JP4807331B2 - 酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、透明導電膜の成膜に用いられる酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
液晶などの表示デバイスに透明導電膜材料が広く用いられている。透明導電膜材料としては、酸化インジウムにドープ元素を添加して導電性を改善したものが挙げられ、例えば、ITO(酸化インジウム−酸化錫)が広く用いられている。このような酸化インジウム材料から透明導電膜などのセラミック機能膜を製造する方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法およびスプレー熱分解法などがある。特に、スパッタリング法は、大面積化が容易で、高性能な膜を得られることから、工業的に広く利用されている。例えば、スパッタリング法による酸化インジウム系透明導電膜の成膜には、主に酸化インジウム系スパッタリングターゲットが用いられている。
かかるスパッタリングターゲットは、原料粉や有機バインダなどを水と混合してから粉砕し、造粒粉を得て、該造粒粉を加圧成形して成形体とし、該成形体を焼成により焼結させて焼結体とすることにより得られる。
スパッタリング法において、成膜に用いられるスパッタリングターゲットが低密度であると、スパッタリングターゲット上にパーティクルが付着し、堆積することにより、ノジュールと呼ばれる黒色の付着物が生じて異常放電を生じ、成膜安定性が害される。また、ノジュールが発生すると、成膜により得られる薄膜の性能が悪化し、薄膜欠陥の原因となる。よって、スパッタリングターゲットには、高密度であることが要求される。
酸化インジウム系スパッタリングターゲットの原料である酸化インジウム粉の一般的な製造方法としては、インジウム含有水溶液を用いて水酸化インジウムを中和沈殿させ、得られた水酸化インジウムを焼成する方法が挙げられる。例えば、特開2003−277052号公報(特許文献1)には、特定のインジウム濃度を有するインジウム溶液を中和して水酸化インジウムを得た後、焼成することで、スパッタリングターゲットの高密度化が可能な酸化インジウム粉が得られることが開示されている。すなわち、この文献では、高密度のスパッタリングターゲットを得るために必要な粉体特性と、その特性を持った酸化インジウム粉を得るために必要な条件の1つである沈殿反応時のインジウム溶液の濃度とについての知見が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、高密度のスパッタリングターゲットを得るために必要な不純物に対する考察はなされていない。かかる高密度化を阻害する不純物としては、ハロゲン元素、特に塩素が挙げられる。
かかる塩素の影響を排除するため、例えば、特開平10−182150号公報(特許文献2)には、焼結を阻害する塩素や硫黄を含まない硝酸インジウムを用いて、酸化インジウム粉あるいは酸化錫含有酸化インジウム粉を製造する方法が開示されている。なお、特許文献1においても、その実施例では原料として硝酸インジウムが用いられているのみである。
これらの方法では、高価な硝酸を用い、さらに窒素含有廃液を副生し、その処理を行わなければならないため、環境的にもコスト的にも問題を有している。
硝酸塩の代わりに塩酸塩を用いて、酸化インジウムを生成することは可能であるが、上述のように塩酸塩あるいは塩酸を用いて得た酸化インジウム粉を使用して酸化インジウム系スパッタリングターゲットを作製すると、酸化インジウム中に含まれる塩素の影響で、その焼結性が阻害され、高密度のスパッタリングターゲットが得られないという問題が生ずる。
特開2003−277052号公報 特開平10−182150号公報
本発明が解決しようとする技術的課題は、環境負荷が少なく、安価でありながら、高密度が得られる酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
本発明者は、原料粉における酸化インジウム中の塩素濃度と焼結後の焼結体密度との関係について検討を行い、塩素濃度を所定範囲内に抑制した酸化インジウムを原料粉に用いることで、高密度のスパッタリングターゲットが得られるとの知見を得た。
また、酸化インジウム粉における好適な塩素濃度は、原料粉の製造工程において、中和合成した水酸化インジウムを特定の条件で洗浄することにより得られるとの知見を得た。
本発明者はこれらの知見に基づいて、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法は、
塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、
該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、
該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、
を有する。
また、前記酸化インジウム粉の原料として、以下の工程により得られたものを用いる。まず、前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物とからなるサスペンションを得て、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で84倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄する。
または、前記酸化インジウム粉の原料として、前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物とからなるサスペンションを得て、該サスペンションを、連続加圧クロスフロー濾過方式により、該サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で55倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄する。
