JP4040606B2 - リチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、ならびにリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
二次電池に関する。
以上3.00%未満であることが好ましい。
イオン二次電池用負極である。
る。
/または熱硬化性樹脂であることが好ましい。
ことが好ましい。
が好ましい。
そのため、本発明の負極材料を用いてなるリチウムイオン二次電池は、近年の電池の高エネルギー密度化に対する要望を満たし、搭載する機器の小型化および高性能化に有効である。
リチウムイオン二次電池は、通常、非水電解質、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば、電池缶内に封入されている。負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用する。充電時にはリチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極からリチウムイオンが離脱する電池機構によっている。
本発明の負極材料は、繊維状黒鉛材料Bが造粒黒鉛質材料Cに、炭素質材料および/または結晶性が低い黒鉛質材料からなる付着剤Aにより付着したものである。ここで、付着とは、付着剤Aが繊維状黒鉛材料Bの繊維の一部を内包し、造粒黒鉛質材料Cの表面および/または内部の少なくとも一部に該繊維を付着させ、容易に脱離しないような強度に結合している状態を言う。そして、造粒黒鉛質材料Cに付着された繊維状黒鉛材料Bの繊維は、造粒黒鉛質材料Cおよび/または付着剤Aの表面から起毛していることが好ましい。
また、繊維状黒鉛材料Bは、付着剤Aを介して、造粒黒鉛質材料Cの全面にほぼ万遍に付着していても、部分的に分散して付着していても、ほんの一部に僅かに付着していてもよい。もちろん、造粒黒鉛質材料Cに付着剤Aが付着しているが、繊維状黒鉛材料Bが付着していない付着剤Aの部分が混在しても差支えない。付着した繊維状黒鉛材料Bが、起
毛するように付着させることが好ましい。
また、負極材料の外表面の結晶性は、ラマン分光で測定した下記R値で好適範囲を示すことができる。すなわち、波長514.5nmのアルゴンレーザーを用いたラマンスペクトルにおいて、1360cm−1バンド強度(ID)と1580cm−1バンド強度(IG)の比(ID/IG=R値)が0.05以上0.40未満、特に0.1〜0.3であることが好ましい。R値が0.05未満または0.40以上であると、放電容量、初期充放電効率、サイクル特性が低下することがある。
さらに、負極材料の体積換算の平均粒子径は3〜50μm、特に5〜30μmであることが好ましい。3μm未満では、初期充放電効率が低下するおそれがあり、50μm超では、急速充放電効率およびサイクル特性が低下するおそれがある。
ンダーによる粘着力が低下することがある。
負極材料の形状は、後述する造粒黒鉛質材料Cの形状を反映するが、アスペクト比が3以下のものが好ましい。これは球状または楕円体状などの球状に近い形状を意味する。ここで、アスペクト比とは、負極材料の長軸長と短軸長の比を表し、複数の負極材料について計測した値の平均値である。アスペクト比を3以下とすることにより、急速充放電効率およびサイクル特性が向上する。これは、負極材料が一方向に配列することなく、かつ電
解液が内部に浸透しやすくなるからである。
炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aは、造粒黒鉛質材料Cと繊維状黒鉛材料Bを付着させるものである。該付着剤Aは、導電性を有するものであることが好ましい。ここで、炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料とは、本発明の負極材料を構成する造粒黒鉛質材料Cに対して結晶性が相対的に低いことを意味する。具体的にはX線回折における平均格子面間隔d002を比較して大なる場合を言う。 炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aを使用することに
より、初期充放電効率が向上する。
繊維状黒鉛材料Bは、その形状が繊維状であり、かつ、黒鉛材料であるので、導電性を有する。繊維状黒鉛材料Bの前駆体としては、繊維状黒鉛材料Bが得られるものであれば、いかなるものであってもよい。特に、黒鉛化可能な繊維状炭素質材料が好ましい。例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維などが挙げられる。繊維状黒鉛材料Bの前駆体として、短軸長(直径)が1〜500nm、特に10〜200nmで、かつアスペクト比が5以上、特に10〜100であるものが好ましい。ここで、アスペクト比とは、繊維長/短軸長比をいう。短軸長とアスペクト比は繊維状黒鉛材料Bの前駆体について計測した平均値を言う。
特に、金属触媒を用いて得た気相成長炭素繊維は、高温熱処理などによって、金属触媒
を除去したものが好ましい。
造粒黒鉛質材料Cは、下記の黒鉛が複数集合した造粒体であればよく、造粒黒鉛質材料Cの粒子内において、複数の黒鉛がランダムに配置されていることが好ましい。特に、アスペクト比3以下のもの、さらには鱗片状の天然黒鉛または人造黒鉛が同心円状、キャベツ状に配列された構造であることが好ましい。前述したように、負極材料が一方向に配列することなく、かつ、電解液が内部に浸透しやすく、急速充放電効率とサイクル特性が向上するからである。
造粒黒鉛質材料Cを構成する黒鉛は、その一部または全部が黒鉛質で形成されていればよく、その種類は特に限定されないが、天然黒鉛や、タール、ピッチ類を最終的に1500℃以上で熱処理してなる人造黒鉛が挙げられる。具体的には、タール、ピッチ類を原料としたメソフェーズピッチを熱処理(黒鉛化)してなるバルクメソフェーズ黒鉛質粒子や、生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどを熱処理(黒鉛化)した人造黒鉛が例示される。
また、造粒黒鉛質材料Cとして鱗片状黒鉛の造粒体を用いると、その表面が粗面化されたものおよび/または空隙を有するものとなり、特に好ましい。粗面や空隙を有することにより、付着剤Aや繊維状黒鉛材料Bの付着力が増すことから、サイクル特性がさらに向上するからである。
造粒黒鉛質材料Cは、高い放電容量を得るために、特にX線回折における格子面間隔d002が0.337nm以下、特に0.3365nm以下であることが好ましい。また、造粒黒鉛質材料Cは体積換算の平均粒子径が3〜50μm、特に5〜30μmであることが好ましい。その理由は前述した負極材料の理由と同じである。
本発明の負極材料は、造粒黒鉛質材料Cと繊維状黒鉛材料Bが、炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aにより付着した複合体を製造し得る方法であれば、いかなる方法によって製造されても差支えない。代表的な製造方法を下記する。付着剤Aの前駆体は溶融状態または分散媒に分散または溶解して使用される。
(1)繊維状黒鉛材料Bに付着剤Aを付着させ、得られた付着物をさらに造粒黒鉛質材
料Cに付着させる方法。
(2)造粒黒鉛質材料Cに付着剤Aを付着させ、得られた付着物に繊維状黒鉛材料Bを
埋設させる方法
(3)造粒黒鉛質材料Cと繊維状黒鉛材料Bと付着剤Aを同時に付着させる方法。
(4)造粒黒鉛質材料Cに繊維状黒鉛材料Bを予備的に付着させ、得られた付着物に付
着剤Aを付着させる方法。
℃未満で行うことができる。
鉛材料Bの効果が充分に発現されるからである。
材料、有機物、金属、金属化合物などを配合してもよい。
リチウムイオン二次電池用の負極の作製は、本発明の負極材料の電池特性を充分に引き出し、かつ賦型性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる成型方法であればいずれでもよいが、本発明の負極材料と結合剤を溶剤および/または分散媒(以後、単に溶剤とも称す)中で混合して、ペースト化し、得られた負極合剤ペーストを集電材に塗布した後、溶剤を除去し、プレスなどにより固化および/または賦形する方法によるのが一般的である。すなわち、まず、本発明の負極材料を分級などにより所望の粒度に調整し、結合剤と混合して得た組成物を溶剤に分散させ、ペースト状にして負極合剤を調
製する。
着強度をさらに高めることができる。
負極に用いる集電材の形状は、特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状物などが好ましい。集電材の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。集電材の厚みは、箔状の場合は好ましくは5〜20μmである。
リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とし、正極および負極はそれぞれリチウムイオンの担持体からなり、充電時には、リチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から離脱する電池機構によっている。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として本発明の負極材料を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については一般的なリチウムイオン二次電池の要
素に準じる。
正極は、例えば正極材料と結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電材の表面に塗布することにより形成される。正極の材料(正極活物質)は、充分量のリチウムを吸蔵/脱離し得るものを選択するのが好ましく、リチウムと遷移金属の複合カルコゲン化物、なかでもリチウムと遷移金属の複合酸化物(リチウ含有遷移金属酸化物とも称す)が好ましい。該複合酸化物は、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM1 1-XM2 XO2(式中Xは0≦X≦1の範囲の数値であり、M1、M2は少なくとも一種の遷移金属元素である)またはLiM1 2-YM2 YO4(式中Yは0≦Y≦2の範囲の数値であり、M1、M2は少なくとも一種の遷移金属元素である)で示される。Mで示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどである。好ましい具体例は、LiCoO2 、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.9 Co0.1O2、LiNi0.5Co0.5O2などである。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度
で焼成することにより得ることができる。
公知のものが使用される。
集電材の形状は特に限定されないが、箔状またはメッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが用いられる。集電材の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等であ
る。その厚さは10〜40μmのものが好適である。
集電材に接着される。
本発明に用いられる電解質としては、溶媒と電解質塩からなる有機系電解質や、高分子化合物と電解質塩とからなるポリマー電解質などが用いられる。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C 6 H 5 ) 4 、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF2OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN((CF3)2CHOSO2)2、LiB[C5H3(CF3)2]4、LiAlCl4、LiSiF5などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF5、LiBF4が酸化安定性の点から好ましく用いられる。
有機系電解質中の電解質塩濃度は0.1〜5mol/lが好ましく、0.5〜3.0mol/l
がより好ましい。
。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いること
が好ましい。
どを挙げることができる。
ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。該範囲であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
セパレータは特に限定されるものではないが、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、初期充放電効率が高いことから、ゲル電
解質を用いることも可能である。
て作製することができる。
Cおよび負極材料の物性は以下の方法により測定した。
繊維状黒鉛材料Bの前駆体の短軸長(直径)およびアスペクト比、ならびに造粒黒鉛質材料Cおよび負極材料のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡観察にて、その形状を確認できる倍率により100個について計測し、その平均値を求めた。
造粒黒鉛質材料Cおよび負極材料の体積換算の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計により測定した粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径とした。
造粒黒鉛質材料Cおよび負極材料の格子面間隔d002は、前述したX線回折法により求めた。
負極材料の比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。
負極材料中の繊維状黒鉛材料Bの組成割合は、前述したように走査型電子顕微鏡観察(
倍率5000倍)により10個について計測し、その平均値を求めた。
負極材料中の付着剤Aの組成割合は、前述したようにX線回折により評価した負極材料の結晶性と、付着剤Aと繊維状黒鉛材料Bを除去した時の結晶性とを比較することにより求めた。
(付着剤Aの調製)
コールタールピッチ10質量部をタール中油90質量部に溶解し、付着剤Aの前駆体溶
液を得た。
高純度酸化第二鉄を固定床流通式反応装置に充填し、常圧、550℃で高純度酸化鉄1g当たり300sccmのCOおよび15sccmの水素を流通して、下記式(I)に示す反応を生じさせ、高純度酸化第二鉄1g当たり30gの気相成長炭素繊維を得た。直径は120nm、アスペクト比は30であった。これを繊維状黒鉛材料Bの前駆体とした。
2CO → C + CO2 (I)
鱗片状天然黒鉛(平均粒子径20μm)を、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン(株)製:型式200AFG)を用いて、空気圧300kPaで1時間、機内で循環させながら機械的外力を付与し、球状造粒天然黒鉛を得た。これから、粒子径が5μm以下の造粒が不完全な微粉を除去した。また、75μm篩い下になるように粗粉を除去した。得られた造粒天然黒鉛の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、鱗片状天然黒鉛が同心円状に配列していることが確認された。平均粒子径は15μm、アスペクト比は2.4、格子面間隔d002は0.3356nmであった。
