JP4721067B2 - 電気・電子部品用銅合金材の製造方法 - Google Patents
電気・電子部品用銅合金材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4721067B2 JP4721067B2 JP2007183018A JP2007183018A JP4721067B2 JP 4721067 B2 JP4721067 B2 JP 4721067B2 JP 2007183018 A JP2007183018 A JP 2007183018A JP 2007183018 A JP2007183018 A JP 2007183018A JP 4721067 B2 JP4721067 B2 JP 4721067B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mass
- copper alloy
- rolling
- alloy material
- precipitation hardening
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Description
また、車載向けの部品では、より高温環境での使用に耐える必要から、耐応力緩和性の高い材料に対する要求が強まっている。
しかし、Cu−Cr−Zr系合金材は、同様の析出硬化型合金であるCu−Ni−Si系などに比べて析出硬化による強度の上昇が小さいことから、より一層の高強度化が求められている。
銅合金の素材には、Crを0.1質量%以上0.4質量%以下、Zrを0.02質量%以上0.2質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的な不純物からなるCu−Cr−Zr系合金材を用いる。ここで、Crは単独でCuからなる母相中に析出して、材料の強度を向上させるとともに耐熱性を向上させる。
Crの含有量は0.1質量%以上0.4質量%以下に規定する。0.1質量%より含有量が少ない場合、Crの析出物が不足することによって析出硬化が不十分になるとともに、耐応力緩和性も十分な特性を得ることができなくなる。また、0.4質量%より含有量が多い場合、Cr析出物の形状が粗大になりやすくなる。粗大な析出物は、強度向上の効果が得られないとともに、曲げ加工時の割れの起点となることから曲げ加工性低下の原因となる。さらに、Crの含有量は0.2質量%以上0.3質量%以下にあれば、より望ましいと言える。
や耐応力緩和性が十分な特性を得ることができなくなる。また、0.2質量%より含有量が多い場合、曲げ加工時の割れの起点となることから曲げ加工性低下の原因となる。さらに、Zrの含有量は0.05質量%以上0.1質量%以下にあれば、より望ましいと言える。
Cr、Zrの含有量は形成される析出粒子の量や大きさに影響を与えるが、上記の範囲内で含有させることによってバランスのよい特性が実現されやすくなる。
上記副成分の合計量は0.01質量%以上1質量%以下に規定したのは、規定範囲より含有量が少ない場合、添加する効果が得られず、また、規定範囲より含有量が多い場合、導電性の低下や曲げ加工性の悪化などの弊害が大きくなるからである。
まず、上記組成を持つ銅合金の素材を、熱間圧延によって加工する。ここで、熱間圧延時の加熱は、鋳造工程で生じた銅合金材中のCr、Zrの析出物をいったん母相中に固溶させる溶体化の効果を有する。この溶体化により、この後の析出硬化処理(時効処理)で生成するCr、Zrの析出物の分布状態をより均一且つ微細な望ましい状態にすることができる。
熱間圧延時の加熱は、より好ましい溶体化状態を得るためには、加熱温度は900℃以上にすることが望ましく、熱間圧延終了直後の温度は700℃以上を維持できることが望ましい。また、熱間圧延後はできるだけ急速に冷却することが望ましい。
また、冷間圧延によって材料中には多数の格子欠陥が導入され、これが次の析出硬化処理において析出物形成の起点として働くことから、均一に分散した析出を促進する効果も持つ。
上記範囲よりも低温、短時間の条件では、析出が十分に起こらないために充分な導電率や強度を得ることができない。また、上記範囲より高温、長時間の条件では、一度の析出硬化処理で一気に析出が進行して析出物が粗大化し、強度が低下するおそれがある。
れとともに新たな析出物を生み出す起点となる格子欠陥を導入することとなり、初期の析出硬化処理で生成した析出物が粗大化するのを抑え、新たな微細析出物を形成させることができる。また、析出硬化処理では、直前の冷間圧延で低下した延性を回復させつつ、繰り返しを重ねる毎に数多くの微細な析出物が形成されて導電率が向上していく。
上記の冷間圧延と析出硬化処理とは、一度に急激に実施するのではなく、少しずつ3回以上に分けて繰り返し実施することで、両者の効果をバランス良く最大限に引き出すことができる。ただし、圧延・析出硬化工程は、上記効果を得るには3回又は4回でほぼ十分であり、また、工程数の増加は製造コストの上昇を伴うため、実用的にも3回又は4回の実施が望ましい。
まず、種々の組成の銅合金材の試料(実施例、比較例)を作製して特性の評価を行い、銅合金材の組成を検討した。
(実施例1)
無酸素銅を母材にして、Crを0.2質量%、Zrを0.1質量%含有した銅合金を、高周波溶解炉を用いて溶製し、インゴット(厚さ25mm、幅30mm、長さ150mm)に鋳造した。このインゴットを950℃に加熱して厚さ8mmまで熱間圧延した。その後、厚さ2mmまで冷間圧延した後、800℃で焼鈍した。
さらに、この銅合金材に、加工度50%の冷間圧延と500℃で60秒加熱する析出硬化処理とを組み合わせた圧延・析出硬化工程を3回繰り返して行い、厚さ0.25mmの銅合金材の試料として実施例1を得た。なお、実施例1では、製造途中も含め、1回〜3回の各回の圧延・析出硬化工程終了後の試料に対して、特性を測定した。その結果を図1に示す。
実施例1では、図1に示すように、冷間圧延と析出硬化処理を繰り返す毎に導電率は上昇し、引張強さも向上しており、3回目の圧延・析出硬化工程終了後には、80%IACSの高導電率を有し、且つ580N/mm2を超える高強度を持った銅合金材が得られた。また、引張強さの上昇に伴って伸びは徐々に低下したが、伸びの低下量はわずかであり、3回目の析出硬化処理終了後でも12%の伸びが確保され、良好な曲げ加工性を有していた。なお、特性の評価試験はJISに準拠して測定した。
実施例1と同じく無酸素銅を母材にして、Crを0.2質量%、Zrを0.1質量%含有した銅合金に、さらに、図2に示す割合でFe、Ni、Co、Sn、Zn、Mgを添加した銅合金を溶製し、上記実施例1と全く同一の工程を実施して作製した試料を実施例2〜7とした。実施例2〜7の組成及び特性を図2に示す。なお、図2には実施例1の組成及び特性も示す。
実施例2〜7においても、75%IACS以上の高い導電率と580N/mm2を超える高強度とを併せ持ち、伸びも良好な優れた銅合金材が得られた。
図2に示す組成の銅合金を溶製し、上記実施例1と全く同一の工程を実施して作製した試料を比較例1〜6とした。比較例1〜6の特性を図2に示す。
比較例1〜4は、それぞれCr、Zrの含有量が、上記実施形態で規定した範囲(Crの含有量:0.1質量%以上0.4質量%以下、Zrの含有量:0.02質量%以上0.2質量%以下)から外れたものである。比較例1、2は、Cr、Zrの含有量が低い例であり、引張強さが低く、十分な強度が得られない。また、比較例3、4は、Cr、Zrの含有量が高い例であり、特に伸びの値が低く、曲げ加工で割れが発生しやすい。
比較例5、6は、副成分であるNi、Snの添加量が上記実施形態で規定した範囲(副成分の合計の含有量:0.01質量%以上1質量%以下)から外れた例である。比較例5、6のようにNi、Snの含有量が過剰なものは、引張強さは高いものの、導電率が低く、また伸びも低く十分な曲げ加工性を確保できないおそれがある。
以上のように、上記実施形態で規定した規定範囲から外れた組成の比較例は、いずれも実施例に比べて不十分な特性しか得られなかった。
(実施例8,9、比較例7〜12)
実施例1と同じ組成の材料を溶製し、実施例1と全く同様に熱間圧延まで行った後、図3に示す加工度、条件及び回数で冷間圧延と析出硬化処理とを組み合わせた圧延・析出硬化工程を実施して作製した試料を実施例8、9、比較例7〜12とした。図3には、実施例8、9、比較例7〜12の特性値を示すと共に、実施例1の圧延・析出硬化工程の加工度、条件、回数及び特性値も示す。
比較例7、8は、冷間圧延の加工度が上記実施形態で規定した規定範囲(20%以上60%以下)よりも低い例であり、引張強さが低かった。比較例9は、冷間圧延の加工度が上記規定範囲よりも高い例であり、伸びが小さく、十分な曲げ加工が得られない。比較例10は、析出硬化処理の温度が上記実施形態で規定した規定範囲(350℃以上600℃以下)よりも低い例であり、導電率及び伸びが低かった。比較例11は、析出硬化処理の温度が上記規定範囲よりも高い例であり、引張強さが低かった。比較例12は、析出硬化処理の時間が上記実施形態で規定した規定範囲(10秒以上600秒以下)よりも長い例であり、引張強さ及び伸びが低かった。
以上のように、上記実施形態で規定した加工熱処理条件を外れた比較例は、いずれも実施例に比べて不十分な特性しか得られなかった。
Claims (3)
- Crを0.1質量%以上0.4質量%以下、Zrを0.02質量%以上0.2質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的な不純物からなる銅合金の素材を熱間圧延した後、加工度20%以上60%以下の冷間圧延と350℃以上600℃以下で10秒間以上600秒間以下加熱する析出硬化処理とを組み合わせた圧延・析出硬化工程を3回以上実施することを特徴とする電気・電子部品用銅合金材の製造方法。
- Crを0.1質量%以上0.4質量%以下、Zrを0.02質量%以上0.2質量%以下含有し、さらにFe、Ni、Co、Sn、Zn、Mgから選択した1種以上の成分を合計0.01質量%以上1質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的な不純物からなる銅合金の素材を熱間圧延した後、加工度20%以上60%以下の冷間圧延と350℃以上600℃以下で10秒間以上600秒間以下加熱する析出硬化処理とを組み合わせた圧延・析出硬化工程を3回以上実施することを特徴とする電気・電子部品用銅合金材の製造方法。
- 前記熱間圧延後であって前記圧延・析出硬化工程の前に、加工度が60%を超える冷間圧延と焼鈍温度800℃以上の焼鈍とを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気・電子部品用銅合金材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007183018A JP4721067B2 (ja) | 2007-07-12 | 2007-07-12 | 電気・電子部品用銅合金材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007183018A JP4721067B2 (ja) | 2007-07-12 | 2007-07-12 | 電気・電子部品用銅合金材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009019239A JP2009019239A (ja) | 2009-01-29 |
JP4721067B2 true JP4721067B2 (ja) | 2011-07-13 |
Family
ID=40359139
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007183018A Active JP4721067B2 (ja) | 2007-07-12 | 2007-07-12 | 電気・電子部品用銅合金材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4721067B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5320541B2 (ja) * | 2009-04-07 | 2013-10-23 | 株式会社Shカッパープロダクツ | 電気・電子部品用銅合金材 |
MX2013005983A (es) * | 2010-11-30 | 2013-12-06 | Luvata Espoo Oy | Un nuevo conductor electrico para unir obleas de silicio en modulos fotovoltaicos. |
JP6835636B2 (ja) * | 2017-03-21 | 2021-02-24 | Jx金属株式会社 | 強度及び導電性に優れる銅合金板 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2570559B2 (ja) * | 1992-11-17 | 1997-01-08 | 三菱マテリアル株式会社 | 銅合金トロリ線・吊架線の製造法 |
JP2005113259A (ja) * | 2003-02-05 | 2005-04-28 | Sumitomo Metal Ind Ltd | Cu合金およびその製造方法 |
JP3731600B2 (ja) * | 2003-09-19 | 2006-01-05 | 住友金属工業株式会社 | 銅合金およびその製造方法 |
US20060086437A1 (en) * | 2004-10-22 | 2006-04-27 | Russell Nippert | Method for manufacturing copper alloys |
-
2007
- 2007-07-12 JP JP2007183018A patent/JP4721067B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2009019239A (ja) | 2009-01-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4968533B2 (ja) | 電気・電子部品用銅合金材 | |
JP4247922B2 (ja) | 電気・電子機器用銅合金板材およびその製造方法 | |
JP4809935B2 (ja) | 低ヤング率を有する銅合金板材およびその製造法 | |
JP5320541B2 (ja) | 電気・電子部品用銅合金材 | |
JP5224415B2 (ja) | 電気電子部品用銅合金材料とその製造方法 | |
JP5261500B2 (ja) | 導電性と曲げ性を改善したCu−Ni−Si−Mg系合金 | |
JP3699701B2 (ja) | 易加工高力高導電性銅合金 | |
JP5320642B2 (ja) | 銅合金の製造方法及び銅合金 | |
JP4809602B2 (ja) | 銅合金 | |
JP5426936B2 (ja) | 銅合金の製造方法及び銅合金 | |
JP5619389B2 (ja) | 銅合金材料 | |
TWI547570B (zh) | 電子機器用銅合金、電子機器用銅合金之製造方法、電子機器用銅合金壓延材及電子機器用零件 | |
JP2008196042A (ja) | 強度と成形性に優れる電気電子部品用銅合金板 | |
JP2009263784A (ja) | 導電性ばね材に用いられるCu−Ni−Si系合金 | |
JP3977376B2 (ja) | 銅合金 | |
JP2008081762A (ja) | 電子材料用Cu−Cr系銅合金 | |
JP2006083465A (ja) | 曲げ加工性を備えた電気電子部品用銅合金板 | |
JP4653240B2 (ja) | 電気電子機器用銅合金材料および電気電子部品 | |
JP2004307905A (ja) | Cu合金およびその製造方法 | |
JP4721067B2 (ja) | 電気・電子部品用銅合金材の製造方法 | |
JP2001214226A (ja) | 端子用銅基合金、該合金条および該合金条の製造方法 | |
JP5748945B2 (ja) | 銅合金材の製造方法とそれにより得られる銅合金材 | |
JP2011190469A (ja) | 銅合金材、及びその製造方法 | |
JP2010236029A (ja) | 電子材料用Cu−Si−Co系合金及びその製造方法 | |
JP2004225112A (ja) | 疲労及び中間温度特性に優れた高力高導電性銅合金 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090828 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20110210 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20110310 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20110323 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140415 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4721067 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
R370 | Written measure of declining of transfer procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |