JP2008174399A - 酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を出発原料として用いた場合であっても、残留塩素量が少なく、効率よく低コストで、酸化インジウムを主成分とする粉末を製造する方法を提供する。
【解決手段】塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基性水溶液および塩基性固体の内の少なくとも1種類を添加し、液温を50℃以下に保持した状態で、pHを6まで上昇させ、その後、さらに、塩基を投入することによりpHを12〜14に上昇させて、水酸化インジウムを晶析させ、その後、得られた水酸化インジウムを、0.08mol/L以上のアンモニア水溶液に分散させることによりサスペンションとし、該サスペンションを60〜100℃の液温に保持した後、濾過することにより粉末を得て、その後、水洗および仮焼を行う。
【選択図】なし
【解決手段】塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基性水溶液および塩基性固体の内の少なくとも1種類を添加し、液温を50℃以下に保持した状態で、pHを6まで上昇させ、その後、さらに、塩基を投入することによりpHを12〜14に上昇させて、水酸化インジウムを晶析させ、その後、得られた水酸化インジウムを、0.08mol/L以上のアンモニア水溶液に分散させることによりサスペンションとし、該サスペンションを60〜100℃の液温に保持した後、濾過することにより粉末を得て、その後、水洗および仮焼を行う。
【選択図】なし
Description
本発明は、酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法に関し、特に、出発原料として、塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を用いて、酸化インジウムを主成分とする粉末を製造する方法に関する。
酸化インジウムを主成分とする粉末(酸化インジウム粉末、または、酸化インジウムを主成分とし、他の金属または金属酸化物を含有する粉末)は、その導電性を利用して、樹脂混練用導電性フィラーのほか、透明導電膜塗料や、透明導電性薄膜作製用のターゲット材などの原料として、電子材料用に広く使われている。
酸化インジウムの粉末は、例えば、インジウム塩水溶液にアンモニア水溶液や水酸化ナトリウム等の塩基を添加することにより中和し、水酸化インジウムを晶析させ、得られた水酸化インジウムを、水洗し、乾燥し、仮焼することにより得ることができる。
導電性フィラーあるいは透明導電膜塗料は、その用途が電子材料用であることから、不純物、特にハロゲン元素が含まれることが問題となる。ハロゲン元素が存在すると、電子機器内に用いられている金属の腐食または溶出が発生しやすくなるとともに、酸化インジウム粉末が混合された樹脂においても、経時劣化が起きやすくなるという問題がある。
このような問題に対して、例えば、特許文献1(特開平5−201731号公報)には、酸化インジウムにスズをドープした酸化インジウムスズ(Indium tin oixde、以下「ITO」という)粉末における、ハロゲン元素である塩素の除去について記載されている。これによれば、塩化インジウムおよび塩化スズの混合水溶液をアルカリ水溶液で中和して得た共沈沈殿物を、デカンテーションまたは遠心分離法によって水洗し、加熱分解することによりITO粉末を得ることが提案されている。
しかし、残留塩素量を100質量ppm未満にするためには、デカンテーションまたは遠心分離法等による水洗を、電気抵抗率が2000Ω・cm以上、好ましくは5000Ω・cm以上になるまで行う必要があり、このような水洗により工程の高コスト化が予想される。また、特許文献1では、残留塩素量を蒸留水への溶出塩素に基づいて決定しており、得られたITO粉末の残留塩素量について6〜390質量ppmであることが記載されているが、通常は、溶出分より多くの塩素が粉末内部に残留しているものであり、粉末内部の塩素まで十分に除去されているとは言い難い。
一方、ITOに代表される透明導電性薄膜作製用のターゲット材では、ハロゲン元素が存在すると、その焼結性が阻害されるとされている。例えば、特許文献2(特開平10−182150号公報)には、焼結を阻害する塩素や硫黄を含まない硝酸インジウムを用いた酸化スズ含有酸化インジウム粉末の製造方法が記載されている。この中で、焼結温度域、特に800℃を超える温度では、揮発する成分が残存することにより、焼結が阻害され、特に、ハロゲン元素の存在は好ましくないとされており、かかる方法では、出発原料のインジウム塩として、塩化インジウムではなく、硝酸インジウムを使用することが提案されている。
しかし、塩化インジウムを出発原料として酸化インジウムを合成する場合と比較すると、硝酸インジウムを出発原料として酸化インジウムを合成する場合には、硝酸が塩酸よりも高価であり、かつ、硝酸性窒素の廃液処理コストが高いことから、製造コストが高くなってしまう。
以上のように、硝酸性窒素の廃液処理コストが高いため、排水処理を含む生産コストの観点からは、硝酸性窒素が副生する硝酸インジウムを出発原料とする製造プロセスではなく、塩化インジウムを出発原料とする製造プロセスの方が望ましいといえる。
