JP5547505B2 - 二次電池電極用バインダー - Google Patents
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Description
例えば、特開平10−302797号公報(特許文献1)では、シアン化ビニル単量体を比較的多く含有するコアシェル型の粒子をポリマーバインダーとして用いることで、放電性能、充放電サイクル性、安全性に優れた二次電池電極を得ることが提案されている。
そこで、本発明の目的は、有機溶媒は使用しない系において、集電体や活物質との結着力に優れ、得られた電極の柔軟性と導電性に優れている二次電池電極用バインダーを提供することにある。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリル酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。
さらに、上記各単量体の他に、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのラジカル重合可能な単量体を用いることもできる。
b)不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の含有量が、9重量部未満であると、電極塗工層の柔軟性が低下し、50重量部を超過すると、活物質や集電体との結着力が低下する。
アルケニル芳香族単量体の含有量が、2〜60重量部の範囲を外れると、電極塗工層の結着力と粘着性との両立が困難になる。
これらと共重合可能な単量体の含有量が、0.1重量部未満であると、電極用組成物の安定性が低下し、活物質や集電体との結着力が低下する。20重量部を超過すると、共重合体ラテックスの粘度が増大し、共重合体ラテックスの取り扱い性が低下する。特にエチレン性不飽和カルボン酸単量体の含有量は、共重合体ラテックスの粘度への影響が大きいことから、10重量部以下が好ましく、さらに好ましくは8重量部以下である。
上記(B+C)が28重量%未満であると、電極塗工層の柔軟性と導電性のバランスが劣る。好ましくは32重量%以上である。
上記(B+C)/Dの比率が、0.8から3.5の範囲を外れると、活物質や集電体との結着力、電極塗工層の柔軟性及び導電性のバランスが劣る。好ましくは1.0〜3.3である。
なお、b)、c)、d)成分の共重合体ラテックスの固形分に対する重量%の算出は、共重合体ラテックスの単量体組成の比率からして計算しても、重合後に得られた共重合体ラテックスを熱分解ガスクロマトグラフィーなどで分析することによって得られた各成分比から算出しても、いずれでも良い。
単量体組成物を乳化重合するには、乳化剤および重合開始剤を使用する。
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤などが挙げられ、1種または2種以上用いられる。好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
乳化剤は、単量体組成物100重量部に対して、例えば、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜3重量部の割合で配合される。
還元剤としては、硫酸第一鉄、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、カルボン酸類(例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸)およびその塩、還元糖類(例えば、デキストロース、サッカロース)、アミン類(例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン)などが挙げられる。好ましくは、硫酸第一鉄、カルボン酸類およびその塩が挙げられ、より好ましくは、硫酸第一鉄、エリソルビン酸が挙げられる。
連鎖移動剤は、例えば、単量体組成物100重量部に対して、0〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部の割合で配合される。
また、重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
また、得られた共重合体ラテックス中の共重合体の数平均粒子径は、特に制限はないが、例えば、50〜300nm、好ましくは、70〜250nmである。
具体的には、二次電池電極用バインダーを、負極構成材または正極活物質に配合することにより、電池電極用組成物が調製される。すなわち、二次電池電極用バインダーを負極構成材に配合することにより、二次電池の負極に用いられる負極用組成物が調製される。また、二次電池電極用バインダーを正極活物質に配合することにより、二次電池の正極に用いられる正極用組成物が調製される。
負極構成材または正極活物質100重量部に対する共重合体ラテックスの固形分が、0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な接着力が得られない傾向があり、10重量部を超えると、二次電池として組み立てたときに過電圧が著しく上昇し、電池特性を低下させる傾向がある。
電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としては、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの公知の方法を用いることができ、乾燥には、放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが用いられる。乾燥温度は、通常、50℃以上である。
(1)合成例1
耐圧性の重合反応器に、純水90部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、過硫酸カリウム1部を仕込み、十分攪拌した。
次いで、重合反応器に、表1に示す単量体投入段数における1段目の各単量体およびシクロへキセン4部を投入した。
別途、表1に示す単量体投入段数における2段目の各単量体のうちフマール酸を除く単量体およびt−ドデシルメルカプタンを混合して、単量体混合物を調製した。
次いで、重合反応器において、攪拌しながら内温を65℃に上昇させ、重合開始による発熱を確認した。
その後、重合開始から480分まで、内温を70℃に保ちながら、2段目の単量体混合物、純水10部、およびフマル酸1.0部の混合物を連続添加した。480分から540分まで、表1に示す単量体投入段数における3段目の各単量体およびt−ドデシルメルカプタンを連続添加した。540分から780分まで、内温を70℃に保って重合を継続した。
そして、重合開始から780分以降に、重合添加率が97%を超えたことを確認して、重合停止剤を添加し、内温を35℃以下に冷却した。
水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(a)を得た。
耐圧性の重合反応器に、純水110部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.15部、過硫酸カリウム0.45部を仕込み、十分攪拌した。
次いで、重合反応器に、シクロへキセン2部およびα−メチルスチレンダイマー0.1部を仕込んだ。
別途、表1に示す単量体投入段数における1段目の各単量体およびt−ドデシルメルカプタンを混合して、単量体混合物を調製し、その内の50%を重合反応器に仕込んだ。
次いで、重合反応器において、攪拌しながら内温を60℃に上昇させ、重合開始による発熱を確認した。
その後、重合開始から540分まで、内温を60℃に保ちながら、残りの単量体混合物、純水10部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部の混合物を連続添加した。540分から720分まで、内温を80℃に保って重合を継続した。
そして、重合開始720分以降に、重合添加率が97%を超えたことを確認して、重合停止剤を添加後、内温を35℃以下に冷却した。
水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを約6に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(b)を得た。
耐圧性の重合反応器に、純水130部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.4部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製 エマルゲン 109P)1部、硫酸第一鉄0.001部、エリソルビン酸0.08部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.01部を仕込み、十分攪拌した。
次いで、重合反応器に、表1に示す単量体投入段数における1段目の各単量体およびt−ドデシルメルカプタンを仕込んだ。
別途、表1に示す単量体投入段数における2段目の各単量体およびt−ドデシルメルカプタンを混合して、単量体混合物を調製した。
次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.06部を添加し、内温35℃に上昇させ、重合開始による発熱を確認した。
その後、重合開始から300分まで、内温35℃に保った後、300分から360分までの間に、内温を60℃まで昇温させた。360分から600分まで、内温を60℃に保ちながら、単量体混合物、純水15部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.4部、および過硫酸カリウム0.3部の混合物を連続添加した。600分から750分まで、内温を60℃に保った後、内温を70℃まで昇温し、750分から990分まで、内温を70℃に保って重合を継続した。
そして、重合開始990分以降に、重合添加率が97%を超えたことを確認して、重合停止剤を添加後、槽内温度を35℃以下に冷却した。
アンモニア水を用いて、pHを約7.5に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(c)を得た。
表1に記載した通りに、各単量体の種類および量を変更した以外は、(合成例3)と同様にして共重合体ラテックス(d)を得た。
比較合成例1
表2に記載した通りに、各単量体の種類および量を変更した以外は、(合成例1)と同様にして共重合体ラテックス(e)を得た。
