JP4664584B2 - 高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法 - Google Patents

高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4664584B2
JP4664584B2 JP2003326452A JP2003326452A JP4664584B2 JP 4664584 B2 JP4664584 B2 JP 4664584B2 JP 2003326452 A JP2003326452 A JP 2003326452A JP 2003326452 A JP2003326452 A JP 2003326452A JP 4664584 B2 JP4664584 B2 JP 4664584B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
copper alloy
alloy plate
alloy sheet
strength
precipitates
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003326452A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005089843A (ja
Inventor
政洋 柳川
浩史 荒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2003326452A priority Critical patent/JP4664584B2/ja
Publication of JP2005089843A publication Critical patent/JP2005089843A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4664584B2 publication Critical patent/JP4664584B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

本発明は、高強度かつ高導電率で、曲げ加工性が優れた銅合金に関し、自動車用コネクタ等に好適な電気・電子部品用の高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法に関する。
電子機器の小型化及び軽量化の要請に伴い、電気・電子部品の小型化及び軽量化が進んでいる。そして、この電気・電子部品の小型化及び軽量化のために、これらに使用される銅合金材料も板厚及び幅が小さくなり、ICにおいては、板厚が0.1 〜0.15mmと薄い銅合金板も使用されるようになってきている。その結果、これらの電気・電子部品に使用される銅合金材料には、より一層高い引張強度が求められるようになっている。例えば、自動車用コネクタなどでは、900MPa以上の高強度銅合金板が求められるようになっている。
また、これらコネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどに用いられる銅合金板は、前記高強度および高導電率はもちろんのこと、ノッチング後の90°曲げなど厳しい曲げ加工性が要求されることが多くなってきている。しかも、電子部品の小型化に伴い、従来厳しい曲げ加工は圧延方向に直角の曲げ線で行われる(いわゆるG.W.)のが通例であったのが、圧延方向に平行の曲げ線で行われる(いわゆるB.W.)ことが多くなってきている。
更に、電気・電子部品の前記薄板化及び幅狭化の傾向は、銅合金材料の導電性部分の断面積を減少させる。この断面積の減少による導電性の低下を補うためには、銅合金材料自体に、導電率が20%IACS 以上の良好な導電率が求められるようになっている。
従来から、高強度な材料としては、42アロイ(Fe-42 質量% Ni合金)が知られている。この42アロイは約580MPa程度の引張強さを有し、異方性も少なく、また曲げ加工性も良好である。しかしながら、この42アロイは900MPa以上の高強度化の要求には応えられない。また、42アロイはNiを多量に含有するため、価格が高いという問題点もある。
このため、前記種々の特性に優れ、且つ安価なコルソン合金(Cu-Ni-Si系)が電気・電子部品用に使用されるようになった。このコルソン合金はケイ化ニッケル化合物(Ni2Si)の銅に対する固溶限が温度によって著しく変化する合金で、焼入・焼戻によって硬化する析出硬化型合金の1種であり、耐熱性や高温強度も良好で、これまでも、導電用各種バネや高抗張力用電線などに広く使用されている。
しかし、このコルソン合金においても、銅合金材料の強度を向上させると、やはり導電性や曲げ加工性は低下する。即ち、高強度のコルソン合金において、良好な導電率及び曲げ加工性とすることは非常に困難な課題である。
このような課題に対して、曲げ加工性が優れた高強度銅合金として、Ni;2 乃至5 重量%、Si;0.5 乃至1.5 重量%、Zn;0.1 乃至2 重量%、Mn;0.01乃至0.1 重量%、Cr;0.001 乃至0.1 重量%、Al;0.001 乃至0.15重量%、Co;0.05乃至2 重量%を含有し、不純物成分のSの含有量を15ppm 以下に規制した、コルソン合金が提案されている( 特許文献1参照) 。
また、曲げ加工性が優れた銅合金として、Ni;2 〜4 重量%、Si;0.5 〜1.0 重量%、Zn;0.1 〜1.0 重量%、Al;0.001 〜0.15重量%、Mn;0.01〜0.1 重量%、Cr;0.001 〜0.1 重量%を含有し、S;0.002 重量%以下に規制し、残部が実質的に銅及び不可避的不純物からなる銅合金であって、析出物の大きさが10nm以下、析出物の分布密度が1×105 個/(μm3 )以上であり、硬度Hv が220以上であるコルソン合金も提案されている( 特許文献2参照) 。
更に、曲げ加工性が優れた銅合金板として、Ni:0.4〜5%、Si:0.1〜1%を含み、残部Cuと不可避不純物からなり、圧延方向に対して平行及び直角方向とも、耐力が450N/m 2 以上でかつ耐力と引張強さの比が0.95以下、さらに、均一伸びと全伸びの比が0.5以上、かつn値が0.05以上であるコルソン合金が提案されている (特許文献3参照) 。
特許3049137 号公報(1、6 〜10頁) 特開平6 −184680号公報(1、5 〜7 頁) 特開2002−266042号公報(1、6 〜7 頁)
しかし、これら改良されたコルソン合金においても、銅合金材料の強度を向上させると、やはり導電性や曲げ加工性は低下する。特に、前記した900MPa以上の引張強度を持たせようとすると、導電性が必然的に導電率が20%IACS 未満程度に著しく低下する。
