JP2008255481A - 蒸着材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多孔質焼結体からなる円板状のZnO蒸着材10で、この蒸着材10には、中央に断面円形の貫通孔が形成される。この貫通孔11の直径は蒸着材10の外径の10〜50%である。
【選択図】図1
Description
このAC型PDPでは、イオン衝撃のスパッタリングによりガラス誘電体層の表面が変質して放電開始電圧が上昇しないように、ガラス誘電体層表面に高い昇華熱を持つ保護膜をコーティングする必要がある。この保護膜は直接放電空間と接しているため、耐スパッタリング性の他に複数の重要な役割を担っている。即ち、保護膜に求められる特性は、放電時の耐スパッタリング性、高い二次電子放出能、絶縁性及び光透過率などである。これらの条件を満たす材料として、一般的にMgOが挙げられ、このMgOを蒸着材として電子ビーム蒸着法又はイオンプレーティング法により成膜されたMgO膜が使用されている。
この点を解消するために、一層安価に作製することのできるAl、B、Siなどの導電活性元素をドープした酸化亜鉛系膜を太陽電池等の透明導電膜として使用することが提案され、この酸化亜鉛系膜を電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの真空蒸着により形成するための酸化亜鉛系ターゲットが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この酸化亜鉛系ターゲットによると、上記導電活性元素を亜鉛に対して所定量含有させることにより極めて低抵抗な酸化亜鉛系焼結体が得られ、この焼結体は、原料粉末が微細で高分散性を有するほど焼結密度が向上し導電性が向上するとされている。
本発明の目的は、膜の成膜時にスプラッシュの発生を防止することができる蒸着材を提供することにある。
その特徴ある構成は、中央に断面円形の貫通孔が形成されたところにある。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、貫通孔11の直径が蒸着材の外径の10〜50%であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、成膜が、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ蒸着法又はレーザ蒸着法のいずれかの方法で行われることを特徴とする。
この請求項1〜請求項3に記載された蒸着材10では、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ蒸着法又はレーザ蒸着法のいずれかの方法で膜を成膜するときに蒸着材10を加熱すると、蒸着材10内部に熱歪みが発生するけれども、この熱歪みが貫通孔11で吸収されて蒸着材10自体に熱応力が殆ど発生しない。このため蒸着材10が破損することがないので、スプラッシュの発生を防止できるとともに、膜の成膜速度の経時変化を無くすことができる。
図1に示すように、本発明の蒸着材10は、多孔質焼結体からなり、円板状に形成される。この実施の形態では、多結晶ZnOの焼結体ペレットからなる蒸着材10を示す。そして、この多結晶ZnOの焼結体ペレットの気孔率は3〜50%、又は、5〜30%、更に好ましくは10〜30%、又は20〜30%である。この円板状である蒸着材10の外径Dは5〜40mm、好ましくは10〜30mmであって、高さHが1〜20mm、好ましくは2〜10mmに形成される。この外径Dを5〜40mmに限定し、高さHを1〜20mmに限定したのは、外径Dが5mm未満又は高さHが1mm未満では小さすぎてスプラッシュの発生原因となり、外径Dが40mmを越えるか又は高さHが20mmを越えると実際の製造工程において取り扱いが困難となるからである。
また、本実施形態のZnO蒸着材10においては、気孔率を5〜40%とすることができる。ここで、気孔率が5%未満の多孔質焼結体の場合、蒸発速度向上の効果が小さいため好ましくない。また気孔率が40%を越えた多孔質焼結体の場合、十分な機械強度を得ることが難しいため好ましくない。
なお、気孔の形状は、丸みを帯びたものが好ましく、気孔の表面に更に細かい気孔が形成されている方が蒸発速度向上のためには好ましい。また、気孔の評価方法として、表面積測定において、5〜40m2/g であることが、細孔分布の測定においては、1〜100μmの範囲に少なくとも一つの細孔分布のピークを持つことが好ましい。
ここで、図1に示す貫通孔11は、その直径dが蒸着材10の外径Dの10〜50%である。その貫通孔11の直径dが蒸着材10の外径Dの10%未満であると、蒸着材10内部に生じる熱歪みを十分に吸収することができず、その貫通孔11の直径dが蒸着材10の外径Dの50%を超えると、単位面積当たりの蒸着材10の量が小さく成りすぎてその機械的強度が低下する不具合がある。
まず、純度が99.0%以上のZnO粉末とバインダと有機溶媒と添加剤とを混合して、濃度が45〜75重量%のスラリーを調製する。スラリーの濃度を45〜75重量%に限定したのは、75重量%を越えると上記スラリーが非水系であるため、安定した造粒が難しい問題点があり、45重量%未満では均一な組織を有する緻密なZnO焼結体が得られないからである。即ち、スラリー濃度を上記範囲に限定すると、スラリーの粘度が200〜1000cpsとなり、スプレードライヤによる粉末の造粒を安定して行うことができ、更には成形体の密度が高くなって緻密な焼結体の製造が可能になる。
ここで、添加剤をブチラール系とした場合には、0.1μm〜10μmオーダーの気孔径を有する気孔を形成することができる。また、添加剤をスターチとした場合には、スターチの粒径と同程度の気孔径及び形状を有する気孔を形成することができるため、スターチは、形成される気孔の気孔径及び形状をより一層容易に制御することが可能である。
<実施例1>
先ず、ZnO粉末と、バインダと、有機溶媒とを湿式ボールミルを用い、湿式混合してスラリーを調製した。調製したスラリーを噴霧乾燥し、得られた混合造粒粉末を金型に充填して10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央に断面円形の貫通孔が形成された円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであり、かつ中央の断面円形の貫通孔の直径は1mmであった。即ち、貫通孔の直径が蒸着材の外径の10%である蒸着材を得た。
実施例1と同一の条件及び手続きにより実施例1と同一のスラリーを得た。この調製したスラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥して得られた混合造粒粉末を実施例1とは異なる金型に充填して実施例1と同様の条件、即ち10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央の貫通孔の直径が実施例1と異なる円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであり、かつ中央の断面円形の貫通孔の直径は2mmであった。即ち、貫通孔の直径が蒸着材の外径の20%である蒸着材を得た。そして、このZnO蒸着材を用いて、実施例1と同様の条件及び手続きにより、ガラス基板上にZnO膜を成膜した。
実施例1と同一の条件及び手続きにより実施例1と同一のスラリーを得た。この調製したスラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥して得られた混合造粒粉末を実施例1とは異なる金型に充填して実施例1と同様の条件、即ち10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央の貫通孔の直径が実施例1及び2のいずれとも異なる円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであり、かつ中央の断面円形の貫通孔の直径は5mmであった。即ち、貫通孔の直径が蒸着材の外径の50%である蒸着材を得た。そして、このZnO蒸着材を用いて、実施例1と同様の条件及び手続きにより、ガラス基板上にZnO膜を成膜した。
実施例1と同一の条件及び手続きにより実施例1と同一のスラリーを得た。この調製したスラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥して得られた混合造粒粉末を実施例1とは異なる金型に充填して実施例1と同様の条件、即ち10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央の貫通孔が存在しない円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであった。即ち、貫通孔は存在しないので、その貫通孔の直径が蒸着材の外径の0%である蒸着材を得た。そして、このZnO蒸着材を用いて、実施例1と同様の条件及び手続きにより、ガラス基板上にZnO膜を成膜した。
実施例1と同一の条件及び手続きにより実施例1と同一のスラリーを得た。この調製したスラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥して得られた混合造粒粉末を実施例1とは異なる金型に充填して実施例1と同様の条件、即ち10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央の貫通孔の直径が実施例1〜3のいずれとも異なる円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであり、かつ中央の断面円形の貫通孔の直径は60mmであった。即ち、貫通孔の直径が蒸着材の外径の60%である蒸着材を得た。そして、このZnO蒸着材を用いて、実施例1と同様の条件及び手続きにより、ガラス基板上にZnO膜を成膜した。
実施例1と同一の条件及び手続きにより実施例1と同一のスラリーを得た。この調製したスラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥して得られた混合造粒粉末を実施例1とは異なる金型に充填して実施例1と同様の条件、即ち10MPaの圧力で加圧成形した後、1300℃の温度で焼結し、中央の貫通孔の直径が実施例1〜3のいずれとも異なる円板状のZnO蒸着材を作製した。得られたZnO蒸着材は、気孔率が3%の多孔質焼結体からなり、そのペレットからなるZnO蒸着材の直径及び厚さはそれぞれ10mm及び3mmであり、かつ中央の断面円形の貫通孔の直径は80mmであった。即ち、貫通孔の直径が蒸着材の外径の80%である蒸着材を得た。そして、このZnO蒸着材を用いて、実施例1と同様の条件及び手続きにより、ガラス基板上にZnO膜を成膜した。
実施例1〜3及び比較例1〜3で成膜したZnO膜について、電子ビーム蒸着装置のハースより飛び出したスプラッシュの数を測定した。このスプラッシュ数の測定は、電子ビームを照射したときに飛散する蒸着材の数をデジタルビデオで撮影して数えた。なお、スプラッシュの測定は1回当たり10分間行い、5回ずつ実施し、数値は平均値とした。その結果、実施例1では2.6、実施例2では0.8、実施例3では2.2、比較例1では6.6、比較例2では5.8であった。しかし、比較例3ではスプラッシュ以前に成膜ができていないことが判明した。これらの結果をペレットの形状とともに以下の表1に示す。
11 貫通孔
D 蒸着材の外径
H 蒸着材の高さ
d 貫通孔の直径
Claims (3)
- 多孔質焼結体からなる円板状の蒸着材において、
中央に断面円形の貫通孔が形成されたことを特徴とする蒸着材。 - 貫通孔の直径が蒸着材の外径の10〜50%である請求項1記載の蒸着材。
- 成膜が、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ蒸着法又はレーザ蒸着法のいずれかの方法で行われる請求項1又は2記載の蒸着材。
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