JP2013068694A - 光走査装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高コスト化及び大型化を招くことなく、ゴースト光の発生を安定的に抑制することができる光走査装置を提供する。
【解決手段】 2つの光源ユニット、2つのシリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光調整素子(211、212)、2つの偏光分離素子(161、162)、2つの反射ミラー(171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び走査制御装置などを有している。各偏光調整素子は、走査レンズから射出された2つの光束の偏光状態を、後段の偏光分離素子にて偏光分離しやすい状態に変換する。
【選択図】図3
【解決手段】 2つの光源ユニット、2つのシリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光調整素子(211、212)、2つの偏光分離素子(161、162)、2つの反射ミラー(171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び走査制御装置などを有している。各偏光調整素子は、走査レンズから射出された2つの光束の偏光状態を、後段の偏光分離素子にて偏光分離しやすい状態に変換する。
【選択図】図3
Description
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、光により被走査面を走査する光走査装置及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この画像形成装置は、感光性を有するドラム(以下では、「感光体ドラム」ともいう)、及び該感光体ドラムの表面に潜像を形成する光走査装置などを備えている。光走査装置は、レーザ光を射出する光源、該光源から射出されたレーザ光を偏向する光偏向器(例えば、ポリゴンミラー)、及び光偏向器で偏向されたレーザ光を感光体ドラムの表面に集光する走査光学系などを有している。
近年、画像形成装置において、カラー化、高速化が進み、感光性を有するドラムを複数(通常は4つ)有するタンデム方式の画像形成装置が普及してきている。
タンデム方式の画像形成装置は、感光体ドラムの数の増加に伴って大型化する傾向にあり、光走査装置を含め小型化が求められている。光走査装置の小型化には、光偏向器から各感光体ドラムに向かう複数のレーザ光の光路を重ね合わせることが有効である。
例えば、特許文献1には、互いに直角を成す方向に直線偏光され、記録すべき信号によって輝度変調されたレーザ光を放射する2つのレーザ光源と、これらレーザ光源から放射される2つのレーザ光を合成する偏光光合成手段と、この合成されたレーザ光を主走査方向に偏向する偏向手段と、この偏向手段により偏向された合成レーザ光を走査記録面で別々のスポットに分離する偏光光分離手段とを具える記録装置が開示されている。
また、特許文献2には、単一のレーザ光源と、光源からのレーザ光の2つの偏光光にそれぞれ異なる情報を与える情報制御手段と、情報制御手段からの情報に基づいて偏光量を制御する偏光制御手段と、偏光制御された光を所定の照射面に走査照射するための走査手段と、走査された光を偏光状態に応じて2つの光に分光する分離手段と、走査手段からの光を分離手段に入射する入射角に応じてレーザ光を旋光制御する旋光制御手段とを有する光走査装置が開示されている。
また、特許文献3には、第1の偏光方向を有する第1の光と第2の偏光方向を有する第2の光を分離する偏光分離デバイスを備える光走査装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示されている装置では、高コスト化及び大型化を招くことなく、ゴースト光の発生を安定的に抑制することは困難であった。
本発明は、複数の被走査面を個別に光によって第1の方向に沿って走査する光走査装置であって、互いに偏光状態が異なる第1の光束と第2の光束を射出する光源ユニットと、前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な軸まわりに回転し、前記光源ユニットからの前記第1の光束及び前記第2の光束を偏向する光偏向器と、前記光偏向器で偏向された前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された結像光学素子と、該結像光学素子を介した前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された偏光調整素子と、該偏光調整素子から射出された前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された偏光分離素子とを備え、前記偏光調整素子は、前記結像光学素子を通過する際に偏光状態が変化した前記第1の光束及び前記第2の光束に対して、前記偏光分離素子で前記第1の光束と前記第2の光束とが分離されるように前記偏光状態の変化を補正する光走査装置である。
本発明の光走査装置によれば、高コスト化及び大型化を招くことなく、ゴースト光の発生を安定的に抑制することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図38に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
この光走査装置2010は、一例として図2及び図3に示されるように、2つの光源ユニット(LU1、LU2)、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光調整素子(211、212)、2つの偏光分離素子(161、162)、2つの反射ミラー(171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び不図示の走査制御装置などを有している。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源ユニットLU1は、一例として図4に示されるように、2つの光源(10a1、10b1)、2つのコリメートレンズ(11a、11b)、及び光合成素子131などを有している。