しかしながら、生産コストが安価となるように、塩化インジウムを出発原料として酸化インジウムを合成すると、塩素が残留するため、前述のように電子材料用としての使用は困難になる。さらに、残留塩素を除去する場合には、塩素除去の困難さから、製造コストが高くなるという問題がある。
特開平5−201731号公報
特開平10−182150号公報
本発明の目的は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を出発原料として用いた場合であっても、残留塩素量が少なく、効率よく、かつ、低コストで、酸化インジウムを主成分とする粉末を製造する方法を提供することにある。
本発明に係る酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法は、塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基を添加し、液温を50℃以下に保持した状態で、pHを6まで上昇させ、その後、塩基をさらに添加することにより、pHを12〜14に上昇させて、水酸化インジウムまたはインジウム複合酸化物を晶析させ、その後、得られた水酸化インジウムまたはインジウム複合酸化物を、0.08mol/L以上のアンモニア水溶液に分散させることによりサスペンションとし、該サスペンションを60〜100℃の液温に保持した後、濾過することにより粉末を得て、その後、水洗および仮焼の処理を行うことにより、酸化インジウムを主成分とする粉末を得る。
前記塩基としては、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、および、水酸化カリウム水溶液の内の少なくとも1種類からなる塩基性水溶液、および/または、水酸化ナトリウム、および、水酸化カリウムの内の少なくとも1種類からなる塩基性固体を単独または組み合わせて用いることができる。なお、pHを6まで上昇させる際の塩基と、その後、pHを12〜14に上昇させる際の塩基は、同一でもよく、異なっていてもよい。
前記水洗および仮焼の処理工程において、得られた粉末を、前記水洗後、乾燥および水洗の処理を少なくとも1度行った後、前記仮焼を行うようにすることが好ましい。
または、前記水洗および仮焼の処理工程において、得られた粉末を、前記水洗後、乾燥し、硝酸アンモニウム水溶液に分散させ、濾過し、さらに水洗した後、前記仮焼を行うようにすることが、さらに好ましい。
この場合、前記粉末が分散した硝酸アンモニウム水溶液のpHを8〜11に制御することが好ましい。
本発明により、塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を出発原料として用いた場合であっても、残留塩素量が少なく、電子材料用途に適した酸化インジウムを主成分とする粉末を、効率よく、かつ、低コストで得ることができる。
本発明者は、塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を出発原料として用いた場合であっても、残留塩素量が少なく、効率よく、かつ、低コストで、酸化インジウムを主成分とする粉末を製造する方法を確立すべく、鋭意、研究開発を行った。
その結果、塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液を、所定の温度に制御しながら、塩基性水溶液あるいは塩基性固体を添加して、pHを所定の値まで上昇させ、その後、さらに、塩基性水溶液あるいは塩基性固体を添加して、pHを所定の値に調整し、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物を晶析により得て、その後、得られた粉末を洗浄することにより、水酸化インジウム中に残留する塩素の量を、効率的に減らすことができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。以下、本発明に係る酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法を、詳細に説明する。
本発明においては、塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基性水溶液および塩基性固体の内の少なくとも1種類を添加する際に、液温を50℃以下に保持した状態で、pHを6まで上昇させ、その後、さらに、塩基性水溶液および塩基性固体の内の少なくとも1種類を投入することにより、pHを12〜14に上昇させて、水酸化インジウムを晶析させる。
塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基性水溶液または塩基性固体の内の少なくとも1種類を添加する際に、pHが6まで上昇するまでの該水溶液の液温を、50℃以下に保持する必要がある。水酸化インジウム粒子の晶析は、pH6付近で終了するが、前記水溶液のpHが6に達する前に、その液温が50℃を超えると、晶析した水酸化インジウム粒子が凝集してしまう。この場合、凝集した水酸化インジウム粒子の内部に塩素が存在することとなり、水洗によっては、かかる内部に存在する塩素の除去が困難となり、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物の粉末に残留する塩素量が多くなってしまう。一方、前記水溶液の液温は、該水溶液の凝固点以上であれば問題ないが、液温が低すぎると、濾過性が悪化するため、30℃以上とすることが好ましい。
