材料(C)を得る炭素材料の製造方法。
9. 上記1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた炭素材料(A)に、炭素質材料(B)を付着させた後、500〜1500℃で加熱して前記炭素質材料(B)を炭化し炭素材料(C)を得る炭素材料の製造方法。
10. 前記炭化後の炭素質材料(B)の炭化物の付着量が、前記炭素材料(A)100質量部に対して0.1〜5質量部である上記8または9に記載の炭素材料の製造方法。
11. 前記炭素材料がリチウムイオン二次電池負極用炭素材料である上記1〜10のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
12. 上記1〜11のいずれかに記載の製造方法によって得られる炭素材料を負極材料として用いるリチウムイオン二次電池。
13. 前記リチウムイオン二次電池の放電容量が359〜363mAh/gである上記12に記載のリチウムイオン二次電池。
本発明は、キノリン不溶分が1質量%未満のピッチ類100質量部と、平均粒子径が0.01μm以上1μm未満の金属、半金属およびこれらの化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属類粒子0.05〜5質量部との混合物を加熱処理してメソフェーズ小球体を得るメソフェーズ小球体の製造方法である。
前記製造方法を、以下では「本発明のメソフェーズ小球体の製造方法」ともいう。
また、前記製造方法によって得られるメソフェーズ小球体を、以下では「本発明のメソフェーズ小球体」ともいう。
前記製造方法を、以下では「本発明の炭素材料の製造方法」ともいう。
また、前記製造方法によって得られる炭素材料(A)、(C)を、以下では「本発明の炭素材料」ともいう。
ピッチ類とは、後工程の加熱によってメソフェーズ小球体を発生させることができるものであればよく、例えばコールタール、コールタールピッチ、石油系タール、石油系タールピッチ等である。これらに、さらにプラスチックを熱分解して得たタール状物質を加えたものであってもよい。コールタールピッチおよび/または石油系タールピッチが好ましい。
コールタール等のピッチ類は、通常、キノリン不溶分を1質量%以上15質量%以下含有しており、ピッチ類を加熱すると微小な核の回りにキノリン不溶分が付着し、成長して、メソフェーズ小球体となるものと考えられている。
しかしながら、キノリン不溶分が1質量%未満のピッチ類であっても、ピッチ類を後述する金属類粒子と均一に混合させた後、混合物として加熱することにより、小粒径のメソフェーズ小球体を安定的に発生させ、成長させることができるのである。これは金属類粒子が核に付着することで核の成長および核同士の凝集を抑制することができ、結果として、小粒径でかつ狭い粒度分布のメソフェーズ小球体を得ることができるためであると、本発明者は考えている。
本発明のメソフェーズ小球体の製造方法では、金属類粒子と前記ピッチ類とを混合して混合物を得る。
前記金属は遷移金属が好ましく、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Wがより好ましく、Fe、Co、Niがさらに好ましい。
前記半金属はB、Siが好ましい。
前記金属類粒子はこれらの金属や半金属の化合物、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、炭酸化合物などの無機化合物であってもよく、Fe、Co、NiおよびSiから選ばれる少なくとも一つの金属または半金属、あるいはこれらの酸化物が好ましい。
ここで金属類粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計によって測定した粒度分布の累積度数が、体積百分率で50%となる粒子径を意味するものとする。
前記ピッチ類と前記金属類粒子とを混合して混合物を得るが、その混合比は、前記ピッチ類の100質量部に対して前記金属類粒子が0.05〜5質量部であり、0.2〜5質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であるとメソフェーズ小球体同士が発生直後に合体しやすく、メソフェーズ小球体の粒子径が揃わず、所定の粒子径に制御することが難しくなる傾向にある。また、5質量部超であるとメソフェーズ小球体の粒子径が過度に小さくなる傾向がある。さらに後述する加熱処理において、大量の金属類粒子が瞬時に蒸発して黒鉛化炉から噴出しが起こる可能性があり、また、加熱後に金属類粒子が残存して放電容量が低下する可能性がある。
前記混合物はピッチ類と金属類粒子との他に、他の炭素材料、黒鉛材料、高分子材料を本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。
本発明のメソフェーズ小球体の製造方法では、前記ピッチ類と前記金属類粒子との混合物を加熱する。
加熱における加熱温度は350〜500℃が好ましく、380〜480℃がより好ましい。前記加熱温度よりも低すぎるとメソフェーズ小球体の生成速度が遅くなり、逆に高すぎると生成したメソフェーズ小球体が凝集してバルクメソフェーズ化する傾向があるので好ましくない。加熱時間は10分〜10時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。また、攪拌しながら加熱することが好ましい。メソカーボン小球体の発生が促進されるからである。
その分離方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば溶剤抽出法を好ましく適用することができる。抽出溶剤はピッチマトリックスの良溶媒であることが好ましく、タール中油、キノリン等が例示される。また、溶媒抽出したメソフェーズ小球体は、さらに遠心分離、ろ過などの定法により、抽出溶剤から分離して小球体として単離することができる。分離の際に、メソフェーズ小球体に付着した金属類粒子はメソフェーズ小球体から脱離しない。
本発明の炭素材料(A)の製造方法では、本発明のメソフェーズ小球体を最終的に700〜3300℃で焼成する。ただし、焼成温度が700〜2500℃であるとメソフェーズ小球体の黒鉛化が不十分となるほか、メソフェーズ小球体に付着している前記金属類粒子が蒸発または分解せずに、残存することがある。焼成温度が700〜2500℃の炭素材料(A)は、急速充放電特性に特化する場合などに限定して使用することができる。焼成温度が2500〜3300℃であるとメソフェーズ小球体が黒鉛化し、メソフェーズ小球体に付着している前記金属類粒子が蒸発または分解して、実質的に残存しない。焼成温度は、前記金属類粒子が蒸発または分解して実質的に残存せずに消失する温度であることが好ましい。具体的には2800〜3200℃が好ましく、3000〜3200℃がより好ましい。それは、残存する金属が金属炭化物や金属窒化物となり、活物質として作用せず、放電容量の低下を招くからである。
焼成温度を2800℃以上とし、短時間の焼成を複数回に分けて行うことが好ましい。複数回に分けて焼成すると、メソフェーズ小球体が溶融し難いからである。例えば800〜1400℃で1〜5時間焼成した後、2800〜3200℃で4〜8時間焼成する方法が好ましい。
本発明の炭素材料(A)の製造方法においては、前記焼成の前処理として、さらに予備焼成を行うことが好ましい。
予備焼成は前記焼成の前段階で700℃未満の温度で前記メソフェーズ小球体を焼成する工程である。前記予備焼成することにより焼成時のメソフェーズ小球体の融着や大量のガス発生を抑えることができ、形状制御性や安定生産性を高めることができる。
予備焼成を複数回行ってもよい。
前記製造方法によって得られる本発明の炭素材料(A)は、平均粒子径が2〜50μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。2μm未満では、最終的に得られる本発明の炭素材料をリチウムイオン二次電池の負極材料に用いた場合に、初期充放電効率の低下を生じるおそれがあり、50μm超では、急速充放電特性やサイクル特性が低下するおそれがある。
なお、平均粒子径は、前述の金属類粒子の平均粒子径と同様の方法で測定した値を意味するものとする。
特に、X線回折における格子面間隔d002が0.3365nm以下、特に0.3360mm未満であることが好ましい。ここで、格子面間隔d002とは、X線としてCuKα線を用い、高純度シリコンを標準物質とするX線回折法(大谷杉郎著、「炭素繊維」、733−742頁(1986年)、近代編集社)によって測定した値である。
比表面積は窒素ガス吸着によるBET法によって求めた値を意味するものとする。
炭素材料(A)の表面に炭素質材料(B)の炭化物が付着した炭素材料(C)を得る方法には、炭素材料(A)の表面に炭素質材料(B)を付着させた後、炭素質材料(B)を加熱して炭化する方法、および、炭素材料(A)の表面に、炭素質材料(B)の炭化物を付着させて炭素材料(C)を得る方法があるが、前者の方法が炭素材料(A)の表面に炭素質材料(B)を均一に付着できる点から好ましい。
樹脂類としては、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などの樹脂が挙げられる。ほかに、糖類、セルロース類も使用することができる。
溶媒としてはコールタールナフサを使用することができる。
メカノケミカル処理可能な装置としては、「GRANUREX」(フロイント産業(株)製)、「ニューグラマシン」((株)セイシン企業製)、「アグロマスター」(ホソカワミクロン(株)製)などの造粒機、ロールミル、二軸混練機、押出機、ボールミル、遊星ミル、「ハイブリダイゼーション」((株)奈良機械製作所製)、「メカノマイクロシステム」((株)奈良機械製作所製)、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)、「ノビルタ」(ホソカワミクロン(株)製)などの圧縮剪断式加工装置などを挙げることができる。
炭素材料(A)の表面に付着した炭素質材料(B)の炭化は、前記付着物を不活性雰囲気中、500〜1500℃、好ましくは800〜1300℃で加熱して炭化する。加熱により付着した炭素質材料(B)およびその炭化物が剥離、脱離することは殆どない。前記炭化により炭素質材料(B)の炭化物が付着した本発明の炭素材料(C)が得られる。
炭素質材料(B)としては、前記液相法、固相法の場合と同じものが使用できる。