例えば、前記特許文献1では、引張強度が916MPa程度と最も高いコルソン合金でも導電率が26.3%IACS 程度しかない。しかも、導電率を下げるAlや、鋳造性を低下させるCrなどを含み、生産性が悪く、また安定的に高強度と高導電性の銅合金板を得にくい。また、前記特許文献2では、引張強度が最も高い892MPa程度のコルソン合金の導電率が44%IACS 程度である。また、前記特許文献3では、引張強度が710 〜730MPa程度の最も高いコルソン合金の導電率が46%IACS 程度である。
即ち、これらの事実から、900MPa以上の引張強度を有する高強度の電気・電子部品用銅合金にとって、特に高導電率化が両立できず、導電率を20%IACS 以上とするとともに、良好な曲げ加工性を確保することが非常に困難な課題であることが分かる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、900MPa以上の引張強度を有する高強度を有し、かつ、導電率を20%IACS 以上とするとともに、良好な曲げ加工性を有するコルソン合金を提供することである。
この目的を達成するために、本発明の高強度銅合金板の要旨は、Ni;4.0〜5.0 質量% を含み、かつSiをNiとSiとの質量比Ni/Si が4 〜5 の範囲となるように含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金板であって、人工時効硬化処理後の銅合金板を100 万倍の透過型電子顕微鏡で観察した際に、この銅合金板の冷間圧延によって導入された転位と組織的に識別して測定された、銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径が3 〜10nmであるとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nm以下であり、かつ、この銅合金板の引張強さが900MPa以上、導電率が20%IACS 以上であることとする。
また、上記目的を達成するために、本発明の高強度銅合金の製造方法の要旨は、Ni;4.0〜5.0 質量% を含み、かつSiをNiとSiとの質量比Ni/Si が4 〜5 の範囲となるように含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金圧延板を750 〜1000℃の温度で溶体化処理後に水冷し、更に、加工率を20% 以上とした仕上げ冷間圧延後に350 〜550 ℃の温度で2 〜6 時間の人工時効硬化処理を施すか、またはこの冷間圧延と人工時効硬化処理とを施す工程を2 回以上繰り返して行って、銅合金板を得、100 万倍の透過型電子顕微鏡でこの銅合金板組織を観察した際に、この銅合金板の冷間圧延によって導入された転位と組織的に識別して測定された、銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径を3 〜10nmとするとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下とし、銅合金板の引張強さを900MPa以上で、導電率を20%IACS 以上とすることである。
本発明では、銅合金板の上記特定の成分組成と、上記特定の観察条件で特定される組織との組み合わせによって、900MPa以上の引張強度を有する高強度を有し、かつ、導電率を20%IACS 以上とするとともに、良好な曲げ加工性を有するコルソン系銅合金板を提供できる。
また、上記特定の製造方法とすることで、人工時効硬化処理されたコルソン系銅合金板の組織を、上記特定の観察条件で特定される組織とすることができ、引張強さを900MPa以上で、導電率を20%IACS 以上とし、曲げ加工性にも優れるものとすることができる。
この際、上記銅合金板および上記特定の製造方法で得られる銅合金板は、より高強度でより高導電率であることが好ましい。したがって、好ましくは引張強度で930MPa以上、より好ましくは950MPa以上とする。また、好ましくは導電率で30%IACS 以上、より好ましくは40%IACS 以上とする。
(Ni2Si 析出物)
本発明で言うNi2Si 析出物とは、後述する本発明銅合金板の100 万倍の透過型電子顕微鏡組織(TEM) 写真である図1 、2 に示すA の析出物であって、人工時効硬化処理後の銅合金板組織中に存在する、平均粒径が3 〜10nmの微細Ni2Si 析出物のことを言う。図1 、2 に示すNi2Si 析出物A は、楕円状の黒点中を横断する形で、幅を持った白線状の形状で現れている。
このNi2Si 析出物は、本発明高強度銅合金板の製造に際し、特定条件の溶体化処理により銅組織中に一旦固溶したNi、Siが、その後の特定条件の人工時効硬化処理によって母相から微細に析出したNi2Si 相 (化合物相) である。
但し、人工時効硬化処理後の銅合金板組織中に存在するNi2Si 相としては、上記微細Ni2Si 析出物の他に、人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも存在するNi2Si 相も存在する。このような人工時効硬化処理前に既に存在しているNi2Si 相は、主として、銅合金板の製造に際し、鋳塊の段階で既に存在する晶出物である。この晶出物を含めて、人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも残存するNi2Si 相は、粒径が数十μm 程度以上の粗大なものであり、本発明で規定した上記100 万倍の超高倍率の透過型電子顕微鏡では観察できない。言い換えると、本発明で規定した上記100 万倍の透過型電子顕微鏡観察条件は、特定条件の人工時効硬化処理によって母相から新たに微細に析出したNi2Si 相のみを観察しうる特有の条件であると言える。
(銅合金板組織条件)
本発明の銅合金板組織では、人工時効硬化処理された銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径を3 〜10nmとするとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下と規定する。
前記した本発明の透過型電子顕微鏡組織観察条件により撮影した倍率が100 万倍の組織写真を各々図1 、2 に示す。図1 は後述する実施例の表2 における発明例3 、図2 は後述する実施例における比較例17の組織写真である。各図1 、2 中において、A はNi2Si 析出物、d は Ni2Si析出物の粒径 (nm) 、l は Ni2Si析出物の間隔(nm)を各々示す。
本発明において、析出物の粒径d とは、図1 、2 に示す通り、Ni2Si 析出物の前記白線の長さ (長辺側あるいは最も長い辺) の長さを言う。そして、観察視野内の各Ni2Si 析出物A の各粒径d を平均化したものが、本発明で言う平均粒径である。
また、本発明において、Ni2Si 析出物の間隔l とは、図1 、2 に示す通り、観察視野内の隣り合う各Ni2Si 析出物A 、A 同士の間隔l を言う。ただ、計算上は単位体積V 中に存在するNi2Si 析出物A の個数n から、本発明で言う平均間隔l AV. を求める。即ち、l AV . = 3 √(V/n) より求める。