光源10a1は、該光源10a1を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10a2とともに回路基板10a3に実装されている。光源10b1は、該光源10b1を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10b2とともに回路基板10b3に実装されている。
光源10a1は、一例として図5に示されるように、1つの半導体レーザ101aを含んでいる。該半導体レーザ101aは、偏光方向がZ軸方向に平行な直線偏光が射出されるように設置されている。なお、以下では、便宜上、偏光方向がZ軸方向に平行な直線偏光を「縦偏光」という。そして、半導体レーザ101aから射出された縦偏光を光束LBaと表記する。
ところで、半導体レーザ101aの設置角度を調整する代わりに、半導体レーザ101aと光合成素子131との間に、半導体レーザ101aから射出された光束の偏光方向を縦偏光の方向にするための1/2波長板等の光学素子を配置しても良い。
光源10b1は、一例として図6に示されるように、1つの半導体レーザ101bを含んでいる。該半導体レーザ101bは、偏光方向がZ軸に直交する直線偏光が射出されるように設置されている。なお、以下では、便宜上、偏光方向がZ軸に直交する直線偏光を「横偏光」という。そして、半導体レーザ101bから射出された横偏光を光束LBbと表記する。
ところで、半導体レーザ101bの設置角度を調整する代わりに、半導体レーザ101bと光合成素子131との間に、半導体レーザ101bから射出された光束の偏光方向を横偏光の方向にするための1/2波長板等の光学素子を配置しても良い。
図4に戻り、コリメートレンズ11aは、光源10a1からの光束LBaの光路上に配置され、該光束LBaを略平行光とする。
コリメートレンズ11bは、光源10b1からの光束LBbの光路上に配置され、該光束LBbを略平行光とする。
光合成素子131は、コリメートレンズ11aを介した光束LBa及びコリメートレンズ11bを介した光束LBbの光路上に配置されている。この光合成素子131は、縦偏光を反射し、横偏光を透過させる面を有しており、光束LBaの主光線と光束LBbの主光線がZ軸方向に関して重なるように、光束LBaと光束LBbを合成する。光合成素子131から射出される光束LBaと光束LBbが、光源ユニットLU1から射出される。
光源ユニットLU2は、一例として図7に示されるように、2つの光源(10c1、10d1)、2つのコリメートレンズ(11c、11d)、及び光合成素子132などを有している。
光源10c1は、該光源10c1を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10c2とともに回路基板10c3に実装されている。光源10d1は、該光源10d1を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ10d2とともに回路基板10d3に実装されている。
光源10c1は、一例として図8に示されるように、1つの半導体レーザ101cを含んでいる。該半導体レーザ101cは、横偏光が射出されるように設置されている。なお、半導体レーザ101cから射出された横偏光を光束LBcと表記する。
ところで、半導体レーザ101cの設置角度を調整する代わりに、半導体レーザ101cと光合成素子132との間に、半導体レーザ101cから射出された光束の偏光方向を横偏光の方向にするための1/2波長板等の光学素子を配置しても良い。
光源10d1は、一例として図9に示されるように、1つの半導体レーザ101dを含んでいる。該半導体レーザ101dは、縦偏光が射出されるように設置されている。なお、半導体レーザ101dから射出された縦偏光を光束LBdと表記する。
ところで、半導体レーザ101dの設置角度を調整する代わりに、半導体レーザ101dと光合成素子132との間に、半導体レーザ101dから射出された光束の偏光方向を縦偏光の方向にするための1/2波長板等の光学素子を配置しても良い。
図7に戻り、コリメートレンズ11cは、光源10c1からの光束LBcの光路上に配置され、該光束LBcを略平行光とする。
コリメートレンズ11dは、光源10d1からの光束LBdの光路上に配置され、該光束LBdを略平行光とする。
光合成素子132は、コリメートレンズ11cを介した光束LBc及びコリメートレンズ11dを介した光束LBdの光路上に配置されている。この光合成素子132は、縦偏光を反射し、横偏光を透過させる面を有しており、光束LBcの主光線と光束LBdの主光線がZ軸方向に関して重なるように、光束LBcと光束LBdを合成する。光合成素子132から射出される光束LBcと光束LBdが、光源ユニットLU2から射出される。
図2に戻り、シリンドリカルレンズ121は、光源ユニットLU1から射出された光束LBa及び光束LBbを、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ122は、光源ユニットLU2から射出された光束LBc及び光束LBdを、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
ポリゴンミラー14は、一例として4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー14は、Z軸方向に平行な軸まわりに等速回転し、シリンドリカルレンズ121からの光束LBa及び光束LBb、シリンドリカルレンズ122からの光束LBc及び光束LBdを、Z軸に直交する平面内で等角速度的に偏向する。
光束LBa及び光束LBbはポリゴンミラー14の−X側に偏向され、光束LBc及び光束LBdはポリゴンミラー14の+X側に偏向される。
なお、ポリゴンミラー14の偏向反射面で偏向された光束が経時的に形成する光線束面は、「偏向面」と呼ばれている(特開平11−202252号公報参照)。ここでは、偏向面はXY面に平行である。
