JP5967016B2 - 蒸着用タブレットとその製造方法 - Google Patents

蒸着用タブレットとその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5967016B2
JP5967016B2 JP2013112633A JP2013112633A JP5967016B2 JP 5967016 B2 JP5967016 B2 JP 5967016B2 JP 2013112633 A JP2013112633 A JP 2013112633A JP 2013112633 A JP2013112633 A JP 2013112633A JP 5967016 B2 JP5967016 B2 JP 5967016B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
indium oxide
tablet
powder
sintered body
raw material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013112633A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014231625A (ja
Inventor
誠 小沢
誠 小沢
佐藤 啓一
啓一 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2013112633A priority Critical patent/JP5967016B2/ja
Publication of JP2014231625A publication Critical patent/JP2014231625A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5967016B2 publication Critical patent/JP5967016B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、透明導電膜やバッファ層等に用いられるノンドープの酸化インジウム膜(すなわち、ドーパントを含有しない酸化インジウム膜)を真空蒸着法で製造する際に使用される酸化インジウム焼結体から成る蒸着材料に係り、特に、高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを照射しても破損が起こり難い蒸着用タブレットとその製造方法に関するものである。
透明導電膜は、一般的に高い導電性と可視光領域での高い透過率を有している。このため、太陽電池や液晶表示素子、その他各種受光素子の電極等に利用されている他、自動車窓や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケース等の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
上記用途には、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化錫、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛、および、錫をドーパントとして含む酸化インジウム等が広範に利用されている。特に、錫をドーパントとして含む酸化インジウム膜、すなわちIn23−SnO2系膜は、ITO(Indium tin oxide)膜と称され、特に低抵抗の膜が容易に得られることから、これまで広く用いられてきた。
ところで、電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティング等の真空蒸着法により透明導電膜を成膜する際に使用される蒸着材料は大きく2種類に分類される。その1つは、1粒子の大きさが直径で5mm以下の粒から成る蒸着材料であり、もう1つは、例えば、直径30mm、高さ10mm程度のタブレット状のものである。
そして、タブレット状の蒸着材料(蒸着用タブレット)を使用する真空蒸着法において、タブレットの密度が低過ぎると、電子ビームや高出力プラズマを照射した際に、材料が表面から蒸発していくのと同時にタブレットの焼結が急激に起こり、部分的なタブレットの収縮によりタブレットが破損するという問題があった。一方、タブレットの密度が高過ぎると、電子ビーム等を照射した際に、タブレットの表面と内部に温度差が生じ、熱膨張の違いによりタブレットの破損(熱衝撃による破損)が発生するという問題があった。
そこで、上記問題を解決するため、ITOタブレットに関しては、相対密度が90%以上のITO焼結体を粉砕し、得られた粒径0.5mm以下の顆粒を再度焼結させることにより、相対密度が50%以上80%以下のITOタブレットを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、ガリウム等が添加された酸化亜鉛系タブレットに関しては、原料粉末の一部に予め仮焼した粉末を用いることにより、焼結体の密度を調整する方法が提案されている(特許文献2参照)。
ところで、特許文献1に記載された相対密度が50%以上80%以下であるITOタブレットを用い、連続して長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを行なった場合、特許文献1の記載に反して蒸着中にITOタブレットが破損してしまうことがあった。
一方、特許文献2で提案された方法を参考にして、酸化錫、酸化タングステン、酸化チタン、酸化セリウム等のドーパント用酸化物粉末と酸化インジウム粉末から成る混合粉末を仮焼してまず仮焼粉末を得、得られた仮焼粉末と、未仮焼の上記ドーパント用酸化物粉末と酸化インジウム粉末とを混合した粉末を用いることにより、特許文献1と同様、相対密度が50%以上80%以下の酸化インジウム焼結体タブレットを製造することは可能となる。しかし、このようにして製造された相対密度が50%以上80%以下である酸化インジウム焼結体タブレットを用い、連続して長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを行なった場合も、上記同様、蒸着中にタブレットが破損してしまうことがあった。
このような技術的背景の下、本出願人は、連続して長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを行なった場合でも、蒸着中に破損されることのない蒸着用タブレットを既に提案している(特許文献3参照)。
すなわち、この蒸着用タブレットは、セリウムをドーパントとして含む酸化インジウム焼結体により構成され、かつ、相対密度が50%以上80%以下であり、上記酸化インジウム焼結体の破断面に現れる結晶粒についてその粒径とその個数を掛け合わせて得られる結晶粒量の分布における最大ピークを構成する粒径の結晶粒の占める比率(最多結晶粒量比率)が20%以下であることを特徴とし、例えば、以下の第一工程〜第三工程を経て製造されるものであった。
(第一工程)酸化インジウム粉末と酸化セリウム粉末とを1300℃以上1550℃以下で熱処理しかつ粉砕して仮焼粉末を得る工程と、
(第二工程)得られた仮焼粉末に、未仮焼の酸化インジウム粉末および/または酸化セリウム粉末を上記仮焼粉末の割合が50質量%以上80質量%以下となるように混合し、かつ、造粒して造粒粉末を得る工程と、
(第三工程)得られた造粒粉末を成形して成形体とし、この成形体を、1100℃以上1350℃以下でかつ上記第一工程における仮焼粉末の熱処理温度より200℃以上低い温度で焼結してセリウムをドーパントとして含む酸化インジウムの焼結体を得る工程。
そして、酸化インジウムにドーパントを添加した低抵抗の透明導電膜を成膜する場合には、特許文献3の蒸着用タブレットを用いることにより、長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを連続して行なった場合でも蒸着中に破損されないため、蒸着効率が改善されて透明導電膜等の生産性を著しく向上させることが可能になった。
特開平11−100660号公報 特開2006−117462号公報 国際公開2011/016297号公報
ところで、近年、透明導電膜の用途に加えて透明導電膜以外の用途(例えば、太陽電池のバッファ層)への蒸着用タブレットの使用が検討され、上述したITO(錫をドーパントとして含む酸化インジウム)以外の材料への注目が高まっている。
この材料の一つとして、ドーパントが添加されていないノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットがあるが、ドーパントが添加されていない酸化インジウム焼結体の場合、ドーパントが添加されているITO焼結体と比較して非常に割れ易いという問題があった。
また、イオンプレーティング法等により蒸着を行う場合、蒸着用タブレットの比抵抗値が高抵抗であると昇華し難いため、通常、1Ω・cm以下が望ましいとされている。
そして、相対密度が50%以上80%以下であっても、その比抵抗値が5.0×10-3Ω・cm以下となるITO焼結体の場合と異なり、ドーパントが添加されていない酸化インジウム焼結体の場合、酸化インジウム粉末を圧粉、成形し、かつ、焼結しただけでは、低抵抗の蒸着用タブレットを得ることは困難である。このため、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る高抵抗の蒸着用タブレットは、蒸着使用時に昇華し難く、蒸着効率が悪いことに加え、蒸着時において高抵抗の蒸着用タブレットに電荷が溜まって割れ易くなるという問題があった。
特に、近年、蒸着効率の更なる改善と透明導電膜等の量産を目指し、蒸着用タブレットに対して蒸着の初期段階から高いパワーの電子ビーム(EB)をいきなり照射しなければならない場合があり、また、イオンプレーティングにおいては、通常、50A〜100Aの放電電流にて発生させたプラズマにより成膜を行うことが多いが、量産性を高めるために150A以上の放電電流にて発生させたプラズマにより成膜することが一般的となってきている。
そして、蒸着の初期段階から高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマをいきなり照射すると、例え特許文献3に記載の方法を応用して得られたノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットを適用しても破損してしまうことがあった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、例え蒸着の初期段階から高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを照射し、あるいは、長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを連続して行なった場合でも破損し難いノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットとその製造方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者等が特許文献3に記載された手法について更なる改良を試みたところ、酸化インジウム粉末を仮焼しかつ平均粒径が1μm以上4μm以下となるように調製した第一原料粉末と、未仮焼の酸化インジウム粉末から成る第二原料粉末を所定の割合で混合し、かつ、焼結させて得たノンドープの酸化インジウム焼結体を真空雰囲気中で還元処理して蒸着用タブレットとした場合、この蒸着用タブレットは、蒸着の初期段階からいきなり高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを照射し、あるいは、長時間の電子ビーム(EB)蒸着やイオンプレーティングを連続して行なっても破損され難いことを見出すに至った。
そして、この蒸着用タブレットは以下の工程を経て得られるものであった。
まず、仮焼された第一原料粉末を得る工程:
すなわち、酸化インジウム粉末を1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して平均粒径が1μm以上4μm以下の仮焼された第一原料粉末を得る。
次に、上記第一原料粉末と未仮焼の第二原料粉末から造粒粉末を得る工程:
すなわち、未仮焼の第二原料粉末(酸化インジウム粉末)を、上記第一原料粉末に対して、第一原料粉末の混合割合が50質量%以上70質量%以下となるように混合し、かつ、造粒して造粒粉末を得る。
次いで、上記造粒粉末からノンドープの酸化インジウム焼結体を得る工程:
すなわち、上記造粒粉末を成形して成形体とし、この成形体を、1000℃以上かつ仮焼温度より150℃以上低い温度で焼結してノンドープの酸化インジウム焼結体を得る。
更に、得られたノンドープの酸化インジウム焼結体を還元処理する工程:
すなわち、ノンドープの酸化インジウム焼結体を、真空度が1×10-3Pa以下の雰囲気中において、700℃以上880℃以下の温度で熱処理して還元処理されたノンドープの酸化インジウム焼結体を得る。
そして、上記工程を経て完成されたノンドープの酸化インジウム焼結体においては、その比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下と低抵抗であり、かつ、上記酸化インジウム焼結体の破断面に現れる結晶粒の分布を観察したところ、大きな結晶粒から小さな結晶粒まで適度に分布していることが確認され、更に、仮焼した第一原料粉末に由来する第一焼結粒の平均粒径をD1とし、未仮焼の第二原料粉末に由来する第二焼結粒の平均粒径をD2としたとき、第一焼結粒の平均粒径D1に対する第二焼結粒の平均粒径D2の粒径比率[すなわち(D2/D1)×100(%)]が3%以上15%以下になっていることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
相対密度が50%以上70%以下である酸化インジウム焼結体により構成される蒸着用タブレットにおいて、
上記酸化インジウム焼結体を構成しかつ仮焼された第一原料粉末に由来する第一焼結粒の平均粒径をD1とし、上記酸化インジウム焼結体を構成しかつ未仮焼の第二原料粉末に由来する第二焼結粒の平均粒径をD2としたとき、第一焼結粒の平均粒径D1に対する第二焼結粒の平均粒径D2の粒径比率[すなわち(D2/D1)×100(%)]が3%以上15%以下であり、かつ、上記酸化インジウム焼結体の比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の蒸着用タブレットの製造方法において、
酸化インジウム粉末を1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して、平均粒径が1μm以上4μm以下の仮焼された第一原料粉末を得る第一工程と、
得られた上記第一原料粉末に対し、未仮焼の酸化インジウム粉末から成る第二原料粉末を、仮焼された第一原料粉末の混合割合が50質量%以上70質量%以下となるように混合し、かつ、造粒して造粒粉末を得る第二工程と、
得られた上記造粒粉末を成形して成形体を得る第三工程と、
得られた上記成形体を1000℃以上かつ第一工程における仮焼温度より150℃以上低い温度で焼結して、相対密度が50%以上70%以下の酸化インジウム焼結体を得る第四工程と、
得られた上記酸化インジウム焼結体を、真空度が1×10-3Pa以下の雰囲気中において700℃以上880℃以下の温度で熱処理する第五工程、
の各工程を具備することを特徴とするものである。
仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)と未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)との混合粉を焼成し製造された相対密度が50%以上70%以下であるノンドープの酸化インジウム焼結体により構成された本発明の蒸着用タブレットによれば、
仮焼された第一原料粉末に由来する第一焼結粒の平均粒径をD1とし、未仮焼の第二原料粉末に由来する第二焼結粒の平均粒径をD2としたとき、
第一焼結粒の平均粒径D1に対する第二焼結粒の平均粒径D2の粒径比率[すなわち(D2/D1)×100(%)]が3%以上15%以下であり、かつ、蒸着用タブレットを構成する上記酸化インジウム焼結体の比抵抗値が9.0×10−1Ω・cm以下になっているため、いきなり高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを蒸着用タブレットへ照射しても破損することがない。
このため、高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを長時間継続して蒸着用タブレットへ照射させることが可能となることから、上述した透明導電膜やバッファ層等の量産性を著しく改善させる効果を有している。
実施例1に係る評価用酸化インジウム焼結体タブレットの破断面におけるSEM(走査型電子顕微鏡)撮像図。
本発明の実施の形態について図1のSEM撮像図(実施例1に係る評価用酸化インジウム焼結体タブレットの破断面におけるSEM撮像図)を用いて具体的に説明する。
(1)本発明の蒸着用タブレット
本発明の蒸着用タブレットは、以下の「第一工程」〜「第五工程」を経て製造されたものである。
「第一工程」
酸化インジウム粉末を1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して、平均粒径が1μm以上4μm以下の仮焼された第一原料粉末を得る工程。
「第二工程」
得られた上記第一原料粉末に対し、未仮焼の酸化インジウム粉末から成る第二原料粉末を、仮焼された第一原料粉末の混合割合が50質量%以上70質量%以下となるように混合し、かつ、造粒して造粒粉末を得る工程。
「第三工程」
得られた上記造粒粉末を成形して成形体を得る工程。
「第四工程」
得られた上記成形体を1000℃以上かつ第一工程における仮焼温度より150℃以上低い温度で焼結して、相対密度が50%以上70%以下の酸化インジウム焼結体を得る工程。
「第五工程」
得られた上記酸化インジウム焼結体を、真空度が1×10-3Pa以下の雰囲気中において700℃以上880℃以下の温度で熱処理する工程。
このような工程を経て製造された蒸着用タブレットの破断面は、例えば、図1のSEM撮像図(実施例1に係る評価用酸化インジウム焼結体タブレットの破断面におけるSEM撮像図)に示すような構造を有しており、かつ、上記蒸着用タブレットの比抵抗値は9.0×10-1Ω・cm以下となっている。
図1のSEM撮像図において「粒1」の粒体は、上記「第一工程」の仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)に由来する第一焼結粒を示しており、また、「粒2」の粒体は、上記「第二工程」で混合された未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)に由来する第二焼結粒を示している。
そして、図1のSEM撮像図から確認できるように、「粒1」で示される第一焼結粒は第二焼結粒より粒径が大きい複数の粒体群で構成され、また、「粒2」で示される第二焼結粒は第一焼結粒より粒径が小さい複数の粒体群で構成され、第一焼結粒と第二焼結粒が適度に混ざり合った状態で存在している。尚、第一焼結粒が、粒径の大きい粒体群で構成されて第一焼結粒自体の成長が抑制されているのは、「第一工程」において1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して平均粒径が1μm以上4μm以下の酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を調製していることによるものと思われる。上記熱処理後、解砕することで、「第四工程」の焼結処理(但し、焼結温度は、後述するように1000℃以上かつ「第一工程」の仮焼温度より150℃以上低い温度に設定)の際、第一焼結粒同士の成長を分散させる効果が生じ、この効果により、第一焼結粒同士の結合と成長が抑制されていると考えられる。尚、第一焼結粒と第二焼結粒の粒径に大きな差異をつけることで適度な空孔もできることから、「第五工程」の熱処理によって酸化インジウム焼結体の全体が均一に還元されると共に、熱を分散させる効果も生じる。
そして、本発明の蒸着用タブレットにおいては、上記第一焼結粒の平均粒径をD1、第二焼結粒の平均粒径をD2としたとき、第一焼結粒の平均粒径D1に対する第二焼結粒の平均粒径D2の粒径比率[(D2/D1)×100(%)]が3%以上15%以下であることを要件とする。このため、上記粒径比率が3%以上15%以下となるように「第四工程」において仮焼した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を極力成長させてはならず、上述したように「第四工程」の焼結温度を1000℃以上かつ「第一工程」の仮焼温度より150℃以上低い温度に設定することが必要となる。これを無視して「第一工程」の仮焼温度より高温での焼結、仮焼温度近辺での焼結、および、焼結時間を長くすると、「粒1」で示される第一焼結粒同士が成長してしまう。第一焼結粒同士が成長することで強度が増す反面、蒸着用タブレットに対して高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマを照射したとき、タブレットの表面と内部に温度差が生じ、かつ、「粒1」で示される第一焼結粒と「粒2」で示される第二焼結粒との間にも温度差が生じるため、割れが発生する。このような蒸着用タブレットは、量産を目指して、いきなり高いパワーの電子ビーム(EB)や高出力プラズマが照射される用途には向いていない。
ところで、図1のSEM撮像図(実施例1に係る評価用酸化インジウム焼結体タブレットの破断面におけるSEM撮像図)を用いて、第一焼結粒の平均粒径D1と第二焼結粒の平均粒径D2を求めるには、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、図1に示すSEM撮像図上の任意箇所に、SEM撮像図の一方の端縁から他方の端縁に向けて複数本の直線を引く。ここで、直線の数は4本以上とすることが定量精度の観点から望ましく、また、直線の引き方は井桁状や放射状とすることができる。
そして、SEM撮像図上に引いた直線に存在する「第一焼結粒」や「第二焼結粒」の粒界部分で区切られた数nを測定し、以下の数式(1)から平均粒径dを求め、かつ、複数の直線から求めたそれぞれの平均粒径dから平均値を求めるものである。
d=L/n/m (1)
[数式(1)中、dは1本の直線から求めた平均粒径、Lは1本の直線の長さ、nは1本の直線上に存在する粒界の個数、mは電子顕微鏡の倍率を示す]
次に、本発明に係る蒸着用タブレットは、その比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下であることを必要とする。そして、蒸着用タブレットの比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下となるようにするため、「第五工程」において、ノンドープの酸化インジウム焼結体を真空雰囲気中で700℃以上880℃以下の温度で熱処理し、酸化インジウム焼結体を還元してタブレットの導電性を増大させることが必要となる。タブレットの比抵抗値が高い場合、タブレットに電子ビーム(EB)やプラズマを照射しても昇華し難いため、蒸着効率が悪く、量産性を高めるのが困難となる。
(2)本発明に係る蒸着用タブレットの製造方法
「第一工程:仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を得る工程」
酸化インジウム粉末を1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して、平均粒径が1μm以上4μm以下の仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を得る。
尚、仮焼温度が1200℃未満の場合、後述の「第四工程」で得られる酸化インジウム焼結体の密度や寸法のばらつきが大きくなるという不都合がある。他方、上記仮焼温度が1300℃を超えた場合、仮焼中に粉末が強固に焼結してしまい、仮焼後に解砕して平均粒径が1μm以上4μm以下の酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を得ることが難しくなる不都合がある。従って、仮焼温度は、1200℃以上1300℃以下、より好ましくは1220℃〜1270℃とし、仮焼時間は15時間以上とするのが好ましい。
尚、仮焼した後における解砕処理にはポットミルを使用するのが好ましい。ビーズミルあるいはボールミルは粉砕能力が高く、容易に解砕可能であるが、粉末が微細化され易いことと、用いるビーズやボールに起因した不純物混入の問題がある。本発明に係る蒸着用タブレットはドーパントを添加しないノンドープの酸化インジウム焼結体にて構成されるため、不純物混入の恐れがあるビーズミルやボールミルの使用は好ましくない。上記ポットミルによる解砕処理の時間は、5時間程度で十分であるが、解砕処理の時間が長くなっても影響はない。
「第二工程:造粒粉末を得る工程」
次に、上記「第一工程」で調製した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)に対して、未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)を、仮焼した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合が50質量%以上70質量%以下となるように混合し、かつ、スプレードライヤー等を用いて造粒し、造粒粉末を得る。
ここで、仮焼した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)と未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)は、上述したように仮焼した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合が50質量%以上70質量%以下、好ましくは55質量%以上65質量%以下となるように混合する。仮焼した酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合が、70質量%を越えて72質量%程度になると、後述する「第四工程:焼結工程」で得られる酸化インジウム焼結体の収縮精度を調整することが難しくなることがある。更に、得られた酸化インジウム焼結体の強度の低下も起こり、蒸着時のビームやプラズマを照射した際に破損が起こることがある。反対に、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合が50質量%未満と少ない場合、後述する「第四工程:焼結工程」で急速に粒のネック成長が進むため、酸化インジウム焼結体における密度の制御が困難となることがある。この場合、強度は増すが、蒸着時にタブレット表面と内部に温度差が生じ、熱膨張の違いによりタブレットの破損が起こり易くなる。これに対して、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合を50質量%以上70質量%以下、好ましくは55質量%以上65質量%以下とした場合、後述する「第四工程:焼結工程」で得られる酸化インジウム焼結体の焼結時における収縮をコントロールすることができ、酸化インジウム焼結体の強度低下も無く、所望の密度を有する酸化インジウム焼結体を得ることができる。
尚、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)と未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)を混合する方法としては、混合時において粉末が粉砕され難い攪拌機による攪拌が好ましい。更に、混合の際は、水、バインダー、分散剤、および金型プレス時に潤滑材として機能するステアリン酸を1〜2質量%添加するとよい。
「第三工程:造粒粉末を成形して成形体とする成形工程」
次に、「第二工程」で得られた造粒粉末を成形して成形体とする。造粒粉末の成形は金型プレスにて行う。この際、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の配合割合、後工程の焼結温度の設定条件により焼結による収縮がコントロールされているため、タブレットの寸法はこの成形時にほぼ決定される。仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の割合が多いと寸法制御が困難になり、少ない場合でも同様である。そして、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の混合割合は、上述したように50質量%以上70質量%以下、好ましくは55質量%以上65質量%以下である。
「第四工程:成形体を焼結して酸化インジウム焼結体を得る焼結工程」
上記成形体の焼結時における雰囲気は、酸素、大気、真空中のいずれでもよいが、大気中での焼結が安価にできて最も好ましい。
昇温は、成形体中の有機成分の脱離(脱有機成分)が容易に行える範囲、例えば、室温から脱有機成分終了温度の500℃までの昇温時間を15時間程度とするのが好ましい。
上記焼結温度は1000℃以上かつ第一工程における仮焼温度より150℃以上低い温度とする。1000℃未満では十分に焼結しないため、得られる焼結体の強度が低く、焼結体の取り扱い中に割れや欠けが発生してしまう。更に、焼結時の収縮が完了していないため、密度や寸法のばらつきも大きくなる。そして、焼結温度を1000℃以上で第一工程における上記仮焼温度より150℃以上低い温度とすれば相対密度が50〜70%の焼結体が得られる。しかし、焼結温度が仮焼温度に近すぎると、相対密度が50〜70%に収まっても電子ビーム蒸着中に割れが発生してしまう。このため、焼結温度は1000℃以上で第一工程における上記仮焼温度より150℃以上低い温度にすることを要する。
尚、上記「相対密度」とは、酸化インジウム原料粉末の密度に対する酸化インジウムタブレットの密度の比率のことで、相対密度=(酸化インジウムタブレットの密度/酸化インジウム原料粉末の密度)×100という式から求められる。
そして、上記焼結温度に達した後における焼結温度での保持時間は15時間以上25時間以下が好ましい。保持時間を15時間以上とすると、焼結炉内の均熱が安定するための十分な時間が確保されるため、生産が安定する。また、25時間を超えても得られる製品の品質は向上しないため、長くても25時間保持すれば十分である。
「第五工程:焼結体を真空雰囲気中で熱処理する工程」
次に、上記酸化インジウム焼結体を、真空度が1×10-3Pa以下の雰囲気中において、700℃以上880℃以下の温度で熱処理することにより、本発明に係る蒸着用タブレットは完成される。
この熱処理により、酸化インジウム焼結体が還元され、タブレット内部に酸素欠損が生じるので、キャリアの生成により導電性が付与され、比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下の蒸着用タブレットが得られる。上記比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下になると蒸着用タブレットに電荷が溜まり難くなり、成膜時に電子ビーム(EB)やプラズマを照射してもスプラッシュ現象等が発生せず、放電および昇華が安定する。
上記熱処理温度が700℃未満ではタブレット内部まで還元されず、タブレットの表面と内部とで導電性に差が生じるため、タブレットとして使用した場合、成膜が不安定になる。尚、タブレットの内部まで還元された場合、タブレット内部で粒子間の付着力が大きくなるためタブレットの機械的強度が増すのに対し、タブレットの内部まで還元されない場合、タブレットの機械的強度は弱くなる。他方、上記熱処理温度が880℃を超えると、熱処理の雰囲気が真空であることからインジウムの揮発が始まり、インジウムの揮発に起因してタブレット表面が多孔質状態となる結果、脆くなってしまい、かつ、炉内を汚染してしまう。
また、真空度が1×10-3Paより高い場合もタブレット内部まで還元されず、タブレットの表面と内部とで導電性に差が生じるため、タブレットとして使用した場合、成膜が不安定となる。
このため、所定の特性を得るには、真空度が1×10-3Pa以下でかつ700℃以上880℃以下の条件で熱処理することが必要となる。
尚、熱処理時間については、タブレット内部まで十分に還元がなされ、かつ、上記インジウムの揮発が抑制される時間を設定すればよく、例えば3時間程度でよい。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
[実施例1]
平均粒径が0.1〜0.4μmの酸化インジウム粉末を、大気中にて1250℃で15時間、仮焼を行い、その後、ポットミルにより5時間解砕することで、平均粒径4μmの酸化インジウム仮焼粉(仮焼された第一原料粉末)を得た。
次に、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を、平均粒径が0.1〜0.4μmの未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)に対して60質量%になるように配合し、60質量%の水、0.5質量%の分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)および1.0質量%のバインダー(PVA)、0.5質量%のステアリン酸(潤滑剤)を添加した後、攪拌機で18時間攪拌し、かつ、スプレードライヤーを用いて造粒粉末を得た。
更に、得られた造粒粉末を一軸プレス機を用いて64kNの圧力で成形し、直径30.83mm、高さ41.6mmの成形体を得た後、この成形体を焼結させた。
焼結工程は、室温から500℃までを15時間かけ昇温させ、800℃まで11時間かけて温度上昇させた。そして、1000℃にて20時間保持し、ノンドープの酸化インジウム焼結体を得た。
次に、上記酸化インジウム焼結体を、真空度が6×10-4Paの雰囲気中で、860℃で3時間熱処理を行った。
得られた酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの相対密度は64%、比抵抗値は4.3×10-1Ω・cmであった。
尚、上記比抵抗値は四探針法を用いて計測した値であり、具体的には四探針法低効率計ロレスタEP(株式会社三菱化学アナリテック製 MCP−T360型)使用して計測したものである。
この蒸着用タブレットに対し、量産を目指して、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
ところで、実施例1と同一の条件で評価用酸化インジウム焼結体タブレットを製造し、かつ、評価用酸化インジウム焼結体タブレットを破断し、その破断面のSEM(走査型電子顕微鏡)撮像図を求め、このSEM撮像図から、上記数式(1)を用いた方法に従い、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)に由来する第一焼結粒(図1において「粒1」と図示)の平均粒径D1と、未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)に由来する第二焼結粒(図1において「粒2」と図示)の平均粒径D2をそれぞれ求めた。そして、平均粒径D1(4.0μm)と平均粒径D2(0.2μm)から、「粒1」と「粒2」の粒径比率[(D2/D1)×100(%)]を計算したところ、5%であり、上述した3〜15%の範囲内にあることが確認された。
尚、以下に述べる他の実施例と比較例についても、実施例1と同様にして「評価用酸化インジウム焼結体タブレット」を製造し、実施例1と同様にして上述の「粒径比率」を求めている。
そして、実施例1〜6および比較例1〜3の「仮焼温度T1(℃)」「仮焼粉の平均粒径(μm)」「仮焼粉の割合(質量%)」「焼結温度T2(℃)」「T1−T2(℃)」「雰囲気」「還元温度(℃)」を表1にまとめて示し、また、実施例1〜6および比較例1〜3の「相対密度(%)」「平均粒径D1(μm)」「平均粒径D2(μm)」「粒径比率D2/D1(%)」「比抵抗値(Ω・cm)」および「高出力プラズマ照射(成膜)中における割れの有無」を以下の表2にまとめて示す。
[実施例2]
仮焼温度(T1)が1300℃である点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る実施例2に係る蒸着用タブレットを得た。
尚、実施例2においては仮焼温度(T1)を実施例1の1250℃から1300℃に上げたが、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の平均粒径は、実施例1と同様4μmであった。
また、得られた蒸着用タブレットの相対密度は61%、比抵抗値は4.2×10-1Ω・cm、粒径比率[D2/D1(%)]は5%(3〜15%範囲内)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
[実施例3]
焼結温度(T2)を1100℃とし、仮焼温度(T1)との差を150℃に変更した点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る実施例3に係る蒸着用タブレットを得た。
得られた蒸着用タブレットの相対密度は59%、比抵抗値は5.1×10-1Ω・cm、粒径比率[D2/D1(%)]は4%(3〜15%範囲内)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
[実施例4]
仮焼温度(T1)が1200℃である点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る実施例4に係る蒸着用タブレットを得た。
尚、実施例4においては仮焼温度(T1)を実施例1の1250℃から1200℃に下げたため、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)の平均粒径は2μmであった。
また、得られた蒸着用タブレットの相対密度は67%、比抵抗値は4.0×10−1Ω・cm、粒径比率[D2/D1(%)]は10%(3〜15%範囲内)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
[実施例5]
第五工程における熱処理(還元処理)温度が700℃である点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る実施例5に係る蒸着用タブレットを得た。
尚、実施例5においては、熱処理(還元処理)温度を実施例1の860℃から700℃に下げたため、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの比抵抗値は、実施例1の4.3×10-1Ω・cmより高抵抗の9.0×10-1Ω・cmとなった。
また、得られた蒸着用タブレットの相対密度は64%、粒径比率[D2/D1(%)]は5%(3〜15%範囲内)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
[実施例6]
第五工程における熱処理(還元処理)温度が870℃である点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る実施例6に係る蒸着用タブレットを得た。
尚、実施例6においては、熱処理(還元処理)温度を実施例1の860℃から870℃に上げたため、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの比抵抗値は、実施例1の4.3×10-1Ω・cmより低抵抗の1.2×10-1Ω・cmとなった。
また、得られた蒸着用タブレットの相対密度は63%、粒径比率[D2/D1(%)]は5%(3〜15%範囲内)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したが、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れは確認されなかった。
[比較例1]
実施例1と同様、平均粒径が0.1〜0.4μmの酸化インジウム粉末を用い、大気中、仮焼温度(T1)1550℃にて15時間仮焼を行った。
仮焼後、ポットミルにて5時間、解砕処理を行ったが、粒の凝集が強過ぎて解砕できなかった。そこで、更に、5時間ポットミルにて解砕処理を継続した後、平均粒径を測定したところ30μmであった。
そして、平均粒径が30μmの仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)を用い、焼結温度(T2)を1350℃とし、仮焼温度との差(T1−T2)を200℃とした点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る比較例1に係る蒸着用タブレットを得た。
得られた蒸着用タブレットの相対密度は72%で70%を超えており、その比抵抗値は9×10-1Ω・cm、粒径比率[D2/D1(%)]は33%(3〜15%範囲外)であった。
この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したところ、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れが確認された。
[比較例2]
焼結温度(T2)を1250℃とし、仮焼温度(T1)との差を0℃とした点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る比較例2に係る蒸着用タブレットを得た。
得られた蒸着用タブレットの相対密度は67%、比抵抗は5.0×10-1Ω・cmであった。
しかし、仮焼温度(T1)と焼結温度(T2)を同一に設定したため、未仮焼の酸化インジウム粉末(第二原料粉末)に由来する第二焼結粒(D2)が、仮焼された酸化インジウム粉末(第一原料粉末)に由来する第一焼結粒(D1)と同程度に成長したと思われる結果、第一焼結粒(D1)と第二焼結粒(D2)との区別が困難となって粒径比率[D2/D1(%)]を求めることはできなかった。
そして、この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したところ、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れが確認された。
[比較例3]
第五工程における熱処理(還元処理)温度が660℃である点を除き、実施例1と同様にして、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る比較例3に係る蒸着用タブレットを得た。
尚、比較例3においては、熱処理(還元処理)温度を実施例1の860℃から660℃に下げたため、ノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの比抵抗値は、実施例1の4.3×10-1Ω・cmより高抵抗の1×103Ω・cm以上であった。
また、得られた蒸着用タブレットの相対密度は63%、粒径比率[D2/D1(%)]は5%(3〜15%範囲内)であった。
そして、この蒸着用タブレットに対し、実施例1と同様、150Aの放電電流にて発生させた高出力プラズマを照射したところ、成膜中におけるノンドープの酸化インジウム焼結体から成る蒸着用タブレットの割れが確認された。
Figure 0005967016
Figure 0005967016
上述した条件で製造方法されたノンドープの酸化インジウム焼結体から成る本発明に係る蒸着用タブレットによれば、高いパワーの電子ビームが照射されても破損されないため、長時間安定した放電が可能であり、透明導電膜やバッファ層等を製造する際の蒸着用酸化インジウム焼結体タブレットとして利用される産業上の利用可能性を有している。

Claims (2)

  1. 相対密度が50%以上70%以下である酸化インジウム焼結体により構成される蒸着用タブレットにおいて、
    上記酸化インジウム焼結体を構成しかつ仮焼された第一原料粉末に由来する第一焼結粒の平均粒径をD1とし、上記酸化インジウム焼結体を構成しかつ未仮焼の第二原料粉末に由来する第二焼結粒の平均粒径をD2としたとき、第一焼結粒の平均粒径D1に対する第二焼結粒の平均粒径D2の粒径比率[すなわち(D2/D1)×100(%)]が3%以上15%以下であり、かつ、上記酸化インジウム焼結体の比抵抗値が9.0×10-1Ω・cm以下であることを特徴とする蒸着用タブレット。
  2. 請求項1に記載の蒸着用タブレットの製造方法において、
    酸化インジウム粉末を1200℃以上1300℃以下の仮焼温度で熱処理した後、解砕して、平均粒径が1μm以上4μm以下の仮焼された第一原料粉末を得る第一工程と、
    得られた上記第一原料粉末に対し、未仮焼の酸化インジウム粉末から成る第二原料粉末を、仮焼された第一原料粉末の混合割合が50質量%以上70質量%以下となるように混合し、かつ、造粒して造粒粉末を得る第二工程と、
    得られた上記造粒粉末を成形して成形体を得る第三工程と、
    得られた上記成形体を1000℃以上かつ第一工程における仮焼温度より150℃以上低い温度で焼結して、相対密度が50%以上70%以下の酸化インジウム焼結体を得る第四工程と、
    得られた上記酸化インジウム焼結体を、真空度が1×10-3Pa以下の雰囲気中において700℃以上880℃以下の温度で熱処理する第五工程、
    の各工程を具備することを特徴とする蒸着用タブレットの製造方法。
JP2013112633A 2013-05-29 2013-05-29 蒸着用タブレットとその製造方法 Expired - Fee Related JP5967016B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013112633A JP5967016B2 (ja) 2013-05-29 2013-05-29 蒸着用タブレットとその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013112633A JP5967016B2 (ja) 2013-05-29 2013-05-29 蒸着用タブレットとその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014231625A JP2014231625A (ja) 2014-12-11
JP5967016B2 true JP5967016B2 (ja) 2016-08-10

Family

ID=52125203

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013112633A Expired - Fee Related JP5967016B2 (ja) 2013-05-29 2013-05-29 蒸着用タブレットとその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5967016B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6468158B2 (ja) * 2015-10-15 2019-02-13 住友金属鉱山株式会社 蒸着用ZnO−Ga2O3系酸化物焼結体タブレットとその製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3906766B2 (ja) * 2002-08-30 2007-04-18 住友金属鉱山株式会社 酸化物焼結体
JP2008214169A (ja) * 2007-03-07 2008-09-18 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 真空蒸着用ITiO焼結体およびその製造方法
KR101568215B1 (ko) * 2009-08-07 2015-11-11 스미토모 긴조쿠 고잔 가부시키가이샤 증착용 타블렛의 제조 방법
CN102906050B (zh) * 2010-05-21 2014-07-09 住友金属矿山株式会社 氧化锌烧结体料片及其制造方法
JP5505642B2 (ja) * 2010-07-29 2014-05-28 住友金属鉱山株式会社 酸化物蒸着材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014231625A (ja) 2014-12-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102322184B1 (ko) 산화인듐-산화아연계 (izo) 스퍼터링 타깃 및 그 제조 방법
TWI644866B (zh) Izo燒結體濺鍍靶及其製造方法
JP2012126937A (ja) Itoスパッタリングターゲットとその製造方法
JP6646686B2 (ja) 酸化物焼結体スパッタリングターゲット及びその製造方法
TWI452027B (zh) 氧化鋅燒結體錠及其製造方法
JP5472655B2 (ja) 蒸着用タブレットとその製造方法
JP2014040348A (ja) Igzo焼結体、その製造方法及びスパッタリングターゲット
JP6024545B2 (ja) 酸化亜鉛系焼結体とその製造方法およびスパッタリングターゲット
JP6677058B2 (ja) Sn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法
JP5772667B2 (ja) 蒸着用タブレットとその製造方法
JP5979082B2 (ja) 蒸着用タブレットとその製造方法
JP2008214169A (ja) 真空蒸着用ITiO焼結体およびその製造方法
JP5967016B2 (ja) 蒸着用タブレットとその製造方法
JP6468158B2 (ja) 蒸着用ZnO−Ga2O3系酸化物焼結体タブレットとその製造方法
JP6414527B2 (ja) Sn−Zn−O系酸化物焼結体とその製造方法
JP2017186655A (ja) 酸化インジウム−酸化亜鉛系(izo)スパッタリングターゲット及びその製造方法
JP2016117610A (ja) 酸化錫系焼結体タブレットと酸化物透明導電膜
TWI748971B (zh) Sn-Zn-O系氧化物燒結體及其製造方法
JP4483470B2 (ja) 酸化インジウムを含有するスパッタリングターゲットの製造方法
JP2008255481A (ja) 蒸着材
JP2006200000A (ja) 酸化インジウムを含有するスパッタリングターゲットの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150724

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160308

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160427

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160607

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160620

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5967016

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees