JP2012126937A - Itoスパッタリングターゲットとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高結晶性のITO薄膜を成膜できる、低い酸化スズ含有量のITO焼結体からなり、かつ、長時間にわたり安定した成膜を可能とする、高密度のITOスパッタリングターゲットを得る。
【解決手段】原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/g、平均粒径が0.1〜0.5μmである酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/g、平均粒径が0.1〜1.5μmである酸化スズ粉末とを用い、酸化スズの含有量を2.5〜5.2質量%に調整し、混合および粉砕し、196MPa以上の圧力で加圧成形し、常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上1600℃以下、保持時間を20時間以上30時間以下として焼成して、得られるITOスパッタリングターゲットの平均密度を7.1g/cm3以上、平均結晶粒径を3μm以上10μm未満とする。
【選択図】なし
【解決手段】原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/g、平均粒径が0.1〜0.5μmである酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/g、平均粒径が0.1〜1.5μmである酸化スズ粉末とを用い、酸化スズの含有量を2.5〜5.2質量%に調整し、混合および粉砕し、196MPa以上の圧力で加圧成形し、常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上1600℃以下、保持時間を20時間以上30時間以下として焼成して、得られるITOスパッタリングターゲットの平均密度を7.1g/cm3以上、平均結晶粒径を3μm以上10μm未満とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、ITOスパッタリングターゲット、特に、スパッタリング法により、タッチパネルなどの表示素子に用いられる透明導電膜を形成するための、ITOスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関する。
近年、表示素子の発達に伴い、透明導電膜が広く用いられている。特に、低抵抗、高透過率などの利点を有することから、酸化インジウム−酸化スズからなるITO薄膜を用いることが主流となっている。ITO薄膜を、大面積で均一に得る手段としては、ITOスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法が優れているため、かかる手段が、現在主流となっている。なお、通常、ITO薄膜には、酸化スズが10%程度含まれている。
近年、表示素子と位置入力素子とを兼ね備えたタッチパネルが、さまざまな電子機器の入力装置として広く導入されてきている。タッチパネルなどの素子の製造においては、フィルム基板を含む柔軟性を備えた各種基板に対して、ITO薄膜を成膜することが行われており、この用途においては、透明導電膜であるITO薄膜に対して、ペン強度などの強度試験において、高い耐久性が求められるようになってきている。
このような要求を満たすためには、ITO薄膜をより結晶化させて、膜の硬度を高くし、かつ、耐摩耗性を向上させる必要がある。ITO薄膜を、このように高硬度で、高い耐摩耗性を備えたものとするためには、その結晶性を向上させる必要があり、このため、高結晶性のITO薄膜を作製できるスパッタリングターゲットに対するニーズが高まっている。
ITO薄膜のスパッタリング法による成膜に関して、ITOスパッタリングターゲットにおける酸化スズ濃度を10%未満とすると、高結晶性のITO薄膜を成膜できることが知られている。
しかしながら、ITOスパッタリングターゲットにおける酸化スズ濃度を10%未満とすると、ターゲット材料となるITO焼結体を作製する場合に、原料粉末の粒度分布が不均一であったり、焼結温度が不均一であったり、あるいは焼結温度が1500℃以上と高すぎたりした場合には、焼結体において異常な粒成長が見られるようになる。このような異常な粒成長の存在は、ターゲットにおいて、クラックの進展を促し、その強度の低下の原因となる。
こうしたクラックの存在により、ITOスパッタリングターゲットの加工時に、割れが発生しやすくなり、その歩留りを悪化させてしまう。さらに、成膜時にも、ターゲットにおけるクラック発生に起因して、異常放電が発生するようになり、このような異常放電は、膜欠陥の原因となり、得られるITO薄膜における膜質の悪化を引き起こすことになる。
また、上述のような条件でITO焼結体を作製した場合に、ITO焼結体の密度が不均一となる場合もあり、このようなITO焼結体を用いたITOスパッタリングターゲットを用いた場合、成膜時にノジュールの発生が多くなり、これに起因して成膜速度の低下や異常放電の発生が起こってしまう。このような現象により、膜厚分布の悪化、異常放電の発生、パーティクルの生成による膜質の悪化が引き起こされることとなる。
ノジュールの発生原因としては、ターゲット中の空孔などが挙げられ、ノジュールの発生を抑制するためには、ターゲットの高密度化が効率的であることが知られている。
たとえば、特許文献1には、比表面積値が3〜15m2/g、かつ平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/g、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを、酸化スズの含有量が1質量%以上、10質量%未満となるよう調整して混合した、酸化インジウム−酸化スズ複合粉末を、冷間静水圧プレス(CIP)で成形した後、常圧酸素雰囲気中、1400℃以上、1500℃未満で焼結させることにより、7.0g/cm3以上という高密度のITOスパッタリングターゲットを製造できることが開示されている。
このITOスパッタリングターゲットでは、従前のものとの比較では、成膜時のノジュールの発生を抑止できており、高い結晶性を有するITO薄膜の成膜を可能としている。しかしながら、近年の透明導電膜の高い需要から、ITO薄膜については、さらに高い投入電力により、より効率的に成膜することが要求されており、ITOスパッタリングターゲットにもさらなる高密度化が要求されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、7.1g/cm3以上という高密度のITOスパッタリングターゲットを得ることが難しい。
10質量%程度の通常の酸化スズ含有量のITOスパッタリングターゲットにおいては、種々の高密度化の提案がなされているが、酸化スズの含有量が10質量%未満と低いITOスパッタリングターゲットにおいては、現在の高効率化の要望に十分に応えうる高密度化が達成されていないのが実情である。
本発明は、高硬度で、高い耐摩耗性を備えた高結晶性のITO薄膜を成膜でき、かつ、高い投入電力を投じた長時間のスパッタリング法による成膜に際しても、ノジュールの生成を十分に抑止できる、十分に高い密度を備えたITOスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために、ITOスパッタリングターゲットの製造条件、特に、ITOスパッタリングターゲットを構成するITO焼結体の組成、および、焼成条件について鋭意検討を行ったところ、その適切な規制により、低い酸化スズ含有量であるにも拘わらず、7.1g/cm3以上という超高密度のITOスパッタリングターゲットを製造しうるとの知見を得て、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明のITOスパッタリングターゲットは、酸化インジウムと酸化スズと不可避不純物とからなり、酸化スズの含有量が2.5質量%以上、5.2質量%以下であり、平均密度が7.1g/cm3以上であり、かつ、平均結晶粒径が3μm以上、10μm未満であることを特徴とする。かかる特性を備える本発明のITOスパッタリングターゲットは、以下の製造条件を備えたITOスパッタリングターゲットの製造方法により作製することができる。
すなわち、本発明のITOスパッタリングターゲットの製造方法は、
(1)原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/gであり、かつ、平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/gであり、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを用いて、
(2)酸化スズの含有量を2.5質量%以上、5.2質量%以下に調整し、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末とを混合および粉砕し、
(3)得られた混合粉末を196MPa以上の圧力で加圧成形し、
(4)得られた成形体を常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上、5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上、1600℃以下、保持時間を20時間以上、30時間以下として焼成する、
工程を備えることを特徴とする。
(1)原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/gであり、かつ、平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/gであり、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを用いて、
(2)酸化スズの含有量を2.5質量%以上、5.2質量%以下に調整し、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末とを混合および粉砕し、
(3)得られた混合粉末を196MPa以上の圧力で加圧成形し、
(4)得られた成形体を常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上、5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上、1600℃以下、保持時間を20時間以上、30時間以下として焼成する、
工程を備えることを特徴とする。
前記スラリー中における前記原料粉末の粒度分布を、平均値が0.1μm以上、0.45μm以下、平均値と中央値の差が該中央値の1%以内に収まるように調整することが好ましい。
また、前記原料粉末にバインダを添加したスラリーを用いて、前記混合および粉砕を行い、その後、混合後のスラリーを噴霧および乾燥して造粒粉末として、該造粒粉末を加圧成形することが好ましい。
本発明により、低い酸化スズ含有量でありながら、平均密度が7.1g/cm3以上という高密度のITOスパッタリングターゲットが得られるため、スパッタリング法による成膜中に、ターゲットにクラックやノジュールが生成すること、これらに起因する異常放電の発生などが抑制され、使用末期まで安定的に高結晶性のITO薄膜の成膜を行うことが可能となる。