得られる負極材料100質量部の質量組成割合が、結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤A(コールタールピッチ由来の炭素質材料):繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維):造粒黒鉛質材料C(造粒天然黒鉛)=7:0.5:92.5となるように、前記付着剤Aの前駆体溶液100質量部、前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体0.5質量部、および前記造粒黒鉛質材料C92.5質量部を、二軸式加熱ニーダーを用いて、150℃で1時間混練した。その後、真空にして、該混練物中の分散媒(タール中油)を除去した。得られた混練物を550℃で10時間焼成した後、2300℃で5時間熱処理を施した。形状は造粒天然黒鉛とほぼ同じであり、平均粒子径は15μmであった。気相成長炭素繊維は凝集して、コールタールピッチ由来の炭素質材料を介して、造粒天然黒鉛に局所的に付着しており、気相成長炭素繊維の大半が起毛していた。なお、気相成長炭素繊維の前駆体に由来する鉄の含有は認められなかった。
また、付着剤Aとしてのコールタールピッチ由来の炭素質材料の結晶性については、該炭素質材料の前駆体であるコールタールピッチのみを実施例1と同じ熱履歴にて熱処理したものについて、前述するX線回折法による格子面間隔d002を測定した。その結果、実施例1の負極材料を構成する造粒黒鉛質材料Cと比べて該格子面間隔d002は大きく、結
晶性が低いことを確認した。
負極材料90質量%と、結合剤としてのポリフッ化ビニリデン10質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒に入れ、ホモミキサーを用いて2000rpmで30分間攪拌混合し、有機溶媒系負極合剤ペーストを調製した。
負極合剤ペーストを、銅箔上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中で90℃で分散媒を揮発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をローラープレスによって加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打抜くことで、銅箔からなる集電材(厚み16μm)に密着した負極合剤層(厚み60μm)からなる作用電極2を作製した。
リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電材と、該集電材に密着したリチウム金属箔(厚み0.5μm
)からなる対極を作製した。
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、LiPF6 を1mol/dm3となる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚み20μm)に含浸させ、電解質液が含浸されたセパ
レータを作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
集電材7bに密着した作用電極2と集電材7aに密着した対極4との間に、電解質溶液を含浸させたセパレータ5を挟んで、積層した。その後、作用電極集電材7b側が外装カップ1内に、対極集電材7a側が外装缶3内に収容されるように、外装カップ1と外装缶3とを合わせた。その際、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在
させ、両周縁部をかしめて密閉した。
した。評価結果を表2に示した。
(放電容量、初期充放電効率)
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量を求めた。これを第1サイクルとし
た。次式(I)から初期充放電効率を計算した。
初期充放電効率(%)=(第1サイクルの放電容量/第1サイクルの充電容量)
×100 (I)
なおこの試験では、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料から離
脱する過程を放電とした。
引き続き、第2サイクルにて高速充電を行なった。
電流値を第1サイクルの4倍の3.6mAとして、回路電圧が0mVに達するまで定電
流充電を行い、充電容量を求め、次式(II)から急速充電効率を計算した。
急速充電効率=(第2サイクルにおける定電流充電容量/第1サイクルにおける
放電容量)×100 (II)
前記第2サイクルの定電流充電に引き続き、第2サイクルにて、高速放電を行った。第1サイクルと同様にして定電圧充電に切替え充電した後、電流値を16倍の14.4mAとして、回路電圧が1.5Vに達するまで、定電流放電を行った。得られた放電容量から、次式(III)により急速放電効率を計算した。
急速放電効率=(第2サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電容量
)×100 (III)
放電容量、初期充放電効率、急速充電効率、急速放電効率を評価した評価電池とは別の
評価電池を作製し、以下のような評価を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで4.0mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分間休止した。次に4.0mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。20回充放電を繰返し、得られた放電容量から、次式(IV)を用いてサイクル特性を計算した。
サイクル特性=(第20サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電
