JP2011009051A - リチウムイオン二次電池用負極材料、リチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒子径が10〜40μm、平均アスペクト比が1.3未満のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、平均粒子径が5〜35μmで、(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)、平均粒子径が2〜25μmで、(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満の黒鉛(C)の混合物であり、その質量割合がa:b=(10〜70):(90〜30)、(a+b):c=(60〜95):(40〜5)であるリチウムイオン二次電池用負極材料、該負極材料を用いた負極、該負極を用いたリチウムイオン二次電池。
【選択図】図1
Description
扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合または結合させてなり、粒子に細孔を有する黒鉛粒子(特許文献2)。
直径方向に垂直な方向に黒鉛のベーサル面が層状に配列したブルックス・テーラー型の単結晶からなるメソカーボン小球体の黒鉛化物(特許文献3)。
天然黒鉛粒子を球状化または楕円体状化してなる造粒物の黒鉛粒子間の空隙に炭素質物が充填してなる複合黒鉛粒子、または、該造粒物の表面を炭素質物が被覆してなる複合黒鉛粒子(特許文献4)。
バルクメソフェ−ズピッチを粉砕、酸化、炭化、黒鉛化してなる塊状の黒鉛粒子(特許文献5)。
メソフェーズ小球体黒鉛化品と、該黒鉛化品より平均粒子径が小さい非鱗片状黒鉛質粒子(メソフェーズ小球体破砕品の黒鉛化品)を混合した負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極(特許文献7)。
メソフェーズ小球体の黒鉛化粒子の親水化物と、低結晶性の炭素材料を被覆した複合黒鉛質炭素材料を混合したリチウム二次電池用負極材料(特許文献8)。
非黒鉛性炭素で被覆された、平均粒径が10〜30μmの球状または楕円体状の黒鉛と、平均粒径が1〜10μmの一次粒子(扁片状)である黒鉛を混合した負極材料を用いたリチウム二次電池用負極(特許文献9)。
非黒鉛質炭素材料で被覆した黒鉛材料と天然黒鉛材料を混合した負極材料を用いた非水電解液二次電池(特許文献11)。
平均粒径が8μm以上のメソフェーズ球状黒鉛と、その隙間を埋めるように平均粒径が3μm以下のメソフェーズ微小球状黒鉛を7.5重量%以下含有させてなる負極材料を用いたリチウム二次電池(特許文献12)。
黒鉛、第一の非黒鉛炭素材料と、これらより小粒子径のアセチレンブラックの混合体を負極材料に用いた非水電解液二次電池(特許文献13)。
メソカーボンマイクロビーズの黒鉛化物と、該黒鉛化物より平均粒子径が小さい人造黒鉛粉末を混合した負極材料を用いた非水電解液二次電池(特許文献14)。
平均粒子径が5〜35μmで、かつ、前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)、および、
平均粒子径が2〜25μmで、かつ、前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満である黒鉛(C)
の混合物であり、前記混合物中の前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)および前記黒鉛(C)の質量割合が下記式(1)および式(2)を満足することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
a:b=(10〜70):(90〜30) (1)
(a+b):c=(60〜95):(40〜5) (2)
ここで、aは前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の割合、bは前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の割合、cは前記黒鉛(C)の割合を示す。
リチウムイオン二次電池(以下、単に二次電池とも記す)は、通常、電解液(非水電解質)、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば、二次電池缶内に封入されている。負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用する。充電時には、リチウムイオンが負極に吸蔵され、放電時には負極からリチウムイオンが離脱する電池機構によっている。
本発明の二次電池は、負極材料として本発明の負極材料を用いること以外、特に限定されず、非水電解質、正極、セパレータなどの他の電池構成要素については一般的な二次電池の要素に準じる。
本発明のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)(以下、単に小球体黒鉛化物(A)とも記す)は、非造粒型、非破砕型の黒鉛粒子である。本発明の小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径は、体積換算の平均粒子径で10〜40μm、特に15〜35μmであることが好ましい。10μm以上であれば、活物質層の密度を高めることができ、体積当たりの放電容量が向上する。40μm以下であれば、急速充電性やサイクル特性が向上する。ここで、体積換算の平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布計によって測定した粒度分布の累積度数が、体積百分率で50%となる粒子径を意味する。
アスペクト比とは、小球体黒鉛化物(A)の1粒子の長軸長の短軸長に対する比を意味する。ここで、長軸長は測定対象の粒子の最も長い径を意味し、短軸長は測定対象の粒子の長軸に直交する短い径を意味する。また、平均アスペクト比は、走査型電子顕微鏡によって100個の小球体黒鉛化物(A)を観察して測定した各粒子のアスペクト比の単純平均値である。ここで、走査型電子顕微鏡で観察する際の倍率は、測定対象粒子の形状を確認できる倍率とする。
本発明の小球体黒鉛化物(A)は、石炭系、石油系の重質油、タール類、ピッチ類を350〜500℃で加熱処理することにより生成する光学的異方性の球状重合物が原料である。球状重合物をピッチマトリックスから遠心分離や有機溶剤(ベンゼン、トルエン、キノリン、タール中油、タール重油、洗浄油等)を用いて分離精製した後、分離された球状重合物を非酸化性雰囲気下300℃以上で一次焼成し、最終的に非酸化性雰囲気下2500℃超で高温熱処理することによって小球体黒鉛化物(A)を得ることができる。最終的な高温熱処理は好ましくは2800℃以上、より好ましくは3000℃以上で行うが、小球体黒鉛化物(A)の粒子の昇華、分解等を避けるため、通常、上限温度は約3300℃とする。最終的な高温熱処理は、アチェソン炉等の公知の高温炉を用いて行うことができる。最終的な高温熱処理の時間はいちがいに言えないが、1〜50時間程度である。
