JP2008095185A - 電気・電子機器用銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金で形成される銅合金板材であって、NiとSiを合計で50mass%以上含む3種類の金属間化合物A、B、Cを含有し、前記金属間化合物Aの化合物径は0.3μm以上2μm以下であり、前記金属間化合物Bの化合物径は0.05μm以上0.3μm未満であり、前記金属間化合物Cの化合物径は0.001μmを越え0.05μm未満である電気・電子機器用銅合金板材。
【選択図】なし
Description
また、Cu−Ni−Si系合金でNi−Si系化合物の分布状態を規定して特性を改善した合金が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
(1)Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金で形成される銅合金板材であって、NiとSiを合計で50mass%以上含む3種類の金属間化合物A、B、Cを含有し、前記金属間化合物Aの化合物径(その化合物の径の最小値と最大値の算術平均:以下同様)は0.3μm以上2μm以下であり、前記金属間化合物Bの化合物径は0.05μm以上0.3μm未満であり、前記金属間化合物Cの化合物径は0.001μmを越え0.05μm未満であることを特徴とする電気・電子機器用銅合金板材、
(2)前記金属間化合物Aの分散密度a、前記金属間化合物Bの分散密度bおよび前記金属間化合物Cの分散密度cが、関係式[a/(b+c)≦0.010]を満足することを特徴とする(1)項記載の電気・電子機器用銅合金板材、
(3)前記金属間化合物Bの分散密度bおよび前記金属間化合物Cの分散密度cが、関係式[0.001≦(b/c)≦0.10]を満足することを特徴とする(1)または(2)項記載の電気・電子機器用銅合金板材、
(4)前記銅合金板材の圧延方向に垂直な断面における結晶粒径の横長さx(μm)と縦長さy(μm)が、関係式[x/y≧2]を満足することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金板材、
(5)前記銅合金板材が、更にB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Co、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、Sn、ZnおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005〜1.5mass%含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金板材、
(6)Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金鋳塊を850〜950℃で2〜10時間再熱するステップと、前記再熱された銅合金鋳塊を100〜500秒間熱間圧延して銅合金板材とするステップと、前記熱間圧延された銅合金板材を600〜800℃となるまで急冷するステップと、前記急冷された銅合金板材を400〜550℃で1〜4時間時効熱処理をするステップとを有することを特徴とする電気・電子機器用銅合金板材の製造方法、および
(7)前記銅合金鋳塊が、更にB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Co、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、Sn、ZnおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005〜1.5mass%含有することを特徴とする(6)項に記載の電気・電子機器用銅合金板材の製造方法
を提供するものである。
本発明の銅合金板材は、熱間圧延前の再熱条件、熱間圧延条件、時効熱処理条件を規定することにより容易に製造できる。
NiとSiはNi−Si化合物を析出して強度向上に寄与する。
Niの含有量は2.0〜5.0mass%、好ましい含有量は2.5〜3.5mass%ある。Siの含有量は0.43〜1.5mass%、好ましい含有量は0.5〜0.7mass%、より好ましくは0.8〜1.1mass%である。
これらの量を規定した理由は、いずれが下限値を下回っても十分な強度が得られず、いずれが上限値を上回っても強度が飽和するうえ、導電率が低下するためである。
NiとSiとの質量比は、特に制限するものではないがNi1に対し、Siは0.2〜0.3の範囲であるのが好ましい。またSiの含有量の上限は、Siの含有量がNiの含有量の約1/4のときに最も高強度になること、Siの含有量が1.5mass%を超えると熱間圧延割れが生じ易くなることを踏まえて規定した。
化合物の直径(化合物径)は合金試料から直径3mmの円板を打ち抜き、ツインジェット研磨法により薄膜に研磨し、加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で50000倍と100000倍の写真を任意の3個所で撮影し、その写真上で化合物の直径と個数を測定する。これによりその化合物径(その化合物の径の最小値と最大値の算術平均)に応じて化合物A、BおよびCとした。
図1は、本発明の実施例2のNo.9を加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で観察した例であり、(a)、(b)は5万倍、(c)は10万倍の顕微鏡写真である。
化合物A、B、Cの分散密度は、以下のように求めた。
(1)まず、任意の3ヶ所で撮影した写真中に見られた化合物をサイズ別に分類した。ここで、化合物径はその化合物の径の最小値と最大値の算術平均とした。
(2)次いで、各サイズの化合物の個数を数え、各写真の面積で除し、さらに単位面積(mm2)へ換算した。
(3)それを、5万倍、10万倍の写真のそれぞれ3枚で行って、合計6枚の平均値を求めた。
化合物Bの粒径と分散密度は、熱間圧延での圧延パス回数、圧延パスの間隔時間、熱間圧延終了温度、圧延終了後に水焼入するまでの時間などを変えることで制御することができる。化合物Bの分散密度bは、102〜106個/mm2が好ましい。
本発明において、化合物A、BおよびCの成分組成は前記透過電子顕微鏡(TEM)に付属したEDS(エネルギー分散型分析器)により適正に分析できる。その際、銅母相の影響を受けるため、得られたチャートで銅ピーク値とバックグランドを除いて、NiとSiとその他の検出された元素のピーク値を加算した数値で規格化し、化合物に含まれるNiおよびSiの含有%を求めた。
Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%を含有する銅合金鋳塊を850〜950℃で2〜10時間再熱し、次いで熱間圧延を100〜500秒間施し、熱間圧延終了温度を600〜800℃として急冷することにより得られる。前記急冷条件は300℃以上の温度範囲において冷却速度を5〜100℃/秒とするのが好ましい。その後、冷間圧延と焼鈍を必要に応じて繰り返し、次いで時効熱処理を400〜550℃で1〜4時間の条件で施す。これによりめっき性、プレス性、耐熱性に優れた銅合金板材を得ることができる。
[実施例1]
Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.08mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる表1に記載の組成をもつ銅合金(No.1〜6)を高周波溶解炉により溶解し、これを10〜30℃/秒の冷却速度で鋳造して厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を製造した。表1に示す条件で再熱処理し、これに表1記載の熱間圧延を施して板厚12mmの熱延板とした。次いで、その両面を各1mm面削して板厚を10mmとし、これを冷間圧延して厚み0.167mmの冷延板とした。次に950℃で20秒間溶体化処理し、その後直ちに水焼入れし、次いで表1に示す時効熱処理を施し、最後に圧延率10%の冷間圧延を施して厚み0.15mmの各供試材を得た。得られた各々の供試材の特性を調査した。
a.導電率:
20℃(19.5℃〜20.5℃)に保持した恒温漕中で四端子法により比抵抗を測定して導電率を算出した。端子間距離は100mmとした。
圧延方向に平行に切り出したJIS Z2201−5号の試験片をJIS Z2241に準じて各3本ずつ測定し、その平均値を求めた。
供試材から切り出した板材を不活性ガス中で400℃から700℃まで50℃毎の温度で30分間熱処理し、ビッカース硬度計により表面硬度を測定した。各5箇所測定しその平均値を求め、熱処理を行わない非熱処理材(As材)の硬度と硬度が最も低い材料の硬度のちょうど半分の硬度になる温度を半軟化温度とした。前記半軟化温度が500℃を超えたものはA、450℃〜500℃のものはB、450℃未満のものはCと評価した。耐熱性の高い材料はプレス加工後の歪取り焼鈍での安定性が優れ好ましい。
簡易プレス機のポンチとダイのクリアランスを10%に設定して供試材を切断し、この切断部分を樹脂埋めして、機械研磨、湿式研磨を行ったのち、切断面を400倍の光学顕微鏡で観察してバリの長さを測定した。バリの長さは、圧延方向に平行な方向と垂直な方向の2方向について各5個ずつ測定しそれを平均(n=10)して求めた。
バリの長さが1μm未満をA、1〜3μmをB、3μm超をCと評価した。バリは短いほど良好とされている。
供試材に約2μmのAgめっきを施し、350℃、400℃、450℃で、各10分間加熱した後、Agめっき上の膨れを200倍の光学顕微鏡で30mm×30mmの領域に渡って観察した。膨れが0個の場合はA、1〜5個の場合はB、5個を超える場合はCと評価した。めっき膨れが存在するとボンディング性が劣る。
Niを3.0mass%およびSiを0.65mass%に加えて、更にMgまたはZnを表1に示す量添加し、残部がCuと不可避不純物からなる表1に記載の組成をもった銅合金(No.7〜17)を、表示の製造条件を用いた他は実施例1と同じ方法により供試材を作製し、実施例1と同じ調査を行った。
Niを2.4〜3.3mass%、Siを0.43〜1.08mass%含有し、更にMg、Zn、Snを表2に示す量含有し、残部がCuと不可避不純物からなる表2に記載の組成をもつ銅合金(No.21〜30)を用いた他は実施例1と同じ方法により供試材を作製し、実施例1と同じ調査を行った。
Niを3.0mass%およびSiを0.65mass%に加えて、更にMgまたはZnを表2に示す量添加し、残部がCuと不可避不純物からなる表1に記載の組成をもった銅合金(No.31〜37)を製造条件のいずれかを本発明の規定値外とした他は、実施例1と同じ方法により供試材を作製し、実施例1と同じ調査を行った。
NiおよびSiに加えて、更にCoを添加し、残部がCuと不可避不純物からなる表3に記載の組成をもった銅合金(No.38〜41)を、表示の製造条件用いた他は実施例1と同じ方法により供試材を作製し、実施例1と同じ調査を行った。
Claims (7)
- Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金で形成される銅合金板材であって、
NiとSiを合計で50mass%以上含む3種類の金属間化合物A、B、Cを含有し、
前記金属間化合物Aの化合物径は0.3μm以上2μm以下であり、
前記金属間化合物Bの化合物径は0.05μm以上0.3μm未満であり、
前記金属間化合物Cの化合物径は0.001μmを越え0.05μm未満である
ことを特徴とする電気・電子機器用銅合金板材。 - 前記金属間化合物Aの分散密度a、前記金属間化合物Bの分散密度bおよび前記金属間化合物Cの分散密度cが、関係式[a/(b+c)≦0.010]を満足することを特徴とする請求項1記載の電気・電子機器用銅合金板材。
- 前記金属間化合物Bの分散密度bおよび前記金属間化合物Cの分散密度cが、関係式[0.001≦(b/c)≦0.10]を満足することを特徴とする請求項1または2記載の電気・電子機器用銅合金板材。
- 前記銅合金板材の圧延方向に垂直な断面における結晶粒径の横長さx(μm)と縦長さy(μm)が、関係式[x/y≧2]を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金板材。
- 前記銅合金板材が、更にB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Co、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、Sn、ZnおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005〜1.5mass%含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金板材。
- Niを2.0〜5.0mass%、Siを0.43〜1.5mass%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金鋳塊を850〜950℃で2〜10時間再熱するステップと、
前記再熱された銅合金鋳塊を100〜500秒間熱間圧延して銅合金板材とするステップと、
前記熱間圧延された銅合金板材を600〜800℃となるまで急冷するステップと、
前記急冷された銅合金板材を400〜550℃で1〜4時間時効熱処理をするステップと
を有することを特徴とする電気・電子機器用銅合金板材の製造方法。 - 前記銅合金鋳塊が、更にB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Co、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、Sn、ZnおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005〜1.5mass%含有することを特徴とする請求項6に記載の電気・電子機器用銅合金板材の製造方法。
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