JP2008266767A - フッ化物コート膜形成処理液およびフッ化物コート膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁石への絶縁膜形成方法において、塗布膜の不均一化,熱処理工程における長時間化,高温化等の原因により、十分な磁気特性向上を図ることが困難であるという問題を改善する方法を提供する。
【解決手段】磁性粉体、磁性金属板、又は磁性体金属板ブロックのいずれかである磁性体に対し、アルコールを主成分とする溶媒と、前記溶媒中に分散した希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物とで構成され、X線回折で検出されるピークの少なくとも1つは1度よりも大きい半値幅を有する処理液を塗布する。
【選択図】図5

Description

本発明は、磁性体へのフッ化物コート膜形成の処理液、及びフッ化物コート膜形成の方法に関するものである。
近年、磁石の特性向上のため、磁性体表面にフッ化物絶縁膜を形成する技術が開発されている。この絶縁膜形成に関する公知文献としては、下記特許文献1−5がある。
下記特許文献1には、フッ化物を含む溶液を使用して結晶質または非晶質のフッ化物を主成分とする膜をNdFeB表面に形成させ、フッ化物あるいは反応などによって形成する酸フッ化物の厚さは1−100nmと層状で保磁力の増大,保磁力の温度係数低減,Hkの増加などの磁気特性の改善効果ならびに高抵抗化に関する記載ならびにゲル化したNdF3 の使用に関する記載がある。
また、下記特許文献2には、ゲルを用いて磁性粉末や焼結体に塗布後、熱処理してフッ素化合物を形成することが記載されている。
また、下記特許文献3には、ゲル化したフッ素化合物を使用して表面にフッ素化合物を主成分とする膜を形成し、粒径1−20nmのフッ素化合物が成長し、フッ素化合物と磁性体の間で拡散反応が生じていることが記載されている。
また、下記特許文献4には、ゾル液を用いてフッ素を含む層を形成することが記載されNdFeB系磁性体表面のフッ素化合物の構造がREF3からREF2に熱処理により変化することが説明されており永久磁石式回転機に関する応用例が示されている。
また、下記特許文献5には、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とする溶媒に膨潤され、ゲル状態の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に分散した処理液という記載があり、NdFeB焼結体表面への塗布と磁気特性,電気特性ならびに信頼性向上が可能なことが記載されている。
特開2006−66853号公報 特開2006−66870号公報 特開2006−233277号公報 特開2006−238604号公報 特開2006−283042号公報
磁性体表面にフッ化物絶縁膜を形成する技術では、塗布膜の均一性,塗布後の母相との反応の低温化,熱処理時間の短時間化等の観点から、フッ素コート膜を形成するための最適な塗布液(処理液)を検討する必要がある。
上記特許文献1−4では、フッ化物を含む溶液,ゲル化したフッ素化合物、若しくはゾル液を用いてフッ化物絶縁層を形成しているが、処理液の構造について記載されていない。また、上記特許文献5には、処理液について記載はあるが、絶縁膜形成に適した構成について検討されておらず、溶液を構成する主成分の原子間距離や面間隔などに関する検討は成されていない。このため、従来のフッ化物絶縁膜の形成技術では、塗布膜の不均一化,熱処理工程における長時間化,高温化等の原因により、十分な磁気特性向上を図ることが困難であるという問題があった。
本発明はこのような課題をもととしたものであり、その目的は、従来よりもフッ素を含む層を低温かつ連続的に適切な膜厚で形成することができるフッ化物コート膜形成処理液、およびフッ化物コート膜形成方法を提供することである。
本発明では、ゾル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に分散されてなるものを処理液として使用し、フッ素化合物溶液が処理面と面接触するため、粉砕フッ素化合物粉を使用する場合よりもフッ素化合物との反応が低温で生じることや、フッ素化合物の使用量低減,塗布の均一性向上,拡散距離の増加などが利点として挙げられ、低温度でフッ素あるいは希土類元素の拡散が可能である。
本発明の一つの特徴は、フッ化物コート膜を形成する処理液を、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤されており、ゾル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に分散されてなるものとする点にあり、さらにフッ化物コート膜を形成する方法を、コート膜処理対象物に希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成する方法において、コート膜対象物を希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤されたゾル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の平均粒径が10μm以下まで粉砕され、かつアルコールを主成分とした溶媒に混合する工程を有する方法により、構成元素の構造を反映した面間隔に分布が生じ、希土類元素あるいはアルカリ土類元素とフッ素から構成されるフッ素化合物の結晶構造よりも周期構造に分布があるという点にある。
本発明の具体的構成としては、アルコールを主成分とする溶媒と、前記溶媒中に分散した希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物と、で構成され、X線回折で検出されるピークの少なくとも1つは、1度よりも大きい半値幅を有する処理液の構成が挙げられる。また、前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物は、前記溶媒中にゾル状又はゲル状で分散した処理液の構成をとる。また、前記溶媒中における前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物の濃度は、0.1g/dm3以上100g/dm3 以下である処理液の構成をとる。また、前記希土類又はアルカリ土類金属は、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Mg,Ca,Sr,Baのうちの一種類以上を含む処理液の構成をとる。また、前記アルコールは、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコールのうちの一種類以上で構成される処理液、或いは前記アルコールを主成分とする溶媒は、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコールのうちの一種類以上を50wt%以上100wt%未満含有し、かつ、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンのうちの一種類以上を0wt%よりも多く50wt%以下含有する処理液の構成をとる。
また、前記X線回折で検出されるピークは複数存在し、かつ各ピークが、面間隔1.0オングストローム以上4.5 オングストローム以下の範囲に対応する回折角度に検出される処理液の構成をとる。また、前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物は、前記溶媒中にゾル状で分散した処理液の構成をとる。また、前記X線回折で検出されるピークは複数存在し、夫々のピークが1度よりも大きい半値幅を有する処理液の構成をとる。また、前記X線回折で検出されるピーク構造は、REnFmで示されるフッ素化合物(REは希土類又はアルカリ土類元素、Fはフッ素、m及びnは正数を表す)又は該フッ素化合物に酸素を含有した酸フッ素化合物と異なるピーク構造である処理液の構成をとる。
本発明のその他の特徴、構成については、以下の発明を実施するための最良の形態欄で説明する。
本発明のフッ化物コート膜処理液及びフッ化物コート膜処理方法によれば、フッ素を含む層を連続的に適切な膜厚で形成することができる。
本発明はR−Fe−B(Rは希土類元素)系あるいはR−Co系磁石の保磁力とB−Hループの第2象限における角型性を向上させ、結果としてエネルギー積を向上させることが可能である。また、本発明は耐水性の高いコート膜を金属又は金属酸化物の表面に有するため耐食性の向上が可能で、かつ粉体表面の絶縁性のコート膜により渦電流の低減も可能である。また、更に本発明のコート膜は600℃以上の耐熱性を有するため圧粉磁心においては焼鈍が可能でありヒステリシス損の低減化を可能にする。従って、本発明のコート膜を有する希土類磁石用磁粉または軟磁性粉を用いて作製した希土類磁石または圧粉磁心は、交流磁界などの変動磁界にさらされる磁石または磁心の渦電流損失およびヒステリシス損を抑え、渦電流損失およびヒステリシス損失に伴う発熱低減が実現でき、表面磁石モータ,埋め込み磁石モータなどの回転機あるいは高周波磁界中に磁石および磁心が配置されるMRI,限流素子などに使用できる。
上記目的を達成するために、粒界あるいは粉末表面に沿って、磁気特性を保持しながら金属フッ化物、あるいは酸素または炭素を含有したフッ化物,フッ素及び希土類元素に濃度勾配がある粒界近傍層を含む層を形成することが必要となる。NdFeB磁石の場合、Nd2Fe14Bが主相であり、Nd相およびNd1.1Fe44相が状態図に存在する。NdFeBの組成を適正化して加熱すれば、Nd相あるいはNdFe合金相が粒界に形成される。この高濃度のNdを含む相は酸化し易く、一部酸化層が形成される。フッ素を含む層はこれらのNd相,NdFe合金層あるいはNd酸化層の母相の粒内中心部からみて外側に形成する。フッ素を含む層には、アルカリ土類金属や希土類元素の少なくとも1元素がフッ素と結合した原子対を含んでいる。フッ素を含む層は、上記Nd2Fe14B,Nd相,NdFe相あるいはNd酸化層に接触して形成される。Nd2Fe14B よりもNdあるいはNdFe相が低融点であり、加熱により拡散し易く、組織あるいは構造が変化する。Nd、NdFe相あるいはNd酸化層の厚さよりも、アルカリ土類あるいは希土類元素のフッ素を含む層、あるいはフッ素の濃度勾配部、または希土類元素の濃度勾配部の平均厚さは厚くすることが重要であり、このような厚さにすることにより、渦電流損の低減、あるいは高い磁気特性をもつことができる。NdFeB系など希土類元素を少なくとも1種類以上含有する強磁性材料の粉は、希土類元素を含むため酸化され易い。取り扱いやすいようにするため、酸化した粉末を使用して磁石を製造する場合もある。このような酸化層が厚くなると磁気特性が低下するが、フッ化物を含む層の安定性も低下する。酸化層が厚くなると、400℃以上の熱処理温度でフッ化物を含む層に構造的変化が認められる。フッ化物を含む層と酸化層との間で拡散と合金化(フッ化物と酸化物の拡散,合金化)が起きる。
次に本発明を適用できる材料について説明する。フッ化物を含む層には、CaF2,MgF2,SrF2,BaF2,LaF3,CeF3,PrF3,NdF3,SmF3,EuF3,GdF3,TbF3,DyF3,HoF3,ErF3,TmF3,YbF3,LuF3及びこれらフッ化物の組成の非晶質、これらのフッ化物を構成する複数の元素から構成されたフッ化物、これらのフッ化物に酸素あるいは窒素あるいは炭素などが混合した複合フッ合物、これらのフッ化物に主相に含まれる不純物を含む構成元素が混入したフッ化物、あるいは上記フッ化物よりもフッ素濃度が低いフッ化物である。このようなフッ化物を含む層を均一に生成させるには、強磁性を示す粉の表面に、溶液を利用した塗布法が有効である。希土類磁石用磁粉は非常に腐食され易いため、スパッタリング法,蒸着法により、金属フッ化物を形成する手法もあるが、金属フッ化物を均一厚にするのは手間がかかりコスト高になる。一方、水溶液を用いた湿式法を用いると希土類磁石用磁粉は容易に希土類酸化物を生成するため好ましくない。本発明では希土類磁石用磁粉に対して濡れ性が高く、イオン成分を極力除去可能なアルコールを主成分とした溶液を用いることで、希土類磁石用磁粉の腐食を抑え、かつ金属フッ化物の塗布が可能であることを見出した。
金属フッ化物の形態については希土類磁石用磁粉に塗布するという目的から固体状態は好ましくない。固体状態の金属フッ化物を希土類磁石用磁粉に塗布したのでは、希土類磁石用磁粉表面に連続的な金属フッ化物による膜を形成することができないからである。本発明では希土類、およびアルカリ土類金属イオンを含む水溶液にフッ化水素酸を添加するとゾルゲル反応を起こすことに着目し、溶媒である水をアルコールに置換えするとイオン成分も同時に除去可能であることを見出した。更に、超音波攪拌を併用することでゲル状態であった金属フッ化物をゾル化でき、希土類磁石用磁粉の表面に対して金属フッ化物の均一膜を形成するのに最適な処理液になることを見出した。このゾル状態あるいは溶液の構造は希土類フッ素化合物や希土類フッ素化合物などの結晶構造と異なり、回折ピークがブロードである特徴を持っている。これはアルコールなどの溶媒にフッ素と金属元素が膨潤されているためであり、金属元素とフッ素の間の原子間距離の周期性が上記結晶構造よりも周期構造に幅がある。このようなゲルを使用した溶液は光透過性があり、低粘度にすることも可能なため、以下のような特徴が期待できる。1)微小クラックや微小穴の壁面に沿って処理が可能である。2)凹凸のある粉末表面に沿って処理可能である。3)基板表面に均一な膜厚の溶液塗布が可能であり、各種ウエハープロセス(各種パターニングプロセス)に適用できる。4)粉末塗布にくらべ膜厚の均一性が得られる。5)粉末塗布よりも拡散反応が低温で進行する。6)金属元素とフッ素の濃度比率を制御可能。7)各種粉末を混合した溶液を作製・塗布可能。8)粉末塗布よりも低温で反応が進むため、拡散長が伸びる。9)低温で還元反応が進行する。10)粉末を使用しないのでクリーンな環境が要求されるプロセスに適応可能。11)nmレベルで塗布膜厚の制御が容易であり、種類の異なるフッ素化合物溶液の塗布あるいは、微細粉末と混合させた溶液塗布が可能。
12)膜厚管理により拡散に必要な分量で塗布可能であり、塗布材料の利用効率が高い。
13)磁粉あるいは磁性粒子と混合することで塗布磁性体を形成できる。
金属フッ化物を含む層は、焼結後の高保磁力化のための熱処理前あるいは熱処理後のどちらの工程でも形成でき、希土類磁石用磁粉表面がフッ化物を含む層で覆われた後、磁界配向させ、加熱成形して異方性磁石を作製できる。異方性付加のための磁界を印加せず、等方性の磁石を製造することも可能である。また、フッ化物を含む層で被覆された希土類磁石用磁粉を1200℃以下の熱処理温度で加熱することにより高保磁力化した後に、有機材料と混合させてコンパウンドを作製し、ボンド磁石を作製できる。希土類元素を含む強磁性材料には、Nd2Fe14B,(Nd,Dy)2Fe14B,Nd2(Fe,Co)14B,(Nd,Dy)2(Fe,Co)14Bなどを主相とする材料、あるいはこれらのNdFeB系にGa,Mo,V,Cu,Zr,Tb,Pr,Nb,Tiを添加した粉、Sm2Co17 系のSm2(Co,Fe,Cu,Zr)17 あるいはSm2Fe173等が使用できる。コート膜形成処理液中の希土類フッ化物,遷移金属系フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤させるのは、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物ゲルがゼラチン状の柔軟な構造を有することと、アルコールが希土類磁石用磁粉に対して優れた濡れ性を有することが明らかになったからであり、アルコールを主成分とした溶媒にすることにより、非常に酸化され易い希土類磁石用磁粉の酸化の抑制が可能となった。
一方、希土類フッ化物コート膜形成処理液に水を溶媒として添加する場合、一度溶媒をアルコールに置換えしてからが好ましい。これは不純物としてのイオン性成分を除くことが希土類磁石用磁粉の酸化の抑制効果があるからである。ここで水を希土類フッ化物コート膜形成処理液に添加するのは、希土類フッ化物中の希土類元素によっては水を含んでいることによりゼラチン状にゲル化し易くなる条件の時である。また、熱処理条件が希土類磁石用磁粉にとって酸化され易い場合はベンゾトリアゾール系の有機防錆剤の添加が有効である。
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の濃度に関しては希土類磁石用磁粉表面に形成する膜厚に依存するが、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に膨潤されており、ゾル状態の該希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物がアルコールを主成分とした溶媒に分散された状態を保つためには、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物の濃度の上限がある。濃度の上限については後述するが、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物に対してアルコールを主成分とした溶媒に膨潤させ、かつアルコールを主成分とした溶媒中に分散させた処理液とするため、溶媒中における希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物の濃度は、0.1g/dm3以上100g/dm3以下であることが好ましい。
また、処理液に用いる希土類又はアルカリ土類金属そして、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Mg,Ca,Sr,Baのうちの一種類以上を含む構成とすることができる。
処理液に用いるアルコールは、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコールのうちの一種類以上で構成されるものとすることができ、また、アルコールを主成分とする溶媒は、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコールのうちの一種類以上を50wt%以上100wt%未満含有し、かつ、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンのうちの一種類以上を0wt%よりも多く50wt%以下含有する構成とすることができる。
希土類フッ化物コート膜形成処理液の添加量は、希土類磁石用磁粉の平均粒径に依存する。希土類磁石用磁粉の平均粒径が0.1μm 以上500μm以下の場合、希土類磁石用磁粉1kgに対して300〜10mlが望ましい。これは処理液量が多いと溶媒の除去に時間を要するだけでなく、希土類磁石用磁粉が腐食し易くなるためである。一方、処理液量が少ないと希土類磁石用磁粉表面に処理液の濡れない部分が生じるためである。
また、希土類磁石としてはNd−Fe−B系,Sm−Fe−N系,Sm−Co系等の希土類を含有する材料などFe系,Co系,Ni系磁性材料すべてに適用可能である。
本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
<実施例1>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばLaの場合は酢酸La、または硝酸La4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をLaF3 が生成する化学反応の当量分徐々に加え た。
(3)ゲル状沈殿のLaF3 が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪 拌した。
(4)4000〜6000r.p.m の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のLaF3 を含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波 攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)最終的にLaF3 の場合、ほぼ透明なゾル状のLaF3 となった。処理液としては LaF3 が1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液について、表1に纏めた。
Figure 2008266767
表1では、処理液用に用いた夫々の金属(フッ素化合物溶液構成元素)について、処理液の状態でX線回折したピークの半値幅(ゲルの半値幅),絶縁処理対象物に塗布後にX線回折したピークの半値幅(塗布膜の半値幅),絶縁処理対象物に塗布後に熱処理して得られる絶縁物(熱処理後の主生成相)、を表している。
X線にはCuKα線を使用しθ−2θ走査により適当なスリットを使用して回折パターンを測定し、得られたピーク値から面間隔を求め回折ピークの半値幅を求めた。
この結果、何れの希土類又はアルカリ土類金属を用いて処理液を構成した場合においても、上記手順をとることにより、REnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)で示されるフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物とは異なるX線回折パターンを有することが分かった。また回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは金属元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が配置しているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。このREnFmの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪く均一に塗布するのは困難である。
次に、希土類磁石用磁粉にはNdFeB合金粉末を用いた。この磁粉は、平均粒径が100μmで磁気的に異方性がある。希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を希土類磁石用磁粉に形成するプロセスは以下の方法で実施した。
NdF3コート膜形成プロセスの場合:NdF3濃度1g/10mL半透明ゾル状溶液
(1)平均粒径が70μmの希土類磁石用磁粉100gに対して15mLのNdF3 コー ト膜形成処理液を添加し、希土類磁石用磁粉全体が濡れるのが確認できるまで混合し た。
(2)(1)のNdF3 コート膜形成処理希土類磁石用磁粉を2〜5torrの減圧下で溶媒 のメタノール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石用磁粉を石英製ボートに移し、1×10-5 torrの減圧下で200℃、30分と400℃、30分の熱処理を行った。
(4)(3)で熱処理した磁粉に対して、蓋付きマコール製(理研電子社製)容器に移し たのち、1×10-5torrの減圧下で、800℃、30分の熱処理を行った。
(5)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉の磁気特性を調べた。
(6)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉を用いて、金型中に装填し、不活性ガス 雰囲気中で10kOeの磁場中で配向し、成形圧5t/cm2の条件で加熱圧縮成形し た。成形条件は700℃、7mm×7mm×5mmの異方性磁石を作製した。
(7)(6)で作製した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上のパルス磁界を印加し た。その磁石について磁気特性を調べた。
その他の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成して上記(1)〜(7)のプロセスで作製した磁石の磁気特性について調べた。
この結果、各種希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成した磁粉およびその磁粉を用いて作製した異方性希土類磁石はコート膜を有していない磁粉およびその磁粉を用いて作製した異方性希土類磁石と比較して、磁気特性は向上し、比抵抗は大きくなることが明らかになった。特に、TbF3,DyF3コート膜を有する磁粉およびその磁粉を用いて作製した異方性希土類磁石は磁気特性が大きく向上し、LaF3,CeF3,PrF3,NdF3,TmF3,YbF3,LuF3 コート膜を有する磁粉を用いて作製した異方性希土類磁石は比抵抗が大きく向上することが確認できた。
<実施例2>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液には実施例1に示した方法で作製した溶液を用いた。溶液のX線回折パターンにはREnFmと同定できる回折ピークはほとんど認められず、検出された主要回折ピークの半値幅は2〜10度であった。このことから溶液は流動性の悪い固相をほとんど含んでいないことがわかる。各フッ素化合物溶液に使用するゲルの半値幅及びNdFeB表面に塗布したままの状態でのX線回折ピークの半値幅を表1に示す。表に示すゲルあるいは塗布膜のすべての回折ピークが1度よりも大きく、非晶質に近いパターンをもっている。本実施例において、希土類磁石用磁粉には、組成を調整した母合金を急冷することにより作製したNdFeB系のアモルファス薄帯を粉砕した磁性粉を用いた。すなわち、母合金を単ロールや双ロール法などのロールを用いた手法で、回転するロールの表面に溶解させた母合金をアルゴンガスなどの不活性ガスにより噴射急冷した。また、雰囲気は不活性ガス雰囲気あるいは還元雰囲気,真空雰囲気である。得られた急冷薄帯はアモルファスあるいはアモルファスに結晶質が混合している。この薄帯の平均粒径が300μmになるように粉砕,分級した。このアモルファスを含む磁粉は、加熱することにより結晶化し主相がNd2Fe14B の磁粉となる。
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を希土類磁石用磁粉に形成するプロセスは以下の方法で実施した。
LaF3コート膜形成プロセスの場合:LaF3濃度5g/10mL半透明ゾル状溶液
(1)平均粒径が300μmの希土類磁石用磁粉100gに対して5mLのLaF3 コー ト膜形成処理液を添加し、希土類磁石用磁粉全体が濡れるのが確認できるまで混合し た。
(2)(1)のLaF3 コート膜形成処理希土類磁石用磁粉を2〜5torrの減圧下で溶媒 のメタノール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石用磁粉を石英製ボートに移し、1×10-5 torrの減圧下で200℃、30分と400℃、30分の熱処理を行った。
(4)(3)で熱処理した磁粉に対して、蓋付きマコール製(理研電子社製)容器に移し たのち、1×10-5torrの減圧下で、800℃、30分の熱処理を行った。
(5)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉の磁気特性を調べた。
(6)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉と100μm以下のサイズの固形エポキ シ樹脂(ソマール社製EPX6136)を体積で10%になるようにVミキサーを用 いて混合した。
(7)(6)で作製した希土類磁石用磁粉と樹脂とのコンパウンドを金型中に装填し、不 活性ガス雰囲気中で10kOeの磁場中で配向し、成形圧5t/cm2 の条件で70℃ の加熱圧縮成形した。7mm×7mm×5mmのボンド磁石を作製した。
(8)(7)で作製したボンド磁石の樹脂硬化を窒素ガス中で170℃、1時間の条件で 行った。
(9)(8)で作製したボンド磁石に30kOe以上のパルス磁界を印加した。その磁石 について磁気特性を調べた。
その他の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成して上記(1)〜(9)のプロセスで作製した磁石の磁気特性について調べた。
この結果、各種希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成した急冷磁粉およびその磁粉を用いて作製した希土類ボンド磁石はコート膜を有していない急冷磁粉およびその磁粉を用いて作製した希土類ボンド磁石と比較して、磁気特性は向上し、比抵抗は大きくなることが明らかになった。特に、TbF3,DyF3,HoF3,ErF3,TmF3 コート膜を有する急冷磁粉およびその磁粉を用いて作製した希土類ボンド磁石は磁気特性が大きく向上し、LaF3,CeF3,PrF3,NdF3,SmF3,ErF3,TmF3,YbF3,LuF3 コート膜を有する急冷磁粉を用いて作製した希土類ボンド磁石は比抵抗が大きく向上することが確認できた。
<実施例3>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液には実施例1に示した方法で作製したCaF2,LaF3溶液を用いた。CaF2,LaF3溶液の濃度は150g/dm3である。軟磁性粉として平均粒径が60μmの鉄粉,10μmのFe−7%Si粉,10μmのFe−50%Ni,30μmのFe−50%Co,20μmのFe−10%Si−5%Al粉,20μmのFe−10%Si−10%B粉を用いた。
以下にLaF3コート膜形成処理について記す。
(1)軟磁性粉1kgに対して100mLのLaF3 コート膜形成処理液を添加し、希土類 磁石用磁粉全体が濡れるのが確認できるまで混合した。
(2)(1)のLaF3 コート膜形成処理軟磁性粉を2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノ ール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った軟磁性粉を石英製ボートに移し、1×10-5torrの減 圧下で200℃、30分と400℃、30分の熱処理を行った。
(4)(3)で作製した希土類磁石用磁粉を金型中に装填し、成形圧15t/cm2 の条件 で外径28mm×内径20mm×厚さ5mmのリング状の磁気特性評価用テストピースを作 製した。
(5)(4)で作製したテストピースを窒素ガス中で900℃,4時間の条件で焼鈍を行 った。
(6)(5)で熱処理後のテストピースを用いて電気特性と磁気特性を評価した。
この結果、希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜を形成した各種軟磁性粉を用いて作製した圧粉磁心は希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜が高耐熱性を有するため、熱焼鈍を施した圧粉磁心の高比抵抗の維持が可能であった。そのため、渦電流損並びにヒステリシス損が低い値になり、その結果圧粉磁心の鉄損はその二つの和となるため各周波数において低い値になった。
<実施例4>
NdFeB焼結体は以下の手法で作製した。原料となるNd,Fe及びBはNd粉,Nd−Fe合金粉,Fe−B合金粉を真空あるいはArなどの不活性ガス中で高周波誘導装置などを使用して溶解させる。この時必要に応じて、高保磁力化のための希土類元素であるTb,Dyなどを添加したり、組織安定化のためにTi,Nb,Vなどを添加したり、あるいは耐食性確保,磁気特性確保のためにCoを添加する。溶解した母合金をスタンプミルやジョークラッシャーなどを用いて租粉砕後ブラウンミル等で粉砕,ジェットミルで細粉砕する。これを20kOe以下の磁界中で磁場に沿って容易磁化方向が揃うように配向させ400℃から1200℃の減圧下あるいは不活性ガス中で0.1tから20t/cm2の圧力で加圧焼成する。成形した10×10×5mm3 の異方性方向(10mmの方向)に20kOe以上の磁界で着磁率95%以上に着磁した。着磁率はフラックスメータにより着磁磁界とフラックス量の関係を測定した結果より評価した。
希土類フッ化物コート膜の形成処理液には実施例1に示した方法で作製したLaF3,NdF3溶液を用いた。LaF3,NdF3溶液の濃度は1g/dm3である。
(1)上記NdFeB焼結体のブロックをLaF3 コート膜形成処理中に浸漬し、そのブ ロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
(2)(1)の操作を5回繰り返した。
(3)(2)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上のパル ス磁界を印加した。
(4)(3)で作製した異方性磁石について塩水噴霧試験またはPCT試験を以下の条件 で行った。
・塩水噴霧試験:5%NaCl,35℃,200時間
・PCT試験:120℃,2atm、100%RH,1000時間
(5)(4)で塩水噴霧試験またはPCT試験を実施したその磁石について磁気特性を調 べた。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。また、10×10×5mm3 の成形体に周波数1kHzの1kOeの交流磁場を閉磁路回路に磁石を配置して、巻線コイルに交流電源を結線させることにより印加し、磁気特性を評価した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックは、塩水噴霧試験またはPCT試験後も、残留磁束密度,保磁力,最大エネルギー積の低下は認められなかった。それに対して、コート膜を形成していないNdFeB焼結体のブロックは磁気特性の低下が大きく特に塩水噴霧試験後は表面に赤錆も発生していた。上記の実施例では、磁粉の表面にコート膜を形成する例を説明したが、半導体装置の基板の表面に絶縁膜をコーティングする際にも、本発明のコート膜形成処理液及びコート膜形成処理方法を適用することができる。
以上のように本発明の希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物を用いて1μm〜1nm厚のコート膜を表面に形成した磁性粉,磁性体金属板、又は磁性体金属ブロックはコート膜を形成していない磁性粉,磁性体金属板、又は磁性体金属ブロックと比較して、磁気特性,電気特性,信頼性に優れている。
<実施例5>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。実施例1で示した手法により光透過性のある溶液を作製し上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により溶媒を除去する。このようにして形成した被膜についてXRD(X線回折)により調べた。その結果、加熱温度が200℃より低温では、X線回折ピークの半値幅がその後の熱処理後のピーク幅の2倍以上であり、半値幅が1度以上のブロードなピークが含まれている。このブロードなピークは前記REmFnなどの金属フッ素化合物や金属酸フッ素化合物の回折パターンと対応しない。200℃より高温側の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造は変化し、DyF3,DyF2,DyOF などから構成されていることが判明した。NdFeB系磁粉の粒径1から300μmの粉末を磁気特性が低下する熱処理温度である800℃未満の温度で酸化を防止しながら加熱することにより、表面に高抵抗層が形成された残留磁束密度0.8T以上の磁粉が得られる。粒径1μm未満では酸化し易く磁気特性が劣化し易い。また300μmよりも大きい場合、高抵抗化あるいは他の効果であるフッ素化合物形成による磁気特性改善効果が小さくなる。磁粉の磁気特性のうち、保磁力は600から800℃の熱処理により約10から20%増加し、減磁しにくくなる。得られた磁粉の磁気特性は、残留磁束密度0.8−1.0T,保磁力10−20kOeであり、磁粉の抵抗は被覆するフッ素化合物の膜厚により異なるが、50nm以上の膜厚であればM(メガ)Ωに達する。
<実施例6>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。DyF3を急冷粉表面に形成する場合、原料としてDy(CH3COO)3をH2O で溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のDyF3・XH2Oが形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去する。ゾル状態の希土類フッ化物濃度が10g/dm3 以上で該処理液の700nmの波長において光路長が1cmの透過率は5%以上である。このような光透過性のある溶液のX線回折ピークはブロードであり、回折ピークの半値幅は2から10度であり流動性がある。この溶液と上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させる。500℃の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造はNdF3構造,NdF2構造などから構成されていることが判明した。
熱処理後の磁粉断面を透過電子顕微鏡で観察した明視野像を図6に示す。母相の結晶粒径は50nm以下でありその結晶方位はほぼランダムであった。母相結晶粒よりも大きな板状の結晶が確認でき、図6の(1),(2)の矢印で示すように母相とは形態が異なる。(1)の板状体は長さ約250nmであり(2)で約150nmと母相の粒子(50nm以下)よりも大きい。
板状体の中にもコントラストが見られ、板状体も方位が異なるか、結晶粒に分かれているかあるいは歪が入っているためのコントラストと思われる。(1),(2)の板状体は図6のように母相の結晶粒によって隔てられ、連続しておらず、母相の結晶粒界すべてに成長していない。板状体の短軸の長さは約20−50nmであり、母相の結晶粒と同等かそれ以下の厚みとなっている。板状体の長軸/短軸の軸比は2から20であり、磁粉中央にも存在し、母相結晶粒界あるいは母相結晶粒内に成長している。板状体を囲むようにしてコントラストが見られ、板状体と母相の間に格子歪が存在していることを示唆している。この板状体は磁粉の外側に塗布されたフッ素化合物が熱処理により母相の結晶粒界を拡散したフッ素,希土類元素などが一部母相と反応して形成したものである。
図6の(1)の場所(径10nm)のEDXプロファイルを図7に示す。EDXのピークとしてフッ素(F),ネオジム(Nd),鉄(Fe)、及びモリブデン(Mo)がみられる。Moは電子顕微鏡の試料メッシュに使用しており、磁粉と関係ない。試料からのピークはF,Nd,Feの3元素である。このうち、母相にコートプロセスの前から存在していた元素はNd及びFeである。Fe:Nd:Fの比は14:15:71である。希土類元素:フッ素の比は種々評価した結果、1:1から1:7の範囲であった。また酸素や炭素のピークがフッ素を含むEDXプロファイルに認められる場合もあり、(1)や(2)の板状体はF,Nd,Dy,Fe,C,Oから構成されているものと考えられる。尚、BはEDXで検出できず不明であるが一部が拡散してフッ素とともに存在していても不思議ではない。(1)や(2)の板状体はフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物,酸フッ素炭素化合物のいずれかであるが、主は酸素が一部含まれるフッ素化合物あるいはフッ素が一部含まれる酸フッ素化合物である。上記板状体は、DyよりもNdを多く含んでいるが、板状体を形成するための拡散経路の一部はDyが板状体よりも多く含んでいる。このような結果から、板状体あるいは板状体の拡散経路の希土類元素,酸素及びフッ素の濃度分布が保磁力増加に寄与していると推定できる。すなわち、板状体が形成された拡散経路へのDyやNdの偏析、板状体のNdやDy及びフッ素の偏析により、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元が磁気特性向上に寄与しているものと考えている。
<実施例7>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は、酢酸希土類あるいは酢酸アルカリ土類金属を水に溶解後、希釈したフッ化水素酸を徐々に添加させた。ゲル状沈殿のフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物または酸フッ素炭化物が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて攪拌し、遠心分離後、メタノールを添加し、ゲル状のメタノール溶液を攪拌後、陰イオンを除去し透明化した。処理液は可視光において透過率が5%以上になるまで陰イオンを除去しており、処理液のX線回折パターンは半値幅1度以上の複数の回折ピークを含んでいた。この溶液を磁粉にコートし、溶媒を除去した。NdFeB系粉末としてNd2Fe14B を主構造とする急冷粉を作成し、これらの表面にDyフッ素化合物を形成する。上記のように光透過性のある溶液と上記NdFeB粉と混合後、混合物の溶媒を蒸発させる。200〜700℃の熱処理及び熱処理後の急冷によりフッ素化合物膜の結晶構造はNdF3構造,NdF2構造などになる。
熱処理後の磁粉断面を透過電子顕微鏡で観察した明視野像を図8に示す。明視野像に白い板状あるいは層状体がみられる。母相の結晶粒径は50nm以下であり、板状体の長軸は母相結晶粒よりも長いものが多く、短軸長は母相結晶粒と同等以下の長さである。また、板状体は複数の母相結晶粒に接触して成長し、長軸方向はほぼランダムであった。明視野像の下にF(フッ素)及びNd(ネオジム)分析像を示す。観察場所は明視野、F,Ndの分析像ともに同一場所である。明視野像で白く見えた板状体は、下のF,Nd分析像からわかるように、F及びNdの濃度が高い場所である。このことから、板状体は希土類元素とフッ素を含有していることがわかる。板状体の制限視野電子線回折像を観察した結果、希土類フッ素化合物の基本構造を有していた。その構造はNdF2,NdF3を基本構造としているが、部分的に酸素を含有しており、酸フッ素化合物になっている可能性もある。処理液のみを熱処理した結果、その構造はNdF3 構造であり、板状体のフッ素濃度は処理液のみから作製したフッ素化合物よりもそのフッ素濃度は低い。これは表面処理後の熱処理過程で磁粉外周のフッ素化合物と磁粉が反応し、外周のフッ素原子が希土類原子とともに移動することを示している。上記結果から、板状体あるいは板状体の拡散経路の希土類元素,酸素及びフッ素の濃度分布が保磁力増加に寄与していると推定できる。すなわち、板状体が形成された拡散経路付近へのDyやNdの偏析、板状体のNdやDy及びフッ素の偏析により、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元が磁気特性向上に寄与しているものと考えている。このような保磁力の向上,角型性向上,成形後の抵抗増加,保磁力の温度依存性低減、残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,機械的強度増加,熱伝導性向上,磁石の接着性向上のいずれかの効果が得られるフッ素化合物はDyF3以外にLiF,MgF2,CaF2,ScF3,VF2,VF3,CrF2,CrF3,MnF2,MnF3,FeF2,FeF3,CoF2,CoF3,NiF2,CuF2,CuF3,SnF2,SnF3,ZnF2,AlF3,GaF3,SrF2,YF3,ZrF3,NbF5,AgF,InF3,SnF2,SnF4,BaF2,LaF2,LaF3,CeF2,CeF3,PrF2,PrF3,NdF2,SmF2,SmF3,EuF2,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4,DyF2,NdF3,HoF2,HoF3,ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3,YbF2,LuF2,LuF3,PbF2,BiF3あるいはこれらのフッ素化合物に酸素や炭素を含んだ化合物であり、可視光線の透過性があり、X線回折パターンで半値幅が1度以上の回折ピークをもった溶液を使用した表面処理によってこれらの化合物を形成することができ、粒界や粒内に板状あるいは層状のフッ素化合物や酸フッ素化合物が認められた。これらの中で磁気特性向上を確認したフッ素化合物について表1に熱処理後の主な相の結晶構造をまとめて示す。NdF2構造及びNdF3構造の他に、希土類酸フッ素化合物と各処理液の構成成分からなる酸フッ素化合物が確認された。
<実施例8>
NdFeB系焼結磁石の表面にゲルあるいはゾル状の光透過性があり、かつX線回折パターンに1度以上の回折ピークがみられる希土類フッ素化合物溶液を塗布する。前記回折パターンにはブロードな1度以上の半値幅を有するパターンが主であり、このようなブロードな回折パターンにシャープな金属フッ素化合物あるいは金属酸フッ素化合物のパターンが混合していても良い。ここで半値幅とは回折ピークの積分幅またはピーク強度の1/2での幅のいずれでも良い。
Dy−F系ゲルのX線回折パターンを図5に示す。図5のうち、上図が本発明に係るDy−F系処理液のX線回折パターンを示し、下図が粉末状のDyF3 のX線回折パターンを示す。図5から分かるように、本発明の処理液では複数のシャープなピークが重なってブロードなピークになっている場合とは異なり、1度以上の非晶質の回折パターンに近いピークがみられる。最も低角側のパターンは保持材であり、面間隔1.0から4.5オングストロームの範囲に対応するブロードなピークがみられ、パターン60度を超える2θにもピークが見られ、単純な非晶質構造ではなく、DyF3 とは全く異なる構造であることがわかる。塗布後の希土類フッ素化合物の膜厚は1〜10000nmである。溶媒が除去されるとブロードな回折パターンにシャープな回折パターンが混合し、さらに加熱することでシャープな回折ピークの強度が増加する。NdFeB系焼結磁石はNd2Fe14Bを主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工研磨にともなう磁気特性の劣化がみられる。このような磁気特性劣化を改善するために、可視光線を透過する希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布乾燥後、500℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。ゲルあるいはゾル状希土類フッ素化合物溶液からは塗布乾燥直後50nm以下1nm以上の粒子に成長し、さらに加熱することで、焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後500℃以上の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。上記希土類フッ素化合物の中でもDyフッ素化合物あるいはTb,Hoフッ素化合物は、これらの構成元素であるDy,Tb,Hoなどが結晶粒界に沿って拡散し、磁気特性の劣化が改善される。熱処理温度が800℃以上になると、フッ素化合物と焼結磁石の相互拡散はさらに進行する。熱処理温度が高温になるほど、フッ素化合物層中への母相構成元素の濃度は増加する傾向になる。焼結磁石を積層して接着する場合、拡散させて磁気特性を向上させたフッ素化合物と同一または別の接着層となるフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を、上記熱処理後に塗布し、積層させてミリ波照射することで、接着層付近のみ加熱させて焼結磁石を接着することができる。接着層とするフッ素化合物はNdフッ素化合物など(NdF2-3,Nd(OF)1-3)あるいは、ゲル状フッ素化合物であり、ミリ波の照射条件を選択することにより焼結磁石中心部の温度上昇を抑えながら接着層付近のみ選択的に加熱することが可能であり、接着にともなう焼結磁石の磁気特性劣化や寸法変化を抑えることが可能である。このようなミリ波の効果が確認できるのは上記ゲル状化合物だけではなく、各種金属フッ素化合物粉(DyF3,TbF3,NdF3 など),金属酸フッ素化合物粉(DyOF,TbOFなど),金属窒素化合物粉,金属炭素化合物粉,金属酸化物粉なども使用できる。これらの粉末とFe系磁性材料との組み合わせにより局所加熱を利用でき、表面改質や接着,焼結が可能である。NdFeBと金属フッ素化合物系の組み合わせでは、ミリ波を使用することで選択加熱の熱処理時間は従来の熱処理時間の半分以下にすることができ、接着工程と同時に磁気特性向上が可能な量産に適している。ミリ波は焼結磁石の接着だけでなく、塗布材料の拡散による磁気特性改善にも使用でき、接着層としての機能はフッ素化合物以外にも酸化物や窒素化合物,炭化物,ゲル状フッ素化合物,ゲル状酸化物,ゲル状炭化物,水和物、あるいはこれらを含む溶液,スラリーなど誘電損失が母相のNdFeBと異なる材料を使用することで達成できる。ミリ波を使用しなくても加熱で拡散させることが可能であるが、このようにミリ波を利用することでフッ素化合部が特定の温度範囲で選択的に加熱され、磁性材料及び種々の金属材料や酸化物材料の接着,接合に使用できる。これはミリ波などの電磁波照射により母相であるNdFeBなどFe系材料よりもフッ素化合物を主成分とする材料の方が特定温度範囲で発熱しやすいためである。ミリ波の条件の例としては、28GHz,1−10kW,Ar雰囲気中あるいは真空中または他の不活性ガス雰囲気で1−30分照射する。ミリ波を使用することにより、フッ素化合物あるいは酸素を含む酸フッ素化合物が選択的に加熱されるため、焼結体そのものの組織をほとんど変えずに、フッ素化合物の構成成分が主に粒界に沿って拡散させることが可能であり、結晶粒内部へのフッ素化合物構成元素の拡散が防止でき、単純な外部熱源により加熱する場合よりも高い磁気特性(高残留磁束密度,角型性向上,高保磁力,高キュリー温度,低熱減磁,高耐食性,高抵抗化などのいずれか)が得られ、ミリ波条件とフッ素化合物の選択により通常の熱処理よりも焼結磁石の表面からより深い部分にもフッ素化合物の構成元素を拡散させることが可能であり、10×10×10cmの磁石中心部へも拡散させることが可能である。このような手法によって得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くできる。また、焼結磁石表面に1〜100nmのアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素を少なくとも1種含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が残留していれば、焼結磁石表面の抵抗は高くなり、積層接着しても渦電流損失を低減し、高周波磁界中での損失低減が図れる。このような損失低減により、磁石の発熱が低減できるため、重希土類元素の使用量を低減できる。上記希土類フッ素化合物は粉状ではなく、低粘度のため、1nmから100nmの微小な穴の中にも塗布可能であるので、微小磁石部品の磁気特性向上に適用できる。
<実施例9>
X線回折パターンで半値幅が1度から10度のピークが主ピークであるフッ素化合物溶液に1原子%以上のFeを添加し、FeイオンあるいはFeのクラスターが混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。このときFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類,Cr,Mn,Vあるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このようなゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波などの電磁波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、Feフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Feイオンの一部あるいは代替として他の遷移金属元素イオンを添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類,Cr,Mn,Vあるいは希土類元素をMとすると、Fe−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石がゲルあるいはゾル状、または溶液状フッ素化合物を用いて高保磁力磁石を得ることができ、ミリ波照射により溶解しにくい種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素,ホウ素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。このような材料系で発光特性を示す材料を得ることも可能である。
<実施例10>
粒径0.1 〜100μmのSmFeN系磁粉の表面にX線回折パターンがブロードな回折ピークからなるフッ素化合物溶液を塗布する。フッ素化合物はアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素を少なくとも1種以上含む化合物である。塗布されたSmFeN系磁粉を金型に挿入し、3−20kOeの磁界で磁粉を磁界方向に配向させながら圧縮成形し、仮成形体を作製する。異方性を有する仮成形体をミリ波照射により加熱し、フッ素化合物に選択加熱を施す。加熱中のSmFeN系磁粉の構造変化などに伴う磁気特性劣化を抑制させ、フッ素化合物がバインダーとなって、異方性磁石が作製でき、SmFeN磁粉がフッ素化合物で結着された磁石を得ることができる。フッ素化合物の占める体積を0.1−3%にすることで、残留磁束密度1.0T 以上のSmFeN異方性磁石が得られる。仮成形体形成後にフッ素化合物液を含浸させその後熱処理することで磁気特性を向上させることも可能である。局所的にSm−Fe−N−FあるいはSm−Fe−N−Oが形成されるが、フッ素化合物との反応により保磁力増加,角型性向上,残留磁束密度増加のいずれかの効果が確認される。SmFeN系などの窒素系磁粉の場合には、SmFe粉にミリ波照射してSmFeN系磁粉を作製することで、従来のアンモニア窒化などの場合よりも窒化による保磁力の増加が著しく、20kOe以上の保磁力が得られる。ミリ波を使用してフッ素化合物で結着させることは、他の鉄系材料であるFe−Si系,Fe−C系,FeNi系,FeCo系,Fe−Si−B系あるいはCo系磁性材料にも適用でき、軟磁性粉,軟磁性薄帯,軟磁性成形体,硬磁性粉,硬磁性薄帯,硬磁性成形体にも磁気特性を損なうことなく適用でき、他の金属系材料の接着も可能である。