本発明の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)は、扁平状、鱗片状の天然黒鉛を湾曲させたり、折畳んで略式球状化したもの、または、複数の鱗片状の天然黒鉛を同心円状、キャベツ状に造粒し球状化したものが好ましい。
本発明の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の平均粒子径は、前記小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径より小さくなければならず、その体積換算の平均粒子径は5〜35μm、特に10〜30μmであることが好ましい。5μm以上であれば、活物質層の密度を高めることができ、体積当たりの放電容量が向上する。そして、35μm以下であると、急速充電性やサイクル特性が向上する。球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の平均粒子径が、小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径より大きい場合、活物質層を高密度化したときに、球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)が潰れやすくなり、球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の結晶構造が粒子内や負極上で一方向に配向してしまう。このため、リチウムイオンの拡散性が低下し、急速充電性、急速放電性、サイクル特性の低下を引起す。
また、本発明の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)は、結晶性が高いがゆえに、二次電池の負極活物質に用いた場合に、高い放電容量を示す。放電容量は負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、およそ350mAh/g以上、好ましくは360mAh/g以上である。
本発明の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の比表面積は、大きすぎると二次電池の初期充放電効率の低下を招くため、比表面積で20m2/g以下が好ましく、10m2/g以下がより好ましい。
球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)に付着した炭素質材料としては、石炭系または石油系の重質油、タール類、ピッチ類や、フェノール樹脂等の樹脂類を最終的に500℃以上1500℃未満で加熱処理してなる炭化物が挙げられる。炭素質材料の付着量は球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。
球状化または楕円体状化天然黒鉛(B2)に付着した黒鉛質材料としては、石炭系または石油系の重質油、タール類、ピッチ類や、フェノール樹脂等の樹脂類を1500℃以上3300℃未満で加熱処理してなる黒鉛化物が挙げられる。黒鉛質材料の付着量は球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)100質量部に対し1〜30質量部、特に5〜20質量部であることが好ましい。
本発明の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)(以下、単に天然黒鉛(B)とも記す)は、扁平状、鱗片状の天然黒鉛に機械的外力を加えることにより製造することができる。具体的には、高い剪断力を付与したり、転動操作を加えることにより湾曲させて球状化したり、同心円状に造粒して球状化することができる。球状化処理の前後において、結着剤を配合して造粒を促進することもできる。球状化処理が可能な装置としては、「カウンタジェットミル」(ホソカワミクロン(株)製)、「カレントジェット」(日清エンジニアリング(株)製)等の粉砕機、「SARARA」(川崎重工(株)製)、「GRANUREX」(フロイント産業(株)製)、「ニューグラマシン」((株)セイシン企業製)、「アグロマスター」(ホソカワミクロン(株)製)などの造粒機、加圧ニーダー、二本ロール等の混練機、「メカノマイクロシステム」((株)奈良機械製作所製)、押出機、ボールミル、遊星ミル、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)、「ノビルタ」(ホソカワミクロン(株)製)、「ハイブリダイゼーション」((株)奈良機械製作所製)、回転ボールミル等の圧縮剪断式加工装置などを挙げることができる。
本発明の黒鉛(C)は非造粒型黒鉛(C1)および造粒型黒鉛(C2)のいずれでもよい。
非造粒型黒鉛(C1)は、その粒子内部が緻密な球状、楕円体状、塊状等の黒鉛粒子であり、造粒型黒鉛(C2)は微細な一次粒子が造粒されてなる球状、楕円体状、塊状等の黒鉛粒子である。
非造粒型黒鉛(C1)および造粒型黒鉛(C2)の平均粒子径は、小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径よりも小さいことが必須であり、平均粒子径で2〜25μm、特に3〜20μmであることが好ましい。2μm未満の場合は、初期充放電効率の低下が生じることがある。25μm超の場合は、非造粒型黒鉛(C1)では、活物質層を高密度にするために高い圧力を必要とし、集電体である銅箔の変形、伸び、破断といった問題を生じることがあり、造粒型黒鉛(C2)では、活物質層を高密度にした場合に、造粒型黒鉛(C2)粒子が一方向に配向するので、リチウムイオンの拡散性が低下し、急速充電性、急速放電性、サイクル特性の低下を引起すことがある。
非造粒型黒鉛(C1)および造粒型黒鉛(C2)を二次電池の負極活物質に用いた場合の放電容量は、負極や評価電池の作製条件によって変化するものの、340mAh/g以上、好ましくは350mAh/g以上である。
非造粒型黒鉛(C1)および造粒型黒鉛(C2)の比表面積は、大きすぎると二次電池の初期充放電効率の低下を招くため、比表面積で20m2/g以下が好ましく、10m2/g以下がより好ましい。
造粒型黒鉛(C2)は、非造粒型黒鉛(C1)に比べ、リチウムイオンの挿入口が多く、急速充電性に優れることから好ましく使用される。
粉砕方法は特に限定されず、各種の粉砕方式が適用可能であるが、粉砕と同時または粉砕後に破砕面の角を取ることが好ましく、ボールミル、渦流式粉砕機、摩砕式粉砕機等の使用が好ましい。
本発明の非造粒型黒鉛(C1)は、石炭系のタール、ピッチを加熱して得られるメソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)、メソフェーズ小球体の粉砕物、コークス類(生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)等をあらかじめ最終製品の粒子形状で、かつ平均粒子径で2〜25μmに粉砕した後、最終的に2500℃以上3300℃未満で熱処理して黒鉛化することにより製造することができる。粉砕方法は特に限定されず、各種の粉砕方式が適用可能であるが、粉砕と同時に破砕面の角を取ることが好ましく、ボールミル、渦流式粉砕機、摩砕式粉砕機等の使用が好ましい。
