JP2011108373A - 電池電極用バインダー - Google Patents

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Abstract

【課題】電極シートの圧延時の粘着性、結着力、および、電極シートの耐折れ割れ性、さらには、電池の容量維持率を改良することができる電池電極用バインダーを提供すること。
【解決手段】
電池電極用バインダーに、ガラス転移温度が−40〜−5℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)35〜60重量%と、ガラス転移温度が0〜80℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)40〜65重量%とを含む共重合体ラテックスを含有させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、電池電極用バインダーに関する。詳しくは、二次電池の負極を形成するために用いられる電池電極用バインダーに関する。
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵放出する導電性炭素質材料を電極として用いており、軽量でエネルギー密度が大きいという特徴から、小型電子機器の電源としての重要性が増加している。リチウムイオン二次電池の電極の調製においては、通常、結着剤としてポリマーバインダーが用いられる。このポリマーバインダーには、導電性炭素質材料との接着性、電解液である極性溶媒に対する耐性、電気化学的な環境下での安定性が求められる。
従来から、このようなポリマーバインダーとして、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーが用いられている。しかし、フッ素系ポリマーでは、電極膜の形成時に導電性を阻害し、集電体と電極膜間との接着強度が不足するなどの不具合を生じる。さらに、フッ素系ポリマーを還元条件となる負極の形成に用いた場合には、安定性が十分でなく、二次電池のサイクル性が低下するなど不具合を生じる。そのため、上記不具合を改良すべく、ポリマーバインダーとして、非フッ素系ポリマーを用いることが、種々提案されている。
例えば、特開平5−74461号(特許文献1)では、特定組成とゲル含量のスチレン−ブタジエンラテックスをポリマーバインダーとして用いることで、サイクル性、保存特性、安全性に優れた二次電池を得ることが提案されている。
また、特開平11−25989号公報(特許文献2)では、特定組成とガラス転移温度の共重合体を、ポリマーバインダーとして用いることで、高容量、放電特性、充放電サイクル性、安全性に優れた二次電池を得ることが提案されている。
さらに、特開2003−151556号公報(特許文献3)では、ガラス転移温度が0〜120℃のスチレン−ブタジエンラテックスを2種類以上含有してなる負極活物質層用組成物が提案されている。
特開平5−74461号公報 特開平11−25989号公報 特開2003−151556号公報
しかし、上記特許文献1〜3に記載のポリマーバインダーや負極活物質層用組成物では、電極シートの圧延時の粘着性、結着力、および、電極シートの耐折れ割れ性が十分でなく、とりわけ、負極形成において顕著である。
本発明の目的は、電極シートの圧延時の粘着性、結着力、および、電極シートの耐折れ割れ性、さらには、電池の容量維持率を改良することができる電池電極用バインダーを提供することにある。
上記した課題を解決するため、本発明の電池電極用バインダーは、ガラス転移温度が−40〜−5℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)35〜60重量%(固形分換算)と、ガラス転移温度が0〜80℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)40〜65重量%(固形分換算)とを含む共重合体ラテックスを含有していることを特徴としている。
また、本発明の電池電極用バインダーは、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)が、脂肪族共役ジエン系単量体37〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜10重量%、芳香族ビニル系単量体5〜62.9重量%、および、これらと共重合可能な他の単量体0〜57.9重量%を含む単量体組成物(A)を乳化重合して得られ、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)が、脂肪族共役ジエン系単量体5〜35重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜10重量%、芳香族ビニル単量体10〜94.9重量%、および、これらと共重合可能な他の単量体0〜84.9重量%を含む単量体組成物(B)を乳化重合して得られることが好適である。
また、本発明の電池電極用バインダーは、負極構成材(後述)に配合され、負極を形成するために用いられることが好適である。
本発明の電池電極用バインダーによれば、ガラス転移温度が低い(−40〜−5℃)カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)35〜60重量%(固形分換算)と、ガラス転移温度が高い(0〜80℃)カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)40〜65重量%(固形分換算)とを含む共重合体ラテックスを含有している。
そのため、電極シートの圧延時の粘着性、結着力、および、電極シートの耐折れ割れ性を両立することができる。しかも、二次電池の容量維持率を向上させることができる。
角型リチウムイオン二次電池の断面図である。