さらに、前記洗浄の後、前記水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンションにアンモニア水溶液を添加して、該サスペンションのアンモニア濃度を0.1〜1.0mol/Lとして、60〜100℃で、所定時間、保持した後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する。次に、該水酸化物を乾燥させ、該水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンション中の水酸化物を洗浄する。さらに、該水酸化物を乾燥させ、アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した硝酸アンモニウム水溶液に分散させることによりサスペンションを得て、該サスペンションを、所定時間、保持した後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する。
かかる追加的な工程におけるすべての洗浄についても、連続加圧クロスフロー濾過方式により、前記サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で16倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄するか、または、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で24倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄する。
また、前記塩化インジウム含有水溶液を、金属インジウムを塩酸に溶解させることにより得ることが好ましい。
また、前記水酸化インジウムの焼成を、酸化性雰囲気中で、800〜1100℃の温度で行うことが好ましい。
また、前記造粒に、噴霧乾燥法を用いることが好ましい。さらに、前記造粒粉を得る工程において用いる前記有機バインダを、酸化インジウム粉と添加酸化物粉の合計量に対して1.0〜3.0質量%添加する、
前記酸化インジウム粉として、BET比表面積が7.0〜12.0m2/gであり、SEM観察により求めた一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数が35%以下である酸化インジウム粉を用いることが好ましい。
本発明では、塩化インジウムを原料とする酸化インジウム粉を用いることができ、環境負荷が少なく、かつ、安価に、ノジュールの発生を抑止できる高密度の酸化インジウム系スパッタリングターゲットを得ることができる。
本発明は、塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、を有する。
特に、塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる酸化インジウム粉の塩素濃度を50質量ppm以下に規制することにより、高密度のスパッタリングターゲットを得つつ、価格的・環境的に問題のある硝酸塩を用いずに済むところに特徴がある。
以下、本発明の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法について、工程ごとに説明する。
(1)造粒工程
この工程では、主原料粉である酸化インジウム粉と、添加酸化物と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒粉を得る。
本発明では、特に、酸化インジウム粉として、塩素濃度が50質量ppm以下のものを用いることに特徴がある。塩素濃度が50質量ppmを超えるとスパッタリングターゲットの焼結後の相対密度が96%を下回り、著しく低下する。塩素濃度は低い方がよく、塩素を含有しない(0質量ppm)ことが好ましいが、通常の分析下限である10質量ppm以下であれば、実質的に塩素を含有していないとみなすことができる。なお、酸化インジウム粉中の塩素濃度は、検量線による蛍光X線定量分析装置により測定することができる。塩素含有量が100質量ppm以下の場合、酸化インジウムを硝酸で溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を検量線による蛍光X線定量分析にて測定する。
添加酸化物として、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉を添加する。添加酸化物により、スパッタリングによって得られる透明導電膜の導電性が改善される。また、添加酸化物によっては光透過率の改善などが期待できる。添加酸化物はターゲット中に1〜20質量%含まれることが好ましく、3〜15質量%含まれることがより好ましい。
ボールミルやビーズミルなどにより、酸化インジウム粉と酸化物粉とを所定の配合で混合粉砕した後、造粒を行う。このとき、有機バインダを添加することで、後工程における成形体強度を向上させることができ、その添加は、特に大型品の場合には有効である。有機バインダとしては、通常用いられるものでよいが、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。
焼結密度を改善するためには、成形型へ充填する際に、造粒粉の流動性を良好にすることが好ましい。このため、湿式により原料を混合したものを、スプレードライヤを用いた噴霧乾燥法により、球状に造粒することが好ましい。
造粒粉の粒径は、充填時の流動性を良好にし、かつ、成形型から造粒粉が漏れるのを防ぐため、10〜500μmにすることが好ましく、さらに、造粒粉のタップ密度を1.4g/cm3以上とすることが好ましい。なお、タップ密度の上限は特に限定されないが、通常の造粒では4.5g/cm3を超えることはない。
有機バインダの添加量は、酸化インジウム粉と添加酸化物粉の合量に対して1.0〜3.0質量%とすることが好ましい。1.0質量%未満であると成形体強度が低下して成形工程での割れが発生し、3.0質量%を超えると有機バインダによる空孔が大きくなり、スパッタリングターゲットの焼結密度が低下するからである。
(2)成形工程
本工程では、造粒粉を加圧成形することにより成形体を得る。加圧成形には、冷間静水圧プレス(CIP)、一軸プレス(CP)などを使用できるが、等方から圧力をかけられるので均一な成形体が得られることから、冷間静水圧プレス(CIP)を用いることが好ましい。成形圧力は、100〜300MPaとすることが好ましい。100MPa未満では、成形体密度および成形体強度の低下により、製品歩留りが悪化するためである。一方、300MPaを超えても、その効果はさらには向上しない。
(3)焼成工程
成形工程で得られた成形体を1200〜1600℃で常圧焼成することにより、成形体を焼結させ、焼結体が得られる。かかる焼結体を所定の形状に加工することにより、スパッタリングターゲットが得られる。本発明によれば、加圧焼結などの特殊な焼結方法を用いなくても、簡便な常圧焼成によって、高密度の焼結体からなるスパッタリングターゲットが得られる。従って、焼成には、通常の電気炉などを用いることができる。
焼成温度が1200℃未満では、密度が高い焼結体を得るために必要な原料粒子間の拡散が進まない。一方、1600℃を超えると炉材との反応が激しくなるばかりか、酸化インジウム粉、あるいは一部の添加酸化物粉が、高温では揮発が激しくなるため好ましくない。焼成は、酸化性雰囲気中で行うことが好ましく、酸素雰囲気中で行うことが特に好ましい。
[酸化インジウム粉]
次に、原料粉である酸化インジウム粉およびその製造方法について説明する。
本発明に用いる酸化インジウム粉は、塩化インジウム含有水溶液を中和合成して得られる水酸化インジウムを焼成することによって得られる。塩化インジウム含有水溶液は、金属インジウムを塩酸に溶解させたものであることが好ましいが、塩化インジウムを含有した水溶液であればよく、塩化インジウムを直接溶解したものでもよい。塩化インジウムを溶解させて水溶液を得るより、金属インジウムを塩酸に溶かす方が、短時間で塩化インジウム含有水溶液が得られ、生産性がよい。
また、酸化インジウムを含有するターゲットあるいはペレット等のスクラップを塩酸に溶解させたものでもよい。なお、この場合、スクラップに錫、他の元素が含まれており、塩化インジウム含有水溶液にインジウム以外の元素が含まれていても、当該元素が最終のターゲットに含まれる元素である場合には問題ない。
高密度ターゲットを得るためには塩素を含有しない硝酸インジウム等の硝酸系原料より得られる酸化インジウムを用いることが有利であるが、硝酸系原料は高価であるばかりか、環境負荷が大きく廃水処理のコストも大きい。本発明では、塩化インジウム等の塩素系原料を用いても、効率的に酸化インジウム中の塩素濃度を低減させることができ、塩素系原料を用いて高密度ターゲットを得ることが可能である。
本発明において、水酸化インジウムは、塩化インジウム含有水溶液を中和して得られた水溶液分と水酸化物からなるサスペンションを得て、該サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄することにより得られる。
かかる洗浄は、フィルタープレスや遠心濾過によりサスペンションを濾過した後、水酸化物に対して行うこともできるが、連続加圧クロスフロー濾過方式により、水溶液分を純水と置換しつつ循環洗浄することが好ましい。連続加圧クロスフロー濾過方式では、連続的にサスペンションを濾過膜内に流して濃縮を行い、純水で補充することにより、サスペンション中の水溶液分を純水で置換して、循環洗浄することが可能である。また、濾過後に、サスペンションとするための再分散が必要とされず、連続洗浄も可能である。また、濾過膜の目詰まりを防止するため、強攪拌のもとで濾過することができる。さらに、高速の流れによりケーキ層厚が薄く保たれるため、フィルタープレスや遠心濾過と比較して、大きな濾過速度が得られる。連続加圧クロスフロー濾過方式の濾過装置としては、例えば、ロータリーフィルターが挙げられる。
連続加圧クロスフロー濾過方式により循環洗浄する間は、サスペンション中の水溶液分を、中和により生成した水酸化物に対する質量比で3〜8とすることが好ましく、4〜6とすることがより好ましい。水酸化物に対する水溶液分の質量比が大きいほど、サスペンションの粘度が小さくなり、濾過速度は大きくなる。しなしながら、濾過すべき水溶液量が、水酸化物に対する水溶液分の質量比に比例して増加するので、水酸化物に対する水溶液分の質量比を大きくすると、洗浄時間は長くなる。一方、水酸化物に対する水溶液分の質量比を小さくすると、濾過すべき水溶液量は減少するが、サスペンションの粘度が大きくなり、濾過速度が小さくなる。従って、水酸化物に対する水溶液分の質量比には、最も洗浄効率がよい最適値が存在する。そこで、上記のようにサスペンション中の水溶液分を、中和により生成した水酸化物に対する質量比で3〜8とすることが好ましく、4〜6とすることがより好ましい。
また、循環洗浄の場合、サスペンションの液温を、30〜80℃とすることが好ましく、40〜60℃とすることがより好ましい。サスペンションの液温を上げることにより、洗浄後における塩素などの不純物品位を低下させる効果も得られるため、循環洗浄時のサスペンションの液温は、40℃以上とすることが、より好ましい。サスペンションの液温を30℃以上とすることにより、粘度が低下するため、室温の場合と比較して濾過速度が大きくなる。サスペンションの液温が高いほど、濾過速度が大きくなる傾向があるが、サスペンションの液温が高すぎると、装置へのダメージが大きくなるばかりでなく、熱エネルギーの損失にもなるため、80℃以下とすることが現実的である。また、サスペンションの液温を上げることにより、洗浄後における塩素などの不純物品位を低下させる効果も得られるため、循環洗浄時のサスペンションの液温は、40℃以上とすることが、より好ましい。また、作業者の火傷に対する安全性を考慮すると、60℃以下とすることがより好ましい。
水酸化物を洗浄するための純水、若しくは、サスペンション中の水溶液分と置換する純水は、不純物が含まれていないことが必要であり、比抵抗値が1.7MΩ・cm以上の純水であることが好ましく、比抵抗値が2.0MΩ・cm以上の純水であることがより好ましい。
洗浄ないしは循環洗浄を行う時間は、特に限定されないが、例えば、循環洗浄の場合、水酸化物に対する水溶液分の質量比、および、循環洗浄時のサスペンションの液温により、不純物品位を低下させるのに必要な時間が異なってくる。よって、いずれの場合も洗浄条件により、適切に決めればよい。
しかしながら、純水のみを用いて洗浄ないしは循環洗浄を行うだけでは、水酸化物中の塩素濃度を効果的に低減させることは困難であり、洗浄する水酸化物量に対して質量比で相当な量の純水が必要となる。
このため、中和により得られた水酸化物を、純水に分散させて得られたサスペンションにアンモニア水溶液を添加して、サスペンション中のアンモニア濃度を0.1〜1.0mol/Lとして、60〜100℃で、所定時間保持する。その後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する工程を有することが好ましい。アンモニア水溶液を添加後におけるサスペンションのアンモニア濃度が、0.1mol/L未満であると、前述の塩素除去の効果がなく、1.0mol/Lを超えても、前述の塩素除去の効果をさらに向上させることができない。また、アンモニア水溶液を添加したサスペンションを、60〜100℃の液温で、所定時間、保持することが好ましいのは、60℃未満では、塩素除去の効果が少なく、100℃を超えると、アンモニアの蒸発が激しくなり、現実的でないためである。
サスペンション中において、水酸化物に対するアンモニア水溶液の質量比は、3〜15とすることが好ましい。3未満であると、均一なサスペンションとすることが困難であるため、効率よく残留塩素量を低下させることが困難となり、15を超えても、塩素除去の効果を向上させることができないとともに、廃水量が増えてしまう。また、アンモニア水溶液を添加しサスペンションを保持する時間は、特に限定されないが、塩素除去の効果を十分に発揮させるためには、0.25時間以上とすることが好ましく、約3時間で十分であり、12時間を超えても、塩素除去の効果を向上させることができない。さらに保持している間に、攪拌を行うことにより、さらに効果を向上させることができる。攪拌の回転数を、180rpm以上とすることが好ましく、より好ましくは200rpm以上とし、さらに好ましくは300rpm以上とする。
なお、アンモニア水溶液を添加したサスペンションを、所定時間、保持する工程は少なくとも1回行えばよいが、得られた水酸化物を洗浄した後に、2回以上この工程を繰り返してもよい。
アンモニア水溶液を添加したサスペンションを、所定時間、保持することにより、塩素除去の効果が向上するが、酸化物中の塩素濃度を50質量ppm以下まで低下させることが困難な場合がある。
この場合、アンモニア水溶液を添加したサスペンションを保持した後、上記水酸化物の純水による洗浄をなるべく行ってから乾燥させ、アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した硝酸アンモニウム水溶液に、この乾燥した水酸化物を分散させてサスペンションとし、所定時間、保持した後、サスペンション中の水酸化物を純水により洗浄する工程を有することがより効果的である。これにより、水酸化物の内部まで十分に水溶液が入るため、塩素が効果的に除去できて、さらなる低塩素化を図ることが可能である。
該サスペンション中の硝酸アンモニウムの濃度は0.001mol/L以上であれば特に制限はないが、硝酸アンモニウムを洗浄するための水量が少ない方がコスト的に有利なため、0.01mol/L以下であることが好ましい。保持中は、特に加熱する必要はないが、その後の純水による循環洗浄時の温度に合わせておくことが、効率的であり好ましい。また、保持時間および攪拌は、アンモニア水溶液を添加したサスペンション中での保持と同様にしてよい。なお、この工程を少なくとも1回行えばよいが、複数回行ってもよい。
上記2つの工程における純水による洗浄も連続加圧クロスフロー濾過方式により、水溶液分を純水と置換しつつ行う循環洗浄とすることが好ましい。
上記2つの工程を追加することにより、循環洗浄の場合、最初の洗浄における置換する純水の量を、例えば、洗浄する水酸化物量に対する質量比で55〜70倍程度に抑制することができる。また、遠心分離機などを用いた場合でも85倍程度に抑制することができる。なお、置換量の上限は特に限定されるわけではないが、必要以上に純水を使用しても無駄となるため、他の洗浄条件に応じて、不純物品位の低下を確認して決定すればよい。このことは、純水による洗浄ないしは循環洗浄のみの場合や、上記の2つの工程以外の追加的工程を含む場合も同様である。
なお、上記2つの工程における純水によ洗浄においても、同様に純水の置換量は決定されるが、洗浄する水酸化物量に対する質量比で16〜25倍程度で十分である。
このように、塩化インジウム含有水溶液を中和して得られた水酸化インジウムを洗浄して塩素濃度を低減した後、焼成することで本発明に用いることができる酸化インジウムが得られる。水酸化インジウムの焼成は、酸化性雰囲気中800〜1100℃で行うことが好ましい。酸化性雰囲気であれば限定されるものではないが、大気雰囲気中で行うことがより好ましい。焼成温度が800℃未満であると酸化インジウムへの転換が不十分である場合がある。また、焼成温度が1100℃を超えると酸化インジウムの焼結が始まり、造粒工程での粉砕が十分にできない可能性がある。
得られた酸化インジウム粉のBET比表面積は7.0〜12.0m2/gであることが好ましく、SEM観察より求めた一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数は35%以下であることが好ましい。
BET比表面積が7.0m2/g未満であると、焼結後に焼結体の相対密度を96%以上に高密度にするのが困難であり、12.0m2/gを超えると造粒工程で所望の粒径10〜500μmの造粒粉が得られないことがある。また、SEM観察より求めた一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数が35%を超えると粒径が不揃いで焼結後に高密度にならないことがある。
実施例および比較例を用いて本発明をさらに説明する。
(実施例1〜3)
金属インジウム(10kg)を塩酸(20L)に溶解させた塩化インジウム水溶液に、25%アンモニア水溶液を300rpmで攪拌しつつ、当量分、供給し、該溶液を中和して、塩化アンモニウム水溶液と水酸化インジウム(乾燥質量で14kg)からなるサスペンションを得た。
ダイアフラムポンプでロータリーフィルター(寿工業株式会社製、形式:RF−02、手動制御、濾過面積:0.17m2、濾布:ポリエステルKE−022、通気度:0.1cc/cm2・S)に送って、連続加圧クロスフロー濾過方式により、前記サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して70倍に相当する重量の純水と置換しつつ(90分、980L)、サスペンション中の水酸化物を循環洗浄した。循環洗浄する間は、サスペンション中の水溶液分を、中和により生成した水酸化物に対する質量比を6とした。また、サスペンションの液温を、60℃とした。
水洗後のサスペンションに25%アンモニア水溶液を添加して、サスペンション中のアンモニア濃度を0.2mol/L、水酸化物に対するアンモニア水溶液の質量比を6として、60℃で、サスペンションを攪拌しながら5時間保持した後、連続加圧クロスフロー濾過方式により、サスペンション中の水溶液分を水酸化インジウムに対して20倍に相当する重量の純水と置換しつつ(30分、280L)、サスペンション中の水酸化物を循環洗浄した。
その後、水酸化物を乾燥させ、乾燥した水酸化物を純水に分散させて、質量比が6のサスペンションとし、0.2mol/Lアンモニア水溶液での保持後の水洗と同様にして、連続加圧クロスフロー濾過方式により、サスペンション中の水溶液分を水酸化インジウムに対して20倍に相当する重量の純水と置換しつつ(30分、280L)、サスペンション中の水酸化物を循環洗浄し、乾燥した。
さらに、同様に乾燥させた後、25%アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液に、乾燥した水酸化物を分散させて、質量比が6のサスペンションとし、1時間保持した後、連続加圧クロスフロー濾過方式により、サスペンション中の水溶液分を水酸化インジウムに対して20倍に相当する重量の純水と置換しつつ(30分、280L)、サスペンション中の水酸化物を循環洗浄により水洗し、乾燥した。
このように塩化インジウム水溶液を中和して得られた水酸化インジウムを洗浄して塩素濃度を低減した後、大気雰囲気中800℃で5時間焼成を行うことで酸化インジウム粉を得た。
得られた酸化インジウム粉の粉体特性を測定したところ、比表面積は10.5m2/g、平均一次粒子径は0.5μm、一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数は31%であった。
また、酸化インジウム粉中の残留塩素について、検量線による蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製、Magix)にて測定した。なお、塩素濃度が100質量ppm以下の場合、乾燥後、硝酸で溶解し、硝酸銀を加えて、塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を、蛍光X線定量分析装置で測定した。
酸化インジウム粉中の残留塩素量は、分析下限である10ppmであった。
得られた酸化インジウム粉と、添加酸化物粉である平均粒子径1.3μmの酸化錫粉と、総原料粉に対して1.5質量%のポリビニルアルコール(ケン化度94mol%、重合度500)と、総原料粉に対して1.0質量%のポリアクリル酸系共重合物のアミン塩とを、純水とともにポットに入れ、回転数60rpmで15〜20時間、ボールミルにて混合粉砕を行い、スラリーを作製した。スラリーにおける粉末分の濃度は50質量%とした。
なお、酸化錫粉の添加量は、酸化インジウム粉に対して、それぞれ3質量%(実施例1)、5質量%(実施例2)、10質量%(実施例3)とした。
次に、得られたスラリーをスプレードライヤにて熱風温度180℃、アトマイザ回転数12000rpmの条件で噴霧乾燥して、粒径150μm以下、タップ密度1.6g/mLの造粒粉を得た。
得られた造粒粉を、冷間静水圧プレス(CIP)により、294MPa(3ton/cm2)で加圧して、600×550×10mmの成形体を作製した。次いで、電気炉(丸祥電器株式会社製)を用いて、酸素雰囲気中1500℃で常圧焼成して、焼結体を得た。かかる焼結体を所定形状に加工することにより、スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットの密度を求めた。密度は7.08〜7.14g/cm3であり相対密度は98.7〜99.7%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。なお、各実施例の相対密度は、得られたスパッタリングターゲットの密度を理論密度で除することで求め、理論密度は、酸化インジウムおよび添加酸化物の理論密度を用いて各組成から計算により求めた。