すなわち、クラックやノジュールの生成や異常放電の発生が抑制されることにより、成膜後の膜中においてダークスポットなどの欠陥、その他の膜質の悪化が抑制される。また、装置を止めてターゲット表面をクリーニングするなどの措置が不要となり、生産性の向上が図られ、高結晶性のITO薄膜の高収率化が期待できる。
本発明は、酸化インジウムと酸化スズと不可避不純物とからなるITOスパッタリングターゲットに関する。特に、本発明のITOスパッタリングターゲットでは、酸化スズの含有量が2.5質量%以上、5.2質量%以下である。酸化スズの含有量が2.5質量%未満であると、7.1g/cm3以上の密度を得ることが困難となる。一方、酸化スズの含有率が5.2質量%を超えると、室温で成膜したITO薄膜が結晶化しにくくなり、高結晶性のITO薄膜を得ることができなくなる。
なお、原料粉末における酸化スズの含有量は、概ね得られるITOスパッタリングターゲットにおける組成を規定することとなる。また、本発明のITOスパッタリングターゲットの組成には不可避不純物を含みうるが、その許容量は100ppm以下とする必要がある。
また、本発明のITOスパッタリングターゲットは、その平均密度が7.1g/cm3以上である。平均密度が7.0g/cm3以上であれば、たとえば、直流マグネトロンスパッタリング装置の場合において、積算投入電力量が40Wh/cm2程度であれば、ターゲット表面におけるノジュールの発生は抑制されるが、積算投入電力量をさらに70Wh/cm2程度まで上げた場合には、ノジュールの発生が抑止できず、これに起因してアーキングの頻度が増加し、膜質の悪化を引き起こすおそれがある。平均密度を7.1g/cm3以上とすることで、積算投入電力量を150Wh/cm2程度まで上げた場合であっても、ノジュールの発生が抑制でき、より高品質の膜を成膜することが可能となる。
さらに、本発明のITOスパッタリングターゲットは、その平均結晶粒径が、3μm以上、10μm未満である。平均結晶粒径が3μmより小さい場合、焼結が十分に進行せず、密度が低くなってしまう。一方、平均結晶粒径が、10μm以上となると、クラックが粒界で伸展しやすくなるため、強度が低下し、歩留まりが悪化する。なお、この平均結晶粒径は、SEM走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による画像に、同一試料に対して2本の直線を引き、それぞれ直線の長さに縮尺を掛けた値を該直線が通過した結晶粒の数で割って求めた平均結晶粒径について、これら2本の平均値を算出したものである。
このような特性を有するITOスパッタリングターゲットは、以下の製造条件および製造工程により、作製することが可能となる。
(1)原料粉末
原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/gであり、かつ、平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/gであり、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを用いる。
原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/gであり、かつ、平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/gであり、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを用いる。
酸化インジウム粉末の比表面積値が3m2/g未満であると、一次粒子径が大きくなり、粒子間に生じる空孔も大きくなるため、焼結時にも空孔を除くことが困難となる。このような空孔の存在により、ターゲットの密度を十分に高めることができない。一方、15m2/gを超えると、一次粒子が小さすぎるために、凝集を生じやすく、成形体中に粗大空孔が生じやすく、同様に焼結時に空孔を除き難くなる。
また、酸化インジウム粉末の平均粒径が、0.1μm未満であると、酸化スズ粉末との混合および粉砕時に、過粉砕を生じやすく、焼結時に異常粒成長が見られ、密度の低下を引き起こすとともに、焼結体の強度低下を引き起こす。これは、異常粒成長が起こると、粒内に空孔が取り込まれ、粒界に沿った拡散が阻害されて、空孔を取り除くことが困難となるためである。一方、酸化インジウム粉末の平均粒径が0.5μmを超えると、粒子間に凝集を生じやすくなり、粗大空孔が多く存在することになり、いずれの場合でも、ITO焼結体の密度低下を引き起こす。
酸化スズ粉末についても、比表面積値が、10m2/g未満、もしくは15m2/gを超える場合には、酸化インジウム粉末の場合と同様の理由により、ITO焼結体の密度低下を引き起こす。また、酸化スズ粉末の平均粒径が、0.1μm未満であると、酸化インジウム粉末との混合および粉砕時に、同様に過粉砕を生じやすくなる。一方、酸化スズ粉末の平均粒径が、1.5μm超える場合には、粒子間に凝集が生じやすくなり、粗大空孔が多く存在して、ITO焼結体の密度低下を引き起こす。さらに、安定して高密度を得るためには、平均粒径が1μm以下であることが望ましい。
(2)混合および粉砕工程
ITOスパッタリングターゲットにおける目的の組成に応じて、酸化スズの含有量を2.5質量%以上、5.2質量%以下に調整した上で、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末とを混合および粉砕する。
ITOスパッタリングターゲットにおける目的の組成に応じて、酸化スズの含有量を2.5質量%以上、5.2質量%以下に調整した上で、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末とを混合および粉砕する。
原料粉末を、混合および粉砕する方法としては、粒子間に存在する空孔を取り除ける粉砕方法が望ましく、微粒子化が可能であるボールミルまたはビーズミルが望ましい。またこれらの手段には、乾式と湿式があり、いずれも採用することができるが、均質性、また、顆粒状に造粒する観点から、湿式の手段を採ることが好ましい。
湿式の場合、特に、後工程において造粒を行う場合には、混合および粉砕時に、アクリル系共重合体ナトリウム塩などの分散剤、ポリビニルアルコール(PVA)などのバインダを添加した上で、スラリーを形成し、このスラリーを粉砕および混合工程に供することが好ましい。
なお、この場合、分散剤やバインダなどの有機成分の量は、酸化インジウムと酸化スズ粉末の合計質量の1.0質量%以上、4.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上、3.5質量%以下であることがより好ましい。1.0質量%未満であると、分散効果が得られず均質に混合することができず、また、成形体の強度低下を起こす。一方、4.0質量%を超えると、焼結時に割れを生じうるとともに、焼結時のターゲット内の空孔密度が高くなり、ターゲットの密度低下を引き起こす。
また、スラリー中における原料粉末の粒度分布を、平均値が0.1μm以上、0.45μm以下、平均値と中央値の差が中央値の1%以内に収まるように調整することが好ましい。この平均値が0.45μmを超えると、粒子が大きく、粗大空孔を生じやすくなる。一方、0.1μm未満では、凝集を生じやすく、成形体に粗大空孔を生じやすくなる。また、平均値と中央値の差が1%を超えると、粗大粒子の粉砕が進んでおらず、空孔を生じやすくなる。
(2a)噴霧および乾燥工程
混合粉末については、加圧成形する前に、平均粒径10μm以上の顆粒状に造粒することが好ましい。また、この場合、上述の通り、混合および粉砕時に原料粉末にバインダを加えてスラリーを得て、このスラリーをスプレードライヤなどの乾燥設備を用いて噴霧および乾燥し、球状の造粒粉を得ることが好ましい。このような造粒粉を得ることにより、粉末の流動性が良好となり、成形型への充填が容易となる。噴霧および乾燥時の乾燥温度は、140℃〜170℃の範囲とすることが好ましい。
混合粉末については、加圧成形する前に、平均粒径10μm以上の顆粒状に造粒することが好ましい。また、この場合、上述の通り、混合および粉砕時に原料粉末にバインダを加えてスラリーを得て、このスラリーをスプレードライヤなどの乾燥設備を用いて噴霧および乾燥し、球状の造粒粉を得ることが好ましい。このような造粒粉を得ることにより、粉末の流動性が良好となり、成形型への充填が容易となる。噴霧および乾燥時の乾燥温度は、140℃〜170℃の範囲とすることが好ましい。
(3)成形工程
得られた混合粉末または造粒粉末を、196MPa以上の圧力で加圧成形して、成形体を得る。装置能力、生産性の観点から、成形圧力は196MPa〜300MPaの範囲とすることが好ましい。196MPa未満であると、粒子間に存在する空孔を除去することが困難であり、ITO焼結体の密度低下を引き起こす。また、成形体の強度も低くなるために安定した製造が困難である。したがって、高圧力が得られる冷間静水等方圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)を用いることが望ましい。なお、成形時における最高圧力の保持時間は、3分〜10分とすることが好ましい。
得られた混合粉末または造粒粉末を、196MPa以上の圧力で加圧成形して、成形体を得る。装置能力、生産性の観点から、成形圧力は196MPa〜300MPaの範囲とすることが好ましい。196MPa未満であると、粒子間に存在する空孔を除去することが困難であり、ITO焼結体の密度低下を引き起こす。また、成形体の強度も低くなるために安定した製造が困難である。したがって、高圧力が得られる冷間静水等方圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)を用いることが望ましい。なお、成形時における最高圧力の保持時間は、3分〜10分とすることが好ましい。
(4)焼成工程
得られた成形体を、常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上、5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上、1600℃以下、保持時間を20時間以上、30時間以下として焼成して、焼結させる。
得られた成形体を、常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上、5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上、1600℃以下、保持時間を20時間以上、30時間以下として焼成して、焼結させる。
昇温速度が1.0℃/分未満では、空孔の分散および消滅が進行する前に、結晶粒成長が先行し、保持中に空孔が粒界に沿って分散および消滅しづらくなる。このため、昇温速度は2.0℃/分以上として、なるべく速く昇温させるのが望ましい。ただし、昇温速度が5.0℃/分を超えてしまうと、炉内の均熱を保つのが難しくなり、焼結体の大きさにもよるが、焼結体に反りが発生しやすくなる。
また、保持温度が1500℃未満では、7.1g/cm3以上という高密度を得ることができない。一方、保持温度が1600℃を超えてしまうと、平均結晶粒径が10μmを超え、粒界に沿ってクラックが伸展しやすくなり、ターゲットの強度低下をきたす。さらに、酸化スズの揮発も抑えられなくなる。この観点から、保持温度は、1400℃以上、1600℃以下とすることがさらに好ましい。
さらに、保持時間が20時間より短いと、炉内温度が均一になってからの保持温度が短く、密度低下や反りを引き起こす。30時間より長い場合には生産性が低下する。
また、焼成後、得られたITO焼結体を室温まで冷却させるが、この場合に、冷却速度を好ましくは0.3℃/分〜2℃/分、さらに好ましくは0.3℃/分〜0.5℃/分とする。
なお、酸素雰囲気中で焼結させることにより、酸化スズの揮発を抑え、密度の低下を防止することができる。
得られたITO焼結体を、円盤状もしくは円筒状などの必要な形状に加工して、ITOスパッタリングターゲットとし、成膜時には、所定形状のバッキングプレートに接合されたものが供される。このスパッタリングターゲットは、7.1g/cm3以上という高密度を達成していることから、直流マグネトロンスパッタリング装置などのスパッタリング装置を用いて、高い投入電力で効率的に成膜を行うことが可能である。
(実施例1)
比表面積値11.1m2/g、平均粒径0.38μmの酸化インジウム粉末を97質量%と、比表面積値11.0m2/g、平均粒径1.1μmの酸化スズ粉末を3.0質量%となるように、それぞれ秤量して、原料粉末を得た。
比表面積値11.1m2/g、平均粒径0.38μmの酸化インジウム粉末を97質量%と、比表面積値11.0m2/g、平均粒径1.1μmの酸化スズ粉末を3.0質量%となるように、それぞれ秤量して、原料粉末を得た。
この原料粉末に、バインダとしてPVAを原料粉末に対して0.7質量%、分散剤(アクリル系共重合体ナトリウム塩)を原料粉末に対して1.2質量%となるように、それぞれ添加し、さらに純水を所定量加えて、濃度60質量%のスラリーを作製し、ビーズミルにて、混合および粉砕を行った。このとき使用したビーズはジルコニア製で、直径が0.5mmであり、ミル回転数1400rpmで3時間の処理を行った。
作製したスラリー中の原料粉末の粒度を粒度分布計(株式会社島津製作所製、SALD−2200)により測定したところ、その平均値は0.4μmであり、平均値と中央値の差は中央値の0.2%であった。
その後、スラリーを、スプレードライヤ(大川原化工機株式会社製)により、熱風温度150℃で噴霧および乾燥し、粒径10μm〜100μm、タップ密度1.53g/cm3の球状の造粒粉を作製した。
得られた造粒粉から、CIP装置を用いて、常温にて、294MPaの圧力で、保持時間を6分とする成形を行った。
得られた成形体を、電気炉に設置して、常圧の酸素雰囲気中で、焼成を行った。
焼成時において、1000℃までの昇温速度を0.3℃/分、1000℃から1550℃までの昇温速度を2.0℃/分として昇温し、その温度で30時間保持し、その後、冷却速度0.7℃/分で1000℃まで冷却して、300×100×12mmのITO焼結体を得た。
これらの成形および焼成の工程において、ITO焼結体に割れやクラックは発生していなかった。
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定したところ、7.11g/cm3であった。また、その平均結晶粒径をSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)画像を用いて測定および算出したところ、6.5μmであった。
(実施例2)
酸化スズ粉末の含有量を2.7質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.11g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.5μmであった。
酸化スズ粉末の含有量を2.7質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.11g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.5μmであった。
(実施例3)
酸化スズ粉末の含有量を3.3質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.1μmであった。
酸化スズ粉末の含有量を3.3質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.1μmであった。
(実施例4)
酸化スズ粉末の含有量を5.0質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は8.9μmであった。
酸化スズ粉末の含有量を5.0質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は8.9μmであった。
(実施例5)
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を4.0℃/分としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は4.7μmであった。
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を4.0℃/分としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は4.7μmであった。
(比較例1)
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を0.5℃/分としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.07g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.3μmであった。