図4に戻り、走査レンズ151は、ポリゴンミラー14の−X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
偏光調整素子211は、走査レンズ151の−X側であって、走査レンズ151を介した光束の光路上に配置されている。偏光調整素子211は、走査レンズ151から射出された光束(光束LBaと光束LBb)の偏光状態を、後段の偏光分離素子161にて偏光分離しやすい状態に変換する。
偏光分離素子161は、偏光調整素子211の−X側であって、偏光調整素子211から射出された光束の光路上に配置されている。そして、図10に示されるように、光束LBaを透過させ、光束LBbを−Z方向に反射することで、光束LBaと光束LBbを分離する。
偏光分離素子161を透過した光束(ここでは、光束LBa)は、折り返しミラー18aと防塵ガラス19aを介して感光体ドラム2030aの表面に照射される。
一方、偏光分離素子161で−Z方向に反射された光束(ここでは、光束LBb)は、反射ミラー171で+X方向に反射された後、折り返しミラー18bと防塵ガラス19bを介して感光体ドラム2030bの表面に照射される。
走査レンズ152は、ポリゴンミラー14の+X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
偏光調整素子212は、走査レンズ152の+X側であって、走査レンズ152を介した光束の光路上に配置されている。偏光調整素子212は、走査レンズ152から射出された光束(光束LBcと光束LBd)の偏光状態を、後段の偏光分離素子162にて偏光分離しやすい状態に変換する。
偏光分離素子162は、偏光調整素子212の+X側であって、偏光調整素子212から射出された光束の光路上に配置されている。そして、図11に示されるように、光束LBdを透過させ、光束LBcを−Z方向に反射することで、光束LBcと光束LBdを分離する。
偏光分離素子162で−Z方向に反射された光束(ここでは、光束LBc)は、反射ミラー172で−X方向に反射された後、折り返しミラー18cと防塵ガラス19cを介して感光体ドラム2030cの表面に照射される。
一方、偏光分離素子162を透過した光束(ここでは、光束LBd)は、折り返しミラー18dと防塵ガラス19dを介して感光体ドラム2030dの表面に照射される。
走査レンズ151と偏光調整素子211と偏光分離素子161と折り返しミラー18aは、「Kステーション」の走査光学系である。走査レンズ151と偏光調整素子211と偏光分離素子161と反射ミラー171と折り返しミラー18bは、「Cステーション」の走査光学系である。すなわち、走査レンズ151と偏光調整素子211と偏光分離素子161は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
走査レンズ152と偏光調整素子212と偏光分離素子162と反射ミラー172と折り返しミラー18cは、「Mステーション」の走査光学系である。走査レンズ152と偏光調整素子212と偏光分離素子162と折り返しミラー18dと防塵ガラス19dは、「Yステーション」の走査光学系である。すなわち、走査レンズ152と偏光調整素子212と偏光分離素子162は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
また、各折り返しミラーは、各画像形成ステーションでの光路長が互いに等しくなるように設けられている。
各感光体ドラム上の光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラムの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が「副走査方向」である。
ところで、各感光体ドラムにおける画像情報が書き込まれる主走査方向の走査領域は「有効走査領域」、「画像形成領域」、あるいは「有効画像領域」などと呼ばれている。
走査制御装置は、ブラック画像情報に応じて光源10a1を駆動し、シアン画像情報に応じて光源10b1を駆動し、マゼンタ画像情報に応じて光源10c1を駆動し、イエロー画像情報に応じて光源10d1を駆動する。
そこで、感光体ドラム2030aの表面を照射する光束LBa、感光体ドラム2030bの表面を照射する光束LBb、感光体ドラム2030cの表面を照射する光束LBc、感光体ドラム2030dの表面を照射する光束LBdは、書き込み用の光束である。
一方、感光体ドラム2030aの表面を照射する光束LBb、感光体ドラム2030bの表面を照射する光束LBa、感光体ドラム2030cの表面を照射する光束LBd、感光体ドラム2030dの表面を照射する光束LBcは、ゴースト光である。
本実施形態では、各走査レンズとして樹脂レンズが用いられる。樹脂レンズは、ガラスレンズに比べて、非球面形状への加工が容易で、所望の光学性能が得られやすく、更に安価に製造することができる。
但し、樹脂レンズは、複屈折を生じやすいという不都合がある。この場合、複屈折によって入射光の偏光状態が変化し、例えば直線偏光から楕円偏光に変化したり、偏光方向が回転したりする現象が生じる。
そして、走査レンズの後段に偏光分離素子が設けられている場合に、走査レンズで上記入射光の偏光状態が変化すると、偏光分離素子で所望の偏光分離を行うことができなくなる。
そこで、本実施形態では、走査レンズと偏光分離素子との間に偏光調整素子を設けている。
《偏光調整素子の設定1》
ここで、一例として図12及び図13に示されるように、ポリゴンミラー14の回転軸に平行で、偏光分離素子の入射側の面における光の入射位置の法線を含む平面を平面Sと表記する。また、Z軸方向からみたときの、偏光分離素子に入射する光(走査光)と平面Sとのなす角を偏向角Φとする。
ここで、一例として図12及び図13に示されるように、ポリゴンミラー14の回転軸に平行で、偏光分離素子の入射側の面における光の入射位置の法線を含む平面を平面Sと表記する。また、Z軸方向からみたときの、偏光分離素子に入射する光(走査光)と平面Sとのなす角を偏向角Φとする。