ここで単位体積V は観察用試料の体積であり、この試料の大きさ、縦(nm)×横(nm)×膜厚(nm)より、x nm3 と求められる。したがって、Ni2Si 析出物A の平均間隔l AV. は、この観察用試料の体積V(x nm3)と、視野中に存在するNi2Si 析出物A の測定個数n より、3 √(x/n) により計算できる。
人工時効硬化処理された銅合金板組織中のNi2Si 析出物の上記平均粒径を3 〜10nmとすることによって、高強度化、高曲げ加工化、高導電率化に寄与する微細なNi2Si 析出物の量 (数) を多くしうる。前記した本発明の固有の透過型電子顕微鏡観察条件からして、ここで言う微細なNi2Si 析出物とは、実質的に、特定条件の人工時効硬化処理によって母相から新たに微細に析出したNi2Si 相からなる。
Ni2Si 析出物の平均粒径が10nmを超えた場合、高強度化に寄与する微細なNi2Si 析出物の量 (数) が不足する。このため、銅合金板の引張強さを900MPa以上に高強度化できず、導電率との両立ができない。一方、Ni2Si 析出物の平均粒径を3nm 未満に細かくすると、転位によってNi2Si 析出物が切断されてしまうため、やはり、銅合金板の引張強さを900MPa以上に高強度化できず、導電率との両立ができない。したがって、人工時効硬化処理された銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径は3 〜10nmの範囲とする。
また、人工時効硬化処理された銅合金板組織中のNi2Si 析出物の上記平均間隔を25nm以下と小さくすることによって、銅合金板の引張強さを900MPa以上に高強度化できる。Ni2Si 析出物の平均間隔が25nmを超えた場合、銅合金板の引張強さを900MPa以上に高強度化できず、導電率との両立ができない。したがって、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下と規定する。
なお、人工時効硬化処理後の銅合金板組織中に存在するNi2Si 相として、上記微細Ni2Si 析出物の他に存在する、人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも存在するNi2Si 相はできるだけ少なくする方が好ましい。このような人工時効硬化処理前に既に存在しているNi2Si 相は、前記した通り、粒径が数十μm 程度以上の粗大なものであり、強度の向上には寄与しない。また、NiやSiをこれらNi2Si 相で消費すると、人工時効硬化処理後に生成し、強度や曲げ加工性向上に寄与する上記微細Ni2Si 析出物の量が減る。
但し、鋳造技術の限界もあり、人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも存在するNi2Si 相を無くすことはできない。このため、本発明では人工時効硬化処理後の銅合金板組織中に、これら粗大なNi2Si 相の混在を許容する。言い換えると、本発明では、これら人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも存在するNi2Si 相が、人工時効硬化処理後の銅合金板組織中に存在 (混在) しても、銅合金板の引張強さ900MPa以上の高強度化と導電率20%IACS 以上の高導電率化、曲げ加工性などを両立できる利点がある。
(銅合金板組織観察条件)
本発明で規定した100 万倍の超高倍率より倍率の低い、透過型電子顕微鏡観察では、晶出物を含めた人工時効硬化処理前に既に存在し、人工時効硬化処理後にも残存するNi2Si 相をも混同して観察する可能性がある。また、Ni2Si 相自体を識別乃至観察できない可能性がある。
図3 と図4 とに、Niが各々3.9%と4.4 % のコルソン合金板の、例えば15万倍の透過型電子顕微鏡観察結果を示す。図3 と図4 とから分かる通り、銅合金板の冷間圧延によって銅合金板組織中に導入される転位と、Ni2Si 相との組織的な識別が困難である。特に、冷間圧延の加工率が高くなるほど、銅合金板組織中に導入される転位の量が多くなって、透過型電子顕微鏡による微細析出Ni2Si 相の組織観察が困難となる。この点、本発明で規定した上記100 万倍の超高倍率の透過型電子顕微鏡でないと、上記図3 と図4 のように、転位と微細析出Ni2Si 相の区別が組織観察上困難となる。
上記倍率以外の好ましい透過型電子顕微鏡による組織観察条件を以下に説明する。透過型電子顕微鏡における試料の膜厚は、好ましくは1 〜100 nmとする。観察用試料の膜厚が100 nmを超えた場合、十分鮮明な組織像が得られない。
一方、観察用試料の膜厚が1 nm未満の場合、観察されるNi2Si 析出物の数がより少なくなる。このため、特に平均間隔を実際よりも多めに観察しやすく、実際の銅合金板の性能が、引張強さ900MPa以上の高強度化と導電率20%IACS 以上の高導電率化を両立しているにも関わらず、組織的な条件を満足しないと誤認しやすくなる。
この他の条件、例えば、透過型電子顕微鏡の加速電圧は、100 〜300kV の間ではあまり影響しないが、一応、200kV と一定にすることが好ましい。なお、透過型電子顕微鏡によるNi2Si 析出物の観察において、100 万倍に拡大した組織画面を画像処理するか、または撮影写真の目視観察などするかは適宜選択できる。
なお、前記特許文献2でも、析出物の大きさが10nm以下、析出物の分布密度を1 ×105 個/(μm3 )以上と規定している。特許文献2では、析出硬化型合金であるコルソン合金が、Ni2Si 析出物 (金属間化合物) の分布状態、即ち、析出物の大きさと距離 (間隔) に影響されることを開示している。そして、特許文献2では、前記鋳塊の段階で既に存在する晶出物のような人工時効処理前に既に存在するNi2Si 相を少なくして、人工時効処理で新たに析出するNi2Si 相を多くしようとしている。具体的には、この人工時効処理で新たに析出するNi2Si 析出物の大きさと距離を小さくすることにより、良好な曲げ加工性を維持しながら強度を向上させている。
にも関わらず、前記特許文献2では、導電率が44%IACS 程度あるコルソン合金の、引張強度が最も高くても892MPa程度でしかなく、900MPa以上の引張強さが得られていないため、高導電率化と高強度化とが両立できていない。
この理由は、特許文献2の実施例に記載する、透過型電子顕微鏡による組織観察が、本発明で規定した上記100 万倍の超高倍率では無く、15万倍と低いためと考えられる。即ち、15万倍など、より倍率の低い透過型電子顕微鏡による組織観察では、上記した通り、人工時効硬化処理によって母相から新たに微細に析出したNi2Si 相のみを正確に観察できない。したがって、特許文献2は、20% 以上の高導電率化と900MPa以上の高強度化とが両立するためのNi2Si 相のあり方を正確に規定していない。
