JP2007056299A - 蒸着材用酸化マグネシウム粉末および蒸着材用成型物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 BET法による比表面積が3〜5m2/gの範囲にある多結晶酸化マグネシウム粉末を蒸着材の材料とすることにより、蒸着材成型物の生産効率の向上と蒸着時のスプラッシュ防止を図る。
【選択図】なし
Description
酸化マグネシウム膜は耐スパッタ性に優れ、かつ仕事関数が小さく二次電子放出係数が大きいので、特にAC型PDPの誘電体層表面の保護層としては、特許文献1に記載されているように古くから公知であったが、TFT(薄膜トランジスタ)の量産技術が向上したことにより、プラズマディスプレイパネルが実用化されるようになったことから膜の形成方法、原料である酸化マグネシウムそのものの特性などについて種々の改良がなされるようになった。
酸化マグネシウム膜の形成方法は、スクリーン印刷法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法(以下“EB蒸着法”と称する)またはイオンプレーティング法が有効であることが特許文献1〜3等に記載されていが、最近では、EB蒸着法またはイオンプレーティング法が広く利用されている。
(1)マグネシウムスラリーの調製
酸化マグネシウム粉末とバインダを適当な分散媒に分散させてマグネシウムスラリーを作製する。酸化マグネシウム粉末の製法については、気相酸化反応法等があるが蒸着源の原料としては、不純物を含まない高純度の酸化マグネシウム粉末が適しているとされる。バインダはポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の水溶性ポリマーを用いる。分散媒としては、水またはエタノール等の有機溶媒が用いられる。
(2)湿式混合・粉砕
上記マグネシウムスラリーを、必要ならばさらに他の物質を添加して混合する。混合は、ミキサーあるいは湿式ボールミル、攪拌ミル等の湿式粉砕機を用いて行うことができる。
(3)スプレー乾燥
次工程の成型が安定して行われるように、混合物(スラリー)をスプレー乾燥して、平均粒径が200〜300μmの造粒粉末を得る。
(4)打錠
造粒粉末を打錠機あるいはプレス成型機を用いて、1〜2t/cm2の圧力で所定の形状に成型する。
(5)焼成
成型体をさらに脱脂、焼成してペレット状の蒸着材を得る。脱脂を、350〜600℃で行ったのち1,500〜1,700℃で焼成を行う。
あるいは、酸化マグネシウム粉末をアクリル樹脂、水溶化剤、助溶剤に分散させ、スクリーン印刷法により誘電体表面に印刷し、これを焼成することにより酸化マグネシウム膜を成膜する方法によっても可能である。
また、当該文献には、そのような多結晶ペレットを作製する方法について以下のように開示されている。すなわち、純度が99.0%以上で、平均粒径が0.1〜10μmのMgO粉末を原料として用い、次にこの粉末とバインダと有機溶媒とを混合して濃度が45〜75重量%のスラリーを調製し、このスラリーに空気等の気体を吹込んで混入し混ガススラリーとし、混ガススラリーを噴霧乾燥して平均粒径が50〜300μmの造粒粉末を得、さらに造粒粉末を所定の型に入れて所定の圧力で成形し、成形体を所定の温度で焼結することによって前記多結晶ペレットが得られる。
酸化マグネシウム膜のピンホール発生防止、剥離防止、膜の緻密性の向上、および膜質の均一性確保のためには、酸化マグネシウム蒸着材の純度の向上およびスプラッシュの防止が必要である。
酸化マグネシウム蒸着材の純度は、原料である酸化マグネシウム粉末の純度に大きく依存するので、前記特許文献4および8において開示されているように、高純度の酸化マグネシウム粉末を使用することによって、蒸着材の純度は保証される。
成膜効率を上げて生産性を向上させるためにはスプラッシュを防止して蒸着効率を上げる、あるいは特許文献5あるいは7に記載されているような方法で、蒸着材の表面積を増大させて蒸発速度を上げる必要がある。また、スプラッシュの防止には、特許文献3、6および8に記載されているようにペレットの場合にはペレットサイズの大型化が有効であるが、打錠障害すなわちキャッピング(はがれ)やチッピング(破片化)等が発生しやすいため径がφ5mm以上のペレットは作製が困難である。
しかしながら、蒸着用ペレットに関しては、依然として打錠障害により歩留まりが悪く、また、スプラッシュのために、蒸着材の量に対する実際に蒸着された酸化マグネシウムの量は50%に満たないのが現状である。また、通常、酸化マグネシウムは、経時的に水和して水酸化マグネシウムに変化して生産効率の低下を引き起こす。したがって、生産性が高く、スプラッシュの起こりにくい蒸着材の開発が望まれている。
さらに、均質性の高い酸化マグネシウム膜を作製するために必要な高純度の酸化マグネシウムを得る方法について、特許文献4、5、6および8には何ら記載されておらず、特許文献7は、気相酸化反応法という非常に製造コストの高い方法である。
すなわち、塩化マグネシウムを原料として水熱処理によりBET法による比表面積が20m2/g以下の水酸化マグネシウムを合成し、さらに焼成することによりBET比表面積が3〜5m2/gの範囲にある酸化マグネシウムを合成し、得られた酸化マグネシウムとバインダおよび有機溶媒を湿式混合したのち、スプレー乾燥して造粒し、造粒物をペレットまたは顆粒に成型し、さらに焼成して高純度かつ高耐水和性の酸化マグネシウム蒸着材を得た。
また、蒸着材(ペレット、顆粒、粉末等)が効率よく、しかも低コストで製造できる方法が提供される。
塩化マグネシウムと水酸化ナトリウムを、塩化マグネシウムに対し水酸化ナトリウムを0.5〜0.95当量で、約145℃において水熱反応させ、濾過、水洗、乾燥してBET比表面積が20m2/g未満の水酸化マグネシウムを得る。得られた水酸化マグネシウムを約1,100〜1,600℃で約2時間焼成した後、ハンマーミル等で粉砕して、BET比表面積が3〜5m2/g、嵩密度(見掛比重)が1.5〜2.0ml/gの酸化マグネシウム粉末を得る。酸化マグネシウム粉末は、その累積50%粒子径(平均粒子径)が1〜2μmの範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は1.1〜1.5μmである。また酸化マグネシウム粉末は高純度であることが望ましく、具体的には重量で99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上であることが望ましい。
(i)で得られた酸化マグネシウム粉末と、ポリエチレングリコール、ポリビニルブチラールまたはBa−Sr−Gd複合アルコキシド溶液等のバインダを、エタノール、プロパノール等の有機溶媒に分散させる。このときの酸化マグネシウム濃度は、スラリー濃度が一定になるように30〜60%の範囲で調製することが好ましい。ただし、酸化マグネシウム濃度を高くするとスラリー粘度が高くなり作業効率が悪くなり、酸化マグネシウム濃度を低くするとスラリー粘度は低くなるが蒸着の生産効率が悪くなる。このスラリーをボールミル等で湿式混合・粉砕し、さらにスプレードライヤーで噴霧乾燥して造粒する。
次に、造粒物をプレス成型機でペレット状に成型加工する。このときの打錠圧は、1〜2t/cm2の範囲が好ましい。
最後に、ペレットを600℃で2時間脱脂し、さらに1,650℃で2時間焼成し酸化マグネシウム蒸着材を得る。
最後に行う焼成は、粒子間に結合を形成させ、気孔を除いてペレットに強度を与えるために必要な工程であり、(i)において行った焼成温度より高温で、しかも酸化マグネシウムの融点未満、すなわち1,600℃〜2,800℃の温度、好ましくは1,600℃〜2,000℃の温度で行う。
(i)で得られた酸化マグネシウム粉末または上記スプレードライヤーで噴霧乾燥した造粒物を、ローラコンパクター等でロール締めし、さらに粉砕することにより顆粒状の酸化マグネシウムを得ることができる。本発明の酸化マグネシウム粉末をもとに作製した顆粒状の酸化マグネシウムは、1.3〜1.5ml/g程度の嵩密度を示し、このような顆粒状酸化マグネシウムは、酸化マグネシウム粉末よりハンドリングが容易であり、生産性向上のためにも有効である。
また、イオンプレーティングの場合は、スプレードライヤーで噴霧乾燥して得た酸化マグネシウム粉末をそのまま蒸着源とすることもできる。
また、本発明の方法によれば、気相酸化反応法による酸化マグネシウムや電融マグネシアを用いる方法と異なり、低コストで高純度の酸化マグネシウム蒸着材が得られる。
さらに、本発明の方法で作製された酸化マグネシウム蒸着材は、高純度であり前述のように水和して水酸化マグネシウムに変化しにくいので、成膜工程において、スプラッシュが発生せず、均一な酸化マグネシウム膜を形成させることができる。
上記BET比表面積が3〜5m2/gの酸化マグネシウム粉末を得るためには、水酸化マグネシウムを焼成する際の温度を約1,100〜1,600℃に設定することが肝要である。焼成温度が1,100℃未満以下であると、生成する酸化マグネシウム粉末のBET比表面積は5m2/gを超え、1,600℃を超える温度で焼成するとBET比表面積は3m2/g未満になる。
(1)BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末よりなる蒸着材用酸化マグネシウム粉末。
(2)BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末を加圧成型し、焼成して得られる酸化マグネシウム蒸着材用成型物。
(3)BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末を加圧成型し、次いで焼成することを特徴とする酸化マグネシウム蒸着材用成型物の製造方法。
1.5mol/Lの塩化マグネシウム水溶液(液温15℃)5Lに、10mol/LのNaOHを塩化マグネシウムに対し、0.9当量に相当する1.35Lを約10分間で全量加えた。得られたサスペンジョンをオートクレーブに入れ、145℃で2時間水熱処理した。水熱処理後、水で十分洗浄し、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウムを得た。
上記水酸化マグネシウムを1,380℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が3.7m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを1,350℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が4.4m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを1,300℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が3.7m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを1,280℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が4.1m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを890℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が8.0m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを950℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が7.1m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを1,000℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が5.7m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
上記水酸化マグネシウムを1,650℃で2時間焼成した後、ハンマーミルで粉砕して、BET比表面積が2.1m2/gの酸化マグネシウム粉末を得た。生成した酸化マグネシウム粉末の諸特性を表1に示す。
実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−4で得られたそれぞれの酸化マグネシウム粉末とポリエチレングリコールを、酸化マグネシウム濃度が30wt%になるようにしてエタノールに分散させてスラリーとし、このスラリー 100kgをボールミル(ボール:φ2mm ZrO2ボール)で湿式混合・粉砕したのち、スプレードライヤー(回転円盤方式アトマイザー:回転速度 15,000rpm)で噴霧乾燥して造粒した。
さらに、造粒物を打錠機(D−8/エステック)でペレット状(φ20×t2.2mm)に成型加工した。このときの打錠圧は、1t/cm2であった。
最後に、ペレットを600℃で2時間脱脂し、さらに1,650℃で2時間焼成し酸化マグネシウム蒸着材成型物(φ14×t1.5mm)を得た。
実施例1−1の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
実施例1−2の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
実施例1−3の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
実施例1−4の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
比較例1−1の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
比較例1−2の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
比較例1−3の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
比較例1−4の酸化マグネシウム粉末を上記方法で、酸化マグネシウム蒸着材成型物を作製した。
本発明比較例の、BET比表面積が大きい酸化マグネシウム粉末を用いて蒸着材を作製する場合は、湿式混合・粉砕の工程で粘度上昇してハンドリングが困難になり、酸化マグネシウムの回収率(酸化マグネシウムの利用率)が低くなることが多い。さらに、続く噴霧乾燥の工程においては、高粘度の酸化マグネシウムにより、ノズルのつまり等を防ぐために、あるいは圧損が大きいため、乾燥機が過大な設備になる等多大な製造コストが要求される。
造粒物を打錠機でペレット状に1,000個成型加工したときの、打錠不良発生数を表2に示す。
比較例2−4で作製した蒸着材の写真を図2として示す。BET比表面積が小さい比較例の酸化マグネシウム粉末を用いて作製した蒸着材では明らかなチッピングが見られる。
表2に示す結果から、本発明の蒸着材用酸化マグネシウム粉末を用いて蒸着材成型物を作製することにより、φ20×t2mmという大型の蒸着材成型物であるにもかかわらず、蒸着材のキャッピングやチッピング等の打錠不良がなく、しかも酸化マグネシウムの利用効率が高いので、蒸着材成型物の生産効率が高いことがわかる。
分析、テストの方法および装置を以下に説明する。
(1)粒度分布の分析
方法:0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウムに試料粉末を添加し(濃度:wt1%)、超音波で3分間分散させ、粒子径を測定した。
装置:LA−910(HORIBA)
(2)BET比表面積の測定
方法:3点法による
装置:NOVA2000高速比表面積/細孔分布測定装置(ユアサ アイオニクス)
(3)不純物濃度の分析
方法:ICPによる
装置:ICP発光分光分析装置 SPS1500 RV(セイコー電子工業)
(4)粘度測定
方法:酸化マグネシウム濃度を30wt%にしてB型粘度計により測定した
装置:プログラマブルデジタル粘度計 DV−II+(BROOKFIELD社製)
スピンドル2を使用 回転速度12rpm 20秒測定
(5)吸油量の測定
方法:JISK5101に準拠した方法で行った
(6)ロール締めの方法
方法:ローラコンパクターを用いる
装置:ローラコンパクター WP−300×300V(ターボ工業)
(7)嵩密度(見掛比重)の測定
方法:JISK6220に準拠した方法で行った
Claims (3)
- BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末よりなる蒸着材用酸化マグネシウム粉末。
- BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末を加圧成型し、焼成して得られる酸化マグネシウム蒸着材用成型物。
- BET比表面積が3〜5m2/gの範囲である酸化マグネシウム粉末を加圧成型し、次いで焼成することを特徴とする酸化マグネシウム蒸着材用成型物の製造方法。
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JP2008255481A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-10-23 | Mitsubishi Materials Corp | 蒸着材 |
JP2010077002A (ja) * | 2008-09-29 | 2010-04-08 | Tateho Chem Ind Co Ltd | 特殊な構造の酸化マグネシウム焼結体及びpdp保護膜用蒸着材 |
WO2012127771A1 (ja) * | 2011-03-24 | 2012-09-27 | タテホ化学工業株式会社 | 酸化マグネシウム焼結体の製造方法 |
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