本発明の造粒型黒鉛(C2)は、メソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)、メソフェーズ小球体の粉砕物、コークス類(生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)を平均粒子径1〜15μmに微粉砕したものをそのまま、または、これを500℃以上3300℃未満で熱処理したもの、または、石油系タール、ピッチを熱処理した後、平均粒子径1〜15μmに微粉砕したものを、500℃以上3300℃未満で熱処理し、これら一次粒子を前記炭素質材料前駆体を結着剤として造粒し、最終的に2500℃以上3300℃未満で熱処理して黒鉛化したもの、あるいは、平均粒子径1〜15μmの人造黒鉛、天然黒鉛を一次粒子とし、これを前記炭素質材料前駆体を結着剤として造粒し、最終的に2500℃以上3300℃未満で熱処理して黒鉛化したものが例示される。さらに、前記一次粒子を前記炭素質材料前駆体を接着剤として平均粒子径15μm超の造粒体を形成し、最終的に2500℃以上3300℃未満で熱処理して黒鉛化した後に、平均粒子径2〜25μmに粉砕したものが例示される。
一次粒子の平均粒子径が1μm未満の場合には、初期充放電効率の低下を生じることがあり、15μm超の場合には、造粒後の平均粒子径を25μm以下に調整することが難しくなる。
混練後に、500〜1500℃で予備熱処理することが好ましい。予備熱処理の前後のいずれかにおいて粉砕することができるが、平均粒子径で2〜25μmになるように粉砕する場合の粉砕方法は特に限定されず、各種の粉砕方式が使用可能であるが、粉砕と同時に破砕面の角を取ることが好ましいことから、渦流式や摩砕式の粉砕機が好適である。また、粉砕後に粒子形状を球状に近づけるための整粒処理を行うことが好ましい。整粒処理方法には、前記の処理装置を使用することができる。混練後に粉砕せずに、最終的に2500℃以上3300℃未満で熱処理して黒鉛化した後に、平均粒子径2〜25μmに粉砕する場合においても、前記の粉砕機や処理装置を使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料(以下、単に負極材料とも記す)は、前記3成分(A)、(B)および(C)を含有する混合物である。本発明においては、これら3成分の質量割合をa:b=10〜70:90〜30、および、(a+b):c=60〜95:40〜5に規定する。ここで、a、bおよびcは、それぞれ、(A)、(B)および(C)の割合を示す。
一方、a:bが70超:30未満である場合には、相対的に硬質な小球体黒鉛化物(A)が過剰であるため、活物質層を高密度にするために高い圧力を必要とし、集電体である銅箔の変形、伸び、破断といった問題を生じることがある。
一方、(a+b):cが95超:5未満である場合には、非造粒型黒鉛(C1)および/または造粒型黒鉛(C2)による導電性向上効果が小さくなり、急速充電性、急速放電性、サイクル特性の低下を招くことがある。さらに好ましくは、a:b=25〜60:75〜40、および、(a+b):c=75〜90:25〜10である。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下、単に負極とも記す)の作製は、通常の負極の作製方法に準じて行うことができるが、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる作製方法であれば何ら制限されない。
本発明の負極の作製には、前記負極材料に結合剤を加えた負極合剤を用いることができる。結合剤としては、電解質に対して化学的安定性、電気化学的安定性を有するものを用いることが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、さらにはカルボキシメチルセルロース等が用いられる。これらを併用することもできる。結合剤は、通常、負極合剤の全量中1〜20質量%の割合であることが好ましい。
本発明の負極の作製には、負極作製用の通常の溶媒であるN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水、アルコール等を用いることができる。
より具体的には、例えば、前記負極材料の粒子、フッ素系樹脂粉末またはスチレンブタジエンゴムの水分散剤と溶媒を混合してスラリーとした後、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合して、負極合剤ペーストを調製する。これを集電体に塗布、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に集電体に接着する。負極合剤層の膜厚は10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電体との接着強度をさらに高めることができる。
負極合剤層の密度は、負極の体積容量を高めることから、1.70g/cm3以上、特に1.75g/cm3以上であることが好ましい。
負極に用いる集電体の形状は特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタル等の網状物等が好ましい。集電体の材質としては、銅、ステンレス、ニッケル等が好ましい。集電体の厚みは、箔状の場合、好ましくは5〜20μmである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記負極を用いて形成される。
本発明の二次電池は、前記負極を用いること以外は特に限定されず、他の電池構成要素については、一般的な二次電池の要素に準じる。すなわち、電解液、負極および正極を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。そして負極および正極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には負極からリチウムイオンが離脱する。
本発明の二次電池に使用される正極は、例えば正極材料と結合剤および導電材よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布することにより形成される。正極の材料(正極活物質)としては、リチウム化合物が用いられるが、充分な量のリチウムを吸蔵/脱離し得るものを選択するのが好ましい。例えば、リチウ含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物、その他のリチウム化合物、化学式MXMo6OS8−Y(式中Xは0≦X≦4、Yは0≦Y≦1の範囲の数値であり、Mは少なくとも一種の遷移金属元素である)で表されるシュブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維等を用いることができる。前記バナジウム酸化物はV2O5、V6O13、V2O4、V3O8等である。
M1、M2で示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Sn等であり、好ましいのはCo、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Al等である。好ましい具体例は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.9 Co0.1O2、LiNi0.5Co0.5O2等である。
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を所望の金属酸化物の組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
正極は、例えば、前記リチウム化合物、結合剤、および正極に導電性を付与するための導電材よりなる正極合剤を、集電体の片面または両面に塗布して正極合剤層を形成して作製される。結合剤としては、負極の作製に使用されるものと同じものが使用可能である。導電材としては、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が使用される。
集電体の形状は特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが好ましい。集電体の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。その厚さは、箔状の場合、10〜40μmが好適である。
本発明の二次電池に用いる非水電解質(電解液)は、通常の非水電解液に使用される電解質塩である。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF2OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN[(CF3)2CHOSO2]2、LiB[C6H3(CF3)2]4、LiAlCl4、LiSiF5等のリチウム塩を用いることができる。特にLiPF6、LiBF4が酸化安定性の点から好ましい。
電解液の電解質塩濃度は0.1〜5mol/lが好ましく、0.5〜3.0mol/l がより好ましい。
非水電解質液を構成する溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート、1,1−または1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテル等のエーテル、スルホラン、メチルスルホラン等のチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−2−オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイト等の非プロトン性有機溶媒等を用いることができる。
高分子固体電解質中の非水溶媒(可塑剤)の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。10質量%未満であると導電率が低くなり、90質量%を超えると機械的強度が弱くなり、製膜しにくくなる。
セパレータの材質は特に限定されるものではないが、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜等が挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
さらに、負極と正極の外側に非水電解質を配するようにしてもよい。
高分子電解質電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
実施例および比較例においては、図1に示すような構成の評価用のボタン型二次電池を作製して評価した。該電池は、本発明の目的に基づき、公知の方法に準拠して作製することができる。
[メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製]
コールタールピッチを不活性雰囲気中450℃で90分間加熱処理し、メソフェーズ小球体をピッチマトリックス中に35質量%生成させた。その後、タール中油を用いて、メソフェーズ小球体を溶解抽出し、濾過によって分離し、窒素雰囲気中120℃で乾燥した。これを窒素雰囲気中600℃で3時間加熱処理して、メソフェーズ小球体焼成物を調製した。次いで、該焼成物を塩化第一鉄水溶液に浸漬した後、攪拌しながら水を除去し乾燥してメソフェーズ小球体焼成物の表面に塩化第一鉄を5質量%付着させた。
塩化第一鉄が付着したメソフェーズ小球体焼成物を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下3150℃で5時間かけて加熱し黒鉛化処理を行い、メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)を調製した。該黒鉛化物(A)には鉄化合物は含有されていなかった。
該黒鉛化物(A)の形状は表面に細かい凹凸を有するものの球状に近く、平均アスペクト比は1.1であった。平均粒子径は32μm、平均格子面間隔d002は0.3357nm、比表面積は2.9m2/gであった。
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均アスペクト比1.4、平均粒子径20μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、比表面積5.0m2/g)を準備した。
前記メソフェーズ小球体焼成物(600℃で3時間加熱処理)を渦流式粉砕機で粉砕した。粉砕生成物を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3150℃で5時間かけて黒鉛化した。次いで、得られた黒鉛化物100質量部に、酸化チタン粉末(平均粒子径21nm)0.5質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)は、粒子の角が取れた塊状であり、表面に酸化チタン粉末が均一に埋設されていた。該非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)の平均アスペクト比は1.3、平均粒子径は13μm、平均格子面間隔d002は0.3359nm、比表面積は3.5m2/gであった。
前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)40質量部、球状化または楕円体状化天然黒鉛粒子(B)40質量部および非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)20質量部を混合し、負極材料を調製した。
前記負極材料98質量部、結合剤カルボキシメチルセルロース1質量部およびスチレンブタジエンゴム1質量部を水に入れ、攪拌して負極合剤ペーストを調製した。
前記負極合剤ペーストを、厚さ16μmの銅箔上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中90℃で分散媒の水を蒸発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をハンドプレスによって12kN/cm2(120MPa)で加圧し、さらに直径15.5mmの円形状に打抜くことで、銅箔に密着した負極合剤層(厚み60μm)を有する作用電極を作製した。負極合剤層の密度は1.75g/cm3であった。作用電極には伸び、変形がなく、断面から見た集電体に凹みがなかった。
リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電体と、該集電体に密着したリチウム金属箔(厚さ0.5mm)からなる対極(正極)を作製した。
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、LiPF6 を1mol/lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚さ20μm)に含浸させ、電解液が含浸されたセパレータを作製した。
評価電池として図1に示すボタン型二次電池を作製した。
外装カップ1と外装缶3は、その周縁部において絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。その内部に外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円筒状の対極(正極)4、電解液が含浸したセパレータ5、負極合剤からなる円盤状の作用電極(負極)2および銅箔からなる集電体7bが積層された電池である。
評価電池は、電解液が含浸したセパレータ5を、集電体7bに密着した作用電極2と、集電材7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、作用電極2を外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉して作製した。
評価電池は、実電池において、負極活物質として使用可能な黒鉛質物粒子を含有する作用電極2と、リチウム金属箔とからなる対極4とから構成される電池である。
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から質量当たりの充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から質量当たりの放電容量を求めた。これを第1サイクルとした。第1サイクルにおける充電容量と放電容量から、次式(1)により初期充放電効率を計算した。
初期充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100 (1)
なおこの試験では、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料から離脱する過程を放電とした。
第1サイクルに引続き、第2サイクルにて急速充電を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで、電流値を第1サイクルの5倍の4.5mAとして、定電流充電を行い、定電流充電容量を求め、次式(2)から急速充電率を計算した。
急速充電率(%)=(第2サイクルにおける定電流充電容量/第1サイクルにおける
放電容量)×100 (2)
別の評価電池を用い、第1サイクルに引続き、第2サイクルにて急速放電を行なった。前記同様に、第1サイクルを行った後、第1サイクルと同様に充電し、次いで、電流値
を第1サイクルの20倍の18mAとして、回路電圧が1.5Vに達するまで、定電流放電を行った。この間の通電量から質量当たりの放電容量を求め、次式(3)により急速放電率を計算した。
急速放電率(%)=(第2サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電容
量)×100 (3)
質量当たりの放電容量、急速充電率、急速放電率を評価した評価電池とは別の評価電池を作製し、以下のような評価を行なった。
回路電圧が0mVに達するまで4.0mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分間休止した。次に4.0mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。20回充放電を繰返し、得られた質量当たりの放電容量から、次式(4)を用いてサイクル特性を計算した。
サイクル特性(%)=(第20サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける
放電容量)×100 (4)
実施例1において、メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、造粒加工された天然黒鉛粒子(B)および非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)の質量割合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
本発明の規定する質量割合に入る負極材料によって作用電極を作製した場合、負極合剤層の密度を高くすることができ、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のいずれもが優れていた。
実施例1で用いたメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、負極材料としてメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)を単独で用いた場合には、急速充電率、サイクル特性が不十分であった。
実施例1で用いた造粒加工された天然黒鉛粒子(B)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、負極材料として造粒加工された天然黒鉛粒子(B)を単独で用いた場合には、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が不十分であった。
実施例1で用いた非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)を単独で負極材料とした以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、負極材料として非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)を単独で用いた場合には、負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整する際に高いプレス圧力を必要とし、集電体である銅箔が伸び、活物質層の一部が剥離した。非剥離部について充放電試験を行ったところ、初期充放電効率、急速充電率、サイクル特性が不十分であった。
実施例1において、メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、造粒加工された天然黒鉛粒子(B)および非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)の質量割合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、本発明の規定する質量割合を逸脱した負極材料によって作用電極を作製した場合、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のうちのいずれかが不十分であった。
[球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)の調製]
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比1.4、比表面積5.0m2/g)100質量部に、軟化点150℃のメソフェーズピッチ粉末(平均粒子径2μm)3質量部およびケッチェンブラック(平均粒子径30nm)0.1質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られたメソフェーズピッチ被覆天然黒鉛を、黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、1200℃で3時間かけて焼成を行った。得られたメソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)の平均アスペクト比は1.4、平均粒子径は20μm、平均格子面間隔d002は0.3358nm、比表面積は3.5m2/gであった。
表1に示すように、メソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
実施例6のメソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)を、黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3000℃で5時間かけて黒鉛化を行い、メソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)を調製した。得られたメソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)の平均アスペクト比は1.4、平均粒子径は20μm、平均格子面間隔d002は0.3356nm、比表面積は2.7m2/gであった。
実施例1の球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(B)を、該メソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、メソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[造粒型黒鉛(C2)の調製]
コークス粒子(平均粒子径5μm)80質量部とコールタールピッチ20質量部を、二軸ニーダーを用いて、200℃で1時間混練した。混練生成物を200℃で箱型に成形した後、非酸化性雰囲気下、600℃で3時間焼成した。焼成生成物を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3150℃で5時間かけて黒鉛化を行った。得られた黒鉛化物を摩砕式粉砕機で粉砕し、造粒型黒鉛(C2)を調製した。平均粒子径は15μm、平均アスペクト比は1.7、平均格子面間隔d002は0.3358nm、比表面積は3.2m2/gであった。
実施例1の非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)を、該造粒型黒鉛(C2)に変更し、実施例1の球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(B)を、実施例6で調製したメソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)に変更した以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、造粒型黒鉛(C2)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
実施例6〜8において用いた、メソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)、メソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)および造粒型黒鉛(C2)をそれぞれ単独で用いた以外は、実施例1と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、メソフェーズピッチ炭化物被覆天然黒鉛(B1)、メソフェーズピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)および造粒型黒鉛(C2)をそれぞれ単独で用いた場合には、高密度において黒鉛が配向し、特に、急速放電率、サイクル特性が不十分であった。
実施例1のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製において、コールタールピッチの不活性雰囲気中450℃での熱処理時間を30分と短くする以外は、実施例1と同様にして小球体黒鉛化物(A)を調製した。得られたメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の形状は表面に細かい凹凸を有するものの球状に近く、平均アスペクト比は1.1、平均粒子径は15μm、平均格子面間隔d002は0.3360nm、比表面積は3.9m2/gであった。
実施例1の天然黒鉛粒子(B)の調製において、球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均アスペクト比1.3、平均粒子径12μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、比表面積6.5m2/g)を準備した。
実施例1において、これらの成分を用いる以外、実施例1と同様にして、負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、本発明の規定する質量割合からなる負極材料によって作用電極を作製した場合、活物質層の密度を高くすることができ、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のいずれもが優れる。
実施例1のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製において、コールタールピッチの不活性雰囲気中450℃での熱処理時間を110分と長くする以外は、実施例1と同様にして小球体黒鉛化物(A)を調製した。得られたメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の形状は表面に細かい凹凸を有するものの球状に近く、平均アスペクト比は1.1、平均粒子径は36μm、平均格子面間隔d002は0.3356nm、比表面積は2.3m2/gであった。
実施例1の球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)の調製において、球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均アスペクト比1.8、平均粒子径28μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、比表面積3.5m2/g)を準備した。
実施例1において、これらの成分を用いる以外、実施例1と同様にして、負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、本発明の規定する質量割合からなる負極材料によって作用電極を作製した場合、活物質層の密度を高くすることができ、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のいずれもが優れる。
実施例1のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製において、コールタールピッチの不活性雰囲気中450℃での熱処理時間を調整して、表1に示すような平均粒子径のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)を実施例1と同様にして調製した。
実施例1の天然黒鉛粒子(B)についても、表1に示すような球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子を準備した。
実施例1の非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)の調製において、メソフェーズ小球体焼成物を渦流式粉砕機を用いて粉砕条件を操作し、表1に示すような平均粒子径のコールタールピッチの不活性雰囲気中450℃での熱処理時間を調整して、表1に示すような平均粒子径の非造粒型メソフェーズ小球体黒鉛(C1)を調製した。
実施例1において、これらの成分を用いる以外、実施例1と同様にして、負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、本発明の規定する平均粒子径から逸脱した負極材料によって作用電極を作製した場合、放電容量、初期充放電効率、急速充電率、急速放電率、サイクル特性のいずれかが劣化している。
[球状化または楕円体状化天然黒鉛(B2)の調製]
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比1.4、比表面積5.0m2/g)100質量部を、揮発分含有量約40質量%のコールタールピッチ25質量部をタール中油75質量部に溶解した溶液100質量部に浸漬し、150℃、圧力5mmHg以下で攪拌を続け、溶媒であるタール中油を除去乾燥した。得られたピッチ含浸天然黒鉛粒子を非酸化性雰囲気下、450℃で30時間熱処理し、炭素質材料と天然黒鉛粒子の複合体を得た。
該複合体100質量部と、気相成長炭素繊維の黒鉛化物(直径150nm、平均アスペクト比約50)2質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた炭素繊維の黒鉛化物付着複合体を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3000℃で5時間かけて黒鉛化を行った。得られたピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛粒子(B2)は、その表面に炭素繊維の黒鉛化物が付着しており、平均アスペクト比は1.4、平均粒子径は20μm、平均格子面間隔d002は0.3357nm、比表面積は1.7m2/gであった。
表1に示すように、炭素繊維の黒鉛化物付着ピッチ黒鉛化物被覆天然黒鉛(B2)用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)の調製]
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比1.4、比表面積5.0m2/g)90質量部を、残炭率40質量%のフェノール樹脂25質量部、エチレングリコール500質量部およびヘキサメチレンテトラミン2.5質量部からなる混合溶液に浸漬し、150℃で30分間攪拌した。次いで、150℃、5mmHg以下で攪拌を続け、溶媒であるエチレングリコールを除去乾燥した。得られた樹脂含浸天然黒鉛粒子を空気中で、270℃まで5時間かけて昇温し、さらに270℃で2時間保持し、加熱した。僅かな融着物を解砕した後、窒素雰囲気中1250℃で炭化処理を行った。得られた樹脂炭化物被覆天然黒鉛粒子(B1)の平均アスペクト比は1.4、平均粒子径は20μm、平均格子面間隔d002は0.3359nm、比表面積は3.9m2/gであった。
表1に示すように、樹脂炭化物被覆天然黒鉛粒子(B1)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)の調製]
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径20μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比1.4、比表面積5.0m2/g)100質量部に、軟化点150℃のメソフェーズピッチ粉末(平均粒子径2μm)1.5質量部、および、気相成長炭素繊維の黒鉛化物(直径150nm、平均アスペクト比約50)0.5質量部を混合し、「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られた炭素繊維の黒鉛化物付着複合体を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、1200℃で3時間かけて焼成を行った。得られたピッチ炭化物被覆天然黒鉛粒子(B1)は、その表面に炭素繊維の黒鉛化物が付着しており、平均アスペクト比は1.4、平均粒子径は20μm、平均格子面間隔d002は0.3356nm、比表面積は4.4m2/gであった。
表1に示すように、樹脂炭化物被覆天然黒鉛粒子(B1)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[非造粒型黒鉛(C1)の調製]
揮発分含有量約40質量%のコールタールピッチを鋼鉄製容器に充填し、非酸化性雰囲気下、20時間かけて480℃で焼成した。得られたバルクメソフェーズを鋼鉄製容器から取出し、摩砕式粉砕機で粉砕した。粉砕生成物を「メカノフュージョンシステム」(ホソカワミクロン(株)製)に投入し、回転ドラムの周速20m/秒、処理時間60分、回転ドラムと内部部材との距離5mmの条件で、圧縮力、剪断力を繰返し付与し、メカノケミカル処理を行った。得られたバルクメソフェーズ粒子を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3000℃で5時間かけて黒鉛化を行った。得られた非造粒型バルクメソフェーズ黒鉛粒子(C1)は、粒子の角が取れた塊状であった。平均アスペクト比は1.5、平均粒子径は10μm、平均格子面間隔d002は0.3360nm、比表面積は2.0m2/gであった。
表1に示すように、バルクメソフェーズ黒鉛粒子(C1)を用いて負極材料を作製した場合でも、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[造粒型黒鉛(C2)の調製]
ほぼ球状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径5μm)70質量部とコールタールピッチ30質量部を、二軸ニーダーを用いて、200℃で1時間混練した。混練生成物を非酸化性雰囲気下、500℃で3時間焼成した。焼成生成物を摩砕式粉砕機で粉砕して、塊状造粒焼成物(平均粒子径13μm)を得た。該塊状造粒焼成物を黒鉛るつぼに充填し、非酸化性雰囲気下、3150℃で5時間かけて黒鉛化を行った。得られた造粒型黒鉛(C2)は葡萄型の塊状であった。平均アスペクト比は1.5、平均粒子径は17μm、平均格子面間隔d002は0.3358nm、比表面積は2.8m2/gであった。
表1に示すように、ほぼ球状に造粒加工された天然黒鉛(C2)を用いて負極材料を作製した場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
[メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製]
実施例1のメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の調製において、メソフェーズ小球体焼成物に塩化第一鉄を付着させないほかは、実施例1と同様にメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)を調製した。得られた該黒鉛化物(A)は、表面が平滑で球状に近く、平均アスペクト比は1.1、平均粒子径は32μm、平均格子面間隔d002は0.3359nm、比表面積は0.5m2/gであった。
球状〜楕円体状に造粒加工された天然黒鉛粒子(平均粒子径25μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比1.6、比表面積3.9m2/g)を準備した。
実施例1のメソフェーズ小球体黒鉛化物(粉砕生成物)に酸化チタン粉末を配合するメカノケミカル処理を施さずに該黒鉛化物をそのまま非造粒型黒鉛(C1)として用いた。該非造粒型黒鉛(C1)は塊状であり、平均アスペクト比は1.5、平均粒子径は14μm、平均格子面間隔d002は0.3359nm、比表面積は0.9m2/gであった。
前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)40質量部、球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)40質量部および非造粒型黒鉛(C1)20質量部を混合し、負極材料を調製した。
前記負極材料95質量部、結合剤ポリフッ化ビニリデン5質量部をN−メチルピロリドンに入れ、攪拌して負極合剤ペーストを調製した。
表1に示すように、メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)40質量部、球状化または楕円体状化天然黒鉛(B1)40質量部および非造粒型黒鉛(C1)20質量部を混合してなる負極材料を用いた場合、活物質層の密度が高く、高い質量当たりの放電容量を有する。このため、体積当たりの放電容量が大幅に向上する。また、高い密度においても、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が優れる。
実施例8において、造粒型黒鉛(C2)に代えて、鱗片状天然黒鉛(平均粒子径8μm、平均格子面間隔d0020.3356nm、平均アスペクト比5.2、比表面積7.6m2/g)を用いた。実施例8と同様にして負極合剤層の密度を1.75g/cm3に調整して作用電極を作製し、評価電池を作製した。実施例1と同様の充放電試験を行い、電池特性の評価結果を表1に示した。
表1に示すように、造粒型黒鉛(C2)を配合せず、鱗片状天然黒鉛を配合して負極材料を作製した場合、高い密度に、急速充電率、急速放電率、サイクル特性が低下する。
2 作用電極(負極)
3 外装缶
4 対極(正極)
5 セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a、7b集電体
Claims (6)
- 平均粒子径が10〜40μm、平均アスペクト比が1.3未満であるメソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、
平均粒子径が5〜35μmで、かつ、前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満である球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)、および、
平均粒子径が2〜25μmで、かつ、前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の平均粒子径よりも小さく、平均アスペクト比が2.0未満である黒鉛(C)
の混合物であり、前記混合物中の前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)、前記球状化または楕円体状化天然黒鉛(B)および前記黒鉛(C)の質量割合が下記式(1)および式(2)を満足することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
a:b=(10〜70):(90〜30) (1)
(a+b):c=(60〜95):(40〜5) (2)
ここで、aは前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)の割合、bは前記球状化または楕円体状化された天然黒鉛(B)の割合、cは前記黒鉛(C)の割合を示す。 - 前記メソフェーズ小球体黒鉛化物(A)が球状であり、前記黒鉛(C)が球状、楕円体状または塊状であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記球状化または楕円体状化された天然黒鉛(B)の表面の少なくとも一部に、炭素質材料または黒鉛質材料が付着してなることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記黒鉛(C)が、造粒型黒鉛および/または非造粒型黒鉛であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の負極材料を活物質として用い、該活物質層の密度が1.7g/cm3以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池負極。
- 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池負極を有するリチウムイオン二次電池。
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