容量)×100 (IV)
優れたサイクル特性を示す。
実施例1において、繊維状黒鉛材料Bを使用しないことを除いて、実施例1と同様に負極材料を調製し、実施例1と同様に負極および評価電池を作製して、実施例1と同様に評
価試験を行なった。電池特性の評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、造粒黒鉛質材料Cに繊維状黒鉛材料Bが付着していない場合には、高い急速充放電効率やサイクル特性が得られない。また放電容量も低下している。これは、造粒黒鉛質材料Cの粒子間の導電性が不足し、造粒黒鉛質材料Cの利用率が低下し
たためと考えられる。
(付着剤Aの調製)
フェノール樹脂8質量部をエタノール92質量部に溶解し、付着剤Aの前駆体溶液1
00質量部を得た。
黒鉛化処理された気相成長炭素繊維(昭和電工(株)製、VGCF、直径150nm、アスペクト比50)0.5質量部を準備した。
実施例1の造粒天然黒鉛(平均粒子径15μm、アスペクト比2.4、格子面間隔d0020.3356nm)を準備した。
得られる負極材料100質量部の質量組成比が、結晶性の低い炭素質材料からなる付着剤A(フェノール樹脂由来の炭素質材料):繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維):造粒黒鉛質材料C(造粒天然黒鉛)=3.0:1.0:96.0となるように、前記付着剤Aの前駆体溶液100質量部、前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体1質量部、および前記造粒黒鉛質材料C96質量部を混合した。その後、スプレードライ方式(機内温度130℃)によって、該混合物中の分散媒(エタノール)を除去し、フェノール樹脂を介して気相成長炭素繊維が凝集して付着した造粒天然黒鉛の凝集物を得た。得られた凝集物を550℃で10時間焼成した後、軽く解砕し、2800℃で5時間の熱処理を施した。得られた負極材料の走査型電子顕微鏡写真を図2に示した。形状は造粒天然黒鉛とほぼ同じであり、平均粒子径は15μmであった。気相成長炭素繊維(繊維状黒鉛材料B、11)は凝集して、フェノール樹脂由来の炭素質材料(付着剤A、10)を介して、造粒天然黒鉛(造粒黒鉛質材料C、12)に局所的に付着しており、気相成長炭素繊維の大半が起毛していた。
実施例1の評価電池において、負極材料を上記負極材料に代える以外は、実施例1と同様に評価電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を評価した。その結果を表2に示した
。
表2に示されるように、作用電極に実施例2の負極材料を用いて得られた評価電池は、高い放電容量を示し、かつ高い初期充放電効率を有する。さらに優れた急速充放電効率お
よび優れたサイクル特性を示す。
実施例2において、繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維)を使用しないことを除いて、実施例2と同様に負極材料を調製し、実施例2と同様に負極および評価電池を作製して
、実施例2と同様に評価試験を行なった。電池特性の評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、造粒天然黒鉛に気相成長炭素繊維が付着していない場合には、
高い急速充放電効率およびサイクル特性が得られない。
比較例2の付着剤A(フェノール樹脂由来の炭素質材料)の前駆体と造粒黒鉛質材料C(造粒天然黒鉛)からなる負極材料99.0質量部と、実施例2の繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維)の前駆体1.0質量部をドライブレンドして、2800℃の熱処理を施し、負極材料を調製した。この負極材料は、フェノール樹脂由来の炭素質材料と造粒天然黒鉛とは付着しているが、気相成長炭素繊維は混合されている状態であった。実施例1と同様に負極および評価電池を作製して、実施例1と同様に評価試験を行なった。電池特性の評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、フェノール樹脂由来の炭素質材料を介さずに、造粒天然黒鉛に気相成長炭素繊維を単に混合しただけでは、高い急速充放電効率およびサイクル特性が得られない。
(付着剤Aの調製)
コールタールピッチ10質量部をタール中油90質量部に溶解し、付着剤Aの前駆体溶
液を得た。
実施例1で調製した気相成長炭素繊維(直径120nm、アスペクト比30)を、非酸化性雰囲気中、3000℃で5時間熱処理して黒鉛化した。
ニードルコークスより得られた鱗片状人造黒鉛(平均粒子径30μm)を、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン(株)製:型式200AFG)を用い、空気圧300kPaで1時間、機内で循環させながら機械的外力を付与し、球状造粒人造黒鉛を得た。これから、粒子径が5μm以下で造粒が不完全な微粉を除去した。また、75μm篩い下になるように粗粉を除去した。得られた造粒人造黒鉛の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、鱗片状人造黒鉛が同心円状に配列していることが確認された。これの平均粒子径は20μm、アスペクト比は2.0、格子面間隔d002は0.3356nmであった。