また、特許文献2のNi含有量は、多くても4 重量% 程度と、比較的低いため、人工時効処理で新たに析出するNi2Si 相の量が必然的に少なくなる。この結果、特許文献2では、前記鋳塊の段階で既に存在する晶出物のような人工時効処理前に既に存在するNi2Si 相を少なくして、人工時効処理で新たに析出するNi2Si 相を多くしようとしているにもかかわらず、人工時効処理後の実際の銅合金板の組織は、人工時効処理で新たに析出する微細なNi2Si 相がより少ない組織となっていると考えられる。このため、銅合金板の引張強さを900MPa以上に安定的に高強度化させることができないか、引張強さを高くしても、導電率を20% 以上に高くすることができない。
(銅合金板の成分組成)
以下に、人工時効硬化処理後の銅合金板組織を上記本発明規定の組織とするためなどの、本発明銅合金板における化学成分組成の限定理由を説明する。
(Ni;4.0〜5.0 %)
Niは後述するSiと共に必須に含有されて、人工時効処理で析出したNi2Si 相を形成して、銅合金板の強度の向上に寄与する元素である。Niの含有量が4.0 % 未満の場合は、前記Ni2Si 相が不足し、銅合金板の引張強さを900MPa以上とすることができない。一方、Niの含有量が5.0%を超えると、導電率が低下し、銅合金板の導電率を20%IACS 以上とすることができない。更に、鋳造での鋳造性や曲げ加工性が低下する。したがって、Ni含有量は4.0 〜5.0 % の範囲とする。
(Si)
Siも前記Niと共に必須に含有されて、人工時効処理で析出したNi2Si 相を形成して、銅合金板の強度の向上に寄与する元素である。但し、銅合金板の導電率を20%IACS 以上のできるだけ高い値とし、銅合金板の引張強さを900MPa以上とするためには、前記NiとSiとは、前記互いの含有量の範囲内において、前記NiとSiとが、Ni2Si 相を形成するに必要な当量ずつ含まれることが必要である。これをNiとSiとの質量比Ni/Siで表すと、Ni2Si の構成比率に近い4 〜5 の範囲である。したがって、Siの含有量は、NiとSiとの質量比Ni/Si で表す。
この範囲から外れ、NiとSiとが各々過剰に含まれた場合、銅合金板の引張強さを900MPa以上とすることができるが、過剰な分のNiまたはSiが銅のマトリックス中に固溶し、銅合金板の導電率が低下する。また、Siが過剰に含まれた場合、鋳造での鋳造性や、熱間および冷間での圧延加工も低下し、鋳造割れや圧延割れが生じやすくなる。一方、この範囲から外れ、Siの含有量が少な過ぎる場合は、Ni2Si 相が不足し、銅合金板の引張強さを900MPa以上とすることができない。
(その他の合金元素)
本発明高強度銅合金板は、その他の合金元素として、質量% で、Sn:0.1〜4.0%、Zn:0.1〜1.0%、Ag:0.001〜1.0%、Mn:0.01 〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、Co:0.01 〜0.3%、の一種または二種以上を、選択的に、あるいは必要に応じて含有することができる。これらの元素は、いずれも本発明銅合金の主たる目的である強度や導電率あるいは曲げ加工性のいずれかを向上させる共通の効果がある同効元素である。以下に、各元素の特徴的な作用効果と含有範囲の意義を記載する。
(Sn:0.1 〜4.0%)
Snは主に銅合金板の強度を向上させる元素であり、これらの特性を重視する用途に使用する場合には、選択的に含有させる。Snの含有量が0.1%未満ではその強度向上効果が無い。一方、Snを含有させると銅合金板の導電率が低下する。特に、Snが4.0%を超えて含有されると、銅合金板の導電率を20%IACS 以上とすることができない。したがって、含有させる場合には、Snの含有量を0.1 〜4.0%の範囲とする。
(Zn:0.1 〜1.0%)
Znは主に半田の対剥離性や耐マイグレーション性を向上させる元素であり、これらの特性を重視する用途に使用する場合には、選択的に含有させる。Znの含有量が0.1%未満ではその効果が無い。一方、Znを含有させると銅合金板の導電率が低下し、Znが1.0%を超えて含有されると、銅合金板の導電率を20%IACS 以上とすることができない。したがって、含有させる場合には、Znの含有量を0.1 〜1.0%の範囲とする。
(Ag:0.001 〜1.0%)
Agは主に導電率を向上させる。したがって、導電率を向上させたい場合には、選択的に含有させる。Agの含有量が0.001%未満ではその効果が無い。一方、Agを1.0%を超えて含有させても、高価なAgによってコストが大幅に上昇してしまう。したがって、含有させる場合には、Agの含有量を0.001 〜1.0%の範囲とする。
(Mn:0.01〜0.1%)
Mnは主に熱間圧延での加工性を向上させる。したがって、熱間加工性を向上させたい場合には、選択的に含有させる。Mnの含有量が0.01% 未満ではその効果が無い。一方、Mnが0.1%を超えて含有されると、銅合金の造塊時の湯流れ性が悪化して造塊歩留まりが低下する。したがって、含有させる場合には、Mnの含有量を0.01〜0.1%の範囲とする。
(Zr:0.001 〜0.1%)
Zrは主に結晶粒を微細化させて、銅合金板の強度や曲げ加工性を向上させる。したがって、強度や曲げ加工性を向上させたい場合には、選択的に含有させる。Zrの含有量が0.001%未満ではその効果が無い。一方、Zrが0.1%を超えて含有されると、化合物を形成し、銅合金板の圧延などの加工性が低下する。したがって、含有させる場合には、Zrの含有量を0.001 〜0.1%の範囲とする。
(Co:0.01〜0.3%)
Coも主に結晶粒を微細化させて、銅合金板の強度や曲げ加工性を向上させる。したがって、強度や曲げ加工性を向上させたい場合には、選択的に含有させる。Coの含有量が0.01% 未満ではその効果が無い。一方、Coが0.3%を超えて含有されると、化合物を形成し、銅合金板の圧延などの加工性が低下する。したがって、含有させる場合には、Coの含有量を0.01〜0.3%の範囲とする。
この他の元素として、Al、Cr、Fe、Ti、P、Be、V、Nb、Mo、W、Mgなどは、銅合金板の特性を劣化させる不純物である。但し、これらの総量で0.5質量% までの含有量であれば、本発明高強度銅合金板の特性は損なわれることがない。したがって、前記範囲内でのこれらの合金元素の含有は許容される。
また、本発明高強度銅合金板において、特に、規制すべき不純物としては、B、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等があげられる。これらは、各々鋳造性や熱間加工性、あるいは高強度銅合金板の特性などを損なう。したがって、これらの不純物はできるだけ含有量を規制して低くする。より具体的には、これらの総量で0.1 質量% までとし、できるだけ含有量を低くする。