<実施例11>
X線回折パターンがブロードなピークを示すフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。上記ブロードなピークとはCu−Kα線を使用した場合のθ−2θ走査で測定した回折パターンが1度以上の半値幅をもつ主ピークを示している。微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合し、このような微粒子を含むゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、Feフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波あるいはマイクロ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素をMとすると、Fe−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石がゲルあるいはゾル状、または溶液状フッ素化合物に微粒子を添加する手法を用いて高保磁力磁石を得ることができ、種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。レジスト等を用いてパターニングされた形状に上記光透過性のあるフッ素化合物を挿入し乾燥後レジストの耐熱温度以下で熱処理する。さらにレジストを除去後加熱すれば保磁力が増加する。レジスト間隔10nm以上、磁石部厚さ1nm以上のスペースに上記ゾル状あるいはゲル状フッ素化合物を注入あるいは塗布することができ、3次元形状の磁石を機械加工なしでかつ蒸着,スパッタリング等の物理的手法を使用せずに小型磁石を作製することができる。このようなFe−M−F系磁石はFの濃度を調整することで、特定の波長の光のみ吸収することができる。したがってこのようなフッ素化合物は光学部品や光記録装置などの部品あるいはその部品の表面処理材として使用できる。
<実施例12>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、光透過性のあるフッ素化合物に粒径10〜10000nmの希土類元素を少なくとも1種以上含む粒子を添加する。粒子の一例としてNd2Fe14B の構造を主相とする粒子を使用し、フッ素化合物が前記粒子表面に塗布される。フッ素化合物溶液と粒子の混合比あるいは塗布条件をパラメータとすることにより、粒子表面の被覆率を変えることができ、被覆率1〜10%でフッ素化合物による保磁力増加効果が確認でき、10〜50%で保磁力増加効果に加えて減磁曲線の角形性改善あるいはHkの向上が見られ、さらに被覆率50〜100%で成形後の抵抗増加が確認できる。ここで被覆率とは粒子の表面積に対して塗布した材料の覆っている面積である。被覆率1〜10%の粒子を使用して磁場中仮成形後800℃以上の温度で加熱成形することにより焼結磁石が得られる。被覆するフッ素化合物は、希土類元素を少なくとも1種以上含んだフッ素化合物である。溶液フッ素化合物を使用するため、粒子の界面に沿って層状あるいは板状にフッ素化合物が塗布でき、粒子に凹凸があってもその表面の形状に沿って層状に塗布される。被覆率1〜10%の粒子は磁場中仮成形後の熱処理により層状フッ素化合物の一部である希土類元素が結晶粒界に沿って拡散し、保磁力が被覆無しの場合と比較して増加する。なお、フッ素化合物をFe系粒子に塗布すると、塗布材料がない粒子表面の一部がフッ化する。したがって被覆率1〜10%の粒子においても、フッ素化合物が形成されている部分の面積が1〜10%であっても、90%の粒子表面が粒子の組成や表面状態に依存するがフッ化し、界面の磁気特性が変化するとともに、粒子表面の抵抗が増加する。希土類元素はフッ化されやすいため、粒子表面の希土類濃度が高いものほど粒子表面がゲルあるいはゾル状フッ素化合物に塗布された時に一部がフッ化し、粒子表面の抵抗が高くなる。このような高抵抗の粒子を焼結すると粒内の希土類元素が粒子表面のフッ素と結合し、粒界付近に希土類元素が偏析した構造となり、保磁力が増加する。
すなわち、フッ素が希土類原子のトラップ効果を発揮し、希土類元素の粒内拡散を抑制することで希土類元素が粒界に偏析し、保磁力が増加し粒内希土類元素濃度が低減され高残留磁束密度が得られる。
<実施例13>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、可視光を透過可能なフッ素化合物溶液に粒径10〜10000nmの希土類元素を少なくとも1種以上含む粒子を添加する。粒子の一例としてNd2Fe14B の構造を主相とする粒子あるいは微小磁石を使用し、フッ素化合物が前記粒子表面と接触し、粒子表面に付着したフッ素化合物塗布溶液を溶媒などにより除去する。粒子表面には凝集したフッ素化合物はできるだけ残留しないようにし、塗布材料の残留量を平均被覆率10%以下にする。したがって平均90%以上の粒子面積が塗布材料の形成されていない面(走査電子顕微鏡1万倍で塗布された明瞭なフッ素化合物が認められない)となるが、この面の一部は粒子を構成している希土類元素の一部がフッ化し、フッ素の多い層となる。このように粒子表面の一部がフッ化するのは希土類元素がフッ素原子と結合し易いためであり、希土類元素がない場合、表面のフッ化は起こりにくい。希土類元素の一部がフッ化する場合、酸素原子とも結合しやすいため、酸フッ素化合物となる場合もあるが粒子表面にフッ素と結合している希土類元素からなる相が形成される。このようなフッ化した粒子を用いて磁場中圧縮成形し、その後焼結させて異方性焼結磁石を作製した。磁場中圧縮成形後の密度50〜90%の範囲の仮成形体に上記フッ素化合物溶液を含浸させ、粒子表面及び粒子クラック部表面をフッ素化合物の前駆体でその一部を被覆することも可能であり、このような含浸処理によって1〜100nmのフッ素化合物をクラック部の一部も含めて被覆することができ、保磁力増加,角型性向上,高抵抗化,残留磁束密度低減,希土類使用量低減,強度向上,磁粉の異方性付加などのいずれかの効果に寄与する。焼結時にはフッ素及び希土類元素の拡散を伴う。フッ化しない場合と比較して、重希土類元素の添加量が多いほどフッ化による保磁力増加が顕著になる。同一保磁力の焼結磁石を得るために必要な重希土類元素の濃度はフッ化により低減できる。これはフッ化によりフッ化相近傍に重希土類元素が偏析しやすくなるため粒界近傍に重希土類元素が偏析した構造が生まれるため、高保磁力となると考えられる。このような重希土類元素の偏析する幅は粒界から約1〜100nmである。
<実施例14>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、可視光の透過性があるフッ素化合物溶液を用いて希土類元素を少なくとも1種以上含む粒径10〜10000nmの酸化物粒子に塗布し、800〜1200℃の温度範囲で加熱するかあるいはミリ波などの電磁波照射による加熱を施す。加熱により酸フッ素化合物が部分的に形成される。フッ素化合物溶液として希土類元素を少なくとも1種類以上含む溶液を使用することで酸フッ素化合物あるいはフッ素化合物の形成により、酸化物であるバリウムフェライトあるいはストロンチウムフェライト粒子の磁気特性が改善され、保磁力向上,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度向上が確認できる。特に鉄を1%以上含むフッ素化合物溶液を使用することで、残留磁束密度の増加効果が大きい。上記酸フッ素化合物の酸化物粒子をゾルゲルプロセスを用いて作製しても良い。
<実施例15>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、光透過性のあるフッ素化合物溶液に1原子%以上のCoあるいはNiを添加し、Co,NiイオンあるいはCo,Niのクラスターが混合したゲルあるいはゾル状CoあるいはNi−フッ素化合物溶液を作製する。このときCoあるいはNi原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような光透過性のあるフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射乾燥することで、フッ素原子とCoあるいはNi原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、CoあるいはNiフッ素及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上からなる3元系以上のフッ素化合物が形成され、ミリ波照射により保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。CoあるいはNiイオンの一部あるいは代替として他の遷移金属元素イオンを添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。上記フッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素をMとすると、Co−M−F系,Co−M−F系,Ni−M−F系磁石が光透過性のある溶液状フッ素化合物を用いて高保磁力磁石あるいは磁石粉末を得ることができ、ミリ波照射により溶解しにくい種々の基板に塗布しミリ波照射することで作製できるため、機械加工することが困難な形状の磁石部品に適用できる。尚このようなフッ素化合物磁石に酸素,炭素,窒素などの原子が混入していても磁気特性への影響は少ない。
<実施例16>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の複数の回折ピークを有し、可視光で透過性を示すフッ素化合物系溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したFe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスターを含む低粘度かつ光透過性のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子、酸素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になる。また一部のFe原子の磁化は反強磁性的な結合をとる。ミリ波あるいはマイクロ波照射により強磁性結合に有利となる構造が生じ、保磁力10kOe以上のFeを含むフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。すなわち、Co,Ni以外のCr,Mn,Vなどの遷移金属元素においてもこのような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで永久磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。
<実施例17>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、光透過性のフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したFe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスターを含む低粘度のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子、酸素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)とFeが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素20〜75%)が形成されることで、Feの多い層が磁化を担い、フッ素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。また一部のFe原子の磁化は反強磁性的な結合をとる。ミリ波あるいはマイクロ波照射により強磁性結合に有利となる構造が生じ、保磁力10kOe以上のフッ素化合物を合成できる。Fe系微粒子の変わりに他の遷移金属元素微粒子を添加しても良い。このような手法により、従来のように磁性粉末を得るための溶解,粉砕プロセス無しで永久磁石材料を得ることが可能であり、種々の磁気回路に適用できる。
<実施例18>
Nd2Fe14B を主相とするNdFeB系焼結磁石の表面に、X線回折ピーク半値幅が1度から10度の回折ピークを有し光透過性のある希土類フッ素化合物を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物の平均膜厚は1〜10000nmである。NdFeB系焼結磁石は結晶粒径が平均1−20μmでありNd2Fe14B を主相にした図3に示すような焼結磁石31であって、焼結磁石31の表面は加工あるいは研磨にともなう磁気特性の劣化が減磁曲線上にみられる。このような磁気特性劣化を改善すること、粒界近傍の希土類元素偏析による保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,磁石表面あるいは粒界付近の高抵抗化,フッ素化合物による高キュリー点化,高強度化,高耐食性化,希土類使用量低減,着磁磁界低減などを目的に、希土類フッ素化合物溶液32を焼結磁石表面に塗布乾燥後、300℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。希土類フッ素化合物溶液から成長するクラスターは塗布乾燥直後100nm以下1nm以上の粒子に成長し、さらに加熱することで、焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じ、拡散層33が形成される。熱処理条件を選択することで拡散層が磁石全体を占めるようになり磁気特性を改善することができる。塗布乾燥後のフッ素化合物クラスターは、粉砕プロセスを経ていないため、突起や鋭角のある表面になっておらず、粒子を透過電子顕微鏡で観察すると丸みを帯びた、卵形あるいは円形に近くクラックは見られない。加熱によりこれらの粒子は焼結磁石表面で合体成長すると同時に、焼結磁石の粒界に沿って拡散あるいは焼結磁石の構成元素と相互拡散を起こす。また、これらのクラスター状の希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布するため、焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が形成され、塗布乾燥後300℃以上焼結温度以下の温度で加熱する前に焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。このフッ化相、酸素を含むフッ化相は母相と部分的に整合性を保ちながら成長し、このようなフッ化相あるいは酸フッ化相の母相からみて外側にフッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相が整合的に成長し、このフッ化相,フッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相,炭化酸フッ素化合物相に重希土類元素あるいは遷移金属元素が偏析することで保磁力が増加する。粒界に沿って重希土類元素が濃縮された帯状の部分は幅1〜100nmの範囲が望ましく、この範囲であれば高残留磁束密度と高保磁力が満足できる。重希土類元素の偏析している領域はフッ素が偏析している領域よりも広い部分が多く、重希土類元素の偏析により磁気異方性エネルギーが増加し保磁力が増加すると共に、フッ素が粒界部に存在することで粒界の凹凸が少なく、粒界の幅も狭く、粒内の酸素も除去されるため磁気特性の角型性が良くなっている。このような手法によってDyを粒界に沿って濃縮させた場合、得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.7T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いる場合よりも低くできる。上記焼結磁石表面のフッ素化合物中のFe濃度は、熱処理温度により異なり、1000℃以上で加熱すると10ppm 以上5%以下のFeがフッ素化合物中に拡散する。フッ素化合物の粒界付近でFe濃度が50%となるが、平均濃度が1%以上5%以下であれば焼結磁石全体の磁気特性にはほとんど影響しない。フッ素化合物系溶液は図3のような焼結磁石ブロックのみではなく、図4に示すようなリング磁石にも適用でき、リング磁石41の表面に溶液を塗布し、表面拡散層42及び断面図(3)に示す内部拡散層43を形成でき、磁気特性改善(角型性向上,保磁力増加),温度特性改善(磁気特性の温度依存性低減),電気抵抗増加,機械強度向上,耐食性信頼性向上などの効果が期待できる。
<実施例19>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有するゲルあるいはゾル状のフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeあるいはCoを含む微粒子を添加し、Fe系微粒子が混合したゲルあるいはゾル状Fe−フッ素化合物を作製する。このとき微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスターを含むゲルあるいはゾル状のフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体に窒素を含む雰囲気でミリ波あるいはマイクロ波を照射することで、フッ素原子や窒素原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子及び窒素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及び酸素原子とFe,Co及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子,窒素原子及びFe,Co原子と結合したいずれかの結合によりFe,Co原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)窒素が多い相(窒素3〜20%)とFe,Coが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素10〜75%)が形成されることで、Fe,Coの多い層が磁化を担い、フッ素や窒素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。このようなFe−M−F−Nの4元系(Mは希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素)あるいはFe−Co−M−F,Fe−Co−M−Fで保磁力10kOe以上の磁気特性を有する磁石が得られる。
<実施例20>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークを有し、可視光透過性を示すフッ素化合物溶液に粒径1〜100nmの1原子%以上のFeを含む微粒子を添加し、Fe−B微粒子が混合したFe−フッ素化合物クラスターを作製する。微粒子径が100nmを超えると内部に軟磁性成分のFe本来の特性がその後のプロセスを経て残留し、1nmより小さくなるとFeに対する酸素の濃度が高くなるので磁気特性の向上が困難となるため1〜100nmの粒径が望ましい。このときFe−B微粒子表面のFe原子の一部はフッ素化合物のフッ素あるいはフッ素化合物を構成するアルカリ,アルカリ土類、あるいは希土類元素のいずれか1種以上の元素と化学的に結合する。このような微粒子あるいはクラスターを含むゲルあるいはゾル状のFe−Bを含むフッ素化合物またはフッ素化合物前駆体にミリ波あるいはマイクロ波などの電磁波を照射することで、フッ素原子やホウ素(B)原子とFe原子及び上記フッ素化合物構成元素の1種以上の化学結合に寄与する原子が多くなり、フッ素原子を介してFe原子および希土類元素が結合、フッ素原子及びホウ素原子とFe及び希土類元素の結合、あるいは希土類元素がフッ素原子,酸素原子,ホウ素原子及びFe原子と結合したいずれかの結合によりFe原子同士の磁化の一部が強磁性的になり磁気異方性を有するようになる。微粒子の中でフッ素が多い相(フッ素10〜50%)ホウ素が多い相(ホウ素5〜20%)とFeが多い相(Fe50〜85%)及び希土類元素の多い相(希土類元素10〜75%)が形成されることで、Feの多い層が磁化を担い、フッ素やホウ素の多い相あるいは希土類元素の多い相が高保磁力に寄与する。このようなFe−M−B−Fの4元系(Mは希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素)で保磁力10kOe以上の磁気特性を有する磁石が得られ,Mを重希土類元素にすることで、キュリー温度を400〜600℃にすることができる。
<実施例21>
Nd2Fe14B を主相とするNdFeB系焼結磁石の表面に、100℃以上の温度で希土類フッ素化合物に成長可能なX線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークをもったフッ素化合物クラスター溶液を塗布する。塗布後の希土類フッ素化合物クラスターの平均膜厚は1〜10000nmである。このようなクラスターはバルクフッ素化合物の結晶構造をもたず、フッ素と希土類元素がある周期構造をもって結合し、一部は非晶質よりも長周期構造をもつものである。NdFeB系焼結磁石は結晶粒径が平均1−20μmでありNd2Fe14B を主相にした焼結磁石であって、焼結磁石の表面は加工あるいは研磨にともなう磁気特性の劣化が減磁曲線上にみられる。このような磁気特性劣化を改善すること、粒界近傍の希土類元素偏析による保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,磁石表面あるいは粒界付近の高抵抗化,フッ素化合物による高キュリー点化,高強度化,高耐食性化,希土類使用量低減,着磁磁界低減,加工劣化層の磁気特性回復などを目的に、ゲルあるいはゾル状の希土類フッ素化合物前駆体を焼結磁石表面に塗布乾燥後、300℃以上焼結温度以下の温度で熱処理する。希土類フッ素化合物クラスターは塗布乾燥過程で100nm以下1nm以上の粒子状に成長し、さらに加熱することで、前駆体あるいは一部のフッ素化合物クラスターが焼結磁石の粒界や表面との反応や拡散が生じる。塗布乾燥加熱後のフッ素化合物粒子は、粒子同士が合体しない温度範囲であれば、粉砕プロセスを経ていないため、突起や鋭角のある表面になっておらず、粒子を透過電子顕微鏡で観察すると丸みを帯びた、卵形あるいは円形に近く、粒子内あるいは粒子表面にはクラックや、外形に不連続な凹凸は見られない。加熱によりこれらの粒子は焼結磁石表面で合体成長すると同時に、焼結磁石の粒界に沿って拡散あるいは焼結磁石の構成元素と相互拡散を起こす。また、これらのクラスター状の希土類フッ素化合物を焼結磁石表面に塗布するため、焼結磁石表面のほぼ全面にフッ素化合物が被覆され、塗布乾燥後焼結磁石表面の一部の結晶粒表面で希土類元素濃度が高い部分の一部はフッ化する。このフッ化相あるいは酸素を含むフッ化相または酸フッ化相は母相と部分的に結晶格子の整合性を保ちながら成長し、このようなフッ化相あるいは酸フッ化相の母相からみて外側にフッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相が整合的に成長し、このフッ化相,フッ素化合物相あるいは酸フッ素化合物相近傍に重希土類元素が偏析することで保磁力が増加する。粒界に沿って重希土類元素が濃縮された帯状の部分は幅0.1 〜1000nmの範囲が望ましく、この範囲であれば高残留磁束密度と高保磁力が満足できる。DyF2-3 の前駆体を用い上記手法によってDyを粒界に沿って濃縮させた場合、得られる焼結磁石の磁気特性は残留磁束密度1.0から1.6T,保磁力20〜50kOeであり同等の磁気特性を有する希土類焼結磁石に含有する重希土類元素濃度は、従来の重希土類添加NdFeB系磁粉を用いて焼結した場合あるいは2合金法のように重希土類元素濃度の多い粉末と混合して焼結する場合よりも低くできる。上記焼結磁石表面のフッ素化合物中のFe濃度は、熱処理温度により異なり、1000℃以上で加熱すると1ppm 以上5%以下のFeがフッ素化合物中に拡散する。フッ素化合物の粒界付近の一部でFe濃度が50%となる場合があるが、平均濃度が5%以下であれば焼結磁石全体の磁気特性にはほとんど影響しない。上記溶液は、希土類磁石以外にも、Fe系の軟磁性材料の損失低減,高強度化などに適用でき、Fe粉,Fe−Co粉,Fe−Si粉,Fe−C粉,Fe−Al−Si粉,Fe−Si−B粉あるいは薄帯などの表面に溶液を用いてフッ素を含む層を形成できる。また、上記のように粒界付近に重希土類元素が偏析した希土類磁石は、表面の加工による加工劣化が少なく、バルク焼結体から切断加工された磁石の磁気特性劣化は従来の焼結磁石よりも小さい。上記粒界付近には重希土類元素とともにGa,Cu,Nb,Mo,Ti,Sn,Zrなどの金属元素が偏析することで、さらに保磁力を増加させることが可能である。
<実施例22>
SmCo合金を高周波溶解などで溶解し、不活性ガス中で粉砕する。粉砕した粉末径は1−10μmである。粉砕粉の表面に、X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークをもったフッ素化合物前駆体(SmF3 前駆体)を塗布乾燥し、磁界中プレス装置により塗布粉末を配向させ、圧粉体を作製する。圧粉体の粉末には多数のクラックが導入され、圧粉体の外部からフッ素化合物前駆体を塗布させることで、クラック面の一部もフッ素化合物前駆体で被覆される。これを焼結し、急冷する。焼結体は少なくとも二相から構成され、SmCo5及びSm2Co17相が形成している。フッ素化合物は焼結時に分解し始め、二相のどちらにも分布するが、SmCo5 の方に多くのフッ素原子が存在し、保磁力がフッ素化合物前駆体を添加しない場合に比べて増加する。また、フッ素化合物前駆体の塗布効果として、高抵抗化,角型性向上,減磁耐力向上のいずれかが確認できた。このようにCo系磁性材料に関しても溶液処理が可能であり、その磁気特性を向上させることが可能であり、SmCo系以外にもCo−Si−B系,Co−Fe系,Co−Ni−Fe系,Co−希土類系などの材料系に適用できる。
<実施例23>
図1の基板13に下地層12をスパッタリングあるいは蒸着法を利用して形成後、Fe系磁性層11を物理蒸着あるいは化学蒸着法などで形成する。Fe系磁性層11を局所加熱させるためにフッ素化合物15を基板14にパターニングして形成し、Fe系磁性層11に接触あるいは近づける。電磁波などの照射によりフッ素化合物15が選択加熱され、フッ素化合物15に接触したFe系磁性層11が加熱され、Fe系磁性層11の磁気特性を変えることが可能である。Fe系磁性層11がFePt系の場合、電磁波照射により加熱部16は規則相になり高保磁力となる。高保磁力部の面積はフッ素化合物15の間隔で制御でき、高保磁力部と低保磁力部の比率を任意に変えることが可能であり、磁気ディスクに利用できる。フッ素化合物15をFe系磁性材料と接触させ、電磁波加熱により接触部のみフッ素化合物15とFe系磁性層11とを反応させることで、反応部のみ磁気特性を変化させることができ、保磁力,残留磁束密度,キュリー点(磁気変態点),電気抵抗,磁気抵抗,異方性エネルギーを変化でき、加熱中の磁界印加により異方性方向,交換結合などを付加することもできる。また、図2のようにあらかじめ基板21に溝を設け、溝部に電磁波で容易に温度上昇する発熱部22を形成する。発熱部22の上に磁性層23を形成中、電磁波を照射することで発熱部22が温度上昇し発熱部22の近傍のみ加熱され上記のような特性の変化を示す磁気特性変化部24が形成できる。このような工程を利用して磁気ヘッドや磁気ディスク装置に使用する素子あるいはフッ素化合物の発光特性を応用した光学素子などに適用できる。
<実施例24>
Nd2Fe14B の組成近傍を主相とする粒径1から20μmの粒子を使用し、磁界中プレス成形した仮成形体を不活性ガス中あるいは真空中で500℃から1000℃の温度範囲に加熱後、X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークをもったフッ素化合物クラスター溶液あるいはコロイド溶液を含浸あるいは塗布する。この処理によりフッ素化合物前駆体溶液が成形体の内部の磁粉界面に沿って浸入し、その界面の一部がフッ素化合物前駆体で被覆される。次にこの含浸あるいは塗布された成形体を上記加熱温度よりも高い温度で焼結させ、さらに保磁力向上のため焼結温度よりも低い温度で熱処理し、フッ素及び前駆体構成元素である希土類元素,アルカリあるいはアルカリ土類元素を含有した焼結体を得る。このプロセスの特徴は、焼結前に磁粉表面の一部あるいは全てに希土類リッチ相を形成し、完全に焼結させずに磁粉と磁粉の接触部以外に1nm以上の隙間を確保して、その隙間にフッ素化合物前駆体を含浸あるいは塗布により浸入被覆させ、成形体最表面以外の成形体内部にある磁粉の表面の一部にフッ素化合物前駆体を被覆させるものである。このプロセスにより100mmの焼結体中心部においてもフッ素化合物クラスターを磁粉表面に被覆させることが可能であり、フッ素化合物クラスターの構成元素にDy,Tbなどの重希土類元素を選択することで、焼結体の結晶粒界付近に重希土類元素を偏析させ、保磁力増加,角型性向上,残留磁束密度増加,保磁力温度係数や残留磁束密度の温度係数低減、加工変質による磁気特性劣化の低減のいずれかが可能である。上記重希土類元素の偏析は結晶粒界から1〜100nmであり、熱処理温度に依存して変化し、粒界三重点のような特異点では広がる傾向がある。
<実施例25>
X線回折ピーク半値幅が1度以上の回折ピークをもったFeフッ素化合物のクラスター溶液をアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素の中の少なくとも1種を含むフッ素化合物の前駆体と混合させ、乾燥熱処理することでFe−M−F(Mはアルカリ,アルカリ土類あるいは希土類元素の中の少なくとも1種類の元素)化合物が形成できる。前駆体を混合させているため、乾燥熱処理過程で成長する粒子は1−30nmと小さく、これらのナノ粒子の中にフッ素化合物が成長する。高保磁力のフッ素化合物材料は、Feが10原子%以上、フッ素が1%以上の組成で粒界にMリッチ相を形成することにより作製可能であるが、特にFe濃度が50原子%以上、Mが5〜30%、フッ素が1〜20%でフッ素リッチ相,Feリッチ相及びMリッチ相を成長させ、粒界にフッ素リッチ相あるいはMリッチ相を成長させることにより、強磁性を示しかつ保磁力が10kOe以上の粉末が得られる。異方性を付加するために磁場中でフッ素化合物を成長させることで、Feリッチ相が磁場方向に沿って成長する。成長プロセスにおいて水素,酸素,炭素,窒素,ホウ素が混入しても上記相の骨格が壊れなければ特に問題はない。また、Fe−M−F(M原子がCr,Mnなどの遷移金属元素の1種以上)でM原子が5原子%以上、F原子が5原子%以上を、クラスター状フッ素化合物などを含む溶液から成長させ、高保磁力(保磁力5kOe以上)が得られる。これらの化合物の中にはフッ素原子に異方的な配列を持っていることで高い異方性が見られる。このような3元系磁石は上記のように溶液を用いて形成させるため、加工研磨工程は必要ないことから、複雑形状の磁石が容易に作製でき、1個の磁石内で異方性の方向を連続的に変えることも可能であり、各種回転機,磁気センサー,ハードディスク用磁石部品,磁気媒体に使用可能である。また、M原子の濃度を5原子%未満とすることで、Fe−M−F3元系合金は高飽和磁束密度軟磁性材料となり、各種磁気回路のコア材料に適用できる。このような磁性材料はFe−M−F以外にもFe−Co−M−F,Co−M−F系,Ni−M−F系でも達成でき、F組成及び結晶構造により軟磁性,硬磁性いずれの特性も達成でき、軟磁性と硬磁性を同一磁性材料に共存させ強磁性結合させた硬磁性材料も溶液を適用して作成可能である。またFを10原子%以上含有した上記磁性材料では、光学的性質と磁気的性質を併せ持った磁性材料を作成でき、発光あるいは吸収特性と磁気特性を共存した強磁性材料を磁気応用素子あるいは光学素子に適用できる。
<実施例26>
Nd2Fe14B 構造を主相とするNdFeB系焼結磁石を加工研磨し積層電磁鋼板,積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄が金型などにより加工されている。磁石挿入位置に焼結磁石を挿入する場合、焼結磁石と積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄の間に0.01 〜0.5mm の隙間を設けている。このような隙間を含めた磁石位置に矩形,リング形、あるいはかまぼこ形状など湾曲した形状を含む種々の焼結磁石を挿入し、その隙間にゲルあるいはゾル状またはクラスター状のフッ素化合物溶液を注入し、100℃以上の温度で加熱し、焼結磁石と積層電磁鋼板,積層アモルファスあるいは圧粉鉄を接着させる。このとき、さらに500℃以上の温度で熱処理をすることで、焼結磁石表面に希土類元素あるいはフッ素を拡散させ、積層電磁鋼板あるいは圧粉鉄の表面にもフッ素化合物の構成元素を拡散させ、焼結磁石の磁気特性を向上(保磁力増加,角形性向上,減磁耐力向上,キュリー温度上昇など)させかつ接着を強固にすることができる。焼結磁石の湾曲した加工変質層の磁気特性改善が可能であり、各磁性材料の表面及び粒界におけるフッ素あるいは希土類元素を主成分とする拡散層には、酸素や炭素などの軽元素が含まれてもよい。焼結磁石の磁気特性改善には上記フッ素化合物に希土類元素を含有させるが、磁石磁気特性改善以外の接着効果や軟磁性の歪取りあるいは損失低減には、希土類元素あるいはアルカリ,アルカリ土類元素を含むフッ素化合物を使用することができる。
<実施例27>
Fe,Co,Niの少なくとも1種類の元素を含む酸化物の微粒子にフッ素化合物溶液を塗布あるいは混合する。溶液にはゲル状あるいはゾル状フッ素化合物が含有しており溶媒はアルコール系を用いる。酸化物微粒子の大きさは1nmから10000nmの直径であり、形状は不定形,球形,偏平いずれでもよい。このような酸化物を主とする微粒子表面に溶液を接触させた後、熱処理する。上記酸化物微粒子にはあらかじめSr,Laなどの元素を添加してもよい。500℃から1500℃の熱処理によりフッ素化合物と酸化物の間で拡散あるいは反応がみられ、一部は酸フッ素化合物となる。また酸化物を構成している元素とフッ素化合物の構成元素が拡散することで異方性エネルギーの高い結晶が得られる。この結晶とはフッ素が1原子%以上含んだ酸フッ素化合物であり、酸フッ素化合物と酸化物の混合体でも異方性エネルギーが大きくなる。このような酸フッ素化合物は、残留磁束密度0.5から1.0Tであり保磁力は5から10kOeであり、従来のフェライト磁石よりも残留磁束密度を高くすることが可能である。酸フッ素化合物には窒素や炭素が混合しても磁気特性の大きな劣化は認められない。上記酸フッ素化合物の比抵抗は1×102Ωcm 以上の値を示すため渦電流損失は小さく、高周波磁界を使用する磁気回路に適用可能である。このようにフッ素原子あるいはフッ素化合物中に含有する希土類元素あるいはアルカリ元素と酸化物が反応し異方性エネルギーが大ききくなり、保磁力が増大するとともに磁気特性の温度依存性を抑制する。反応による保磁力増大以外の効果として、残留磁束密度増加,保磁力の温度係数低減,減磁曲線の角型性向上,カー回転角増加などの磁気光学効果増大,磁気抵抗効果増加,熱電効果発現,磁気冷凍効果の増加が確認された。
<実施例28>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばLaの場合は酢酸La、または硝酸La4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をLaFx(X=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のLaFx(X=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のLaFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、 超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)LaF系の場合、ほぼ透明なゾル状のLaFxとなった。処理液としてはLaFxが 1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物を主成分とするコート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が配置しているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素もその大部分が溶液中で長周期構造を持っていないと考えられる。このREnFmの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪く均一に塗布するのは困難である。焼結ブロックへの処理は以下のように進めた。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をLaF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った 。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成し熱処理したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合Dy,Nd,La及びMgフッ化物あるいはフッ酸化物が偏析した焼結磁石でそれぞれ30%,25%,15%及び10%保磁力が増加した。処理液に浸漬前の焼結磁石ブロックの磁気特性は保磁力(iHc)10〜35kOe、残留磁束密度1.2〜1.55Tでありこの範囲の磁気特性であれば上記のような値の保磁力の増加が確認でき、保磁力増加後の残留磁束密度の減少は拡散処理ではない工程で作成した焼結磁石よりも高い。無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力をさらに増加させるために表2のような添加元素を各フッ化物溶液中に有機金属化合物を用いて添加した。無添加溶液の場合の保磁力を基準にすると、表2に示す溶液中添加元素により、焼結磁石の保磁力はさらに増加し、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることが判明した。保磁力増加率の結果を表2に示す。添加元素の種類と濃度及び拡散条件や拡散距離、粒界相の磁気構造を制御することで、保磁力増加とともに残留磁束密度が減少しない拡散処理も可能であり、残留磁束密度が処理前と同等以上でかつエネルギー積が10〜30%増加することも可能である。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。従って表2に示した添加元素はフッ素,酸素及び炭素の少なくとも1種の元素を伴って焼結磁石中に拡散し、その一部が粒界付近に留まる。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含み短範囲構造を有するフッ化物,炭酸フッ化物,炭フッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。表2の添加元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能であり、保磁力を増加させることも可能であり、スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物,炭フッ化物,炭酸フッ化物あるいは酸フッ化物のいずれかに表2で示す元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。添加元素濃度を表2の100倍以上にした場合、溶液を構成するフッ化物の構造が変化し、溶液中で添加元素の分布が不均一となり他の元素の拡散を阻害する傾向がみられ、添加元素が粒界に沿って磁石ブロック内部まで偏析させることが困難となるが局所的に保磁力の増加は認められる。表2で示す炭素を含む添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物あるいは酸フッ化物との界面を平滑化する。これらの結果、表2の添加元素を使用した溶液の塗布,拡散熱処理により保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また表2に示す添加元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広い傾向がある。表2で示す添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。上記磁石の磁気特性向上を確認できた溶液中添加物は、表2のMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Pb,Biや全ての遷移金属元素を含む原子番号18から86の中から選択された元素であり、これらの中の少なくとも1種の元素とフッ素について焼結磁石において濃度勾配が認められる。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界付近(粒界中心から平均1000nm以内の距離)ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の濃度勾配または平均的濃度差が焼結磁石の最表面から内部に向かってみられる。2)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられる部分が多い。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に表2の元素あるいは原子番号18から86の元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)溶液を塗布された焼結磁石ブロックあるいは磁石粉または強磁性粉の最外周でフッ素及び添加元素の濃度が最も高く、磁性体部の中の外側から内部に向かって添加元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。5)表2の添加元素あるいは原子番号18から86の元素を含む溶液を構成する元素のうち少なくとも1種は表面から内部に向かって濃度勾配をもち、溶液から成長した磁石とフッ素含有膜との界面付近あるいは界面より磁石からみて外側でフッ素濃度が最大であり、界面付近のフッ化物が酸素あるいは炭素を含有し、高耐腐食性,高電気抵抗、あるいは高磁気特性のいずれかに寄与している。このフッ素含有膜には表2で示す添加元素や原子番号18から86の元素の少なくとも1種または2種以上が検出され、磁石内部のフッ素の拡散路付近に上記添加元素が多く含まれ、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。上記添加元素の濃度差は透過電子顕微鏡のEDX(エネルギー分散X線)プロファイル、あるいはEPMA分析,ICP分析などで焼結ブロックを表面側から内部に切断した試料について分析することで確認できる。フッ素原子の近傍(フッ素原子の偏析位置から2000nm以内、好ましくは1000nm以内)に溶液中に添加された原子番号18から86の元素が偏析していることが透過電子顕微鏡のEDXやEELSにより分析できる。フッ素原子の近傍に偏析している添加元素とフッ素原子の偏析位置から2000nm以上離れた位置に存在する添加元素との比率は磁石表面から100μm以上内部の位置で1.1から1000であり好ましくは2以上である。磁石表面では前期比率は2以上である。前記添加元素は粒界に沿って連続的に偏析している部分と不連続に偏析している部分のどちらの状態も存在し、必ずしも粒界全体に偏析しているわけではないが、磁石の中心側では不連続になり易い。また添加元素の一部は偏析せずに母相に平均的に混入する。原子番号18から86の添加元素は焼結磁石の表面から内部にかけてフッ素偏析位置近傍に偏析している濃度が減少する傾向があり、この濃度分布のために磁石内部よりも表面に近い方で保磁力が高い傾向を示す。前記磁気特性改善効果は、焼結磁石ブロックだけでなくNdFeB系磁性粉表面に表2で示す溶液を用いてフッ素及び添加元素を含む膜を形成しても、拡散熱処理により同様の効果が得られる。したがって、NdFeB粉を磁場中仮成形後の仮成形体に表2の溶液を含浸後焼結したり、表2の溶液を使用して表面処理したNdFeB系粉と未処理NdFeB系粉を混合後磁場中仮成形と焼結させることで焼結磁石を作製することが可能である。このような焼結磁石ではフッ素や溶液中添加元素などの溶液構成成分の濃度分布は平均的に均一であるが、フッ素原子の拡散経路の近傍で表2の添加元素の濃度が平均的に高いことで、磁気特性が向上する。
Figure 2008266767
<実施例29>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15,0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦15,0.01≦e≦4,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び遷移金属元素の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも10μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物,フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、遷移金属元素の濃度勾配が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
遷移金属元素を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のDyFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、 超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のDyFxとなった。処理液としてはDyFxが 1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素も溶液中で長周期構造を持っていない。このREnFmの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪くなるが保磁力の増加は認められる。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をDyF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った 。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は、増加し無添加の場合の焼結磁石よりも遷移金属元素の添加処理液を使用することでさら保磁力が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配が認められる。表2の添加元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能である。スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに原子番号18から86の元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また表2に示す添加元素を含む遷移金属元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広く高濃度になる傾向がある。遷移金属添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいは希土類元素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)遷移金属元素の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられる。2)遷移金属元素の粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられる。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に遷移金属元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には遷移金属元素,フッ素及び炭素を含む層が成長する。
<実施例30>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは遷移金属元素及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または遷移金属元素及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15、0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦15,0.01≦e≦10,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び半金属元素や遷移金属元素の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも1μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物,フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、遷移金属元素の濃度勾配が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
遷移金属元素を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のDyF系あるいはDyFC系,DyFO系クラスタを含むメタノール溶液 を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のCやOを含むDyFxとなった。処理液とし てはDyFxが1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、Dy,Nd,La,Mgなどの希土類元素あるいはアルカリ土類元素を含むフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。これらの溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークを主ピークとするX線回折パターンが観測された。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFm,REn(F,C,O)mあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。これらの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)あるいはNdFeB系磁粉 をDyF系コート膜形成処理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒
のメタノール除去を行った。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した焼結磁石あるいはNdFeB系磁粉の異方性 方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
この着磁試料を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁試料に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合の焼結磁石よりも遷移金属元素の添加処理液を使用することでさら保磁力あるいは減磁曲線の角型性が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力や角型性がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した原子位置の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び表2で示す遷移金属元素あるいは半金属元素の添加元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに遷移金属元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できるが、透明性の溶液に遷移金属元素や半金属元素を添加した場合の方が保磁力増大効果など磁気特性改善効果が顕著である。希土類元素やアルカリ土類元素を使用しない場合でも、表2に示すような添加元素を含むフッ化物溶液を作成し、磁性体に塗布することで磁気特性改善効果が認められる。添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。10)粒界に偏析する他の元素と結合して粒界の電子構造を変える。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。溶液に添加して拡散させた遷移金属添加元素あるいは半金属元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいはフッ化物溶液の主成分の偏析している粒界近傍で高濃度になる傾向を示し、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れるが、フッ素の偏析場所とは無関係に添加元素が偏析していても磁気特性を向上することもできる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合は、磁石ブロックを切断した試料を分析比較して濃度勾配あるいは濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)フッ化物を主成分とする溶液に遷移金属元素あるいは半金属元素など原子番号18から86の元素を少なくとも1種の元素の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられ、磁石部表面から内部にかけて濃度が減少する傾向がある。2)溶液に添加した遷移金属元素あるいは半金属元素の磁石部粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられ、フッ素濃度の濃度分布と添加元素の濃度プロファイルが近い場合とフッ素を伴わず添加元素が偏析する場合がある。一部の添加元素は偏析せずに母相内に混入する。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に遷移金属元素など添加元素の偏析が見られる場合があり、磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には遷移金属元素,フッ素及び炭素を含む層、あるいは原子番号18から86の元素を含む酸フッ素化合物やフッ化物が1から10000nmの厚さで成長する。このフッ素を含む層は一部焼結磁石の構成元素を含有しており、最終製品でこれらの表面層は研磨等で除去することも可能である。5)溶液処理前にあらかじめ添加された添加元素の濃度勾配と、溶液処理で添加した元素の濃度勾配は異なり、前者はフッ素などフッ化物溶液の主成分の平均的濃度勾配に依存しないが、後者の濃度プロファイルはフッ化物溶液の構成元素の少なくとも1種の元素と濃度プロファイルにおいて依存性が見られる。