比較合成例2、3
表2に記載した通りに、各単量体の種類および量を変更した以外は、(合成例3)と同様にして共重合体ラテックス(f)、(g)を得た。
比較合成例4、5
表2に記載した通りに、各単量体の種類および量を変更した以外は、(合成例2)と同様にして共重合体ラテックス(h)、(i)を得た。
各合成例および各比較合成例で得られた共重合体ラテックスを用いて、温度80℃、湿度85%の雰囲気にてラテックスフィルムを作製した。作製したラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させた。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を、乾燥後、秤量した。そして、ラテックスフィルムの重量に対する、トルエン不溶分の乾燥重量の百分率を算出した。結果を表1および表2に示す。
(1)負極用組成物の作製
導電性炭素質材料として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1重量部と、各合成例および各比較合成例で得られた共重合体ラテックス4重量部とを、負極用組成物の固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、各実施例および各比較例の負極用組成物を調製した。
(2)正極用組成物の作製
正極活物質としてLiCoO2を100部、導電剤としてアセチレンブラックを5部、結着剤として各合成例および各比較合成例で得られた4部とを全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、各実施例および各比較例の正極用組成物を調製した。
4.電極シートの作製
(1)負極シートの作製
各々の負極用組成物を、集電体となる厚さ20μmの銅箔の両面に塗布し、120℃で5分間乾燥し、熱プレスで圧縮成型して実施例1〜4および、比較例1〜5の負極をそれぞれ作成した。塗工層の厚みが80μm(片面あたり)の負極を得た。これらの評価内容については以下のとおりである。評価結果については表3に示した。
(2)正極シートの作製
各々の正極用組成物を、集電体となる厚さ20μmのアルニミウム箔の両面に塗布し、120℃で5分間乾燥し、熱プレスで圧縮成型して実施例1〜4および、比較例1〜5の正極をそれぞれ作成した。塗工層の厚みが80μm(片面あたり)の正極を得た。これらの評価内容については以下のとおりである。評価結果については表3に示した。
(1)電極塗工層の結着力の測定
各実施例および各比較例の電極シートの表面に、ナイフを用いて、塗工層から集電体に達する深さまでの切り込みを、2mm間隔で縦横それぞれ6本入れ、25個(5個×5個)のマス目を有する碁盤目を形成した。この碁盤目に粘着テープを貼着して直ちに引き剥がし、黒鉛の脱落の程度を目視評価した。結果を表3に示す。
◎:剥離なし。
○:1〜3個のマス目が剥離。
△:4〜10個のマス目が剥離。
×:11個以上のマス目が剥離。
各実施例および各比較例の電極シートを2枚重ね合わせ、卓上プレス機にて50℃で50Kg、5分間プレスした後に手で剥がし、以下の基準で評価した。結果を表3および表4に示す。
◎:簡単に剥がれる。
○:やや抵抗があるがスムーズに剥がれる。
△:かなり抵抗があり、剥がす時に音が生じる。
×:粘着しており剥がすのが困難である。
各実施例および各比較例の電極シートを、8cm×2cmの長方形に切り出し、東洋精機株式会社製ハンドロメーターを用い、スリット幅5mmで、電極シートの折り曲げ抵抗力を測定した。結果を表3に示す。
◎:抵抗力が60g未満。
○:抵抗力が60g以上75g未満。
△:抵抗力が75g以上90g未満。
×:抵抗力が90g以上。
各実施例および各比較例の電極用組成物を、市販のポリエステルフィルムに塗工し、130℃で5分間乾燥した。さらにロールプレスにて圧延することにより、塗工層厚みが約60μm、塗工層密度が約1.3g/cm3の塗工層サンプルを得た。
三菱化学アナリテック株式会社製ロレスタ−GPにて、塗工層の表面抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
Claims (1)
- a)脂肪族共役ジエン系単量体5〜35重量部、b)不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体9〜50重量部、c)シアン化ビニル単量体2〜40重量部、d)アルケニル芳香族単量体2〜60重量部及びe)エチレン系不飽和カルボン酸を含むその他共重合可能な単量体0.1〜20重量部から構成される単量体組成物(a)〜e)の合計は100重量部)を共重合して得られる共重合体ラテックスであって、
b)成分とc)成分の共重合体の固形分に対する含有量(B+C)が28重量%以上で、かつd)成分の共重合体の固形分に対する含有量D(重量%)との比率が、(B+C)/D=0.8〜3.5である共重合体ラテックスを含有し、水系の電池電極用組成物に用いられることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用水系バインダー。
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