次に、人工時効硬化処理後の銅合金板組織を上記本発明規定の組織とするためなどの、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明銅合金板の製造工程自体は、特別な工程は不要で、常法と同じ工程で製造できる。即ち、質量% で、Ni;4.0〜5.0 % 、Si;0.5〜1.5 % を含み、残部が実質的に銅及び不可避的不純物、更には、前記選択的な添加元素を加えて成分調整した溶湯を鋳造する。そして、鋳塊を面削後、加熱または均質化熱処理した後に熱間圧延し、熱延後の板を水冷する。その後、中延べと言われる一次冷間圧延して、必要により焼鈍、洗浄後、更に仕上げ冷間圧延して、製品板厚の銅合金板とする。
仕上げ冷間圧延の前後(通常は仕上げ冷間圧延の前)で、銅合金板の溶体化処理および水冷による焼き入れ処理を行なう。この際、溶体化処理温度は、750 〜1000℃の範囲から選択されるが、880 〜920 ℃の比較的高温とすることが好ましい。880 ℃未満のような低温の溶体化処理温度では、前記した通り、晶出物のような人工時効硬化処理前に既に存在するNi2Si 相が、溶体化処理時の加熱で完全に固溶せずに、そのまま残存して、人工時効硬化処理後にも銅合金板中に多く混在してしまう可能性がある。また、前記人工時効処理前に既に存在するNi2Si 相として、かなりのNi2Si が予め消費されてしまい、人工時効処理において、新たに析出するNi2Si 相の量が必然的に少なくなる。一方、溶体化処理温度を920 ℃を超えて上げると、バーニングの問題が生じやすく、製造コストの点で不利となる可能性がある。
冷間圧延の内、前記仕上げ冷間圧延の加工率はできるだけ高い方が好ましい。具体的には、銅合金板の高強度化や、Ni2Si 析出物の析出量や微細析出確保のために、仕上げ冷間圧延の加工率を20% 以上とすることが好ましい。仕上げ冷間圧延の加工率が20% 未満では、加工硬化 (オロワン機構による導入転位の高堆積化) による銅合金板の高強度化が期待できない。また、人工時効硬化処理によるNi2Si 析出物の析出量も少なくなる。更に、人工時効硬化処理により析出するNi2Si 析出物のサイズが粗大化する可能性もある。これらの結果、銅合金板の引張強さ900MPa以上の高強度化と導電率20%IACS 以上の高導電率化、高曲げ加工化を両立できない可能性が生じる。
冷間圧延後の人工時効硬化処理は、高強度化、高曲げ加工化、高導電率化に寄与する微細なNi2Si 析出物を析出させる役割を果たす。この際、人工時効硬化処理された銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径を3 〜10nmとするとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下とすることが重要である。
このために、人工時効硬化処理条件は、350 〜550 ℃の温度範囲と2 〜6 時間の処理範囲から、銅合金板の引張強さが900MPa以上の最高値あるいは最高値に近くなる条件が選択される。本発明成分組成のコルソン合金では、前記人工時効硬化処理の条件範囲で銅合金板の引張強さが最高となるピークを有する。このピーク値を生じる人工時効硬化処理の温度と時間とは、銅合金板の成分組成によって異なる。したがって、人工時効硬化処理の上記温度と時間との範囲から、その特定銅合金板の引張強さの最高値あるいは最高値に近くなる条件を選択する。このピークを外れた温度と時間では、引張強さがピーク値に比して大きく低下し、銅合金板の引張強さ900MPa以上の高強度化することができない。
但し、処理温度は430 〜480 ℃の範囲と、処理時間は3 〜5 時間の範囲から選択することが、銅合金板の引張強さを900MPa以上の最高値とする点で好ましい。上記好ましい温度範囲と処理時間範囲を外れた場合には、成分範囲との関係で、Ni2Si 析出物の平均粒径および/ またはNi2Si 析出物の平均間隔が、本発明規定を満足できなくなる可能性が高くなる。このため、高強度化、高曲げ加工化、高導電率化が両立できない可能性が高くなる。
なお、上記仕上げ冷間圧延と、この冷延後の人工時効硬化処理との一連の工程を、1 回のみではなく、2 回以上繰り返して行っても良い。この場合、より冷間加工率をかせぐことができ、上記仕上げ冷間圧延による、銅合金板の高強度化や、Ni2Si 析出物の析出量や微細析出確保などの効果を更に発揮できる利点がある。
以下に本発明の実施例を説明する。下記表1 に示す各組成の銅合金を鋳造して銅合金板を製造し、各特性を評価した。なお、表1 に示す各組成の銅合金板において、表1 に記載以外の他の元素として、Al、Cr、Fe、Ti、P、Be、V、Nb、Mo、W、Mgは、これらの総量で0.5質量% 以下であった。また、B、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素は、これらの総量で0.1 質量% 以下であった。
具体的な銅合金板の製造方法としては、クリプトル炉において大気中で木炭被覆下で溶解し、鋳鉄製ブックモールドに鋳造し、厚さが50mm、幅が75mm、長さが180mm の鋳塊を得た。そして、鋳塊の表面を面削した後、950 ℃の温度で厚さが15mmになるまで熱間圧延し、750 ℃以上の温度から水中に急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、一次冷間圧延を行い、厚さが0.7mm の板を得た。
続いて、塩浴炉を使用し、表2 、3 に示す温度で共通して30秒間加熱する溶体化処理を行なった後に、水中に急冷した。次に、仕上げ冷間圧延により、各々厚さが0.20mm (加工率70%)〜0.6mm(加工率10%)の範囲で、加工率を変えて冷延板にした。この冷延板を、表2 、3 に示すように、温度 (℃) と時間(hr)とを変えて人工時効硬化処理した。
このようにして製造した銅合金板に対して、各例とも、人工時効硬化処理後に銅合金板から切り出した試料を使用し、以下に示す試験及び評価を実施した。
析出物の平均粒径 (サイズ:nm)及び平均間隔(nm)は、前記した本発明の透過型電子顕微鏡組織観察条件により撮影した倍率が100 万倍の組織写真、および前記した算出方法から測定、算出した。表2 に示す発明例3 と比較例17との組織写真を各々図1 、2 に示す。図1 、2 において、前記した通り、A は析出物、d は析出物の粒径 (nm) 、B は析出物同士の間隔(nm)を各々示す。
引張り試験は、圧延方向に平行に切り出してJIS13号の試験片を作製し、この試験片を使用して行った。
導電率は、幅10mm×長さ300mm の試験片を使用し、ダブルブリッジにより電気抵抗を測定して平均断面積法により算出した。
曲げ加工性は、実プレスにおいて、R=0.15mmで、曲げ線を圧延方向に平行(BW)及び直角(GW)に設定し、90°曲げを行った。そして、曲げ部を20倍のルーペで観察し、クラックの発生の有無により曲げ加工性を評価した。即ち、曲げ部にクラックが無く、曲げ加工条件が厳しくても、曲げ加工性が良いものを○と評価した。また、大きなクラックは無いが小さなクラックが存在し、曲げ加工条件を緩和すれば、曲げ加工が可能するものを△、大きなクラックが存在し、曲げ加工条件を緩和しても、曲げ加工が不可のものを×と各々評価した。
これらの試験結果も下記表2 、3 に示す。なお、表2 は発明例、表3 は比較例を各々示す。
表1 および2 から明らかな通り、Ni;4.0〜5.0 質量% を含み、かつSiをNiとSiとの質量比Ni/Si が4 〜5 の範囲となるように含む、発明組成内の発明例合金1 〜10を用いた発明例1 〜14は、製造方法も好ましい条件内で製造されている。このため、発明例3 の例を図1 に示す通り、人工時効硬化処理後の銅合金板を100 万倍の透過型電子顕微鏡で銅合金板組織を観察した際の、銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径が3 〜10nmであるとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下である。この結果、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa以上、導電率が20%IACS 以上である。また、発明例1 〜14は曲げ加工性にも優れる。
これに対して、表1 および表3 から明らかな通り、比較例15は、用いた比較合金例11のNiが含有量は範囲内だがSiに対し過剰で、Ni/Si が5 を超えている。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されているものの、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nmを超え、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満である。
比較例16は、用いた比較合金例12のSiがNiに対し過剰で、Ni/Si が4 未満である。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されており、Ni2Si 析出物の平均粒径とNi2Si 析出物の平均間隔も範囲内であるものの、人工時効硬化処理後の銅合金板の導電率が20%IACS 未満である。また、曲げ加工性も低い。
比較例17は、用いた比較合金例13のNi含有量が少な過ぎる。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されているものの、Ni2Si 析出物の平均粒径が10nmを超えるとともに平均間隔が25nmを超え、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満である。
比較例18は、用いた比較合金例14のNi含有量が多過ぎる。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されているものの、人工時効硬化処理後の銅合金板の導電率が20%IACS 未満である。また、曲げ加工性も低い。
比較例19は、用いた比較合金例15のSi含有量が少な過ぎ、Ni/Si が5 を超える。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されているものの、Ni2Si 析出物の平均粒径が10nmを超えるとともに平均間隔が25nmを超え、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満である。
比較例20は、用いた比較合金例16のSi含有量が過ぎ、Ni/Si が4 未満である。このため、製造方法は好ましい条件内で製造されており、Ni2Si 析出物の平均粒径とNi2Si 析出物の平均間隔も範囲内であるものの、人工時効硬化処理後の銅合金板の導電率が20%IACS 未満である。また、曲げ加工性も低い。
比較例21は、発明合金例2 を用いているが、溶体化処理温度が低過ぎ、Ni2Si 析出物の平均粒径が上限の10nmであり、平均間隔が25nmを超え、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満である。
比較例22は、発明合金例2 を用いているが、仕上げ冷間圧延加工率が低過ぎ、溶体化処理温度が低過ぎ、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nmを超え、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満である。
比較例23、24は、発明合金例2 を用いているが、人工時効硬化処理温度が高過ぎて、Ni2Si 析出物の平均粒径が10nmを超えるとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nmを超える。この結果、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満の著しく低い値である。
比較例25、26は、発明合金例2 を用いているが、人工時効硬化処理温度が低過ぎて、Ni2Si 析出物の平均粒径が3nm 未満であるとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nmを超える。この結果、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さが900MPa未満の著しく低い値である。
以上の結果から、人工時効硬化処理後の銅合金板の引張強さを900MPa以上、導電率を20%IACS 以上とし、曲げ加工性にも優れさせるための、本発明銅合金板の成分組成、および組織中のNi2Si 析出物の平均粒径規定と、Ni2Si 析出物の平均間隔規定との臨界的な意義が裏付けられる。
Figure 0004664584
Figure 0004664584
Figure 0004664584
以上説明したように、本発明によれば、900MPa以上の引張強度を有する高強度を有し、かつ、導電率を20%IACS 以上とするとともに、良好な曲げ加工性を有するコルソン系銅合金板を提供することができる。この結果、小型化及び軽量化した電子機器の、コネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどであって、900MPa以上の引張強度と20%IACS 以上の導電率が要求される用途であって、かつ、ノッチング後の90°曲げなど厳しい曲げ加工性が要求される用途に適用することができる。
本発明銅合金板の組織を示し、図面に代わる100万倍の透過型電子顕微鏡組織写真である。 比較例銅合金板の組織を示し、図面に代わる100万倍の透過型電子顕微鏡組織写真である。 銅合金板組織を15万倍の透過型電子顕微鏡で見た、図面に代わる組織写真である。 銅合金板組織を15万倍の透過型電子顕微鏡で見た、図面に代わる組織写真である。

