以下、本発明の露光装置について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、例えばこれら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせてもよい。
図1は、本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体1を供給する液体供給機構10と、基板P上の液体1を回収する液体回収機構20とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体1により、投影光学系PLの像面側の光路空間を液体1で満たして、投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に液浸領域AR2を形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの終端部の光学素子(光学部材)2と基板Pの表面との間に液体1を満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影することによって基板Pを露光する。
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の終端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子(レンズ)2は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられており、光学素子2には液浸領域AR2の液体1が接触する。
本実施形態において、液体1には純水が用いられる。純水は、ArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
光学素子2は、螢石で形成されている。螢石は、水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2aのほぼ全面に液体1を密着させることができる。すなわち、本実施形態においては光学素子2の液体接触面2aとの親和性が高い液体(水)1を供給するようにしているので、光学素子2の液体接触面2aと液体1との密着性が高く、光学素子2と基板Pとの間の光路を液体1で確実に満たすことができる。なお、光学素子2は、水との親和性が高い石英であってもよい。また、光学素子2の液体接触面2aに親水(親液)処理を施して、液体1との親和性をより高めるようにしてもよい。
基板ステージPSTは、基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ52と、Zステージ52を支持するXYステージ53と、XYステージ53を支持するベース54とを備えている。基板ステージPSTは、リニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは、制御装置CONTにより制御される。Zステージ52を駆動することにより、Zステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置が制御される。また、XYステージ53を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。すなわち、Zステージ52は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ53は、基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
基板ステージPST(Zステージ52)上には移動鏡55が設けられている。また、移動鏡55に対向する位置にはレーザ干渉計56が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角は、レーザ干渉計56によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計56の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
また、基板ステージPST(Zステージ52)上には、基板Pを囲むように補助プレート57が設けられている。補助プレート57は、基板ホルダに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さの平面を有している。ここで、基板Pのエッジと補助プレート57との間には0.1〜2mm程度の隙間があるが、液体1の表面張力によりその隙間に液体1が流れ込むことはほとんどなく、基板Pの周縁近傍を露光する場合にも、補助プレート57により投影光学系PLの下に液体1を保持することができる。
液体供給機構10は、所定の液体1を基板P上に供給するものであって、液体1を送出可能な第1液体供給部11及び第2液体供給部12と、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれにその一端部を接続する第1、第2供給管11A、12Aとを備えている。第1、第2液体供給部11、12のそれぞれは、液体1を収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えている。
液体回収機構20は、基板P上の液体1を回収するものであって、液体1を回収可能な液体回収部21と、液体回収部21にその一端部を接続する回収管22(第1〜第4回収管22A〜22D)とを備えている。液体回収部21は、例えば真空ポンプ等の吸引装置(真空系)、及び回収した液体1を収容するタンク等を備えている。
投影光学系PLの終端部の光学素子2の近傍には流路形成部材30が配置されている。
流路形成部材30は、光学素子2のまわりを囲むように設けられた環状部材であり、基板P表面に対向するように配置された第1供給口13と第2供給口14とを備えている。また、流路形成部材30は、その内部に供給流路82(82A、82B)を有している。供給流路82Aの一端部は第1供給口13に接続し、他端部は第1供給管11Aを介して第1液体供給部11に接続している。供給流路82Bの一端部は第2供給口14に接続し、他端部は第2供給管12Aを介して第2液体供給部12に接続している。更に、流路形成部材30は、基板P表面に対向するように配置された回収口23を備えている。本実施形態において、流路形成部材30は4つの回収口23A〜23Dを有している。また、流路形成部材30は、その内部に回収口23(23A〜23D)に対応した回収流路84(84A〜84D)を有している。回収流路84A〜84Dの一端部は回収口23A〜23Dにそれぞれ接続し、他端部は回収管22A〜22Dを介して液体回収部21にそれぞれ接続している。本実施形態において、流路形成部材30は液体供給機構10及び液体回収機構20それぞれの一部を構成している。
なお、本実施形態において、第1〜第4回収管22A〜22Dは、1つの液体回収部21に接続されているが、回収管の数に対応した液体回収部21を複数(ここでは4つ)設け、第1〜第4回収管22A〜22Dのそれぞれを前記複数の液体回収部21のそれぞれに接続するようにしてもよい。
第1、第2液体供給部11、12の液体供給動作は、制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、第1、第2液体供給部11、12による基板P上に対する単位時間あたりの液体供給量をそれぞれ独立して制御可能である。第1、第2液体供給部11、12から送出された液体1は、供給管11A、12A、及び流路形成部材30の供給流路82A、82Bを介して供給口13、14より基板P上に供給される。また、液体回収部21の液体回収動作は、制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは、液体回収部21による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。回収口23から回収された基板P上の液体1は、流路形成部材30の回収流路84及び回収管22を介して液体回収部21に回収される。
流路形成部材30のうち回収口23より投影光学系PLに対して外側の下面(基板P側を向く面)には、回収口23で回収しきれなかった液体1を捕捉する所定長さの液体トラップ面70が形成されている。トラップ面70は、XY平面に対して傾斜した面であり、投影領域AR1(液浸領域AR2)に対して外側に向かうにつれて基板Pの表面に対して離れるように(上に向かうように)傾斜している。トラップ面70は、親液処理を施されている。基板Pの表面に塗布されている膜(レジスト、反射防止膜等)は、通常撥水性なので、回収口23の外側に流出した液体1は、トラップ面70で捕捉され、最終的には回収口23に回収される。なお、本実施形態における液体1は、極性の大きい水であるため、トラップ面70に対する親液処理(親水処理)として、例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで、このトラップ面70に対して親水性を付与する。
すなわち、液体1として水を用いる場合にはトラップ面70にOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを表面に配置させる処理が望ましい。
図2は、流路形成部材30に形成された第1、第2供給口13、14及び第1〜第4回収口23A〜23Dと、投影光学系PLの投影領域AR1との位置関係を示す平面図である。
図2において、投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向(非走査方向)を長手方向とする矩形状に設定されており、液体1が満たされた液浸領域AR2は投影領域AR1を含むように実質的に4つの回収口で囲まれた領域内であって、且つ基板P上の一部に形成される。第1供給口13は、投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、第2供給口14は、他方側(+X側)に設けられている。つまり、第1、第2供給口13、14は、走査方向(X方向)に関して投影領域AR1を挟むようにその両側に配置されている。第1、第2供給口13、14のそれぞれは、所定の長さを有する平面視略円弧状のスリット状に形成されている。第1、第2供給口13、14のY軸方向における長さは、少なくとも投影領域AR1のY軸方向における長さより長くなっている。液体供給機構10は、第1、第2供給口13、14より、投影領域AR1の両側で液体1を同時に供給可能である。
第1〜第4回収口23A〜23Dは、供給口13、14、及び投影領域AR1を取り囲むように配置されている。複数(4つ)の回収口23A〜23Dのうち、第1回収口23Aと第3回収口23CとがX軸方向に関して投影領域AR1を挟んでその両側に配置されており、第2回収口23Bと第4回収口23DとがY軸方向に関して投影領域AR1を挟んでその両側に配置されている。供給口13、14は、投影領域AR1と回収口23A、23Cとの間に配置された構成となっている。回収口23A〜23Dのそれぞれは、平面視略円弧状の所定の長さを有するスリット状に形成されている。回収口23A、23CのY軸方向における長さは、供給口13、14のY軸方向における長さより長くなっている。回収口23B、23Dのそれぞれも、回収口23A、23Cとほぼ同じ長さに形成されている。第1〜第4回収口23A〜23Dは、第1〜第4回収管22A〜22Dのそれぞれを介して液体回収部21に接続されている。
なお、本実施形態において、複数の回収口23A〜23Dのそれぞれは、ほぼ同じ大きさ(長さ)に形成されているが、互いに異なる大きさであってもよい。また、回収口23の数は4つに限られず、投影領域AR1及び供給口13、14を取り囲むように配置されていれば、任意の複数設けることができる。
図3は、流路形成部材30の概略斜視図である。
図3に示すように、流路形成部材30は投影光学系PLの先端部の光学素子2のまわりを囲むように設けられた環状部材であって、第1部材31と、第1部材31の上部に配置される第2部材32と、第2部材32の上部に配置される第3部材33とを備えている。流路形成部材30を構成する第1〜第3部材31〜33のそれぞれは、板状部材であってその中央部に投影光学系PL(光学素子2)を配置可能な穴部31A〜33Aを有している。第1、第2供給管11A、12Aの一端部は、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれに接続されており、他端部は流路形成部材30の内部に形成された供給流路82に接続されている。第1〜第4回収管22A〜22Dの一端部は、液体回収部21に接続されており、他端部は、流路形成部材30の内部に形成された回収流路84に接続されている。