本発明の電池電極用バインダーは、ガラス転移温度が−40〜−5℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)と、ガラス転移温度が0〜80℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)とを含む共重合体ラテックスを含有している。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)は、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル系単量体、および、これらと共重合可能な他の単量体を含む単量体組成物(A)を乳化重合して得られる。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、1,3−ブタジエンが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリル酸、フマール酸が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、スチレンが挙げられる。
他の単量体としては、例えば、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が挙げられる。
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、メチルメタクリレートが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリルアミドが挙げられる。
さらに、上記各単量体の他に、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのラジカル重合可能な単量体を用いることもできる。
単量体組成物(A)は、脂肪族共役ジエン系単量体を、例えば、37〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%、芳香族ビニル系単量体を、例えば、5〜62.9重量%、好ましくは、10〜50重量%、および、これらと共重合可能な他の単量体を、例えば、0〜57.9重量%(つまり、他の単量体は、含有されていても含有されていなくてもよく、含有されている場合には、57.9重量%以下である。)、好ましくは、1〜40重量%含有する。
そして、単量体組成物(A)を乳化重合することにより、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)を得る。
単量体組成物(A)を乳化重合するには、単量体組成物(A)に乳化剤および重合開始剤を添加する。
乳化剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、ノニオン性界面活性剤の硫酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩が挙げられる。
乳化剤は、単量体組成物(A)100重量部に対して、例えば、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜3重量部の割合で配合される。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であって、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が挙げられる。好ましくは、水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられ、油溶性重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
また、単量体組成物(A)を乳化重合するには、必要により、還元剤、連鎖移動剤を添加することができる。
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩、例えば、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。好ましくは、カルボン酸類およびその塩が挙げられ、より好ましくは、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物、例えば、ターピノレン、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール化合物、例えば、アリルアルコールなどのアリル化合物、例えば、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物、例えば、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル、例えば、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アルキルメルカプタンが挙げられ、より好ましくは、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
連鎖移動剤は、例えば、単量体組成物(A)100重量部に対して、例えば、0〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部の割合で添加される。
また、乳化重合において、必要により、不飽和炭化水素を添加することができる。不飽和炭化水素としては、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセンなどが挙げられ、好ましくは、シクロヘキセンが挙げられる。シクロへキセンは、低沸点で重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすく、環境負荷の観点から好適である。
また、その他の添加剤として、必要により、例えば、炭酸ナトリウムなどの電解質、重合促進剤、キレート剤などを添加することができる。
また、重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