Claims (4)

  1. Ni;4.0〜5.0 質量% を含み、かつSiをNiとSiとの質量比Ni/Si が4 〜5 の範囲となるように含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金板であって、人工時効硬化処理後の銅合金板を100 万倍の透過型電子顕微鏡で観察した際に、この銅合金板の冷間圧延によって導入された転位と組織的に識別して測定された、銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径が3 〜10nmであるとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔が25nm以下であり、かつ、この銅合金板の引張強さが900MPa以上、導電率が20%IACS 以上であることを特徴とする高強度銅合金板。
  2. 前記銅合金板が更に、質量% で、Sn:0.1〜4.0%、Zn:0.1〜1.0%、Ag:0.001〜1.0%、Mn:0.01 〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、Co:0.01 〜0.3%、の一種または二種以上を含有する請求項1に記載の高強度銅合金板。
  3. Ni;4.0〜5.0 質量% を含み、かつSiをNiとSiとの質量比Ni/Si が4 〜5 の範囲となるように含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金圧延板を750 〜1000℃の温度で溶体化処理後に水冷し、更に、加工率を20% 以上とした仕上げ冷間圧延後に350 〜550 ℃の温度で2 〜6 時間の人工時効硬化処理を施すか、またはこの冷間圧延と人工時効硬化処理とを施す工程を2 回以上繰り返して行って、銅合金板を得、100 万倍の透過型電子顕微鏡でこの銅合金板組織を観察した際に、この銅合金板の冷間圧延によって導入された転位と組織的に識別して測定された、銅合金板組織中に存在するNi2Si 析出物の平均粒径を3 〜10nmとするとともに、Ni2Si 析出物の平均間隔を25nm以下とし、銅合金板の引張強さを900MPa以上で、導電率を20%IACS 以上とすることを特徴とする高強度銅合金板の製造方法。
  4. 前記銅合金圧延板が更に、質量% で、Sn:0.1〜4.0%、Zn:0.1〜1.0%、Ag:0.001〜1.0%、Mn:0.01 〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、Co:0.01 〜0.3%、の一種または二種以上を含有する請求項3に記載の高強度銅合金の製造方法。
JP2003326452A 2003-09-18 2003-09-18 高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法 Expired - Fee Related JP4664584B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003326452A JP4664584B2 (ja) 2003-09-18 2003-09-18 高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003326452A JP4664584B2 (ja) 2003-09-18 2003-09-18 高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005089843A JP2005089843A (ja) 2005-04-07
JP4664584B2 true JP4664584B2 (ja) 2011-04-06