炭素質材料(B)の炭化は、前記炭化と同じ方法、条件で行うことができる。
炭素質材料(B)の炭化物の付着も前記液相法、固相法と同じ方法、条件で行うことができる。
本発明の炭素材料(C)は、炭素材料(A)の表面に炭素質材料(B)の炭化物が付着した炭素材料である。前記炭化物は、炭素材料(A)の表面の一部を被覆していればよいが、表面の全域を均一に被覆していることが好ましい。前記炭化物の付着により、炭素材料(C)は前記炭素材料(A)に比べ、圧縮強度の目安となる硬度が増大するが、炭素材料(A)の硬度が充分に低く、かつ、炭素質材料(B)の炭化物の付着量が少量に規定されているため、リチウムイオン二次電池用負極材料の製造時に充填密度を高くすることができ、集電材を損傷することなどがない。また、リチウムイオン二次電池としての初期充放電効率や急速充電特性をさらに向上させることができる。
また、本発明の炭素材料に、液相、気相、固相における各種化学的処理、熱処理、物理的処理、酸化処理などを施してもよい。
以下、本発明の炭素材料は、炭素材料(A)および/または炭素材料(C)を意味するものとする。
次に、本発明の炭素材料を負極材料として用いるリチウムイオン二次電池(以下、「本発明のリチウムイオン二次電池」ともいう。)について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として本発明の炭素材料を用いること以外は、通常のリチウムイオン二次電池と同様の構成であってよい。すなわち、電解液、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。そして負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には負極からリチウムイオンが離脱する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として本発明の負極材料を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については一般的なリチウムイオン二次電池の要素に準じる。
本発明のリチウムイオン二次電池用の負極の作製は、本発明の負極材料の電池特性を充分に引き出し、かつ賦型性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる成型方法であればいずれでもよいが、本発明の負極材料と結合剤を溶剤および/または分散媒(以後、単に溶剤とも称す)中で混合して、ペースト化し、得られた負極合剤ペーストを集電材に塗布した後、溶剤を除去し、プレスなどにより固化および/または賦形する方法によるのが一般的である。すなわち、まず、本発明の負極材料を分級などにより所望の粒度に調整し、結合剤と混合して得た組成物を溶剤に分散させ、ペースト状にして負極合剤を調製する。
負極に用いる集電材の形状は、特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状物などが好ましい。集電材の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。集電材の厚みは、箔状の場合は好ましくは5〜20μmである。
正極は、例えば正極材料と結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電材の表面に塗布することにより形成される。正極の材料(正極活物質)は、充分量のリチウムを吸蔵/脱離し得るものを選択するのが好ましく、リチウムと遷移金属の複合カルコゲン化物、なかでもリチウムと遷移金属の複合酸化物(リチウ含有遷移金属酸化物とも称す)が好ましい。該複合酸化物は、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM1 1-XM2 XO2(式中Xは0≦X≦1の範囲の数値であり、M1、M2は少なくとも一種の遷移金属元素である)またはLiM1 2-YM2 YO4(式中Yは0≦Y≦2の範囲の数値であり、M1、M2は少なくとも一種の遷移金属元素である)で示される。Mで示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどである。好ましい具体例は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.9 Co0.1O2、LiNi0.5Co0.5O2などである。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
集電材の形状は特に限定されないが、箔状またはメッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが用いられる。集電材の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。その厚さは10〜40μmのものが好適である。