偏光調整素子の設定1では、偏光度(Pとする)について検討する。偏光度Pの値は、光が直線偏光の場合に1であり、円偏光の場合に0であり、楕円偏光の場合に次の(1)式で示される。Iaは長軸方向の光強度であり、Ibは短軸方向の光強度である。なお、直線偏光では、短軸方向の光強度Ibが0であるということができる。
P=(Ia−Ib)/(Ia+Ib) ……(1)
そして、走査光の走査レンズに入射する時点での偏光度をP0(Φ)、走査レンズから射出され偏光調整素子に入射する時点での偏光度をP1(Φ)、及び偏光調整素子から射出され偏光分離素子に入射する時点での偏光度をP2(Φ)とする。また、偏光度P0(Φ)と偏光度P1(Φ)の差が最大となる偏向角をΦMと表記する。
ここでは、偏光調整素子211は、光束LBa及び光束LBbの少なくとも一方について、次の(2)式が満足されるように設定されている。
|P0(ΦM)−P1(ΦM)|>|P0(ΦM)−P2(ΦM)| ……(2)
また、偏光調整素子212は、光束LBc及び光束LBdの少なくとも一方についても、上記(2)式が満足されるように設定されている。
ここでの各偏光調整素子の機能は、偏光度P0(Φ)から偏光度P1(Φ)に変化した偏光度を、偏光分離素子に入射する時点で、より偏光度P0(Φ)に近づけることに他ならない。
本実施形態では、偏向角φに応じて、走査レンズにおける光が透過する位置が異なっている。そして、走査レンズでの複屈折の程度は、走査レンズの場所によって異なるため、偏光度P1(Φ)は、偏向角φによりその値が変化する。
図14には、偏光度P0(Φ)、偏光度P1(Φ)、及び偏光度P2(Φ)の具体例が示されている。ここでは、走査光は縦偏光である。なお、走査光が横偏光の場合も同じように考察することができる。
図14では、走査光の進行方向に直交する面をyz面とし、z軸方向をZ軸方向と同方向と一致させ、y軸方向を主走査対応方向と一致させたローカルな座標系を用いている。そして、以下では、直線偏光の偏光方向及び楕円偏光の長軸方向は、このローカル座標系において、+z軸方向から時計回りの方向を正方向とする。
図14では、偏光度P0(Φ)の偏光状態は、縦偏光から大きな変化はない。但し、コリメートレンズやシリンドリカルレンズの形状、材質等により、楕円偏光化する可能性もある。以下では、断りがない限り、有効走査領域内に向かう光束の偏向角Φについて、P0(Φ)=1とする。
偏光度P1(Φ)は、走査レンズでの複屈折により、P0(Φ)と異なる可能性が高い。その程度は、走査レンズの材質、形状はもとより、偏向角Φによっても異なる。
偏光調整素子は、偏光度P1(Φ)で入射する光束を、偏光度P2(Φ)に調整(変換)して射出する。偏光調整素子は、射出される偏光の長軸方向の決め方によって2つのタイプ(タイプA、タイプB)に分けることができ、それぞれ後段の偏光分離素子に応じて適切なタイプが選択される。
タイプAは、図15(A)及び図15(B)に示されるように、走査レンズから射出され偏光度がP1(Φ)に変化した光を、偏光度がP2(Φ)になるように調整しながら、偏光の長軸方向を走査レンズに入射する直前の方向にそろえるように機能する偏光調整素子である。図15(A)には、走査レンズに入射する光が縦偏光の場合が示され、図15(B)には、走査レンズに入射する光が横偏光の場合が示されている。
タイプBは、図16(A)及び図16(B)に示されるように、走査レンズから射出され偏光度がP1(Φ)に変化した光を、偏光度がP2(Φ)になるように調整しながら、偏光の長軸方向を偏向角に応じて変化させるように機能する偏光調整素子である。図16(A)には、走査レンズに入射する光が縦偏光の場合が示され、図16(B)には、走査レンズに入射する光が横偏光の場合が示されている。
図17には、偏光度P0(Φ)及び偏光度P1(Φ)の測定結果の一例が示されている。ここでは、走査レンズは、シクロオレフィンポリマーが成型された樹脂レンズであり、光源から射出される光束の波長は655nmである。これらの測定条件は、以降の測定でも同じである。偏光度P0(Φ)と偏光度P1(Φ)の差が最大となる偏向角ΦMは、−25.9°であった。このとき、偏光度P0(ΦM)=0.9997、偏光度P1(ΦM)=0.9978であった。
図18には、図17において、タイプAの偏光調整素子を用いたときの、偏光度P2(Φ)の測定結果が示されている。偏光度P2(ΦM)=0.9985である。この場合、上記(2)式の関係が満足されている。
図19には、図17において、タイプBの偏光調整素子を用いたときの、偏光度P2(Φ)の測定結果が示されている。偏光度P2(ΦM)=0.9983である。この場合、上記(2)式の関係が満足されている。
ここで、偏光度とゴースト光強度との関係について説明する。偏光分離素子において、長軸方向の偏光成分を書き込み用光として分離する場合、短軸方向の偏光成分がゴースト光となるが、理想的な直線偏光では短軸方向の偏光成分は0であるため、ゴースト光は発生しない。
偏光度が1よりも小さいと、短軸方向の偏光成分が0でなくなりゴースト光が発生する。ここで、次の(3)式から得られるRを「ゴースト光強度比」という。
R=(Ib/Ia)×100(%) ……(3)
偏向角φMにおけるゴースト光強度比Rは、偏光調整素子が設けられていない場合、0.3103%、タイプAの偏光調整素子が設けられている場合、0.2831%、タイプBの偏光調整素子が設けられている場合、0.2753%である。いずれのタイプでも、偏光調整素子を設けることでゴースト光を低減できることが確認された。
《偏光調整素子の設定2》
偏光調整素子の設定2では、偏光度に代えて、偏光調整素子から射出される偏光の長軸方向を設定対象とする。
偏光調整素子の設定2では、偏光度に代えて、偏光調整素子から射出される偏光の長軸方向を設定対象とする。
(1)先ず、タイプAの偏光調整素子から射出される偏光の長軸方向の設定について説明する。
ここで、走査レンズに入射する時点での偏光の長軸方向が平面Sとなす角をθ0(Φ)、走査レンズから射出され、偏光調整素子に入射する時点での偏光の長軸方向が平面Sとなす角をθ1(Φ)、及び偏光調整素子から射出され、偏光分離素子に入射する時点での偏光の長軸方向が平面Sとなす角をθ2(Φ)とする。そして、θ0(Φ)とθ1(Φ)の差が最大となる偏向角をΦNと表記する。
偏光調整素子211は、光束LBa及び光束LBbの少なくとも一方について、次の(4)式が満足されるように設定されていても良い。
|θ0(ΦN)−θ1(ΦN)|>|θ0(ΦN)−θ2(ΦN)| ……(4)
また、偏光調整素子212は、光束LBc及び光束LBdの少なくとも一方についても、上記(4)式が満足されるように設定されていても良い。
この場合、各偏光調整素子の機能は、θ0(Φ)からθ1(Φ)に変化した長軸方向を、偏光分離素子に入射する時点で、よりθ0(Φ)に近づけることに他ならない。タイプAの偏光調整素子は、後段の偏光分離素子が、ワイヤーグリッド素子の場合に好適である。
図20には、θ0(Φ)、θ1(Φ)、及びθ2(Φ)の具体例が示されている。ここでは、走査レンズに入射する光は、縦偏光である。
図20では、θ0(Φ)は、縦偏光すなわち0°から大きな変化はない。但し、コリメートレンズやシリンドリカルレンズの形状、材質、ポリゴンミラーの反射率の偏光依存性等により若干変化する可能性もある。以下では、断りがない限り、有効走査領域内の偏向角Φについて、縦偏光ではθ0(Φ)=0°、横偏光ではθ0(Φ)=90°とする。
θ1(Φ)は、走査レンズでの複屈折により、θ0(Φ)と異なる可能性が高い。その程度は、走査レンズの材質、形状はもとより、偏向角Φによっても異なる。
図21には、縦偏光が走査レンズに入射した場合の、θ0(Φ)及びθ1(Φ)の測定結果の一例が示されている。θ0(Φ)とθ1(Φ)の差が最大となる偏向角ΦNは、−30.9°であった。このとき、θ0(ΦN)=0.00°、θ1(ΦN)=−2.00°であった。
図22には、図21において、タイプAの偏光調整素子を用いたときの、θ2(Φ)の測定結果が示されている。θ2(ΦN)=−0.337°である。この場合、上記(4)式の関係が満足されている。
ここで、偏光の長軸方向とゴースト光強度の関係について説明する。偏光分離素子において、平面Sと平行な偏光成分を書き込み用光として分離する場合、該書き込み用光の光強度はcos2θ2(ΦN)であり、ゴースト光強度比Rは上記(3)式を変換した次の(5)式で表すことができる。
R=sin2θ2(ΦN)/cos2θ2(ΦN) ……(5)
従って、偏向角φNにおけるゴースト光強度比Rは、偏光調整素子が設けられていない場合、0.122%であり、タイプAの偏光調整素子が設けられている場合、0.00345%であった。タイプAの偏光調整素子を設けることでゴースト光を低減できることが確認された。
(2)次に、タイプBの偏光調整素子から射出される偏光の長軸方向の設定について説明する。
ここでは、光束と同波長の直線偏光を偏向角φNで偏光分離素子に入射させたときに、最大消光比が得られる直線偏光の偏光方向が、平面Sとなす角をθ3(Φ)とする。
タイプBの偏光調整素子は、次の(6)式が満足されるように設定される。
|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ1(ΦN)|>|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ0(ΦN)| ……(6)
θ3(Φ)を特定するためのセットアップの例が図23に示されている。ここでは、走査レンズに入射する光は、縦偏光である。ポリゴンミラーから偏向角φNにて該光束を走査レンズに入射させる。走査レンズからの射出光は楕円偏光化されており、これをほぼ完全な円偏光にするための位相板を走査レンズの後段に配置する。更に位相板の後段に偏光子を回転可能に設け、該偏光子から射出される直線偏光を偏光分離素子に入射させる。偏光子を回転させつつ、偏光分離素子を透過した光の強度をパワーメータ等の検出器(不図示)で測定する。そして、検出器の出力が最小となるときの偏光子の回転角を求める。この回転角に直交する角度がθ3(Φ)である。なお、走査レンズに入射する光が横偏光の場合は、偏光分離素子で反射された光の強度を検出器で測定する。
ここでの偏光調整素子の機能は、走査レンズを通過する際に、θ0(Φ)からθ1(Φ)に変化した長軸方向を、偏光分離素子に入射する時点で、光源から射出された光が横偏光の場合は、偏光分離素子の偏光分離面に垂直な方向に近づけ、光源から射出された光が縦偏光の場合は、偏光分離素子の偏光分離面に平行な方向に近づけることであるともいえる。タイプBの偏光調整素子は、後段の偏光分離素子が、誘電体多層膜素子の場合に好適である。
偏光分離素子における入射面は、図24に示されるように、走査光の進行方向に応じて傾斜する。以下では、便宜上、偏向角が0°のときの入射面に対する傾斜角を「入射面回転角」という。偏光分離素子の入射側の面が偏光分離面である場合、θ3(Φ)は入射面回転角と等価である。一方、偏光分離素子の入射側の面が偏光分離面ではなく、平面基板やプリズム基板で構成されている場合は、θ3(Φ)は入射面回転角と等価でない。以後の説明では分かりやすくするため、偏光分離素子の入射側の面が偏光分離面であるものとする。また、入射面回転角は、偏向角以外に、偏光分離素子の入射側の面(ここでは、偏光分離面)の法線と偏向面とのなす角にも依存する。
図25には、偏光分離素子の入射側の面(ここでは、偏光分離面)の法線と偏向面とのなす角が55°のときの、入射面回転角と偏向角との関係の計算結果が示されている。入射光が縦偏光の場合、理想的には、θ2(Φ)は入射面回転角と同じ回転方向に同じ量だけ回転するよう設定するのが良い。そして、θ3(ΦN)=−19.8°である。なお、ΦN=−30.9°である。
図26には、図25における偏光分離素子の前段に、タイプBの偏光調整素子を設けたときの、θ2(Φ)の測定結果が示されている。θ0(ΦN)=0.00°、θ1(ΦN)=−2.00°、θ2(Φ)=−20.1°である。この場合、|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ1(ΦN)|=1.7°、|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ0(ΦN)|=0.3°であり、上記(6)式の関係が満足されている。また、図26に示されるように、θ2(Φ)は、図25と同じ傾向を示している。
ここで、偏光の長軸方向とゴースト光強度の関係について述べる。偏光分離素子において、ある偏向角Φにおけるθ2(Φ)と入射面回転角との差をΔθ2(Φ)とすると、入射面に平行な偏光成分を書き込み用光として分離する場合、該書き込み用光の光強度はcos2[Δθ2(Φ)]であり、ゴースト光強度はsin2[Δθ2(Φ)]である。
φN=−30.9°のとき、θ1(ΦN)=−2.00°、θ2(ΦN)=−20.1°、入射面回転角=−19.8°である。偏光調整素子を設けない場合には、Δθ2(ΦN)=−19.8−(−2.00)=−17.8であり、ゴースト光強度比はsin2[Δθ2(Φ)]=9.35(%)である。一方、偏光調整素子を設けた場合には、Δθ2(ΦN)=−19.8−(−20.1)=−0.3であり、ゴースト光強度比はsin2[Δθ2(Φ)]=0.003(%)である。
また、従来の装置(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)では、θ1(ΦN)を考慮せず偏光調整を行っていた。この場合、Δθ1(ΦN)=−2.00°が加算されるため、Δθ2(ΦN)=−2.30°となる。この場合のゴースト光強度比は、約0.16(%)であった。このことから、偏光調整素子の効果が極めて大きいことを確認できる。
《偏光調整素子の構成例》
偏光調整素子の構成例について説明する。
偏光調整素子の構成例について説明する。
偏光調整素子211は、一例として図27に示されるように、一対の透明基板(2101a、2101b)、該透明基板間に挟持されたネマティック液晶層2104、ネマティック液晶層2104と各透明基板の界面に設けられた配向膜(2103a、2103b)などを有する液晶素子を含んでいる。
上記液晶素子の各配向膜に施される配向処理(ラビング)での方向が、一例として図28に示されている。液晶分子は、配向膜の界面において長軸方向をラビング方向にならって配向する性質がある。以下では、光が入射する側の配向膜2103aにおける液晶分子の長軸方向とY軸方向とのなす角を「プレツイスト角」という。液晶分子の長軸方向は、配向膜に対するラビング処理、光配向処理等で調整することができる。
光が液晶素子に対して垂直に入射する位置、すなわち偏向角0°の位置では、液晶分子の長軸方向は入射光の偏光方向に平行あるいは垂直となるように設定されている。なお、図28では、偏向角0°の位置において、プレツイスト角が90°、ツイスト角が0°となるように設定されている。これは、偏向角0°の走査光では、偏光度及び偏光の長軸方向が、走査レンズを射出する前後でほとんど変化がないためである(図17、図21参照)。そして、Y軸方向に関して、偏向角0°の位置から離れるにつれて、プレツイスト角、ツイスト角ともに連続的に変化するように、ラビング方向が設定されている。
そして、配向膜2103aと配向膜2103bとの間に挟まれているネマティック液晶層2104における液晶分子の方向が、一例として図29に示されている。なお、図29における破線は、ネマティック液晶層2104の厚さ方向(X方向)の位置を示している。
液晶素子における光が入射する各位置でのプレツイスト角及びツイスト角の回転方向は、偏光分離素子に入射する光の電界ベクトルが所定の方向の直線偏光となるよう設定されている。すなわち、タイプAの偏光調整素子では、図30及び図31に示されるような偏光調整が偏向角に応じて行われ、タイプBの偏光調整素子では、図32及び図33に示されるような偏光調整が偏向角に応じて行われる。
このようなプレツイスト角及びツイスト角の導出は、偏光調整素子への入射光の偏光状態(測定値)と射出光の偏光状態(設定値)を、それぞれジョーンズベクトルで表現したとき、射出光のジョーンズベクトルが最も設定値に近くなるような液晶素子のジョーンズマトリクスを求めることで行うのが良い。この液晶素子のジョーンズマトリクス表現は、例えば、Colin Soutar and Kanghua Lu、「Determination of the physical properties of an arbitarary twisted−nematic liquid crystal cell」、Optical engineering、Vol.33、No.8、P2704−2712(1994)に記載されている。なお、市販の液晶素子のシミュレータを用いて最適解を求めても良い。
また、ここでは、プレツイスト角及びツイスト角をY軸方向に関して変化させているが、その他に液晶分子のチルト角を変化させても良い。その場合、配向膜のプレチルト角を場所によって変化させるか、あるいは電界によって液晶素子そのものを若干チルトさせる構成とする。
電界によってチルトさせる場合には、Y軸方向に関する位置によって電界強度が異なるように電極を配置して電圧を引加するか、あるいは液晶分子に外部電界を加えながらチルトした状態で硬化させるなどの方法が取れる。
プレツイスト角及びツイスト角を連続的に変化させるのは、配向膜にラビング処理を行う際に、ラビング布に対する姿勢を変えながら、配向膜付の透明板を回転しているラビング布に接触させることで実現することができる。
ここでは、偏光調整素子211に用いられる液晶素子について説明したが、偏光調整素子212に用いられる液晶素子についても同様の考え方で形成することができる。
偏光調整素子に液晶素子を用いることで、大面積化あるいは長尺化が必要な場合でも、製造コストを低く抑えることができる。
また、偏光調整素子では、走査レンズの前段に設けられている光学部品による偏光状態の変化も考慮して、偏光調整を行うようにすることができる。また、光源から射出される光束を縦偏光及び横偏光としているが、偏光調整素子での調整を前提にすれば、偏光方向が傾斜した状態の光束、あるいは楕円偏光化した状態の光束を光源から射出することが可能である。この場合は、光学素子の選択自由度を高めるとともに、光学素子の形状公差、配置公差を緩めることが可能となる。