黒鉛化した気相成長炭素繊維2.0質量部、および球状造粒人造黒鉛92.0質量部を、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速度15m/s 、処理時間30分、回転ドラムと内部部材の距離5mmの条件で圧縮力、剪断力を繰返し付与し、該気相成長炭素繊維と該造粒人造黒鉛を一体化させた。該造粒人造黒鉛の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、該気相成長炭素繊維の一部が該造粒人造黒鉛に埋設し、かつ、一部が起毛して付着していた。
得られる負極材料100質量部の質量組成比が、コールタールピッチ由来の炭素質材料:気相成長炭素繊維:造粒人造黒鉛=6.0:2.0:92.0となるように、前記付着剤Aの前駆体溶液100質量部、前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体が付着した前記造粒黒鉛質材料C94.0質量部を混合し、二軸式加熱ニーダーを用いて、150℃で1時間混練した。その後、真空にして、該混練物中の分散媒(タール中油)を除去した。得られた混練物を550℃で10時間焼成したのち、1300℃で5時間熱処理した。形状は造粒人造黒鉛とほぼ同じであり、平均粒子径は20μmであった。気相成長炭素繊維は、コールタールピッチ由来の炭素質材料に完全に被覆、内包されることなく、コールタールピッチ由来の炭素質材料を介して造粒人造黒鉛に付着していた。気相成長炭素繊維に由来して負極材料の表面は起毛していた。
実施例1の評価電池において、負極材料を上記負極材料に代える以外は、実施例1と同様に評価電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を評価した。その結果を表2に示した
。
表2に示されるように、作用電極に実施例3の負極材料を用いて得られた評価電池は、高い放電容量を示し、かつ高い初期充放電効率を有する。さらに優れた急速充放電効率お
よび優れたサイクル特性を示す。
実施例3において、繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維)を使用せず、かつ、メカノフュージョンシステムによる機械的外力の付与を行なわないことを除いて、実施例3と同様に負極材料を調製し、実施例3と同様に負極および評価電池を作製して、実施例3と同
様に評価試験を行なった。電池特性の評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、造粒黒鉛質材料C(造粒人造黒鉛)に繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維)が付着していない場合には、高い急速充放電効率やサイクル特性が得られない。また放電容量も低下している。これは、造粒黒鉛質材料C(造粒人造黒鉛)の粒子間の導電性が不足し、造粒黒鉛質材料Cの利用率が低下したためと考えられる。
実施例2において、造粒天然黒鉛を、造粒していない鱗片状天然黒鉛(平均粒子径25μm、アスペクト比8.1、格子面間隔d0020.3356nm)に代える以外は、実施例2と同様に、負極材料の調製、評価電池の作製、および電池特性の評価を行なった。評価結果を表2に示した。
得られる負極材料100質量部の質量組成比が、結晶性の低い炭素質材料からなる付着剤A(フェノール樹脂由来の炭素質材料):繊維状黒鉛材料B(気相成長炭素繊維):非造粒黒鉛質材料D(鱗片状天然黒鉛)=5.4:3.0:91.6となるように、前記付着剤Aの前駆体溶液180質量部、前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体3質量部、および非造粒黒鉛質材料D91.6質量部を混合し、二軸式加熱ニーダーを用いて、常温で1時間混練した。その後、120℃に加熱し、真空にして、該混練物中の分散媒(エタノール)を除去した。得られた混練物を300℃で5時間焼成したのち、軽く解砕し、2900℃で5時間熱処理した。形状は鱗片状天然黒鉛とほぼ同じであり、平均粒子径は25μmであった。気相成長炭素繊維はその一部が凝集した状態で、フェノール樹脂由来の炭素質材料を介して鱗片状天然黒鉛に局所的に付着しており、気相成長炭素繊維の大半が起毛していた。
実施例2において、負極材料を上記負極材料に代える以外は、実施例2と同様に評価電池を作製し、実施例2と同様に電池特性を評価した。その結果を表2に示した。
表2に示されるように、黒鉛質材料Cとして造粒黒鉛質材料を使用しない場合には、高い急速充放電効率やサイクル特性が得られない。これは、鱗片状黒鉛を使用したために、負極が配向し、電解液の保持性が損なわれたり、充放電に伴う膨張収縮が一方向となって、負極材料の接触が保持できなくなったためと考えられる。また、黒鉛質材料が造粒体ではなく、表面が平滑で空隙がないため、付着剤Aと非造粒黒鉛質材料Dとの付着力が不足したことも影響しているものと考えられる。
実施例3において、造粒人造黒鉛を、下記の調製法で得た造粒人造黒鉛に代える以外は、実施例3と同様に、負極材料の調製、評価電池の作製、および電池特性の評価を行なった。評価結果を表2に示した。