表1に含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例4)
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して3.5質量%の酸化錫(平均粒子径1.3μm)、酸化インジウムに対して10質量%の酸化セリウム(平均粒子径0.6μm)および酸化インジウムに対して0.5質量%の酸化チタン(平均粒子径0.3μm)とした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は7.09g/cm3であり相対密度は99.3%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(実施例5および6)
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して7.5質量%(実施例5)および10.7質量%(実施例6)の酸化亜鉛(平均粒子径0.5μm)とし、成形体の焼成温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は6.89〜6.95g/cm3であり相対密度はいずれも98.9%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例7)
添加酸化物粉を、酸化インジウム粉に対して15質量%の酸化錫(平均粒子径0.5μm)および酸化インジウム粉に対して15質量%の酸化亜鉛(平均粒子径0.5μm)とし、成形体の焼成温度を1450℃にした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。密度は6.72g/cm3であり相対密度は98.0%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(実施例8〜10)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の80%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して56倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回は16倍とした。この点以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、50ppmであった。また、得られたスパッタリングターゲットの密度を求めた。密度は7.07〜7.13g/cm3であり相対密度は98.6〜99.6%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例11)
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は7.06g/cm3であり相対密度は98.9%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(実施例12および13)
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例5および6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.75〜6.80g/cm3であり相対密度は96.7〜96.8%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例14)
実施例8〜10で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.60g/cm3であり相対密度は96.2%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(実施例15〜17)
ロータリーフィルターを使用せずに遠心分離機を用いて濾過し、水酸化物を洗浄して水酸化インジウムを得たこと以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。濾過後の洗浄においては、水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の120%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して84倍に相当する重量の純水を用い、2〜4回目は24倍とした。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、分析下限である10ppmであった。
得られたスパッタリングターゲットの密度を求めた。密度は7.06〜7.14g/cm3であり相対密度は98.5〜99.7%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例18)
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は7.09g/cm3であり相対密度は99.3%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(実施例19および20)
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例5および6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.88〜6.93g/cm3であり相対密度は98.6〜98.7%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(実施例21)
実施例15〜17で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.72g/cm3であり相対密度は98.0%であって、スパッタリングによる成膜が可能な程度に高密度であった。
表1に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(比較例1〜3)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3の50%にした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して35倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回目は10倍とした。この点以外は、実施例1〜3と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、200ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.51〜6.59g/cm3であり相対密度は90.8〜92.0%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(比較例4)
比較例1〜3で用いた酸化インジウム粉を原料粉としたこと以外は、実施例4と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。得られたターゲットの密度は6.60g/cm3であり相対密度は92.4%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
(比較例5)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例5)の75%とした。すなわち、最初は、サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して52.5倍に相当する重量の純水と置換し、2〜4回目は15倍とした。この点以外は、実施例5と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、60質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.69g/cm3であり相対密度は95.2%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(比較例6)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例5)の70%としたこと以外は、実施例5と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、70質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.56g/cm3であり相対密度は93.3%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(比較例7)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例6)の75%としたこと以外は、実施例6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、60質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.65g/cm3であり相対密度は95.4%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(比較例8)
水酸化インジウムを洗浄するのに使用する純水の量を実施例1〜3(実施例6)の70%としたこと以外は、実施例6と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。酸化インジウム粉の含有塩素濃度は、70質量ppmであった。得られたスパッタリングターゲットの密度は6.50g/cm3であり相対密度は93.3%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度をまとめて示す。
(比較例9)
比較例1で合成した塩素を200ppm含有する酸化インジウムを用い、実施例7と同様にして、スパッタリングターゲットを得た。ターゲットの密度は6.25g/cm3であり相対密度は91.1%であって、スパッタリングによる安定成膜は困難な低密度であった。
表2に、酸化インジウム粉の含有塩素濃度、添加酸化物およびその添加量、並びに得られたターゲットの密度を示す。
以上、本発明の実施例について説明してきたが、塩素濃度が50ppm以下の酸化インジウムを用いた実施例1〜21は、スパッタリングによる安定成膜が可能な程度に高密度のスパッタリングターゲットが得られていることがわかった。これに対して、塩素濃度が50ppmを超える酸化インジウムを用いた比較例1〜9は、スパッタリングによる安定成膜は困難な程度に低密度のスパッタリングターゲットしか得られていないことがわかった。
Figure 0004807331
Figure 0004807331

Claims (7)

  1. 塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、
    該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、
    該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、
    を有する酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法において、
    前記酸化インジウム粉の原料として、
    前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物とからなるサスペンションを得て、連続加圧クロスフロー濾過方式により、該サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で55倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄し、
    前記水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンションにアンモニア水溶液を添加して、該サスペンションのアンモニア濃度を0.1〜1.0mol/Lとして、60〜100℃で、所定時間、保持した後、連続加圧クロスフロー濾過方式により、該サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で16倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄し、
    前記水酸化物を乾燥させ、該水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、連続加圧クロスフロー濾過方式により、該サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で16倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄し、
    さらに、前記水酸化物を乾燥させ、該水酸化物を、アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した硝酸アンモニウム水溶液に分散させることによりサスペンションを得て、該サスペンションを、所定時間、保持した後、連続加圧クロスフロー濾過方式により、該サスペンション中の水溶液分を水酸化物に対して質量比で16倍以上の純水と置換することにより、該水酸化物を循環洗浄する工程により得られた水酸化インジウムを用いる、
    ことを特徴とする、酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 塩化インジウム含有水溶液を中和合成した水酸化インジウムを焼成して得られる塩素濃度が50質量ppm以下の酸化インジウム粉と、酸化錫、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化タングステンのうち少なくとも1種からなる酸化物粉と、水と、有機バインダとを混合粉砕し、造粒することにより、造粒粉を得る工程と、
    該造粒粉を加圧成形することにより、成形体を得る工程と、
    該成形体を常圧焼成することにより、焼結体を得る工程と、
    を有する酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法において、
    前記酸化インジウム粉の原料として、
    前記塩化インジウム含有水溶液を中和合成し、水溶液分と水酸化物とからなるサスペンションを得て、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で84倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄し、
    前記水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンションにアンモニア水溶液を添加して、該サスペンションのアンモニア濃度を0.1〜1.0mol/Lとして、60〜100℃で、所定時間、保持し、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で24倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄し、
    前記水酸化物を乾燥させ、該水酸化物を純水に分散させてサスペンションを得て、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で24倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄し、
    さらに、前記水酸化物を乾燥させ、該水酸化物を、アンモニア水溶液の添加によりpHを8〜11に調整した硝酸アンモニウム水溶液に分散させることによりサスペンションを得て、該サスペンションを、所定時間、保持し、該サスペンションを濾過した後、水酸化物に対して質量比で16倍以上の純水を用いて、該水酸化物を洗浄する工程により得られた水酸化インジウムを用いる、
    ことを特徴とする、酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 前記塩化インジウム含有水溶液を、金属インジウムを塩酸に溶解させることにより得る請求項1または2に記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 前記水酸化インジウムの焼成を、酸化性雰囲気中で、800〜1100℃の温度で行う請求項1〜のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 前記造粒に、噴霧乾燥法を用いる請求項1〜のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  6. 前記造粒粉を得る工程において用いる前記有機バインダを、酸化インジウム粉と添加酸化物粉の合計量に対して1.0〜3.0質量%添加する、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 前記酸化インジウム粉として、BET比表面積が7.0〜12.0m2/gであり、SEM観察により求めた一次粒子径の標準偏差と平均一次粒子径との比である変動係数が35%以下である酸化インジウム粉を用いる請求項1〜のいずれかに記載の酸化インジウム系スパッタリングターゲットの製造方法。
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