JP2005187919A - MgO蒸着材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 MgO膜の成膜時にスプラッシュの発生を防止し、またMgO膜の成膜速度の経時変化を無くす。
【解決手段】 MgO蒸着材11は、気孔率が3〜40%である多孔質構造に形成される。また上記蒸着材11は直径5〜30mmの球状又は直径3〜20mmで高さ1〜10mmの円板状に形成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、AC型のプラズマディスプレイパネルのMgO膜の成膜に適したMgO蒸着材と、この蒸着材を製造する方法に関するものである。
従来、液晶(Liquid Crystal Display : LCD)をはじめとして、各種の平面ディスプレイの研究開発と実用化はめざましく、その生産も急増している。カラープラズマディスプレイパネル(PDP)についても、その開発と実用化の動きが最近活発になっている。PDPは大型化し易く、ハイビジョン用の大画面壁掛けテレビの最短距離にあり、既に対角70インチクラスのPDPの試作・製造が進められている。PDPは、電極構造の点で金属電極がガラス誘電体層で覆われるAC型と、放電空間に金属電極が露出しているDC型とに分類されるが、AC型が主流である。
このAC型PDPでは、イオン衝撃のスパッタリングによりガラス誘電体層の表面が変質して放電開始電圧が上昇しないように、ガラス誘電体層表面に高い昇華熱を持つ保護膜をコーティングする必要がある。この保護膜は直接放電空間と接しているため、耐スパッタリング性の他に複数の重要な役割を担っている。即ち、保護膜に求められる特性は、放電時の耐スパッタリング性、高い二次電子放出能、絶縁性及び光透過率などである。これらの条件を満たす材料として、一般的にMgOが挙げられ、このMgOを蒸着材として電子ビーム蒸着法又はイオンプレーティング法により成膜されたMgO膜が使用されている。
上記PDPの前面板の保護膜として用いられるMgO膜は、生産効率や製造コストの面から高速に成膜することが望まれている。しかしながら、上記従来の蒸着材を用いて成膜速度を10オングストローム/秒以上で成膜すると、蒸着材の破損微粒子の飛び散り(スプラッシュ)が生じる。このスプラッシュは膜質特性の悪化や成膜速度の経時変化を招くだけでなく、蒸着材が飛散することによる蒸着材の使用効率の低下や成膜炉のメンテナンス頻度が多くなる原因にもなる。
これらの点を改善するために、MgO純度が99.5%以上かつ相対密度が96%以上の多結晶MgOの焼結体ペレットからなり、このペレットがエッジレスに又はエッジに丸みを付けて形成された多結晶MgO蒸着材(例えば、特許文献1参照)がや、MgO純度が99.5%以上かつ相対密度が97%以上の多結晶MgOの焼結体ペレットからなる多結晶MgO蒸着材(例えば、特許文献2参照)や、MgO純度が99.5%以上かつ相対密度が96%以上の多結晶MgOの焼結体ペレットからなり、このペレットが球状に形成された多結晶MgO蒸着材(例えば、特許文献3参照)が知られている。
上記特許文献1に記載された多結晶MgO蒸着材では、高純度かつ高密度の多結晶MgOの焼結体ペレットを用いてAC型PDP等のMgO膜を成膜すると、スプラッシュが極めて少なく高速で安定した成膜ができるとともに、焼結体ペレットがエッジレスに又はエッジに丸みを付けて形成されるので、エッジが欠けたり或いは割れたりしないようになっている。
また上記特許文献2に記載された多結晶MgO蒸着材では、高純度かつ高密度の多結晶MgO蒸着材を用いてAC型PDP等のMgO膜を成膜すると、スプラッシュが極めて少なく高速で安定した成膜ができるとともに、膜厚分布を向上できるので、略均一な膜質を有するMgO膜を得られるようになっている。
更に上記特許文献3に記載された多結晶MgO蒸着材では、高純度かつ高密度の多結晶MgOの焼結体ペレットを用いてAC型PDP等のMgO膜を成膜すると、スプラッシュが極めて少なく高速で安定した成膜ができるとともに、焼結体ペレットを球状に形成したので、ペレットの欠けや割れが発生しないようになっている。
特開平10− 29857号公報(請求項1、段落番号[0009]) 特開平10−291854号公報(請求項1、段落番号[0009]) 特開平11− 29355号公報(請求項1、段落番号[0009])
しかし、上記特許文献1〜3に示された多結晶MgO蒸着材では、AC型PDP等のMgO膜の成膜するために蒸着材を加熱すると、蒸着材内部に熱歪みが発生するけれども、蒸着材の相対密度が高いため、この熱歪みの逃げ場がなく蒸着材に大きな熱応力が発生する。このため上記熱応力により蒸着材にクラックが生じ、このクラックを起点に蒸着材の一部が破損して破損微粒子が飛び散り、スプラッシュが発生する不具合があった。
本発明の目的は、MgO膜の成膜時にスプラッシュの発生を防止することができ、またMgO膜の成膜速度の経時変化を無くすことができる、MgO蒸着材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、成膜されるMgO膜の密着性を向上でき、また略均一な結晶性の高いMgO膜を速い成膜速度で形成できる、MgO蒸着材及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、様々な検討を重ねた結果、MgO膜を成膜するために蒸着材を加熱したときに発生する熱応力が上記スプラッシュの発生に大きく影響することを見出した。
そこで、本発明者は、上記熱応力を緩和するために、蒸着材の気孔率を適切な範囲に調整する必要があると考え、種々の実験を行い、蒸着材の気孔率を適切な範囲にし限定した条件で蒸着材を作製することにより、AC型PDP等のMgO膜の成膜時にスプラッシュを殆ど発生しない蒸着材を得ることができ、本発明をなすに至った。
請求項1に係る発明は、気孔率が3〜40%である多孔質構造に形成されたMgO蒸着材である。
この請求項1に記載されたMgO蒸着材では、気孔率3〜40%のMgO蒸着材を用いてAC型PDP等のMgO膜を成膜するときに蒸着材を加熱すると、蒸着材内部に熱歪みが発生するけれども、蒸着材の気孔率が比較的大きいため、この熱歪みが気孔で吸収されて蒸着材に熱応力が殆ど発生しない。このため蒸着材が破損することがないので、スプラッシュの発生を防止できるとともに、MgO膜の成膜速度の経時変化を無くすことができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、直径5〜30mmの球状又は直径3〜20mmで高さ1〜10mmの円板状に形成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載されたMgO蒸着材では、蒸着材11を球状又は円板状に形成したので、蒸着材の欠けや割れが更に発生し難くなる。
請求項3に係る発明は、純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーにガスを混入させてガス混入スラリーを調製する工程と、ガス混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、造粒粉末を成形した後に焼成する工程とを含むMgO蒸着材の製造方法である。
この請求項3に記載されたMgO蒸着材の製造方法では、成形体にガスを混入した状態で成形体を焼成するので、請求項1に記載の気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
請求項4に係る発明は、純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーに発泡材を混入させて発泡材混入スラリーを調製する工程と、発泡材混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、造粒粉末を成形した後に焼成する工程とを含むMgO蒸着材の製造方法である。
この請求項4に記載されたMgO蒸着材の製造方法では、成形体に発泡材を混入した状態で成形体を焼成するので、焼成時に発泡材が発泡して請求項1に記載の気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
請求項5に係る発明は、純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーに、加熱時に揮発・分解する添加剤を混入させて添加剤混入スラリーを調製する工程と、添加剤混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、造粒粉末を成形した後に焼成する工程とを含むMgO蒸着材の製造方法である。
この請求項5に記載されたMgO蒸着材の製造方法では、成形体に添加剤を混入した状態で成形体を焼成するので、焼成時に添加剤がガスを発生して請求項1に記載の気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
請求項6に係る発明は、純度97.0%以上かつ平均粒径10〜300μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーを調製する工程と、スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、造粒粉末を成形した後に焼成する工程とを含むMgO蒸着材の製造方法である。
この請求項6に記載されたMgO蒸着材の製造方法では、平均粒径が10〜300μmの間の粒度分布の狭いMgO粉末を用いて、造粒、成形及び焼成するので、焼成後に結合された粒子間に小隙が形成される。これにより請求項1に記載の気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
請求項7に係る発明は、請求項3ないし6いずれか1項に係る発明であって、更に造粒粉末を直径5〜30mmの球状又は直径3〜20mmで高さ1〜10mmの円板状に成形する工程を含むことを特徴とする。
この請求項7に記載された方法でMgO蒸着材を製造すると、上記請求項2に記載された蒸着材を製造できる。
請求項8に係る発明は、請求項1又は2に記載のMgO蒸着材を用いて形成されたMgO膜である。
請求項9に係る発明は、請求項3ないし7いずれか1項に記載の方法で製造されたMgO蒸着材を用いて形成されたMgO膜である。
この請求項8又は9に記載されたMgO膜はフラットディスプレイパネルの前面板への密着性が良好である。
請求項10に係る発明は、請求項8又は9に記載のMgO膜を用いて製造されたフラットディスプレイパネルである。
この請求項10に記載されたフラットディスプレイパネルでは、このパネルの保護膜として成膜されたMgO膜の密着性を向上できる。
請求項11に係る発明は、請求項1又は2に記載のMgO蒸着材を用いてMgO膜を製造する方法である。
請求項12に係る発明は、請求項3ないし7いずれか1項に記載の方法で製造されたMgO蒸着材を用いてMgO膜を製造する方法である。
この請求項11又は12に記載された方法で製造されたMgO膜はフラットディスプレイパネルの前面板への密着性が良好となる。
請求項13に係る発明は、請求項11又は12に記載のMgO膜を用いてフラットディスプレイパネルを製造する方法である。
この請求項13に記載された方法で製造されたフラットディスプレイパネルでは、このパネルの保護膜として成膜されたMgO膜の密着性を向上できる。
以上述べたように、本発明によれば、MgOを主成分とする蒸着材を気孔率が3〜40%である多孔質構造に形成したので、蒸着材の加熱時に蒸着材内部に熱歪みが発生しても、この熱歪みが気孔で吸収されて蒸着材に熱応力が殆ど発生しない。この結果、蒸着材が破損しないので、スプラッシュの発生を防止できるとともに、MgO膜の成膜速度の経時変化を無くすことができる。従って、略均一な結晶性の高いMgO膜を速い成膜速度で形成できる。
また上記蒸着材を所定の寸法の球状又は円板状に形成すれば、蒸着材の欠けや割れが更に発生し難くなる。
また純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーに、ガスや発泡材や加熱時に揮発・分解する添加剤を混入させて、造粒、成形及び焼成すれば、上記気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
また平均粒径が10〜300μmの間の粒度分布の狭いMgO粉末を用いて、造粒、成形及び焼成すれば、焼成後に結合された粒子間に小隙が形成される。この結果、上記気孔率が3〜40%である多孔質構造のMgO蒸着材を得ることができる。
また造粒粉末を所定の寸法の球状又は円板状に成形すれば、上記球状又は円板状の蒸着材が得られる。
更に上記蒸着材を用いてMgO膜やフラットディスプレイパネルを製造したり、或いは上記方法により製造された蒸着材を用いてMgO膜やフラットディスプレイパネルを製造すれば、フラットディスプレイパネルの保護膜として成膜されたMgO膜の密着性を向上できる。
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のMgO蒸着材11は、気孔率が3〜40%、好ましくは5〜30%である多孔質構造に形成される。また上記蒸着材11の結晶粒内の気孔の平均内径は0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μmであり、蒸着材11の平均結晶粒径は1〜100μm、好ましくは1〜50μmである。ここで蒸着材11の気孔率を3〜40%の範囲に限定したのは、3%未満では本発明の効果が少ない、即ち気孔が少なすぎて蒸着材11の加熱時に蒸着材内部に発生する熱歪みを気孔で十分に吸収できず、40%を越えると機械的強度が著しく低下し蒸着材11の一部が破損して飛び散りスプラッシュを発生するからである。また気孔の平均内径を0.1〜500μmの範囲に限定したのは、0.1μm未満では気孔が小さすぎて気孔を形成するメリットがなく、500μmを越えると蒸着材11の機械的強度が著しく低下してしまうからである。更に蒸着材11の平均結晶粒径を1〜100μmと限定したのは、この粒径範囲であれば、MgOの組織を制御できるからである。
一方、上記蒸着材11は直径が5〜30mm、好ましくは5〜15mmの球状に形成される。ここで球状の蒸着材11の直径を5〜30mmの範囲に限定したのは、5mm未満では小さすぎてスプラッシュの発生原因となり、30mmを越えると実際の製造工程において取扱い難くなるからである。なお、蒸着材は直径が3〜20mm、好ましくは5〜10mmであって高さが1〜10mm、好ましくは2〜5mmの円板状に形成してもよい。
