JP2006265731A - 銅合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Ni及び/又はSiを含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co、Beの少なくとも1つ以上を含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金において、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co、Beの少なくとも1つ以上とNi及び/又はSiとからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmである銅合金。
【選択図】なし
Description
近年,電気・電子機器の小型化、軽量化、さらにこれに伴う部品高密度実装化に対する要求が高まり、これらに適用される銅系材料にも種々の特性についてより高水準のレベルが求められている。この主な特性としては、機械的性質、導電性、耐応力緩和性、曲げ加工性、ばね性などが挙げられる。その中でも近年の部品小型化の要求を満足するため、耐応力緩和性、引張強度および、曲げ加工性の向上がとりわけ要求されている。特に電子部品の小型化により、そのリードフレーム材等には、引張強度、曲げ加工性が、さらにコネクタ、端子材料等には引張強度等の他、耐応力緩和性が要求される。
また、部品の小型化に伴い、材料の薄肉化は避けられない。このため材料に負荷される応力の増大、使用環境の高温化などにより従来の銅合金では、より長時間の使用に耐え得る材料であるとは言えない。このような状況下、耐応力緩和性は一層の向上が求められている。最低限の耐応力緩和性として、日本電子材料工業会標準規格のEMAS−3003に準拠した値で、150℃の温度条件下で応力緩和率が20%未満の条件を満たす銅合金材料が要求される。
これらの要求特性はリン青銅、丹銅、黄銅などの市販量産合金では満足できない水準であった。そこで従来、母相の銅と原子半径の大きく異なるSnやZnをCu中に固溶させて、それに圧延や引き抜き加工などの冷間加工を加えることにより強度を向上させている。この方法では高い冷間加工率を加えることにより高強度な材料を得ることができるが、高い冷間加工率(一般的に50%以上)を加えたものは曲げ加工性が著しく悪くなることが知られている。一般的にこの方法は固溶強化と加工強化の組み合わせであると言える。
その中で、Cu中にNiとSiを加えてそのNiとSiから構成される析出物を形成させて強化させたコルソン合金と呼ばれる合金は、多くの析出型合金の中ではその強化する能力が非常に高く、いくつかの市販合金(例えば、CDA(Copper Development Association)登録合金であるCDA70250)として用いられている。この一般に析出強化される合金が端子・コネクタ材に用いられる場合、その製造工程に、次の2つの重要な熱処理を取り入れて製造されている。1つは溶体化処理と呼ばれる、合金の融点に近い高温(通常は700℃以上)にて鋳造や熱間圧延で析出したNiとSiをCu母相に固溶させる目的で行う熱処理である。もう1つは溶体化処理温度より低い温度で熱処理するいわゆる時効処理で、高温で固溶したNiとSiを析出物として析出させる目的で行う熱処理である。これは、高い温度と低い温度でNiとSiがCuに固溶する濃度の差を使って合金を強化する方法である。
また、銅合金の曲げ加工性を向上させる方法として、Ni−Si析出物を利用せず、Mn,Ni,Pを添加し、相互に反応させて化合物を析出させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この合金では引張強度がせいぜい640MPa程度であり、近年の部品小型化による高強度への要求を満たすには充分でなくなっている。また、この銅合金にSiを添加しても、Ni−P析出物が減少して強度と導電率が共に低下してしまう。またSiおよびPが過剰となり熱間加工時に割れが生じる問題が発生する。
以上のように、引張強度が高くなる程曲げ加工性を維持することは困難である。そのため、引張強度、曲げ加工性、導電性、及び耐応力緩和性を高度に併立ないしはバランスさせて、かつ用途に応じて制御しうる銅合金の開発が望まれている。
すなわち本発明は、
(1)Ni及び/又はSi、並びにB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上からなる析出物Yと、Ni及びSiからなる析出物Xを有する銅合金であって、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金、
(2)前記析出物Yの粒径が0.02〜0.9μmであることを特徴とする銅合金、
(3)Ni、Si及びCrからなる析出物Y1、Ni、Si及びCoからなる析出物Y2、Ni、Si及びZrからなる析出物Y3、並びにNi、Si及びBからなる析出物Zからなる群から選ばれた少なくとも1種の析出物と、Ni及びSiからなる析出物Xを有する銅合金であって、前記析出物Y1、Y2、Y3、およびZからなる群から選ばれた少なくとも1種の析出物の粒径が0.1〜2μmであることを特徴とする銅合金、
(4)Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上とNiとSiからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金、