以上から、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物を晶析させる工程において、加熱する場合、pHが6となるまでは、液温が50℃を超えないように制御する必要がある。
該水溶液のpHは、その後、さらに塩基性水溶液または塩基性固体の内の少なくとも1種類を添加することによって、12〜14に調整することが必要である。pHが12未満では、得られた水酸化インジウムを主成分とする粉末中に残留する塩素の量が多くなり、洗浄によっても、十分に低減することができない。一方、pHが14を超えても、塩素の除去効果は大きくならず、水酸化インジウムの再溶解により、インジウムの収率が悪化し、必要な塩基性水溶液あるいは塩基性固体の量が、さらに増加するため、コスト的にも不利となる。
塩基の添加条件に関しては、急速に添加すると液温が急上昇するので、液温が上昇しすぎない程度の添加速度で添加する。
晶析時に塩基性水溶液を添加する場合、かかる塩基性水溶液は水酸化インジウムないしはインジウム複合水酸化物を晶析できるものであれば、特に限定されないが、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、および、水酸化カリウム水溶液の内の少なくとも1種類を用いることが好ましく、特に、コスト面から、アンモニア水溶液、および、水酸化ナトリウム水溶液の内の少なくとも1種類を用いることが好ましい。晶析時に塩基性固体を添加する場合についても、かかる塩基性固体は特に限定されないが、同様に、水酸化ナトリウム、および、水酸化カリウムの内の少なくとも1種類を用いることが好ましく、特に、コスト面から、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
なお、塩基の添加に際しては、pHを6に上昇させる際と、その後、pHを12〜14に上昇させる際とにおいて、同一の塩基を用いてもよく、異なる塩基を組み合わせてもよい。
次に、得られた水酸化インジウムまたはインジウム複合酸化物の粉末を分散させてサスペンションとするためのアンモニア水溶液の濃度は、0.08mol/L以上とすることが必要である。0.08mol/L未満では、水酸化インジウム粉末中に残留する塩素の量を減らすことが十分にできない。アンモニア水溶液の濃度は、1.0mol/L以下であることが好ましく、1.0mol/Lを超えても、塩素除去の効果は大きくならず、コストが増加するのみである。水洗あるいはサスペンションに用いる液量は、塩素を十分に吸収でき、かつ、十分に撹拌できる液量とすればよい。水洗には純水を用いることが好ましく、塩基の種類、処理する塩化インジウムないしは塩化インジウムを主成分とする金属塩の量に応じて、適切に決定される。
また、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物の粉末をアンモニア水溶液に分散させて得たサスペンションは、60〜100℃の液温に保持することが必要である。液温が60℃未満の場合、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物の粉末中に残留する塩素の量を減らすことが、十分にはできない。一方、液温が100℃を超えると、アンモニアの蒸発が激しくなり、アンモニア濃度が減少してしまうため、塩素の量を減らすことが十分にはできないことがある。より好ましくは、塩素を安定して低減させるため、サスペンションを70〜100℃の液温に保持している状態で撹拌する。サスペンションの保持時間は15分以上とする。保持時間が15分未満の場合は、塩素の量を減らすことが十分にはできないことがある。より好ましくは、塩素を安定して低減させるため、1時間以上保持する。
アンモニア水溶液を添加したサスペンション中で、所定時間、得られた粉末を保持することは、塩素除去の効果を向上させるが、その後、濾過と水洗の繰り返し、あるいは純水との置換による循環洗浄を行うだけでは、水酸化物中の塩素濃度を、15質量ppm以下のように極めて低くすることは、困難である。
したがって、水洗工程において、得られた粉末に対して、水洗および乾燥を少なくとも1度行うか、複数回繰り返した後、さらに水洗し、その後、該粉末を仮焼することが、残留塩素量の低減に効果的である。乾燥を加えることで、水酸化インジウムの粒子の内部まで、十分に水洗の水が入るために、塩素が効果的に除去されるものと思われる。
さらに、乾燥工程後、直接、水洗を行うよりも、無機塩水溶液を用いて、再度、サスペンションにして保持した後、濾過し、得られた粉末を水洗することがより好ましい。無機塩としては、硝酸アンモニウムのほか、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられるが、残留塩素量、ナトリウムの混入の点から、硝酸アンモニウムの使用が好ましい。
また、硝酸アンモニウム水溶液中に分散させたサスペンションのpHを、8〜11に制御することにより、水酸化インジウム中の残留塩素量をさらに低減させることができる。
硝酸アンモニウムの濃度は0.001mol/L以上であれば、特に制限はないが、廃水処理のコストを下げるため、0.01mol/L以下であることが好ましい。硝酸アンモニウム水溶液中に分散させたサスペンションの温度は、常温で問題ないが、アンモニア水溶液中に分散させたサスペンションと同様に60〜100℃の液温に加温すると、より大きな効果が得られる。
一方、仮焼温度は、通常行なわれる温度で問題なく、700〜1200℃とすることが好ましい。700℃未満では、水酸化物から酸化物への転換が十分でないことがあり、1200℃を超えると、酸化インジウムが焼結することがある。仮焼時の雰囲気は、特に限定されないが、酸化性雰囲気とすることが好ましく、コスト面から大気雰囲気とすることがより好ましい。
以上のようにして得た酸化インジウムを主成分とする粉末においては、残留塩素量が少なく、40質量ppm以下となり、電子材料用としては好適なものとなる。さらに、得られる酸化インジウムを主成分とする粉末の残留塩素量が少ないほど、電子材料用として好適であるため、残留塩素量は20質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、残留塩素量は、水酸化インジウムまたはインジウム複合酸化物の粉末を乾燥させ、その後、硝酸で溶解し、硝酸銀を加えて、塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を、蛍光X線定量分析装置にて検量線により測定することで求める。これにより、表面に存在する塩素量だけでなく、粉末の内部に存在する塩素量を含めた形で、残留塩素量を測定することができる。
[実施例1〜6、比較例1〜3]
実施例1〜6、比較例1〜3では、晶析時のpHおよび液温が水酸化インジウム中に残留する塩素の量へ及ぼす影響について検討した。
実施例1〜6、比較例1〜3では、晶析時のpHおよび液温が水酸化インジウム中に残留する塩素の量へ及ぼす影響について検討した。
(実施例1)
インジウムメタルを濃塩酸に溶解して作製した0.88mol/Lの塩化インジウム水溶液100mlに、25%アンモニア(NH4OH)水溶液(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)24.4mlを、5ml/minの速度で添加したところ、溶液のpHは7.7となった。その後、水酸化ナトリウムペレット(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)を溶かすことにより調製した25%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液43.0mlを、約10分かけて添加した。pHを6まで上昇させる間の最高液温は34℃であり、NaOH水溶液により溶液のpHは13.41となった。
インジウムメタルを濃塩酸に溶解して作製した0.88mol/Lの塩化インジウム水溶液100mlに、25%アンモニア(NH4OH)水溶液(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)24.4mlを、5ml/minの速度で添加したところ、溶液のpHは7.7となった。その後、水酸化ナトリウムペレット(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)を溶かすことにより調製した25%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液43.0mlを、約10分かけて添加した。pHを6まで上昇させる間の最高液温は34℃であり、NaOH水溶液により溶液のpHは13.41となった。
前記溶液を濾過することにより得られた水酸化インジウムの粉末を水洗した後、0.2mol/LのNH4OH水溶液に分散させることによりサスペンションとした。その後、サスペンションを90℃で2時間保持した後、濾過し、水洗を行った。水洗後の水酸化インジウムの粉末を、乾燥させ、その後、硝酸で溶解し、硝酸銀を加えて、塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を、蛍光X線定量分析装置(PANalytical製、Magix)にて検量線により測定し、水酸化インジウム粉末中の残留塩素量を求めた。
その結果、最終的に得られた水酸化インジウム粉末中の残留塩素量は20質量ppm(水酸化物が、すべて酸化物に転換されたとして換算した残留塩素品位は、24質量ppm)であった。結果を表1に示す。なお、晶析に用いたNH4OHおよびNaOHは、インジウムに対する当量(倍)で示した。
(実施例2〜6、比較例1〜3)
晶析時に添加するアンモニア(NH4OH)水溶液および水酸化ナトリウム(NaOH)の量、添加する水酸化ナトリウム(NaOH)の状態、および、pHを6まで上昇させる間の最高液温を、表1に示す種々の条件に変えた以外は、実施例1と同様に、水酸化インジウムの粉末を得て、測定を行った。なお、実施例5および比較例2では、NH4OH水溶液を添加せず、NaOH水溶液を最初から5ml/分の速度で添加した。液温の制御は、溶液を加熱することにより行なった。結果を表1に示す。
晶析時に添加するアンモニア(NH4OH)水溶液および水酸化ナトリウム(NaOH)の量、添加する水酸化ナトリウム(NaOH)の状態、および、pHを6まで上昇させる間の最高液温を、表1に示す種々の条件に変えた以外は、実施例1と同様に、水酸化インジウムの粉末を得て、測定を行った。なお、実施例5および比較例2では、NH4OH水溶液を添加せず、NaOH水溶液を最初から5ml/分の速度で添加した。液温の制御は、溶液を加熱することにより行なった。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜6で得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、30質量ppm以下であった。特に、実施例1および5では、残留塩素量を20質量ppm以下とすることができた。これに対して、比較例1、2のように、晶析時のpHが12より低い場合、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、50質量ppm以上と高かった。したがって、晶析時のpHは12〜14に調整することが必要であることが理解される。
また、pHを12〜14に調整した場合でも、比較例3のように、pHを6まで上昇させる間の最高液温が50℃を超えると、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量が67質量ppmと高くなった。したがって、pHを6まで上昇させる間の液温は、50℃以下に制御することが必要であることが理解される。
[実施例7、8]
実施例7および8では、NH4OH水溶液に分散させたサスペンションから濾過した水酸化インジウムをいったん乾燥させてから、さらに洗浄することにより得られる効果、および、水酸化インジウムを硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させてサスペンションとすることの効果について検討した。
実施例7および8では、NH4OH水溶液に分散させたサスペンションから濾過した水酸化インジウムをいったん乾燥させてから、さらに洗浄することにより得られる効果、および、水酸化インジウムを硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させてサスペンションとすることの効果について検討した。
(実施例7)
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、100℃でいったん大気雰囲気中で乾燥させ、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンション(pH7.7)とし、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、10質量ppmであった。
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、100℃でいったん大気雰囲気中で乾燥させ、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンション(pH7.7)とし、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、10質量ppmであった。
(実施例8)
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、乾燥させずに、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンションとし(pH7.8)、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、18質量ppmであった。
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、乾燥させずに、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンションとし(pH7.8)、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、18質量ppmであった。
実施例7および8より、硝酸アンモニウム中へ再分散させてサスペンションとすることが、得られる水酸化インジウム中の残留塩素量の低減に効果的であり、さらに、実施例7より、かかる再分散の前に、粉末をいったん乾燥させる工程を加えることが、得られる水酸化インジウム中の残留塩素量の低減に、より効果的であることが理解される。
[実施例9〜11]
実施例9〜11では、硝酸アンモニウムのサスペンションのpHの効果について示す。
実施例9〜11では、硝酸アンモニウムのサスペンションのpHの効果について示す。
(実施例9〜11)
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、100℃でいったん大気雰囲気中で乾燥させ、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンションとし、25%NH4OH水溶液(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)を添加してpHを8(実施例9)、9(実施例10)、10(実施例11)に調整し、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、それぞれ、6質量ppm、4質量ppm、4質量ppmであった。結果を表3に示す。なお、比較しやすいように実施例7の結果も表3に示す。
実施例1と同様にして得られた水酸化インジウム粉末を、100℃でいったん大気雰囲気中で乾燥させ、0.001mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液中に再分散させることによりサスペンションとし、25%NH4OH水溶液(和光純薬工業株式会社製、試薬一級)を添加してpHを8(実施例9)、9(実施例10)、10(実施例11)に調整し、攪拌させながら保持した後、濾過し、水洗および乾燥を行った。実施例1と同様に測定したところ、得られた水酸化インジウム中の残留塩素量は、それぞれ、6質量ppm、4質量ppm、4質量ppmであった。結果を表3に示す。なお、比較しやすいように実施例7の結果も表3に示す。
pH制御を行なっていない実施例7と比較すると、NH4OHを添加してpHを8〜10に制御した実施例9〜11は、最終的に得られた水酸化インジウム中の残留塩素量がさらに少なくなっていることが理解される。
以上より明らかなように、本発明の酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法により、塩化インジウム、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩を出発原料として用いた場合であっても、残留塩素量が少なく、効率よく、かつ、低コストで、酸化インジウムを主成分とする粉末を製造することができ、透明導電性薄膜形成用の高密度インジウム含有酸化物ターゲットの分野で利用されるのみでなく、樹脂混練用導電性フィラーおよび透明導電膜塗料の分野でも利用され、工業的に極めて有益である。
Claims (5)
- 塩化インジウムの水溶液、または、塩化インジウムを主成分とする金属塩が含まれる水溶液に、塩基を添加し、液温を50℃以下に保持した状態で、pHを6まで上昇させ、その後、塩基をさらに添加することにより、pHを12〜14に上昇させて、水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物を晶析させ、その後、得られた水酸化インジウムまたはインジウム複合水酸化物を、0.08mol/L以上のアンモニア水溶液に分散させることによりサスペンションとし、該サスペンションを60〜100℃の液温に保持した後、濾過することにより粉末を得て、その後、水洗および仮焼の処理を行うことを特徴とする酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法。
- 前記塩基として、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム、および、水酸化カリウムの内の少なくとも1種類を用いることを特徴とする請求項1に記載の酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法
- 前記水洗および仮焼の処理工程において、得られた粉末を、前記水洗後、乾燥および水洗の処理を少なくとも1度行った後、前記仮焼を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法。
- 前記水洗および仮焼の処理工程において、得られた粉末を、前記水洗後、乾燥し、無機塩水溶液に分散させ、濾過し、さらに水洗した後、前記仮焼を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法。
- 前記無機塩水溶液として硝酸アンモニウム水溶液を用い、前記粉末が分散した硝酸アンモニウム水溶液のpHを8〜11に制御することを特徴とする請求項4に記載の酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法。
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JP2007006902A JP2008174399A (ja) | 2007-01-16 | 2007-01-16 | 酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法 |
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JP2009091213A (ja) * | 2007-10-11 | 2009-04-30 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 水酸化インジウムの製造方法 |
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