そして、得られたカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度(Tg)は、−40〜−5℃、好ましくは、−35〜−5℃である。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のフィルムを作成し、そのフィルムを、示差走査熱量計(DSC)を用いて、例えば、−100から150℃まで速度10℃/分で昇温し、相変化の吸熱の開始点を読み取ることにより、測定することができる。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度が−40℃未満であると、電極シートが粘着しやすくなって、圧延時などの作業性が劣る傾向があり、また、−5℃を超えると、負極構成材または正極活物質(後述)を結着する結着力、電極シートの耐折れ割れ性が低下する傾向がある。
また、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)は、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)と同様に、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体組成物(B)を乳化重合して得られる。
また、各単量体(脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体)についても、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)において例示された単量体と同一の単量体を例示することができる。なお、好ましい単量体についても同様である。
単量体組成物(B)は、脂肪族共役ジエン系単量体を、例えば、5〜35重量%、好ましくは、10〜33重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%、芳香族ビニル系単量体を、例えば、10〜94.9重量%、好ましくは、15〜80重量%、および、これらと共重合可能な他の単量体を、例えば、0〜84.9重量%(つまり、他の単量体は、含有されていても含有されていなくてもよく、含有されている場合には、84.9重量%以下である。)、好ましくは、2〜70重量%を含有する。
そして、得られたカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度(Tg)は、0〜80℃、好ましくは、10〜80℃である。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度(Tg)は、上記したカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度(Tg)と同様にして、測定することができる。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が0℃未満では、電極シートが粘着しやすくなって、圧延時などの作業性が劣る傾向があり、また、80℃を超えると、バインダーとしての機能を果たさず、負極構成材または正極活物質を結着する結着力、電極シートの耐折れ割れ性が低下する傾向がある。
また、得られたカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)および(B)には、乳化重合前後において、必要により、老化防止剤、防腐剤、分散剤、増粘剤などの添加剤を適宜添加することができる。
また、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)および(B)のゲル含有量は、特に制限はないが、耐電解液性の観点から、10〜100重量%、好ましくは、30〜99重量%である。
また、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)および(B)の数平均粒子径は、特に制限はないが、0.05〜0.30μmである。
そして、本発明の電池電極用バインダーは、ガラス転移温度が低いカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)を固形分換算で、35〜60重量%、好ましくは、40〜55重量%と、ガラス転移温度が高いカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)を固形分換算で、40〜65重量%、好ましくは、45〜60重量%とを含む共重合体ラテックスを含有している。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)と(B)とを含む共重合体ラテックスを得るには、ガラス転移温度が低いカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)と、ガラス転移温度が高いカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)とを、上記した配合割合で混合する。
カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)の配合割合が35重量%未満であると、負極構成材または正極活物質を結着する結着力、電極シートの耐折れ割れ性が低下する傾向があり、また、60重量%を超えると、電極シートが粘着しやすくなって、圧延時などの作業性が劣る傾向がある。
なお、電池電極用バインダーは、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)のガラス転移温度が−35〜−5℃であり、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)のガラス転移温度が10〜80℃であり、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)の配合割合が40〜55重量%であり、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)の配合割合が45〜60重量%である共重合体ラテックスを含有させると、二次電池の容量維持率をより一層向上させることができる。
そして、本発明の電池電極用バインダーは、好ましくは、二次電池の電極を形成するために用いられ、負極構成材または正極活物質の粒子同士、および、負極構成材または正極活物質と集電体とのバインダーとして作用する。
具体的には、電池電極用バインダーを、負極構成材または正極活物質に配合することにより、電池電極用組成物が調製される。すなわち、電池電極用バインダーを負極構成材に配合することにより、二次電池の負極に用いられる負極用組成物が調製される。また、電池電極用バインダーを正極活物質に配合することにより、二次電池の正極に用いられる正極用組成物が調製される。
負極構成材としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン系有機半導体、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物などの導電性炭素質材料が挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、MnO、Vなどの遷移金属酸化物、LiCoO、LiMnO、LiNiOなどのリチウムを含む複合酸化物、LiFePOなどのリチウムを含む複合金属酸化物が挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
電池電極用組成物を調製する場合には、電池電極用バインダーを、負極構成材または正極活物質100重量部に対して、共重合体ラテックスの固形分が、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部となるように配合する。
負極構成材または正極活物質100重量部に対する共重合体ラテックスの固形分が、0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な接着力が得られない傾向があり、10重量部を超えると二次電池として組み立てたときに過電圧が著しく上昇し、電池特性を低下させる傾向がある。
また、電池電極用組成物には、必要により、水溶性増粘剤、分散剤、ラテックスの安定化剤などの各種添加剤を添加することができる。水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどが挙げられ、分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどが挙げられ、ラテックスの安定化剤としては、例えば、ノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
電池電極用組成物に水溶性増粘剤を添加する場合には、例えば、水溶性増粘剤を、負極構成材または正極活物質100重量部に対して固形分換算で、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部の割合で配合する。
電池電極用組成物は、集電体に塗布、乾燥されて、リチウムイオン二次電池の正極板または負極板を形成する。
集電体としては、負極用の集電体として、例えば、銅やニッケルなどの金属箔が挙げられ、正極用の集電体として、例えば、アルミニウムなどの金属箔が挙げられる。
電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としては、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの公知の方法を用いることができ、乾燥には、放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが用いられる。乾燥温度は、通常、50℃以上である。
このような本発明の電池電極用バインダーによれば、電極シート圧延時の粘着性、結着力、および、電極シートの耐折れ割れ性を改良することができる。しかも、二次電池の容量維持率を向上させることができる。
とりわけ、本発明の電池電極用バインダーは、負極構成材に配合されて、負極用組成物を調製するために好適に用いられる。そして、そのような負極用組成物を用いて負極板を形成する場合に、対応する正極板は、公知の正極用組成物を用いて形成すればよく、公知の正極活物質は、特に限定されず、上記した正極活物質、公知の正極用バインダーおよび導電助剤から調製することができる。
正極用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックなどの炭素材料が挙げられる。
公知の正極用組成物を調製する場合には、例えば、正極活物質100重量部に対して、導電助剤を、例えば、1〜10重量部、正極用バインダーを固形分換算で、例えば、1〜10重量部、配合し、正極用組成物の固形分が、例えば、20〜60重量%となるように、N−メチルピロリドン(NMP)などの有機溶媒を加えて混練する。
次いで、リチウムイオン二次電池の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
図1は、角型リチウムイオン二次電池の断面図である。
リチウムイオン二次電池は、図1に示すように、角型の電池ケース7、電池ケース7内において交互に積層される正極板1および負極板2、正極板1と負極板2との間に介在されるセパレータ3を備えている。なお、電池ケース7内には、電解液(後述)が満たされている。
電池ケース7は、アルミニウムなどの金属から一端部が開放された角筒形状に形成される胴体部分と、胴体部分の一端部を閉鎖する蓋とを備え、正極端子を兼ねている。
また、電池ケース7の蓋には、ステンレス鋼などの金属からなる負極端子8、ポリプロピレンなどの絶縁材料からなり負極端子8と電池ケース7とを絶縁する絶縁パッキン11、電池ケース7と正極板1とを電気的に接続する正極リード5、負極端子8と負極板2とを電気的に接続する負極リード6、電解液を注入するための注液孔9、および、注液孔9を閉鎖するための注液栓10が設けられている。