<実施例31>
NdFeB系粉末としてNd2Fe14Bを主とする急冷粉を作成し、これらの表面にフッ素化合物を形成する。DyF3を急冷粉表面に形成する場合、原料としてDy(CH3COO)3をH2Oで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のDyF3・XH2Oが形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去する。ゾル状態の希土類フッ化物濃度が10g/dm3以上で該処理液の700nmの波長において光路長が1cmの透過率は5%以上である。このような光透過性のある溶液に遷移金属元素や半金属元素をすくなくとも1種含む化合物あるいは溶液を添加する。添加後の溶液のX線回折ピークはブロードであり、回折ピークの半値幅は1から10度であり流動性がある。この溶液と上記NdFeB粉と混合する。混合物の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させる。500〜800℃の熱処理によりフッ素化合物膜の結晶構造は添加元素を含むNdF3構造,NdF2構造あるいは酸フッ化物などから構成されていることが判明した。磁粉中の拡散経路へのDyやNdの偏析,板状体のNdやDy及びフッ素の偏析以外に添加元素の偏析が認められ、異方性エネルギーの増加,粒界における格子整合性向上,フッ素による母相の還元などにより磁気特性が向上する。重希土類元素の使用量を低減するため、半金属元素や遷移金属元素を添加したフッ化物溶液による表面処理とその後の拡散により半金属元素や遷移金属元素の少なくとも1種を粒界近傍に編析させることで、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果がNdFeB系磁粉で認められ、ボンド磁石用磁粉,熱間成形異方性磁粉及び熱間成形異方性焼結磁石の上記磁気特性改善を可能にする。
<実施例32>
R−Fe−B系(Rは希土類元素)焼結磁石に表面からG成分(Gは金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素から少なくとも1種類)と希土類元素1種以上から選択された元素)及びフッ素原子を拡散させることによって得られ、次の式(1)または(2)
abcdefg (1)
(R・G)a+bcdefg (2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に焼結磁石内に存在する希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素、Gは金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良く、RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、AはB(ホウ素)及びC(炭素)から選ばれる1種又は2種以上、a−gは合金の原子%でa,bは式(1)の場合10≦a≦15,0.005≦b≦2であり、式(2)の場合は10.005≦a+b≦17であり、3≦d≦15,0.01≦e≦10,0.04≦f≦4,0.01≦g≦11、残部がcである。)
で示される組成を有する焼結磁石であって、その構成元素であるF及び金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の少なくとも1種が磁石中心から磁石表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該焼結磁石中の(R,G)214A正方晶からなる主相結晶粒の周りを取り囲む結晶粒界部において、結晶粒界に含まれるG/(R+G)の濃度が主相結晶粒中G/(R+G)濃度よりも平均的に濃く、かつ磁石表面から少なくとも1μmの深さ領域において結晶粒界部にR及びGの酸フッ化物、フッ化物または炭酸フッ化物が存在し、磁石表層付近の保磁力が内部よりも高いことを特徴とする希土類永久磁石は、金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の濃度勾配や濃度差が焼結磁石の表面から中心に向かって認められることが特徴の一つであり、以下の手法の例によって製造することが可能である。
金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)を添加した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばDyの場合は酢酸Dy、または硝酸Dy1−10gを 100mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をDyFx(x=1−3)が生成する化学反応の当 量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のDyFx(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用い て1時間以上攪拌した。
(4)4000〜10000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ 同量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のDyF系あるいはDyFC系,DyFO系クラスタを含むメタノール溶液 を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)DyF系の場合、ほぼ透明なゾル状のCやOを含むDyFxとなった。処理液とし てはDyFxが1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
(8)上記溶液に金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、 12族から16族のCとBを除く元素)の少なくとも1種の元素を含む有機金属化合 物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物,アルカリ土類金属フッ化物または2族金属フッ化物コート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、Dy,Nd,La,Mgなどの希土類元素あるいはアルカリ土類元素、2族金属元素を含むフッ素系処理液に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFm(REは希土類元素、2族金属元素あるいはアルカリ土類元素、n,mは正数)あるいはREnFmOpCr(REは希土類元素、2族金属元素あるいはアルカリ土類元素、Oは酸素、Cは炭素、Fはフッ素、n,m,p,rは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。これらの溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上のピークを主ピークとするX線回折パターンが観測された。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmと異なり、結晶構造もREnFmと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFm,REn(F,C,O)mあるいはREn(F,O)mの回折パターンの一部がみられるようになる。これらの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに0.5度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(100×100×100mm3)あるいはNdFeB 系磁粉をDyF系コート膜形成処理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下 で溶媒のメタノール除去を行った。
(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した焼結磁石あるいはNdFeB系磁粉の異方性 方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
この着磁試料を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁試料に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し添加物含有溶液を使用しない重希土類フッ化物処理液のみの塗布拡散後の場合の焼結磁石よりも金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)添加処理液を使用することでさら保磁力あるいは減磁曲線の角型性が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力や角型性がさらに増加することは、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることを示している。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が一部に見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)の一部は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部でフッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含むフッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含有し短範囲構造を有するフッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にフッ素及び金属元素(希土類元素を除く3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素)の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。フッ化物の粉砕粉から成るスラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物あるいは酸フッ化物のいずれかに遷移金属元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できるが、透明性の溶液に遷移金属元素や半金属元素を添加した場合の方が保磁力増大効果など磁気特性改善効果が顕著である。これは遷移金属元素や半金属元素がフッ化物溶液で均一に原子レベルで分散しており、フッ化物膜中の遷移金属元素あるいは半金属元素が短範囲構造をもって均一に分散されており、低温でこれらの元素がフッ素など溶液構成元素の拡散とともに粒界に沿って拡散できるためである。金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物,酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。7)希土類元素の異方性を高める。8)酸素を母相から除去する。9)母相のキュリー温度を高める。10)希土類元素の使用量を低減できる。すなわち添加元素の使用により同一保磁力で比較すると重希土類元素使用量を1から50%低減できる。11)焼結磁石ブロック表面に添加元素を含有する酸フッ化物あるいはフッ化物が1から10000nmの厚さで形成され、耐蝕性向上あるいは高抵抗化に寄与する。12)あらかじめ焼結磁石に添加されている元素の偏析を助長する。13)母相の酸素を粒界に拡散させ還元作用を示すか、添加元素が酸素と結合し母相を還元する。14)粒界相の規則化を助長する。一部の添加元素は粒界相に留まる。15)粒界3重点のフッ素を含有する相の成長を抑制する。16)粒界と母相界面での重希土類元素あるいはフッ素原子の濃度分布を急峻にする。17)フッ素や炭素あるいは酸素と添加元素の拡散により粒界付近の液相形成温度が低下する。18)フッ素や添加元素の粒界偏析により母相の磁気モーメントが増加する。これらの結果、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減、耐蝕性向上のいずれかの効果が認められる。溶液に添加して拡散させた金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)、磁石表面のフッ化物との界面付近のいずれかに偏析し易い。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素あるいはフッ化物溶液の主成分の偏析している粒界近傍で高濃度になる傾向を示し、フッ素の偏析が少ない粒界ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配あるいは濃度差となって現れる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた添加元素拡散焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の濃度勾配または平均的濃度差が最表面から内部に向かってみられ、磁石部表面から内部にかけて濃度が減少する傾向がある。2)溶液に添加した金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の磁石部粒界付近の偏析がフッ素を伴ってみられ、フッ素濃度の濃度分布と添加元素の濃度分布に関連性あるいは相関性がみられる。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる付近に金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)焼結磁石の最表面には金属元素(希土類元素を除く2族から116族のCとBを除く元素)、フッ素及び炭素を含む層が成長する。5)溶液処理前にあらかじめ添加された添加元素の濃度勾配と、溶液処理で添加した元素の濃度勾配は異なり、前者はフッ素などフッ化物溶液の主成分の濃度勾配に依存しないが、後者はフッ化物溶液の構成元素の少なくとも1種の元素と濃度プロファイルが強い相関関係あるいは相関性がみられる。
<実施例33>
希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩、例えばNdの場合は酢酸Nd、または硝酸Nd4gを100 mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をNdFxy(x,yは正数)が生成する化学反応 の当量分徐々に加えた。
(3)ゲル状沈殿のNdFxy(x,yは正数)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を 用いて1時間以上攪拌した。
(4)4000〜6000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同 量のメタノールを加えた。
(5)ゲル状のNdFC系クラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした 後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく なるまで、3〜10回繰り返した。
(7)NdFC系の場合、ほぼ透明なゾル状のNdFxy(x,yは正数)となった。処 理液としてはNdFxy(x,yは正数)が1g/5mLのメタノール溶液を用いた 。
(8)上記溶液に表2の炭素を除く有機金属化合物を添加した。
その他の使用した希土類フッ化物又はアルカリ土類金属フッ化物を主成分とするコート膜の形成処理液も上記とほぼ同様の工程で形成でき、表2で示すようなDy,Nd,La,Mgフッ素系処理液,アルカリ土類元素あるいは2族の元素に種々の元素を添加しても、いずれの溶液の回折パターンもREnFmCp(REは希土類あるいはアルカリ土類元素、n,m,pは正数)で示されるフッ素化合物や酸フッ素化合物あるいは添加元素との化合物と一致しない。表2の添加元素の含有量の範囲であれば溶液の構造を大きく変えるものではない。溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREnFmCpと異なり、結晶構造もREnFmCpと異なることを示している。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が配置しているためであり、その原子は水素,炭素,酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素,炭素,酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REnFmCpあるいはREn(F,O,C)mの回折パターンの一部がみられるようになる。表2に示す添加元素もその大部分が溶液中で長周期構造を持っていないと考えられる。このREnFmCpの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREnFmCpの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REnFmCpあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪く均一に塗布するのは困難である。
(9)NdFeB焼結体のブロック(10×10×10mm3)をNdF系コート膜形成処 理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った

(10)(9)の操作を1から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5 −5時間熱処理した。
(11)(10)で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上の パルス磁界を印加した。
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
この結果、希土類フッ化物コート膜を形成し熱処理したNdFeB焼結体のブロックの保磁力は増加し無添加の場合Dy,Nd,La及びMg炭フッ化物あるいは炭フッ酸化物が偏析した焼結磁石でそれぞれ40%,30%,25%及び20%保磁力が増加した。このように無添加溶液の塗布熱処理により増加した保磁力をさらに増加させるために表2のような添加元素を各フッ化物溶液中に有機金属化合物を用いて添加した。無添加溶液の場合の保磁力を基準にすると、焼結磁石の保磁力はさらに増加し、これらの添加元素が保磁力の増大に寄与していることが判明した。溶液に添加した元素の近傍は溶媒除去により短範囲構造が見られ、さらに熱処理することで焼結磁石の粒界あるいは種々の欠陥に沿って溶液構成元素とともに拡散する。これらの添加元素は粒界付近に溶液構成元素の一部とともに偏析する傾向を示す。表2に示した添加元素はフッ素,酸素及び炭素の少なくとも1種の元素を伴って焼結磁石中に拡散し、その一部が粒界付近に留まる。高保磁力を示す焼結磁石の組成は、磁石外周部で炭フッ化物溶液を構成する元素の濃度が高く、磁石中心部で低濃度となる傾向を示す。これは焼結磁石ブロックの外側に添加元素を含む炭フッ化物溶液を塗布乾燥し、添加元素を含んだ短範囲構造を有するフッ化物,炭酸フッ化物,炭フッ化物あるいは酸フッ化物が成長するとともに粒界、クラック部あるいは欠陥付近に沿って拡散が進行するためである。すなわち、焼結磁石ブロックには外周側から内部にかけて、フッ素及び表2で示す添加元素を含む3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族の元素の少なくとも1種の元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。これらの元素の溶液中含有量は溶液の光透過性を有する範囲にほぼ一致しており、さらに濃度を増加させても溶液を作製することは可能であり、保磁力を増加させることも可能であり、スラリー状の希土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ化物,酸化物,炭フッ化物,炭酸フッ化物あるいは酸フッ化物のいずれかに3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く元素を添加した場合でも無添加の場合よりも高い保磁力が得られるなど磁気特性向上が確認できた。添加元素濃度を表2の1000倍以上にした場合、溶液を構成するフッ化物の構造が変化し、溶液中で添加元素の分布が不均一となり他の元素の拡散を阻害する傾向がみられ、添加元素が粒界に沿って磁石ブロック内部まで偏析させることが困難となるが局所的に保磁力の増加は認められる。3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の役割は以下のいずれかである。1)粒界付近に偏析して界面エネルギーを低下させる。2)粒界の格子整合性を高める。3)粒界の欠陥を低減する。4)希土類元素などの粒界拡散を助長する。5)粒界付近の磁気異方性エネルギーを高める。6)フッ化物あるいは酸フッ化物との界面を平滑化する。これらの結果、添加元素を使用した溶液の塗布,拡散熱処理により保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。また3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の濃度分布は焼結磁石外周から内部に平均的に濃度が減少する傾向を示し、粒界部や最表面で高濃度となる傾向を示す。粒界の幅は粒界3重点付近と粒界3重点から離れた場所とでは異なる傾向をもち、粒界3重点付近の方が幅が広く、平均の粒界幅は0.1から20nmであり、粒界幅の1倍から1000倍の距離内に添加元素の一部が偏析し、その偏析している添加元素の濃度が磁石表面から内部にかけて平均的に減少する傾向を示し、粒界相の一部にフッ素が存在している。また添加元素は、粒界相あるいは粒界の端部、粒界から粒内に向かって粒内の外周(粒界側)のいずれかに偏析し易い。上記磁石の磁気特性向上を確認できた溶液中添加物は、表2のMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Pb,Biや全ての遷移金属元素を含む原子番号18から86の中から選択された元素であり、これらの中の少なくとも1種の元素とフッ素について焼結磁石において磁石の外周から内部にかけてと、粒界から粒内にかけて平均的に濃度勾配が認められる。粒界付近と粒内の3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のBを除く添加元素の濃度勾配または濃度差は、磁石外周から中央部にかけて平均的に変化し、磁石中心に近づくと小さくなる傾向を示すが、拡散が十分であれば、フッ素を含む粒界近傍で添加元素の偏析にともなう添加元素の濃度差が見られる。これらの添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめ焼結磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、フッ素の偏析している粒界近傍で高濃度になり、フッ素の偏析が少ない粒界付近ではあらかじめ添加した元素の偏析が見られ、磁石ブロック最表面から内部にかけて平均的な濃度勾配となって現れる。添加元素濃度が溶液中で低濃度の場合でも、磁石最表面と磁石中心部とでは濃度差がみられ、濃度勾配あるいは粒界と粒内の濃度差となって確認できる。このように、溶液に添加元素を加え、磁石ブロックに塗布後熱処理により焼結磁石の特性を向上させた時に、焼結磁石の特徴は以下の通りである。1)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の濃度勾配または平均的濃度差が焼結磁石のフッ素を含む層との反応層を含んだ最表面から内部に向かってみられる。2)表2の元素あるいは遷移金属元素を含む原子番号18から86の元素の粒界付近の偏析がフッ素あるいは炭素,酸素を伴ってみられる部分が多い。3)粒界相でフッ素濃度が高く粒界相の外側(結晶粒外周部)でフッ素濃度が低く、フッ素濃度差が見られる粒界幅の1000倍以内に表2の元素あるいは原子番号18から86の元素の偏析が見られ、かつ磁石ブロック表面から内部にかけて平均的な濃度勾配や濃度差がみられる。4)溶液を塗布された焼結磁石ブロックあるいは磁石粉または強磁性粉の最外周でフッ素及び添加元素の濃度が最も高く、磁性体部の中の外側から内部に向かって添加元素の濃度勾配あるいは濃度差が認められる。5)表2の添加元素あるいは原子番号18から86の元素を含む溶液を構成する元素のうち少なくとも1種は表面から内部に向かって濃度勾配をもち、溶液から成長した磁石とフッ素含有膜との界面付近あるいは界面より磁石からみて外側でフッ素濃度が最大であり、界面付近のフッ化物が酸素あるいは炭素を含有し、高耐腐食性,高電気抵抗、あるいは高磁気特性のいずれかに寄与している。このフッ素含有膜には表2で示す添加元素や原子番号18から86の元素の少なくとも1種または2種以上が検出され、磁石内部のフッ素の拡散路付近に上記添加元素が多く含まれ、保磁力の増加,減磁曲線の角型性向上,残留磁束密度増加,エネルギー積増加,キュリー温度上昇,着磁磁界低減,保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減,耐食性向上,比抵抗増加,熱減磁率低減,拡散温度低減、粒界幅の成長抑制,粒界部の非磁性層の成長抑制のいずれかの効果が認められる。上記添加元素の濃度差は透過電子顕微鏡のEDX(エネルギー分散X線)プロファイル、あるいはEPMA分析,ICP分析などで焼結ブロックを表面側から内部に切断した試料について分析することで確認できる。フッ素原子の近傍(フッ素原子の偏析位置から5000nm以内、好ましくは1000nm以内)に溶液中に添加された原子番号18から86の元素が偏析していることが透過電子顕微鏡のEDXやEELSにより分析できる。フッ素原子の近傍に偏析している添加元素とフッ素原子の偏析位置から2000nm以上離れた位置に存在する添加元素との比率は磁石表面から100μm以上内部の位置で1.01から1000であり好ましくは2以上である。磁石表面では前期比率は2以上である。前記添加元素は粒界に沿って連続的に偏析している部分と不連続に偏析している部分のどちらの状態も存在し、必ずしも粒界全体に偏析しているわけではないが、磁石の中心側では不連続になり易い。また添加元素の一部は偏析せずに母相に平均的に混入する。原子番号18から86の添加元素は焼結磁石の表面から内部にかけて母相内に拡散した割合あるいはフッ素偏析位置近傍に偏析している濃度が減少する傾向があり、この濃度分布のために磁石内部よりも表面に近い方で保磁力が高い傾向を示す。前記磁気特性改善効果は、焼結磁石ブロックだけでなくNdFeB系磁性粉やSmCo系磁粉あるいはFe系磁粉表面に表2で示す溶液を用いてフッ素及び添加元素を含む膜を形成しても、拡散熱処理により硬磁気特性の改善や磁粉電気抵抗の増加などの効果が得られる。また、NdFeB粉を磁場中仮成形後の仮成形体に3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含有する溶液を含浸して磁粉表面の一部に添加物及びフッ素を含む膜を形成後焼結したり、3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含む溶液を使用して表面処理したNdFeB系粉と未処理NdFeB系粉を混合後磁場中仮成形後、焼結させることで焼結磁石を作製することが可能である。このような焼結磁石ではフッ素や溶液中添加元素などの溶液構成成分の濃度分布は平均的に均一であるが、フッ素原子の拡散経路の近傍で3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素の濃度が平均的に高いことにより、磁気特性が向上する。このような3族から11族の金属元素あるいは2族、12族から16族のCとBを除く元素を含む溶液から形成したフッ素を含む粒界相は、フッ素が平均で0.1から60原子%好ましくは1から20原子%偏析部で含有しており、添加元素の濃度により非磁性,強磁性あるいは反強磁性的に振舞うことができ、強磁性粒と粒の磁気的な結合を強めたり弱めたりすることにより磁気特性を制御することが可能である。
工程図。 工程図。 バルク体の被覆。 リング成形体の被覆。 X線回折パターンの一例。 透過電子顕微鏡写真。 EDXプロファイル。 元素分析像。
符号の説明
11,23 磁性層
12 下地層
13,14,21 基板
15 フッ素化合物
16 加熱部
22 発熱部
24 磁気特性変化部
31 焼結磁石
32 フッ素化合物溶液
33 拡散層
41 リング磁石
42 表面拡散層
43 内部拡散層

Claims (19)

  1. アルコールを主成分とする溶媒と、
    前記溶媒中に分散した希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物と、で構成され、
    X線回折で検出されるピークの少なくとも1つは、1度よりも大きい半値幅を有する処理液。
  2. 前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物は、前記溶媒中にゾル状又はゲル状で分散した
    請求項1に記載の処理液。
  3. 前記溶媒中における前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物の濃度は、0.1g/dm3以上100g/dm3以下である
    請求項1に記載の処理液。
  4. 前記希土類又はアルカリ土類金属は、
    La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Mg,Ca,Sr,Baのうちの一種類以上を含む
    請求項1に記載の処理液。
  5. 前記アルコールは、
    メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコ
    ールのうちの一種類以上で構成される
    請求項1に記載の処理液。
  6. 前記アルコールを主成分とする溶媒は、
    メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコ
    ールのうちの一種類以上を50wt%以上100wt%未満含有し、
    かつ、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンのうちの一種類以上を0wt%よりも多く50wt%以下含有する
    請求項1に記載の処理液。
  7. 前記X線回折で検出されるピークは複数存在し、
    かつ各ピークが、面間隔1.0オングストローム以上4.5オングストローム以下の範囲に対応する回折角度に検出される
    請求項1に記載の処理液。
  8. 前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物は、前記溶媒中にゾル状で分散した
    請求項1に記載の処理液。
  9. 前記X線回折で検出されるピークは複数存在し、
    夫々のピークが1度よりも大きい半値幅を有する
    請求項1に記載の処理液。
  10. 前記X線回折で検出されるピーク構造は、
    REnFmで示されるフッ素化合物(REは希土類又はアルカリ土類元素、Fはフッ素
    、m及びnは正数を表す)又は該フッ素化合物に酸素を含有した酸フッ素化合物と異なる
    ピーク構造である
    請求項1に記載の処理液。
  11. アルコールを主成分とする溶媒と、
    前記溶媒中に分散した希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物と、で構成され、
    X線回折で検出されるピークの少なくとも1つは、1度よりも大きい半値幅を有し、
    磁粉表面への絶縁膜形成に用いる
    処理液。
  12. 前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物は、前記溶媒中にゾル状又はゲル状で分散
    した
    請求項11に記載の処理液。
  13. 前記溶媒中における前記希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物の濃度は、0.1g/
    dm3以上100g/dm3以下である
    請求項11に記載の処理液。
  14. 絶縁処理対象物に処理液を塗布し絶縁膜を形成する方法であり、
    前記処理液は、
    アルコールを主成分とする溶媒と、
    前記溶媒中に分散した希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物と、で構成され、
    かつX線回折で検出されるピークの少なくとも1つは、1度よりも大きい半値幅を有す
    るものである
    絶縁膜の形成方法。
  15. 前記絶縁処理対象物は、
    磁性粉体,磁性体金属板、又は磁性体金属板ブロックのいずれかである
    請求項14に記載の絶縁膜の形成方法。
  16. 前記アルコールは、
    メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコ
    ールのうちの一種類以上で構成される
    請求項14に記載の絶縁膜の形成方法。
  17. 前記アルコールを主成分とする溶媒は、
    メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコ
    ールのうちの一種類以上を50wt%以上100wt%未満含有し、
    かつ、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンのうちの一種類以上を
    0wt%よりも多く50wt%以下含有する
    請求項14に記載の絶縁膜の形成方法。
  18. 前記絶縁処理対象物は平均粒径が0.1μm以上500μm以下の磁粉であり、
    該磁粉1kgに対し前記処理液を10ml以上300ml以下塗布する
    請求項14に記載の絶縁膜の形成方法。
  19. 前記絶縁処理対象物は磁性体金属板又は磁性体金属板ブロックであり、
    平均膜厚が0.001μm以上10μm以下の絶縁膜を形成する
    請求項14に記載の絶縁膜の形成方法。
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