Family

ID=34456640

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003326452A Expired - Fee Related JP4664584B2 (ja) 2003-09-18 2003-09-18 高強度銅合金板および高強度銅合金板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4664584B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007246931A (ja) * 2006-03-13 2007-09-27 Furukawa Electric Co Ltd:The 電気伝導性に優れた電子電気機器部品用銅合金
EP2426225B1 (en) 2006-05-26 2015-12-02 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho Copper alloy with high strength, high electrical conductivity, and excellent bendability
JP4247922B2 (ja) * 2006-09-12 2009-04-02 古河電気工業株式会社 電気・電子機器用銅合金板材およびその製造方法
JP5170881B2 (ja) 2007-03-26 2013-03-27 古河電気工業株式会社 電気・電子機器用銅合金材およびその製造方法
US20090183803A1 (en) * 2007-12-21 2009-07-23 Mutschler Ralph A Copper-nickel-silicon alloys
JP4974193B2 (ja) 2008-02-08 2012-07-11 古河電気工業株式会社 電気電子部品用銅合金板材
JP5452060B2 (ja) * 2009-04-03 2014-03-26 三菱電機株式会社 銅合金及びその製造方法
JP6366298B2 (ja) * 2014-02-28 2018-08-01 Dowaメタルテック株式会社 高強度銅合金薄板材およびその製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06184680A (ja) * 1992-12-21 1994-07-05 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金
JPH08325681A (ja) * 1985-04-26 1996-12-10 Olin Corp 改善された組合せの極限引張強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法
JP2000080428A (ja) * 1998-08-31 2000-03-21 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金板
JP2002180161A (ja) * 2000-12-15 2002-06-26 Furukawa Electric Co Ltd:The 高強度銅合金
JP2002266042A (ja) * 2001-03-09 2002-09-18 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金板

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08325681A (ja) * 1985-04-26 1996-12-10 Olin Corp 改善された組合せの極限引張強さ、電気伝導性および耐応力緩和性を有する銅基合金の製造方法
JPH06184680A (ja) * 1992-12-21 1994-07-05 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金
JP2000080428A (ja) * 1998-08-31 2000-03-21 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金板
JP2002180161A (ja) * 2000-12-15 2002-06-26 Furukawa Electric Co Ltd:The 高強度銅合金
JP2002266042A (ja) * 2001-03-09 2002-09-18 Kobe Steel Ltd 曲げ加工性が優れた銅合金板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005089843A (ja) 2005-04-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4584692B2 (ja) 曲げ加工性に優れた高強度銅合金板およびその製造方法
JP4357536B2 (ja) 強度と成形性に優れる電気電子部品用銅合金板
US8715431B2 (en) Copper alloy plate for electric and electronic parts having bending workability
JP4937815B2 (ja) 電子材料用Cu−Ni−Si−Co系銅合金及びその製造方法
JP5578827B2 (ja) 高強度銅合金板材およびその製造方法
JP4596493B2 (ja) 導電性ばね材に用いられるCu−Ni−Si系合金
JP3962751B2 (ja) 曲げ加工性を備えた電気電子部品用銅合金板
JP4418028B2 (ja) 電子材料用Cu−Ni−Si系合金
TWI382097B (zh) Cu-Ni-Si-Co-Cr alloy for electronic materials
KR102126731B1 (ko) 구리합금 판재 및 구리합금 판재의 제조 방법
JP3977376B2 (ja) 銅合金
WO2010064547A1 (ja) 電子材料用Cu-Ni-Si-Co系銅合金及びその製造方法
WO2010126046A1 (ja) 導電性と曲げ性を改善したCu-Ni-Si-Mg系合金
JP4177104B2 (ja) 曲げ加工性に優れた高強度銅合金及びその製造方法及びそれを用いた端子・コネクタ
JP2002180165A (ja) プレス打ち抜き性に優れた銅基合金およびその製造方法
JP5619389B2 (ja) 銅合金材料
JP4787986B2 (ja) 銅合金およびその製造方法
JP2004225093A (ja) 銅基合金およびその製造方法
JP2006283120A (ja) 電子材料用Cu−Ni−Si−Co−Cr系銅合金及びその製造方法
KR20170113410A (ko) 구리합금 판재 및 구리합금 판재의 제조 방법
JP2006009137A (ja) 銅合金
KR20090094458A (ko) 전자 재료용 Cu-Ni-Si-Co계 구리합금 및 그 제조 방법
JP2014156623A (ja) 高強度Cu−Ni−Co−Si系銅合金板材およびその製造法並びに通電部品
JP2006265731A (ja) 銅合金
CN112055756B (zh) 具有优异的弯曲成形性的cu-co-si-fe-p基合金及其生产方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060725

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090428

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090629

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100316

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100511

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110104

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110107

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4664584

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140114

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees