JP4823475B2 - 蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法、成膜方法 - Google Patents

蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法、成膜方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸着材、MgO蒸着材及びその製造方法、成膜方法に係り、特に、AC型のプラズマディスプレイパネルのMgO膜の成膜等に用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、MgOは耐熱性に優れるため、主に坩堝や耐火煉瓦などの耐熱材料として使用され、その機械的強度を上げるために焼結補助剤を添加すること等が試みられている。このような技術は、例えば、特許文献1〜3等に記載されるものが知られている。
【0003】
近年、液晶(Liquid Crystal Display:LCD)をはじめとして、各種の平面ディスプレイ(Flat Panel Display)の研究開発と実用化はめざましく、その生産も急増している。カラープラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)についても、その開発と実用化の動きが最近活発になっている。PDPは大型化し易く、ハイビジョン用の大画面壁掛けテレビの最短距離にあり、既に対角60インチクラスのPDPの試作・製造が進められており、PDPの中では、電極構造の点において、金属電極がガラス誘電体材料で覆われるAC型が主流となっている。
【0004】
このAC型PDPでは、イオン衝撃のスパッタリングによりガラス誘電体層の表面が変化して放電開始電圧が上昇しないよう、ガラス誘電体層表面に高い昇華熱を持つ保護膜をコーティングする。この保護膜は直接放電用のガスと接しているために、耐スパッタリング性以外に、複数の重要な役割を担っている。即ち、保護膜に求められる特性は、放電時の耐スパッタリング性、高い2次電子放出能(低い放電電圧を与える)、絶縁性、および、光透過性などがある。これらの条件を満たす材料として、一般にMgOを蒸着材料とし、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法により成膜されたMgO膜が使用されている。このMgO保護膜は、前述のように誘電体層の表面を放電時のスパッタリングから守ることでPDPの長寿命化に重量な働きをしており、保護膜の膜密度が高いほど耐スパッタ性は向上することが知られている(非特許文献1)。
【0005】
さらに、この保護膜材料(蒸着材料)としてはMgO単結晶体およびMgO多結晶体が知られている。このような技術は、例えば、特許文献4〜10等に記載されるものがある。
【0006】
上記MgO多結晶体は一般に海水法や気相法で得られた任意の純度、不純物組成のMgO粉末を造粒、プレス成型、焼成することで製造される。一方単結晶MgOは一般に、純度が98%以上のMgOクリンカや軽焼MgO(1000℃以下で焼結されたもの)を電弧炉(アーク炉)で溶融することにより、すなわち、電融によりインゴットとした後、このインゴットから単結晶部分を取り出して破砕することにより製造される。
【0007】
【特許文献1】
特開平07−133149号公報
【特許文献2】
特許2961389号公報
【特許文献3】
特公平07−102988号公報
【特許文献4】
特開平10−291854号公報
【特許文献5】
特開平10−297955号公報
【特許文献6】
特開平11−29857号公報
【特許文献7】
特開平10−297956号公報
【特許文献8】
特開2000−63171公報
【特許文献9】
特開平11−29355号公報
【特許文献10】
特開平11−213875号公報
【非特許文献1】
IEICE Trans. Electron.,vol.E82-C, No.10, p.1804-1807,(1999)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
1パネル当たりに係る成膜(蒸発)時間は比較的長く、これを短縮して作業効率を向上し、製造コストを低減したいという要求があった。なお、上記のMgOに限らず、他の蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法による成膜をおこなった場合には、同様にその成膜(蒸発)速度を改善したいという要求もあった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法における成膜速度の向上を図ること。
2.電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法における成膜速度の制御性向上を図ること。
3.MgO蒸着材における成膜(蒸発)速度の改善を図ること。
4.スプラッシュの低減を図ること。
5.成膜したMgO膜の膜密度の低下防止を図ること。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のMgO(c6)蒸着材の製造方法は、MgO蒸着材を製造する方法において、
平均粒径50μm以上の粉末または顆粒粉とされMgO純度が99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上であるMgO原料粉末と室温での表面張力が2×10−2N/m〜8×10−2N/mの溶媒を用いたバインダ液とを混合および/または造粒して平均粒径を100μm以上の造粒粉とし、この造粒粉をプレス成形して成形体とし、この成形体を焼成して焼結体ペレットとする際に、前記成形体における表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定することを特徴とする。
本発明のMgO蒸着材の製造方法は、前記焼結体ペレットの平均結晶粒径を1〜500μmとすることができる。
本発明のMgO蒸着材の製造方法は、前記焼結体ペレットの結晶粒内の気孔の平均内径を10μm以下とすることができる。
本発明の蒸着材においては、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定されてなることにより上記課題を解決した。
【0011】
本発明の蒸着材においては、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定されてなることにより、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法等において使用した場合、従来の蒸着材に比べて、成膜(蒸発)速度を大きくすることが可能となる。ここで、表面粗さRaとは、JIS B0601−1994に準じて定義される。
これは、本願発明者らが、得た次のような知見によるものである。
【0012】
本願発明者らは、蒸着材を製造し、この蒸着材に電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜をする際、成膜速度を規制する段階として蒸発速度に関する考察をおこなった。この結果、蒸着材の表面に微細な凹凸がある場合、つまり、蒸着材表面粗さRaが増大すると蒸発速度は上昇する傾向を示すことが判明した。これは、詳細には不明であるが、表面粗さRaが増大することで、電子ビーム等における蒸着材の蒸発表面積が向上することが主な原因だと考えられる。従って、蒸着材の表面粗さを上記のように設定することにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、成膜速度を変えない場合には、電子ビーム出力を押さえることができるので、装置のランニングコストの低減が可能となる。
【0013】
本発明の蒸着材においては、蒸着材ペレット表面の凹凸を考慮した実表面積が200mm 〜1200mm の範囲に設定されてなることにより、電子ビーム蒸着法等において使用した場合、従来の蒸着材に比べて、成膜(蒸発)速度を大きくすることができる。
ここで、実表面積とは、レーザ顕微鏡(VK−8500、キーエンス社製)等によって蒸着材表面を観察して得た表面粗さを考慮した表面積である。
【0014】
上述したように、蒸着材を製造し、この蒸着材を用い電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜をする際の蒸発速度に関する考察をおこなった。この結果、蒸着材の表面に微細な凹凸がある場合、つまり、蒸着材の実表面積が増大すると蒸発速度は上昇する傾向を示すことが解った。従って、蒸着材の実表面積を上記のように設定することにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、成膜速度を変えない場合には、電子ビーム出力を抑えることができるので、装置のランニングコストの低減が可能となる。
【0015】
本発明において、外形体積の値が30mm〜1500mmの範囲に設定したことにより、このような蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法により成膜した際には、蒸着材の大きさがスプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができる。すなわち、蒸着材サイズを30mm以上に設定し、スプラッシュ程度を減少して、成膜に使用できる蒸着材料の使用効率を向上し、結果的には材料コストを低減することができる。同時に、蒸着材サイズを1500mm以下に設定することにより、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少することを防止できる。
ここで、外形体積とは、ノギス等によって例えば縦横高さ、直径および長さなどの蒸着材の寸法を計測し、その体積を算出したものである。
【0016】
また、本発明において、実表面積/外形体積の比の値が8m −1〜30m −1の範囲に設定されてなることにより、上記のように、スプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができるとともに、成膜(蒸発)速度を向上することが可能となる。その結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0017】
実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定したことにより、
このような蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法により成膜をおこなった場合には、蒸着材の大きさがスプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができる。すなわち、前記比の値を8m −1以上に設定し、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少することを防止できる。同時に、前記比の値を30−1以下に設定することにより、スプラッシュ程度を減少して、成膜に使用できる蒸着材料の使用効率を向上し、結果的には材料コストを低減することができる。
【0018】
本発明における単位重量当たりの実表面積である比表面積の値が20cm/g〜100cm/gの範囲に設定されてなることにより、電子ビーム蒸着法等において使用した場合、従来の蒸着材に比べて、成膜(蒸発)速度を大きくすることができる。その結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、成膜速度を変えない場合には、電子ビーム出力を抑えることができるので、装置のランニングコストの低減が可能となる。
ここで、比表面積とは、実表面積/(外形体積×密度)を意味している。つまり、蒸着材において密度を小さく設定すると、比表面積の値は大きくなり、密度を大きく設定すると、比表面積の値は小さくなる。
【0019】
比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定したことにより、このような蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法により成膜をおこなった場合には、蒸着材の大きさがスプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができる。すなわち、前記比表面積を20cm/g以上に設定することにより、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少することを防止できる。同時に、比表面積を100cm/g以下に設定することにより、スプラッシュ程度を減少して、成膜に使用できる蒸着材料の使用効率を向上し、結果的には材料コストを低減することができる。
ここで、極端に低密度の蒸着材の場合には、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法により成膜をおこなう際に水や炭酸ガスのような不純物ガスが多量に発生してしまい、チャンバ内の雰囲気が悪くなるため成膜した膜の膜密度が低下する等の膜質の低下が起こる可能性があり、好ましくない。
【0020】
上述したように、蒸着材を製造し、この蒸着材に電子ビーム蒸着法やイオンプレーティング法などでの成膜をする際の蒸発速度に関する考察をおこなった。この結果、蒸着材の表面に微細な凹凸がある場合、つまり、蒸着材にあっては比表面積が増大すると蒸発速度は上昇する傾向を示すことが判明した。これは、詳細には不明であるが、蒸着材の比表面積を上記のように設定することにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、成膜速度を変えない場合には、電子ビーム出力を押さえることができるので、装置のランニングコストの低減が可能となる。
【0021】
本発明のMgO蒸着材においては、上記の蒸着材において、MgOからなることにより、このMgO蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜などを成膜した際に、スプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができるとともに、成膜(蒸発)速度を向上することが可能となる。その結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、成膜速度を変えない場合には、電子ビーム出力を押さえることができるので、装置のランニングコストの低減が可能となる。
【0022】
本発明のMgO蒸着材においては、MgO純度が99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上としたことにより、このようなMgO蒸着材料を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜を成膜した際には、スプラッシュの発生程度が低減して保護膜としても膜特性を向上することができる。これは、上記のように設定することにより、ガス化成分が低減してスプラッシュが低減するためと考えられる。
ここで、膜特性としては、MgOの膜密度、膜厚分布、屈折率、耐スパッタ性、放電特性(放電電圧、放電応答性等)、絶縁性等がある。
【0023】
ここで、MgO純度および相対密度が上記の範囲以外に設定された場合には、蒸着材の強度が不十分であるため好ましくなく、また、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、蒸着材のスプラッシュ発生程度が増大し、その結果、成膜に使用できる蒸着材量の使用効率が低下し、結果的に材料コストが増大してしまうとともに、得られた膜の結晶配向性および微細組織の制御が難しくなり、さらにMgO膜成分の基板上への緻密な堆積が阻害されるため、結果的に膜密度が低下するため好ましくない。
【0024】
さらに、本発明の蒸着材の製造方法においては、前記原料粉末として、平均粒径50μm以上の粉末または顆粒粉を使用することにより、造粒粉をプレス成形して成形体とした際に表面に凹凸を形成し、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0025】
本発明においては、混合および/または造粒する際のバインダ液の溶媒として、室温での表面張力が20dyn/cm〜80dyn/cmの液を使用することにより、蒸着材表面に凹凸を形成することができる。ここで、室温とは、20℃程度とされる。
造粒粉における凝集体の「硬さ」はバインダ液の表面張力に依存する。すなわち、バインダ液の溶媒の表面張力が小さいと、造粒粉の「硬さ」は小さく、その後のプレス成型時に容易に変形し蒸着材の実表面積は小さくなってしまう。これに対し、バインダ液の溶媒の表面張力が大きい場合には、形成された造粒粉の「硬さ」は大きくプレス成型時も比較的変形せず、結果として得られた蒸着材の実表面積を増大することができる。
【0026】
このため、バインダ液の溶媒の表面張力を上記の範囲に設定することにより、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm 〜1200mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
ここで、バインダ液の溶媒としては、メタノール、アセトン、水、エタノールや、水とエタノールとを、重量%で水:エタノール=90:10から1:99程度の混合比で混合したものなどがあげられる。またバインダとしては、ポリエチレングリコールやポリビニールブチラール等があげられ、その量は溶媒に対して0.2〜2.5重量%添加することができる。
【0027】
本発明においては、前記造粒粉の平均粒径が100μm以上に設定されることにより、造粒粉をプレス成形して成形体とした際に表面に凹凸を形成し、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0028】
本発明においては、造粒粉をプレス成形する際の圧力、加圧時間等の条件を制御して成形体における表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定されてなることにより、成形体を焼成した蒸着材における表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm2 /g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0029】
本発明においては、成形体を焼成する際の温度条件および焼成時間が、焼成後の蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲にするよう設定されてなることにより、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0030】
本発明におけるMgO蒸着材の製造方法では、上記の蒸着材の製造方法において、原料粉末がMgOとされることにより、上記のような蒸着材を製造することができ、製造されたMgO蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜などを成膜した際に、スプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができるとともに、成膜(蒸発)速度を向上することが可能となる。その結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0031】
また、本発明のMgO蒸着材の製造方法では、MgO純度を99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上としたことにより、上記のような蒸着材を製造することができ、このようなMgO蒸着材料を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜を成膜した際には、スプラッシュの発生程度が低減して保護膜としても膜特性を向上することができる。これは、上記のように設定することにより、ガス化成分が低減してスプラッシュが低減するためと考えられる。
【0032】
ここで、上記の範囲以外に設定された場合には、蒸着材の強度が不十分であるため好ましくなく、また、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、蒸着材のスプラッシュ発生程度が増大し、その結果、成膜に使用できる蒸着材量の使用効率が低下し、結果的に材料コストが増大してしまうとともに、得られた膜の結晶配向性および微細組織の制御が難しくなり、さらにMgO膜成分の基板上への緻密な体積を阻害するため、結果的に膜密度が低下するためため好ましくない。
【0033】
また、本発明では、純度が99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上で、平均粒径が50μm程度のMgO粉末またはMgO顆粒粉末を原料として用い、この粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度が45〜75重量%のスラリーを調製する工程と、前記スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が100〜800μmの造粒粉末を得る工程と、前記造粒粉末を所定の型に入れて所定の圧力で成形する工程と、前記成形体を所定の温度で焼結する工程とを有することができる。なお、造粒粉末を得る工程は、一般的な転動造粒法であってもよい。
【0034】
さらに、造粒粉末を750〜2000kg/cmの圧力で一軸加圧成形するか或いは造粒粉末を1000〜3000kg/cmの圧力でCIP成形することが好ましく、また成形体を1250〜1350℃の温度で一次焼結した後、昇温して1500〜1700℃の温度で二次焼結することが好ましい。
【0035】
さらに、本発明においては、上記のように、原料粉末を混合および/または造粒して造粒粉とする工程、造粒粉をプレス成形して成形体とする工程、この成形体を焼成する工程においてそれぞれ、表面粗さ等を設定する以外にも、電融法によりインゴットを作成した後解砕により所定の大きさのペレットを製造し、その後、これらのペレット表面を研磨して、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定することによっても、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するかまたは、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定することが可能となり、これにより、蒸発速度が大きくなって成膜速度が上昇し、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0036】
本発明の成膜方法およびMgO膜の成膜方法においては、上記の蒸着材またはMgO蒸着材を使用することによりスプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を適性な程度に制御することができるとともに、成膜(蒸発)速度を向上することが可能となる。その結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法、成膜方法の第1実施形態を詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の蒸着材は、MgO蒸着材とされ、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定されて、MgO純度が9 9.0%以上、さらに好ましくは99.5%以上、99.9%以上、かつ相対密度が90%以上、さらに好ましくは97%以上、98%以上の多結晶MgOの焼結体ペレットからなる。またこの焼結体ペレットの実表面積が200mm〜1200mmの範囲に設定され、外形体積の値が30mm〜1500mmの範囲に設定されて、実表面積/外形体積の値が8m −1〜30m −1の範囲に設定され、比表面積の値が20cm/g〜100cm/gの範囲に設定されてなる。
【0039】
またこの焼結体ペレットの平均結晶粒径は1〜500μmであり、焼結体ペレットの結晶粒内には平均内径10μm以下の丸みを帯びた気孔を有する。
ここで、MgO蒸着材における外形が、具体的には、径寸法φ4〜20mmで厚み寸法(高さ寸法)1.0mm〜5.0mm程度の円板状(円柱状)とされることができる。
【0040】
ここで、表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定したのは、この表面粗さ範囲であれば、このようなMgO蒸着材料を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜等を成膜した際に、成膜速度を容易にコントロールして、所望の成膜速度とすることができるからである。また、表面粗さRaが1.0μmより小さく設定された場合には、成膜(蒸発)速度が低減してしまうため好ましくなく、表面粗さRaが10μmより大きく設定された場合には、成膜速度が不安定となりやすいため、好ましくない。
【0041】
またこの焼結体ペレットの実表面積が200mm〜1200mmの範囲以外に設定した場合、および、実表面積/外形体積の値が8m −1〜30m −1の範囲以外に設定された場合には、上記の外形体積および表面粗さRaの値が上記の範囲からはずれてしまい好ましくない。
【0042】
MgO蒸着材外形体積が30mmより小さく設定された場合には、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、蒸着材のスプラッシュ発生程度が増大し、その結果、成膜に使用できる蒸着材量の使用効率が低下し、結果的に材料コストが増大してしまうとともに、得られた膜の結晶配向性および微細組織の基板内での均−性が悪くなるため好ましくない。
また、MgO蒸着材の外形体積が1500mmより大きく設定された場合には、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少するため好ましくない。
また、焼結体ペレットの平均結晶粒径を1〜500μmとしたのは、この粒径範囲であれば、MgOの組織を制御できるからである。また焼結体ペレットの結晶粒内の気孔の平均内径を10μm以下としたのは、10μmを越えるとMgOの組織制御が難しいからである。
【0043】
またこの焼結体ペレットの比表面積の値が20cm/gより小さく設定された場合には、電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少するため好ましくなく、また、比表面積の値が100cm/gより大きく設定された場合にはぃ電子ビーム蒸着法や、イオンプレーティング法などでの成膜時に、蒸着材のスプラッシュ発生程度が増大し、その結果、成膜に使用できる蒸着材量の使用効率が低下し、結果的に材料コストが増大してしまうとともに、得られた膜の結晶配向性および微細組織の基板内での均−性が悪くなるため好ましくない。
【0044】
多結晶MgOの焼結体ペレットに含まれる不純物(Si,Al,Ca,Fe,Cr,V,Ni,Na,K,C及びZr)の含有量は合計で10000ppm以下であることが好ましい。また上記不純物の個別的な含有量は、Siが元素濃度で1000ppm以下、Alの不純物が元素濃度で300ppm以下であり、Caの不純物が元素濃度で2000ppm以下であり、Feの不純物が元素濃度で40ppm以下であり、Cr,V及びNiの不純物がそれぞれ元素濃度で50ppm以下であり、Na及びKの不純物がそれぞれ元素濃度で30ppm以下であり、Cの不純物が元素濃度で300ppm以下であり、Zrの不純物が元素濃度で150ppm以下であることが好ましい。上記各不純物が元素濃度で上記値を超えると、MgO蒸着材を電子ビーム蒸着法で成膜したガラス基板をパネルに組込んだときに、膜質にばらつきが生じるために、電気的特性、例えば駆動電圧が高くなったり或いは不安定になったりする不具合がある。
【0045】
このように構成されたMgO蒸着材の製造方法を説明する。
【0046】
まず、純度が99.0%以上で、平均粒径50μm以上の以上のMgO粉末またはMgO顆粒粉と、室温での表面張力が20dyn/cm〜80dyn/cmの溶媒を用いたバインダ液と、を混合して、濃度が45〜75重量%のスラリーを調製する。バインダとしてはポリエチレングリコールやポリビニールブチラール等を、有機溶媒としてはエタノールやプロパノール等を用いることが好ましく、バインダは0.2〜2.5重量%添加することが好ましい。また、それ以外でも、溶媒としては、水とエタノールとを重量%で90:10〜1:99混合したものを用いることができる。
【0047】
ここで、原料粉末として、平均粒径50μm以下の以上のMgO粉末またはMgO顆粒粉を使用した場合には、後述する成形体表面、蒸着材の表面において、それぞれ好ましい表面粗さの範囲を設定することが難しいため好ましくない。
【0048】
また、バインダ液の溶媒の表面張力が20dyn/cmより小さい場合には、後述するように造粒粉から溶媒が揮発した後に、造粒粉が比較的弱く凝集しているため、プレス成型後得られた成形体表面の表面粗さRaが好ましい範囲にならないため、比表面積が前述の好ましい範囲とならず好ましくない。また、表面張力が80dyn/cmより大きい場合には、造粒粉が比較的強く凝集しており、プレス成型性が極端に悪いため、焼成したMgO蒸着材の密度が好ましい範囲とならず好ましくない。
【0049】
また、スラリーの濃度を45〜75重量%に限定したのは、75重量%を越えると安定した造粒が難しい問題点があり、45重量%未満では均一な組織を有する緻密なMgO焼結体が得られいないからである。即ち、スラリ一濃度を上記範囲に限定すると、スラリーの粘度が200〜1000cpsとなり、スプレードライヤによる粉末の造粒を安定しておこなうことができ、更には成形体の密度が高くなって緻密な焼結体の製造が可能になる。
【0050】
またMgO粉末とバインダと有機溶媒との湿式混合は、湿式ボールミル又は撹拌ミルにより行われる。湿式ボールミルでは、ZrO 製ボールを用いる場合には、直径5〜10mmの多数のZrO 製ボールを用いて8〜24時間、好ましくは20〜24時間湿式混合される。ZrO 製ボールの直径を5〜10mmと限定したのは、5mm未満では混合が不十分となることからであり、10mmを越えると不純物が増大する不具合があるからである。また混合時間が最長24時間と長いのは、長時間連続混合しても不純物の発生が少ないからである。一方、湿式ボールミルにおいて、鉄芯入りの樹脂製ボールを用いる場合には、直径10〜15mmのボールを用いることが好ましい。
【0051】
撹絆ミルでは、直径1〜3mmのZrO 製ボールを用いて0.5〜1時間湿式混合される。ZrO 製ボールの直径を1〜3mmと限定したのは、1mm未満では混合が不十分となることからであり、3mmを越えると不純物が増える不具合があるからである。また混合時間が最長1時間と短いのは、1時間を越えると原料の混合のみならず粉砕の仕事をするため、不純物の発生の原因となり、また1時間もあれば十分に混合できるからである。
【0052】
次に上記スラリーを噴霧乾燥して平均粒径が100μm以上、好ましくは、100〜800μmの造粒粉とする。上記噴霧乾燥はスプレードライヤを用いて行われることが好ましい。
ここで、平均粒径を100μmより小さくした場合は、後述するプレス後の成形体、および焼成後のMgO蒸着材において、表面粗さRaが好まし範囲にならないため、好ましくない。また、800μmを越えると成形体密度が低く強度も低い不具合があるからである。
【0053】
その後、造粒粉を所定の型に入れて所定の圧力で成形し、成形体とする。この所定の型は一軸プレス装置又は冷開静水圧成形装置(CIP(Cold Isostatic Press)成形装置)が用いられる。一軸プレス装置では、造粒粉末を750〜2000kg/cm、好ましくは1000〜1500k/cmの圧力で0.1〜5分間一軸加圧成形し、CIP成形装置では、造粒粉末を1000〜3000kg/cm、好ましくは1500〜2000kg/cmの圧力で0.1〜60分間CIP成形する。
圧力および加圧保持時間を上記範囲に限定したのは、成形体における表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するとともに、成形体の密度を高め焼結後の変形を防止し、後加工を不要にするためである。
【0054】
さらに成形体を焼結する。焼結する前に成形体を350〜620℃の温度で脱脂処理することが好ましい。この脱脂処理は成形体の焼結後の色むらを防止するために行われ、時間をかけて十分に行うことが好ましい。
焼結はその温度条件および時間が、焼成後の蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲にするよう設定され、具体的には、1250〜1350℃の温度で1〜5時間行う一次焼結と、この後に更に昇温して1500〜1700℃の温度で1〜10時間行う二次焼結とからなる二段焼結により行われる。
【0055】
成形体を先ず一次焼結するために昇温すると、1200℃から焼結が始まり、1350℃で焼結はかなり進む。この温度で一次焼結することにより、粒径が大きくてもその表面と内部との焼結むら(組織構造の差)はなく、1500〜1700℃の温度で二次焼結することにより、相対密度が100%に近い焼結体ペレットが得られる。この焼結体ペレットには僅かな気孔が存在するが、この気孔はMgO焼結体の特性に影響を与える結晶粒界ではなく、MgO焼結体の特性に殆ど影響を与えない結晶粒内に存在する。この結果、本発明のMgO焼結体ペレットを用いてプラズマディスプレイパネルに成膜すると、スプラッシュが少なくかつ成膜速度が高く、膜特性の良好なMgO膜を得られる。
【0056】
なお、形状の大きな成形体を焼結する場合には、上記二段焼結時の昇温速度を20〜30℃/時間と遅くすれば更に緻密化を図ることができる。また、常圧における焼結では、焼結温度が1500℃未満であると十分に緻密化できないけれども、焼結温度が1500℃以上であれば高密度の焼結体を得ることができるので、熱間静水圧成形法(HIP(Hot lsostatic Press )法)やホットプレス法等の特殊な焼結を行わなくても済む。
【0057】
本実施形態においては、Mgo蒸着材の表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定され、外形体積の値が30mm〜1500mmの範囲に設定され、実表面積が200mm〜1200mmの範囲に設定され、実表面積/外形体積の比の値が8m −1〜30m −1の範囲に設定され、比表面積の値が20cm/g〜100cm/gの範囲に設定されることにより、製造されたMgO蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜などを成膜した際に、成膜(蒸発)速度が大きくなり、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、同じ成膜速度で成膜する場合には、電子ビーム出力を抑えることができるので、装置のランニングコスト低減が可能となる。
【0058】
以下、本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法、成膜方法の第2実施形態を詳細に説明する。
【0059】
本実施形態においては、表面張力が20dyn/cm〜80dyn/cmのアルコール等の溶媒にバインダを1.0重量%添加してバインダ液を調整し、第1実施形態と同様に、純度が99.0%以上のMgO顆粒粉末を撹拝機中で流動させながら、このパインダ液を滴下しつつ転動造粒法にてMgOの造粒物を得て、プレス後これを焼成し、直径4.0mm〜20.0mm程度、厚さ1.0〜5.0mm程度の円板状とされる多結晶体を作製し、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲、蒸着材の実表面積が200mm〜1200mmの範囲、実表面積/外形体積の比の値が8m −1〜30m −1の範囲、比表面積の値が20cm/g〜100cm/gの範囲となるように設定する。
【0060】
この結果、第1実施形態と同様に、本実施形態のMgO蒸着材をプラズマディスプレイパネルに成膜すると、スプラッシュ程度を減少して、成膜に使用できる蒸着材料の使用効率を向上し、結果的には材料コストを低減することができ、同時に、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少することを防止できる。つまり、スプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を最適化することができる。また、製造されたMgO蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜などを成膜した際に、成膜(蒸発)速度が大きくなり、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。また、同じ成膜速度で成膜する場合には、電子ビーム出力を抑えることができるので、装置ランニングコストの低減が可能となる。
【0061】
以下、本発明に係るMgO蒸着材およびその製造方法、成膜方法の第3実施形態を詳しく説明する。
【0062】
本実施形態においては、純度が98.0%以上のMgO粉末を電融し、徐冷してインゴットとした後、このインゴットから単結晶部を取り出して破砕し、一辺3.5mm〜11mm程度の略立方体、あるいは、10mm×10mm×(1mm〜15mm)程度の略直方体とされる外形の単結晶ペレットを作製する。
その後、この単結晶ペレット表面を研磨して表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲、蒸着材の実表面積が200mm〜1200mmの範囲、実表面積/外形体積の比の値が8m −1〜30m −1の範囲、比表面積の値が20cm/g〜100cm/gの範囲となるように設定する。
ここで、単結晶ペレットの研磨は、ケミカルエッチングや、サンドブラスト法、サンドペーパー等による機械研磨等によりおこなうことができる。
【0063】
この結果、第1実施形態と同様に、本実施形態のMgO蒸着材をプラズマディスプレイパネルに成膜すると、製造されたMgO蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜などを成膜した際に、成膜(蒸発)速度が大きくなり、結果として、1パネルあたりにかかる成膜時間を短縮することができるため、生産性を向上して生産コストの低減を測ることが可能となる。同時に、スプラッシュ程度を減少して、成膜に使用できる蒸着材料の使用効率を向上し、結果的には材料コストを低減することができ、同時に、成膜(蒸発)速度が低下してしまい生産性が減少することを防止できる。つまり、スプラッシュ程度と成膜(蒸発)速度を最適化することもできる。
【0064】
なお、本実施形態では単結晶ペレットを製造し、この単結晶ペレット表面を研磨により上記の表面粗さ範囲にしたが、前述の第1,第2実施形態と同様、加圧成形法によって多結晶ペレットを製造し、その多結晶ペレット表面を研磨して表面粗さを設定することもできる。
【0065】
以下に実施例としての各実験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
市販のMgO顆粒粉末(平均粒径100μm)に対し、バインダとしてポリエチレングリコールを1重量%添加し、メタノール変性アルコールを溶媒とするスラリーを濃度30重量%に調製した。次いでこのスラリーをボールミル(直径5〜20mmのナイロンコートスチールボール使用)にて24時間湿式混合した後、真空乾燥機にて80℃で溶媒を気化させ、引き続き乾式にて解砕することで、平均粒径200μmの造粒粉末を得た。次に得られた造粒粉末を一軸成形プレス装置にて、成形体表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲になるように1000kg/cmで外径6.7mmφ、厚さ2.0mmに成形した。更にこの成形体を電気炉に入れ、大気中1300℃で1時間一次焼成した後、1650℃で3時間二次焼成した。得られた多結晶焼結体ペレットは、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲となっており、外径5.0±0.5mmφ、厚さ1.6±0.2mmであった。この焼結体の円板を実験例とした。
【0067】
重量比でエタノール:水が95:5の混合溶液を用い、バインダ液を調整した。上記の実施例と同様のMgO顆粒粉末(平均粒径50μm)を攪拌機中で流動させながら、このバインダ液を滴下しつつ転動造粒法にて、平均粒径が300μmで、MgOの造粒粉を得た。次に、この造粒粉を一軸成形プレス装置にて表面粗さRaが1.0〜10μmになるよう1000Kg/cm で成形し、その後電気炉にて、大気中1650℃で3時間焼成した。得られた表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲で、外形サイズが30mm〜1500mmとなる直径4mm〜φ20mm、厚さ1mm〜5mmの各種円板状の多結晶ペレットを実験例とした。
【0068】
市販のMgO粉末(純度98%)を電融し、徐冷してインゴットとした後、このインゴットから単結晶部を取り出して破砕し、外形サイズが30mm〜1500mmとなる約2〜8mmで中心径約5mmの板状単結晶ペレットの表面をサンドペーパーを用いて研磨し、表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲である単結晶ペレットを得て、これを実験例とした。
【0069】
[成膜速度測定]
得られた蒸着材を用いて、電子ビーム蒸着装置によりMgO膜の成膜をおこない、その成膜速度を測定した。MgO蒸着材の蒸着成膜試験は、電子ビーム蒸着装置の半球状のハース(直径50mm、深さ25mm)に各実験例で得られた蒸着材を仕込み、到達真空度2.66×10−4Pa(2.0×10−6Torr)、O 分圧1.33×10−2Pa(1.0×10−4Torr)の雰囲気にして、加速電圧10kV、ビームスキャンエリア約40mmφの電子ビームを照射することで、MgO蒸着材を加熱した。なお、電子ビーム電流量は90mAで固定し、電子ビーム装置に取り付けた膜厚モニタ(水晶振動子の周波数変化により膜厚変化の速度を測定できる。MgOの理論密度:3.65g/cm として換算)を用いることで、評価した。
その結果を図1〜図4に示す。
【0070】
図1は、各実験例のMgO蒸着材における実表面積/外形面積の比と成膜速度との関係を示すグラフである。
図1において、外形面積とは外形体積と同様に、ノギス等によって例えば縦横高さ、直径および長さなどの蒸着材の寸法を計測し、その表面積を算出したものである。
図1の結果から、実表面積/外形面積の値が大きくなると、成膜速度も上昇していることがわかる。
【0071】
図2は、各実験例のMgO蒸着材における表面粗さRaと成膜速度との関係を示すグラフである。
図2の結果から、表面粗さRaの値が大きくなると、成膜速度も上昇していることがわかる。
【0072】
図3は、各実験例のMgO蒸着材における実表面積/外形体積の比と成膜速度との関係を示すグラフである。
図3の結果から、実表面積/外形体積の値が大きくなると、成膜速度も上昇していることがわかる。
【0073】
図4は、各実験例のMgO蒸着材における比表面積と成膜速度との関係を示すグラフである。
図4の結果から、比表面積の値が大きくなると、成膜速度も上昇していることがわかる。
【0075】
上述したように、実表面積/外形面積、表面粗さ、実表面積/外形体積、比表面積、と成膜速度とは、それぞれ比例関係にあることがわかるので、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定し、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定し、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定し、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定するとともに、このようにMgO蒸着材の表面状態を制御することにより、所望の成膜速度を得て、成膜速度を制御することが可能となることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明の蒸着材、MgO蒸着材によれば、蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、蒸着材の実表面積を200mm〜1200mmの範囲に設定するか、外形体積の値を30mm〜1500mmの範囲に設定するか、または、実表面積/外形体積の比の値を8m −1〜30m −1の範囲に設定するか、または、比表面積の値を20cm/g〜100cm/gの範囲に設定するか、MgO純度が99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上としたことにより、このような蒸着材(MgO蒸着材)を用いて、電子ビーム蒸着法またはイオンプレーティング法によりAC型PDP等のMgO保護膜等を成膜した際には、成膜(蒸発)速度を向上するとともに成膜速度の制御性を向上することができる。同時に、外形体積の値が30mm〜1500mmの範囲に設定したことにより、スプラッシュの発生程度が低減して、保護膜として、MgOの膜密度、膜厚分布、光透過性、耐スパッタ性、放電特性(放電電圧、放電応答性等)、絶縁性等の膜特性を向上することができるという効果を奏する。
【0077】
また、本発明の蒸着材、MgO蒸着材の製造方法、成膜方法において、原料粉末として、平均粒径50μm以上の以上の粉末または顆粒粉を使用するか、または、バインダの溶媒として、室温での表面張力が20dyn/cm〜80dyn/cmの液を使用するか、または、造粒粉の平均粒径を100μm以上に設定するか、または、成形体における表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定するか、または、焼成における温度条件および焼成時間を、焼成後の蒸着材の表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲にするよう設定するか、または、加圧成形法でペレットを作成後、または、電融法のインゴットを解砕してペレットを作成後、これらのペレット表面を研磨して、蒸着材の表面粗さRaが1.0μm〜10μmの範囲に設定することにより、上記のようなMgO蒸着材を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法の実施例において、実表面積/外形面積の比と成膜速度との関係を示すグラフである。
【図2】 本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法の実施例において、表面粗さRaと成膜速度との関係を示すグラフである。
【図3】 本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法の実施例において、実表面積/外形体積の比と成膜速度との関係を示すグラフである。
【図4】 本発明に係る蒸着材、MgO蒸着材およびその製造方法の実施例において、比表面積と成膜速度との関係を示すグラフである

Claims (4)

  1. MgO蒸着材を製造する方法において、
    平均粒径50μm以上の粉末または顆粒粉とされMgO純度が99.0%以上かつ相対密度が90.0%以上であるMgO原料粉末と室温での表面張力が2×10−2N/m〜8×10−2N/mの溶媒を用いたバインダ液とを混合および/または造粒して平均粒径を100μm以上の造粒粉とし、この造粒粉をプレス成形して成形体とし、この成形体を焼成して焼結体ペレットとする際に、前記成形体における表面粗さRaを1.0μm〜10μmの範囲に設定することを特徴とするMgO蒸着材の製造方法。
  2. 前記焼結体ペレットの平均結晶粒径を1〜500μmとすることを特徴とする請求項1記載のMgO蒸着材の製造方法。
  3. 前記焼結体ペレットの結晶粒内の気孔の平均内径を10μm以下とすることを特徴とする請求項1記載のMgO蒸着材の製造方法。
  4. 請求項1からのいずれか記載の製造方法により製造されたことを特徴とするMgO蒸着材。
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