鱗片状のニードルコークス粉砕品(平均粒子径5μm)およびコールタールピッチを、該コークス粉砕品に由来する黒鉛質材料:コールタールピッチに由来する黒鉛質材料=60:40となるように、前記コークス粉砕品65質量部およびコールタール65質量部を二軸式加熱ニーダーを用いて、150℃で1時間混練した。その後、窒素雰囲気で500℃で10時間熱処理した。その後、平均粒子径22μmに粉砕し、得られた粉砕品を3000℃で5時間熱処理した。得られた造粒人造黒鉛の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、形状は鱗片状のコークス由来の黒鉛質材料が複数集合した不定形粒子であり、平均粒子径は20μm、格子面間隔d002は0.3357nm、アスペクト比は2.8であった。
得られた負極材料の形状は、不定形の角が丸められ、楕円体であった。平均粒子径は18μm、アスペクト比は2.5であった。気相成長炭素繊維は、コールタールピッチ由来の炭素質材料を介して造粒黒鉛質材料に付着していた。気相成長炭素繊維に由来して負極材料の表面は起毛していた。
また、付着剤Aとしてのコールタールピッチ由来の黒鉛質材料の結晶性については、該炭素質材料の前駆体であるコールタールピッチのみを実施例4と同じ熱履歴にて熱処理したものについて、前述するX線回折法による格子面間隔d002を測定した。その結果、実施例4の負極材料を構成する造粒黒鉛質材料Cと比べて格子面間隔d002は大きく、結晶性が低いことを確認した。
表2に示されるように、作用電極に実施例4の負極材料を用いて得られた評価電池は、高い放電容量を示し、かつ高い初期充放電効率を有する。さらに優れた急速充放電効率および優れたサイクル特性を示す。
2 作用電極
3 外装缶
4 対極
5 電解質溶液含浸セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a,7b 集電体
10 付着剤A
11 繊維状黒鉛材料B
12 造粒黒鉛質材料C
Claims (11)
- 炭素質材料および/または結晶性が低い黒鉛質材料からなる付着剤Aにより、繊維状黒鉛材料Bが、鱗片状黒鉛からなる造粒黒鉛質材料Cに付着し、かつ、X線回折における平均格子面間隔d 002 が0.337nm以下であり、体積換算の平均粒子径が3〜50μmで、かつアスペクト比が3以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 炭素質材料および/または結晶性が低い黒鉛質材料からなる付着剤Aにより、繊維状黒鉛材料Bが、鱗片状黒鉛からなる造粒黒鉛質材料Cに付着し、前記繊維状黒鉛材料Bが起毛し、かつ、X線回折における平均格子面間隔d 002 が0.337nm以下であり、体積換算の平均粒子径が3〜50μmで、かつアスペクト比が3以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記付着剤A、前記繊維状黒鉛材料Bおよび前記造粒黒鉛質材料Cの全量に対して、前記繊維状黒鉛材料Bの割合が0.05%以上3.00%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池。
- 炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aの前駆体、繊維状黒鉛材料Bの前駆体、鱗片状黒鉛に機械的外力を付与して造粒した造粒黒鉛質材料C、および分散媒を混合し、得られた分散体を700〜3300℃で熱処理することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
- 鱗片状黒鉛からなる造粒黒鉛質材料Cに、機械的外力を付与して、繊維状黒鉛材料Bの前駆体を付着させたのち、炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aの前駆体、および分散媒を混合し、得られた分散体を700〜3300℃で熱処理することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
- 前記炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aの前駆体が、タールピッチ類および/または熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項6または7に
記載のリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。 - 前記炭素質材料および/または結晶性の低い黒鉛質材料からなる付着剤Aの前駆体が、タールピッチ類であることを特徴とする請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用負極
材料の製造方法。 - 前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体の短軸長が1〜500nmであり、かつアスペクト比が5〜500であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオ
ン二次電池用負極材料の製造方法。 - 前記繊維状黒鉛材料Bの前駆体が、気相成長炭素繊維またはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負
極材料の製造方法。
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