正極板1は、アルミニウムなどの金属箔からなる略矩形平板形状の集電体に正極用組成物を塗布、乾燥することにより形成されている。また、正極板1は、集電体の一端部(正極用組成物が塗布されていない未塗工部)に溶接される正極タブ4を備えている。そして、正極タブ4は、正極リード5に溶接されている。これにより、正極板1は、正極タブ4および正極リード5を介して、電池ケース7に電気的に接続されている。
負極板2は、銅などの金属箔からなる略矩形平板形状の集電体に負極用組成物を塗布、乾燥することにより形成されている。また、負極板2は、集電体の一端部(負極用組成物が塗布されていない未塗工部)に溶接される負極タブ(図示せず)を備えている。そして、負極タブ(図示せず)は、負極リード6に溶接されている。これにより、負極板2は、負極タブ(図示せず)および負極リード6を介して、負極端子8に電気的に接続されている。
セパレータ3は、多孔質のポリエチレンやポリプロピレンからなる絶縁材料から、正極板1を内包可能な大きさの袋状に形成され、正極板1を包み込んで絶縁するとともに、正極板1と負極板2との間のリチウムイオンの通過を許容している。
リチウムイオン二次電池を製造するには、まず、長尺な集電体に正極用組成物が塗布された正極シート、および、長尺な集電体に負極用組成物が塗布された負極シートを、短冊状に裁断した後、アルミニウム製の正極タブ4、および、ニッケル製の負極タブ(図示せず)を、集電体の一端部(負極用組成物または正極用組成物が塗布されていない未塗工部)にそれぞれ溶接して、正極板1および負極板2を作製する。
そして、これら正極板1および負極板2を、真空乾燥機などを用いて、真空下で、例えば、100〜200℃で、20〜30時間乾燥する。
続いて、正極板1をセパレータ3で包み込むとともに、セパレータ3で包まれた正極板1と、負極板2とを、交互に積層し、負極板2が電池ケース7に接しないように、絶縁テープで固定し、積層電極対を作製する。
正極タブ4および負極タブ(図示せず)を、対応する正極リード5および負極リード6に溶接した後、電池ケース7の胴体部分に挿入し、電池ケース7の蓋を電池ケース7の胴体部分にレーザー溶接することにより封口する。
これに、電解液を注液孔9から注入した後、注液栓10で封止し電池とする。なお、電解液としては、例えば、1モル濃度(mol/l)のLiPFのエチレンカーボネート(EC)溶液と、ジエチルカーボネート(DEC)との等量混合液が用いられる。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、配合割合を示す部および%は重量基準による。
(カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの製造)
攪拌機付きオートクレーブに水125重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8重量部、炭酸ナトリウム0.2重量部、過硫酸カリウム0.7重量部を仕込んだ。
十分攪拌した後、t−ドデシルメルカプタン0.1重量部を添加し、表1に示す割合で各単量体を含有する単量体組成物と、シクロヘキセン6重量部とを添加した。
内温を65℃まで昇温して重合開始による発熱を確認した後、内温を65℃に保ち、重合転化率が98%になった時点で重合を終了し、室温まで冷却した。
次いで、得られた反応液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整し、水蒸気蒸留により、未反応の単量体およびシクロヘキセンなどを除去し、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A−1〜2、a−1)および(B−1〜2、b−1)を得た。
(カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスのガラス転移温度の測定)
得られた各カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスを、ガラス板に0.5g程度塗り、室温で48時間乾燥してフィルムを作成した。乾燥後のフィルムを示差走査熱量計(DSC、(製品名)DSC6200、セイコーインスツルメンツ社製)のアルミニウム製の試験用パンにセットし、測定温度を−100から150℃まで速度10℃/分で昇温して、相変化の吸熱の開始点を読み取って、各カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスのガラス転移温度(℃)とした。結果を表1に示す。
(負極用組成物の調製)
導電性炭素質材料として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース水溶液を、固形分換算で2重量部、表2に示す割合で各カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスを配合してなる電池電極用バインダーを、固形分換算で4重量部配合し、負極用組成物の固形分が40重量%となるように適量の水を加えて混練し、各実施例および各比較例の負極用組成物を調製した。
(負極シートの作製)
各負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔の両面に塗布し、140℃で20分間乾燥後、室温でプレスして、塗工層の厚みが80μm(片面あたり)の負極シートを得た。
(負極シートの粘着性)
得られた負極シートを2枚重ね合わせ、卓上プレス機にて50℃で50Kg、5分間プレスした後に手で剥がし、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:簡単に剥がれる。
○:やや抵抗があるがスムーズに剥がれる。
△:かなり抵抗があり、剥がす時に音が生じる。
×:粘着しており剥がすのが困難である。
(結着力)
得られた負極シートの表面に、ナイフを用いて、塗工層から集電体に達する深さまでの切り込みを、2mm間隔で縦横それぞれ6本入れ、25個(5個×5個)のマス目を有する碁盤目を形成した。この碁盤目に粘着テープを貼着して直ちに引き剥がし、黒鉛の脱落の程度を目視判定で5点(脱落なし)、4点(1〜3個のマス目が脱落)、3点(4〜8個のマス目が脱落)、2点(9〜15個のマス目が脱落)、1点(16個以上のマス目が脱落)として評価した。結果を表2に示す。
(耐折れ割れ性)
得られた負極シートを180°折り曲げた後、再度広げて、折り曲げ部分の塗工層の剥離状態を観察した。塗工層の剥離の程度を目視で判定し、5点(剥離なし)、4点(わずかに塗工層表面からの剥離あり)、3点(塗工層表面からの剥離あり、剥離部分で集電体が若干観察される)、2点(塗工層表面からの剥離あり、剥離部分の多くで集電体が観察される)、1点(完全に剥離)として評価した。結果を表2に示す。
(正極用組成物の調製)
正極活物質として平均粒子径が10μmのリン酸鉄リチウム(LiFePO)を使用し、正極活物質100重量部に対して、導電助剤としてアセチレンブラックを5重量部、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)溶液を固形分換算で5重量部、配合し、正極用組成物の固形分が40%となるように適量のN−メチルピロリドン(NMP)を加えて混練し、正極用組成物を調製した。
(正極シートの作製)
正極用組成物を集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、140℃で20分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが120μm(片面あたり)の正極シートを得た。
(電池の作製)
上記したように、リチウムイオン二次電池(図1参照)を作成した。
詳しくは、正極シート、および、各実施例および各比較例の負極シートを、短冊状に裁断した後、アルミニウム製の正極タブ、および、ニッケル製の負極タブを、正極シートおよび負極シートの未塗工部にそれぞれ溶接し、正極板および負極板を作製した。そして、得られた正極板と負極板とを、真空乾燥機を用いて、真空下で150℃にて24時間乾燥した。
続いて、正極板をセパレータで包み込むとともに、セパレータで包まれた正極板と、負極板とを、交互に積層し、負極板が電池ケースに接しないように、絶縁テープで固定し、積層電極体を作製した。
正極タブおよび負極タブを、対応する正極リードまたは負極リードに溶接した後、電池ケースの胴体部分に挿入し、電池ケースの蓋を電池ケースの胴体部分にレーザー溶接することにより封口した。
これに、1モル濃度(mol/l)のLiPFのエチレンカーボネート(EC)溶液と、ジエチルカーボネート(DEC)との等量混合液である電解液を、注液口から注入した後、封止し電池とした。
(電池特性)
上記のようにして作製した各実施例および各比較例の電池を、45℃で2時間率の電流で上限電圧を3.5Vとして定電流定電圧で3時間充電し、2時間率の電流で終止電圧2.0Vまで放電する充放電サイクル試験を、500サイクル実施した。各電池の1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の比(容量維持率)を求めた。その結果を表2に示す。
表2より、各実施例の電池電極用バインダーを用いて作製した負極シートは、負極シート粘着性と結着力とのバランス、および、耐折れ割れ性が優れており、かつ、これらの負極シートを用いて得られた電池は、容量維持率が優れていることが認められる。比較例においては、得られた電池の容量維持率が劣っていることに加え、比較例1および3では負極シート粘着性が劣っており、比較例2,4および5では結着力および耐折れ割れ性が劣っていることがわかる。
Figure 2011108373
Figure 2011108373
1 正極板
2 負極板
3 セパレータ
4 正極タブ
5 正極リード端子
6 負極リード端子
7 電池ケース
8 負極端子
9 注液孔
10 注液栓
11 絶縁パッキン

Claims (3)

  1. ガラス転移温度が−40〜−5℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)35〜60重量%(固形分換算)と、
    ガラス転移温度が0〜80℃のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)40〜65重量%(固形分換算)と
    を含む共重合体ラテックスを含有することを特徴とする、電池電極用バインダー。
  2. カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(A)が、
    脂肪族共役ジエン系単量体37〜70重量%、
    エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜10重量%、
    芳香族ビニル系単量体5〜62.9重量%、および、
    これらと共重合可能な他の単量体0〜57.9重量%
    を含む単量体組成物(A)を乳化重合して得られ、
    カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(B)が、
    脂肪族共役ジエン系単量体5〜35重量%、
    エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜10重量%、
    芳香族ビニル単量体10〜94.9重量%、および、
    これらと共重合可能な他の単量体0〜84.9重量%
    を含む単量体組成物(B)を乳化重合して得られることを特徴とする、請求項1に記載の電池電極用バインダー。
  3. 負極構成材に配合され、負極を形成するために用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載の電池電極用バインダー。
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