JP3470633B2 - MgOを主成分とする蒸着材及びその製造方法 - Google Patents

MgOを主成分とする蒸着材及びその製造方法

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JP3470633B2
JP3470633B2 JP05814499A JP5814499A JP3470633B2 JP 3470633 B2 JP3470633 B2 JP 3470633B2 JP 05814499 A JP05814499 A JP 05814499A JP 5814499 A JP5814499 A JP 5814499A JP 3470633 B2 JP3470633 B2 JP 3470633B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、MgOマトリック
ス中に、希土類元素を含む複合セラミックスからなるM
gO系蒸着材及びその製造方法に関する。更に詳しく
は、AC型PDP(Plasma Display Panel)の誘電体層
を保護するMgO膜を成膜するのに好適なMgO系蒸着
材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ここ数年、液晶(Liquid Crystal Displ
y:以下、LCDという)をはじめとして、各種の平面
ディスプレイの研究開発と実用化はめざましく、その生
産も急増している。カラープラズマディスプレイパネル
(以下、PDPという)についても、その開発と実用化
の動きが最近活発になっている。PDPは大型化し易
く、ハイビジョン用大画面壁掛けテレビの最短距離にあ
り、既に対角40インチクラスのPDPの試作が進めら
れている。PDPは、電極構造の点で金属電極が誘電体
材料で覆われているAC型と、放電空間に金属電極が露
出しているDC型とに分類される。
【0003】上記AC型PDP開発の当初は、ガラス誘
電体層が直接放電にさらされ、イオン衝撃のスパッタリ
ングにより誘電体層表面が変化して、放電開始電圧が上
昇していた。そのため、高い昇華熱を持つ種々の酸化物
を保護膜とする試みがなされた。この保護膜は直接ガス
と接しているため、重要な役割を担っている。即ち、保
護膜に求められる特性は、低い放電電圧、耐スパッ
タ性、速い放電の応答性、絶縁性、である。これら
の条件を満たす材料として、MgOが保護膜に用いられ
る。このMgOからなる保護膜は、誘電体層表面をスパ
ッタリングから守り、PDPの長寿命化に重要な働きを
している。
【0004】現在、AC型PDPの上記保護膜として、
単結晶MgOの破砕品を蒸着材とする電子ビーム蒸着法
により成膜されたMgO膜が知られている。この電子ビ
ーム蒸着法によるMgO膜は、数千オングストローム/
分の高速で成膜することができる。また、成膜されたM
gO膜の結晶方位は、(111)面に配向した膜が最も
低い維持電圧で駆動でき、更に膜中に存在する(11
1)面の量が増えるほど、二次電子放出比は増大し、駆
動電圧も減少すると言われている。なお、上記単結晶M
gOの破砕品は、純度が98%以上のMgOクリンカや
軽焼MgO(1000℃以下で焼結されたMgO)をア
ーク炉で溶融することにより、即ち電融によりインゴッ
トとした後、このインゴットの中から純度の高い部分を
取り出して、破砕することにより製造される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の単
結晶MgOの破砕品を蒸着材として用いた電子ビーム蒸
着法では、蒸着材に局所的に高いエネルギを与えるた
め、蒸着材のスプラッシュが発生したり、蒸着材のサイ
ズが一定でないため、供給系での搬送トラブルで成膜の
効率が低下する不具合があった。このスプラッシュの発
生の防止や供給系のトラブル防止には、蒸着材の粗粒化
が有効であると考えれているが、単結晶MgOの粉砕品
では現行の粒径1〜5mmより大きくかつ大きさの揃っ
た粒子を、歩留り良く安定して確保することが困難であ
った。また、上記従来の単結晶MgOの破砕品を蒸着材
として用いた電子ビーム蒸着法では、大面積のガラス誘
電体層に対してMgO膜を均一に成膜することが難し
く、膜厚分布に問題がある。この結果、MgOを成膜し
たガラス誘電体層をPDPに組み込んだ場合に、電気的
特性、例えば放電開始電圧や駆動電圧が高くなったり或
いは変化したりする問題点があった。
【0006】一方、MgOクリンカや軽焼MgOは、海
水から得られるMgCl2を原料としていることが多
く、このMgCl2には比較的多くのCa、Si、F
e、Na、Kなどの不純物が含まれるため、これらの不
純物が単結晶MgO中に残留する。また、単結晶MgO
の製造過程におけるインゴットでは、このインゴットの
中心から表面部に向かって連続的に不純物量が増加して
おり、このため単結晶部の取り出し方によって製品の純
度が極めて容易に変動してしまい、単結晶MgOの純度
の安定性や信頼性を欠く問題点があった。
【0007】これらの点を解消するために、単結晶Mg