本発明に用いられる電解液としては、溶媒と電解質塩からなる有機系電解液や、高分子化合物と電解質塩とからなるポリマー電解質などが用いられる。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF2OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN((CF3)2CHOSO2)2、LiB[C5H3(CF3)2]4、LiAlCl4、LiSiF5などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF5、LiBF4が酸化安定性の点から好ましく用いられる。
有機系電解液中の電解質塩濃度は0.1〜5mol/lが好ましく、0.5〜3.0mol/l がより好ましい。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。該範囲であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
セパレータは特に限定されるものではないが、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、初期充放電効率が高いことから、ゲル電解質を用いることも可能である。
以下、リチウムイオン二次電池を単に二次電池とも言う。
実施例および比較例においてピッチ類のキノリン不溶分、メソフェーズ小球体およびその炭素材料の物性および特性は、以下の方法によって測定し評価した。
評価結果を表1に示す。
ピッチ類のキノリン不溶分の含有率、炭素材料のアスペクト比、炭素材料の比表面積、炭素材料の格子面間隔d002の測定方法は、前述の通りである。
金属類粒子、メソフェーズ小球体、その炭素材料の体積換算の平均粒子径の測定方法は、前述の通りである。すなわち、レーザー回折式粒度分布計により測定した粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径(D50)である。また、同様の方法で粒度分布を測定し、累積度数が体積百分率で10%および90%となる粒子径も測定した。この粒子径を各々、D10およびD90と記す。
炭素材料の硬さは、微小圧縮試験機((株)島津製作所製、MCT)により破壊強度を求め、実施例1の炭素材料(A)の破壊強度を1とした場合の相対値で示した。
(メソフェーズ小球体の製造)
平均粒子径0.2μmの塊状のニッケル微粒子1.5質量部を、コールタールピッチ100質量部(残炭率60%、キノリン不溶分0.5質量%)に混合し、連続式ニーダー型混合装置を用いて攪拌し均一化した。得られた混合物をオートクレーブに移し、窒素気流中、攪拌しながら410℃にて5時間加熱してメソフェーズ小球体を発生させた。メソフェーズ小球体の発生率(混合物中のキノリン不溶分)は42質量%であった。
なお、本実施例は、工業的に安価製造可能な目安とされるメソフェーズ小球体の収率20質量%を大きく超えている。また、メソフェーズ小球体の発生粒子径が5時間の加熱中徐々に大きく成長するため、粒子径の制御が容易であり、工業的規模で安定的に製造することができる。
その後、150℃まで冷却したところでタール中油を添加し、1時間抽出を行った。メソフェーズ小球体を含有するタール中油を加熱ろ過し、メソフェーズ小球体を分離した。得られたメソフェーズ小球体を乾燥し、窒素気流中、350℃で3時間加熱した。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は6μmおよび22μmであった。
次に、上記のニッケル微粒子が付着したメソフェーズ小球体を、窒素気流中、1000℃で3時間焼成した後、さらに3200℃で6時間焼成し黒鉛化して炭素材料(A)を製造した。
得られた炭素材料(A)の平均粒子径は11μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料(A)のアスペクト比は1.1、比表面積は1.3m2/g、格子面間隔d002は0.3356nmであった。前記炭素材料(A)の硬さを、以下の実施例、比較例における炭素材料の硬さを知るための基準値の1.0と規定した。また、元素分析の結果、Niは検出限界以下であった。
製造方法および評価方法等を示す。
炭素材料(A)90質量%と、結合剤としてのポリフッ化ビニリデン10質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒に入れ、ホモミキサーを用いて2000rpmで30分間攪拌混合し、有機溶媒系負極合剤ペーストを調製した。
負極合剤ペーストを、銅箔上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中で90℃で分散媒を揮発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をローラープレスによって加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打抜くことで、銅箔からなる集電材(厚み16μm)に密着した負極合剤層(厚み60μm)からなる作用電極を作製した。
リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電材と、該集電材に密着したリチウム金属箔(厚み0.5μm)からなる対極を作製した。
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、LiPF6 を1mol/dm3となる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚み20μm)に含浸させ、電解液が含浸されたセパ
レータを作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
集電材7bに密着した作用電極2と集電材7aに密着した対極4との間に、電解液を含浸させたセパレータ5を挟んで積層した。その後、作用電極集電材7b側が外装カップ1内に、対極集電材7a側が外装缶3内に収容されるように、外装カップ1と外装缶3とを合わせた。その際、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量を求めた。これを第1サイクルとした。次式(I)から初期充放電効率を計算した。
100 (I)
引き続き、第2サイクルにて高速充電を行なった。
電流値を第1サイクルの4倍の3.6mAとして、回路電圧が0mVに達するまで定電流充電を行い、充電容量を求め、次式(II)から急速充電率を計算した。
前記第2サイクルの定電流充電に引き続き、第2サイクルにて、高速放電を行った。第1サイクルと同様にして定電圧充電に切替え充電した後、電流値を16倍の14.4mAとして、回路電圧が1.5Vに達するまで、定電流放電を行った。得られた放電容量から、次式(III)により急速放電率を計算した。
100 (III)
放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率を評価した評価電池とは別の評価電池を作製し、以下のような評価を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで4.0mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分間休止した。次に4.0mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。20回充放電を繰返し、得られた放電容量から、次式(IV)を用いてサイクル特性を計算した。
実施例1において、コールタールピッチ中にニッケル微粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてメソフェーズ小球体を製造した。メソフェーズ小球体の発生率は30質量%であった。
得られたメソフェーズ小球体はアスペクト比が1.1のほぼ真球状であり、平均粒子径(D50)は32μmであった。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は、各々、18μmおよび55μmであった。
得られた炭素材料の平均粒子径は29μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料のアスペクト比は1.1、比表面積は0.5m2/g、格子面間隔d002は0.3359nmであった。硬さは1.3であった。
表1に示されるように、金属類粒子としてのニッケル微粒子を配合しない比較例1の場合には、メソフェーズ小球体の平均粒子径が大きく、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性が不足する。また、金属類粒子を配合した場合に比べ、放電容量が低くなっている。
実施例1において、コールタールピッチをキノリン不溶分の多いもの(残炭率60%、キノリン不溶分1.5質量%)に置き換えた以外は、実施例1と同様にしてメソフェーズ小球体を製造した。メソフェーズ小球体の発生率は43質量%であった。
得られたメソフェーズ小球体はアスペクト比が1.1のほぼ真球状であり、平均粒子径(D50)は8μmであった。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は、各々、4μmおよび17μmであった。
得られた炭素材料の平均粒子径は7μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料のアスペクト比は1.1、比表面積は1.8m2/g、格子面間隔d002は0.3366nmであった。硬さは2.3であった。また、Niは検出限界以下であった。
表1に示されるように、キノリン不溶分の多いピッチ類を原料に用いた場合には、メソフェーズ小球体の発生粒子径が小さくなり、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性は良好であるものの、放電容量が不足する。
(炭素材料の調製)
平均粒子径0.3μmの塊状のシリコン微粒子0.7質量部を、コールタールピッチ100質量部(残炭率60%、キノリン不溶分0.3質量%)に混合し、連続式ニーダー型混合装置を用いて攪拌し均一化した。得られた混合物をオートクレーブに移し、窒素気流中、攪拌しながら410℃にて5時間加熱してメソフェーズ小球体を発生させた。メソフェーズ小球体の発生率は40質量%であった。
その後、150℃まで冷却したところでタール中油を添加し、1時間抽出を行った。メソフェーズ小球体を含有するタール中油を加熱ろ過し、メソフェーズ小球体を分離した。得られたメソフェーズ小球体を乾燥し、窒素気流中、350℃で3時間焼成した。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は11μmおよび26μmであった。
得られた炭素材料(A)の平均粒子径は14μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料(A)のアスペクト比は1.1、比表面積は1.1m2/g、格子面間隔d002は0.3355nmであった。硬さは0.9であった。また、Siは検出限界以下であった。
実施例2において、シリコン微粒子を平均粒子径2μmのものに置き換えた以外は、実施例2と同様にしてメソフェーズ小球体を製造した。メソフェーズ小球体の発生率は35質量%であった。
得られたメソフェーズ小球体はアスペクト比が1.1のほぼ真球状であり、平均粒子径は25μmであった。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は、各々、14μmおよび48μmであった。
得られた炭素材料の平均粒子径は23μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料のアスペクト比は1.1、比表面積は0.8m2/g、格子面間隔d002は0.3360nmであった。硬さは1.5であった。また、Siは検出限界以下であった。
表1に示されるように、規定よりも粒子径の大きい金属類粒子をピッチ類に添加した比較例3の場合には、メソフェーズ小球体の発生粒子径が若干大きくなり、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性の向上が小さいものとなるほか、放電容量が不足する。
実施例2において、シリコン微粒子に代えて、平均粒子径0.6μmのカーボンブラックを用いた以外は、実施例2と同様にしてメソフェーズ小球体を製造した。メソフェーズ小球体の発生率は34質量%であった。
得られたメソフェーズ小球体はアスペクト比が1.1のほぼ真球状であり、平均粒子径(D50)は18μmであった。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は、各々、10μmおよび32μmであった。
得られた炭素材料の平均粒子径は16μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料のアスペクト比は1.1、比表面積は1.3m2/g、格子面間隔d002は0.3366nmであった。硬さは2.4であった。また、炭素材料の表面には、カーボンブラックに由来する炭素質の微粒子が付着していた。
表1に示されるように、金属類粒子をピッチ類に添加せず、カーボンブラックを添加した従来技術では、放電容量が不足する。
(炭素材料(A)の製造)
シランカップリング剤によって疎水処理された平均粒子径30nmのシリカ微粒子0.3質量部を、コールタールピッチ100質量部(残炭率60%、キノリン不溶分0.7質量%)に混合し、連続式ニーダー型混合装置を用いて攪拌し均一化した。得られた混合物をオートクレーブに移し、窒素気流中、攪拌しながら410℃にて5時間加熱してメソフェーズ小球体を発生させた。メソフェーズ小球体の発生率は48質量%であった。
その後、150℃まで冷却したところでタール中油を添加し、1時間抽出を行った。メソフェーズ小球体を含有するタール中油を加熱ろ過し、メソフェーズ小球体を分離した。得られたメソフェーズ小球体を乾燥し、窒素気流中、350℃で3時間焼成した。
また、メソフェーズ小球体の粒度分布を測定したところ、D10およびD90は5μmおよび23μmであった。
得られた炭素材料(A)の平均粒子径は9μmであったが、その形状は、焼成前のメソフェーズ小球体とほぼ同一の真球状であった。炭素材料のアスペクト比は1.1、比表面積は1.7m2/g、格子面間隔d002は0.3357nmであった。硬さは1.1であった。また、Siは検出限界以下であった。
実施例3において、コールタールピッチをキノリン不溶分の多いもの(キノリン不溶分1.5質量%または4.0質量%)に置換え、疎水処理されたシリカ微粒子を加えない以外は、実施例3と同様にしてメソフェーズ小球体を製造し、焼成して黒鉛化した。
実施例1と同様に作用電極を作製して評価を行った。電池特性の結果を表1に示す。
表1に示されるように、キノリン不溶分の多いコールタールピッチからメソフェーズ小球体を製造した場合は、粒子径が小さくなり、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性が高いものの、放電容量が小さくなる。
平均粒子径0.3μmの塊状のシリコン微粒子0.7質量部を、コールタールピッチ100質量部(残炭率60%、キノリン不溶分0.5質量%)に混合し、連続式ニーダー型混合装置を用いて攪拌し均一化した。得られた混合物を鋼鉄製の容器に移し、そのまま窒素気流中、500℃で6時間焼成し、メソフェーズ小球体が合体したバルクメソフェーズ焼成品を得た。
得られたバルクメソフェーズ焼成品を掻き出して、粗粉砕したのち、ジェットミル式粉砕機で微粉砕し、平均粒子径を13μmに調整した。D10およびD90は5μmおよび38μmであった。得られたバルクメソフェーズ焼成品の形状は、やや扁平な塊状〜タイル状であり、アスペクト比は3.2であった。
得られた炭素材料の平均粒子径は12μmであったが、その形状は、焼成前のバルクメソフェーズ焼成品とほぼ同一のやや扁平な塊状〜タイル状であった。炭素材料のアスペクト比は3.2、比表面積は1.5m2/g、格子面間隔d002は0.3360であった。硬さは1.5であった。また、Siは検出限界以下であった。
表1に示されるように、作用電極に比較例7の炭素材料を負極材料として用いて得られた評価電池は放電容量、急速充電特性、急速放電特性およびサイクル特性のいずれの特性も不足している。
実施例2の炭素材料の調製において、塊状のシリコン微粒子の平均粒子径を0.3μmから0.4μmに変更する以外は、実施例2と同様にメソフェーズ小球体を発生させた。メソフェーズ小球体の発生率は38質量%であった。次いで、実施例2と同様にメソフェーズ小球体を分離し、350℃で3時間焼成した後、1000℃で3時間焼成し、さらに3200℃で6時間焼成し黒鉛化して炭素材料(A)を得た。
得られた炭素材料(A)について、実施例1と同様に作用電極を作製して電池特性の評価を行った。表1に示されるように、本発明の金属類粒子の平均粒子径を好適範囲の上限近傍とした実施例4は、放電容量、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性において高い値が得られている。
実施例2の炭素材料の調製において、塊状のシリコン微粒子の平均粒子径を0.3μmから0.9μmに変更する以外は、実施例2と同様にメソフェーズ小球体を発生させた。メソフェーズ小球体の発生率は37質量%であった。次いで、実施例2と同様にメソフェーズ小球体を分離し、350℃で3時間焼成した後、1000℃で3時間焼成し、さらに3200℃で6時間焼成し黒鉛化して炭素材料(A)を得た。
得られた炭素材料(A)について、実施例1と同様に作用電極を作製して電池特性の評価を行った。表1に示されるように、本発明の金属類粒子の平均粒子径を本発明の範囲の上限近傍とした実施例5は、放電容量、急速充電特性、急速放電特性、サイクル特性が実施例4より劣るものの、比較例1よりも高い値を示している。
(炭素材料(C)の製造)
実施例2の炭素材料(A)100質量部に、炭素質材料(B)であるメソフェーズピッチ粉末(軟化点200℃、平均粒子径3μm、1300℃での残炭率67%)3.0質量部を混合し、得られた混合物を乾式粉体複合化装置「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製、型式AMS)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、回転ドラムと内部部材との距離5mmで60分間、圧縮力と剪断力を同時に繰返し付与してメカノケミカル処理し、炭素材料(A)の表面に前記メソフェーズピッチ粉末を付着させた。得られた付着物を、ロータリーキルンを用い、窒素気流中1300℃で3時間加熱し、付着した前記メソフェーズピッチ粉末を炭化して炭素材料(C)を製造した。
炭素材料(C)の平均粒子径は14μmであり、付着前の炭素材料(A)の平均粒子径と同一であった。炭素材料(C)の形状も付着前の炭素材料(A)と同様なほぼ真球状であり、アスペクト比は1.1であった。比表面積は0.9m2/g、格子面間隔d002は0.3355nmであった。炭素材料(C)の硬さは、炭素質材料(B)を付着していない実施例2の炭素材料(A)に対して僅かな上昇に留まっている。
表2に示されるように、実施例2の炭素材料(A)に、炭素質材料(B)であるメソフェーズピッチ粉末の炭化物を薄膜状に被覆することにより、初期充放電効率と急速充電特性が向上している。
実施例6において、メソフェーズピッチ粉末の混合量を表2に示すように変更する以外は、実施例6と同様な方法と条件で炭素材料(C)を製造した。
実施例1と同様に作用電極を作製して評価を行った。電池特性の結果を表2に示す。
表2に示されるように、炭素質材料(B)であるメソフェーズピッチ粉末の付着量が少ない場合には、実施例6よりも初期充放電効率と急速充電特性が向上が僅かである。その一方、メソフェーズピッチ粉末の付着量が多い場合には、炭素材料(C)が硬くなり、格子面間隔d002が大きくなって、放電容量が低下する。
(炭素材料(C)の製造)
実施例2の炭素材料(A)100質量部に、炭素質材料(B)であるメソフェーズピッチ粉末(軟化点200℃、平均粒子径3μm、1300℃での残炭率67%)3.0質量部をタール中油に溶解してピッチ溶液と混合し、得られた混合物を二軸加熱ニーダーを用いて、150℃で1時間混練し、徐々に減圧してタール中油を除去し、炭素材料(A)の表面に前記メソフェーズピッチ粉末を付着させた。得られた付着物を、150℃で真空乾燥してタール中油を完全に除去した後、ロータリーキルンを用い、窒素気流中1300℃で3時間加熱し、付着した前記メソフェーズピッチ粉末を炭化して炭素材料(C)を製造した。
炭素材料(C)の平均粒子径は14μmであり、付着前の炭素材料(A)の平均粒子径と同一であった。炭素材料(C)の形状も付着前の炭素材料(A)と同様なほぼ真球状であり、アスペクト比は1.1であった。比表面積は0.9m2/g、格子面間隔d002は0.3355nmであった。炭素材料(C)の硬さは、炭素質材料(B)を付着していない実施例2の炭素材料(A)に対して僅かな上昇に留まっている。
表2に示されるように、実施例2の炭素材料(A)に、炭素質材料(B)であるメソフェーズピッチ粉末の炭化物を薄膜状に被覆することにより、初期充放電効率と急速充電特性が向上している。
実施例6の炭素材料(C)の製造において、炭素質材料(B)として、実施例4で用いたメソフェーズピッチ粉末を予め窒素気流中1300℃で3時間加熱して炭化させ、その後平均粒子径1μmに微粉砕して得た炭化物粉末を用い、前記炭化物粉末2.0質量部を炭素材料(A)に混合した以外は、実施例6と同様に炭素材料(A)の表面に前記炭素質材料(B)の炭化物粉末を付着させて、炭素材料(C)を製造した。
得られた炭素材料(C)を走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素材料(A)の表面に均一に前記メソフェーズピッチ炭化物の粉末が付着していることが確認できた。
得られた炭素材料(C)について、実施例1と同様に作用電極を作製して電池特性の評価を行った。
表2に示されるように、実施例2の炭素材料(A)に炭素質材料(B)の炭化物を付着させることにより、炭化物を薄膜状に被覆した実施例4よりも劣るものの、初期充放電効率と急速充電特性が実施例2よりも向上する。
実施例6の炭素材料(C)の製造において、炭素質材料(B)として、メソフェーズピッチ粉末に代えてフェノール樹脂粉末(平均粒子径2μm、1300℃での残炭率40質量%、軟化点150℃)5.0質量部を混合した以外は、実施例6と同様に炭素材料(C)を製造した。前記フェノール樹脂粉末の炭化物の付着量は、炭素材料(A)100質量部に対し2.0質量部であった。
得られた炭素材料(C)を走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭素材料(A)の表面全域に前記フェノール樹脂粉末の炭化物が付着していることが確認できた。
得られた炭素材料(C)について、実施例1と同様に作用電極を作製して電池特性の評価を行った。表2に示されるように、実施例2の炭素材料(A)に炭素質材料(B)であるフェノール樹脂粉末の炭化物を薄膜状に被覆することにより、初期充放電効率と急速充電特性が向上した。
2 作用電極
3 外装缶
4 対極
5 セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a、7b集電体
Claims (13)
- キノリン不溶分が1質量%未満のピッチ類100質量部と、平均粒子径が0.01μm以上1μm未満の金属、半金属およびこれらの化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属類粒子0.05〜5質量部とのみからなる混合物を加熱して、前記金属類粒子をメソフェーズ小球体の表面に付着させ、
得られたメソフェーズ小球体を700〜3300℃で焼成して炭素材料(A)を得る、炭素材料の製造方法。 - 前記メソフェーズ小球体の平均粒子径が2〜50μmである請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
- 前記メソフェーズ小球体の平均アスペクト比が1.3未満である請求項1または2に記載の炭素材料の製造方法。
- 前記メソフェーズ小球体を2500〜3300℃で焼成する、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
- 前記焼成によって炭素材料(A)から前記金属類粒子を消失させる請求項1〜4のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
- 前記金属類粒子が前記メソフェーズ小球体の表面に直接付着する、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
- 前記炭素材料(A)の形状が球状である、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた炭素材料(A)に、炭素質材料(B)の炭化物を付着させて炭素材料(C)を得る炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた炭素材料(A)に、炭素質材料(B)を付着させた後、500〜1500℃で加熱して前記炭素質材料(B)を炭化し炭素材料(C)を得る炭素材料の製造方法。
- 前記炭化後の炭素質材料(B)の炭化物の付着量が、前記炭素材料(A)100質量部に対して0.1〜5質量部である請求項8または9に記載の炭素材料の製造方法。
- 前記炭素材料がリチウムイオン二次電池負極用炭素材料である請求項1〜10のいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法によって得られる炭素材料を負極材料として用いるリチウムイオン二次電池。
- 前記リチウムイオン二次電池の放電容量が359〜363mAh/gである請求項12に記載のリチウムイオン二次電池。
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