このように構成されたMgO蒸着材の製造方法を説明する。
<第1の製造方法>
MgO粉末と溶媒を含むスラリーにガスを混入させて原料を調製し、この原料を焼結法にてペレットとすることにより、上記のように気孔を有するMgO蒸着材を製造する。具体的には、先ず純度が97.0%以上、好ましくは99.0%以上であって、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmのMgO粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度45〜75重量%のスラリーを調製する。ここでMgO粉末の純度を97.0%以上に限定したのは、97.0%未満では不純物によりMgO膜の特性が低下するからである。またMgO粉末の平均粒径を0.1〜10μmの範囲に限定したのは、0.1μm未満では取扱い難くなり、10μmを越えると造粒し難くなるからである。
次いで上記スラリーに空気等のガスを吹込んでガス混入スラリーとする。次にこのガス混入スラリーを噴霧乾燥させて平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜250μmの造粒粉末を作製する。ここで造粒粉末の平均粒径を50〜300μmの範囲に限定したのは、50μm未満では成形性が悪く、300μmを越えると成形体の密度が低くなるからである。更に上記造粒粉末を所定の型に入れて5〜300MPa、好ましくは100〜200MPaの圧力で成形した後に、この成形体を大気中で1200〜1700℃、好ましくは1350〜1600℃の温度に1〜10時間、好ましくは1〜3時間保持して焼結する。これにより気孔率3〜40%のMgO蒸着材が得られる。なお、上記造粒粉末を一般的な転動造粒法により作製してもよい。
<第2の製造方法>
MgO粉末と溶媒を含むスラリーに発泡材を混入させて原料を調製し、この原料を焼結法にてペレットとすることにより、上記のように気孔を有するMgO蒸着材を製造する。具体的には、先ず純度が97.0%以上、好ましくは99.0%以上であって、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmのMgO粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度45〜75重量%のスラリーを調製する。次いで上記スラリーに炭酸水素ナトリウム等の発泡材を混入させて発泡材混入スラリーとする。次にこの発泡材混入スラリーを噴霧乾燥させて平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜250μmの造粒粉末を作製する。更に上記造粒粉末を所定の型に入れて5〜300MPa、好ましくは100〜200MPaの圧力で成形した後に、この成形体を大気中で1200〜1700℃、好ましくは1350〜1600℃の温度に1〜10時間、好ましくは1〜3時間保持して焼結する。このとき上記発泡材が発泡するので、気孔率3〜40%のMgO蒸着材が得られる。なお、上記造粒粉末を一般的な転動造粒法により作製してもよい。また、スラリーに混入する発泡材としては、上記炭酸水素ナトリウムの他に、アゾジカルボンアミドジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機発泡材や、炭酸塩等の無機発泡材が挙げられる。
<第3の製造方法>
MgO粉末と溶媒を含むスラリーに、加熱時に揮発・分解する添加剤を混入させて原料を調製し、この原料を焼結法にてペレットとすることにより、上記のように気孔を有するMgO蒸着材を製造する。具体的には、先ず純度が97.0%以上、好ましくは99.0%以上であって、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmのMgO粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度45〜75重量%のスラリーを調製する。次いで上記スラリーに、焼成時に添加剤を混入して添加剤混入スラリーとする。次にこの添加剤混入スラリーを噴霧乾燥させて平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜250μmの造粒粉末を作製する。更に上記造粒粉末を所定の型に入れて5〜300MPa、好ましくは100〜200MPaの圧力で成形した後に、この成形体を大気中で1200〜1700℃、好ましくは1350〜1600℃の温度に1〜10時間、好ましくは1〜3時間保持して焼結する。このとき上記添加剤が揮発・分解して消失するので、気孔率3〜40%のMgO蒸着材が得られる。
なお、上記造粒粉末を一般的な転動造粒法により作製してもよい。また、スラリーに混入する添加剤としては、溶媒に溶解するポリビニルブチラール等のブチラール系の添加剤や、溶媒に溶解しない平均粒径3〜500μmのスターチ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン等の中・高分子の添加剤を用いることができる。このような添加剤を添加した場合、成形時に存在している添加剤が焼結時に揮発・分解することで気孔が形成されるため、この添加剤により形成される気孔の内径及び形状を容易に制御できる。ここで、添加剤としてブチラール系の添加剤を用いた場合、0.1〜10μmのオーダーの内径を有する気孔を形成できる。また添加剤としてスターチを用いた場合、スターチの粒径と同程度の内径及び形状を有する気孔を形成できるため、気孔の内径及び形状をより一層容易に制御できる。
<第4の製造方法>
MgO粉末の粒間に小隙を形成するような粒度分布の狭い粉末原料を使用し、この粉末原料を焼結法にてペレットとすることにより、上記のように気孔を有するMgO蒸着材を製造する。具体的には、先ず純度が97.0%以上、好ましくは99.0%以上であって、平均粒径が10〜300μm、好ましくは30〜200μmのMgO粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度45〜75重量%のスラリーを調製する。次いで上記スラリーに炭酸水素ナトリウム等の発泡材を混入させて発泡混入スラリーとする。次にこの発泡混入スラリーを噴霧乾燥させて平均粒径が50〜300μm、好ましくは50〜250μmの造粒粉末を作製する。更に上記造粒粉末を所定の型に入れて50〜300MPa、好ましくは100〜200MPaの圧力で成形した後に、この成形体を大気中で1200〜1700℃、好ましくは1350〜1600℃の温度に1〜10時間、好ましくは1〜3時間保持して焼結する。これにより気孔率3〜40%のMgO蒸着材が得られる。なお、上記造粒粉末を一般的な転動造粒法により作製してもよい。
このように製造された蒸着材11を用いてAC型PDP等のMgO膜を成膜する場合、蒸着材11が加熱されて蒸着材11内部に熱歪みが発生する。しかし、蒸着材11の気孔率が比較的大きい、即ち相対密度が比較的小さいため、この熱歪みが気孔で吸収されて蒸着材11に熱応力が殆ど発生しない。この結果、蒸着材11が破損することがないので、スプラッシュの発生を防止できるとともに、MgO膜の成膜速度の経時変化を無くすことができる。従って、略均一な結晶性の高いMgO膜を速い成膜速度で形成できる。また上記蒸着材11を直径5〜30mmの球状又は円板状に成形したので、MgO膜の成膜時における蒸着材11の欠けや割れが更に発生し難くなる。このように前面板の保護膜としてMgO膜を用いたPDPフラットディスプレイパネルでは、MgO膜の前面板に対する密着性を向上できる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず純度が99.9%であって平均粒径が0.3μmのMgO粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度45〜75重量%のスラリーを調製した。次いで上記スラリーに、焼成時に揮発・分解する添加剤としてスターチを3重量%添加して添加剤混入スラリーとした。次にこの添加剤混入スラリーを噴霧乾燥させて平均粒径が250μmの造粒粉末を作製した。更に上記造粒粉末を所定の型に入れて200MPaの圧力で成形して直径10mmで高さ5mmの円板状の成形体を作製した後に、この成形体を大気中で1500℃の温度に3時間保持して焼結してMgO蒸着材を得た。このMgO蒸着材を実施例1とした。
<実施例2>
スラリーにスターチを5重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例3>
スラリーにスターチを10重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例4>
スラリーにスターチを20重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例5>
スラリーにスターチを30重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例6>
スラリーにスターチを40重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例7>
スラリーにスターチを45重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<実施例8>
スラリーにポリビニルブチラールを50重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<比較例1>
スラリーにポリビニルブチラールを添加しなかったことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<比較例2>
スラリーにポリビニルブチラールを55重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<比較例3>
スラリーにポリビニルブチラールを60重量%添加して添加剤混入スラリーとしたことを除いて、実施例1と同様にしてMgO蒸着材を作製した。このMgO蒸着材を実施例2とした。
<比較試験1及び評価>
実施例1〜8及び比較例1〜3のMgO蒸着材の相対密度、耐熱衝撃性及びスプラッシュ数を測定した。蒸着材の相対密度はアルキメデス法により測定した。また耐熱衝撃性(クエンチ試験)は、実施例1〜8及び比較例1〜3のMgO蒸着材をそれぞれ10個ずつ用意し、これらを熱処理炉中で所定の温度に加熱した後に、速やかに熱処理炉から取出して水に入れて急冷したときに破損した蒸着材の数を数えた。上記所定の温度は250℃及び500℃とした。更にスプラッシュ数の測定は、電子ビームを照射したときに飛散するMgO蒸着材の数をデジタルビデオで撮影して数えた。これらの結果をポリビニルブチラールの添加量、気孔率及び相対密度とともに表1に示す。なお、表1にはヤング率も記載した。
Figure 2005187919
表1から明らかなように、気孔率を3%以上にすることにより、スプラッシュ数が減少し、気孔率25〜30%付近で最も少なくなった。但し、気孔率が30%以上になると、スプラッシュ数が減少から増加に変わった。これはヤング率から分かるようにMgO蒸着材の強度が低下するためであり、気孔率が40%を越えると、気孔率のスプラッシュ数に対する効果が無くなることが分かった。またクエンチ試験を行ったところ、比較例1〜3では、7〜14本の蒸着材が破損したが、実施例1〜8では、1〜8本しか蒸着材が破損しなかった。これにより、耐熱衝撃性が向上したことが分かった。
本発明実施形態のMgO蒸着材を示す図である。
符号の説明
11 MgO蒸着材

Claims (13)

  1. 気孔率が3〜40%である多孔質構造に形成されたMgO蒸着材。
  2. 直径5〜30mmの球状又は直径3〜20mmで高さ1〜10mmの円板状に形成された請求項1記載のMgO蒸着材。
  3. 純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーにガスを混入させてガス混入スラリーを調製する工程と、
    前記ガス混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、
    前記造粒粉末を成形した後に焼成する工程と
    を含むMgO蒸着材の製造方法。
  4. 純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーに発泡材を混入させて発泡材混入スラリーを調製する工程と、
    前記発泡材混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、
    前記造粒粉末を成形した後に焼成する工程と
    を含むMgO蒸着材の製造方法。
  5. 純度97.0%以上かつ平均粒径0.1〜10μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーに、加熱時に揮発・分解する添加剤を混入させて添加剤混入スラリーを調製する工程と、
    前記添加剤混入スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、
    前記造粒粉末を成形した後に焼成する工程と
    を含むMgO蒸着材の製造方法。
  6. 純度97.0%以上かつ平均粒径10〜300μmのMgO粉末と溶媒を含むスラリーを調製する工程と、
    前記スラリーを造粒して平均粒径50〜300μmの造粒粉末を作製する工程と、
    前記造粒粉末を成形した後に焼成する工程と
    を含むMgO蒸着材の製造方法。
  7. 造粒粉末を直径5〜30mmの球状又は直径3〜20mmで高さ1〜10mmの円板状に成形する工程を含む請求項3ないし6いずれか1項に記載のMgO蒸着材の製造方法。
  8. 請求項1又は2に記載のMgO蒸着材を用いて形成されたMgO膜。
  9. 請求項3ないし7いずれか1項に記載の方法で製造されたMgO蒸着材を用いて形成されたMgO膜。
  10. 請求項8又は9に記載のMgO膜を用いて製造されたフラットディスプレイパネル。
  11. 請求項1又は2に記載のMgO蒸着材を用いてMgO膜を製造する方法。
  12. 請求項3ないし7いずれか1項に記載の方法で製造されたMgO蒸着材を用いてMgO膜を製造する方法。
  13. 請求項11又は12に記載のMgO膜を用いてフラットディスプレイパネルを製造する方法。
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