Oに代えて多結晶MgOを用いる方法も考えられる。し
かし、種々の焼結助剤の添加により緻密化した高密度の
多結晶MgOでは、組織的には粒界に欠陥が存在する問
題点があり、また純度を高くすると密度が低くなる問題
点があった。この結果、これらの多結晶MgO蒸着材を
用いて電子ビーム蒸着法で成膜したMgO膜は配向性に
劣るため、またPDPに組み込んだときの電気的特性が
低下するために、使用できなかった。更に保護膜の絶縁
性には、MgO焼結体の純度・結晶粒界・膜の物性が大
きく影響する問題点があった。
【0008】本発明の目的は、電子ビーム蒸着法で成膜
しても、MgO焼結体の供給系のトラブルがなく、スプ
ラッシュを発生させず、安定した均一な成膜ができるM
gOを主成分とする蒸着材及びその製造方法を提供する
ことにある。本発明の別の目的は、成膜されたMgOの
膜特性を向上できるMgOを主成分とする蒸着材及びそ
の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
相対密度が95%以上のMgO焼結体であって、平均結
晶粒径が0.5〜100μmの結晶粒子を有するMgO
マトリックス中に、希土類酸化物粒子が1〜30体積%
分散されたMgOを主成分とする蒸着材である。この請
求項1に記載されたMgOを主成分とする蒸着材では、
異方性のないMgOマトリックス中に、希土類酸化物粒
子を分散して複合化を行うことにより、MgO焼結体の
物理的性質を改善できる。
【0010】例えば、Al23マトリックスにSiC粒
子を分散させた場合には、Al23マトリックスの熱膨
張係数が、分散したSiC粒子の熱膨張係数より2倍以
上大きいため、焼結体にはこの熱膨張係数の差に起因し
て焼結過程で分散粒子の周囲や内部に残留応力が発生す
る。この応力は1000MPa〜1500MPaに達す
る程大きいため、Al23マトリックスと分散粒子の界
面に亀裂が走り易い。これに対して本発明では、希土類
酸化物粒子が高温で軟化し易く、またその熱膨張係数が
高温でMgOマトリックスの熱膨張係数(約14×10
-6/℃)の約0.7〜0.9倍になり、残留応力が非常
に小さい。このためMgOマトリックスに対する希土類
酸化物粒子の高温時の熱挙動は、焼結時にMgOマトリ
ックスと分散粒子はその界面で強く結合しており、急激
な熱変化に対して安定である。この界面での強い結合に
より、蒸着材として用いた場合に、数千オングストロー
ム/分以上の成膜速度が得られる。この蒸着材を用いて
成膜されたMgO膜は、パネルに組み込んだ場合、低い
放電電圧、放電時の耐スパッタ性、速い放電の応答性及
び高い絶縁性を有する。この結果、AC型PDPの誘電
体層の保護膜に好適なものとなる。上述のように分散粒
子である希土類酸化物粒子は、高温で軟らかくなるため
に、高温ではマトリックスと分散粒子との熱膨張係数の
差は、小さくなる。従って、界面に亀裂を発生させない
範囲で大きな希土類酸化物粒子を分散させることが可能
で、そのためにマトリックス粒界を締め付けるトータル
の領域が大きくなり、粒界の欠陥も少なく、かつ強度も
向上する。
【0011】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発
明であって、更に希土類酸化物粒子中の希土類元素がS
c,Y,La,Ce,Gd,Yb,Nd,Sm,Tb及
びDyからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素
であることを特徴とする。この請求項2に記載されたM
gOを主成分とする蒸着材では、希土類元素を添加する
ことにより、MgOマトリックスも均一な組織となり、
パネルに組み込んだときの蛍光体への悪影響はなく、青
色に関係する輝度も向上する。
【0012】上記請求項1又は2に記載されたMgOを
主成分とする蒸着材は、MgO粉末と、希土類元素の酸
化物粉末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末
と、バインダと、有機溶媒とを、希土類元素の酸化物粉
末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末の添加量
が、MgO粉末と希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉
末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末との合計体積に対して
1〜30体積%となるように混合して所定濃度の混合ス
ラリーを調製する工程と、このスラリーを噴霧乾燥して
所定粒径の造粒粉末を得る工程と、この造粒粉末を所定
の型に入れて所定の圧力で成形する工程と、成形体を脱
脂した後に1500〜1700℃の温度で焼結する工程
とを含む製造方法で製造されることが好ましい。またM
gO粉末と、希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水
酸化物粉末又は硝酸塩粉末と、バインダとを、希土類元
素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩
粉末の添加量が、MgO粉末と希土類元素の酸化物粉
末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末との合計
体積に対して1〜30体積%となるように混練する工程
と、この混練物を転動造粒機の回転皿に入れた後に有機
溶媒を噴霧することにより混練物を造粒して球状の成形
体を成形する工程と、上記回転皿に更に混練物を入れか
つ有機溶媒を噴霧する作業を繰返すことにより球状の成
形体を所定の大きさに成長させる工程と、成長した成形
体を脱脂した後に1500〜1700℃の温度で焼結す
る工程とを含む製造方法により製造してもよい。更にM
gO粉末と、希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水
酸化物粉末又は硝酸塩粉末とを、希土類元素の酸化物粉
末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末の添加量
が、MgO粉末と希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉
末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末との合計体積に対して
1〜30体積%となるように湿式混合する工程と、この
混合物を減圧加熱して乾燥した後に乾式解砕する工程
と、この乾式解砕した混合粉末を所定の型に入れて所定
の圧力をかけた状態で不活性ガス雰囲気中で1450〜
1750℃に昇温して焼結する工程とを含む製造方法に
より製造してもよい。上記製造方法で製造されたMgO
を主成分とする蒸着材では、焼結工程で緻密に焼結さ
れ、この蒸着材のMgOマトリックス内に分散相の希土
類酸化物粒子が均一に分散される。ここで希土類元素の
炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末は焼結時に希
土類酸化物粒子となってMgOマトリックス内に均一に
分散される。
【0013】なお、上記請求項1又は2記載のMgOを
主成分とする蒸着材を用いてMgO膜を成膜すると、例
えば蒸着材を電子ビーム蒸着法で成膜すると、二相共
存、即ちMgOマトリックスと分散粒子とが固溶体や反
応物を形成しない状態で蒸発するので、高速安定な成
膜が可能となり、得られたMgO膜は完全固溶し、かつ
MgO膜の配向性は向上し、このMgO膜を成膜した基
板をPDPに組み込んだとき、放電電圧を低くでき、放
電時の耐スパッタ性を向上でき、更にこのMgO膜は高
い絶縁性を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。本発明のMgOを主成分とする蒸着材は、相対密
度が95%以上のMgO焼結体であって、平均結晶粒径
が0.5〜100μm、好ましくは2〜50μmの結晶
粒子を有するMgOマトリックス中に、希土類酸化物粒
子が0.5〜50体積%、好ましくは1〜30体積%、
更に好ましくは5〜25体積%分散されたものである。
この蒸着材はマトリックスとしてMgOを用い、かつ分
散相(分散粒子)として希土類酸化物粒子を用いたセラ
ミック焼結体である。上記希土類酸化物粒子中の希土類
元素としては、Sc,Y,La,Ce,Gd,Yb,N
d,Sm,Tb及びDyからなる群より選ばれた1種又
は2種以上の元素が用いられることが好ましい。また分
散粒子の平均粒径は3.0μm以下であることが好まし
く、分散粒子の含有割合はMgOマトリックス及び分散
粒子の合計に対する内割の割合である。
【0015】上記MgOマトリックスの平均結晶粒径を
0.5〜100μmの範囲に限定したのは、この範囲に
おいてMgOマトリックスの組織制御が可能なためであ
る。また分散粒子の平均粒径を3.0μm以下に限定し
たのは、MgOマトリックスの組織構造を制御し易く、
また材料中での欠陥を生じさせないためである。なお、
分散粒子の平均粒径が3.0μmを越えるとマイクロク
ラックが発生し易くなる。
【0016】このように構成された本発明のMgOを主
成分とする蒸着材の製造方法を説明する。平均粒径が
0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2μmのMgO粉
末に、平均粒径が0.2〜3.0μmの希土類元素の酸
化物粉末とバインダとを合計0.2〜2.5重量%添加
し、更にエタノールやプロパノール等を分散媒として湿
式混合して濃度が40〜70重量%の混合スラリーに調
製する。上記希土類元素の酸化物粉末はこの希土類元素
の酸化物粉末とMgO粉末との合計体積に対して希土類
元素の酸化物が0.5〜50体積%となるように秤量し
てMgO粉末に加えられる。また上記湿式混合はボール
ミル又は撹拌ミルにより行われる。上記MgO粉末の粒
径を0.1〜5μmの範囲に限定したのは、焼結し易く
するためである。また分散粒子の添加量、即ち希土類元
素の酸化物粉末の添加量を0.5〜50体積%の範囲に
限定したのは、0.5体積%未満では希土類元素の酸化
物を添加した効果が乏しく、50体積%を越えると、材
料組織の制御が困難となり、耐スパッタ性や絶縁性にバ
ラツキが生じ、材料の信頼性がなくなるからである。分
散粒子の添加量が上記範囲内であれば、MgOマトリッ
クス中に分散粒子が均一に取り込まれかつMgOマトリ
ックスの組織を制御でき、成膜した膜特性も向上する。
【0017】上記混合スラリーの濃度を40〜70重量
%に限定したのは、この範囲内であれば混合スラリーの
粘度が200cP(センチポアズ)以下であり、スプレ
ードライ造粒しても安定して製造できること、更には後
述する成形体の密度が高くなり、緻密な焼結体の製造が
可能になるためである。混合スラリーの濃度が70重量
%を越えると、非水系スラリーであるために、安定した
造粒が難しく、40重量%未満では、均一な組織を有し
た緻密なMgO焼結体が得られない。次に上記混合スラ
リーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜200μmの造粒
粉末を得た後、この造粒粉末を所定の型に入れて所定の
圧力で成形する。上記噴霧乾燥はスプレードライヤを用
いて行われることが好ましく、ペレットの成形には、メ
カニカルプレス法、タブレットマシン法又はブリケット
マシン法のいずれかの金型プレス法を用いて行われるこ
とが好ましい。
【0018】更に上記成形体を1500℃〜1700℃
で焼結する。焼結する前に成形体を350〜620℃の
温度で脱脂処理することが好ましい。この脱脂処理は、
成形体の焼結後の色むらと反りを防止するために行わ
れ、時間をかけて十分に行うことが好ましい。上記成形
体の焼結温度を1500℃〜1700℃に限定したの
は、1500℃未満では緻密な焼結体が得られず、17
00℃を越えると粒成長が著しく速く、特性が低下する
からである。また、成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結
する場合には、不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる
ことが好ましい。このようにして相対密度が95%以上
の緻密なMgOを主成分とする蒸着材が得られる。
【0019】上記MgOを主成分とする蒸着材を電子ビ
ーム蒸着法、プラズマイオンプレーティング法等を用い
てMgO膜を基板等に成膜すれば、二相共存、即ちMg
Oマトリックスと分散粒子とが固溶体や反応物を形成し
ない状態で蒸発するので、高速安定性膜が可能となり、
得られたMgO膜は完全固溶し、かつMgO膜の配向性
は向上する。また上記蒸着材を用いてMgO膜を成膜し
た基板をPDPに組み込んだとき、放電電圧を低くで
き、放電時の耐スパッタ性を向上でき、更にこのMgO
膜は高い絶縁性を有する。従って、上記MgO膜はAC
型PDPの保護膜の成膜に好適であり、また高機能セラ
ミック材料の保護膜などにも適用できる。
【0020】なお、上記実施の形態では、MgO粉末に
希土類元素の酸化物粉末を添加したが、MgO粉末に希
土類元素の炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末を
添加してもよい。この場合、希土類元素の炭酸塩粉末,
水酸化物粉末又は硝酸塩粉末は焼結時に希土類酸化物粒
子となってMgOマトリックス内に均一に分散される。
また、上記実施の形態では、MgO粉末と希土類元素の
酸化物粉末等とバインダと有機溶媒とを混合して混合ス
ラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥して所定粒径
の造粒粉末を得た後に所定の型に入れて所定の圧力で成
形したが、転動造粒機を用いて成形体を成形してもよ
い。即ち、先ずMgO粉末と希土類元素の酸化物粉末等
とバインダとを混練し、この混練物を転動造粒機の回転
皿に入れた後に、スプレー機でエタノールやプロパノー
ル等の有機溶媒を噴霧することにより上記混練物を造粒
して球状の成形体を成形し、回転皿に更に前記混練物を
入れかつ有機溶媒を噴霧する作業を繰返すことにより、
所定の大きさの球状の成形体を成形してもよい。更に、
上記実施の形態では、MgO粉末と希土類元素の酸化物
粉末等とバインダと有機溶媒とを混合して混合スラリー
を調製し、このスラリーを噴霧乾燥して所定粒径の造粒
粉末を得た後に所定の型に入れて所定の圧力で成形し、
更にこの成形体を脱脂した後に1500〜1700℃の
温度で焼結したが、ホットプレス焼結してもよい。即
ち、MgO粉末と希土類元素の酸化物粉末等とを湿式混
合し、この混合物を減圧加熱して乾燥した後に乾式解砕
し、更にこの乾式解砕した混合粉末を所定の型に入れて
所定の圧力をかけた状態で不活性ガス雰囲気中で145
0〜1650℃に昇温して焼結してもよい。
【0021】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を
より具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、以下の実施例に限定されるものではない。 <実施例1>MgO粉末(岩谷化学社製、平均粒径0.
1μm)とSc23(三菱マテリアル社製、平均粒径
1.5〜2.5μm)粉末との合計体積に対してSc2
3粉末が1体積%となるように秤量し、このSc23
粉末を上記MgO粉末に加え、更にバインダ(ポリビニ
ールブチラール)を添加し、エタノールを分散媒とし
て、撹拌ミルで1時間湿式混合し、濃度が55%の混合
スラリーに調製した。この混合スラリーをスプレードラ
イヤで噴霧乾燥して造粒することにより造粒粉末を得
た。この造粒粉末を金型(内径が100mmで深さが8
mmの金型)に充填し、メカニカルプレスで成形して成
形体を作製した。この成形体を大気雰囲気中、1650
℃に昇温し、焼結炉(広築社製)で3時間焼結すること
により直径が約80mmのMgO焼結体を得た(以下、
常圧焼結という)。このMgO焼結体を実施例1とし
た。
【0022】<実施例2>MgO粉末にSc23粉末を
10体積%加え、実施例1と同様にして混合スラリーを
調製した後に造粒粉末を得た。この造粒粉末を2つの金
型(内径が100mmで深さが8mmの金型、内径が6
mmで深さが3mmの金型)にそれぞれ充填し、メカニ
カルプレスで成形して成形体をそれぞれ作製し、更にこ
れらの成形体を実施例1と同様に常圧焼結することによ
り直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体をそれぞ
れ得た。上記直径80mm及び5mmのMgO焼結体を
実施例2とした。 <実施例3>MgO粉末にSc23粉末を20体積%加
えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にして
MgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例3とし
た。
【0023】<実施例4>MgO粉末(岩谷化学社製、
平均粒径0.2μm)にSc23粉末を15体積%加
え、エタノールを分散媒として、撹拌ミルで1時間湿式
混合した。これをロータリーエバポレータを用いて減圧
加熱して乾燥した後、乾式ボールミルで乾式解砕して混
合した。この混合粉末を黒鉛ダイス(内径φ80mm)
に充填して混合粉末に15MPaのプレス圧をかけた状
態で焼結炉(富士電波工業社製)に収容し、かつこの焼
結炉内をアルゴン雰囲気にして1500℃に昇温し、こ
の温度で1時間保持してホットプレス焼結して(以下、
HP焼結という)直径が80mmのMgO焼結体を得
た。このMgO焼結体を実施例4とした。 <実施例5>MgO粉末にSc23粉末を25体積%加
えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にして
MgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例5とし
た。
【0024】<実施例6>MgO粉末にY23(第一希
元素社製、平均粒径0.8〜1.2μm)粉末を2体積
%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様に
してMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例6
とした。 <実施例7>MgO粉末にY23粉末を10体積%加え
たことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にして直
径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。これ
らのMgO焼結体を実施例7とした。 <実施例8>MgO粉末にY23粉末を20体積%加え
たことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にしてM
gO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例8とし
た。 <実施例9>MgO粉末にY23粉末を10体積%加え
たことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にしてM
gO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例9とし
た。 <実施例10>MgO粉末にY23粉末を25体積%加
えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にして
MgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例10と
した。
【0025】<実施例11>MgO粉末にLa23(信
越化学社製、平均粒径0.7〜1.5μm)粉末を5体
積%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様
にしてMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例
11とした。 <実施例12>MgO粉末にLa23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例12とした。 <実施例13>MgO粉末にLa23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例13
とした。 <実施例14>MgO粉末にLa23粉末を10体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例14
とした。
【0026】<実施例15>MgO粉末にCe23(信
越化学社製、平均粒径1.0〜1.4μm)粉末を3体
積%加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様
にして直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得
た。これらのMgO焼結体を実施例15とした。 <実施例16>MgO粉末にCe23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例16
とした。 <実施例17>MgO粉末にCe23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例17
とした。 <実施例18>MgO粉末にCe23粉末を10体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例18
とした。 <実施例19>MgO粉末にCe23粉末を20体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例19
とした。
【0027】<実施例20>MgO粉末にGd23(信
越化学社製、平均粒径1.0〜1.4μm)粉末を2体
積%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様
にしてMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例
20とした。 <実施例21>MgO粉末にGd23粉末を10体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例21とした。 <実施例22>MgO粉末にGd23粉末を20体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例22
とした。 <実施例23>MgO粉末にGd23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例23
とした。 <実施例24>MgO粉末にGd23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例24
とした。
【0028】<実施例25>MgO粉末にYb23(信
越化学社製、平均粒径1.5μm)粉末を2体積%加え
たことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にしてM
gO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例25とし
た。 <実施例26>MgO粉末にYb23粉末を10体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例26とした。 <実施例27>MgO粉末にYb23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例27
とした。 <実施例28>MgO粉末にYb23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例28
とした。
【0029】<実施例29>MgO粉末にSm23(信
越化学社製、平均粒径0.3〜0.6μm)粉末を20
体積%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同
様にしてMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施
例29とした。 <実施例30>MgO粉末にSm23粉末を10体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例30とした。 <実施例31>MgO粉末にSm23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例31
とした。 <実施例32>MgO粉末にSm23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例32
とした。 <実施例33>MgO粉末にSm23粉末を30体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例33
とした。
【0030】<実施例34>MgO粉末にTb47(信
越化学社製、平均粒径0.3〜0.6μm)粉末を10
体積%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同
様にしてMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施
例34とした。 <実施例35>MgO粉末にTb47粉末を20体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例35とした。 <実施例36>MgO粉末にTb47粉末を30体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例36
とした。 <実施例37>MgO粉末にTb47粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例37
とした。 <実施例38>MgO粉末にTb47粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例38
とした。
【0031】<実施例39>MgO粉末にDy23(信
越化学社製、平均粒径0.5〜1.0μm)粉末を10
体積%加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同
様にしてMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施
例39とした。 <実施例40>MgO粉末にDy23粉末を20体積%
加えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にし
て直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。
これらのMgO焼結体を実施例40とした。 <実施例41>MgO粉末にDy23粉末を30体積%
加えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例41
とした。 <実施例42>MgO粉末にDy23粉末を25体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例42
とした。 <実施例43>MgO粉末にDy23粉末を15体積%
加えたことを除いて、実施例4(HP焼結)と同様にし
てMgO焼結体を得た。このMgO焼結体を実施例43
とした。
【0032】<比較例1>市販のMgO焼結体(直径が
約80mm)を比較例1とした。 <比較例2>MgO粉末にSc23粉末を35体積%加
えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にして
MgO焼結体を得た。このMgO焼結体を比較例2とし
た。 <比較例3>MgO粉末にY23粉末を35体積%加え
たことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にしてM
gO焼結体を得た。このMgO焼結体を比較例3とし
た。 <比較例4>MgO粉末にLa23粉末を35体積%加
えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にして
直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。こ
れらのMgO焼結体を比較例4とした。 <比較例5>MgO粉末にCe23粉末を35体積%加
えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にして
直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。こ
れらのMgO焼結体を比較例5とした。 <比較例6>MgO粉末にGd23粉末を35体積%加
えたことを除いて、実施例2(常圧焼結)と同様にして
直径が約80mm及び5mmのMgO焼結体を得た。こ
れらのMgO焼結体を比較例6とした。 <比較例7>MgO粉末にYb23粉末を35体積%加
えたことを除いて、実施例1(常圧焼結)と同様にして
MgO焼結体を得た。このMgO焼結体を比較例7とし
た。
【0033】<比較試験と評価> (a) 相対密度と強度試験 実施例1〜43及び比較例1〜7で得られたMgO焼結
体(直径80mmのMgO焼結体)を切り出し、研削・
研磨加工して、JIS R1601に準じた3×4×4
0mmの3点曲げ試験片の大きさとし、相対密度、曲げ
強度を測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
なお、相対密度はトルエン中、アルキメデス法で測定し
た。破壊強度は3点曲げ試験により測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】表1及び表2から明らかなように、比較例
1の市販のMgO焼結体の相対密度が95%であるのに
対して、実施例1〜43のMgO焼結体の相対密度は9
7%以上と緻密になっている。また実施例1〜43のM
gO焼結体の曲げ強度は比較例1〜7の2倍以上の高強
度を示した。これは、実施例1〜43では結晶粒界面に
亀裂を発生させない範囲内で希土類元素の酸化物を分散
でき、結晶粒界の欠陥も少なく強度が改善できるためで
あり、比較例2〜7では分散粒子の添加割合の過多によ
り、結晶粒界に欠陥が生じたためであると考えられる。
【0037】(b) MgO膜の特性試験 実施例2,7,12,15,21,26,30,35及
び40と比較例1及び4〜6の直径5mmのMgO焼結
体を電子ビーム蒸着法によりガラス基板に成膜して13
種類のTEG(Test Element Group)基板を作製した。
なお、上記比較例1の直径5mmのMgO焼結体は直径
が約80mmのものを直径が5mmで厚さが2.5mm
に機械加工することにより作製した。図1に示すように
TEG基板10は、厚さ1mmのガラス基板(コーニン
グ#7059ガラス)11上にフォトリソグラフィによ
りInSn複合酸化膜からなる下地電極12を100μ
mの間隔で厚さ0.2μm、幅100μmに形成し、こ
れらの下地電極12を覆うようにSiの反応性DCスパ
ッタリングで厚さ2μmのガラス層13を形成した後、
上記電子ビーム蒸着法により同一の成膜条件で厚さ0.
5μmのMgO膜14を成膜することにより作られた。
なお、MgO膜の成膜条件は、到達圧力が4×10-4
a、酸素分圧が1×10-2Pa、基板温度が200℃で
あった。
【0038】先ず上記MgO膜14の屈折率及び吸収係
数を測定した。MgO膜の屈折率と吸収係数は、He−
Neレーザ(波長6238オングストローム)により、
膜に対し1波長、2入射角(55°、70°)のエリプ
ソ測定を行い、解析ソフトを用いて求めた。次に上記M
gO膜の放電開始電圧を以下の方法で測定した。上記1
0種類のTEG基板をTEG基板毎に図2に示す装置の
Ne−5%Xeで500Torrの真空ベルジャー15
内に配置した加熱サンプル台16に載せ、下地電極19
(図1)をパルス電源17に接続し、TEG基板10を
熱電対18で測定しながら一定の温度に制御して、電源
電圧を上昇して行き、放電を開始する電圧を測定した。
パルス電源17は0〜300Vの範囲で電圧可変であっ
て、周波数30kHzでパルス幅10μsecのパルスを
発生するようになっている。上記方法で求めたMgO膜
の屈折率、吸収係数及び放電開始電圧を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】表3から明らかなように、比較例1及び比
較例4〜6のMgO焼結体を用いて成膜されたMgO膜
の屈折率は1.65以下で吸収係数は0.01以上であ
ったのに対して、実施例2,7,12,15,21,2
6,30,35及び40のMgO焼結体を用いて成膜さ
れたMgO膜の屈折率は1.72以上で吸収係数は0.
001以下であった。これらのことから、実施例のMg
O焼結体を用いれば、結晶性と透過性に優れたMgO膜
が得られることが分かった。また上記実施例の放電開始
電圧は上記比較例の放電開始電圧と比べて、いずれも1
2〜23V程度低いことから、実施例のMgO焼結体を
用いて成膜されたMgO膜は低い電圧でのプラズマの生
成と維持が可能なことが分かった。
【0041】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、相
対密度が95%以上のMgO焼結体であって、平均結晶
粒径が0.5〜100μmの結晶粒子を有するMgOマ
トリックス中に、希土類酸化物粒子を1〜30体積%分
散することにより、MgOを主成分とする蒸着材を構成
したので、強度と耐熱衝撃性を向上できる。また上記希
土類酸化物粒子中の希土類元素としてSc,Y,La,
Ce,Gd,Yb,Nd,Sm,Tb及びDyからなる
群より選ばれた1種又は2種以上の元素を用いれば、M
gOマトリックスが均一な組織となり、パネルに組み込
んだときの蛍光体への悪影響はなく、青色に関係する輝
度も向上する。
【0042】また上記蒸着材は、MgO粉末及び希土類
元素の酸化物粉末等を含む混合スラリーを造粒して得ら
れた造粒粉末をプレス成形した後に常圧焼結したり、転
動造粒機を用いて成形された球状の成形体を焼結した
り、或いはMgO粉末と希土類元素の酸化物粉末等の混
合粉末をホットプレス焼結したりすることにより製造さ
れることが好ましい。これらの方法で製造された蒸着材
は、焼結工程で緻密に焼結され、この蒸着材のMgOマ
トリックスの粒子内に分散相の希土類元素の酸化物粉末
等が均一に分散される。この結果、上記方法で製造され
たMgO蒸着材は、高純度で緻密なMgO焼結体とな
る。
【0043】また上記MgOを主成分とする蒸着材を用
いてMgO膜を成膜すれば、例えば蒸着材を電子ビーム
蒸着法で成膜すれば、二相共存、即ちMgOマトリック
スと分散粒子とが固溶体や反応物を形成しない状態で蒸
発するので、高速安定な成膜が可能となり、得られた
MgO膜は完全固溶し、かつMgO膜の配向性は向上
し、このMgO膜を成膜した基板をPDPに組み込んだ
とき、放電電圧を低くでき、放電時の耐スパッタ性を向
上でき、更にこのMgO膜は高い絶縁性を有する。即ち
スプラッシュの発生も少なく、得られた膜特性も良好
で、PDPに組み込んだときの耐スパッタ性も良好で駆
動電圧も低下し、安定した成膜が可能であり、PDPの
保護膜に有用な特性の膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMgOを主成分とする蒸着材を用いて
電子ビーム蒸着法で成膜したMgO膜を有するTEG基
板の断面図。
【図2】図1に示すTEG基板の放電開始電圧を測定す
る装置の構成図。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−92212(JP,A) 特開 平4−228470(JP,A) 特開 平4−160155(JP,A) 特開 平5−310475(JP,A) 特開 平6−142487(JP,A) 特開 平8−325055(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/24 C04B 35/04 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対密度が95%以上のMgO焼結体で
    あって、平均結晶粒径が0.5〜100μmの結晶粒子
    を有するMgOマトリックス中に、希土類酸化物粒子が
    1〜30体積%分散されたMgOを主成分とする蒸着
    材。
  2. 【請求項2】 希土類酸化物粒子中の希土類元素がS
    c,Y,La,Ce,Gd,Yb,Nd,Sm,Tb及
    びDyからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素
    である請求項1記載のMgOを主成分とする蒸着材。
  3. 【請求項3】 MgO粉末と、希土類元素の酸化物粉
    末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末と、バイ
    ンダと、有機溶媒とを、前記希土類元素の酸化物粉末,
    炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末の添加量が、
    前記MgO粉末と前記希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩
    粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末との合計体積に対し
    て1〜30体積%となるように混合して所定濃度の混合
    スラリーを調製する工程と、 前記スラリーを噴霧乾燥して所定粒径の造粒粉末を得る
    工程と、 前記造粒粉末を所定の型に入れて所定の圧力で成形する
    工程と、 前記成形体を脱脂した後に1500〜1700℃の温度
    で焼結する工程とを含むMgOを主成分とする蒸着材の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 MgO粉末と、希土類元素の酸化物粉
    末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末と、バイ
    ンダとを、前記希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,
    水酸化物粉末又は硝酸塩粉末の添加量が、前記MgO粉
    末と前記希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水酸化
    物粉末又は硝酸塩粉末との合計体積に対して1〜30体
    積%となるように混練する工程と、 前記混練物を転動造粒機の回転皿に入れた後に有機溶媒
    を噴霧することにより前記混練物を造粒して球状の成形
    体を成形する工程と、 前記回転皿に更に前記混練物を入れかつ有機溶媒を噴霧
    する作業を繰返すことにより前記球状の成形体を所定の
    大きさに成長させる工程と、 前記成長した成形体を脱脂した後に1500〜1700
    ℃の温度で焼結する工程とを含むMgOを主成分とする
    蒸着材の製造方法。
  5. 【請求項5】 MgO粉末と、希土類元素の酸化物粉
    末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝酸塩粉末とを、前
    記希土類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末
    又は硝酸塩粉末の添加量が、前記MgO粉末と前記希土
    類元素の酸化物粉末,炭酸塩粉末,水酸化物粉末又は硝
    酸塩粉末との合計体積に対して1〜30体積%となるよ
    うに湿式混合する工程と、 前記混合物を減圧加熱して乾燥した後に乾式解砕する工
    程と、 前記乾式解砕した混合粉末を所定の型に入れて所定の圧
    力をかけた状態で不活性ガス雰囲気中で1450〜17
    50℃に昇温して焼結する工程とを含むMgOを主成分
    とする蒸着材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2記載のMgOを主成分と
    する蒸着材を用いて成膜するMgO膜の製造方法。
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