JP2008308385A - 酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷が少なく、安価でありながら、高密度が得られる酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得て、該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得て、該成形体を常圧焼成することにより、スパッタリングターゲットとなる焼結体を得る。
【選択図】なし
Description
塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、
該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、
該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、
を有する。
この工程では、主原料粉である酸化インジウム粉と、添加酸化物と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒粉を得る。
本工程では、造粒粉を加圧成形することにより成形体を得る。加圧成形には、冷間静水圧プレス(CIP)、一軸プレス(CP)などを使用できるが、等方から圧力をかけられるので均一な成形体が得られることから、冷間静水圧プレス(CIP)を用いることが好ましい。成形圧力は、100〜300MPaとすることが好ましい。100MPa未満では、成形体密度および成形体強度の低下により、製品歩留りが悪化するためである。一方、300MPaを超えても、その効果はさらには向上しない。
成形工程で得られた成形体を1200〜1600℃で常圧焼成することにより、成形体を焼結させ、焼結体が得られる。かかる焼結体を所定の形状に加工することにより、スパッタリングターゲットが得られる。本発明によれば、加圧焼結などの特殊な焼結方法を用いなくても、簡便な常圧焼成によって、高密度の焼結体からなるスパッタリングターゲットが得られる。従って、焼成には、通常の電気炉などを用いることができる。
次に、原料粉である酸化インジウム粉およびその製造方法について説明する。
金属インジウム(10kg)を塩酸(20L)に溶解させた塩化インジウム水溶液に、25%アンモニア水溶液を300rpmで攪拌しつつ、当量分、供給し、該溶液を中和して、塩化アンモニウム水溶液と水酸化インジウム(乾燥質量で14kg)からなるサスペンションを得た。
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して3.5質量%の酸化錫(平均粒子径1.3μm)、酸化インジウムに対して10質量%の酸化セリウム(平均粒子径0.6μm)および酸化インジウムに対して0.5質量%の酸化チタン(平均粒子径0.3μm)とした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は7.09g/cm3であり相対密度は99.3%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して7.5質量%(実施例5)および10.7質量%(実施例6)の酸化亜鉛(平均粒子径0.5μm)とし、成形体の焼成温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は6.89〜6.95g/cm3であり相対密度はいずれも98.9%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して15質量%の酸化錫(平均粒子径0.5μm)および酸化インジウム粉に対して15質量%の酸化亜鉛(平均粒子径0.5μm)とし、成形体の焼成温度を1450℃にした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は6.72g/cm3であり相対密度は98.0%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の80%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して56倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回は16倍とした。この点以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、50ppmであった。また、得られたスパッタリングターゲットの密度を求めた。密度は7.07〜7.13g/cm3であり相対密度は98.6〜99.6%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は7.06g/cm3であり相対密度は98.9%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例5および6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.75〜6.80g/cm3であり相対密度は96.7〜96.8%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.60g/cm3であり相対密度は96.2%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の120%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して84倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回目は24倍とした。また、ロータリーフィルターを使用せずに遠心分離機を用いて濾過し、水酸化物を洗浄して水酸化インジウムを得たこと以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、分析下限である10ppmであった。
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は7.09g/cm3であり相対密度は99.3%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例5および6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.88〜6.93g/cm3であり相対密度は98.6〜98.7%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.72g/cm3であり相対密度は98.0%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の50%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して35倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回目は10倍とした。この点以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、200ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.51〜6.59g/cm3であり相対密度は90.8〜92.0%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
比較例1〜3で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.60g/cm3であり相対密度は92.4%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例5)の75%とした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して52.5倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回目は15倍とした。この点以外は、実施例5と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、60質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.69g/cm3であり相対密度は95.2%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例5)の70%としたこと以外は、実施例5と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、70質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.56g/cm3であり相対密度は93.3%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例6)の75%としたこと以外は、実施例6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、60質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.65g/cm3であり相対密度は95.4%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例6)の70%としたこと以外は、実施例6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、70質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.50g/cm3であり相対密度は93.3%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
比較例1で合成した塩素を200ppm含有する酸化インジウムを用い、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。ターゲットの密度は6.25g/cm3であり相対密度は91.1%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な低密度であった。
Claims (9)
- 塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、
該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、
該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、
を有する酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記酸化インジウム粉の原料として、前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物とからなるサスペンションを得て、該サスペンションを濾過後、水酸化物を純水により洗浄することにより得られる水酸化インジウムを用いる請求項1に記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記酸化インジウム粉の原料として、前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物からなるサスペンションを得て、該サスペンションを、連続加圧クロスフロー濾過方式により、水溶液分を純水と置換しつつ循環洗浄することにより得られる水酸化インジウムを用いる請求項1に記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記塩化インジウム含有水溶液を、金属インジウムを塩酸に溶解させることにより得る請求項1〜3のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記水酸化インジウムの焼成を、酸化性雰囲気中で、800〜1100℃の温度で行う請求項1〜4のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記造粒に、噴霧乾燥法を用いる請求項1〜5のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記洗浄の後、水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンションにアンモニア水溶液を添加して、サスペンションのアンモニア濃度を0.1〜1.0mol/Lとして、60〜100℃で、所定時間、保持した後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する工程、および、水酸化物を乾燥させ、アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した硝酸アンモニウム水溶液に分散させることによりサスペンションを得て、該サスペンションを、所定時間、保持した後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する工程、をさらに有する請求項2〜6に記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記洗浄を、連続加圧クロスフロー濾過方式により、水溶液分を純水と置換しつつ行う循環洗浄とする請求項7に記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記酸化インジウム粉として、BET比表面積が7.0〜12.0m2/gであり、SEM観察により求めた一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数が35%以下である酸化インジウム粉を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
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