タイプAの偏光調整素子と組み合わせて用いるのに好適な偏光分離素子(「偏光分離素子A」ともいう)について説明する。
この偏光分離素子Aは、ワイヤーグリッドによって形成された偏光分離面を有している。該偏光分離面は、ワイヤーグリッドの線方向に平行な偏光成分を反射し、垂直な偏光成分を透過させる。そこで、ワイヤーグリッドの線方向が主走査対応方向に平行となるように設定することで、縦偏光を透過させ横偏光を反射する。
ワイヤーグリッドの構成の一例が図34(A)〜図34(C)に示されている。板状の基体上に、その格子ピッチが入射光の波長よりも小さい微細構造格子である。図34(C)は、図34(A)のA−A断面図である。
ワイヤーグリッドの格子ピッチは、一例として0.15μm、「格子幅/格子ピッチ」であるデューティ(Duty)比は50%、格子の深さは0.05μmなどが選定される。また、ワイヤーの素材はアルミニウム、銀、白金等の高導電性材料が選ばれる。また、基体としてはガラス、硬質プラスチック等の透明材料が選ばれる。
なお、偏光分離素子を透過もしくは反射した光束の光路上に、その透過軸が光束の偏光方向と一致している偏光子を追加しても良い。偏光子により、ゴースト光をさらに抑制できる。
図35には、タイプAの偏光調整素子と偏光分離素子A(ワイヤーグリッド素子)を組み合わせ、ゴースト光強度比を測定した結果の一例が示されている。偏光調整素子がない場合、偏光分離素子Aに入射する光束の偏光状態が劣化しているためにゴースト光強度比が高いが、偏光調整素子を組み合わせることで全体のゴースト光強度比が低減できている。
次に、タイプBの偏光調整素子と組み合わせて用いるのに好適な偏光分離素子(「偏光分離素子B」ともいう)について説明する。
この偏光分離素子Bは、誘電体多層膜によって形成された偏光分離面を有している。該偏光分離面は、ガラス又は透明樹脂からなる透明基体に支持され、p偏光を透過させ、s偏光を反射する。透明基体の形状は、図36に示されるプレート型、又は図37に示されるプリズム型のものなどが選ばれる。前者は後者に比べ構造が簡単で製造工程も少ないため、比較的安価に製造することが可能である。一方、後者は反射光と透過光の光路長を等しくでき、また透過光側において、偏向角によって走査光に「曲がり」が発生しないため、光学性能を確保しやすい。
誘電体多層膜の膜厚設計は、用いられる誘電体材料の屈折率、偏光分離が必要な偏向角の範囲、及び入射光の波長をパラメータにした光学シミュレータを用いて行うことができる。誘電体材料としては、高屈折率材料として二酸化チタンTiO2、低屈折率材料として二酸化ケイ素SiO2などを選ぶことができる。
図38には、タイプBの偏光調整素子と偏光分離素子Bを組み合わせ、ゴースト光強度比を測定した結果の一例が示されている。偏光調整素子がない場合、偏光分離素子Bに入射する光束の偏光状態が劣化しているためにゴースト光強度比が高いが、偏光調整素子を組み合わせることで全体のゴースト光強度比が低減できている。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、2つの光源ユニット(LU1、LU2)、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光調整素子(211、212)、2つの偏光分離素子(161、162)、2つの反射ミラー(171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び不図示の走査制御装置などを有している。
そして、偏光調整素子を用いることで、各偏光分離素子における偏光分離特性が従来よりも向上し、ゴースト光(ノイズ光)の発生を従来よりも低減することができる。
また、走査レンズと偏光分離素子が、2つの画像形成ステーションで共用されているため、小型化を図ることができる。
そこで、高コスト化及び大型化を招くことなく、ゴースト光の発生を安定的に抑制することができる。
そして、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010を備えているため、高コスト化を招くことなく、小型で、高品質の画像を形成することができる。
なお、上記実施形態において、前記液晶素子に代えて、延伸フィルムの延伸方向を光の入射角に応じて変化させたポリマー波長板、あるいは斜方蒸着膜の蒸着方向及び蒸着角度を光の入射角に応じて変化させた構造複屈折波長板を用いても良い。この場合、1/4波長板と1/2波長板を組み合わせ、1/4波長板で楕円偏光を直線偏光に変換し、1/2波長板で変換後の直線偏光を所定の方向に回転させるように構成することで、前記液晶素子と同様の作用を持たせることができる。
また、上記実施形態において、一例として図39に示されるように、前記偏光分離素子と前記偏光調整素子を一体化しても良い。この場合には、光路上の界面の数が減少し、波面収差を低減することができる。そして、部品共用化で低コスト化を図ることができる。また、光走査装置内への組み付け工程及び調整工程を簡略化することができる。
また、上記実施形態では、各光源が1つの発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各光源が複数の半導体レーザを有しても良い。また、各光源が複数の発光部を持つ半導体レーザアレイを有しても良い。
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トナー像が記録紙に直接転写されても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として4つの感光体ドラムを有するカラープリンタ2000について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2つの感光体ドラムを有するプリンタであっても良い。また、更に補助色を用いる多色カラープリンタであっても良い。
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
また、上記実施形態では、光走査装置がプリンタに用いられる場合について説明したが、上記光走査装置は、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。
10a〜10d…光源、121,122…シリンドリカルレンズ、14…ポリゴンミラー(偏向器)、151,152…走査レンズ、161,162…偏光分離素子、171,172…反射ミラー、18a,18b,18c,18d…折り返しミラー、19a〜19d…防塵ガラス、211,212…偏光調整素子、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2010…光走査装置、LU1,LU2…光源ユニット、2101a,2101b…透明基板(透明板)、2103a,2103b…配向膜、2104…ネマティック液晶層。
Claims (10)
- 複数の被走査面を個別に光によって第1の方向に沿って走査する光走査装置であって、
互いに偏光状態が異なる第1の光束と第2の光束を射出する光源ユニットと、
前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な軸まわりに回転し、前記光源ユニットからの前記第1の光束及び前記第2の光束を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された結像光学素子と、
該結像光学素子を介した前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された偏光調整素子と、
該偏光調整素子から射出された前記第1の光束及び前記第2の光束の光路上に配置された偏光分離素子とを備え、
前記偏光調整素子は、前記結像光学素子を通過する際に偏光状態が変化した前記第1の光束及び前記第2の光束に対して、前記偏光分離素子で前記第1の光束と前記第2の光束とが分離されるように前記偏光状態の変化を補正する光走査装置。 - 前記偏光分離素子に入射する光束と該光束の前記偏光分離素子における入射位置の法線を含み前記第2の方向に平行な平面とのなす角度Φ、該光束の前記結像光学素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ0(Φ)、該光束の前記偏光調整素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ1(Φ)、該光束の前記偏光分離素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ2(Φ)、θ0(Φ)とθ1(Φ)の差が最大となる角度ΦN、該光束と同波長の直線偏光を前記角度φNにて前記偏光分離素子に入射させたときに、最大消光比が得られる直線偏光の偏光方向が、前記平面となす角度θ3(Φ)を用いて、
前記第1の光束及び前記第2光束の少なくとも一方は、|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ1(ΦN)|>|θ3(ΦN)−θ2(ΦN)+θ0(ΦN)|を満足することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。 - 前記偏光分離素子に入射する光束と該光束の前記偏光分離素子における入射位置の法線を含み前記第2の方向に平行な平面とのなす角度Φ、該光束の前記結像光学素子に入射する時点での偏光度P0(Φ)、前記偏光調整素子に入射する時点での偏光度P1(Φ)、前記偏光分離素子に入射する時点での偏光度P2(Φ)、P0(Φ)とP1(Φ)の差が最大となる角度ΦMを用いて、
前記第1の光束及び前記第2光束の少なくとも一方は、|P0(ΦM)−P1(ΦM)|>|P0(ΦM)−P2(ΦM)|を満足することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。 - 前記偏光分離素子は、誘電体多層膜によって形成された偏光分離面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光走査装置。
- 前記偏光分離素子に入射する光束と該光束の前記偏光分離素子における入射位置の法線を含み前記第2の方向に平行な平面とのなす角度Φ、該光束の前記結像光学素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ0(Φ)、該光束の前記偏光調整素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ1(Φ)、該光束の前記偏光分離素子に入射する時点での偏光の長軸方向が前記平面となす角度θ2(Φ)、θ0(Φ)とθ1(Φ)の差が最大となる角度ΦNを用いて、
前記第1の光束及び前記第2光束の少なくとも一方は、|θ0(ΦN)−θ1(ΦN)|>|θ0(ΦN)−θ2(ΦN)|を満足することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。 - 前記偏光分離素子は、ワイヤーグリッドによって形成された偏光分離面を有することを特徴とする請求項1、3及び5のいずれか一項に記載の光走査装置。
- 前記結像光学素子は、樹脂製の光学素子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光走査装置。
- 前記偏光調整素子は、一対の透明板の間に配向膜を介してネマティック液晶層が挟持されている液晶素子を含み、
前記配向膜の少なくとも一方が、光の入射角に応じて方向の異なる配向処理がなされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光走査装置。 - 前記偏光調整素子と前記偏光分離素子は、一体化されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置。
- 複数の像担持体と、
前記複数の像担持体を光により走査する請求項1〜9のいずれか一項に記載の光走査装置とを備える画像形成装置。
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