(5)Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも2つ以上とNi又はSiからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金、
(6)Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも3つ以上からなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金、
(7)前記析出物Yの融点が溶体化処理温度よりも高いことを特徴とする請求項(1)〜(6)のいずれか1つ記載の銅合金、
(8)前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の銅合金、
(9)前記析出物Xの数が1mm2あたり108〜1012個で、かつ、前記析出物Yの数が1mm2あたり104〜108個であることを特徴とする請求項(1)〜(8)のいずれか1つに記載の銅合金、
(10)前記銅合金組成が更に、Sn 0.1〜1.0質量%、Zn 0.1〜1.0質量%、及びMg 0.05〜0.5質量%から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項(1)〜(9)のいずれか1つに記載の銅合金、
(11)応力緩和率が20%未満である(1)〜(10)のいずれか1つに記載の銅合金、
(12)電気・電子機器材料用であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1つに記載の銅合金
を提供するものである。
本発明の銅合金は安価で、高導電性を維持して、曲げ加工性に優れ、その他の特性も良好な高性能銅合金であり、電気・電子機器用、例えば、車載用の端子・コネクタあるいはリレー、スイッチ等の電子部品用として好適である。
本発明は、銅合金の析出物の粒径を制御するものである。具体的には粒径を制御する方法として、2つの観点からこれを実現する。
1つ目は溶体化処理時に結晶粒径を粗大化させない元素を用いることで実現する。NiとSiとα、Niとαとβ、Siとαとβ、αとβとγ(ここでα、β、γはNi、Si以外の元素である)からなる析出物は高温の溶体化処理の温度でもCu母相に固溶されず、Cu母相の結晶粒及び粒内に存在して、母相の結晶粒の成長を抑制する作用効果を発揮する。
本発明において「析出物」とは、金属間化合物、炭化物、酸化物、硫化物、窒化物、化合物(固溶体)、元素金属などを包含する意味である。
本発明の銅合金は安価で、高導電性を維持しながら曲げ加工性に優れ、他の特性も良好な高性能銅合金であり、電気・電子機器用、例えば、車載用の端子・コネクタあるいはリレー、スイッチ等の電子部品用として好適である。
NiとSiからなる析出物Xの粒径は、好ましくは0.001〜0.1μm、より好ましくは0.003〜0.05μm、更に好ましくは0.005〜0.02μmである。その理由は、小さすぎると強度向上が見られず、大き過ぎると曲げ加工性が低下してしまうからである。
この効果は、曲げ加工性を良好にせしめる作用を示す。また、従来の溶体化処理温度より高い温度において溶体化処理を行うことができるため、銅合金中の固溶量を増加させて、時効処理時に析出量を増やして引張強度、耐応力緩和性の向上に寄与するものである。特に、析出物Xの融点よりも析出物Yの融点が高いと、より効果が高まる。析出物Xの融点は好ましくは650〜1050℃であり、析出物Yの融点は好ましくは析出物Xの融点より高く、かつ、1100℃以下である。
NiとSiについては、NiとSiの添加比を制御することによりNi−Si析出物を形成さて析出強化を行い銅合金の強度を向上させることが目的として形成させる元素であり、Niの含有量は2.0〜5.0質量%、好ましくは2.1〜4.6質量%である。引張強度800MPa以上でかつ曲げ加工性はR/t<1.5、あるいは引張強度900MPa以上でかつ曲げ加工性がR/t<2を満たすためには、3.5〜4.6質量%であることが好ましい。Ni量が少ないとその析出硬化量が小さく強度が不足し、多すぎれば導電率が著しく低下するためである。
また、Siは質量比で表すと、Ni添加量4に対してSiが約1の時に最も強化量が大きくなることが知られている。また、Siの添加量が1.5質量%を越えると銅合金の鋳塊の熱間加工時に割れが生じやすくなる。Siの添加量は0.3〜1.5質量%、好ましくは0.5〜1.1質量%、より好ましくは0.8〜1.1質量%である。
Znは母相に固溶する元素であるが、Znを添加することによりハンダ脆化が著しく改善するので添加量は、好ましくは0.1〜1.0質量%である。本合金の主な用途は電気電子機器及び車載用端子、コネクタあるいはリレー、スイッチ等の電子部品端子材であり、これらの大部分はハンダを用いて接合されるため、その接合における信頼性の向上は重要な要素技術の1つである。
また、Znの添加により合金の融点が低下することによりNiとBからなる析出物並びにMnとPからなる析出物の形成状態を制御することができる。前記析出物は両者とも凝固時に生成するために、その合金の凝固温度が高いとその粒径が大きくなり、結晶粒径の粗大化の抑制や結晶粒の核生成サイトを形成する効果の寄与が小さくなる。Znの下限を0.1質量%としたのは、ハンダ脆化の改善が見られる最低必要量であり、上限を1.0質量%としたのはそれを超えて添加すると導電率が悪くなるためである。
更に、SnとMgは、NiとSiからなる析出物の形成を促進させる作用がある。これらの元素は微細な前記析出物の核生成サイトとして寄与するために最適な量を添加することが重要である。