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を0.5℃/分としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.07g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.3μmであった。
(比較例2)
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を0.5℃/分としたこと以外は、実施例3と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.08g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.6μmであった。
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を0.5℃/分としたこと以外は、実施例3と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.08g/cm3であり、その平均結晶粒径は5.6μmであった。
(比較例3)
焼成工程における、保持温度を1450℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.07g/cm3であり、その平均結晶粒径は2.7μmであった。
焼成工程における、保持温度を1450℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.07g/cm3であり、その平均結晶粒径は2.7μmであった。
(比較例4)
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を10.0℃/分としたこと以外は、実施例1と同様に成形体を得て、焼成を行ったところ、炉内の均熱が保てず、均等に収縮せずに、成形体に割れが発生した。
焼成工程における、1000℃から保持温度までの昇温速度を10.0℃/分としたこと以外は、実施例1と同様に成形体を得て、焼成を行ったところ、炉内の均熱が保てず、均等に収縮せずに、成形体に割れが発生した。
(比較例5)
酸化スズ粉末の含有量を2.0質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.05g/cm3であり、その平均結晶粒径は3.0μmであった。
酸化スズ粉末の含有量を2.0質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.05g/cm3であり、その平均結晶粒径は3.0μmであった。
(比較例6)
酸化スズ粉末の含有量を5.5質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は10.5μmであった。
酸化スズ粉末の含有量を5.5質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、ITO焼結体を得た。焼結体の密度は、7.12g/cm3であり、その平均結晶粒径は10.5μmであった。
本発明のITOスパッタリングターゲットは、特に、タッチパネルなどの表示素子に好適に用いられる高結晶性のITO薄膜を、安定的かつ高い収率で成膜することを可能とするものであり、これらの表示素子を含む電子部品の製造分野への貢献は非常に大きいものがある。
Claims (4)
- 酸化インジウムと酸化スズと不可避不純物とからなり、酸化スズの含有量が2.5質量%以上、5.2質量%以下であり、平均密度が7.1g/cm3以上であり、かつ、平均結晶粒径が3μm以上、10μm未満である、ITOスパッタリングターゲット。
- (1)原料粉末として、比表面積値が3〜15m2/gであり、かつ、平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である酸化インジウム粉末と、比表面積値が10〜15m2/gであり、かつ平均粒径が0.1μm以上、1.5μm以下である酸化スズ粉末とを用いて、
(2)酸化スズの含有量を2.5質量%以上、5.2質量%以下に調整し、酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末とを混合および粉砕し、
(3)得られた混合粉末を196MPa以上の圧力で加圧成形し、
(4)得られた成形体を常圧の酸素雰囲気中で、1000℃以上の領域における昇温速度を1.0℃/分以上、5.0℃/分以下、保持温度を1500℃以上、1600℃以下、保持時間を20時間以上、30時間以下として焼成する、
工程を備える、ITOスパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記スラリー中における前記原料粉末の粒度分布を、平均値が0.1μm以上、0.45μm以下、平均値と中央値の差が該中央値の1%以内に収まるように調整する、請求項2に記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記原料粉末にバインダを添加したスラリーを用いて、前記混合および粉砕を行い、その後、混合後のスラリーを噴霧および乾燥して造粒粉末として、該造粒粉末を加圧成形する、請求項2または3に記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法。
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