図4は、第1〜第3部材のうち最下段に配置される第1部材31を示す斜視図である。
第1部材31は、投影光学系PLの−X側に形成され、基板Pに液体1を供給する第1供給口13と、投影光学系PLの+X側に形成され、基板P上に液体を供給する第2供給口14とを備えている。第1供給口13及び第2供給口14のそれぞれは第1部材31を貫通する貫通穴であって、平面視略円弧状に形成されている。更に、第1部材31は、投影光学系PLの−X側に形成され、基板P上の液体を回収する第1回収口23Aと、投影光学系PLの−Y側に形成され、基板P上の液体を回収する第2回収口23Bと、投影光学系PLの+X側に形成され、基板P上の液体を回収する第3回収口23Cと、投影光学系PLの+Y側に形成され、基板P上の液体を回収する第4回収口23Dとを備えている。
第1〜第4回収口23A〜23Dのそれぞれも、第1部材31を貫通する貫通穴であって、平面視略円弧状に形成されており、投影光学系PLの周囲に沿って略等間隔に設けられている。また、回収口23A〜23Dのそれぞれは、供給口13、14より投影光学系PLに対して外側に設けられている。供給口13、14の基板Pとの離間距離と、回収口23A〜23Dの基板Pとの離間距離とは、ほぼ同じに設けられている。つまり、供給口13、14の高さ位置と、回収口23A〜23Dの高さ位置とは、ほぼ同じに設けられている。
図5A及び図5Bは、第1〜第3部材のうち中段に配置される第2部材32を示す斜視図であって、図5Aは、上側から見た斜視図、図5Bは、下側から見上げた斜視図である。
第1、第2供給管11A、12Aの他端部、及び第1〜第4回収管22A〜22Dの他端部は、第2部材32に継手80、81を介して接続される。第2部材32は、投影光学系PLの−X側に形成され、第1部材31の第1供給口13に接続される第1供給穴部15と、投影光学系PLの+X側に形成され、第1部材31の第2供給口14に接続される第2供給穴部16とを備えている。第1、第2供給穴部15、16は貫通穴であって、平面視における形状及び大きさは、第1、第2供給口13、14に対応している。つまり、第1、第2供給穴部15、16は平面視円弧状のスリット状流路となっている。
また、第2部材32の上面32Sのうち、投影光学系PLの−X側には、管状の接続穴41Aを介して第1供給管11Aと接続するテーパ状溝部17が形成されている。テーパ状溝部17は、第1供給管11A(接続穴41A)との接続部から投影光学系PL側(第1供給穴部15側)に向かって水平方向に漸次拡がるように形成されており、その幅広部のY軸方向に関する長さと第1供給穴部15の長さとは、ほぼ同じである。そして、テーパ状溝部17と第1供給穴部15との間には堤防部43が設けられている。堤防部43は、第2部材32の上面32Sより低く且つテーパ状溝部17より高い凸部であって、そのY軸方向における長さは第1供給穴部15(第1供給口13)の長さとほぼ同じである。同様に、第2部材32の上面のうち投影光学系PLの+X側には、接続穴41Bを介して第2供給管12Aと接続するテーパ状溝部18が形成されている。テーパ状溝部18は、第2供給管12A(接続穴41B)との接続部から投影光学系PL側(第2供給穴部16側)に向かって水平方向に漸次拡がるように形成されており、その幅広部のY軸方向に関する長さと第2供給穴部16の長さとはほぼ同じである。そして、テーパ状溝部18と第2供給穴部16との間には堤防部44が設けられている。堤防部44は、第2部材32の上面32Sより低く且つテーパ状溝部18より高い凸部であって、そのY軸方向における長さは、第2供給穴部16(第2供給口14)の長さとほぼ同じである。第1部材31と第2部材32とを接続することにより、第1部材31に形成されている第1、第2供給口13、14と、第2部材32に形成されている第1、第2供給穴部15、16とのそれぞれが接続される。
第2部材32の下面32Dのうち、投影光学系PLの−X側には、管状の接続穴42Aを介して第1回収管22Aと接続するテーパ状溝部45が形成されている。テーパ状溝部45は、第1回収管22Aとの接続部から投影光学系PL側に向かって水平方向に漸次拡がるように形成されており、その幅広部のY軸方向に関する長さと第1部材31の第1回収口23Aの長さとはほぼ同じである。そして、第1部材31と第2部材32とを接続したとき、テーパ状溝部45の幅広部と第1回収口23Aとが接続されるようになっている。投影光学系PLの−Y側には、接続穴42Bを介して第2回収管22Bと接続するテーパ状溝部46が形成されており、第2回収管22Bとの接続部から投影光学系PL側に向かって水平方向に漸次拡がるように形成されている。そして、テーパ状溝部46の幅広部と第1部材31の第2回収口23Bとが接続されるようになっている。同様に、投影光学系PLの+X側及び+Y側のそれぞれには、接続穴42C、42Dを介して第3、第4回収管22C、22Dと接続するテーパ状溝部47、48が形成されており、第3、第4回収管22C、22Dとの接続部から投影光学系PL側に向かって水平方向に漸次拡がるように形成されている。そして、テーパ状溝部47、48の幅広部と第1部材31の第3、第4回収口23C、23Dとが接続されるようになっている。
図6は、第3部材33を示す図である。
第3部材33の下面は平坦面となっており、第2部材32と第3部材33とを接続したとき、第2部材32の上面32Sと第3部材33の下面とが接する。このとき、堤防部43、44は上面32Sより低いので、第3部材33の下面と接しない。
なお、本実施形態においては、流路形成部材30を3つの部材を使って形成しているが、部材の数はこれに限るものではない。また、供給口13、14への流路と、回収口23A、23B、23C、23Dへの流路とを各々別の部材に形成してもよいし、各口毎に別々の部材に流路を形成してもよい。
図7は、図3のA−A断面矢視図、図8は、図3のB−B断面矢視図である。
なお、以下の説明では、流路形成部材30のうち投影光学系PLの+X側に設けられた供給流路82B(82)及び回収流路84C(84)について説明するが、投影光学系PLの−X側に設けられた供給流路82A、投影光学系PLの−X側の回収流路82A、−Y側の回収流路82B、及び+Y側の回収流路82Dも同等の構成を有する。
図7において、供給流路82Bは、その一端部を継手80を介して供給管12Aに接続し、他端部をテーパ状溝部18に接続した接続穴41Bと、テーパ状溝部18と第3部材33との間に形成されたバッファ空間部90と、堤防部44と第3部材33との間に形成され、バッファ空間部90より狭い狭流路部91と、その上端部を狭流路部91に接続し、下端部を供給口14に接続した供給穴部16とを備えている。バッファ空間90は、比較的広い流路を形成している。バッファ空間部90及び狭流路部91において、液体1は、ほぼ水平方向(XY平面方向)に流れ、供給穴部16において、液体1は、ほぼ鉛直方向(−Z方向)に流れる。つまり、供給流路82Bは、その途中に曲がり角部92を有しており、狭流路部91は、その曲がり角部92近傍(直前)に設けられた構成となっている。
狭流路部91は、バッファ空間部90よりも流路下流側に設けられている。つまり、曲がり角部92近傍の狭流路部91は、その流路手前であるバッファ空間部90よりも狭められた構成となっている。本実施形態において、狭流路部91は、第2部材32より上方に突出した堤防部44と第3部材33との間に形成されており、バッファ空間部90に対して鉛直方向に狭められている。
液体供給部12から送出された液体1は、供給管12Aを介して供給流路82Bのうち接続穴41Bに流入する。流入した液体1は、バッファ空間部90をほぼ水平方向に流れ、狭流路部91を流れた後、曲がり角部92において基板P側に向きを変えられ、供給穴部16を介して供給口14より基板P上に供給される。
一方、回収流路84Cは、その一端部を回収口23Cに接続し、他端部を接続穴42Cに接続したバッファ空間部94を有している。真空ポンプを有する液体回収部21の駆動により、基板P上の液体1は、回収流路84Cに回収口23Cを介して鉛直上向き(+Z方向)に流入する。このとき、回収口23Cからは、基板P上の液体1とともにその周囲の気体(空気)も流入(回収)する。回収流路84Cに流入した液体1は、バッファ空間部94の一端部側で水平方向にその流れの向きを変えられ、バッファ空間部94をほぼ水平方向に流れる。その後、接続穴42Cを流れ、回収管22Cを介して液体回収部21に送られる。
第1〜第3部材31〜33は、例えばステンレススチールやチタン、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金等の金属により形成されており、各部材31〜33の穴部や溝部は、例えば放電加工により形成される。放電加工により各部材31〜33に対して加工した後、これら各部材31〜33を接着剤あるいは締結部材等を用いて接合することにより、流路形成部材30が形成される。なお、各部材31〜33の接液面は、電解研磨あるいは不導体酸化膜処理、あるいはその両方を施しておくとよい。各部材31〜33を接合することで、バッファ空間部90及び狭流路部91を含む供給流路82B(82)、及びバッファ空間部94を含む回収流路84C(84)が形成される。なお、流路形成部材30を含む液体供給機構10及び液体回収機構20を構成する各部材は、例えばポリ四フッ化エチレン等の合成樹脂により形成されていてもよい。
液体供給機構10及び液体回収機構20の一部を構成する流路形成部材30の内側面30Tと、投影光学系PLのうち液体1と接する終端部の光学素子2の側面2Tとの間には微小間隙100が形成されている。微小間隙100は、投影光学系PLの光学素子2と流路形成部材30とを振動的に分離するために設けられたものであり、これにより、液体回収機構10や液体回収機構20で発生した振動が、投影光学系PLに伝達することを防ぐことができる。微小間隙100は、投影領域AR1と供給口14とを極力近づけるために、液体1の浸透現象を引き起こす程度に小さく形成されており、流路形成部材30の周囲の気体空間と接続されている。流路形成部材30を含む液体供給機構10及び液体回収機構20のそれぞれは、投影光学系PL及びこの投影光学系PLを支持する支持部材以外の支持部材で支持されている。
微小間隙100を形成する流路形成部材30の内側面30Tと光学素子2の側面2Tとの双方には、撥液(撥水)処理が施されている。撥液処理が施された撥液処理部101A、101Bは、液体1と接触する微小間隙100の下端部から離れた部分に設けられている。流路形成部材30の内側面30T及び光学素子2の側面2Tのうち微小間隙100の下端部と撥液処理部101A、101Bとの間の未撥液処理部102A、102Bの大きさ(Z軸方向の距離)は、例えば投影光学系PLと基板Pとの間の距離(所謂ワーキングディスタンス)とほぼ同じに設定されている。なお、図7及び図8に示す例では、撥液処理部101Aは、光学素子2の側面2Tのうち微小間隙100の下端部近傍を除いたほぼ全面に設けられているが、その一部に設けられた構成であってもよいし、不連続に(島状に)設けられた構成であってもよい。同様に、撥液処理部101Bは、流路形成部材30の内側面30Tのうち微小間隙100の下端部近傍を除いたほぼ全面に設けられる構成の他に、その一部に設けられた構成であってもよい。
撥液処理としては、例えば撥液性を有する材料を使ったコーティング処理が挙げられる。撥液性を有する材料としては、例えばフッ素系化合物やシリコン化合物、あるいはポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。また、表面処理のための薄膜は単層膜であってもよいし複数の層からなる膜であってもよい。
なお、流路形成部材30の内側面30T及び光学素子2の側面2Tの撥液面における液体1の接触角は、70度以上、好ましくは90度以上とである。
図9は、液体回収部21の要部拡大図である。
液体回収部21には、回収管22に接続された気液分離器60と、その気液分離器60に排気管69を介して接続され、マスフローコントローラや真空ポンプ等を有する真空系68とが設けられている。ここで、上述したように、回収口23からは基板P上の液体1とともにその周囲の気体も回収される。気液分離器60は、回収口23より回収した液体と気体とを分離する。気液分離器60は、タンク61と、タンク61内部に設けられ、回収管22と接続する分離管62とを備えている。タンク61の上部は真空系68に接続されており、タンク61の下部には排出用管部63が設けられている。排出用管部63にはこの排出用管部63の流路を開閉するバルブ64が設けられている。
なお、分離器60は、複数の第1〜第4回収管22A〜22Dのそれぞれに設けられてもよいし、複数の第1〜第4回収管22A〜22Dを一旦集合した後、この集合管に設けられてもよい。
図10は、分離管62を下方から見た拡大図である。
図10に示すように、分離管62は、渦巻き状(螺旋状)に曲げられており、その下面には複数のスリット状の穴部65が所定間隔で形成されている。したがって、真空系68が駆動されると、タンク61及び回収管22が負圧となって、回収口23を介して基板P上の液体1がその周囲の気体とともに回収される。回収口23より回収された液体及び気体は回収管22を通ってタンク61内に設けられた分離管62を流れる。分離管62を流れることで、重力作用によって液体1は、穴部65を介して落下し、タンク61下部に溜まる。なお、バルブ64を作動して排出用管部63を開放することにより、タンク61内に溜まった液体1を外部に排出することができる。一方、気体はタンク61上に接続された排気管69を介して真空系68に吸引される。このように、気液分離器60によって回収した液体と気体とを分離することにより、真空ポンプ等を有する真空系68に液体1が流入しないので、その真空ポンプの故障等の不都合を防止することができる。なお、真空系68に真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について説明する。
ここで、本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光するものであって、走査露光時には、投影光学系PLの先端部直下の矩形状の投影領域AR1にマスクMの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対して、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ53を介して基板Pが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。基板P上には複数のショット領域が設定されており、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピング移動によって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域に対する走査露光処理が順次行われる。
走査露光処理を行うに際し、制御装置CONTは、液体供給機構10を駆動し、基板P上に対する液体供給動作を開始する。液体供給機構10の第1、第2液体供給部11、12のそれぞれから送出された液体1は、供給管11A、12Aを流通した後、流路形成部材30内部に形成された供給流路82A、82Bを介して基板P上に供給される。
例えば、第2液体供給部12から送出された液体1は、第2供給管12Aを流通した後、水平方向に漸次広がるように形成されたバッファ空間部90を流通することで水平方向(Y軸方向)に拡がる。ここで、バッファ空間部90の流路下流側には、堤防部44が形成されているため、第2液体供給部12から送出された液体1は、バッファ空間部90に一旦貯められる。液体1は、バッファ空間部90に所定量以上貯まった後(液体1の水位が堤防部44の高さ以上になった後)、狭流路部91を介して供給穴部16に流れる。こうして、液体1の供給口14への供給が開始される。これにより、バッファ空間部90から流れ出た液体1は、Y軸方向を長手方向とするスリット状の供給口14からほぼ均一に基板P上に供給される。つまり、狭流路部91(堤防部44)が形成されていないと、テーパ状溝部18を流れる液体1の流量は、テーパ状溝部18の幅方向中央部のほうが端部より多くなるため、Y軸方向を長手方向とする供給口14の各位置において基板P上に対する液体供給量が不均一となる場合がある。しかしながら、所定量以上の液体1を貯めてから供給口14への液体供給が開始されるように狭流路部91を設けることによってバッファ空間部90を形成したことにより、液体1は、Y軸方向を長手方向とする略円弧状の供給口14の各位置においてほぼ均一な液体供給量で基板P上に供給される。同様に、第1液体供給部11から送出された液体1も、バッファ空間部90に所定量以上貯められてから供給口13への供給が開始されるので、スリット状の供給口13から基板P上にほぼ均一に供給される。また、供給口13,14からの供給を開始した後も、バッファ空間90を介して供給口13,14へ液体1が流れ続けるので、供給口13,14の各位置において均一な量で基板P上への液体供給を続けることができる。
ここで、供給流路82B(82A)の曲がり角部92近傍には例えば供給開始時などに気泡が残存しやすいが、この曲がり角部92近傍の供給流路82Bを狭めて狭流路部91を形成したことにより、狭流路部91を流れる液体1の流速を高速化でき、その高速化された液体1の流れにより気泡を供給口14を介して供給流路82B外部に排出できる。そして、気泡を排出した後、液浸露光動作を実行することにより、液浸領域AR2に気泡がない状態で露光処理できる。
本実施形態において、液体供給機構10は、供給口13、14より投影領域AR1の両側から基板P上への液体1の供給を同時に行う。これにより、供給口13、14から基板P上に供給された液体1は、投影光学系PLの終端部の光学素子2の下端面と基板Pとの間に良好に濡れ拡がり、液浸領域AR2を少なくとも投影領域AR1より広い範囲で形成する。
また、制御装置CONTは、液体回収機構20の液体回収部21を駆動し、液体供給機構10による液体1の供給動作と並行して、基板P上の液体回収動作を行う。これにより、供給口13、14より投影領域AR1に対して外側に流れる基板P上の液体1は、回収口23A〜23Dより回収される。回収流路84(84A〜84D)の一部も、その一端部が回収口23(23A〜23D)のY軸方向とほぼ同じ長さを有し、回収管22に向かって漸次縮小するテーパ状に形成されたバッファ空間部94となっているため、回収口23の各位置においてほぼ均一な液体回収量で基板P上の液体1を回収することができる。
制御装置CONTは、液体供給機構10及び液体回収機構20により基板Pの表面に対する液体1の供給と並行して基板P上の液体1の回収を行いつつ、基板Pを支持する基板ステージPSTをX軸方向(走査方向)に移動しながら、マスクMのパターン像を投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介して基板P上に投影露光する。
このとき、液体供給機構10は走査方向に関して投影領域AR1の両側から供給口13、14を介して液体1の供給を同時に行っているので、液浸領域AR2は均一且つ良好に形成されている。また、液体回収機構20は、投影領域AR1を囲む複数の回収口23A〜23Dを介して投影領域AR1の走査方向両側を含む投影領域AR1周囲の複数の位置において液体1の回収を同時に行っているため、液体1の基板P周囲への流出や飛散を防止している。
なお、本実施形態では、投影領域AR1の走査方向両側から基板Pに対して液体1を供給する際、制御装置CONTは、液体供給機構10の第1、第2液体供給部11、12の液体供給動作を制御し、走査方向に関して、投影領域AR1の手前から供給する単位時間あたりの液体供給量を、その反対側で供給する液体供給量よりも多く設定する。例えば、基板Pを+X方向に移動しつつ露光処理する場合、制御装置CONTは、投影領域AR1に対して−X側(すなわち供給口13)からの液体量を、+X側(すなわち供給口14)からの液体量より多くし、一方、基板Pを−X方向に移動しつつ露光処理する場合、投影領域AR1に対して+X側からの液体量を、−X側からの液体量より多くする。ここで、例えば基板Pが+X方向に移動することにより、投影領域AR1に対して+X側に移動する液体量が増し、+X側に液体回収位置を設けられている回収口23Cが液体1を全て回収しきれない場合がある。ところが、+X側の回収口23Cで回収しきれなかった液体1はこの液体回収位置より+X側に設けられているトラップ面70で捕捉されるため、基板Pの周囲等に流出したり飛散したりすることがない。
また、上述したように、流路形成部材30と光学素子2との間には微小間隙100が設けられており、これにより液体供給機構10や液体回収機構20で生じた振動が投影光学系PLに伝達する不都合を防止しているが、この間隙が大きすぎると装置全体の大型化を招く。また、液体1の供給口及び回収口が投影領域AR1より離れた位置に設けられることになるため、投影領域AR1を含むように良好に液浸領域AR2を形成できない可能性が生じるとともに、液体使用量が増すという不都合も生じる。また、その大きな間隙より液浸領域AR2に気体(気泡)が混入する可能性も生じる。そこで、本実施形態では、液体1の浸透現象を引き起こす程度の大きさに微小間隙100が設けられている。これにより、装置の大型化を防ぎつつ、間隙から液浸領域AR2に気体が入り込んでしまう不都合を防止することができる。一方で、微小間隙100に液体1が浸入した場合、浸入した液体1は淀んだ状態となるため清浄度が低下し、例えば液浸露光中にその清浄度の低下した微小間隙100の液体1が液浸領域AR2に混入してしまう不都合が生じる可能性がある。そこで、微小間隙100を形成する流路形成部材30の内側面30T及び光学素子2の側面2Tのそれぞれに撥液処理を施すことで微小間隙100に対する液体1の浸入を防止できる。
図11は、微小間隙100の拡大図である。
図11に示すように、流路形成部材30の内側面30T及び光学素子2の側面2Tに撥液処理が施されているため、液浸領域AR2の液体1の上昇現象はおこらず、撥液処理部101A、101Bの間に液浸領域AR2の液体1は、入り込まない。一方、微小間隙100のうち未撥液処理部102A、102Bの間には浸透現象により液体1が入り込む。この入り込んだ液体1により、撥液処理部101A、101Bの間に存在する気体が液浸領域AR2に混入する不都合が抑制されている。つまり、図12に示すように、微小間隙100を形成する流路形成部材30の内側面30T及び光学素子2の側面2Tの下端部まで撥液処理を施した場合、微小間隙100の下端部にまで気体(空気)が満たされることになり、液浸走査露光中に液浸領域AR2にその微小間隙100の気体(気泡)が入り込む不都合が生じる可能性がある。したがって、微小間隙100への液体1の浸透防止という点では、図12のように下端部まで撥液処理してもよいが、本実施形態のように、液浸領域AR2の液体1と接触する微小間隙100の下端部近傍の所定領域を未撥液処理部102A、102Bとし、浸透現象により液体1を微小間隙100の下端部近傍に配置可能とすることで、微小間隙100に存在する気体が液浸領域AR2に入り込む不都合も防止できる。なお、図11において、この未撥液処理部102A、102Bの間に入り込んだ液体1の量は僅かであって淀むことがないので、液浸露光中に清浄度の低下した液体1が液浸領域AR2に混入することはない。
なお、本実施形態において、微小間隙100を形成する流路形成部材30の内側面30Tと光学素子2の側面2Tとの双方に撥液処理が施されているが、少なくともいずれか一方の面に撥液処理を施すことによって、微小間隙100に液体1が入り込む不都合を回避できる。
以上説明したように、液体1をバッファ空間部90に所定量以上貯めてから供給することにより、供給口13、14に対する液体1の流量分布や流速分布を均一化できる。したがって、供給口13、14から基板P上に液体1を均一に供給できる。
また、装置スペースの都合等により、供給流路82の一部に曲がり角部92を形成する必要がある場合、この曲がり角部92近傍には気泡が残存しやすくなるが、曲がり角部92近傍の流路を狭まることで液体1の流速を高速化し、その高速化された液体1の流れにより気泡を供給口13、14を介して外部に排出できる。そして、気泡を排出した後、液浸露光動作を実行することにより、液浸領域AR2に対する供給流路82からの気泡の混入を防止でき、液浸領域AR2に気泡が存在しない状態で露光処理できる。特に、本実施形態のように、供給流路82の一部を堤防部44(43)により鉛直方向に狭めることにより、バッファ空間部90をほぼ水平に流れてきた液体1の流速を高速化して曲がり角部92に当てることができ、曲がり角部92近傍に存在する気泡を良好に除去することができる。
流路形成部材30は、板状部材である第1〜第3部材31〜33を組み合わせて形成したブロック状部材であり、例えば液体回収の際に空気をかみこんで液体1を吸引した際に発生する振動を、流路形成部材30で吸収することができる。また、複数の板状部材31〜33のそれぞれに対して放電加工等の加工を施して流路の一部を形成し、これらを組み合わせることで液体1の流路を形成するようにしたので、供給流路82及び回収流路84のそれぞれを容易に形成することができる。
なお、本実施形態において、流路形成部材30を形成する部材31〜33は、四角形の板状部材であるが、円形の板状部材であってもよいし、X軸方向に長い楕円状の板状部材であってもよい。
なお、本実施形態において、堤防部44(43)は、断面視矩形状であるが、図13に示すように、断面視円弧状(曲面状)であってもよい。あるいは、断面視三角形や五角形などの多角形状でもよい。また、バッファ空間部の効果は薄れてしまうが、図14に示すように、堤防部44を第3部材33の下面に設け、その堤防部44とテーパ状溝部18との間に狭流路部91を形成するようにしてもよい。
本実施形態において、堤防部44は供給流路82の曲がり角部92近傍に設けられているが、図15に示すように、曲がり角部92に対して僅かに離れた位置に設けられてもよい。図15に示す例では、堤防部44は曲がり角部92より流路上流側に設けられている。こうすることによっても、堤防部44の流路上流側にバッファ空間部90を形成することができ、供給口14(13)からの液体1の供給を均一化できる。一方、堤防部44を曲がり角部92に近づけた方が、この曲がり角部92における液体1の流速を高速化できるので、曲がり角部92での気泡の残存を防止することができる。
本実施形態において、堤防部44(43)はその長手方向において一様の高さを有しているが、図16に示すように、高さ分布があってもよい。図16に示す堤防部44は、その幅方向中央部の高さが両端部より高くなっている。テーパ状溝部18では、幅方向中央部における液体1の流量のほうが端部における流量より多いため、堤防部44の幅方向中央部を高くして狭流路部91の幅方向中央部を両端部より狭めることにより、液体1を供給口14を介してより均一に基板P上に供給できる。
なお、堤防部44(43)は、供給流路82の幅方向全域に亘って設けられていることが好ましいが、その一部に設けられていてもよい。あるいは、複数の分割された堤防部が不連続に(島状に)配置されている構成でもよい。こうすることによっても流路が狭まるので液体1の流速を高速化でき、供給流路82に存在する気泡を外部に排出することができる。
なお、堤防部(狭流路部)は、基板P上の液体1を回収する回収流路84に形成されていてもよい。これにより、スリット状の回収口23から基板P上の液体1を均一に回収できる。
なお、本実施形態において、液体供給機構10の一部を構成する供給流路82及び液体回収機構20の一部を構成する回収流路84のそれぞれは、流路形成部材30内部に一体で設けられているが、図17に示すように、供給流路82と回収流路84とは互いに異なる部材により形成されていてもよい。図17において、投影光学系PL(光学素子2)の−X側には供給流路82Aを形成する第1供給部材120が設けられ、+X側には供給流路82Bを形成する第2供給部材121が設けられている。第1、第2供給部材120、121それぞれは、テーパ状溝部17、18、及び堤防部43、44を有しており、平面視略円弧状の供給口13、14より基板P上に液体1を供給する。また、投影光学系PLの−X側及び+X側のそれぞれには回収流路84A、84Cを形成する第1、第3回収部材122、124が設けられ、−Y側及び+Y側のそれぞれには回収流路84B、84Dを形成する第2、第4回収部材123、125がそれぞれ設けられている。第1〜第4回収部材122〜125のそれぞれは平面視略円弧状の回収口23A〜23Dより基板P上の液体1を回収する。この場合においても、液体供給機構を構成する第1、第2供給部材120、121の内側面120T、121Tと光学素子2の側面2Tとの間に微小間隙100が形成されているとともに、液体回収機構を構成する第2、第4回収部材123、125の内側面123T、125Tと光学素子2の側面2Tとの間にも微小間隙100が形成されている。そして、内側面120T、121T、123T、125T、及び側面2Tのそれぞれに撥液処理が施されている。
なお、本実施形態において、基板Pに対向するように配置された供給口13、14及びそれに接続する供給穴部15、16は、基板Pの表面に対してほぼ垂直に設けられ、液体1を基板Pに対して垂直方向から供給しているが、基板Pに対して液体1を斜め方向から供給するように供給口14及び供給穴部16が形成されていてもよい。換言すれば、曲がり角部92はバッファ空間部90を水平方向に流れてきた流体1の向きを垂直方向に変える構成の他に、基板Pに向かって斜め方向に向きを変える構成であってもよい。この場合においても、バッファ空間部90で液体1を所定量貯めた後、狭流路部91を介して基板Pに液体1を供給することで、気泡の発生を抑えつつスリット状の供給口14から液体1をほぼ均一に基板P上に供給することができる。
なお、流路形成部材30は、投影光学系PLの終端部の光学素子2の近傍に微小間隙100を介して設けられているが、光学素子2の先端側面が光学素子2を保持する部材で覆われている場合には、その部材の側面と流路形成部材30の側面30Tとの少なくとも一方を撥液処理すればよい。
また、上述の実施形態においては、流路形成部材30の側面30Tが光学素子2の側面2Tと対向するように配置されているが、別の部材が光学素子2の側面2Tと対向している場合にも、光学素子2の側面2Tとそれに対する部材の表面(側面)との少なくとも一方を撥液処理(撥液性)にすればよい。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLの終端の光学素子2の側面2Tとそれに対向する部材の側面の少なくとも一方を撥液処理(撥液性)にしているが、例えば国際公開第2004/019128号に開示されているように、投影光学系PLの終端の光学素子のマスクM側の光路空間も液体で満たされている場合には、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち終端の光学素子に対してマスクM側に配置された光学素子の側面とそれに対向する部材の表面(側面)の少なくとも一方を撥液処理することによって、その隙間への液体の浸入やその隙間での液体の滞留を防止することができる。なお、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、国際公開第2004/019128号パンフレットの記載内容を援用して本文の記載の一部とする。
なお、本実施形態において、供給口は、所定の長さを有するスリット状に形成されているが、例えば複数の仕切部材により複数に分割された分割供給口としてもよいし、あるいは直管部を複数並べた構成としてもよいし、直管部とスリット状供給口とを組み合わせた構成であってもよい。また、供給口にスポンジ状部材等の多孔質体を設けてもよい。同様に、回収口に仕切部材を設けてもよいし複数の直管部で形成してもよい。また、多孔質体や仕切部材、あるいは直管部は、流路形成部材30の供給流路82の流路途中に設けられてもよい。
なお、本実施形態では、液体供給機構10の供給口13、14は、投影領域AR1に対して走査方向(X軸方向)両側に設けられている構成であるが、非走査方向(Y軸方向)両側に別の供給口を設け、これら複数の供給口を組み合わせて液体供給を行うようにしてもよい。あるいは、供給口は投影領域AR1の周りを全て囲むように環状に設けられてもよい。
なお、本実施形態では、トラップ面70は、第1部材31の下面において投影領域AR1の走査方向両側のみに設けられている構成であるが、投影領域AR1に対して非走査方向に設けられた構成とすることも可能である。一方、液体1が流出しやすいのは走査方向両側であるため、投影領域AR1の走査方向両側のみにトラップ面70を設ける構成であっても、流出しようとする液体1を良好に捕捉できる。また、トラップ面70はフラット面である必要は無く、例えば複数の平面を組み合わせた形状であってもよい。あるいは、トラップ面70は、曲面状であってもよく、表面積拡大処理、具体的には粗面処理を施されていてもよい。
なお、上記実施形態において、液体供給機構10や液体回収機構20のうち液体1が流れる流路の表面に対して親液処理を施すことができる。特に、液体回収機構20の回収口23を含む回収流路84に親液処理を施しておくことにより、液体回収を円滑に行うことができる。また、液体供給機構10の供給口及び供給流路にも親液処理を施すことができる。
上記実施形態において、液体1は、純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は、環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nは、ほぼ1.44であるため、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は、空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体1の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体1で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体1を満たす構成であってもよい。
なお、本実施形態の液体1は水であるが水以外の液体であってもよい。例えば露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は、水を透過しないので、液体1としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)のフッ素系流体であってもよい。また、液体1としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
この場合も、表面処理は、用いる液体1の極性に応じて行われる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、ウエハ等の被処理基板を別々に載置してXY方向に独立に移動可能な2つのステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平10−163099号及び特開平10−214783号(対応米国特許6,341,007、6,400,441、6,549,269及び6,590,634)、特表2000−505958号(対応米国特許5,969,441)あるいは米国特許6,208,407に開示されており、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、それらの開示を援用して本文の記載の一部とする。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。ステージにリニアモータを用いた例は、米国特許5,623,853及び5,528,118に開示されており、それぞれ本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、これらの文献の記載内容を援用して本文の記載の一部とする。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば、米国特許5,528,118(特開平8−166475号公報)に詳細に開示されており、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、この文献の記載内容を援用して本文の記載の一部とする。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば、米国特許第5,874,820(特開平8−330224号公報)に詳細に開示されており、本国際出願で指定または選択された国の法令で許容される限りにおいて、この文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。
各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図18に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。