析出物Xの銅合金内部の任意の断面における1mm2あたりの数が、対応する析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍存在するのが好ましい。その理由は、各特性の中で曲げ加工性を特に高めることができるからであり、十分な強度が得られるからである。さらに好ましくは100〜1500倍である。
上記析出物の効果は、Ni量、Si量が多くなるほど顕著となる。前記析出物Yの数を上記のようにすることにより、引張強度800MPa以上でかつR/t≦2.0、あるいは700MPa以上でかつR/t≦1.0を実現できる。さらに、引張強度800MPa以上でかつ曲げ加工性がR/t<1.5、あるいは900MPa以上でかつR/t<2が実現できる。また、耐応力緩和性については、日本電子材料工業会標準規格(EMAS−3003)の片持ちブロック式を採用し、表面最大応力が80%降伏強さ(80%YS、0.2%耐力)となるよう負荷応力を設定し、150℃にて1000時間の条件下で応力緩和率を測定し、この応力緩和率が好ましくは20%未満、より好ましくは18%未満、さらに好ましくは15%以下である銅合金とすることができる。なお、析出物の数は単位面積あたりの平均値である。
前記溶体化処理の目的は鋳造や熱間加工時に析出したNiとSiを再固溶させると同時に再結晶させることにある。これにより固溶量の増大と蓄積された加工歪の除去をはかり、強度と曲げ加工性を向上させる基礎処理ができる。前記溶体化処理の温度は添加したNi量によって調整を行い、好ましい実施態様として、Ni量が2.0質量%以上2.5質量%未満は600〜820℃、2.5質量%以上3.0質量%未満は700〜870℃、3.0質量%以上3.5質量%未満は750〜920℃、3.5質量%以上4.0質量%未満は800〜970℃、4.0質量%以上4.5質量%未満は850〜1020℃、4.5質量%以上5.0質量%未満は920〜1050℃とする。上記元素が添加された本発明合金では、高温での結晶粒の粗大化が抑制されることから、より高い温度で溶体化処理を施すことができることで固溶量が増大し、高強度を得ることができる。
また、例えば、Ni含有量が3.0質量%、Si含有量が0.7質量%である材料を850℃で熱処理すれば十分に析出したNiとSiが再固溶されて、結晶粒が10μm以下を得ることができるが、この温度でNi量が低い合金を処理した場合は結晶粒が粒成長を起こして粗大化して10μm以下にはならないからである。また、逆に、Ni量が多くなると理想的な溶体化状態を得ることはできなくなり、その後の時効熱処理で強度を向上させることができなくなる。
このように、溶体化処理の条件を変えることにより、すなわち、溶体化処理温度を適宜選択することにより、析出物(Yなど)のサイズを変えることができる。例えば、析出物Y1のサイズを大きくしたい場合は、高めの溶体化処理温度(標準より50度高い温度)、逆にサイズを小さくしたい場合は、低めの溶体化処理温度(標準より50度低い温度)を選択して熱処理を行う。なお、サイズを変えることにより同時に密度も連動して変化し、サイズが大きいほど密度は低くなり、逆に、サイズが小さいほど密度は高くなる。
Ni、Si、Cr、さらにその他の元素を表1に示す量含み、残部がCuと不可避不純物から成る合金成分を高周波溶解炉により溶解し、これを10〜30℃/秒の冷却速度で鋳造して厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を得た。これを900℃×1hrの保持後、熱間圧延により板厚t=12mmの熱延板を作製し、その両面を各1mm面削してt=10mmとし、次いで冷間圧延によりt=0.167mmに仕上げた。その板材を溶体化処理を行った。その条件は、前記段落[0026]に準じた溶体化処理温度を選択した。その際、析出物Y1のサイズを変えるために、Y1のサイズを大きくしたい場合は、高めの溶体化処理温度(標準より50度高い温度)、サイズを小さくしたい場合は、低めの溶体化処理温度(標準より50度低い温度)を選択して熱処理を行った。なお、サイズを変えることにより同時に密度も連動して変化し、サイズが大きいほど密度は低くなり、逆に、サイズが小さいほど密度は高くなった。
溶体化処理の後は直ちに水焼入を行った。次いで、全ての合金は時効熱処理を450〜500℃×2hrで実施した後、加工率10%で冷間圧延を行ってt=0.15mmの供試材とした。
a.導電率:
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
b.引張強度:
圧延平行方向から切り出したJIS Z 2201−13B号の試験片をJIS Z 2241に準じて3本測定しその平均値を示した。
c.曲げ加工性:
圧延方向に平行に幅10mm、長さ25mmに切出し、これに曲げの軸が圧延方向に直角に曲げ半径R=0、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6mmで90°W曲げし、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察および走査型電子顕微鏡によりその曲げ加工部位を観察し割れの有無を評価した。なお、評価結果はR/t(Rは曲げ半径(mm)、tは板厚(mm))で表記し、割れが発生する限界のRを採用してR/tを算出した。仮にR=0.15で割れが発生せず、R=0.1で割れが発生した場合は、板厚t=0.15mmなのでR/t=0.15/0.15=1と表記した。このR/tの値が小さいほど曲げ加工性は優れていることになる。
供試材を直径3mmへ打ち抜き、ツインジェット研磨法を用いて薄膜研磨を行った後、加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で5000倍と100000倍の写真を任意で3ヶ所撮影して、その写真上で析出物の粒径と密度を測定した。析出物の粒径と密度を測定は、電子線の入射方位を[001]として行った。Ni−Siからなる析出物Xの場合は、微細なので高倍の100000倍の写真でn=100(nは観察の視野数)でその個数を測定し、析出物Y1は低倍の5000倍の写真でn=10でその個数を測定し、これにより個数の局所的な偏りを排除するようにした。その個数を単位面積当たり(/mm2)へ演算した。
e.結晶粒径:
結晶粒径の測定は、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。板材の厚さ方向に平行でかつ最終冷間圧延方向(最終塑性加工方向)と平行な断面において、最終冷間圧延方向と平行な方向と直角な方向の2方向で結晶粒径を測定した。測定値の大きい方を長径、小さい方を短径とし、それぞれの長径と短径の4値の平均値を0.005mmの整数倍に丸めて示した。
表3に示す量の元素と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について、析出物Y1に代えて析出物Y2について測定した以外は実施例1と同様の試験を行い、その結果を表4に記した。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表5に示す量の元素と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について、析出物Y1に代えて析出物Y3について測定した以外は、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表6に記した。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表7に示す量の元素と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について、析出物Y1に代えて析出物Zについて測定した以外は、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表8に記した。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表9に示す量の元素と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について、一部は析出物Y1に代えて析出物Y2、Y3またはZについて測定した以外は、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表10に記した。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
(実施例6)
Ni、Si、さらに表11に示す元素所定量と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の方法で試験を行った。なおNi、Siの量は、本発明例1−4及び1−11はNiを3.5質量%、Siを0.8質量%、本発明例1−6はNiを4.0質量%、Siを0.95質量%、それ以外の本発明例と比較例はNiを3.8質量%、Siを0.86質量%とした。供試材の製造方法、測定方法については実施例1と同様に行った。また、耐応力緩和性は以下の方法により評価した。
f.耐応力緩和性:
日本電子材料工業会標準規格(EMAS−3003)の片持ちブロック式を採用し、表面最大応力が80%YS(0.2%耐力)となるよう負荷応力を設定して150℃恒温槽に1000時間保持して応力緩和率(S.R.R)を求めた。応力緩和率20%未満の場合を耐応力緩和性が「良」とし、これが20%以上の場合を「不良」とした。
ここで、表中のGW、BWは、それぞれ、圧延方向に対して平行に採集した試験片による、曲げ軸が圧延方向に直角となる曲げをGWと言い、圧延方向に対して垂直に採取した試験片による、曲げ軸が圧延方向に平行となる曲げをBWと称す。すなわち、GWとは、試験片の長さ方向と圧延方向とが平行であることを、またBWとは、試験片の長さ方向と圧延方向とが垂直であることをそれぞれ意味する。
Ni、Si、さらに表12に示す元素所定量と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の試験を行った。なおNi、Siの量は、本発明例2−4及び2−11はNiを3.5質量%、Siを0.8質量%、本発明例2−2はNiを4.0質量%、Siを0.95質量%、それ以外の本発明例と比較例はNiを3.8質量%、Siを0.86質量%とした。製造方法、測定方法についても実施例1と同様に行った。また、耐応力緩和性は実施例6と同様の方法で評価した。
表12の結果から明らかなように、本発明は強度、導電性、曲げ加工性、耐応力緩和性とも優れた特性を有する。特に本実施例ではYを0.05〜0.9μmとすることで、優れた強度、導電性、曲げ加工性を維持したまま14%以下の応力緩和率を実現できた。従って、本実施例に係る銅合金はコネクタや端子材等に好適であると言える。なお、本実施例の銅合金は、ばね性等の特性も優れている。一方、比較例では析出物Yの値が0.01〜2.0μmの範囲外のため、いずれも応力緩和率が21%以上であった。
Ni、Si、さらに表13に示す元素所定量と、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の試験を行った。なおNi、Siの量は、本発明例3−4及び3−11はNiを3.5質量%、Siを0.8質量%、本発明例3−8及び3−15はNiを4.0質量%、Siを0.95質量%、それ以外の本発明例と比較例はNiを3.8質量%、Siを0.86質量%とした。製造方法、測定方法についても実施例1と同様に行った。また、耐応力緩和性は実施例6と同様の方法で評価した。
表13の結果から明らかなように、本願発明は強度、導電性、曲げ加工性、耐応力緩和性とも優れた特性を有する。特に本実施例ではYを0.2〜0.6μmとすることで、優れた強度、曲げ加工性、導電性を維持したまま15%以下の応力緩和率を実現できた。従って、本実施例に係る銅合金はコネクタや端子材等に好適であると言える。なお、本実施例の銅合金は、ばね性等の特性も優れている。一方、比較例では析出物Yの値が0.01〜2.0μmの範囲外のため、いずれも応力緩和率が21%以上であった。
Ni、Si、さらに表14に示す元素所定量を含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の試験を行った。なおNi、Siの量は、本発明例4−1及び4−4はNiを3.5質量%、Siを0.8質量%、本発明例4−2及び4−9はNiを4.0質量%、Siを0.95質量%、それ以外の本発明例と比較例はNiを3.8質量%、Siを0.86質量%とした。製造方法、測定方法についても実施例1と同様に行った。また、耐応力緩和性は実施例6と同様の方法で評価した。
表14の結果から明らかなように、本願発明は強度、導電性、曲げ加工性、耐応力緩和性とも優れた特性を有する。特に本実施例ではYを0.1〜0.6μmとすることで、優れた強度、曲げ加工性、導電性を維持したまま15%以下の応力緩和率を実現できた。従って、本実施例に係る銅合金はコネクタや端子材等に好適であると言える。なお、本実施例の銅合金は、ばね性等の特性も優れている。一方、比較例では析出物Yの値が0.01〜2.0μmの範囲外のため、いずれも応力緩和率が21%以上であった。
Claims (13)
- Ni及び/又はSi、並びにB、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上からなる析出物Yと、Ni及びSiからなる析出物Xを有する銅合金であって、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- 前記析出物Yの粒径が0.02〜0.9μmであることを特徴とする請求項1に記載の銅合金。
- Ni、Si及びCrからなる析出物Y1、Ni、Si及びCoからなる析出物Y2、Ni、Si及びZrからなる析出物Y3、並びにNi、Si及びBからなる析出物Zからなる群から選ばれた少なくとも1種の析出物と、Ni及びSiからなる析出物Xを有する銅合金であって、前記析出物Y1、Y2、Y3、およびZからなる群から選ばれた少なくとも1種の析出物の粒径が0.1〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上とNiとSiからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも2つ以上とNiからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも2つ以上とSiからなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- Niを2.0〜5.0質量%、Siを0.3〜1.5質量%含み、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜1.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物からなり、Ni及びSiからなる析出物Xと、B、Al、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、V、S、O、N、ミッシュメタル(MM)、Co及びBeからなる群から選ばれた少なくとも3つ以上からなる析出物Yを有し、前記析出物Yの粒径が0.01〜2μmであることを特徴とする銅合金。
- 前記析出物Yの融点が溶体化処理温度よりも高いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記析出物Xの数が1mm2あたり108〜1012個で、かつ、前記析出物Yの数が1mm2あたり104〜108個であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記銅合金組成が更に、Sn 0.1〜1.0質量%、Zn 0.1〜1.0質量%、及びMg 0.05〜0.5質量%から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の銅合金。
- 応力緩和率が20%未満である請求項1〜11のいずれかに記載の銅合金。
- 電気・電子機器材料用であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の銅合金。
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