JP2004507343A - 微粉砕粒子 - Google Patents

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Abstract

分散または媒体ミルの微粉砕室中で微粉砕媒体物体の2つまたは3つ以上の組成物の存在下において固体基材を粉砕する方法であって、微粉砕媒体物体が全て固体基材の粉砕に寄与し、かつ媒体物体の少なくとも1つの組成物がこの粉砕方法で製造される相乗作用性混合物の形をした微粉砕された固体基材粒子と共に保持されている微粉砕媒体物体の断片を与える上記の方法が開示される。さらに具体的に述べると、所望粒度を持つ、固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、(a)固体基材、流体キャリアー、破壊靭性KC2を有する第一材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;(b)上記媒体ミルを作動させて上記固体基材を粉砕し、かつ上記第一材料の微粉砕物体の少なくとも一部分を、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する、第一材料の小粒状物および固体基材の小粒子まで砕き;(c)その分散物をSより大きい粒度を有する全ての微粉砕物体および固体基材粒子から分離し;そして(d)場合によって、上記分散物から上記流体キャリアーを除去して、流体を含まない、そして上記の粒子および小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成し、ここでKC2がKC1より大きい上記の方法が開示される。

Description

【0001】
発明の分野
この発明は、微粉砕固体材料の小粒子にして、それに匹敵するかまたはそれより小さい粒度を持つ微粉砕媒体の小粒状物と相乗作用的に混合されたそのような小粒子の組成物、および相対的な破壊靭性値、硬度値および脆性指数値に従って選択される2種または3種以上の微粉砕媒体材料の組み合わせを用いる上記組成物を製造するための微粉砕方法に関する。
【0002】
発明の背景
今日多種多様な工業で広く使用されている結晶性および非晶質固体材料の小粒子を製造するための粒度低下は、ジェット微粉砕、ボール微粉砕、媒体微粉砕(media milling)および均質化を含めて乾式および湿式微粉砕技術を用いる機械的手段で成し遂げることができる。
【0003】
固体材料の小粒子、特に貧溶性または本質的に不溶性の固体の小粒子には、粒度低下の結果として達成される表面積の増大に関係した数多くの適用分野に有利な用途がある。小粒子の形態をした固体材料は、それが混合物、調合物、組成物、化学反応物、分散物、塗料、粉体、凍結乾燥物、懸濁物、マトリックス等に組み込まれると、観察または知覚される色および分布均一性のような巨視的または静的性質、および偽無限溶媒プール容量を含めてある溶媒容量またはある液体容量中への高い溶解速度のような改善された微視的または動力学的性質においてより大きな均質性を示す。
【0004】
1つの面では、固体薬物物質に関し、液体の容量は、薬物のある剤形において用いられるまたはその剤形と共に投与される、1〜50ミリリットルであることが多いが、約100マイクロリットル〜約100ミリリットルのような液体の容量であることができる。もう1つの面では、固体薬物物質に関し、液体の容量は、薬物がある剤形で投与される患者に見いだされる液体容量であることができる。例えば、その液体の容量として、患者の血液容量、患者の尿容量、患者の血漿容量、患者のリンパ液容量、患者の胃中液体容量、患者の胃腸管中液体容量、患者の腹水流体容量、患者の嚢中液体容量、患者の眼中液体容量、患者の肺中液体容量等を挙げることができる。この容量は特定の種類の流体または液体の全容量であってもよいし、或いは総容量の一定部分または100%未満であることもできる。
【0005】
固体材料の小粒子は、特に粒子の粒度増加、および液体中で凝集または凝結を起こさない粒子懸濁液の安定性に関し、粒子安定性を達成または増大させるために特に粒子表面に1種または2種以上の表面活性物質の存在を必要とすることが多い。
【0006】
近年、色々なペイント、顔料分散液、写真分散液、製剤分散液等を製造するための固体基材の常用媒体ミル法において、小さい微粉砕媒体の使用に移り変わる変化があった。より小さい粒度の媒体の使用により得られる利点として、固体基材粒子の粒度低下速度がより速いこと、およびこの微粉砕法の生成物としてより小さい固体基材粒度の達成がより速いこと、即ち微粉砕がより効率的であることが挙げられる。Netzsch LMCミルおよびDrais DCPミルにおけるような通常の媒体ミル設計の改良には、250〜300マイクロメートルほど、またはそれ以下の小さい微粉砕基材粒子からより大きい微粉砕媒体を物理的に分離(例えば、濾過)できるようにする、より小さいスクリーン開口寸法が組み込まれている。しかし、利用できる最善の機械設計によっても、微粉砕室に隣接するセパレータースクリーンの目詰まり、および媒体の液圧充填に因る許容できない圧力の増大のために、約250〜300マイクロメートルより小さい微粉砕媒体物体(milling media bodies)を使用することは一般に可能でない。一般に、商業用には、媒体セパレータースクリーンの限界のために、350マイクロメートルの粉砕媒体(grinding media)粒度が媒体粒子保持の実際上の下限であると考えられる。
【0007】
製剤用途のような適用分野においては、医薬品添加剤のような1種または2種以上の追加の成分を場合によって含んでいる固体の小粒子の乾燥調合物を製造することが望ましいことが多い。カプセル、ウエーハ、錠剤および粉末のような乾燥剤形から粒子の凝集物ではなく個々の粒子の、体液、例えば胃腸液および粘膜液のような流体中への、およびある薬物の剤形を投与するまたは含ませるために用いられるある容量の形態(the form of a volume)をしていることが多い水のような液体中への再懸濁の容易さが、このような医薬品添加剤の存在によって改善されることが多い。このような調合物における懸濁粒子から薬物が引き続き溶解する速度、そして、往々にして、凝集物としてではなく再懸濁粒子の形態をした貧水溶性薬物のバイオアビリティーは、表面積の増加および粒度低下の関数として増加することができる。1種または2種以上の医薬品添加剤を含んでいる調合物中によく分散された固体薬物の小粒子は、特にそれら粒子が互いに強く凝集または会合して小粒子のクラスターまたは凝集物を形成することがないとき、固体物質の孤立源として機能することができる。小粒子は製剤プロセスにおける医薬品添加剤のような他の調合成分とバルク調合プロセスで混合できるときもあるが、いつも全成分の均一な分布が達成されるとは限らない。小粒子を伴う混合プロセスでは、凝集物または会合クラスター中に存在する小粒子の完全な分離を達成して、周囲が他の調合成分で囲まれている分離小粒子の調合物を製造することは、必ずしも可能ではない。粒度低下プロセス中に医薬品添加剤の分子クラスターまたは破片(pieces)若しくは断片(fragments)の製剤上許容できる医薬品添加剤粒子の生成は、従来技術を越える潜在的な改善を提供することができる。
【0008】
小粒子として調合された水不溶性薬物の薬物送達における利点は、ここで参照することにより内容が本明細書に含められる、Pharmaceutical Technology、1999年3月号のPace等による総説「不溶性薬物の新規な注射可能調合物(Novel injectable formulations of insoluble drugs)」に記載されている。
【0009】
製剤技術には、湿式粉砕に対して、製剤上許容できないまたは有毒な微粉砕媒体物体の断片からの汚染に関連した懸念に因る先入観がある。微粉砕媒体物体の断片による汚染は、非生体適合性材料を製剤調合物に導入して患者に有毒な効果をもたらす可能性がある。例えば、固体材料の比較的大きい粒度(即ち、約10ミクロンより大)の断片が注射で投与され、そして毛細血管を閉塞するならば、汚染は心身に有害な効果をもたらし得る。媒体および媒体の断片による汚染の他の効果に、イットリウムのような重金属イオンの導入、および金属酸化物の導入によって引き起こされるpH変化があり、その金属酸化物の導入は、順次、貯蔵中に、加水分解、酸化、ラジカル反応、電子移動反応、縮合反応および他種類の化学反応のような触媒接触反応に関係した、薬物物質中の変化を促進し得る。
【0010】
Czekai等は、米国特許第5,513,803号および同第5,718,388号明細書において、撮像要素、顔料および製剤において有用な微細な粒子の製造に対する超微細な微粉砕媒体の使用を開示している。Czekai等は、また、大および小粒度の、同一組成を有する微粉砕媒体の混合物を同時に使用するもので、粒度の大きい方の媒体が微粉砕室中に保持され、一方粒度の小さい方の媒体は微粉砕室内に保持されないそのような使用も開示した。ある1つの好ましい態様における粉砕媒体は重合体樹脂の粒子から成る。媒体からの汚染物質が、生体内で、体から排除され得る生物学的に許容できる生成物に有利に代謝することができるという記述された利点を持つ、生分解性である重合体の使用も開示される。
【0011】
Liversidge等は、米国特許第5,145,684号および欧州特許出願第498,492号明細書において、表面に表面変性剤が約400nm未満の有効平均粒度を保つのに十分な量で吸着されている薬物物質またはx線コントラスト剤より成る分散性粒子について記載している。これら粒子は、薬物物質または撮像剤を液体分散媒体中に分散させ、そして硬質粉砕媒体の存在下で湿式粉砕することによって製造される。
【0012】
微粉砕媒体からの断片または崩壊物が微粉砕された基材中に組み込まれることの有益な効果が報告されている。例えば、Cottringer等は、米国特許第4,623,364号および同第5,383,945号明細書において、焼成に先立つアルファーアルミナ媒体による湿式振動微粉砕中に種材料を導入することにより、非アルファーアルミナゲルから高密度焼結多結晶性アルファーアルミナ研磨剤グリットを製造する方法について説明している。アルミナ粉砕媒体から摩耗した粒状物質または崩壊物が微粉砕媒体から導入され、そして焼成中にアルファーアルミナの結晶化の播種を行う。さらに、微粉砕工程に導入されるSiO、Cr、MgOおよびZrOのような他の不純物が、グレイン成長抑制剤として働き、そしてアルファーアルミナ粒子間の粒界にそれら不純物が存在することによって最終生成物の結晶成長を抑制する。しかし、この方法において2種類以上の微粉砕媒体を用いているということは全く述べられていない。
【0013】
Park等は、J. Am. Ceram. Soc.(1999)、82(11)、3150−3154の「Ti(C,N)系セラミックの微細構造および性質に及ぼす炭化物の影響(Effect of carbides on the microstructure and properties of Ti(C,N)−based ceramics)」において、粉末NbC、TaC、WCまたはMoCとプレミックスされ、次いで微粉砕、乾燥、プレス加工および焼結される粉末Ti(C0.5N0.5)を研究した。微粉砕媒体(特に、WO−Co合金ボール)から導入される金属不純物は、焼結時に緻密化を促進するのに十分であった。ただ1種類の媒体しか用いられなかった。
【0014】
ミル中における混合粒度および混合形状を持つ微粉砕媒体の同時使用が広く知られている。例えば、米国特許第5,611,829号明細書は、等しい量の0.5インチ(1.3cm)のボール、0.5インチ(1.3cm)の円柱体および0.75インチ(1.9cm)の円柱体より成る、異なる粒度と形状を持つアルミナミル媒体の混合物による、アルファーアルミナシードゾル(seed sol)のアルミナボールミルでの微粉砕を開示している。しかし、この媒体は全てが同一アルミナ組成のものである。同一組成を持つ混合粒度の微粉砕媒体物体の使用は、例えば米国特許第5,902,711号、同第5,834,025号、同第5,747,001号、同第5,718,919号、同第5,718,388号、同第5,679,138号、同第5,565,188号、同第5,513,803号および同第5,500,331号明細書で繰り返し述べられた。媒体の負荷が、粉砕時間および微粉砕法で吸収される粉末の両者に影響を及ぼす。媒体が全ミル容積の50%を示すとき、粉砕時間は最短になり、そして吸着される粉末は最大になる。微微粉砕室に微粉砕媒体が50〜55容積%で装填されるとき、媒体投入物は、一般に、最大粉砕効率のために、25%の小粒度微粉砕媒体ボール、50%の中粒度微粉砕媒体ボールおよび25%の大粒度微粉砕媒体ボールより成るべきである。
【0015】
ミル中における混合組成の微粉砕媒体物体の同時使用が報告されている。例えば、米国特許第5,022,592号明細書は、磁性媒体と非磁性媒体との組み合わせを同時に使用できる磁性媒体ミルを開示している。この媒体は磁性または磁化性ではないある種の媒体を含むことができる。加えて、個々の媒体粒子は磁化性または非磁化性の両材料を含むことができる。
【0016】
米国特許第3,521,825号明細書は、タングステン粉末のような第一材料のマトリックス中に、アルミナ(Al)またはトリア(ThO)のような1種または2種以上の第二相材料から構成される微粉砕ボールから、そのボールの第二相材料の摩耗を引き起こす微粉砕法により誘導される非常に微細なのその第二相材料の均質な分散液を与える方法を開示している。しかし、この微粉砕法におけるタングステン粉末には、この方法で粒度低下はない。
【0017】
米国特許第5,139,719号明細書は、炭化ケイ素およびホウ素含有材料が元素状炭素と共に、または焼結させると直ちに元素状炭素を与えるように分解し得る有機重合体または樹脂と共に湿式微粉砕され、乾燥され、そして乾式微粉砕されて均質な粉末を与える、焼結炭化/ホウ化ケイ素材料の製造方法を開示する。元素状炭素は焼結助剤として作用する。
【0018】
製剤用材料の粉砕媒体の断片による汚染が認められており、汚染レベルを最小限に抑えるかまたは許容できるレベルに保つような媒体の選択が報告された。Liversidge等は、米国特許第5,552,160号明細書で、粉砕媒体用材料の選択が決定的に重要であるとは考えられないと述べている。彼らは、また、マグネシア、ケイ酸ジルコニウムおよびガラス粉砕媒体で安定化された酸化ジルコニウムが、製剤組成物の製造に許容できると考えられる汚染レベルを持つ粒子を与えると述べている。
【0019】
Bruno等は、1992年11月25日出願の米国特許出願第07/981,639号明細書において、製剤組成物を微粉砕するための重合体粉砕媒体を開示している。
【0020】
米国特許第5,662,279号明細書は、微粉砕媒体物体からの生成物の除去が、後続工程において、スラリー中に浸漬された導管に取り付けられている取り外し自在のフィルタープローブを介して真空濾過することにより行われる、硬質微粉砕媒体物体を用いて化合物の粒度を低下させる、化合物のスラリーの微粉砕法について述べている。
【0021】
米国特許第5,585,108号明細書は、経口用胃腸治療剤の粒子を、アルミニウム、鉄、マグネシウムおよびケイ素を酸化物および水和物として含んでいる、1〜2%のモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライトおよびサポナイトを含む製剤上許容できるクレーと組み合わせて形成する方法を開示している。
【0022】
米国特許第5,470,583号および同第5,336,507号明細書は、曇り点調節剤として帯電リン脂質を、そして微粉砕法において1種類の媒体を使用するナノ粒子の製造方法を開示した。
【0023】
米国特許第5,302,401号明細書は、表面変性剤および凍結防止剤を吸着して有するナノ粒子を、微粉砕法で1種類の媒体を使用して形成する組成物と方法を開示した。
【0024】
米国特許第5,478,705号明細書は、化合物を重合体樹脂から成る微粉砕媒体物体の存在下で微粉砕することを含む、写真、電子写真または熱転写画像形成要素で有用な、1ミクロン未満の平均粒度を有する化合物の固体粒子を製造する方法を開示した。
【0025】
米国特許第5,500,331号明細書は、約100ミクロン未満の平均粒度を有する微粉砕媒体の存在下で微粉砕することを含む、サブミクロン粒子の製造方法を開示する。微粉砕媒体は、それらが微粉砕中にチップ化または破砕されるのを回避できるようにするのに十分な硬度および脆砕性を持つ化学的および物理的に不活性な重合体樹脂のものである。粒度5、25、50、75および450ミクロンのポリスチレン媒体が開示されている。
【0026】
微粉砕媒体により微粉砕された粒子に導入される望ましくない汚染物質のレベルを下げる努力が述べられてきた。米国特許第5,679,138号明細書は、セラミックケイ酸ジルコニウムビーズの微粉砕媒体により導入される比較的高レベルの痕跡金属イオン汚染物質を、ポリスチレンビーズがインクジェット用インク濃厚物を製造するために用いられるときに見いだされるものに対して比較している。
【0027】
米国特許第5,718,919号明細書は、薬物の小粒子を製造するマイクロ沈殿法(microprecipitation method)であって、生成物が、それが調合される前に毒性のために除去されなければならない微粉砕媒体から発生する重金属の汚染物質を含んでいない上記の方法を開示する。
【0028】
米国特許第4,775,393号明細書は、非炭化ケイ素媒体に見いだされる鉄、アルミナおよびホウ素不純物の導入が避けられる炭化ケイ素粉砕媒体を使用する、炭化ケイ素をサブミクロンの粉末に微粉砕する方法を開示する。
【0029】
米国特許第5,518,187号明細書は、薬物物質または診断用撮像剤の粒子を、重合体樹脂粉砕媒体の存在下で粉砕を行うことによって製造する方法を開示する。
【0030】
米国特許第5,534,270号明細書は、3mm未満の平均粒度を有する硬質の粉砕媒体を用いて、滅菌されたナノ粒状結晶性薬物粒子を製造する方法を開示する。薬物物質の湿式粉砕は、ケイ酸ジルコニウムビーズ、マグネシアで安定化されている酸化ジルコニウムまたはガラスビーズを用いて、400nm未満の有効平均粒度を維持するように行われた。
【0031】
米国特許第5,657,931号明細書は、化合物の固体粒子、および両親媒性、水溶性または水分散性のブロック重合体分散剤の粗い水性スラリーを形成し、次いでそのスラリーを微粉砕して0.5ミクロン未満の粒子を与えることによる、実質的に水不溶性の非重合体有機化合物の水性分散液を製造する方法を開示する。
【0032】
米国特許第5,704,556号明細書は、直径が100ミクロン未満であるジルコン、ガラスおよびイットリウム強化酸化ジルコニウムのセラミックビーズを用いてコロイド粒子を製造する媒体微粉砕法であって、セラミック微粉砕媒体ビーズの直径が装入原料粒子の平均粒度の約100倍以下である上記の方法を開示する。
【0033】
米国特許第5,862,999号明細書は、約100ミクロン未満の平均粒度を有する硬質粉砕媒体の存在下で治療薬または診断薬の粒子を粉砕する方法を開示する。生成する粒子は約500nm未満の平均粒度を有し、かつ媒体の劣化が原因となる許容できない汚染がない。
【0034】
米国特許第5,902,711号明細書は、液体有機媒体の連続相中で重合体微粉砕媒体の存在下において微粉砕を行うことにより、電子写真用トナー顔料化合物の微粉砕された固体粒子を形成する方法を開示する。その化合物粒子は100nm未満の平均粒度まで微粉砕される。
【0035】
米国特許第4,880,634号明細書は、脂質ナノペレットから成る経口投与用薬理活性物質を水性コロイド懸濁液中に含んでいる医薬品添加剤系の製造方法について記載する。この方法は、少なくとも1種の界面活性剤、薬理活性物質および少なくとも1種の脂質の混合物の溶融物を形成し、その溶融混合物を脂質の融点より高い温度で水溶液内に分散させて脂質ナノペレットを形成し、そしてその懸濁液を脂質の融点より低い温度に冷却することを含む。
【0036】
米国特許第5,922,355号明細書は、固体材料をその融点より低い温度に連続的に保ちながらある一定時間にわたって粉砕する粒度低下方法により、または粒度増加を制御し、貯蔵安定性を高める他の表面変性剤と組み合わされている表面活性物質としてのリン脂質により粒子を安定化しながら沈殿を行うことによりサブミクロンの大きさのマイクロ粒子を製造する方法を開示する。リン脂質の外に1種または2種以上の表面変性剤を使用すると、追加の表面活性物質(界面活性剤)を使用しなくても、同じエネルギー投入量で、リン脂質を単独使用して達成することができるよりもはるかに小さい容積重み付き平均粒度値が得られ、同時に貯蔵時の粒度増加に抵抗性の組成物が得られる。リン脂質および界面活性剤は共に粒度減少時点に存在する。
【0037】
米国特許第5,091,187号および同第5,091,188号明細書は、リン脂質被覆微結晶の水性分散液として注射可能である水不溶性薬物を開示する。その結晶性薬物は、リン脂質または他の膜形成性両親媒性脂質の存在下において、高剪断を誘発する方法で50nm〜10マイクロメートルまで粒度低下される。
【0038】
米国特許第5,700,471号明細書は、水中溶解度が低い化合物をそれらそれぞれの融点より高い温度に短時間曝露し、それらを水性相または有機相中に攪流を起こしながら分散させ、続いてその相を冷却して微細な粒子分散液を形成することによる上記化合物の超微粉砕化法を開示する。
【0039】
国際特許出願WO第99/29700号明細書は、薬理活性成分、並びに少なくとも1種の脂質物質および少なくとも1種の両親媒性物質より成る複合材料から、その複合材料を形成している材料の少なくとも1つの溶融温度よりも高い温度において、かつ表面活性物質として1種または2種以上の水性界面活性剤の存在下においてその複合材料のマイクロエマルジョンを形成する高圧均質化法を用い、次いでそのマイクロエマルジョンを冷却して固体粒子の分散液を形成するサブミクロンナノ粒子の製造方法について述べる。
【0040】
WO第97/14407号明細書は、100〜300nmの平均粒度を有する水不溶性の生物活性化合物を溶液中に溶解させ、次いでその溶液を適切な表面変性剤の存在下で圧縮ガス、液体または超臨界流体中に噴霧することによって製造される上記化合物の粒子を開示する。
【0041】
発明の目的
微粉砕媒体物体の断片の微粉砕法中における微粉砕された生成物粒子への組み込みには、それら断片が微粉砕された固体に有益であるか、または望ましくない若しくは悪影響を示さないときに利用価値が認められているが、このような材料の微粉砕固体中への組み込みを有利に増加させる方法が必要とされる。従って、この発明の1つの目的は、微粉砕媒体粒状物の微粉砕固体への有益な組み込み方法を提供すること、および微粉砕固体材料の粒子および微粉砕媒体の粒状物(particulates)を含む新規な組成物を提供することである。
【0042】
この発明のもう1つの目的は、微粉砕された製剤用薬剤の粒子および微粉砕媒体の生体適合性粒状物を含む製剤組成物の製造方法を提供することである。
この発明のもう1つの目的は、固体基材の複数の小粒子にして、それら小粒子中に微粉砕媒体の粒状物が均一に分散されているそのような小粒子を形成する組成物および方法を提供することである。
【0043】
この発明のもう1つの目的は、固体基材が、媒体ミル中で、微粉砕媒体物体にして、それらの破砕(fragmentation)によって、中に分配されたままになっている、固体基材の複数の小粒子の使用に対して有害でない微粉砕物体の小粒状物または断片を与えるそのような微粉砕媒体物体との接触により、複数の小粒子まで効率的に粒度低下される改善された微粉砕法を提供することである。
【0044】
この発明のもう1つの目的は、固体基材の小粒子と微粉砕物体の小粒状物との相乗作用性混合物(synergetic commixture)を製造するための組成物および方法を提供することである。
【0045】
発明の簡潔な要約
本発明者は、固体基材を媒体ミルの微微粉砕室中で微粉砕媒体物体の2つまたは3つ以上の組成物の存在下で所望粒度まで微粉砕する方法であって、微粉砕媒体物体が全て固体基材の粉砕または微粉砕に寄与し、しかも媒体物体の少なくとも1つの組成物が、微粉砕法において生成される相乗作用性混合物として微粉砕された固体基材粒子により部分的にまたは完全に保持される、上記の所望粒度を持つ断片または粒状物を与える上記の方法を発見した。このような粒状物は、主として、微微粉砕室内に存在する微粉砕物体と他の成分との動力学的相互作用により製造される。1つの面において、上記粒状物は、主として、微微粉砕室中に存在する第一組成物の微粉砕物体と他の成分、特に第二組成物の微粉砕物体との動力学的相互作用により生成される。1つの好ましい面において、上記粒状物は、上記微粉砕法で生成される微粉砕固体粒子と粒状物を含む組成物の引き続く使用に対して不活性または良好なものである。もう1つの好ましい面では、上記断片または粒状物は、上記微粉砕法で生成される微粉砕固体粒子と粒状物を含む組成物の引き続く使用に対して有益なものである。もう1つの好ましい面においては、上記固体は貧溶性製剤用薬剤であり、また上記粒状物は上記微粉砕法で生成される製剤用薬剤の微粉砕固体粒子と粒状物を含む調合物の引き続く使用に対して不活性なものである。さらに他の面において、上記固体は製剤用薬剤であり、また上記粒状物は上記微粉砕法で生成される製剤用薬剤の微粉砕固体粒子と粒状物を含む調合物の引き続く使用に対して有益なものである。最も好ましい面では、上記固体は貧水溶性の製剤用薬剤であり、また断片化された微粉砕媒体の粒状物は、上記微粉砕法で生成される貧水溶性製剤用薬剤の小粒子と微粉砕媒体物体の粒状物を含む剤形の調合物または調合物の一部分中における医薬品添加剤材料である。
【0046】
この発明において、固体基材の粒子中に分布されている微粉砕媒体物体の断片は、微粉砕された固体粒子の使用に対して有害ではない。1つの面において、固体基材の粒子中に分布されている微粉砕媒体物体の断片は、薬物小粒子のある剤形の治療活性または治療上の適用に対して不活性なものであり、かつ剤形を形成するいかなる局面も妨害しないか、または患者に剤形の一部として投与されるときに有毒作用のような有害な作用を示さない。もう1つの面では、固体基材の粒子中に分布されている微粉砕媒体物体の断片は、薬物小粒子のある剤形の治療活性または治療上の適用に対して有益なものであって、それら小粒子に少なくとも1つの性質を追加するか、またはそれら小粒子の少なくとも1つの性質を助長若しくは向上させるか、或いはその性質とある種の様式で相乗作用する。この点に関し、調合物中における医薬品添加剤としての微粉砕媒体物体の断片は、薬物および場合によって用いられる追加の医薬品添加剤を含む錠剤若しくはカプセルまたは粉末或いはウエーハのような剤形の形成に際して助けとなり得、また水、または薬物の剤形の一部であるか若しくはその剤形と共に投与される水または水性液体のような液体中に、或いは胃腸液、尿、リンパ液、腹水液、粘液等のような患者の体液中に上記小粒子を再分散させる際に助けとなり得る。
【0047】
さらに具体的に述べると、本発明者は、所望粒度を持つ固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、
a)固体基材のプレミックス、流体キャリアー、第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体を含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子の相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、該第一材料の微粉砕物体は破壊され、かつ該第二材料の微粉砕物体により浸蝕され、
該第二材料の微粉砕物体は、本質的に、上記微粉砕方法における破壊および浸蝕に対して実質的に抵抗性であり、そして
は第二材料の微粉砕媒体物体の粒度よりも小さい
上記の方法を発見した。
【0048】
この発明のもう1つの態様において、本発明者は、所望粒度を持つ、固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、
a)固体基材、流体キャリアー、破壊靭性KC1を有する第一材料の複数の微粉砕物体、および破壊靭性KC2を有する第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む、流体を含まない相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合KC2はKC1より大きい
上記の方法を発見した。
【0049】
この発明のもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体物体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC1がKC2より小さく、かつ第一材料の媒体物体の粒度が第二材料の媒体物体の粒度より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0050】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の微粉砕媒体物体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の微粉砕媒体物体の粒度より小さいそのような混合物から成ることができる。
【0051】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体と破壊靭性KC2を有する第二材料の媒体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の媒体の粒度と同じであるそのような混合物から成ることができる。
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Lを有する第一材料および脆性指数B2Lを有する第二材料の媒体の混合物であって、B1LがB2Lより小さく、そしてB1LおよびB2Lが約5.5未満であるそのような混合物から成ることができる。
【0052】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Hを有する第一材料および脆性指数B2Hを有する第二材料の媒体の混合物であって、B1HがB2Hより大きく、そしてB1HおよびB2Hは共に約5.5より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0053】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、硬度Hを有する第一材料および硬度Hを有する第二材料の媒体の混合物であって、HがHより小さいそのような混合物から成ることができる。
【0054】
本発明の好ましい態様において、微粉砕は、固体基材を含むプレミックスを、媒体ミルの微粉砕室中の流体キャリアー中に分散されている第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体と共に高速混合することによって行われる。
【0055】
1つの好ましい態様において、第一材料の微粉砕物体は第二材料の微粉砕物体より小さく、そしてこの微粉砕法において生成せしめられる固体の所望小粒子の粒度に等しいかまたはそれ以下である;第二材料の微粉砕物体は第一材料の微粉砕物体よりも大きく、かつこの微粉砕法で生成せしめられる固体の所望小粒子の粒度よりも大きい;そして第二材料の微粉砕物体は第一材料の微粉砕物体よりも硬く、より高い破壊靭性を有し、そして脆さがより小さい。
【0056】
もう1つの好ましい態様において、第一材料の微粉砕物体は初め第二材料の微粉砕物体より大きい。第一材料の微粉砕物体は微粉砕法中に砕壊され(spalled)、そしてこのような砕壊で生成した第一材料の微粉砕媒体物体の断片または破片の粒度はこの微粉砕法で生成した固体の所望小粒子の粒度に等しいかまたはそれ以下である。第二材料の微粉砕物体は第一材料の微粉砕物体より小さいが、その微粉砕法で生成した固体の所望小粒子の粒度よりは大きい。残留第二微粉砕材料および第一材料の全ての大きい粒度の媒体は、濾過のような粒度依存性の方法によって生成物粒子および相乗作用性媒体粒状物から分離することができる。この好ましい面における第二材料の微粉砕物体は硬く、本質的に非浸蝕性であり、かつより高い破壊靭性を有し、そして第一材料の微粉砕物体より脆さが少ない。
【0057】
本発明の方法は、固体基材の広い範囲の種類に、そして以下において説明される広範囲の粒度、広範囲の硬度および広範囲の破壊靭性を持つ広範囲の種類の商業的に入手できる微粉砕媒体物体に適用可能である。1つの好ましい態様において、本発明の方法は、貧溶性の固体製剤用薬剤の粒子およびこの固体基材の粒子の使用となじむ微粉砕材料の粒状物の製造に適用可能である。1つの好ましい例において、微粉砕媒体物体の粒状物は、貧水溶性薬物の(ナノ粒子および微粒子のような)粒子の調合物または剤形に組み込むことができるが、この場合微粉砕媒体物体の粒状物および貧水溶性薬物の粒子は、共に微粉砕法で生成せしめられる。
【0058】
例えば350マイクロメートル未満の粒度を持つ超微粒の微粉砕媒体の連続式またはバッチ式微粉砕法における使用を可能にする微粉砕方法が提供されることが、この発明の1つの有利な特長である。
【0059】
製剤用薬剤、特に貧水溶性または水不溶性の治療薬および診断薬の極めて微細な粒子を製造する方法が提供されることが、この発明の特に有利な特長である。
例えば350マイクロメートル未満の粒子の、超微粒の粉砕媒体の粉砕法における使用を可能にする粉砕方法が提供されることが、この発明のもう1つの有利な特長である。
【0060】
他の有利な特長は、次の好ましい諸態様の説明を参照すると直ちに明らかになるだろう。
発明の詳しい説明
本発明によれば、所望粒度を持つ固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、
(a)固体基材、流体キャリアー、第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
(b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
(c)該分散液をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
(d)場合によって、該分散液から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、該第一材料の微粉砕物体は破壊され、かつ該第二材料の微粉砕物体により浸蝕され、
該第二材料の微粉砕物体は、本質的に、上記微粉砕方法における破壊および浸蝕に対して実質的に抵抗性であり、そして
は第二材料の微粉砕媒体物体の粒度よりも小さい
上記の方法が開示される。
【0061】
この発明のもう1つの態様において、本発明者は、所望粒度を持つ固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、
a)固体基材、流体キャリアー、破壊靭性KC1を有する第一材料の複数の微粉砕物体、および破壊靭性KC2を有する第二材料が第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
c)該分散液をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
d)場合によって、該分散液から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む、流体を含まない相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合KC2はKC1より大きい
上記の方法を発見した。
【0062】
この発明のもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC1がKC2より小さく、かつ第一材料の媒体物体の粒度が第二材料の媒体の粒度より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0063】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の微粉砕媒体物体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の微粉砕媒体物体の粒度より小さいそのような混合物から成ることができる。
【0064】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体と破壊靭性KC2を有する第二材料の媒体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の媒体の粒度と同じであるそのような混合物から成ることができる。
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Lを有する第一材料および脆性指数B2Lを有する第二材料の媒体の混合物であって、B1LがB2Lより小さく、そしてB1LおよびB2Lが約5.5未満であるそのような混合物から成ることができる。
【0065】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Hを有する第一材料および脆性指数B2Hを有する第二材料の媒体の混合物であって、B1HがB2Hより大きく、そしてB1HおよびB2Hは共に約5.5より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0066】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、硬度Hを有する第一材料および硬度Hを有する第二材料の媒体の混合物であって、HがHより小さいそのような混合物から成ることができる。
【0067】
本発明で用いられる相乗作用性混合物は、第一成分(例えば、固体基材の粒子)にして、その成分関連の(粒子分散性のような)化学的または物理的性質、(治療薬のような)用途、または(治療効果のような)機能を有するそのような第一成分、および(微粉砕媒体物体の粒状物のような)第二成分にして、第一成分と同じ化学的または物理的性質、用途または機能を有しないそのような第二成分を含む組成物を意味する;ここで、第一成分と第二成分との混合物としての相乗作用性混合組成物は、それに関連して第一成分の性質、用途または機能を、その第一成分の該性質、用途または機能のレベルまたは量に等しいかまたはそれより改善された様式で有するか、またはその組成物は、第二成分の非存在下では第一成分に関連しない、または第一成分の非存在下では第二成分に関連しない新しい性質、用途または機能を有する。
【0068】
微粉砕または媒体微粉砕法において、粉砕助剤または微粉砕媒体(本発明では微粉砕媒体物体または媒体物体とも称される)が微粉砕されるべき固体と組み合わされ、そして機械的エネルギーが適用される。微粉砕媒体物体が、ときには微粉砕された固体基材とも称される、微粉砕されている固体材料と反復衝突すると、その結果として基材が反復破壊(fracturing)、チップ化(chipping)または砕壊(breaking)(spalling)されて、基材の粒度が微粉砕前の固体基材の粒度よりも小さい所望粒度まで低下される。固体基材の粒子の大きさを所望粒度まで低下させるために媒体微粉砕法を用いるとき、この方法は通常媒体ミルの微粉砕室中で行われる。微粉砕室には、微粉砕または粉砕媒体、微粉砕されるべき固体材料(または固体基材)のプレミックス、および上記媒体および基材を懸濁させることができる液状またはガス状流体キャリアーを含む含有物が供給される。微粉砕室には、場合によって、重合体、界面活性剤または表面活性剤、粘度調節剤、緩衝剤、pH制御剤、キレート化剤、増量剤、医薬品添加剤、イオン強度調整剤、着色剤等のような1種または2種以上の追加の成分を加えることができる。
【0069】
かき混ぜ機ボールミル(agitator ball mill)、磨細機または攪拌器付きミル(stirred mill)のような媒体ミルは、高エネルギー効率、高固体処理量、生産生成物の狭い粒度分布、および均質な流体キャリアー中スラリーを生成させる能力を含めて幾つかの利点を有する。かき混ぜ機ボールミルを用いる場合の主要変数は、かき混ぜ機速度、懸濁流量、滞留時間、スラリー粘度、イン−フィード(the in−feed)の固体粒度、微粉砕媒体の粒度および微粉砕される固体基材の所望生成物粒度である。かき混ぜ機ミルは粒子を効率的運転で微粉砕媒体物体の粒度の約1/1000の平均粒度まで粉砕することができる。微粉砕される固体基材の粒子の所望粒度S(所望粒度分布または粒子範囲と称されるときもある)は予定される用途に依存するが、Sは好ましくは1mm未満、さらに好ましくは100マイクロメートル未満である。一部の態様では、Sは、粒度が好ましくは1または2マイクロメートル未満、または0.5マイクロメートル未満でさえある貧水溶性または水不溶性薬物の粒子のような場合に10マイクロメートル未満、さらに好ましくは2マイクロメートル未満である。1つの面において、0.05〜0.5マイクロメートルのオーダーの平均粒度を得るために、0.45または0.5mmの粒度を有する微粉砕媒体が用い得る。約0.2〜約0.6mmの直径を有する微粉砕媒体物体が、例えばN.J.州、Bound BrookのTosoh Ceramics社から入手できる。微粉砕を最適なものにするには、粒子の所望粒度または所望粒度分布Sの約1000倍の微粉砕媒体物体を使用することが望ましい。これは微粉砕の所要時間を最短に抑える。
【0070】
1つの面では、微粉砕された基材の所望粒度または所望粒度範囲は、約0.05マイクロメートル〜約1mm、好ましくは約0.1マイクロメートル〜約0.5mm、さらに好ましくは約100ナノメートル〜約100マイクロメートル、ときには約200ナノメートル〜約50マイクロメートル、または約400ナノメートル〜約10マイクロメートル、或いは約500ナノメートル〜約7マイクロメートルであることができる。
【0071】
この発明の微粉砕法で生成される固体粒子の所望粒度が非常に小さい場合、媒体室の中に1種または2種以上の表面活性物質を与えることがしばしば必要である。1種または2種以上の表面活性物質は別個に加えることもできるし、固体または液体として、混合物として、溶液として、懸濁物として、流体キャリアー中または流体キャリアーの成分中分散物として、或いはプレミックスの一部として微粉砕されるべき固体基材との混合物として加えることもできる。1種または2種以上の表面活性物質は微粉砕法の開始時または微粉砕法中にバッチ式で加えることができ、そして混合は微粉砕室の中で起こる。別法として、1種または2種以上の表面活性物質は、微粉砕法中に、例えば流体キャリアー中溶液または分散物として連続的に加えることができる。別法として、1種または2種以上の表面活性物質は、微粉砕法中の異なる時間に、例えば微粉砕前のプレミックスに、微粉砕のスタート中のプレミックスに、微粉砕法中に、および/または微粉砕法の終わり近くまたは終わりに加えることができる。異なる表面活性物質を異なる時間に加えることもできるし、或いは異なる表面活性物質の混合物を異なる時間に加えることもできる。このような混合物の組成は、添加期間中、例えば約1秒から約10時間まで、または約100時間まで同じであることもできるし、或いは異なっていることもできる。1例としてであるが、2表面活性物質系において、1つの成分物質は添加期間中にゼロから1までのモル分率で変わることができ、一方他方の成分物質はその期間中に1からゼロまで変わることができる。界面活性剤の添加に際して、濃度の不規則または部分的変化のみならず段階的および連続的変化、例えば一定量の1種または第一表面活性物質と可変量のもう1つのまたは第二表面活性物質のような添加も適用可能である。
【0072】
微粉砕法において、微粉砕室の含有物は微粉砕媒体にエネルギーを移す攪拌機またはかき混ぜ機により攪拌またはかき混ぜられる。加速された媒体は、媒体室中の固体基材および他の固体と、固体基材材料を破壊し、チップ化しまたは粉砕することができる活発な衝突状態で衝突する。加速媒体は基材とも衝突することができ、そして基材を微粉砕室の媒体粒子間および媒体粒子と成分との間で圧縮することができる。これらの2−、3−および多−物体衝突が基材を粒度低下させ、ついには固体基材を所望粒度Sに等しいかまたはそれ以下の粒度まで粒度低下させる。加速媒体は、また、相互に、および微粉砕容器の成分と衝突することができるし、またその他にも同様に動力学的に相互作用することができる。媒体の硬度、脆性指数および破壊靭性に、および伴われる動力学的エネルギーに依存するが、このような衝突は個々の媒体物体を砕壊させ、チップ化させ、または粉砕して(shatter)(即ち、砕壊して)2つ以上の破片または断片にすることができる。低破壊靭性値を有する微粉砕媒体物体は、高破壊靭性値を有する媒体よりもはるかに容易に砕壊する。媒体は、微粉砕法で基材の小粒子を生成させるために、微粉砕される基材より高靭性であるのがよい。
【0073】
微粉砕媒体物体の断片または破片は大きい、即ち微粉砕物体が誘導される先行微粉砕物体と実質的に同じ粒度であることもあるし、或いは断片はチップまたは分子クラスターのような小さいものであってもよく、そして微粉砕法で生成される固体基材の粒子の所望粒度Sに実質的に等しいかまたはそれより小さい粒度のものであることもできる。微粉砕物体の大きな断片および未破砕微粉砕物体は微粉砕法で破砕またはチップ化され続けて微粉砕物体の小粒状物を生成させることができる。大きさの小さい微粉砕媒体物体の存在下では、同じ組成を持つ大きな粒度の微粉砕媒体物体は微粉砕媒体プロセスでチップ化または破壊されて媒体の追加の小粒状物を与える。小粒状物が、微粉砕法において生成する所望粒度を持つ基材の小粒子から微粉砕物体の比較的大きい(即ち、Sより大きい)断片のみならず比較的大きい微粉砕物体を除去できる濾過のような粒度依存性分離法で除去するには小さ過ぎるとき、その粒状物は残存して小粒子との混合物として組み込まれることができる。この発明の第一材料の微粉砕媒体物体の粒状物は、微粉砕法において、その第一材料の微粉砕媒体物体から生成せしめられる。この発明では、微粉砕される固体粒子の所望粒度に等しいかまたはそれより小さい粒度を持つ第一材料の微粉砕媒体物体の粒状物は、微粉砕法で形成される固体の上記粒子と相乗作用性混合物を形成する。この発明の第一材料の微粉砕媒体物体の組成は、この発明において、その媒体から誘導される粒状物が所望粒度Sまで微粉砕された固体の粒子の性質、用途または機能と相乗作用性となるように選ぶことができる。
【0074】
この発明に従って製造される相乗作用性混合物の1例は、所望粒度を持つ固体製剤用薬剤の小粒子と、第一微粉砕媒体材料から第二微粉砕材料との相互作用によって生成される医薬品添加剤の小粒状物との混合物から成る。固体製剤用薬剤は、例えばフェノフィブラートのような固体の貧水溶性薬物であることができる。微粉砕法で生成される薬物粒子の所望粒度は、約0.05〜約10マイクロメートル、好ましくは約0.1〜約5マイクロメートル、より好ましくは約0.1〜約2マイクロメートル、さらに好ましくは約0.1〜約1マイクロメートルの粒度分布または粒度範囲のものであることができ、それよりさらに望ましい粒度は約0.5〜約1マイクロメートルである。医薬品添加剤材料の粒状物の粒度または粒度範囲は微粉砕法で生成する粒子の所望粒度に等しいかまたはそれ以下である。第二のより硬くかつより高靭性の微粉砕材料の存在下において医薬品添加剤の粒状物源として役立ち得る、適した第一微粉砕材料の1例は、コロイド二酸化ケイ素である。この粒状物は、本明細書に記載されるもののような複数のコロイドシリカ微粉砕物体から誘導される。この粒状物は、酸化ジルコニウムのようなより硬い材料である第二材料の複数の微粉砕物体の存在下で、固体薬物(例えば、フェノフィブラート若しくはイトラコナゾールまたはミコナゾール)の粒子を生成させる微粉砕法で生成せしめられる。第二微粉砕材料―この例では酸化ジルコニウム―は、微粉砕法で生成される粒子および粒状物の粒度より大きくなる(例えば、約2〜約1000倍大きくなる)ように選ぶことができる。この微粉砕法は流体または流体キャリアーの使用を含むことができる。製剤用途のための好ましい態様の1つの面において、流体キャリアーは、水、塩の水中溶液、炭水化物の水中溶液およびそれらの混合物より成る群から選ぶことができる。流体(例えば水)は、粒子および粒状物の懸濁物から乾燥法(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、蒸発、蒸留、昇華等)で除去することができる。粒度がより大きい第二微粉砕材料は、所望粒度の粒子および粒状物から、例えば流体除去前の濾過によって、粒度が粒子の所望粒度より大きい全ての残留シリカ材料および全ての残留固体材料と共に除去することができる。第一微粉砕材料であるシリカおよび第二微粉砕材料である酸化ジルコニウムは、両者とも、この発明の方法において、プレミックス中の固体の粒度低下に寄与する。微粉砕法で生成される粒子と粒状物との混合物は、シリカ粒状物が固体薬物粒子を含む剤形の調合物において有用な医薬品添加剤であるので、相乗作用性である。典型的な剤形を挙げると、固体の貧水溶性薬物の粒子およびシリカ微粉砕媒体の粒状物を含む、錠剤、カプセル剤、クリーム剤、粉剤、軟膏、座剤等がある。この相乗作用性混合物は、例えば固体粒子の凝集に関して、ある一定貯蔵期間(約10分から約2年、しばしば約10分から約1ヶ月、または約10分から約7日、または約10分から約48時間であることができる)の間に、粒状物が存在しない外の同様の剤形より安定な剤形を与えることができる。
【0075】
この発明における使用に適した微粉砕または粉砕媒体は、色々な既知の商業的に入手できる材料から選ぶことができる。この媒体は、砂、鋼、炭化ケイ素、セラミック、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび同イットリウム、ガラス、アルミナ、アルファーアルミナ、酸化アルミニウム、チタン、ある種の重合体樹脂、例えば架橋されたポリスチレンおよびメチルメタクリレート、並びに生分解性重合体のようなある範囲の破壊靭性を有する緻密な硬い材料を含めて、この技術分野で周知の多数の材料からできていることができる。有機重合体、例えば架橋ポリスチレンのような架橋有機重合体で被覆された無機媒体の複合材も有用である。1つの態様において、媒体は、好ましくは、ビーズのような形状が実質的に球形であることができる。追加の媒体材料の例は、後記の表1、2、3および4に記載されている。
【0076】
媒体の幾何形状は用途に応じて変わることができる。媒体の幾何形状または形の例に、球形または円柱状ビーズ、ロッド、四面体、立方体、環状面体および楕円体がある。
【0077】
微粉砕媒体物体は、大きな微粉砕媒体粒子およびそれより小さい微粉砕媒体粒子を含めて種々の粒度および粒度分布のものであることができる。微粉砕媒体物体の粒度分布は狭く(例えば、媒体は全て平均粒度の+/−1%、または平均粒度の+/−5%、または平均粒度の+/−10%、または平均粒度の+/−15%、または平均粒度の+/−20%であるほぼ平均粒度mの粒度範囲内にある)、この場合媒体は粒度が実質的に均一であるか、またはほとんど均一である。或いはまた、1つより多い狭い粒度分布の媒体も用いることができる。媒体の実質的に全部が一方または他方の粒度のいずれかのものであると分類できる2つの実質的に異なる媒体粒度が用いられるときは、その微粉砕媒体物体の粒度分布は双峰性であると記述することができる。例えば、媒体の実質的に全部が3つ以上の別々の粒度内に分類できる3つ以上の明瞭な別々の粒度範囲を持つ多峰性粒度分布も用いることができる。双峰分布では、平均値mおよびmを持ち、かつ(m+/−x)と(m+/−x)とのほぼ平均の粒度範囲を有する2つの微粉砕媒体物体粒度範囲が生ずる;但し、範囲(m+/−x)内の物体は全て(m+/−x)より大きい(ここで、xおよびxは、例えば上記の平均粒度の割合である)。三峰分布では、平均値m、mおよびmを持ち、かつ(m+/−x)と(m+/−x)と(m+/−x)とのほぼ平均の粒度範囲を有する3つの微粉砕媒体物体粒度範囲が生ずる;但し、範囲(m+/−x)内の物体は全て(m+/−x)より大きく、かつ粒度範囲(m+/−x)内の物体は全て(m+/−x)より大きい(ここで、xとxとxは、例えば上記の平均粒度値の割合である)。用途に依存するが、平均粒度は10cm〜1cm、10cm〜5mm、5mm〜1mm、1mm〜0.5mm、0.5mm〜約0.1mmおよび0.1mm〜約0.01mmの範囲内にあることができる。
【0078】
有用な微粉砕媒体物体に、ガラスビーズおよびコロイドシリカのような種々の形態をした二酸化ケイ素がある。コロイドシリカは多数の粒度範囲で得ることができる。例えば、0.75%のNaOを含んでいる、5nmの平均粒度を有する15%固形分の塩基性コロイドシリカは、GA州、オーガスタのEka Nobel, Inc.から商標名“NYACOL 215”で商業的に入手できる。0.75%のNaOを含んでいる、5nmの平均粒度を有する15%固形分の塩基性コロイドシリカは、Ill州、ネーパーヴィルのNalco Products, Inc.から商標名“NALCO 1115”で商業的に入手できる。NHを含んでいる、5nmの平均粒度を有する15%固形分の塩基性コロイドシリカは、Nalco Products, Inc.から商標名“NALCO 2326”で商業的に入手できる。0.65%のNaOを含んでいる、8nmの平均粒度を有する30%固形分の塩基性コロイドシリカは、Nalco Products, Inc.から商標名“NALCO 1130”で商業的に入手できる。20nmの平均粒度を有する34重量%固形分の酸性コロイドシリカは、Nalco Products, Inc.から商標名“NALCOAG 1034A”で商業的に入手できる。20nmの平均粒度を有する、20%SiOおよび4%Alとしての酸性アルミナ被覆コロイドシリカは、Nalco Products, Inc.から商標名“NALCOAG 1SJ613”で商業的に入手できる。50nmの平均粒度を有する50重量%固形分のコロイドシリカは、Nyacol Products, Inc.から商標名“NYALCOL 5050”で商業的に入手できる。99nmの平均粒度を有する50重量%固形分のコロイドシリカは、Nyacol Products, Inc.から商標名“NYALCOL 9950”で商業的に入手できる。
【0079】
コロイドシリカは、この発明による第一材料の微粉砕媒体として、例えば本明細書中の表1、2、3および4に記載される、第一材料よりもより高い破壊靭性を有するか、または破砕および浸蝕に対して第一材料より大きな抵抗性を有するか、或いは第一材料より硬い第二材料の微粉砕媒体と共に使用することができる。1つの面において、この発明による微粉砕法で1つの粒度分布のシリカを成分としての使用することが可能であり、この場合シリカの小粒状物は基材、例えば貧水溶性薬物の小粒子の懸濁物中に共同作用的に組み込まれ、ここで上記シリカ粒状物は、貧水溶性薬物粒子の組成物または調合物中に、流体キャリアー液体の除去後における薬物粒子の錠剤、カプセル剤または粉末調合物で有用な医薬品添加剤のような製剤上許容できる医薬品添加剤として有用に組み込まれる。錠剤化薬物粒子または調合前の薬物粒子とシリカ粒状物との混合物は、場合によって他の製剤上許容できる医薬品添加剤を含んでいることができ、また、場合によって添加シリカまたは1種または2種以上の糖、界面活性剤、放出剤、結合剤等のような医薬品添加剤をさらに含んでいることができる。薬物粒子と医薬品添加剤との混合物は、例えば錠剤またはカプセルのような剤形として、疾病の処置または治療または画像診断法のために、薬物が指示される製剤上有効な用量レベルまたは量で患者に投与することができる。微粉砕媒体の断片が貧水溶性薬物の調合物における医薬品添加剤であり、かつその調合物が医薬品添加剤の存在のために凝集せずにある一定容量の液体中に分散するとき、医薬品添加剤の断片はそれら粒子中の薬物の向上したバイオアベイラビリティーに寄与することができる。
【0080】
もう1つの面において、第一材料の微粉砕媒体物体および第二材料の微粉砕媒体物体はシリカのような実質的に同じ組成から成ることができるが、例えば多孔度(多孔性の媒体物体は同じ組成の非多孔性媒体物体より靭性が低い)、または粒度、または媒体物体の製造プロセスで添加された添加ドーピング剤、または水和度、または媒体物体の架橋の相違のために破壊靭性が異なる。
【0081】
微粉砕媒体物体中のドーピング剤は微粉砕媒体物体中に実質的に均一に分布させることもできるし、或いは微粉砕物体中の1つまたは2つ以上の領域中に分子の濃縮クラスターとして局在させることもできる。ドーピング剤は微粉砕媒体物体の組成物に対して約0.5〜約50%で存在することができる。ドーピング剤は、媒体微粉砕物体中に均一または不均一溶解させることのない閉じ込めによって、非常に小さい粒状物として微粉砕媒体物体中に埋入させることができる。シリカ媒体物体中アルミナのような媒体組成物中に含まれるドーピング剤は、場合によって媒体物体の断片または粒状物として、シリカ微粉砕媒体物体の粒状物の外に固体基材粒子との混合物としての最終組成物中に共同作用的に組み込むことができる。
【0082】
さらにもう1つの面において、3種類の微粉砕媒体物体が使用できる。第一材料、例えばシリカの微粉砕媒体の物体、および第二材料、例えば酸化アルミニウムドープシリカの微粉砕媒体の物体は、ジルコニアのような第三材料の微粉砕媒体物体より共に低い破壊靭性値を有することができる。この面において、第三材料の微粉砕媒体物体が組成物の混合物から成る第一および第二材料よりも硬く、かつその破壊靭性よりも高い破壊靭性を示すとき、第三材料の物体は第一材料および第二材料をチップ化し、または破砕し、または砕壊して粒状物を形成することができる。この粒状物は、かくして、微粉砕媒体物体の断片の混合物から成ることができ、そしてこの混合物が本発明に従って製造されるとき、例えば粒状物の混合物が、微粉砕された粒子が水不溶性薬物のような薬物を含む薬物調合物中に医薬品添加剤を含むとき、このような混合物は基材の粒子と相乗作用性である。シリカ微粉砕媒体物体および酸化アルミニウムドープシリカ微粉砕媒体物体の両断片は、フェノフィブラートのような固体薬物物質の粒子調合物中において製薬上許容できる医薬品添加剤であることができる。
【0083】
シリカはガラスビーズの形をしていることもできる。例えば、米国特許第5,674,616号明細書は、道路標識の反射要素としての、およびショットピーニング金属洗浄法における媒体としての使用に適した改善された破壊靭性を持つガラスビーズを開示する。滑らかで、非多孔性であるガラスビーズは、砕壊に対して非晶質シリカまたはコロイド状二酸化ケイ素よりも靭性が高い。
【0084】
前に述べた微粉砕媒体に加えて、ケイ酸ジルコニウム微粉砕媒体物体、クロム鋼微粉砕媒体物体、炭素鋼微粉砕媒体物体、酸化ジルコニウム微粉砕媒体物体およびガラスビーズ微粉砕媒体物体が、米国、NJ州、FairfieldのFox Industries社から商業的に入手できる。ダイヤモンド粉末媒体は、米国、PA州、OlyphantのWarren Diamond Powder Companyから入手できる。8.5MPa(m)1/2の破壊靭性を有するイットリア安定化正方晶系ジルコニア多結晶微粉砕媒体物体が、米国、CO州、コロラドスプリングスのNorton Advanced Ceramics社から入手できる。高密度微粉砕媒体物体は、穴または細孔を含む微粉砕媒体物体よりも磨耗および衝撃に対して抵抗性が高い。米国、NJ州、FairfieldのFox Industries, Inc.から入手できるもののような高密度ケイ酸ジルコニウム微粉砕媒体ビーズは、約4.55グラム/cmの密度および2mmビーズで85kgの破砕強さを96%について0.8を越える球形度と共に有することができる。このようなビーズの粒度範囲は、典型的には0.6〜2.8mmである。これらはこれら粒度の約1/1000の所望粒度の粒子をもたらすことができる。このようなビーズは、典型的には、約64%のZrO、約33%のSiO、約2%のMgOおよび約1%のAlを含んでいる。溶融した液滴から造られるもののような他のビーズは完全に固体でなくてもよく、そしてそれらをより脆くして衝撃でより容易に破壊または破砕せしめるエアポケットを含んでいてもよい。急速凝固法において、ジルコニアおよび非晶質シリカより成る硬い微細構造は、摩耗抵抗性がより小さく、かつ衝撃でより容易に砕壊されるより低密度のビーズをもたらすことができる。微粉砕媒体物体の他の組成物は、同様のまたは類似した物理的構造を有することができる、即ちそれらは細孔およびボイドを、そしてエアポケットを含んでいることができる。摩耗抵抗性値、脆砕性値、破壊靭性値、硬度値および脆性指数値にある範囲を得ることができる。
【0085】
1つの態様において、球形および非球形形状の形をした微粉砕媒体物体がこの発明の実施に有用であると予想される。非球形形状には、楕円体、立方体および不規則形状体のみならず円柱状およびトロイド状の形状がある。異なる形状を持つ粉砕媒体の組み合わせが有利であると考えられる。例えば、第一材料の粉砕媒体はトロイド状粉砕媒体および/または球形ビーズおよび/または円柱体から成り、それは球形、円柱状若しくはトロイド状の形状とされていることもできるし、或いは異なる形状の組み合わせであることもできる第二材料の微粉砕媒体物体と共に使用することができる。第二材料の微粉砕媒体物体は球形形状をしているのが好ましい。
【0086】
第一材料の媒体および第二材料の媒体の表面は、媒体の相対的な硬度および靭性、並びに微粉砕されるべき基材の相対的な硬度および靭性に依存して、両者とも滑らかであることもできるし、或いはそれらは共に粗面となっているかまたは畝状になっていることもできるし、或いはまた一方が滑らかで、他方が粗面または畝状となっていることもできる。固体が第一材料の微粉砕媒体物体よりも実質的に靭性が小さく、より脆いとき、その微粉砕媒体物体は粗面または畝状となっていることもできるし、或いは滑らかであることもでき、また第二材料の微粉砕媒体物体は粗面であることも、畝状であることも、滑らかであることも、或いは非多孔性であることもできる。第二微粉砕媒体材料には、比較的滑らかな、比較的硬い、そして比較的靭性のある微粉砕媒体物体が好ましい。
【0087】
第一材料および第二材料が(2つのタイプのシリカ微粉砕媒体、例えば非晶質シリカと硬化シリカ、または2つの粒度の非晶質シリカ材料のような)実質的に同一組成のものである場合の、第一材料の微粉砕媒体物体と第二材料の微粉砕媒体物体との混合物では、靭性が小さい方の媒体が靭性の大きい方の媒体により砕壊される。滑らかな媒体は同じ化学組成の粗い媒体よりも靭性が大きく、砕壊容易性がより小さい。第一および第二材料が化学的に類似または同一であり、かつ第二材料の微粉砕物体が滑らかかつ非多孔性であるとき、第一材料の微粉砕物体は粗くされているかまたは多孔性であることができ、かつ第二材料の微粉砕物体よりも靭性が小さくなっていることができる。
【0088】
微粉砕媒体は天然のものでも合成のものでもよく、そして1つの面において媒体は少なくとも1種の金属元素を含んでいる無機の塩類および/または酸化物の中から選ぶことができる。無機微粉砕媒体材料の例を挙げると、炭酸カルシウム;大理石;炭酸マグネシウム;炭酸亜鉛;ドロマイト;石灰のようなアルカリ土類金属炭酸塩;マグネシア;硫酸バリウム;硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、粘土、およびカオリン、滑石および雲母のような他のシリコ−アルミニウム材料;酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタンのような金属酸化物;ガラス繊維およびガラス微小球;並びに珪灰石.がある。天然または合成起源の有機材料の例としては、着色剤、澱粉、セルロースの繊維と小粒、および炭素繊維がある。
【0089】
重合体樹脂から成る粉砕媒体物体は、第一タイプまたは第二タイプのいずれの材料の媒体に対しても、この発明における使用に適している。第二材料の媒体物体には、そのような樹脂は化学的および物理的に不活性で、金属、溶媒および単量体を実質的に含まず、そして樹脂が粉砕中にチップ化または破砕されるのを避けることができるようにするのに十分な硬度と破壊靭性を有するものであることができる。
【0090】
適した重合体樹脂を挙げると、ジビニルベンゼンおよび/またはトリビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンのような架橋ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレートのようなポリアクリレート、ポリカーボネート、DelrinTMのようなポリアセタール、塩化ビニル重合体および共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ(テトラフルオロエチレン)、例えばTeflonTMおよび他のフルオロポリマー、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロースのようなセルロースエーテルおよびエステル、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリシロキサンのようなシリコーン含有重合体等がある。
【0091】
もう1つの面において、粉砕媒体物体はイオン交換樹脂から成ることができる。適したイオン交換樹脂に、カチオン性またはアニオン性の基を樹脂に、特に樹脂の表面に結合して含んでいる架橋した重合体樹脂がある。この発明での使用に好ましいイオン交換樹脂は、それらが硬度および靭性を保って微粉砕法で固体基材を砕壊することができるように、流体キャリアーまたはプレミックスの他の成分により実質的に膨潤されないものである。適したイオン交換樹脂は、約3〜約20重量%のジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等のような架橋剤で全体が架橋されされているポリスチレンであって、4級アンモニウム表面変性されている、非膨潤性の、強靱で硬い、アニオンを結合する能力および微粉砕法で固体基材を砕壊する能力のあるイオン交換樹脂を形成するためにクロロメチル化し、次いでトリメチルアミン、第三アミンのようなアミンで4級化することのような方法によって、またはスルホネート表面変性されている、非膨潤性の、強靱で硬い、カチオンを結合する能力および微粉砕法で固体基材を砕壊する能力のあるイオン交換樹脂を形成するためにクロロスルホン酸でスルホン化し、続いて水酸化ナトリウムのような塩基で処理することのような方法によって表面変性されている上記のポリスチレンから成るものである。微粉砕媒体材料としてのこのようなイオン交換樹脂は、固体基材を微粉砕し、そしてこの相乗作用性混合物の後の使用に際して存在または遭遇する可能性のある、または例えば微粉砕法における破砕および他の微粉砕媒体材料からの侵出により生成される可能性のある、或いは微粉砕された基材粒子とイオン交換樹脂微粉砕媒体の粒状物との混合物から誘導される、またはその混合物を含む調合物または製品中で後に遭遇する可能性のあるイオンを交換することが共にできる。例示説明としてであるが、基材は水不溶性薬物から成ることができ、また第一材料の微粉砕媒体物体は正に帯電したイオン交換樹脂であることができる。薬物の小粒子とイオン交換樹脂の粒状物との相乗作用性混合物の経口用剤形において、イオン交換樹脂は、薬物のバイオアベイラビリティーを妨害または促進することがあるアニオン性胆汁酸塩のような、胃腸系で遭遇するアニオン性成分を吸着することができる。この正に帯電したイオン交換樹脂は、また、樹脂に隣接するところに高局所濃度のアニオンを生成させることができ、この高濃度アニオンはアミド、エステル等を含むプロドラッグの加水分解による開裂において有効である可能性がある。正に帯電したイオン交換微粉砕媒体粒状物は、また、負に帯電した薬物またはプロドラッグから生成した負に帯電した薬物を結合し、そして剤形中の薬物の放出を引き延ばしまたは遅延させるか、ボーラス効果を変調するか、または薬物による治療または診断を受けている患者の体内への薬物の放出を遅延または制御することのような方法によってその薬物のバイオアベイラビリティーを変えることもできる。
【0092】
1つの面において、イオン交換微粉砕媒体物体の粒状物は、イットリウム含有ケイ酸ジルコニウムセラミックビーズ材料よりも低い破壊靭性を有し、そしてそのビーズ材料より容易に浸蝕または砕壊することができ、またそのセラミックより靭性が低い上記媒体は、少なくともその一部が砕壊されてこの発明の微粉砕法において形成される固体基材の粒子との相乗作用性混合物の粒状物を形成することができる。微粉砕された固体の粒子の所望粒度よりも大きい粒度を持つイオン交換微粉砕媒体物体は、微粉砕法で形成される粒子および粒状物の分散物から濾過法または分離法で除去することができる。
【0093】
もう1つの面において、この発明の第二微粉砕材料として、イオン交換媒体は、コロイドシリカまたは炭酸カルシウムのような第一微粉砕媒体材料よりも大きな破壊靭性を有し、従ってその第一材料よりも脆さが小さく、易浸蝕性がより低い。このより硬く、そして靱性がより大きいイオン交換媒体は靭性がより小さく、より容易に浸蝕される微粉砕媒体材料を砕壊することができ、また微粉砕法において存在し得るかまたは生成され得る重金属イオン、例えば鉛またはイットリウムのような望ましくない金属イオンをイオン交換することによって除去することができる。そのより大きな微粉砕媒体物体は、次に、相乗作用性混合物の分散物から、濾過のような粒度分離法、または篩い分け法、或いは他の分離法で除去することができる。
【0094】
この発明の方法におけるイオン交換樹脂微粉砕媒体物体のもう1つの有用な特長は、微粉砕法において酸または塩基として作用するそれらの能力である。それらには、それら自体で、縮合反応、重合反応、脱離反応、沈殿反応、加水分解反応、エステル化反応等のような酸または塩基感受性反応を開始または触媒する能力がある。この態様のイオン交換樹脂微粉砕媒体物体は、第一材料の微粉砕媒体物体または第二材料の微粉砕媒体物体或いは両物体の混合物から成ることができる。
【0095】
もう1つの面において、粉砕または微粉砕媒体物体が構成される重合体材料、特にこの発明の第一材料の粉砕媒体は生分解性であることができる。この微粉砕媒体物体は、単一の生分解性重合体または2種若しくは3種以上の生分解性重合体の複合材または混合物から成ることができる。典型的な生分解性重合体を挙げると、ポリ(ラクチド類)、ラクチド類とグリコリドとのポリ(グリコリド)共重合体、ポリ酸無水物、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリ(N−アシルヒドロキシプロリン)エステル類、ポリ(N−パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル類、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ(オルトエステル類)、ポリ(カプロラクトン類)およびポリ(ホスファゼン類)がある。第一材料の微粉砕媒体物体が生分解性重合体材料から成るとき、この発明の微粉砕法で生成される微粉砕媒体物体の粒状物は相乗作用性混合物の成分として生分解性である。
【0096】
生分解性重合体の微粉砕媒体物体の粒状物は、有利なことに、生体内で代謝して、哺乳動物の体から除去され得る生物学的に許容できる生成物となることができる。1つの面において、生分解性媒体物体は、製剤、医薬品添加剤のような製剤調合物中の成分、食品添加剤、着色剤のような食品中成分、ビタミン、鉱物質添加剤、および唇、目および皮膚に適用される、化粧品中で使用されるもの(これには日焼け止め調合物および化粧用および装飾用皮膚塗布剤がある)を含めて化粧品成分のような固体基材の微粉砕において好ましい。
【0097】
さらにもう1つの面において、粉砕媒体が構成される材料、特にこの発明の第一材料の粉砕媒体は生分解性であることができる。第一材料の微粉砕媒体物体が単一の生分解性重合体材料または2種若しくは3種以上の生分解性材料の複合材のような生分解性重合体材料から成るとき、この発明の微粉砕法で生成される微粉砕媒体物体の粒状物は相乗作用性混合物の成分として生分解性である。典型的な生分解性材料を挙げると、生分解性重合体、並びに二酸化チタン、酸化マグネシウム、セラック、二酸化ケイ素、澱粉、ポビドン、糖球体、架橋糖球体、および、例えば、薬物および診断用撮像剤のような製剤用薬剤と生理的に耐性の組成物および調合物を形成することができるある種のワックスのような製剤上許容できる医薬品添加剤がある。全体または一部が1種または2種以上の許容できる医薬品添加剤材料を含む粉砕媒体の崩壊が、そのような医薬品添加剤材料の、例えば薬物、食品材料または化粧品の調合物への供給源となることができる。薬物の調合物は、経口、注射、経粘膜、経皮、その他の手段によるような製剤上許容できる手段で投与することができる。この点に関し、砕かれた媒体による調合物の増量が、医薬品添加剤を製剤調合物に導入する手段として有効かつ許容できる。これらのおよび他の許容できる医薬品添加剤材料の特徴は、ここで参照することにより本明細書に含められる、WadeおよびWeller編の「製剤用添加剤ハンドブック(The Handbook of Pharmaceutical Excipients)」、The Pharmaceutical Press社、ロンドン、1994年に記載されている。
【0098】
重合体微粉砕媒体樹脂は、0.8〜約3g/cmの密度を有することができる。密度が高い方の樹脂がより効率的な粒度低下を与えることができるので好ましい。重合体樹脂の使用は、また、例えばそれらが広いpKa範囲を持つ緩衝剤材料としてまたはH若しくはOHイオン源として作用することができるとき、改善されたpH制御を可能にすることができる。より硬くかつ靭性がより大きい微粉砕媒体物体が、靭性がより小さく、より脆い、そしてより容易に砕壊される重合体微粉砕媒体物体を砕いて重合体微粉砕媒体の粒状物を形成するのに用いることができる。重合体微粉砕媒体物体が生体適合性または生分解性であるとき、重合体微粉砕媒体物体の粒状物も生体適合性または生分解性である。
【0099】
適切な粒度で製造された種々の無機粉砕媒体がこの発明での使用に適している。このような媒体に、マグネシアで安定化された95%ZrOのようなジルコニウム酸化物、ケイ酸ジルコニウム、ガラス、ステンレス鋼、チタニア、アルミナ、およびイットリウムで安定化された95%ZrOがある。他の媒体材料は表1、2、3および4に見いだすことができる。
【0100】
微粉砕媒体物体の粒度は微粉砕された基材の粒子の所望粒度の約1000倍までの範囲であることができるが、1つの面において、この発明の第一材料の微粉砕媒体物体は、粒度が約2000マイクロメートルまでの範囲であることができる。しかし、本発明が約350マイクロメートル未満の粒度を有する粉砕媒体の使用を可能にすることが特に有利である。媒体は粒度が約100マイクロメートル未満であるのがさらに好ましく、約75マイクロメートル未満が最も好ましい。これは、薬物、写真材料、半導体材料とそれらの前駆体、および非常に小さい粒度が所望とされる場合の他の物質の微粉砕で特にそうである。
【0101】
1つの態様において、この発明の第二材料の微粉砕媒体物体は、重合体樹脂より本質的に成る、形状が好ましくは実質的に球形の粒子、例えばビーズから成ることができる。或いはまた、この発明の第二材料の微粉砕媒体物体は、重合体樹脂のコーティングが接着されているコアを含む粒子から成ることもできる。
【0102】
重合体ビーズおよびトロイド状粉砕媒体、特に粒度の大きいトロイド状粉砕媒体を製造する1つの好ましい方法は、アクリル系単量体およびビニルベンゼン単量体、またはスチレン、ジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼンのようなスチレニル単量体の重合による方法である。メチルメタクリレートおよびスチレンが許容できる重合体粉砕媒体を製造する安価な商業的に入手できる材料であるので、好ましい単量体である。他のアクリル系およびスチレン系単量体も、粉砕媒体中で作用することが知られている。スチレンが好ましい。しかし、ラジカル付加重合一般、そして特に懸濁重合は、これを100%完了するまで行うことはできない。残留単量体がビーズおよびトロイド中に残っている可能性があるが、それらは微粉砕法中に滲み出て、例えば侵出処理または水蒸気蒸留で除去されなければ生成物分散物を汚染し得るものである。
【0103】
残留単量体の除去は、熱乾燥、空気または窒素のような不活性ガスによるストリッピング、溶媒またはソックスレー抽出、沸騰している水性媒体または沸騰している共沸混合物形成性液体中に懸濁されているビーズを用いる水蒸気蒸留等のような重合体の合成に一般的な多数の任意の方法で成し遂げることができる。乾燥法およびストリッピング法は、残留単量体の蒸気圧が低いことおよびビーズの粒度が大きく、その結果拡散経路が長くなることによって限定を受ける。従って溶媒抽出が好ましい。溶媒または溶媒類が後続の乾燥工程で除去できる限り、そして痕跡量の残留溶媒が全て抽出プロセスおよび生成物の最終用途と両立できる限り、アセトン、トルエン、メタノールのようなアルコール、ヘキサンのようなアルカン、超臨界二酸化炭素等のような任意の溶媒が使用できる。架橋したスチレンビーズにはアセトンが好ましい。残留単量体を除去する際に有効である溶媒は、典型的にはその単量体から造られている非架橋重合体を溶解するが、もし溶解しなければその重合体を粘着性にして取り扱いを困難にする。従って、重合体を架橋して、それを単量体に対して親和性を有する溶媒に不溶にすることが好ましい。
【0104】
重合体を不溶性にするのに十分なだけの、典型的には数パーセントの架橋剤が必要とされるが、ビーズが粉砕媒体として適度に機能する限りいかなる量も使用できる。商業的に入手できるジビニルベンゼン(通常、約55%のジビニルベンゼンを含む)が、微粉砕条件下でばらばらになるビーズを造ることが知られている。この材料は、架橋重合体から成る第一材料の微粉砕媒体物体の製造で有効であり、この場合高レベルが、脆く、容易に砕壊されるビーズをもたらすことができる。例えば、ジビニルベンゼンとクロロメチルスチレンのような置換スチレンとの共重合体が、求核試薬と、例えば第二または第三アミンのようなアミンと反応して、この発明の微粉砕条件下で砕壊することができる第三アミンおよびカチオン性(即ち、第四アンモニウム)の架橋微粉砕媒体ビーズをそれぞれ形成することができる。クロロメチル置換スチレンは、多数の求核試薬と、例えば第一および第二アミンと反応してアミノメチル置換スチレンを与えることが;また第三アミンと反応して、クロリドがイオン交換によって水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、カルボキシレート、薬物含有アニオン性種および第四アンモニウム重合体の他のアニオン性塩のような他の塩に転化され得る第四アンモニウムクロリド置換スチレンを与えることが;チオールまたはスルヒドリルまたはスルフィドアニオンと反応してスルフィドまたはチオ−エーテル置換スチレンを形成することが知られている。クロロメチル基は、合成重合体化学において周知の方法によって、樹脂上において化学反応で他の官能基、例えばヒドロキシメチル基、アルデヒド基、エーテル、カルボン酸、およびカルボキシレート置換された基、メチレンホスフェート基、スルファナトメチル基、メチレンスルフェート基、メチレンヒドロキシルアミン基等に転化させることができる。引き続き微粉砕媒体粒状物が砕壊されると、その粒状物はこれら官能基を含む。この粒状物は混合物、即ち第一材料の粒状物とこの発明の方法で生成された固体基材の粒子との混合物を形成することができる。
【0105】
第三アミンおよび第四アンモニウムイオン含有ビーズの粒状物は、相乗作用性混合物中において多数の仕方で作用することができる。例えば、それらはイオン交換材料として;触媒であって、それらがアミドおよびエステルの加水分解のような塩基触媒反応のためのヒドロキシル対イオンを含んでいるときのような触媒として;吸着剤および/または媒染剤として、例えば赤外レーザー染料(infrared laser dyes)、金属キレート化染料、アニオン性金属キレート化染料、例えば石鹸または洗剤配合物中で使用することができる布帛増白剤のような増白剤を含めて染料類のようなアニオン性材料用媒染剤として;ケイ酸塩および他のアニオン性無機イオン用の吸着剤として;細菌および菌類における細胞壁破裂のような細胞毒性事象を誘発させ得る抗菌剤または抗かび薬として;場合によって、例えば診断法において血漿から血球を分離することができる結着剤のような細胞結着剤として;水、または胃腸液のような他の流体の薬物調合物中への浸透速度を制御または変調または変更することができる表面変性剤として;およびアミンまたはヒドロキシルアミンを塩基触媒反応または求核置換反応または熱分解性開裂反応または酸化脱離反応の下で、例えばN−オキシドとそれに続く熱分解反応により化学的に放出させる方法のような他の方法として作用することができる。ビシナルt−ブチル置換またはアルキル置換ヒドロキシベンゼン物質またはテトラメチルピペリジニル置換誘導体のようなフェノール成分を含んでいる粒状物は、この発明の相乗作用性混合物中で、特に粒子が薬物、食品または化粧品材料であるときに酸化防止剤成分として作用することができる。架橋重合体微粉砕媒体には、ジビニルベンゼンおよびエチレングリコールジメタクリレートのような2個以上のエチレン性不飽和基を有する任意の単量体が用いることができる。ジビニルベンゼンが好ましく、20%のスチレン、80%の市販ジビニルベンゼン(ジビニルベンゼン55%)の共重合体が特に好ましい。このような重合体は、また、ヒドロキシル基含有材料(例えば、重合体結合フェノール系材料)にスルホン化または酸化することができる。アニオン性樹脂微粉砕媒体物体粒状物は、それらが金属イオンのようなカチオン性物質を結合してそれらの濃度を制御若しくは変更するかまたはそれらを掃去することができ、カチオン染料を結合して色または光吸収または蛍光発光を与えることができ、また制御または変更された放出性およびバイオアベイラビリティーのためにカチオン性薬物物質を結合することができる場合に相乗作用性混合物において有用である。それらは、また、金属のある表面への電気メッキにおけるような核形成部位となることもでき、その金属メッキ表面は続いて水素化または酸化触媒のような触媒として作用することができる。それらは、また、撮像の際に、および癌のような病気の治療において有用な放射性核種の結合用部位ともなることができる。
【0106】
球状重合体ビーズを造るには懸濁重合が好ましい。大きなトロイド状粉砕媒体を造るには、球状粒子のような大きなビーズ粒子を個々に微粉砕またはドリリングしてトロイドの形状にすることができる。別法として、塊状重合体をダイのオリフィスまたは孔を通して押し出すことにより造られる重合体の線状のロッドを所定寸法に切断し、加熱軟化させ、そしてループを作ってトロイドの形にし、次いで冷却することができる。場合によっては、ループ中の重合体は、光を照射してその大きなトロイド状またはビーズ微粉砕媒体をさらに架橋、硬化させることができる残留オレフィン部位のような架橋性部位を含んでいることができる。さらに、トロイド中の重合体は、これを、場合によってラジカル開始剤のような開始剤と一緒にジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼンのような架橋性単量体により膨潤させ、次いでトロイドの形状を本質的に固定し、かつ使用中にトロイドの形状を実質的に変化させないようにする架橋反応を活性化するために光照射または加熱することができる。
【0107】
トロイド状微粉砕媒体物体を製造するのに有用なもう1つの方法は、ポリスチレンのような重合体をダイから熱的に押しだしてチューブの形をした押出重合体を形成し、次いでそのチューブを切断またはスライスして、冷却するとトロイド状微粉砕媒体を与えることができるトロイド形状にする方法である。これらのポリスチレンチューブは、次に、トロイドの表面を被覆し、次いで重合、架橋されて微粉砕媒体としての使用に適したトロイドを与えることができる、例えばスチレンのような追加の単量体および架橋用単量体でさらに処理することができる。ボイドを含んでいる媒体はボイドのない同様の媒体より靭性が小さく、より容易に砕壊されると予想される。
【0108】
トロイドの大きさはその製造方法に依存し得る。例えば、トロイドにスライスされるチューブの形の重合体からトロイドが導かれるならば、そのチューブ壁の厚さ、チューブのスライス幅並びにその外径および内径がトロイドの寸法を指定する。内径の1.1〜約100倍の外径を持つチューブ材が、トロイドを製造するのに用いることができる。有効なトロイドを形成するために、スライス厚さはチューブの外径の0.1〜約20倍であることができる。外径の約20倍より大きく切られたチューブ材も使用できるが、このような形状はこの場合中空円筒体と称することができる。これらの形状もこの発明で微粉砕媒体物体として有用である。
【0109】
チューブ材は、場合によっては、直円トロイドまたは円筒形状以外の形状を形成するために、例えば、そのトロイドを加熱軟化させ、次いでトロイドの壁の中に2つの反対方向で引き入れて、冷却すると直ちに保持される卵形歪みを与えることによって非対称に伸張またはひずませることができる。歪んだトロイドは、次に、この発明で有用な粒度の大きい粉砕媒体を与えるために、冷却し、そして上記のようにさらに架橋させることができる。チューブ材には、場合によって、例えば重合体の同時押し出しによって、生分解性または生体適合性重合体のような第二材料を充填することができる。別法として、トロイド状微粉砕媒体を形成するのに重合体のロッドを同じ方法で使用することができる。
【0110】
本発明は、適切な粒度で製造された種々の無機微粉砕媒体物体と共に実施することができる。このような媒体に、マグネシアで安定化された95%酸化ジルコニウムのようなジルコニウム酸化物、ケイ酸ジルコニウム、ガラス、ステンレス鋼、チタニア、アルミナ、およびイットリウムで安定化された95%酸化ジルコニウムがある。無機微粉砕媒体物体は球体およびトロイドのような形状に形成されるときコア材料としての役を果たし得、またそのコア材料を架橋ポリスチレンまたは架橋ポリメチルメタクリレートまたは生体適合性重合体のような重合体で被覆することができる。
【0111】
コア材料は、好ましくは、球体または粒子として加工されるとき、粉砕媒体として有用であることが知られている材料から選ぶことができる。適したコア材料に、(マグネシアまたはイットリウムで安定化された95%酸化ジルコニウムのような)ジルコニウム酸化物、ケイ酸ジルコニウム、ガラス、ステンレス鋼、チタニア、アルミナ、フェライト等がある。この発明の第二材料の微粉砕媒体物体で特に好ましいコア材料は、約2.5g/cmより大きい密度を有するものである。高密度コア材料の選択は、効率的な粒度低下を容易にすると考えられる。
【0112】
コア上の重合体コーティングの有効な厚さは約1〜約500マイクロメートルの範囲であると考えられるが、この範囲外の他の厚さもある種の用途では有用なことがある。重合体コーティングの厚さはコアの直径より小さい方が好ましい。
【0113】
コアはこの技術分野で公知の方法で重合体樹脂により被覆することができる。適した方法に、噴霧コーティング法、流動床コーティング法および溶融コーティング法、並びに重合体コアとコーティングとの同時押出法がある。コア材料と樹脂コーティングとの間の接着を改善するために、場合によっては接着促進層または結着層を与えることができる。重合体コーティングのコア材料に対する接着性は、コア表面の粗面化、コロナ放電処理等のような接着促進法でコア材料を処理することによって高めることができる。生体適合性重合体から成る微粉砕媒体物体は、粗面化し、畝を作り、或いは侵出法によって、または可溶性無機塩若しくは可溶性有機化合物と配合し、次いでその配合重合体からビーズを形成し、次にその可溶性材料を侵出してビーズ中に細孔を残すことによるような方法で多孔質にすることができる。或いはまた、可溶性物質をビーズの中に残しておくこともできる。細孔を含んでいるビーズまたは生体適合性重合体と、塩若しくは有機化合物または可溶性重合体のような可溶性物質との複合材から成るビーズは、この発明において第一材料の微粉砕媒体物体として、このような材料が第二材料の微粉砕媒体物体よりも靭性が小さく、より容易に砕壊されるときに使用できる。
【0114】
流体キャリアーが液体であるとき、微粉砕法は湿式微粉砕法ということができる。流体キャリアーがガスであるとき、微粉砕法は乾式微粉砕法ということができる。流体キャリアーが不活性若しくは非反応性ガスまたは反応性ガス、或いはこのようなガスの混合物のようなガスである乾式微粉砕の場合、基材は2種または3種以上の微粉砕媒体材料の存在下で固体粒子に形成され得なければならない。反応性ガスは基材の微粉砕の際に形成されるイオンまたはラジカルと反応する。反応性ガスを挙げると、酸化性ガスとしての酸素、酸素を含む空気、追加酸素により富化された空気、一部酸素減損した空気、還元性ガスとしての水素、エチレンおよびプロピレンのようなオレフィン系の不飽和ガス、並びに水中で反応して炭酸を形成し、そして塩基と反応して炭酸塩を形成することができる二酸化炭素、塩素を基材に転移させるように反応することができるクロロトリフルオロメタンのようなクロロフルオロカーボンガス、そして水素を基材に転移させるように反応することができるジメチルエーテルがある。流体キャリアーとして好ましい反応性ガスに空気および二酸化炭素がある。非反応性ガスは、基材の微粉砕において形成されるイオンまたはラジカルの存在下で酸化性または還元性薬剤として容易には反応しないガスである。非反応性ガスに、酸素減損空気、窒素、不活性ガスであるアルゴン、ヘリウム、キセノン、ペルフルオロプロパンのようなペルフルオロカーボンガス、ノルマル炭化水素ガス、例えばプロパンのような飽和炭化水素ガス、およびこれらガスの混合物がある。好ましい非反応性ガスは窒素および酸素減損空気である。好ましい不活性ガスはアルゴンである。
【0115】
流体キャリアーが液体である湿式微粉砕法の場合、基材は少なくとも1種の液体媒体中に貧溶性でかつ分散性でなければならない。流体をどう選ぶかは主として固体基材に、そしてまた微粉砕媒体の組成に依存し得る。液体流体キャリアーは微粉砕される固体または微粉砕媒体の良溶媒であるべきではない。広範囲の液体がこの発明の湿式微粉砕法で使用することができるが、流体をどう選ぶかはコスト、回収容易性、微粉砕法における成分との適合性、毒性問題、安全性問題、最終用途での残留溶媒問題等によって指定される。貧水溶性薬物のような貧水溶性固体の場合に有用な液体流体キャリアーを挙げると、水、滅菌水、注射用蒸留水、PBSのような1種または2種以上の塩の水溶液、水性緩衝剤の溶液、水性リン酸塩緩衝食塩水、緩衝水溶液、アルブミンのような蛋白質を含む水溶液、糖含有水、ゼラチン水溶液、1種または2種以上の炭水化物の水溶液およびPEG、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)エステル、ポリ(エチレンオキシド)エーテル、並びにPVPおよびポリビニルピロリドンのような1種または2種以上の重合体の水溶液を含めて本明細書に記載される1種または2種以上の製剤用添加剤の水溶液、1〜25%の1種または2種以上の炭水化物を含むもののような炭水化物水溶液、1種または2種以上の表面活性物質の水溶液、液状表面活性物質、液体であってもよい1種または2種以上の未溶解表面活性物質と混合された1種または2種以上の表面活性物質の水溶液、およびそれらの相溶性混合物がある。さらに、本発明は他の液体媒体を用いて実施することもできる。他の有用な液体キャリアーに、エタノール、メタノール、ブタノール、ヘキサン、炭化水素、灯油、PEG含有水、グリコール、トルエン、キシレン、グリム、石油系溶媒、リグロイン、キシレンおよびトルエンのような芳香族溶媒の混合物、ヘプタン、水混和性溶媒と水との混合物、DMSO、DMF、グリセロール、流動パラフィン、石油蒸留物、魚油、植物油、ここに挙げたもののような溶媒の混合物等がある。
【0116】
「貧溶性(poorly soluble)」とは、基材が、液体分散媒体、例えば水に約10mg/mL未満、好ましくは約1mg/mL未満の溶解度を有することを意味する。好ましい液体分散媒体は、水、1種または2種以上の塩の水中溶液、1種または2種以上の糖の水中溶液、場合によって過剰の表面活性剤の存在下における1種または2種以上の表面活性剤の水中溶液、重合体の水中溶液、およびそれらの組み合わせから選ばれる。この点に関して、好ましい塩は塩化ナトリウムおよびリン酸塩である。
【0117】
製剤用薬剤が本発明の基材である1つの面において、好ましい液体キャリアーには、水、滅菌水、注射用蒸留水、PBSのような塩の水溶液、緩衝剤水溶液、アルブミンのような蛋白質を含む水溶液、リン酸塩緩衝水溶液、緩衝水溶液、糖含有水、製剤上許容できる塩、緩衝剤、ゼラチン、炭水化物および重合体を含めて1種または2種以上の製剤用添加剤の水溶液、1〜50%の1種または2種以上の炭水化物(好ましくは1〜30%の1種または2種以上の炭水化物)を含むもののような炭水化物水溶液、1種または2種以上の表面活性物質の水溶液、この発明の方法で用いられる温度より低い温度において溶融する表面活性物質のような、液体であることができる1種または2種以上の未溶解表面活性物質と混合された1種または2種以上の表面活性物質の水溶液、PEG含有水、エタノール、およびこれら液体キャリアーの混合物がある。
【0118】
湿式粉砕は、液体流体キャリアーおよび1種または2種以上の表面活性物質と共に成し遂げることができる。有用な液体流体キャリアーを挙げると、水、塩水溶液、糖水溶液、ポリアルキレンオキシド溶液のような重合体水溶液、エタノール、ブタノール、ヘキサン、グリコール等がある。表面活性物質は既知の有機および無機製剤用添加剤から選ぶことができ、そして乾燥基材の総重量基準で0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%の量で存在することができる。好ましい表面活性物質はリン脂質およびレシチンである。
【0119】
もう1つの面において、流体キャリアーは、単一成分、或いは1種または2種以上の液化または圧縮ガス、または液化圧縮窒素若しくはアルゴンのような臨界未満または超臨界流体の混合物または溶液であることもできるし、或いは流体キャリアーは臨界未満または超臨界流体の形で加圧下に保持されているガスであることもできる。多くのタイプの微粉砕媒体物体が、液体窒素または液体アンモニアの温度のような低温において、一層脆く、一層容易に粉砕され、破壊されおよび砕壊されるようになることができる。超臨界流体の例を挙げると、超臨界二酸化炭素、超臨界ジメチルエーテル、超臨界メタン、超臨界エタンおよび超臨界プロパンのような超臨界炭化水素、並びに超臨界流体の混合物がある。流体キャリアーは、また、1種または2種以上の医薬品添加剤、1種または2種以上の表面活性物質等のような1種または2種以上の溶解物質を含んでいる臨界未満または超臨界流体から成ることができる。流体キャリアーは、また、臨界未満若しくは超臨界流体中溶媒溶液または溶媒中超臨界流体溶液から成ることができる。このような材料の溶液またはこのような材料の混合物の溶液は、流体に対して約0.01重量%から、その材料のこの発明に従って用いられる超臨界流体中における溶解度の飽和点までの範囲であることができる。超臨界流体中の表面活性物質材料の好ましい濃度は、このような溶解度を達成できるとき、約0.01%から約10%までの範囲である。
【0120】
この発明で用いられる固体基材は、媒体ミル中で微粉砕することができる任意の結晶性または非晶質固体材料、並びに媒体ミル中で微粉砕することができる2種または3種以上の固体の混合物から成ることができる。このプレミックスは、一般に、粉末、ガラス、非晶質若しくは結晶性固体、粒子の所望粒度より小さい大きさから媒体ミルの入口部の大きさまでの粒度範囲であることができる分布の粒子の形で微粉砕されるべき固体基材より成る。この発明の微粉砕法に関し、プレミックスは、一般に、微粉砕されるべき単一結晶形、結晶形混合物、非晶質固体または固体混合物である固体である。固体の成分の少なくとも一部の粒度は、一般に、この発明で生成される小粒子の粒度よりも大きいが、但しプレミックスは流体キャリアー中分散物を形成することができるある種の非常に小さい粒子を含めてある粒度範囲を含んでいることができる。このような粒子は、しかし、プレミックス中の固体基材の媒体微粉砕および粒度低下によって、本発明の方法で一般に製造される。固体基材は粒子、特に非常に小さい粒子を形成すべく微粉砕および粒子低下に適した任意形状の形をしていることができる。プレミックスは、沈降固体、再結晶化固体、予め媒体微粉砕された固体のような部分的に微粉砕された固体、ジェット微粉砕固体、部分的粉砕固体、超微粉固体、微粉砕(pulverized)固体、ボールミル粉砕固体、摩砕固体、昇華固体、蒸発残さ、合成プロセス由来固体、反応生成物または植物若しくは組織エキスのような混合物からの有機溶媒抽出または超臨界流体抽出のような抽出物由来の固体であることができる。
【0121】
基材は結晶性か非晶質のいずれかの材料の有機固体であることもできるし、或いはそれら基材はそれらが微粉砕法で粒度低下され得る限り無機固体であってもよい。有機固体は、単一化合物若しくは化合物の混合物、鏡像異性体、光学異性体、ラセミ混合物、ジアステレオマー、異性体、ブレンド、ガラス、単一物質の別々の結晶形、共融混合物、または薬物物質および表面活性物質のような異なる化合物の調合物であることができる。
【0122】
固体材料の例を挙げると、固体顔料;固体染料のような固体写真材料;固体化粧品成分;炭酸塩、硫酸塩若しくは金属酸化物のような固体無機化合物若しくは固体無機化合物の混合物、または結晶性有機化合物若しくは約3〜約100個の炭素原子を有する固体有機化合物若しくはそのような化合物の鏡像異性体のような固体有機化合物;固体金属粉末;固体触媒材料;触媒用固体担体材料;分析用および調製用クロマトグラフィーで有用な固体固定相または支持体材料;レーザー印刷を含めてゼログラフィーおよび印刷用途で有用な黒色のまたは着色した固体トナー材料;固体粉砕材料および粉砕材料前駆体、およびゾルで使用できるような、焼結前のセラミック材料;合金;金属;並びに水溶性、水不溶性若しくは貧水溶性の治療剤若しくは診断用撮像剤、医薬活性薬剤、医薬品、植物または草本エキス、薬物、プロドラッグ、固体薬物調合物、診断用撮像剤のような固体製剤用薬剤等がある。好ましい固体材料は製剤用薬剤であり、そして貧水溶性および水不溶性の製剤用薬剤が最も好ましい。
【0123】
重合体微粉砕媒体粒子は、懸濁ビーズ重合、ラテックス重合、場合によって架橋性単量体を含む追加のスチレンまたはメタクリレート単量体によるラテックス重合体粒子の膨潤とそれに続く重合、重合体溶液の噴霧乾燥と、それに続いて場合によって行われる架橋、および小粒子微粉砕媒体を製造するのに用いられる他の既知の方法を含めて公知の方法で製造することができる。小粒子微粉砕媒材物体は、また、それらの全体または一部が無機材料から成ることもでき、この後者はまた周知の方法に従って製造される有機重合体のコーティングを含む。微粉砕媒体物体は、この発明による第二材料の微粉砕媒体物体として用いられるときは、球形またはビーズ形状の媒体であるのが好ましい。
【0124】
微粉砕に有用な粉砕または微粉砕媒体物体には、鋼、コランダム、磁器、凍石、アルミナ、混合酸化物および石英の、0.05〜20mmの直径を有するもののようなボール、円柱体および他の形状物がある。細孔を含まない滑らかな表面を有する粉砕媒体は多孔性表面または粗表面を有する同じ組成の粉砕媒体よりも靭性が大きく、砕壊容易性がより低い。
【0125】
微粉砕温度は、媒体ミルの最適性能、およびより高温で弾性がより大きくかつ粒度低下に対する抵抗性がより大きくなり得る微粉砕された固体および微粉砕媒体の脆性のために制御することができる。微粉砕温度は、液体空気、液体窒素または液体アルゴンの温度ほどの低温からであるが、さらに一般的には約−80℃から約300℃までの範囲であることができる。有機材料では、その温度範囲は約−80℃〜約250℃であるのが好ましい。この温度は、微粉砕される固体の熱分解温度より低いのが好ましい。製剤用固体では、その温度範囲は約−80℃〜約180℃であるのが好ましい。この温度は、微粉砕される固体の熱分解温度より低いのが好ましい。
【0126】
固体基材が製剤用薬剤である好ましい態様では、本発明の方法は高範囲の温度および圧力内で行うことができる。この方法は、基材を砕き得る温度より低い温度で行われるのが好ましい。多くの基材で周囲温度が適切である。約30〜40℃未満の温度が一般に好ましい。温度の制御、例えば微粉砕室をジャケットで覆うか、または冷水、氷水、液体アンモニア、液体窒素、液体エチレングリコール水混合物または不凍液、塩水、液体ナトリウム、加熱または冷却空気浴中に浸漬することによる、また電気抵抗加熱による温度制御が考えられる。ほとんどの状況で約1psiから約500psiまでの加工圧力が考えられるが、但し、例えば液化ガス、臨界未満流体および超臨界流体の存在下で500バールもの高圧も考えることができる。約10〜約300psiの加工圧力がほとんどの状況において一般的である。
【0127】
微粉砕の継続時間は、微粉砕される固体の所望粒度または粉末度に、またその靭性と微粉度および破壊容易性に、さらにまた砕壊される微粉砕媒体物体に依存する。媒体ミル中の微粉砕室中における滞留時間は通常1〜100時間であるが、それより長い時間が必要とされるときもある。1〜15時間、好ましくは2〜8時間の継続時間が有利である。
【0128】
磨砕時間は大幅に変わることができ、そして好ましい態様においては微粉砕されるべき治療薬または診断薬であるプレミックス中の特定の固体基材、媒体ミル中におけるエネルギー移動効率、選択されるミル滞留条件、初期および所望とされる最終の粒子および粒状物の粒度、相対媒体粒度分布、相対媒体破壊靭性、硬度、脆性指数等に主として依存する。高エネルギー媒体ミルを用いるとき、約10時間未満の滞留時間が一般に必要とされる。
【0129】
微粉砕媒体材料の硬度は、幾つかの既知の標準試験法および関連スケールに従って定量化することができる。例えば、これらはモース、ビッカース、ロックウエルおよびヌープ硬度試験がある。有用な微粉砕媒体材料の一選択例の相対硬度および破壊靭性の典型的な値が表1に示される。表1に記載される材料は、代表的かつ非限定的な材料であることを意味する。この発明による表1には記載されない材料から構成される微粉砕媒体物体の使用も考えられる。より硬いそしてより靭性の高い微粉砕媒体物体が靭性の低い微粉砕媒体を砕壊する。
【0130】
【表1】
Figure 2004507343
【0131】
Figure 2004507343
【0132】
表1で例証されるように、破壊靭性Kは、MPa(m)1/2でシリカの1.37からジルコニアの13までの範囲であることができる。モース硬度(オリジナル法)は、滑石の1からダイヤモンドの10までの範囲であることができ、またモース硬度(改良法)は、滑石の1からダイヤモンドの15までの範囲であることができる。ヌープスケールHの範囲は、石膏の約32からダイヤモンドおよび窒化硼素の10000までにおよぶ。微粉砕媒体材料の例を挙げると次のとおりである:滑石(3MgO・4SiO・HO)、石膏(CaSO・2HO)、銀(ヌープスケール60)、亜鉛(ヌープスケール119)、方解石CaCO(ヌープスケール135)、蛍石CaF(ヌープスケール163)、銅(ヌープスケール163)、マグネシア(ヌープスケール370)、アパタイトCaF・3Ca(PO(ヌープスケール430)、軽石(ヌープスケール430〜560)、ソーダ石灰ガラス(ヌープスケール530)、ニッケル(ヌープスケール557)、正長石またはソーダ長石KO・Al・6SiO(ヌープスケール560)、ガラス質シリカ、石英(ヌープスケール820)、125μmシリカSiO(破壊靭性1.37)、600μmシリカSiO(破壊靭性1.60)、ケイ酸ジルコニウムZrSiO、フリント(ヌープスケール700〜800)、ケイ素(ヌープスケール1150)、エメリー(ヌープスケール800〜1800)、トパズ(AlF)SiO(ヌープスケール1340)、ガーネットAl・3FeO・3SiO(ヌープスケール1300〜1360)、クロム(ヌープスケール936)、ジルコニアTZP(ヌープスケール1300〜1600)、溶融ジルコニアZrO(ヌープスケール1160)、ジルコニアPSZ(ヌープスケール1120〜1300)、ベリリアBeO(ヌープスケール1250)、炭化タングステン合金WC(ヌープスケール1400〜1800)、硼化ジルコニウム(ヌープスケール1550)、チタン強化アルミナ(ヌープスケール1750〜2100)、サイアロン(ヌープスケール1600〜1800)、窒化チタンTiN(ヌープスケール1800)、炭化タングステン(ヌープスケール1880)、炭化タンタル(ヌープスケール2000)、炭化ジルコニウムZrC(ヌープスケール2100)、溶融アルミナAl(ヌープスケール2000〜2600)、アルミナ99.5%Al(ヌープスケール2000)、炭化ベリリウムBeC(ヌープスケール2410)、炭化チタンTiC(ヌープスケール2470)、炭化ケイ素SiC(ヌープスケール2000〜3700)、コランダム(ヌープスケール1500〜2100)、硼化アルミニウム(ヌープスケール2500)、炭化硼素BC(ヌープスケール2200〜5100)、窒化硼素・BN(ヌープスケール4700〜10000)、天然ダイヤモンド(ヌープスケール8000〜10000)。
【0133】
この発明で使用できる追加の材料の例が、引用される方法に従って測定された破壊靭性および破壊エネルギーと共に表3に与えられている。データは、MD州、Gaithersburg のNational Institute of Standards and Technology(NIST)のウエブサイト、即ち HYPERLINK ”http://www.ceramics.nist.gov/srd/summary/ftmain.htm” http://www.ceramics.nist.gov/srd/summary/ftmain.htmのインターネット・ウエブサイトから取った。
【0134】
モース硬度は滑らかな表面の引っ掻きまたは磨耗に対する抵抗性のおおざっぱな尺度であって、鉱物学者のFriedrich Mohsが1812年に考案した相対スケールとして表される。モース硬度スケールは任意の硬度値が与えられている10種の鉱物から構成される。鉱物または複合材料のような固体のモース硬度は、その表面が既知のまたは規定の硬度を持つ物質で掻き傷が付けられるかどうかを観察することによって決められる。例えば、鉱物が正長石で掻き傷が付けられるが、アパタイトでは付けられないとすれば、そのモース硬度は5と6の間である。試験される鉱物が微粒状であるか、脆いか、または微粉状であるならば、この試験は、個々の表面を試験することなく粒状物をばらばらにすることができるだけである。ある種特定の組織または凝結体は真の硬度測定を妨げまたは測定させない。かくして、モース試験は、例えば鋼またはセラミックのような工業的微粉砕材料の硬度を正確に測定するのには一般に適さないが、定性的な近似を取ることは可能である。モーススケールのもう1つの欠点は、それが線形ではないということである。そのスケールで1単位の各増分がそれに比例した硬度増加を示さないのである。例えば、方解石から螢石までの、即ちモース硬度で3から4までの累進は約25パーセントの硬度増加を反映するが、一方コランダムからダイヤモンドまでの、即ちモース硬度で9から10までの累進は300パーセント超の硬度増加を反映する。高いモース硬度値を示す材料から構成される微粉砕媒体物体は、それよりも低いモース硬度値を示す材料から構成される微粉砕媒体物体よりも硬い。
【0135】
ビッカースまたはダイヤモンドピラミッド硬度試験は、ピラミッド形状ダイヤモンド圧子により荷重下で作られるくぼみの大きさから計算される材料硬度の尺度である。このビッカース硬度試験は1920年代に考案され、そして鋼において見いだされた広い硬度範囲を正確に反映する、比較可能な数の連続スケールの確立を可能にした。ビッカース試験でしばしば用いられる圧子は、向かい合った面が頂点において136°の角度で交わっている正方形の基部を有するピラミッドである。このダイヤモンドが約120キログラム−力までの範囲の荷重で材料の表面に圧入され、そしてそのくぼみの大きさが目盛り付き顕微鏡を用いて測定される。ビッカース試験は、金属、セラミック、その他の材料の相対硬度を測定するのに信頼性があると考えられる。ビッカース硬度数Hは次式:H=1.854(F/D)を用いて計算することができ、ここでFはキログラム−力で測定される特定の適用荷重であり、またDは平方ミリメートルで測定される押込みの面積である。より硬い微粉砕媒体材料がより軟らかい微粉砕媒体材料よりも高いビッカース硬度数を有する。
【0136】
1939年に考案されたヌープ硬度は、試料の表面上に押し付けられるダイヤモンドの先端により作られる押込みを測定することによって計算される。ビッカース硬度試験よりも低い押込形成圧力を用いることによって、ヌープ試験はガラスおよびセラミックのような脆い材料の硬度試験を可能にする。ヌープ試験で用いられるダイヤモンド圧子は長い4面ピラミッド形状となっており、対向面の内2面の間の角度は約170°となっており、また他の2面間の角度は130°となっている。圧子は、1キログラム−力未満であることが多い荷重下で材料に圧入されると、大きさが約0.01〜0.1mmである4面のくぼみを残す。くぼみの長さは幅の約7倍であり、また深さは長さの1/30である。寸法がこのようなものであるとすれば、荷重下のくぼみの面積は、目盛り付き顕微鏡を用いて最も長い側面の長さだけを測定すると、計算することができる。最終ヌープ硬度Hは次式:HK=14.229(F/D)から導くことができ、ここでFはキログラム−力で測定される適用荷重であり、またDは平方ミリメートルで測定される押込面積である。ヌープ硬度数は特定の荷重値と共に引用されることが多い。微粉砕媒体材料の硬度値は、微粉砕媒体物体よりも大きいが、組成が同じ対象物を用いて評価することができる。微粉砕媒体材料が2種または3種以上の純粋な材料の複合材または合金のような均一な組成を持つものでない場合、その複合材または合金の硬度値は純粋な材料各々に見いだされる値とは相当に異なっていることがある。
【0137】
硬度は、変形、緻密化および破壊に対する材料の抵抗性に関係する。それは、ときには、侵入または引っ掻きによる塑性変形に対する材料の抵抗性と定義されてきた。硬度は、摩耗および磨耗抵抗性部品、および微粉砕媒体物体が微粉砕プロセス中に最低乃至ゼロの浸蝕値を有することが望まれるときのその微粉砕媒体物体の非常に重要な性質である。
【0138】
硬度と破壊靭性との間には多数の経験的および半経験的関係が知られている。1つの面において、硬度は、ある物質により与えられる、磨耗によるその表面の排除に対する抵抗性の尺度であると考えることができ、一方破壊靭性は、ある物質により与えられる、衝撃下での破壊に対する抵抗性の尺度であると考えることができる(J. Agricultural Research、第V巻、第19号、第903−907頁、1916年のHubbard P.およびJackson F. H.の「道路建設用岩石の硬度特性と靭性特性との間の関係(Relation between the properties of hardness and toughness of road−building rock)」を参照されたい)。材料の平均硬度は靭性と共に増加することができ、またその増加の割合は靭性値が大きくなるにつれて小さくなることができる。多数の微粉砕媒体材料の硬度値対靭性値のプロットにおいて、硬度の個々の値は、低靭性値に付いては広い範囲を通じて変わることができ、そしてある平均値からの硬度の変化は、硬度が上記平均値からの変化が非常に小さく、一定のままとなっていることができるある特定の点まで、靭性の増加と共に均一に増加することができる。
【0139】
ビッカース硬度試験機は、表面および材料のビッカース硬度を押込みによって測定する。押込みは、また、試験材料の表面中に激しい亀裂も生じさせるが、それら亀裂の性質は材料の破壊靭性に関係し得る。ビッカース硬度スケールは、Gpaまたはkgf/mm(ここで、1Gpaは〜102kgf/mmである)のような単位で表すことができる。例えば、ジルコニア F 1973−98のビッカース硬度は、9.8N(1kgf)の荷重において11.8Gpa〜1200kgf/mmのASTM規格値を有する。典型的には、既知の幾何形状を持つ、試料表面に対して垂直の圧子先端が、試料に、前もって設定された値まで増加する荷重を適用することによって打ち込まれる。次に、荷重が、試料の部分的または完全な緩和が生ずるまで徐々に下げられる。荷重および排除量は、圧子先端の侵入深さが標準荷重の力の増加関数となる荷重−排除量曲線をもたらすために、このプロセス中に連続的に記録することができる。動的押込みがナノ押込みで用いられる方法であり、そして硬度は荷重を外した後の接触面積で最大荷重を割ることにより計算することができる。硬度およびヤング率は、十分に確立されたモデルを用いて深さ対荷重の曲線から計算することができる。材料の破壊靭性は、ビッカース試験で生成した激しい亀裂を押込荷重の関数として直接測定することによって求めることができる。亀裂の長さおよび押込半対角線寸法(indentation half−diagonal size)は、硬度、弾性率および破壊靭性に関係する。低押込荷重では、押込寸法が小さいために、硬度の荷重依存性から、また測定の不確定性から問題が生じ得る。より大きな荷重では、クラッキングと砕壊が起こり得る。硬度が押込荷重を増加させると共に減少する押込寸法効果を観察することができる。硬度は、押込みの対角線長さの平方に反比例する。
【0140】
脆い材料の文脈内で、押込試験は材料の靭性、即ち亀裂パターンのスケールに対する破壊抵抗性に関係する靭性を評価するのに使用される。この方法は、塊状の材料には容易に適用できるけれども、堆積法(deposition procedure)の結果としての被覆された系における残留応力の蓄積を理解するに当たっても重要なものである。破壊靭性Kを後−押込亀裂の大きさcに関係付ける式はK=X(P/c3/2)として与えられ、ここでPは適用押込荷重であり、そしてXはヤング率対硬度の比E/Hに依存する定数である。大部分の脆い材料は、残留くぼみの角から、そして圧子の先端から下向きに延びる半径/中央方向亀裂(radial/median cracks)を生成させる。
【0141】
さらに、硬度と破壊靭性との関係に関し、ビッカース硬度(H)対荷重のプロットまたはH対ビッカース硬度/荷重曲線中の対角線寸法のプロットには不連続の転移点が見いだされることがある。転移点では、硬度は荷重依存性である状態から一定値まで変化する。転移点は、押込部の周囲および下における多数のクラッキングの開始に関連がある。クラッキングは比較的低い荷重レベルで局部に制限される可能性があるか、またはクラッキングは、より高い荷重では、破砕が後に続く程度まで大量になる可能性がある。転移点は、ときにはB=HE/(K1cと定義される脆性の指数に関係付けることができる。この脆性指数はこの発明の微粉砕媒体物体の摩耗および浸蝕抵抗性を予測するのに重要であり得る。
【0142】
硬度対破壊靭性の比で与えられるもう1つの脆性指数のパラメーターBが、セラミック複合材の摩耗および浸蝕挙動の定性的評価のパラメーターとして提案されている。例えば、A. R. Boccacciniは、ここで参照することにより本明細書に含められるInterceram (1999), 48(3), 176−187の「エンジニアリングセラミックおよび分散強化セラミック複合材における摩耗挙動と脆性指数との関係(The relationship between wear behavior and brittleness index in engineering ceramics and dispersion−reinforced ceramic composites)」において、エンジニアリングセラミックおよび分散強化セラミック複合材料の摩耗・磨耗性および固体粒子浸蝕抵抗性と脆性との関係を報告した。0.5<B<〜5−6マイクロメートル−1/2の場合、摩耗抵抗性はBが増加すると共に増加し、そして塑性変形と微小破壊の両者が能動的な材料除去機構である。〜5−6<B<9マイクロメートル−1/2の場合、摩耗抵抗性はBが増加するとのとも減少する。
【0143】
本発明の1つの面は、所望粒度を持つ、固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、次の:
(a)固体基材、流体キャリアー、第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
(b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ該第一材料の微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する、該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
(c)該分散物を、Sより大きい粒度を有する、全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
(d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、該第一材料の微粉砕物体は破壊され、かつ該第二材料の微粉砕物体により浸蝕され、
該第二材料の微粉砕物体は、本質的に、上記微粉砕法における破壊および浸蝕に対して実質的に抵抗性であり、そして
は第二材料の微粉砕媒体物体の粒度よりも小さい
上記の方法から成る。
【0144】
さらに、本発明の1つの面では、第一材料の微粉砕媒体物体は脆性指数B1Lを有することができ、また第二材料の微粉砕媒体物体は脆性指数B2Lを有することができ、ここでB1LはB2Lより小さく、そしてB1LおよびB2Lは約5.5未満である。本発明のもう1つの面において、第一材料の微粉砕媒体物体は脆性指数B1Hを有することができ、また第二材料の微粉砕媒体物体は脆性指数B2Hを有することができ、ここでB1HはB2Hより大きく、そしてB1HおよびB2Hは共に約5.5より大きい。本発明のさらにもう1つの面において、第一材料の微粉砕媒体物体は硬度Hを有することができ、また第二材料の微粉砕媒体物体は硬度Hを有することができ、ここでHはHより小さい。
【0145】
脆性は、ある材料の変形および破壊に対する相対的な感受性の尺度である。それは材料における変形抵抗性を反映する硬度と相関させることができ、またそれは材料における破壊抵抗性を反映する破壊靭性と相関させることができる。Bは広く変化することが知られ、例えばBは鋼で約0.1μm−1/2、セラミックで約2〜約9μm−1/2、および単結晶性ケイ素で約17μm−1/2である。表2には、微粉砕媒体として使用できる一部の代表的材料の脆性指数値Bが記載される。脆性指数値はマグネシウムの0.19からケイ素の15.14までの範囲である。代表的材料とそれぞれの脆性指数値(カッコ中)を挙げると、次のとおりである:マグネシウム−PSZ(0.91)、ソーダ石灰ガラス(1.18)、マグネシウム−PSZ(1.40)、焼結SiAlON(1.52)、溶融シリカ(1.61)、ガラスセラミック(1.69)、HP Al(1.98)、Si+TiC/TiN(2.00)、Si+TiC/TiN(2.13)、Siベータ(2.20)、焼結BC(2.47)、Siアルファー(2.50)、SiAlON(2.68)、Si+10容量%SiC(2.91)、Si+30容量%SiC(2.91)、Al+ZrO(2.96)、フリント(2.96)、Alベータ(3.00)、MgO(3.08)、MgO(3.18)、Si+20容量%SiC(3.19)、Si(3.20)、焼結TiO(3.29)、Al+ZrO(3.33)、Si+30容量%SiC(3.38)、HP Si(3.38)、 Si+10容量%TiC(3.49)、Al(3.62)、Si+20容量%TiC(3.66)、ベータSiAlON(3.73)、Al(3.77)、Si+10容量%TiC(3.95)、Al−ZrO(4.12)、Al(4.20)、Si+20容量%TiC(4.20)、Si+30容量%TiC(4.22)、Si+10容量%SiC(4.22)、アルファーSiAlON(4.29)、Al+ZrO+TiC/TiN(4.29)、Si+40容量%TiC(4.36)、Si+20容量%SiC(4.54)、Si+30容量%TiC(4.97)、Alアルファー(5.43)、Si+40容量%TiC(5.43)、HP Al(5.50)、ZrO(5.76)、Al(6.00)、SiCベータ(6.19)、SiC−TiB(6.74)、HP SiC(7.35)、BC(8.33)、ソーダ石灰シリカガラス(8.40)、SiCアルファー(8.54)、尖晶石(9.41)、焼結Al(9.86)、サファイア(9.86)、シリカガラス(11.30)およびケイ素(15.14)。
【0146】
【表2】
Figure 2004507343
【0147】
Figure 2004507343
【0148】
この発明の文脈において、第一材料の微粉砕媒体物体および第二材料の微粉砕媒体物体がB2L>B1Lで互いに異なる相対脆性指数値B1LおよびB2Lをそれぞれ有し、そしてB1LおよびB2Lが共に約5.5未満であるとき、高い方の脆性指数値B2Lを持つ媒体が低い方の脆性指数値B1Lを持つ媒体を砕壊する。第一材料の微粉砕媒体物体および第二材料の微粉砕媒体物体が互いに異なる相対脆性指数値B1HおよびB2Hをそれぞれ有し、そしてそれら脆性指数値がB2H<B1Hで約5.5より大きいとき、低い方の脆性指数B2Hを持つ媒体が高い方の脆性指数B1Hを持つ媒体を砕壊する。
【0149】
K. Friedrichは、J. Mater. Sci. (1986), 21(9), 3317−32の「鋼ボールブラスティングによる重合体表面の浸蝕性摩耗(Erosive wear of polymer surfaces by steel ball blasting)」におけて、鋼ボールを使用する各種重合体材料の浸蝕挙動について説明している。軟質重合体材料は、試験時間当たりの厚さ低下と定義される線形浸蝕速度まで安定化する前にインキュベーション期間があることを示した。より脆い重合体であるポリスチレンは、この研究ではインキュベーション時間を示さず、比較的高い浸蝕速度を有していた。破壊エネルギーで割った形の硬度の脆性指数が、調べられる重合体材料の浸蝕抵抗性の良好な指標であった。
【0150】
1つの面において、微粉砕媒体材料の破壊強さは、試料が破壊することなく耐えることができる最高応力強度である破壊靭性値KICを用いて評価することができる。KICは材料依存性の性質である。亀裂の先端における応力を示す応力強度因子であるKは、応力依存性の性質である。破壊靭性KICは微粉砕媒体材料の降伏強さが減少すると共に増加する。
【0151】
材料の硬度は、押込みまたは変形に抵抗するその材料の能力と記述することができる。材料の靭性は、荷重が表面に適用されるときに亀裂を起こすのに要する単位面積当たりの荷重と記述することができる。材料の破壊靭性の1つの尺度が臨界応力強度因子である。それは、ビッカース硬度試験から誘導される亀裂の長さから計算され、それは材料の曲げ強さの良好な近似である。圧縮強さは、材料に適用することができる、その材料が砕ける前の最大圧縮荷重である。微粉砕媒体物体は、この発明の微粉砕法における圧縮応力によって砕壊を受けることができる。
【0152】
固体微粉砕媒体材料の摩耗抵抗性は、運転条件下における、材料表面からの材料の進行性除去の容易さに関して広く定義することができる。固体微粉砕媒体材料の磨耗性の摩耗抵抗性は、その硬度、その破壊靭性およびその弾性率に関係付けられる。微粉砕媒体材料が硬ければ硬いほど、それはより一層摩耗抵抗性であって、運転条件下でより一層長く耐える。微粉砕媒体材料に関し、硬くかつ靭性のある材料は靭性がより小さい微粉砕媒体材料の砕壊を引き起こす。この発明の文脈において、第二材料の微粉砕媒体物体より靭性が小さい第一材料の微粉砕媒体材料を、例えばそれらの相対的な破壊靭性、硬度および脆性指数の各値を参照して選択することが可能である。限定することなく選んだ代表的な微粉砕媒体材料の破壊靭性値および破壊靭性値の範囲が表3に与えられる。第一材料よりも靭性が大きくかつ硬い、そして脆さの小さい、この発明の第二材料の微粉砕媒体物体を選択することが可能である。このような第二材料の微粉砕媒体物体は、靭性がより小さく、より容易に砕壊される第一材料の微粉砕媒体物体の砕壊を引き起こす。このような第二材料の微粉砕媒体物体は、また、例えば磨耗および砕壊によるような物理的または機械的手段によって、および、例えばエッチングによるような化学的手段によって、流体キャリアー中における第二材料の1つまたは2つ以上の成分の選択的溶媒和によって、溶解によって、微粉砕媒体物体をこの発明において有効にしないようにするのに十分な膨潤によって、或いは他の手段によって、この発明の微粉砕法において本質的に浸蝕抵抗性となる。
【0153】
有用な微粉砕媒体材料を挙げると、次のとおりである:リン酸二水素アンモニウム、窒化アルミニウム、アルミナ(Al)、サファイア、AlSiMag 614、チタン酸アルミニウム(AlTiO)、フッ化バリウム、チタン酸バリウム、バリウムフェライト(BaO・6Fe)、酸化バリウムシリケート(3BaO・SiO)、炭化ホウ素、ベリリア(BeO)、Bi:2212(BiSrCaCu8+x)、Bi(Pb):2223(Bi2−xPbSr CaCu10+y)、窒化ホウ素、ダイヤモンド、フッ化カルシウム(CaF、螢石)、Cervit 126、酸化鉄(FeO)、マグネシウム亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、ストロンチウムフェライト、窒化ガリウム、ガドリニウムガリウム・ガーネット、黒鉛、塩化カリウム、ケイ酸リチウムガラス(LiO・2SiO)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、二チタン酸マグネシウム、ムライト、パイロセラム(pyroceram)9606、鉛ジルコネート・チタネート(PbZrTi)、ケイ素、サイアロン、炭化ケイ素、窒化ケイ素(Si)、オキシ窒化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、フッ化ストロンチウム、ストロンチウムフェライト、ジルコン酸ストロンチウム、二酸化トリウム、二フッ化チタン、炭化チタン、窒化チタン、二酸化チタン、二酸化ウラン、炭化バナジウム、炭化タングステン、Y:123 YBaCu7−x、酸化イットリウム・アルミニウム(YAl12)、酸化イットリウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、窒化ジルコニウムおよびジルコニア。
【0154】
【表3】
Figure 2004507343
【0155】
【表4】
Figure 2004507343
【0156】
2種または3種以上のセラミック材料の複合材の破壊靭性は、複合材中における1つの成分の割合を高め、そしてもう1つの成分の割合を下げることによって調整可能である。酸化ジルコニウムまたはジルコニアの破壊靭性は、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムの微粉砕媒体物体の組成物中における酸化セリウムの量に逆比例して変わる。酸化セリウムの割合が酸化ジルコニウムと酸化セリウムとの0.5%物体中で8.6%から15.8%まで増加すると、それにつれて破壊靭性は17.1MPa・m1/2から5.8MPa・m1/2まで低下する。酸化ジルコニウムと酸化セリウムとの2.5%物体中において、酸化セリウムの割合が8.6%から15.8%まで増加すると、それにつれて破壊靭性は8.7MPa・m1/2から4.4MPa・m1/2まで低下する。
【0157】
材料の破壊靭性、およびより強靱でより硬い材料によって砕壊されるその能力は、多孔度の関数であり、また添加成分の関数でもある。多孔質材料は同じ組成の非多孔質材料よりも靭性が低い傾向がある。この発明では、ある所定の材料の多孔度は、この技術分野で知られている方法によって増大させて、その材料の靭性をより小さくし、従ってこの発明による靭性のより高い微粉砕媒体物体によってより容易に砕壊されるようにすることができる。材料混合物から成る複合材は、また、組成の関数として変わる破壊靭性を有する微粉砕媒体物体を与えるために、公知の方法によって製造することができる。例えば、高破壊靭性を有する材料に、固体としての第一材料の結晶構造または充填構造内に分子的に正確に嵌らない第二材料がドープされるとき、または異なる材料相のドメインが複合材中で互いに分離していると、第一材料の破壊靭性は変化して組成物中にドープされた第二材料の量の関数として変化することがあり、しばしば低下する。これにより、この発明による第一材料の微粉砕媒体物体として有用な微粉砕媒体物体を与えるように破壊靭性、硬度および脆性指数を変えることが可能になる。
【0158】
媒体を、本発明の微粉砕法において、より高い破壊靭性を持つ、即ちより強靱で容易には砕壊されない媒体によって砕壊するのを可能にする破壊靭性値を持つ微粉砕媒体物体を設計し、製造することができる。砕壊された材料は、次に、相乗作用性成分として微粉砕された基材材料中に組み込むことができる。第二材料(この例では酸化セリウムまたは酸化イットリウム)を色々な量で有する複合材料の主成分(この場合ジルコニア)としての材料における破壊靭性の変更を証明する代表的な非限定例が表4に与えられる。そのデータは前に記載したNISTウエブサイトから取られている。このような複合材料、即ち主材料および1種または2種以上のドーピング材料を含む複合材料は、基材を粉砕し、同時に砕壊され、そして微粉砕された基材の相乗作用性成分として組み込まれる微粉砕媒体物体として使用されるとき、この発明に従って使用するのに適した破壊靱性値、硬度値および脆性指数値を有するように調整することができる。
【0159】
これら表中のデータは、また、所定組成物の実測破壊靭性、硬度および計算脆性値が、破壊靭性値および硬度値を測定するのに用いられる方法の、また測定が行われる材料の粒度の関数であることを証明している。この発明で微粉砕媒体物体として有用な所定組成物の材料の破壊靭性および硬度を測定する所定の方法と条件について、媒体粒子の粒度を大きくすると、ときには、同じ材料の、しかし粒度がより小さい媒体粒子と比較するとき減少した破壊靭性を示す材料を与えることができる。
【0160】
破壊靭性または物体強度特性は、微粉砕媒体の機能および挙動にとって重要である。微粉砕媒体粒子は破損または破砕を受けて、同じ粒子内に新しい縁または表面が出てくる可能性がある。合成媒体では、この性質に関して、例えば媒体の製造における破砕、微粉砕または寸法規制の操作中に粒子形状を変えることによって、不純物を結晶成長調節剤として結晶構造中に導入することによって、媒体の組成純度を変えることによって、媒体を合金化することによって、および媒体粒子内の結晶構造または形態を制御することによってある程度の制御を達成することが可能である。
【0161】
第一材料の微粉砕物体(または微粉砕媒体)および第二材料の微粉砕物体(または微粉砕媒体)により微粉砕されるべき固体の各組み合わせに関するこの発明の1つの面において、第二材料の微粉砕物体の破壊靭性は第一材料の微粉砕物体の破壊靭性よりも大きい。第二材料の微粉砕物体は第一材料の微粉砕物体よりも靱性が大きいのである。破壊靭性を測定するために使用される方法には、小さい微粉砕媒体の破壊靭性の測定に関して特に見いだされる実測値に難しい乃至量的な影響があることが知られている。異なる測定技術で測定される破壊靭性の値は、(第一材料および第二材料の)両タイプの媒体が、プレミックス中の固体基材の粒度を所望粒度の小粒子まで低下させるために、この発明の微粉砕法において微粉砕媒体として作用する場合に、第二材料の微粉砕物体が第一材料の微粉砕物体を砕壊する(即ち、破壊またはチップ化する)場合に、および第一材料の微粉砕物体から誘導される粒状物が上記固体の粒子と相乗作用性混合物を形成する場合に、第一材料の微粉砕媒体および第二材料の微粉砕媒体を選択するために互いに定性的に比較することができる。同じ方法に従って測定される破壊靭性値は、第二材料の微粉砕物体により砕壊されて、この発明による微粉砕媒体の粒状物を生成させる第一材料の微粉砕物体の相対的傾向を定量化するのに有用である。
【0162】
種々の微粉砕媒体粒子間の、並びに第一タイプおよび第二タイプの微粉砕媒体粒子と粉砕または微粉砕される固体基材との間の相互作用の程度は、系毎に変わり得る。例えば、炭化ケイ素媒体(より硬く、より靱性が大きく、脆さがより小さい第二タイプの媒体の1例)が鋼媒体(靭性がより小さい第一タイプの媒体の1例)の存在下で用いられるとき、またはアルミナ媒体(より硬い第二タイプの媒体の1例)がガラスまたはシリカ媒体(靭性がより小さい第一タイプの媒体の1例)の存在下で用いられるとき、そのより弱い、靭性がより小さい媒体の、非常に小さい粒状物への砕壊または破砕またはチップ化は微粉砕操作中に起こり得る。1つのタイプの微粉砕粒子の、もう1つのタイプの微粉砕粒子による破砕または破損の量は、これら2種の材料の摩砕抵抗性、それらの相対靭性およびそれらの相対硬度に関係付けられる。
【0163】
固体の破壊靭性は、固体が圧力の適用下でいかに容易に破壊され得るかに関係付けることができる。例えば、ShipwayおよびHutchingsは、Wear of Materials(1991)、第8版(第1巻)、63−70頁の「焼結炭化ホウ素の浸蝕性摩耗に及ぼす粒子特性の影響(The influence of particle properties on the erosive wear of sintered boron carbide)」において、焼結炭化ホウ素セラミックのシリカ、アルミナおよび炭化ケイ素による浸蝕の結果を報告し、そして(相対的に硬い炭化ケイ素による)側面クラッキングと大規模破壊、および(硬さが想定的に小さいシリカおよびアルミナによる)小規模チップ化に関わる別々の機構が材料の相対ビッカース硬度値Hの逆関数として影響を及ぼすことを示唆した。破壊靭性Kは、押込荷重P、押込対角半長さ(indent diagonal half length)a、ヤング率Eおよびラジカル亀裂長さcと、次式:K=0.0141(P/a3/2)(E/H2/5log10(8.4a/c)に従って相関付けることができる。一定荷重において、ビッカース硬度Hは125μmのSiCで33.41GPa、125μmのAlで26.50GPa、より大きい600μmのSiOで12.77Gpa、より小さい125μmのSiOで12.77Gpaであった。
【0164】
脆性指数の平方(K/Hは長さの単位(メートル)を持つもので、延性挙動と脆性挙動との間で転移が起こる変形ゾーンの寸法を示すのに利用することができる。シリカ浸蝕剤は炭化ホウ素によって副次的チップ化開裂破壊機構で破砕されて、シリカの小粒状物を与えることができる。さらに、アルミナは炭化ホウ素に匹敵する破壊靭性値を有するけれども、炭化ホウ素はシリカのチップ化と同様のアルミナ微粉砕媒体粒子の副次的チップ化を引き起こし得る。衝撃速度が増加すると、それにつれてより硬くかつ靱性がより大きい材料によるシリカの破砕程度は増大する。シリカのような比較的軟らかい粒子には、炭化ホウ素のようなより硬い材料による衝撃で塑性変形を起こす傾向があり、シリカ粒子の小さいチップを生成させることができる。小シリカ粒子はそれより大きいシリカ粒子より硬いことができ、そしてより大きいシリカ粒子はそれより小さいシリカ粒子より高い破壊靭性値を有することができる。小シリカ粒子は大きいシリカ粒子よりも約1.15倍またはそれ以上大きい靭性を有するときがある。この発明の方法では、靭性がより大きい粒子は、KC1という破壊靭性を持つ靭性のより小さい粒子の破壊靭性の1.1倍より大きい破壊靭性KC2を有することができる。
【0165】
チップ、破壊物および崩壊物(砕壊物)をもたらす粒子、特に第二タイプの微粉砕媒体物体との衝突によって引き起こされる第一タイプの微粉砕媒体物体のチップ、破壊物および崩壊物の粒子間における相互作用の機構は、媒体粒子の組成と構造に依存する。硬度値HV2を有する動力学的第二微粉砕媒体粒子と硬度値HV1を有する第一微粉砕媒体粒子とのある組み合わせの場合、硬さがより小さい媒体の浸蝕速度は、互いに衝突する材料の相対硬度の経験的関数として近似させることができる。この点に関し、浸蝕速度は〜(HV2/HV1であり、ここでwはおおよそ2に等しい経験からの羃指数である。第一材料および第二材料の微粉砕媒体物体として組み合わせて使用することができる材料の相対硬度値が表1に与えられている。
【0166】
靱性がより大きくかつより硬い微粉砕媒体物体は、粒子が互いに衝突し合う微粉砕プロセスにおいて、靭性がより小さくかつ硬さがより小さい微粉砕媒体粒子を破壊および/またはチップ化および/または磨耗および/または浸蝕する。しかし、軟らかい微粉砕媒体物体は塑性変形する。比較的硬く、そして靭性がより大きい微粉砕媒体物体は、相対的により脆い、そして靭性がより小さい微粉砕媒体粒子を破壊する。低温での微粉砕が、ときには、軟らかい微粉砕媒体の脆性を増加させることができる。
【0167】
第一タイプの材料の微粉砕媒体物体の、第二タイプの材料の微粉砕媒体物体による砕壊は、衝突している材料の相対破壊靭性KC2/KC1の関数として記述することができる。
【0168】
もう1つの面において、第一タイプの微粉砕媒体物体のような脆い材料の、第二タイプの微粉砕媒体物体による砕壊は、第一材料の浸蝕速度E、および第二材料から成る浸蝕剤の衝突速度vとの間の、E=vで与えられる関係として近似させることができ、ここでnは速度羃指数として知られる定数である。
【0169】
Verspui等は、Rev. Sci. Instrum. (1997), 68(3), 1553−1556において、微粉砕媒体の砕壊に関連がある、応力が加えられているアルミナ粒子の3つの破砕タイプを明らかにした。これらは、小破片が粒子から分離する粒子のチップ化;粒子が破壊して数個(約2、3個)の大破片になる破壊;および粒子が多数の小破片に破損する破砕である。
【0170】
チップ化、破損および破砕は砕壊と称されることが多く、そして靱性のある材料の微粉砕媒体物体は靱性がより小さい材料の微粉砕媒体物体を砕壊することができる。所望粒度に等しいかまたはそれより小さい微粉砕媒体物体の粒状物は、第一材料の微粉砕媒体物体から、これら媒体が第二材料の微粉砕媒体物体により砕壊されるときに誘導され得る。この点に関し、第二材料の微粉砕媒体物体は第一材料の微粉砕媒体物体よりも高い破壊靭性を有する。この発明の1つの面において、微粉砕媒体物体の粒状物は、所望粒度Sより小さい粒度を持つ微粉砕媒体の、そしてまた粒度が微粉砕プロセス中に変えられなかった、S未満の粒度を有する全ての微粉砕媒体物体のチップ、断片または破片と定義される。
【0171】
この発明のもう1つの面において、異なる破壊靭性KC1およびKC2を有する微粉砕媒体物体または微粉砕媒体物体のタイプの2つの組成物が、媒体ミルの微粉砕室中に、場合によって流体キャリアー中に1種または2種以上の表面活性物質を含むプレミックスとしての固体基材と共に存在するとき、その固体および破壊靭性KC1を持つ靱性がより小さいより容易に砕壊される微粉砕媒体物体が微粉砕法で粒度低下されて固体の小粒子および微粉砕媒体の小粒状物を含む相乗作用性混合物を形成する。両タイプの媒体、即ちより低い破壊靭性KC1を有する媒体(即ち、強靱さがより小さい媒体)およびより高い破壊靭性KC2を有する媒体(即ち、靱性がより大きい媒体)が微粉砕および固体基材の粒度低下に寄与するのである。加えて、靱性がより小さい微粉砕媒体も粒度低下を経験して微粉砕媒体の粒状物を形成する。本発明のこの面では、第二材料の微粉砕媒体物体の破壊靭性の、第一材料の微粉砕媒体物体の破壊靭性に対する比、即ちKC2/KC1は1.1より大、好ましくは1.3より大、最も好ましくは1.5より大きい。イットリウム含有ケイ酸ジルコニウムのような強靱な材料は、大理石または炭酸カルシウムのような靭性がより低い材料を容易に砕壊することができる。ある微粉砕媒体材料の破壊靭性値が表1および2に与えられている。第一材料の微粉砕媒体物体が1未満の破壊靭性KC1を有するとき、好ましい第二材料は1.5より大、好ましくは2より大の破壊靭性KC2を有することができる。第一材料の微粉砕媒体物体が1.5未満の破壊靭性KC1を有するとき、好ましい第二材料は2.25より大、好ましくは2.5より大の破壊靭性KC2を有することができる。第一材料の微粉砕媒体物体が2未満の破壊靭性KC1を有するとき、好ましい第二材料は3より大、好ましくは3.5より大の破壊靭性KC2を有することができる。KC2は好ましくはKC1より少なくとも1.1倍大きい、さらに好ましくはKC1より少なくとも1.3倍大きい、最も好ましくはKC1より少なくとも1.5倍大きい。
【0172】
固体は所望粒度まで粒度低下されるので、固体の小粒子は流体キャリアー中分散物を形成することができる。さらに、靭性がより小さい微粉砕媒体物体の小粒状物は固体の粒子と共に分散されて、所望粒度Sに等しいかまたはそれより小さい、固体基材の粒子および靭性がより小さい微粉砕媒体物体の小粒状物を含む相乗作用性混合物を形成する。Sより大きい材料の粒子、例えば粒度がSより大きい固体基材またはプレミックスの粒子、粒度がSより大きい靭性がより小さい微粉砕媒体物体、粒度がSより大きい靭性がより小さい微粉砕媒体物体の破片、および粒度がSより大きい靭性がより大きい微粉砕媒体物体は、濾過または分離工程により、固体基材の小粒子と微粉砕媒体物体の小粒状物との相乗作用性混合物を含む分散物から除去することができる。固体基材の小粒子と微粉砕媒体物体の小粒状物との相乗作用性混合物を含む分散物の分離は、フィルター、濾過装置またはこの技術分野でよく知られているセパレーターのような粒度依存性分離装置を用いて、ミル中で行うことができる。或いはまた、微粉砕室中に存在する分散物および残留大粒度材料は、これらを微粉砕室から取り出し、そして小粒度分散物を濾過法または分離法で大粒度残留固体基材および微粉砕剤から分離することができる。その相乗作用性混合物は、次に、場合によって、噴霧乾燥、凍結乾燥、蒸留、蒸発およびこの技術分野で知られている他の方法のような方法で乾燥して、流体を含まない、固体基材の小粒子および微粉砕媒体物体の小粒状物を含む相乗作用性混合物をもたらすことができる。
【0173】
微粉砕される固体の粒子と相乗作用性混合物を形成するこの発明の微粉砕法で生成される第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物は、この微粉砕法において存在するその第一材料の微粉砕媒体物体の量に対してその約0.01〜100%を占めることができる。砕かれまたは砕壊されて粒状物を形成することができる微粉砕物体の部分は、この発明の方法における第一材料の微粉砕媒体物体の0.01〜100%、好ましくは約0.1〜約100%、さらに好ましくは約1〜約100%であることができる。1つの面において、第一材料の微粉砕媒体物体は微粉砕される固体の粒子の所望粒度より小さいことができる。この態様では、微粉砕媒体物体の粒状物は、第一材料の砕壊された微粉砕媒体物体および第一材料の未砕壊微粉砕媒体物体を含む。砕壊前に存在する複数の微粉砕物体の粒度分布は、固体に粒子の所望粒度より小さく、そして砕壊が起こるにつれてもっと小さくなる。第二材料の微粉砕媒体物体の粒度分布が相乗作用性混合物中の粒子および粒状物の所望粒度より大きいとき、その大きい媒体は、濾過、または例えば媒体ミル中で分離装置を用いて篩に掛けるか、またはスクリーニングする方法によるような粒度依存性分離技術を含めて多数の手段によって、その相乗作用性混合物から除去することができる。
【0174】
この発明においては、第一材料の微粉砕媒体物体の粒状物が存在しない状態では、相乗作用性混合物中に外に存在する固体基材の小粒子がそれらに関連した性質、用途または機能を有する。この発明における、固体基材の小粒子と微粉砕媒体物体の小粒状物との相乗作用性混合物において、固体基材の小粒子の性質、用途または機能は、微粉砕媒体の小粒状物の非存在下で示す固体基材の小粒子の性質、用途または機能に等しいかまたはそれら以上に改良されている。或いはまた、この発明において、相乗作用性混合物は、この混合物に関連して、微粉砕媒体の小粒状物の非存在下で固体基材の小粒子のみに関連するものではない新しい性質、用途または機能、或いは固体基材の小粒子の非存在下で微粉砕媒体の小粒状物のみに関連するものではない新しい性質、用途または機能を有する。
【0175】
相乗作用性混合物の例は、貧水溶性薬物のような製剤用薬剤の小粒子と、錠剤化完全性、または上記混合物から作られる錠剤からの薬物粒子の放出速度に影響を及ぼすシリカのような医薬品添加剤を上記製剤用薬剤の調合物中に含む微粉砕媒体物体の粒状物;相乗作用性混合物がより強くかつセメント単独の硬化時間とは異なる硬化時間を有するコンクリートの調合物で使用できる場合に、ポルトランドセメントの小粒子と砂の小粒状物;並びに酸化アルミニウムの小粒子と、種晶をアルファーアルミナ粉砕材料中に入れてその酸化アルミニウムの結晶化を行うことができるアルファ−アルミナの小粒状物を含む。相乗作用性混合物の追加の例は、化粧品用軟膏またはクリーム中に、またはフィルター染料(filter dye)のような染料を含む写真用要素中に均一に分布させるための染料および顔料化媒体粒状物の添加を含む。
【0176】
微粉砕媒体物体の粒状物を有する相乗作用性混合物と同じくらい小さい粒子の固体材料の種々の工業的用途挙げると、ペイント(顔料の粒子および紫外線吸収性染料の粒状物);顔料;写真材料;化粧品(顔料の粒子および酸化亜鉛の粒状物);化学製品;ポルトランドセメントのようなセメント;黒色粉末爆薬および艶付け黒色粉末爆薬(炭素の粒子および硝酸塩のような酸化触媒の粒状物);触媒および支持体として有用な金属粉末(第一金属の粒子および第二金属または金属酸化物の粒状物);粉砕、磨耗媒体;法科学、食品、化粧品、化学および製剤の研究で遭遇するもののような化合物および混合物の分析用および調製用クロマトグラフィー分離で有用な固定相粒子;ゼログラフィー用途およびレーザー印刷を含めて印刷用途で有用な黒色のおよび着色した両粉末トナー;並びに水溶性、水不溶性および貧水溶性の治療薬および診断用撮像剤を含めて固体製剤用薬剤;治療活性薬剤;医薬品;植物および本草エキス;薬物;プロドラッグ;薬物調合物;炭酸カルシウム、滑石、酸化亜鉛、その他の微細固体材料を含んでいるもののような製剤用ペーストを含む剤形;制御放出剤;持効性薬剤;マトリックス放出剤;診断薬;錠剤;ピル剤;クリーム剤;軟膏剤;座剤;ペッサリー;粉剤;ペースト;ゼリー;カプセル剤;顆粒剤;カシェ剤;トローチ剤;および香錠の小粒子の製造がある。病気の治療処置で使用される薬物または診断法で使用される薬物のような製剤用薬剤の場合、小粒子の形をした上記薬剤の調合物は、薬剤の増加したバイオアベイラビリティー、薬剤の増加した溶解速度、薬剤の増加した吸収速度、改善された投薬プロフィール、および薬剤を伴う治療または診断を受ける患者に服用または投与される薬剤重量の同時低下のような、変更され、そしてしばしば高められた微視的性質を与えることができる。
【0177】
表面活性物質の例は、ここで参照することにより本明細書に含まれる、全てNJ州07452、Rock Road 175のMC Publishing Co.のMcCutcheon Divisionから入手できる、McCutcheon’s, Volume 1: Emulsifiers and Detergents, 1994 International Edition; McCutcheon’s, Volume 1: Emulsifiers and Detergents, 1994 North American Edition;およびMcCutcheon’s, Volume 2: Functional Materials, 1994 North American Editionに記載されている。
【0178】
本発明で有用な、特に固体またはプレミックスが製剤用薬剤を含むときに有用な幾つかの適した表面活性物質の例を挙げると、次のとおりである:(a)カゼイン、ゼラチン、トラガカントゴム、ワックス類、腸溶性樹脂、パラフィン、アラビアゴム、ゼラチン、コレステロールエステル類、トリグリセリド類、レシチン類およびリン脂質類のような天然界面活性剤、(b)ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ソルビタンエステル類、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール類、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポロキサマー類、ポラキサミン類(polaxamines)、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび合成リン脂質類のようなノニオン性界面活性剤、(c)ラウリン酸カリウム、トリエタノールアミンステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート類、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、負に帯電したリン脂質類(ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシット、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびそれらの塩)、負に帯電したグリセリルエステル類、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルシウムカルボキシメチルセルロースのようなアニオン性界面活性剤、(d)4級アンモニウム化合物、ベンズアルコニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、キトサン類およびラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのようなカチオン性界面活性剤、(e)ベントナイトおよびビーガム(veegum)のようなコロイドクレー。これら界面活性剤の詳細な説明は、Remington’s Pharmaceutical Science, and Theory and Practice of Industrial Pharmacy, Lachman等、1986年に見いだすことができる。
【0179】
さらに具体的に述べると、適した表面活性物質の例に次のものの1種または組み合わせがある:PluronicTM F68、F108およびF127のような、BASF社から入手できる、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体であるポラキソマー(polaxomer)類、TetronicTM 908 (T908)のような、BASF社から入手できる、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのエチレン−ジアミンに対する逐次付加により誘導された四官能性ブロック共重合体であるポロキサミン(polaxamine)類、Rohm and Haas社から入手できる、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritonTM X−200、ICI Speciality Chemicals社から入手できる、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類であるTween 20、40、60および80、Union Carbide社から入手できるポリエチレングリコールであるCarbowaxTM 3550および934、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミドおよび1種または2種以上のリン脂質類。
【0180】
好ましい表面活性物質は、リン脂質表面活性物質、およびリン脂質表面活性物質を含む混合物である。適したリン脂質に、動植物のリン脂質類;卵リン脂質類、大豆リン脂質類;トウモロコシリン脂質類;小麦麦芽、亜麻、綿およびヒマワリの実のリン脂質類;乳脂リン脂質類;グリセロリン脂質類;スフィンゴリン脂質;ホスファチド類、エステルがリン脂質中の混合物および異性体混合物であることができる、パルミテート、ステアレート、オレエート、リノレートおよびアラキドネートを含めて脂肪酸エステル類を含んでいるリン脂質類;粉末としては安定でないが、吸湿性であって、湿分を吸収することができそしてゴム質になるジオレイルホスファチジルコリンおよび卵ホスファチジルコリンのような1個または2個以上の二重結合を含む脂肪酸から構成されるリン脂質類;粉末として安定であって、湿分吸収の影響がより少ない飽和脂肪酸から構成されるリン脂質類;ホスファチジルセリン類;ホスファチジルコリン類;ホスファチジルエタノールアミン類;ホスファチジルリノシトール類;ジミリストイルホスファチジルグリセロール、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ(rac−1−グリセロール)としても知られ、またDMPGとしても知られるL−アルファ−ジミリストイルホスファチジルグリセロールのようなホスファチジルグリセロール類;ホスファチジン酸;水素化天然リン脂質類;および米国、アラバマ州、AlabasterのAvanti Polar Lipids, Inc.から入手できるもののような商業的に入手できるリン脂質類がある。リン脂質中に内部対イオンがない場合において、好ましい対イオンはナトリウムイオンのような一価のカチオンである。リン脂質は、塩となっていても、脱塩されていても、水素化されていても、部分的に水素化されていても、不飽和であっても、天然のものでも、合成のものでも、或いは半合成のものでもよい。
【0181】
好ましいリン脂質に、Lipoid E80、Lipoid EPC、Lipoid SPC、DMPG、水素化大豆ホスファチジルコリンであるPhospholipon 100H、Phospholipon 90H、Lipoid SPC−3およびそれらの混合物がある。今のところ最も好ましいリン脂質はLipoid E80である。
【0182】
この発明に従って微粉砕されるべき固体基材または微粉砕されるべき固体基材のプレミックスに加えることができる表面活性物質の濃度は、0.1〜50%、好ましくは0.2〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%の範囲内にあることができる。
【0183】
この発明に従って製造することができる調合物に加えることができる1種または2種以上の表面活性物質の総濃度は、0.01〜50%、好ましくは0.1〜50%、好ましくは0.2〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%の範囲内にあることができる。
【0184】
微粉砕された固体の小粒子とは、プレミックス中に含まれる粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度に微粉砕されている固体の粒子を意味する。所望粒度は広い範囲を有することができ、そしてその粒子は比較的大きいことができるけれども、好ましい所望粒度は平均直径で約0.005〜200マイクロメートル(容積重み付き平均粒度と称されるときもある)の範囲(この場合、Sは200マイクロメートルである)、好ましくは0.01〜50マイクロメートルの範囲(この場合、Sは50マイクロメートルである)、さらに好ましくは0.05〜20マイクロメートルの範囲(この場合、Sは20マイクロメートルである)、最も好ましくは0.05〜5マイクロメートルの範囲(この場合、Sは5マイクロメートルである)内にあることができる。この発明の生成物の意図される用途に応じて、微粉砕された固体の小粒子は、非晶質若しくは結晶性固体、または非晶質または結晶性の両固体の混合物、或いは、例えばアルファ−アルミナ構造物、黒鉛構造物、同素性の結晶性構造物のような特定の結晶性構造物、および、場合によって1種または2種以上の表面活性物質を含むことができる。この発明の微粉砕法の生成物は、微粉砕された固体の小粒子並びに微粉砕媒体の小粒状物の相乗作用性混合物を含む。
【0185】
1つの実例としてであるが、貧水溶性薬物の小粒子とは、貧水溶性薬物から成る、平均直径が約0.005〜20マイクロメートルの範囲(この場合、Sは20マイクロメートルである)、好ましくは0.01〜5マイクロメートルの範囲(この場合、Sは5マイクロメートルである)、さらに好ましくは約0.05〜3マイクロメートルの範囲(この場合、Sは3マイクロメートルである)、最も好ましくは0.05〜1マイクロメートルの範囲(この場合、Sは1マイクロメートルである)内にある粒子を意味する。固体薬物の小粒子は非晶質または結晶性固体としての薬物、および、場合によって1種または2種以上の生体適合性表面活性物質を含むことができる。非常に小さい粒子および粒状物は、500ナノメートル未満(この場合、Sは500ナノメートルである)、好ましくは400ナノメートル未満(この場合、Sは400ナノメートルである)、さらに好ましくは300ナノメートル未満(この場合、Sは300ナノメートルである)、最も好ましくは200ナノメートル未満(この場合、Sは200ナノメートルである)であることができる。約5ナノメートルから約100〜200ナノメートルまでの範囲内にある粒子および粒状物が、Sが200ナノメートルであるこの範囲内にあると考えられる。この発明では、粒子および粒状物は全て所望粒度S未満であることができる。例えば、約5〜約100ナノメートルの範囲内の粒子および粒状物がこの発明の方法から得ることができ、そしてその所望粒度はS=200ナノメートル未満であることができる。
【0186】
本発明は、広範囲の液体を用いてスラリー化できる非常に広範囲の固体に適用することができる。微粉砕することができる固体を挙げると、薬物および診断用撮像コントラスト剤のような製剤用薬剤、酸化鉄、滑石、シリカ、チョークのような他の鉱物、酸化亜鉛、酸化ホウ素、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、顔料、カーボンブラック、各種金属、固体有機化合物、例えばテレフタル酸、およびそれらの混合物、並びに前に述べた固体がある。上記液体は、水、炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルコールおよびエステルのような揮発性の非水性液体、およびフタレート類、ポリ塩化ビニルプラスチゾルおよびワックスのような非揮発性溶媒、並びに前に述べた他の溶媒から選ぶことができる。非揮発性溶媒は、スラリーが乾燥することなく液体形態で、例えばプラスチゾルとして、またはある種特定の医薬製剤において続いて用いられるべきときに使用することができる。スラリーは、微粉砕を促進し、または後の加工を補助する、例えば分散剤、若しくは粒子上にコーティングを形成するリン脂質のような表面活性物質のような1種または2種以上の添加剤を含むことができる。
【0187】
プレミックスは、微粉砕されるべき基材が1〜70重量パーセントの範囲であるのが好ましい。流体キャリアーの微粉砕されるべき基材に対する比は約0.01未満から約10までの範囲であるのが好ましい。微粉砕されるべき基材は一般的には固体であるが、1つの面では結晶性であるのが好ましい。
【0188】
1つの態様において、プレミックスは微粉砕されるべき固体と、場合によって1種または2種以上の表面活性物質を含むことができる。この発明の微粉砕法は、所望粒度の微粉砕された固体の小粒子を、所望粒度の第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物との相乗作用性混合物として含む組成物を提供する。
【0189】
もう1つの態様において、プレミックスは微粉砕されるべき第一固体と微粉砕されるべき第二固体、および場合によって1種または2種以上の表面活性物質を含むことができる。本発明の微粉砕法は、第一微粉砕固体の所望粒度を持つ小粒子と、場合によって第二微粉砕固体の所望粒度を持つ小粒子と、第一材料の微粉砕媒体物体の所望粒度を持つ小粒状物との相乗作用性混合物を含む組成物を提供する。
【0190】
この発明の1つの面において、この微粉砕法は砥粒の製造に用いることができる。シリカを含んでいる砥粒のある特定の態様は、シリカを含まない常用の砥粒に比較して改善された硬度および/または靭性を有することが知られている。砥粒は何世紀もの間研磨製品で用いられてきた。これらの研磨製品に、研削砥石のような接着研磨材(bonded abrasives)、サンドペーパーのような被覆研磨剤(coated abrasives)および切削ワイヤー(cutting wire)のような不織研磨剤(nonwoven abrasives)がある。好ましいアグレッシブ砥粒(aggressive abrasive grain)は、典型的には、強靱で、硬く、そして研磨されるワークピースに対して化学的に抵抗性である。強靱な砥粒は、一般に強くかつ破壊抵抗性である。硬い砥粒は、一般に、粉砕の力によりへこんだり(yield)、或いは鈍ったりする(dull)ことはない。砥粒がへこんだり或いは鈍ったりすると、これは、典型的には、低下した研磨性能をもたらす。
【0191】
アグレッシブ砥粒の1つの一般的な種類は溶融アルミナである。溶融アルミナは、酸化アルミニウム源を溶融状態に至るまで加熱し、急速に冷却し、次いで破砕することによって形成することができる。このタイプの砥粒は硬く、強靱で、かつ化学的に抵抗性である。さらに最近開発されたタイプの砥粒は、アルファーアルミナ系セラミック砥粒と称されることが多い。このタイプの砥粒は、水のような液体媒体、アルファーアルミナ一水和物を、しばしば硝酸のような解膠剤(peptizing agent)の存在下で、そして場合によっては硝酸マグネシウムのような添加金属酸化物前駆体の存在下で含む分散液を乾燥し、破砕し、焼成し、次いで焼結するゾル−ゲル法で製造することができる。得られるセラミック砥粒は溶融アルミナ砥粒よりも強靱であることができ、そして研磨作業において優れた性能を示すことができる。溶融アルミナ砥粒は、アルファーアルミナから成る第一材料の微粉砕媒体物体、および第一材料を砕壊する本明細書の表から選ばれる第二材料の微粉砕媒体物体の存在下でアルミナを微粉砕することによって、本発明に従って製造することができる。アルミナとアルファーアルミナとの相乗作用性混合物はこれを溶融して、ほとんどまたは全てアルファーアルミナである溶融アルミナを形成することができる。微粉砕媒体粒状物は溶融工程でアルファーアルミナの形成を触媒することができる。アルファーアルミナは好ましい結晶構造から成る。
【0192】
1つの面において、アルファーアルミナ系セラミック砥粒中には、例えばMgOのような金属酸化物は、ベーマイト、酸化鉄およびシリカのようなそれら砥粒の製造において用いられる前駆体材料中の少量汚染物質に由来するレベルよりも高いレベルでは存在すべきでない。このようなレベルは、好ましくは約0.01〜25重量%、さらに好ましくは約0.01〜10重量%、最も好ましくは約0.01〜1.0重量%である。砥粒の好ましい態様は金属酸化物を本質的に含まないものである。硝酸塩を含めて可溶性塩のような、ある種特定のこれら金属酸化物源は、乾燥中に移行を起こして組成上不均質な砥粒を与える可能性がある。MgOのようなこれら金属酸化物のあるものは得られる砥粒の粒内破壊の量を増加させることができるけれども、それらはまたその砥粒の硬度および靭性の低下を引き起こすこともある。シリカは、しかし、それがFeとの組み合わせで使用され、そしてこれら材料の微粉砕媒体物体を用いて本発明に従って製造されるときは、得られる砥粒の粒内破壊の量を増加させることができる。さらに、この発明に従って製造される砥粒の硬度、靭性および粉砕性能は維持することができ、そしてさらに改善することさえできる。
【0193】
アルミナ、アルファーアルミナの微粉砕媒体物体、および炭化タングステン微粉砕媒体のような表1、2、3または4から選ばれるより硬くかつより強靱な微粉砕媒体物体から本発明に従って製造されるアルファーアルミナ系セラミック砥粒は、少なくとも約3.5g/cm、さらに好ましくは少なくとも約3.7g/cm、最も好ましくは少なくとも約3.8g/cmの密度を有することができる。この砥粒は、一般に、本質的に変形抵抗性(即ち、硬い)で、かつ本質的に破壊抵抗性(即ち、強靱)であることができる。この発明に従って製造される砥粒は、少なくとも約16GPaの平均硬度(即ち、変形抵抗性)を有することができる。平均硬度は、好ましくは少なくとも約18GPa、さらに好ましくは少なくとも約20GPa、最も好ましくは少なくとも約22GPaである。もう1つの面では、焼結砥粒は、典型的には、少なくとも約2.5MPa/m1/2の平均靭性(即ち、破壊抵抗性)を有する。平均靭性は、好ましくは少なくとも約3.0MPa/m1/2、さらに好ましくは少なくとも約3.5MPa/m1/2、最も好ましくは少なくとも約4.0MPa/m1/2である。特に好ましい砥粒は、少なくとも約23GPaの平均硬度および少なくとも3.3MPa/m1/2の平均靭性を有するものである。
【0194】
ガラス相をほとんどまたは全く有しない砥粒は、その砥粒が理論値の少なくとも90%の実密度になるまで焼結されているとき、粒間破壊とは対照的に粒内破壊を示す。非常に多孔質の砥粒(例えば、ベニキュラーな(vennicular)または多孔質の非シード微細構造(non−seeded microstructure)を有する材料に見いだされるような内部および外面細孔が接続されている連続多孔性を有するもの)は、非常に高い「見掛け」密度と非常に多い(例えば、約70%より多い)粒内破壊量を有する。この場合、粒内破壊量は、多孔質材料は粒内様式で破壊する傾向があるので意味がない。本発明による砥粒は、外面および内部の両細孔を非常に少数有するシードおよび緻密な微細構造(seeded and dense microstructure)を有する。このような非多孔質砥粒では、多い量の粒内破壊は、一般により良好な粉砕性能を有する靭性がより大きい砥粒であることを示している可能性がある。
【0195】
微小硬度は、ゆるい微粉砕媒体物体を“EPOMET”固定用樹脂(mounting resin)(Ill州、Lake BluffのBuehler Ltd.から入手)中に固定して、直径が1インチ(2.5cm)で、高さが0.75インチ(1.9cm)である媒体を含む円筒体を形成することによって測定することができる。固定された試料は、試料の磨かれた断面を得るために、“METADI”ダイヤモンドスラリー(Buehler Ltd.から入手)を用いる“EPOMET”研削機/研磨機(Buehler Ltd.から入手)を使用して研磨することができる。最終研磨工程は1マイクロメートルの“METADI”ダイヤモンドスラリーを使用することができる。硬度の測定は、500グラムの押込荷重を用いるビッカース圧子を備える“Mitutoyo MVK−VL”硬度試験器(日本、東京のMitutoyo Corp.から入手)を用いて行うことができる。その硬度測定は、ここで参照することにより開示が本明細書に含まれるASTM試験法E384・材料の微小硬度試験法(Test Methods for Microhardness of Materials)(1991年)に記載されるガイドラインに従って行うことができる。5回の測定の平均としてGPa単位の硬度値の測定をすることができる。
【0196】
アルファーアルミナセラミック砥粒中における粒内破壊の量は、炭化タングステンでライニングされた乳鉢と乳棒(SPEX カタログNo.3203、N.J.州、EdisonのSPEX Industries社)を用いて小数の砥粒(約10〜25個)を手で破砕することによって評価することができる。破砕砥粒は、次に、これをSEM試料台座に導電性炭素ペーストを用いて固定し、それに“Anitech Hummer VI Sputtering System”(VA州、SpringfieldのAnitech Ltd.)を用いてAu−Pdで導電被覆を施し、そして“JEOL 840A”走査電子顕微鏡(Mass.州、PeabodyのJEOL USA社)で10,000Xより大きい倍率において調べて破壊した砥粒表面を確認および写真に撮ることができる。粒内破壊は、15,000Xの倍率で撮った試料の焼成断面のSEM顕微鏡写真を横切って上部左角から下部右角までおよび下部左角から上部右角まで長さ各々約14.5cmの2本の対角線を引くことによって定量化することができる。粒内破壊は、粒内破壊を通過する対角線の累積長さを測定し、それを対角線の長さで割ることによって計算することができる。粒内破壊の割合は対角線の各々について得られた2つの値の平均である。
【0197】
この発明に従って製造される砥粒は、砥石車、サンドペーパー、エメリー、その他の研磨工具において使用することができる。研磨媒体は、滑石のような天然の微細な粉末を潜在的に除けば、典型的には、使用に必要とされる粒度まで破砕される。用いられている粒度は直径約4グリットまたは約6ミリメートルから約900グリットまたは約6ミクロンの粒度の細かい粒度まで変わることができる。高品質工学レンズ上にかき傷のない表面を、または高出力望遠鏡の鏡を研磨するのに用いられるときには、さらに細かい粉末が必要とされることがある。
【0198】
砥石車は砥粒、および加圧下で成形され、そしてしばしば材料を加熱融解させて輪を作る凝集バインダーまたは「ボンド」から製造することができる。サンドペーパーは柔軟な裏打ち材に接着剤バインダーで保持される研磨粒子の層より成る被覆された研磨材である。
【0199】
エメリーは、鉱物質コランダムまたは酸化アルミニウムと磁鉄鉱(Fe)または赤鉄鉱(Fe)のような鉄酸化物との混合物から主として成り、そしてときにはダイアスポア、水礬土石、鎖状晶子、クロリトイドおよびケイ線石を含んでいる。非常に細かいエメリー粉末はレンズとぎ師、宝石細工人および板ガラスメーカーによって使われる。エメリー砥石車は、粉末エメリーをクレーのような結合媒体と混合し、そして窯の中で焼成することによって製造することができる。エメリーステック、エメリークロスまたはクロッカスクロス、およびエメリーペーパーにおいて、粉末エメリーは裏打ち材に接着剤で結合される。
【0200】
研磨剤粒子は粒子または粉末の形で使用することができる。多くの粒状材料が、それらをラップ仕上げ研磨剤のような他の用途における、またはサンドブラスチング粒子としての使用により適したものにするために、焼成、酸洗浄、または加熱により処理することができる。ラップ仕上げおよび研磨における使用のために、研磨剤粒子は鉱油またはアザラシ油のようなビヒクルと混合することができる。研磨ステックは色々な大きさの砥粒で含浸されたワックスまたはグリースより成ることができる。錆、スケールおよび炭素のような表面結合物質を除去するために表面にガラスビーズを加圧噴射することができる。
【0201】
粒度低下を成し遂げるために使用されるミルの例に、コロイドミル、スインギングミル(swinging mill)、ボールミル、媒体ミル、分散ミル、アトリッターミル、ジェットミルおよび振動ミルがある。粒度低下法は、例えば米国特許第4,006,025号、同第4,294,916号、同第4,294,917号、同第4,940,654号、同第4,950,586号および同第4,927,744号明細書並びに英国特許第1,570,362号明細書に記載されている。機械的粉砕は、ボールミルのような分散ミル、アトリションミル、振動ミル、およびサンドミルまたはビーズミルのような媒体ミル中で起こり得る。
【0202】
固体基材の粒度低下に有用なミルは、バッチ方式でまたは連続若しくは半連続方式で運転することができる。連続方式で作動するミルは、比較的大きな微粉砕媒体物体を微粉砕される固体基材の比較的大きな粒子と共にミルの微粉砕ゾーンまたは微粉砕室中に保持し、同時に微粉砕される基材の小さい方の粒子、即ち生成物基材粒子、並びに生成される可能性のある媒体の小粒状物を微粉砕室から再循環方式か個別通過方式のいずれかで出ていくのを可能にする手段を含んでいることが多い。再循環は、しばしばポンプの助けを借りて、微粉砕室から、攪拌器が付いていることが多い保持容器へと移動し、そこから微粉砕室に戻る流体キャリアー相中に懸濁されている基材のスラリー、懸濁物、分散物またはコロイドのような分散物の形でなされる。微粉砕室の出口部にはセパレーターまたはスクリーンが効果的に配置されている。微粉砕と媒体分離を同時に行うこのような手段は、「動的媒体分離」と称される。
【0203】
基材を連続微粉砕するもう1つの方法において、連続方式で作動するミルは、微粉砕される固体基材の比較的大きな粒子をミルの微粉砕ゾーンまたは微粉砕室中に保持し、同時に微粉砕される基材の小さい方の粒子、即ち生成物基材粒子、並びに微粉砕媒体物体および微粉砕媒体物体の小粒状物を微粉砕室から再循環方式か個別通過方式のいずれかで出ていくのを可能にする手段を含んでいることができる。再循環方式では、生成物基材粒子、小さい媒体断片、および流体キャリアー中に懸濁している媒体は、しばしばポンプの助けを借りて、微粉砕室から、セパレーターまたはスクリーンを通って、攪拌器が付けられていることが多い保持容器へと移動し、そこから微粉砕室に戻る。所望粒度Sを持つ粒子および粒状物の懸濁物は、後続の濾過または他の工程でより大きな粒度の材料から分離することができる。
【0204】
基材を連続微粉砕するさらにもう1つの方法において、連続方式で作動するミルは、微粉砕される固体基材の比較的大きな粒子および大きな粒度の微粉砕媒体物体の両者をミルの粉砕室中に保持し、同時に微粉砕される基材の小さい方の粒子、即ち生成物基材粒子、並びに小粒度の微粉砕媒体物体および小さい微粉砕媒体断片を微粉砕室から再循環方式か個別通過方式のいずれかで出ていくのを可能にする手段を含んでいることができる。再循環方式では、生成物基材粒子、小粒度媒体、および流体キャリアー中に懸濁している小媒体断片は、しばしばポンプの助けを借りて、微粉砕室から、セパレーターまたはスクリーンを通って、攪拌器が付いていることが多い保持容器へと移動し、そこから微粉砕室に戻る。粒度がS未満である粒子および粒状物を含む懸濁物が、続いて、例えば濾過工程で分離され、そして場合によって乾燥されることができる。
【0205】
1つの好ましい態様において、微粉砕法は連続法である。固体基材の粉砕粒子と、媒体ミル中のセパレーターまたは出口フィルターを通過するほど十分に小さく粉砕および砕壊される微粉砕媒体物体の粒状物との相乗作用性混合物の分散物は、流体キャリアー中分散物として微粉砕室を通して再循環することができる。このような再循環を行うのに適した手段の例に、蠕動ポンプ、膜ポンプ、ピストンポンプ、遠心ポンプおよび他の容積式ポンプのような常用のポンプがある。場合によっては、固体基材の粉砕粒子と微粉砕媒体の粒状物との相乗作用性混合物の流体キャリアー分散物の再循環中に、その相乗作用性混合物またはその混合物の一部分を分離してもよいし、或いはその分散物を濃縮して所望のように分離するための相乗作用性混合物を与えることができる。
【0206】
微粉砕は適切などのような媒体微粉砕装置の微粉砕室中でも起こり得る。適したミルに、粉砕媒体の1つが重合体樹脂であるときに好ましい高エネルギー媒体ミルがある。媒体ミルは回転軸を含んでいることができる。本発明は、また、Cowles分散装置、回転子−固定子ミキサー、または高流体キャリアー速度および高剪断で送出することができる他の常用ミキサーのような高速分散装置と共に実施することができる。
【0207】
好ましい容器幾何形状寸法として約1:1〜1:10の直径対深さ比がある。容器容積は1cc未満から4000リットル超までの範囲であることができる。微粉砕室における汚染を防ぎ、および/または加圧若しくは減圧を可能にするために容器カバーを使用することができる。微粉砕中に温度を制御できるようにするためにジャケット付き容器を使用するのが好ましい。加工処理温度は、粒子を懸濁させるのに使用される液体ビヒクルの凍結温度と沸騰温度との間の範囲におよぶことができる。沸騰を防ぐためにより高い圧力を使用することができる。一般的かき混ぜ機デザインは、軸流または半径流羽根車、ペグ、ディスク、高速分散装置等々を含むことができる。半径流を用いているミキサーは微粉砕性能に有害である可能性のある高媒体速度および剪断を最小限のポンプ作用で与えるので、このミキサーが好ましい。ミキサータイプおよびミキサー速度は、一般的かつ典型的には、メーカーの推奨に従って用いられる。1〜50m/秒のミキサー速度が用い得るが、但し単純な容器デザインでは20〜40m/秒の速度が好ましいことが多い。微粉砕時間は、このような高速混合ミルでは、所望とされる粒度、処方、装置および加工条件に依存するが、約1〜100時間またはそれ以上の範囲であることができる。
【0208】
バッチ法では、微粉砕媒体、流体キャリアー、および微粉砕される基材を含むプレミックスは、破壊された基材粒子と微粉砕媒体粒状物が所望粒度または達成可能な最小粒度に粒度低下されるまで容器中に留まる。より硬く、より靭性の大きい、かつ脆性がより小さい媒体よりも靭性が小さくかつ脆性が大きい媒体から小媒体断片を生成させることができる。次に、流体キャリアー、生成物基材粒子および媒体の小粒状物が、媒体粒子から、微粉砕室の出口部にあるセパレーターまたはスクリーンにより分離されるか、または後続の粒度分離工程若しくは濾過工程で分離される。
【0209】
媒体を媒体ミル中に保持するのに、回転ギャップ式セパレーター、スクリーン、篩、遠心補助スクリーン、およびミルからの媒体の通過を物理的に制限する同様の装置を含めて媒体セパレーターのような分離装置の使用を含めて各種の技術が確立されている。微粉砕媒体物体の寸法は粒度低下基材粒子が通り得る開口の寸法より大きいので媒体の保持が生ずる。媒体粒度またはそれより大きい粒度を持つ未微粉砕または部分的に微粉砕された固体基材も、小生成物粒子に粒度低下されるまで保持される。
【0210】
ボールミル(例えば、Abbe Ball Mills)または攪拌機付きボールミル(例えば、Union Process Attritor)を用いるバッチ法では、分散物および微粉砕媒体物体の分離は、微粉砕の完了後に、通常は微粉砕媒体よりも小さいスクリーンまたは篩またはフィルターを通して行われる。典型的には、スクリーンは微粉砕容器に接続され、スラリーはフィルターを通過させるために、その容器から重力排液でまたはポンプで外に取り出される。別法として、スラリーは微粉砕容器に圧縮ガスを装填することによってその容器から強制的に押し出すこともできる。しかし、比較的大きい粒度の微粉砕媒体物体の使用は、微粉砕プロセスで生成する基材粒子の最終粒度に実際的な制限を課し得る。所望とされる粒子の粒度および粒状物の粒度は、基材固体を粒子粒度まで微粉砕するのに使われる媒体の粒度の約1/1000倍であることが多い。
【0211】
固体基材のプレミックスは、場合によって1種または2種以上の表面活性物質を含むことができる。表面活性物質は、微粉砕法および他の粒度低下法で製造される小粒子に安定性を与えることが知られている。
【0212】
1つの好ましい面において、出発プレミックス中の固体基材は、治療薬または診断薬のような製剤用物質から成ることができる。この固体基材が2マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満、最も好ましくは500マイクロメートル未満のような所望粒度まで十分に粉砕または粒度低下されると、そして第一材料の微粉砕物体が砕壊されてその所望粒度に等しいかまたはそれ以下の微粉砕媒体物体の粒状物を形成すると、生成物基材粒子と微粉砕媒体物体の粒状物との混合物は微粉砕室から流体キャリアー中分散物として取り出すことができる。この分散物はフィルターのような適切なセパレーター装置を通過して、所望粒度より大きい残留微粉砕媒体物体、並びにフィルターを通過するには大き過ぎる残留未微粉砕または部分的微粉砕物質を除去することができる。所望粒度に等しいかまたはそれ以下の固体生成基材粒子と微粉砕媒体物体の粒状物との相乗作用性混合物の分散物は、所望粒度の粒子および粒状物の通過を許すフィルターによって保持されず、一方その所望粒度より大きい残留媒体および残留未微粉砕または残留部分的微粉砕固体基材粒子はそのフィルターによって保持される。分離方法において有用な適したフィルターまたはセパレーター装置は、媒体ミル中の出口部にあるセパレーター装置、またはディプスフィルター(depth filter)、メッシュ、スクリーン、篩、牛乳用フィルター、粒子床等のようなフィルターであることができる。
【0213】
1つの態様において、微粉砕固体基材粒子と微粉砕媒体物体の粒状物との相乗作用性混合物の所望粒度はサブマイクロメートル(submicrometer)またはナノ粒状物(nanoparticulate)粒度、例えば約500nm未満である。100nm未満の平均粒度および粒状物粒度を有する混合物が、本発明に従って製造することができる。好ましい態様において、治療薬または診断薬と、薬物調合物中で医薬品添加剤または充填剤として役立ち得る微粉砕媒体物体の粒状物との相乗作用性混合物は、サブマイクロメートルまたはナノ粒状物粒度、例えば約500nm未満で製造することができる。この相乗作用性混合物の約300nm未満の平均粒度を有する粒子および粒状物が製造することができる。ある特定の態様では、相乗作用性混合物の100nm未満の平均粒度を有する粒子および粒状物が、本発明に従って製造することができる。
【0214】
媒体ミルの微粉砕室中に存在する粉砕媒体、固体基材、流体キャリアーと、1種または2種以上の表面活性物質、第一材料の微粉砕媒体物体、および第二材料の微粉砕媒体物体との好ましい割合は広い範囲内で変わることができるが、それは、例えば、好ましい態様では治療薬または診断薬であるプレミックスで選択される固体の種類のような特定の基材、および粉砕媒体の粒度と密度に依存する。好ましい微粉砕媒体濃度はその用途に依存し、そして微粉砕性能要件、および微粉砕されるべき基材の流動特性に基づいて最適化することができる。総粉砕媒体濃度は、用途に依存するが、約10〜95容量%、好ましくは20〜90容量%の範囲であることができ、そして上記因子、即ち微粉砕性能要件、および粉砕媒体と基材との組み合わせ分散物の流動特性に基づいて最適化することができる。高エネルギー媒体ミルでは、粉砕室の容積の70〜90%を粉砕媒体で満たすことが望ましいことがある。第二材料の微粉砕媒体物体に対する第一材料の微粉砕媒体物体の比は、約1:1000〜約1000:1、好ましくは1:100〜約100:1、最も好ましくは1:3〜約10:1の範囲であることができる。
【0215】
この発明で球形微粉砕媒体物体の2つまたは3つ以上の粒度分布、例えば第一材料の大きな粒度の媒体および第二材料の小さな粒度の媒体、または第一材料の大きなおよび小さな粒度の媒体、および/または第二材料の大きなおよび小さな粒度の媒体が用いられるとき、約30〜100%の、微粉砕されるべき固体基材のプレミックスのスラリーが隣接する媒体ビーズ間の隙間ボイド中に存在するのが好ましい。ランダム充填球体のボイド容積が約40パーセントに近い場合、それに対応する、微粉砕容器中における小微粉砕媒体物体対プレミックススラリーの好ましい容積比は0,5〜1.6の範囲である。微粉砕効率を最大にするには60〜90パーセントのスラリーが小媒体ボイド中に存在するのが好ましい。ボイドの均一性は、勿論、微粉砕室中における大小の微粉砕媒体物体の存在によってゆがめられる。粒子および粒状物の所望粒度の関数として選択される微粉砕媒体物体の粒度、およびその逆、即ち微粉砕媒体物体の粒度に対する粒子の所望粒度の比は約1/1000である。
【0216】
1つの好ましい面において、本発明は、貧水溶性薬物の小粒子および第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する改善された方法を提供する。特に、本発明は、貧水溶性薬物の小粒子および第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物を含む水性キャリアー中分散液としての相乗作用性混合物を製造する改善された方法を提供する。さらに、本発明は、貧水溶性薬物の小粒子および第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物を含む、貧水溶性薬物の上記小粒子と第一材料の微粉砕媒体物体の上記小粒状物との乾燥相乗作用性混合物としての相乗作用性混合物を製造する改善された方法を提供する。
【0217】
本発明で使用される「小粒子」は、ナノメートル乃至マイクロメートルの直径または平均直径をそれぞれ有する粒子または粒子の分布のことを意味する。小粒子は本発明で使用される微粒子であって、不規則、非球形または球形の形状を持つ固体粒子をも意味する。
【0218】
これらの相乗作用性混合物を含む調合物は、非調合、非微粉砕薬物粒子を越えるある種特定の利点を与える。これらの利点に、分散成分の改善された均一性、GI管からの吸収が乏しい薬物の改善された経口バイオアベイラビリティー、調合物の全成分が生体適合性または生分解性であるときに現在は経口用剤形でしか入手できない注射可能な調合物の開発、錠剤化およびカプセル化薬物調合物の持続放出性または遅延放出性、および外の方法では鼻または眼用に調合ができない薬物の吸入および眼病用調合物の製造がある。
【0219】
水不溶性および貧水溶性化合物は、標準生理的温度またはそれ以下において貧水中溶解度、即ち生理的pH(6.5〜7.4)において<5mg/mLの水中溶解度を有するものである。それらの水溶解度は<1mg/mLであるのが好ましく、<0.1mg/mLであるのがさらに好ましい。
【0220】
相乗作用性混合物中の固体が薬物または製剤用薬剤であるとき、それは分散液として水中で安定であるのが望ましい。外にまたはそれに加えて、相乗作用性混合物形の凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態または蒸発形態または他の乾燥形態のような乾燥形態が、例えばカプセル、錠剤、および追加の医薬品添加剤および薬物を含む調合物を含めて薬物送達組成物の形成における使用に望ましいだろう。
【0221】
1つの態様において、本発明は治療薬および診断薬を含めて広範囲の製剤用基材を用いて実施することができる。一部の好ましい水不溶性薬物の例を挙げると、免疫抑制および免疫活性剤、抗ウイルスおよび抗かび薬、抗腫瘍薬、鎮痛および抗炎症薬、抗生物質、抗てんかん薬、麻酔薬、催眠薬、鎮静薬、抗精神病薬、神経弛緩薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗痙攣薬、拮抗薬、ニューロン遮断薬、抗コリンおよびコリン様作動薬、抗ムスカリンおよびムスカリン薬、抗アドレナリン作動性およびアンタルハイトミックス(antarrhythmics)、抗高血圧剤、抗腫瘍薬、ホルモンおよび栄養素がある。これらのおよび他の適した薬物についての詳細な説明は、ここで参照することによって本明細書に含まれる、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのMack Publishing Co.刊、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年に見いだすことができる。
【0222】
適した化合物は、多数の治療および診断撮像分野において医薬上の効能を有することができる。この発明で有用な貧水溶性薬物が選択され得る非限定化合物群および薬剤群を挙げると、麻酔薬、エース阻害薬、抗血栓薬、抗アレルギー薬、抗菌薬、抗生物質、抗凝血薬、抗癌剤、抗糖尿病薬、抗高血圧薬、抗かび薬、抗低血圧薬、抗炎症薬、抗有糸分裂薬、抗片頭痛薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、抗トロンビン薬、抗ウイルス薬、β−遮断薬、気管支鎮痙薬、カルシウム拮抗薬、心臓血管薬、強心性配糖体薬、カロチノイド、セファロスポリン、避妊薬、細胞増殖抑制薬、画像診断用剤、利尿薬、エンケファリン、フィブリン溶解素、成長ホルモン、免疫抑制剤、インスリン、インターフェロン、乳汁分泌抑制剤、脂質低下剤、リンフォカイン、神経薬、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、向精神薬、プロテアーゼインヒビター、核磁気共鳴画像診断剤、生殖制御ホルモン、鎮静薬、性ホルモン、ソマトスタチン、ステロイドホルモン薬、ワクチン、血管拡張剤およびビタミンがある。この発明の方法では単一の固体製剤用薬剤が最も頻繁に用いられるが、この発明の方法における2種または3種以上の固体製剤用薬剤の混合物を使用することも考えられる。2種以上の薬剤の混合物は、流体キャリアーに不溶性の2種の固体抗かび剤のような固体製剤用薬剤の混合物、またはフェノフィブラートのようなフィブラートと水性流体キャリアー中に貧溶性の染料との混合物であることができる。或いはまた、この混合物は、流体キャリアー中に不溶性または貧溶性の固体薬剤(例えば、水性流体キャリアーに貧溶性のフェノフィブラートのようなフィブラート)、並びに(例えば、水性流体キャリアーに可溶性の染料のような)流体キャリアーに可溶性の固体薬剤の混合物であることができる。フェノフィブラートおよび染料を使用しているこの発明の方法の生成物は、錠剤またはカプセルまたは凍結乾燥ウエーハのような経口用剤形に調合することができ、そして高脂血症および異常または病的な高血中脂質濃度に関係した状態の治療に使用することができる。
【0223】
この発明で有用な代表的貧水溶性薬物の非限定例に次のものがある:アルベンダゾール(albendazole)、アルベンダゾールスルホキシド、アルファキサロン、アセチルジゴキシン、アシクロビア類似体、アルプロスタジル、アミノフォスチン(aminofostin)、アニパミル、抗トロンビンIII、アテノロール、アジドチミジン、ベクロブラート(beclobrate)、ベクロメタゾン、ベロマイシン(belomycin)、ベンゾカインとその誘導体、ベーターカロチン、ベーターエンドルフィン、ベーターインターフェロン、ベザフィブラート(bezafibrate)、ビノバム(binovum)、ビペリデン、ブロマゼパム、ブロモクリプチン(bromocryptine)、ブシンドロール(bucindolol)、ブフロメジル(buflomedil)、ブピバカイン、ブスルファン、カドララジン(cadralazine)、カンプトテシン(camptothesin)、カンタキサンチン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルボプロスト(carboprost)、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゼドン(cefazedone)、セフルオロキシム(cefluoroxime)、セフメノキシム、セホペラゾン、セホキシチン、セフスロジン、セフチゾキシム、クロラムブシル、クロモグリシン酸(chromoglycinic acid)、シクロニカート(ciclonicate)、シグリタゾン(ciglitazone)、クロニジン、コルテキソロン、コルチコステロン、コルチゾル、コルチゾン、シクロホスファミド、シクロスポリンAおよび他のシクロスポリン類、シタラビン、デソクリプチン(desocryptin)、デソゲステレル(desogestrel)、酢酸エステルのようなデキサメタゾンエステル、デゾシン(dezocine)、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジデオキシアデノシン、ジデオキシイノシン、ジギトキシン、ジゴキシン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロエルゴドキシン、ジルチアゼム、ドーパミン拮抗薬、ドキソルビシン、エコナゾール、エンドララジン(endralazine)、エンケファリン、エナラプリル、エポプロステノール(epoprostenol)、エストラジオール、エストラムスチン、エトフィブラート(etofibrate)、エトポシド(etoposide)、第ix因子、第viii因子、フェルバマート(felbamate)、フェンベンダゾール(fenbendazole)、フェノフィブラート、フルナリジン、フルルビプロフェン、5−フルオロウラシル、フルラゼパム、フォスフォマイシン(fosfomycin)、フォスミドマイシン(fosmidomycin)、フロセミド、ガロパミル(gallopamil)、ガンマーインターフェロン、ゲンタマイシン、ゲペフリン(gepefrine)、グリクラジド、グリピジド(glipizide)、グリセオフルビン、ハプトグロブリン(haptoglobulin)、B型肝炎ワクチン、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、イブプロキサム(ibuproxam)、インジナビア(indinavir)、インドメタシン、インダミド(indamide)のようなヨウ素化芳香族x線コントラスト剤、臭化イプラトロピウム、ケトコナゾール(ketoconazole)、ケトプロフェン、ケトチフェン、フマル酸ケトチフェン、K−ストロファンチン、ラベタロール、ラクトバシラスワクチン、リドカイン、リドフラジン(lidoflazin)、リスリド、マレイン酸水素リスリド、ロラゼパム、ロバスタチン(lovastatin)、メフェナミン酸(mefenamic acid)、メルファラン、メマンチン(memantin)、メスレルジン(mesulergin)、メテルゴリン(metergoline)、メトトレキセート、メチルジゴキシン、メチルプレドニゾロン、メトロニダゾール、メチソプレノール(metisoprenol)、メチプラノロール(metipranolol)、メトケファミド(metkephamide)、メトラゾン、メトプロロール、酒石酸メトプロロール、ミコナゾール、硝酸ミコナゾール、ミノキシジル、ミソニダゾール(misonidazol)、モルシドミン(molsidomin)、ナドロール、ナフィベリン(nafiverine)、ナファザトロム(nafazatrom)、ナプロキセン、天然インスリン、ネサピジル(nesapidil)、ニカルジピン、ニコランジル、ニフェジピン、ニルジピン(niludipin)、ニモジピン(nimodipine)、ニトラゼパム、ニトレンジピン(nitrendipine)、ニトロカンプトテシン(nitrocamptothesin)、9−ニトロカンプトテシン、オキサゼパム、オクスプレノロール、オキシテトラサイクリン、ペニシリンG ベネタミン(benethamine)、ペニシリンOのようなペニシリン類、フェニルブタゾン、ピコタミド(picotamide)、ピンドロール、ピポスルファン、ピレタニド、ピリベジル(piribedil)、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラスミノゲン原性活性化剤、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレグネノロン、プロカルバシン(procarbacin)、プロカテロール、プロゲステロン、プロインスリン、プロパフェノン(propafenone)、プロパノロール(propanolol)、プロペントフィリン(propentofyllin)、プロポフォル(propofol)、プロプラノロール、リファペンチン(rifapentin)、シンバスタチン(simvastatin)、半合成インスリン、ソブレロール(sobrerol)、ソマストリン(somastotine)とその誘導体、成長ホルモン、スチラミン(stilamine)、塩酸スルフィナロール(sulfinalol hydrochloride)、スルフィンピラゾン、スロクチジル(suloctidil)、スプロフェン、スルプロストン(sulproston)、合成インスリン、タリノロール(talinolol)、タキソール(taxol)、タキソテレ(taxotere)、テストステロン、プロピオン酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テトラカン(tetracane)HI、チアラミド(tiaramide)HCl、トルメチン、トラニラスト、トリキラー(triquilar)、トロマンタジン(tromantadine)HCl、ウロキナーゼ、バリウム(valium)、ベラパミル、ビダラビン、ビダラビンリン酸ナトリウム塩、ビンブラスチン、ビンブリン(vinburin)、ビンカミン、ビンクリスチン、ビンデシン(vindesine)、ビンポセチン、ビタミンA、琥珀酸ビタミンEおよびx線コントラスト剤。薬物は中性種または塩基性若しくは酸性の種、並びに水性緩衝剤の存在下にあるような塩類であることができる。
【0224】
この発明で有用な代表的な貧溶性薬物の非限定例には、また、次のものがある:アシクロビア、アルプラゾラム、アルトレタミン(altretamine)、アミロリド、アミオダロン、メタンスルホン酸ベンズトロピン、ブプロピン(bupropion)、カベルゴリン(cabergoline)、カンデサルタン(candesartan)、セリバスタチン(cerivastatin)、クロルプロマジン、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、シサプリド(cisapride)、クラリトロマイシン(clarithromycin)、クロニジン、クロピドグレル(clopidogrel)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、シプロヘプタジン、デラビルジン(delavirdine)、デスモプレシン、ジルチアゼム、ジピリダモール、ドラセトロン(dolasetron)、マレイン酸エナラプリル、エナラプリラト(enalaprilat)、ファモチジン、フェロジピン(felodipine)、フラゾリドン、グリピジド(glipizide)、イルベサルタン(irbesartan)、ケトコンゾール(ketoconazole)、ランソプラゾール(lansoprazole)、ロラタジン(loratadine)、ロキサピン(loxapine)、メベンダゾール、メルカプトプリン、乳酸ミルリノン(milrinone lactate)、ミノサイクリン、ミトキサントロン、メタンスルホン酸ニルフィナビア(nilfinavir mesylate)、ニモジピン(nimodipine)、ノルフロキサシン、オランザピン(olanzapine)、オメプラゾール(omeprazole)、ペンシクロビア(penciclovir)、ピモジド、タコリムス(tacolimus)、クアゼパム(quazepam)、ラロキシフェン(raloxifene)、リファブチン(rifabutin)、リファンピン、リスペリドン(risperidone)、リザトリプタン(rizatriptan)、サキナビア(saquinavir)、セルトラリン(sertraline)、シルデナフィル(sildenafil)、アセチル−スルフイソキサゾール、テナゼパム(temazepam)、チアベンダゾール、チオグアニン、トランドラプリル(trandolapril)、トリアムテレン、トリメトレキセート(trimetrexate)、トログリタゾン(troglitazone)、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、ベラパミル、硫酸ビンブラスチン、マイコフェノラート(mycophenolate)、アトバクオン(atovaquone)、プログアニル、セフタジジム、セフロキシム(cefuroxime)、エトポシド(etoposide)、テルビナフィン(terbinafine)、サリドマイド、フルコナゾール(fluconazole)、アムサクリン(amsacrine)、ダカルバジン、テニポシド(teniposide)およびアセチルサリシレート。
【0225】
この発明で固体としての適した製剤用薬剤に、X線コントラスト剤、核磁気共鳴撮像(MRI)コントラスト剤、光撮像コントラスト剤および光音響撮像剤のような診断用撮像剤がある。有用なX線コントラスト剤は、例えばエチル−3,5−ビスアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート、エチル(3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセテート、エチル−2−(ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)ブチレート、6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨードベンゾエートのようなヨウ化芳香族酸誘導体である。有用なMRIコントラスト剤には酸化鉄粒子がある。有用な光撮像コントラスト剤を挙げると、インドシアニングリーンのような貧水溶性染料、赤外吸収性染料、赤外レーザー染料のような赤外発光染料、蛍光染料、および可視光を吸収および/または放射する染料を含めて染料および顔料がある。光を吸収し、そして光を熱に変換する染料が、光音響撮像コントラスト剤として有用である。
【0226】
1つの好ましい面において、本発明は、流体キャリアー中に、場合によっては表面活性物質の存在下で、所望粒度を持つ固体貧水溶性製剤化合物の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、次の:
(a)固体貧水溶性製剤化合物、流体キャリアー、第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
(b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する、該第一材料の小粒状物と該固体貧水溶性製剤化合物の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
(c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体貧水溶性製剤化合物から分離し;そして
(d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、該第一材料の微粉砕物体は破壊され、かつ該第二材料の微粉砕物体により浸蝕され、該第二材料の微粉砕物体は上記微粉砕方法における破壊および浸蝕に対して本質的に抵抗性であり、そしてSは第二材料の微粉砕媒体物体の粒度よりも小さい
上記の方法を提供する。
【0227】
この発明のもう1つの態様において、本発明者は、所望粒度を持つ、固体貧水溶性製剤化合物の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、次の:
(a)固体貧水溶性製剤化合物、流体キャリアー、破壊靭性KC1を有する第一材料の複数の微粉砕物体および破壊靭性KC2を有する第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
(b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する、該第一材料の小粒状物と該固体貧水溶性製剤化合物の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
(c)該分散物を、Sより大きい粒度を有する、全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体貧水溶性製剤化合物から分離し;そして
(d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む、流体を含まない相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、KC2がKC1より大きい
上記の方法を発見した。
【0228】
この発明のもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体物体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC1がKC2より小さく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の媒体の粒度より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0229】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の微粉砕媒体物体と破壊靭性KC2を有する第二材料の微粉砕媒体物体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の微粉砕媒体物体の粒度より小さいそのような混合物から成ることができる。
【0230】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、破壊靭性KC1を有する第一材料の媒体と破壊靭性KC2を有する第二材料の媒体との混合物であって、KC2がKC1より大きく、かつ第一材料の媒体の粒度が第二材料の媒体の粒度と同じであるそのような混合物から成ることができる。
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Lを有する第一材料と脆性指数B2Lを有する第二材料との媒体の混合物であって、B1LがB2Lより小さく、そしてB1LおよびB2Lが約5.5未満であるそのような混合物から成ることができる。
【0231】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、脆性指数B1Hを有する第一材料と脆性指数B2Hを有する第二材料との媒体の混合物であって、B1HがB2Hより大きく、そしてB1HおよびB2Hは共に約5.5より大きいそのような混合物から成ることができる。
【0232】
この発明のさらにもう1つの態様において、微粉砕媒体物体は、硬度Hを有する第一材料と硬度Hを有する第二材料との媒体の混合物であって、HがHより小さいそのような混合物から成ることができる。
【0233】
もう1つの好ましい面において、本発明は、流体キャリアー中に、場合によっては表面活性物質の存在下で、所望粒度を持つ、固体貧水溶性製剤化合物の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、次の:
a)固体貧水溶性製剤化合物、流体キャリアー、破壊靭性KC1を有する第一材料の複数の微粉砕物体および破壊靭性KC2を有する第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望平均粒度を有する、該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;そして
c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての微粉砕物体および固体貧水溶性製剤化合物の粒子から分離する
工程を含み;
この場合、KC2はKC1より大きい
上記の方法を提供する。
【0234】
もう1つの好ましい面において、本発明は、場合によって表面活性物質の存在下において、所望粒度を持つ、固体貧水溶性製剤化合物の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、次の:
a)固体貧水溶性製剤化合物、流体キャリアー、破壊靭性KC1を有する第一材料の複数の微粉砕物体および破壊靭性KC2を有する第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望平均粒度を有する、該第一材料の小粒状物と該固体貧水溶性製剤化合物の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中の分散物を生成させ;
c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての微粉砕物体および固体貧水溶性製剤化合物の粒子から分離し;そして
d)該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む、流体を含まない相乗作用性混合物を形成する
工程を含み;
この場合、KC2はKC1より大きい
上記の方法を提供する。
【0235】
小媒体は約0.005〜3mmの粒度範囲であることができる。微粉砕には、小媒体は粒度が0.005〜0.5mmであるのが好ましく、0.005〜0.3mmがさらに好ましい。
【0236】
意図される用途に、そして相乗作用性混合物中の固体と微粉砕材料に依存して、相乗作用性混合物としてこの発明に従って製造される微粉砕された固体の粒子および微粉砕媒体物体の粒状物は2マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満、さらに好ましくは0.5マイクロメートル未満の粒子粒度および粒状物粒度を有することができる。ある種の面では、粒子および粒状物の好ましい粒度は0.4マイクロメートル未満であるのがより好ましく、0.3マイクロメートル未満であるのがさらに好ましく、0.2マイクロメートル未満であるのがなおもさらに好ましく、そして0.1マイクロメートル未満であるのがそれ以上さらに好ましい。さらに他の面では、粒子および粒状物の好ましい粒度はより好ましくは0.05マイクロメートル未満であり、最も好ましくは0.01マイクロメートル未満である。
【0237】
製剤用薬剤の小粒子と第一材料の微粉砕媒体物体の小粒状物との相乗作用性混合物として本発明に従って製造される製剤組成物が、例えば1種または2種以上の医薬品添加剤および結合剤のような1種または2種以上の製剤上許容できるキャリアーと混合することによってさらに調合することができ、そしてその組成物は、病気の治療に関して、および診断法に関してこの技術分野で公知の方法に従ってヒトのような哺乳動物に投与するのに適した錠剤または軟膏剤等のような剤形に転化することができる。剤形として、炭酸カルシウム、滑石、酸化亜鉛、その他の微細固体材料を含むもののような製剤ペースト;制御放出性薬剤;持効性薬剤;マトリックス放出性薬剤;パッチ剤;経皮性接着剤材料;診断薬;錠剤;ピル;乳剤;軟膏剤;座剤;ペッサリー;粉剤;ペースト;ゼリー;カプセル;顆粒剤;カシェ剤;トローチ剤;および香錠を挙げることができる。
【0238】
投与方法としては、治療または診断を受ける体内に経口投与、局所投与、体内移植および注射する方法を挙げることができる。
この発明の微粉砕組成物および方法を、以下の非限定実施例によりさらに説明する。
【0239】
実施例1
0.8リットルの粉砕容器または微粉砕室を備えるPerl Mill PML−H/V媒体ミルに、スクリーンギャップ0.3mm、スクリーン中ギャップ数10個の4つの有孔ポリウレタンディスクを配置する。媒体ミル容器および微粉砕室を窒素でパージし、それに、小粒度微粉砕媒体物体と同じくらいの粒度の微粉砕媒体物体である650ミクロン(0.65mm)直径の架橋ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)ビーズ200グラムおよび100ミクロンの二酸化ケイ素(Nyacol Products Inc.からのNyacol 9950)を装填する。ジャケットを通過する冷却水で冷却されている、上記媒体ミルの微粉砕室に蠕動ポンプで接続されている攪拌機付きタンク貯槽に、2キログラムの流体キャリアーとしての水、その流体キャリアーに可溶性の追加医薬品添加剤である260グラムのスクロース、78グラムの、表面活性物質としてのLipoid E−80(レシチンまたはリン脂質物質)、および260グラムの水不溶性固体薬物物質としての固体フェノフィブラートのプレミックスを装填する。上記の微粉砕されるべきプレミックススラリーをかき混ぜ機で混合し、そして蠕動ポンプにより攪拌機付き保持容器から微粉砕容器中に微粉砕室を通して約30キログラム/時のポンプ流量で給送し、同時に上記媒体ミルを運転して、固体フェノフィブラートを、上記水性流体中の懸濁液またはスラリーとしての、約0.84マイクロメートルの容量重み付き平均直径を有する小粒子または微粒子に微粉砕する。上記予備冷却スラリーを媒体ミルを通して再循環させる。上記保持容器中における流体キャリアー中の生成物粒子の粒度分布は上記小粒度ビーズよりも小さい。微粉砕プロセスの終わりに、このスラリーを上記0.3mmスクリーンを通して濾過し、そしてシリカ粒子に加えて生成物の微細な懸濁液を採収する。この懸濁液は微粉砕されたフェノフィブラート粒子を含んでいる。上記流体キャリアー中に懸濁された生成物分散液中にはスチレン系微粉砕媒体物体は含まれていない。
【0240】
実施例2
実施例1の方法を、プレミックスに0.26グラムのPluoronicTM F68を第二表面活性剤として加えて繰り返す。微粉砕プロセスの終わりに、スラリーを0.3mmスクリーンを通して濾過し、そしてシリカ粒子に加えて生成物の微細な懸濁液を採収する。この懸濁液は微粉砕されたフェノフィブラート粒子を含んでいる。流体キャリアー中に懸濁された生成物分散液中にはスチレン系微粉砕媒体物体は含まれていない。
【0241】
実施例3
実施例2の方法を、二酸化ケイ素(Nyacol Products Inc.からのNyacol 9950)に代えて100グラムの100ミクロン架橋ポリグルタル酸−ポリラクテート共重合体ビーズを小粒度微粉砕媒体物体として用いて繰り返す。微粉砕プロセスの終わりに、スラリーを0.3mmスクリーンを通して濾過し、そして架橋ポリグルタル酸−ポリラクテート共重合体粒子に加えて生成物の微細な懸濁液を採収する。流体キャリアー中に懸濁された生成物分散液中にはスチレン系微粉砕媒体は含まれていない。

Claims (47)

  1. 所望粒度を持つ固体基材の小粒子および第一材料の小粒状物を含む相乗作用性混合物を製造する方法であって、
    a)固体基材、流体キャリアー、第一材料の複数の微粉砕物体および第二材料の複数の微粉砕物体のプレミックスを含む含有物を媒体ミルの微粉砕室に与え;
    b)該媒体ミルを作動させて該固体基材を粉砕し、かつ第一材料の該微粉砕物体の少なくとも一部分を砕いて、粒度Sに等しいかまたはそれ以下の所望粒度を有する該第一材料の小粒状物と該固体基材の小粒子との相乗作用性混合物を含む該流体キャリアー中分散物を生成させ;
    c)該分散物をSより大きい粒度を有する全ての残留微粉砕物体、微粉砕物体の破片および固体基材から分離し;そして
    d)場合によって、該分散物から該流体キャリアーを除去して該粒子および該小粒状物を含む乾燥相乗作用性混合物を形成する
    工程を含み;
    この場合、該第一材料の微粉砕物体は破壊され、かつ該第二材料の微粉砕物体により浸蝕され、該第二材料の微粉砕物体は上記微粉砕方法における破壊および浸蝕に対して本質的に抵抗性であり、そしてSは第二材料の微粉砕物体の粒度よりも小さい
    上記の方法。
  2. プレミックスが1種または2種以上の表面活性物質を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 1種または2種以上の表面活性物質を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 固体基材が固体顔料、固体写真材料、固体化粧品成分、固体支持体材料、固体トナー材料、固体粉砕材料および固体製剤用薬剤より成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
  5. 固体基材が製剤用薬剤である、請求項1に記載の方法。
  6. 製剤用薬剤が貧水溶性または水不溶性薬物である、請求項5に記載の方法。
  7. 製剤用薬剤が、麻酔薬、エース阻害薬、抗血栓薬、抗アレルギー薬、抗菌薬、抗生物質、抗凝血薬、抗癌剤、抗糖尿病薬、抗高血圧薬、抗かび薬、抗低血圧薬、抗炎症薬、抗有糸分裂薬、抗片頭痛薬、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、抗トロンビン薬、抗ウイルス薬、β−遮断薬、気管支鎮痙剤、カルシウム拮抗薬、心臓血管薬、強心性配糖体薬、カロチノイド、セファロスポリン、避妊薬、細胞増殖抑制薬、画像診断薬、利尿薬、エンケファリン、フィブリン溶解素、成長ホルモン、免疫抑制剤、インスリン、インターフェロン、乳汁分泌抑制剤、脂質低下剤、リンフォカイン、神経薬、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、向精神薬、プロテアーゼインヒビター、核磁気共鳴画像診断剤、生殖制御ホルモン、鎮静薬、性ホルモン、ソマトスタチン、ステロイドホルモン薬、ワクチン、血管拡張剤およびビタミンより成る群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
  8. 製剤用薬剤がフェノフィブラート、ニトロカンプトテシンおよびシクロスポリンより成る群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
  9. 流体キャリアーが、水、滅菌水、注射用蒸留水、1種または2種以上の塩の水溶液、1種または2種以上の水性緩衝剤の溶液、リン酸塩緩衝食塩水、糖含有水、1種または2種以上の製剤用添加剤の水溶液、1種または2種以上の炭水化物の水溶液、1種または2種以上の重合体の水溶液、1種または2種以上の表面活性物質の水溶液、液体表面活性物質、エタノール、PEG−含有水、およびこれらキャリアーの混合物より成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
  10. 流体キャリアーが無菌である、請求項1に記載の方法。
  11. 表面活性物質がリン脂質、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびコロイドクレーより成る群から選ばれる、請求項2または3に記載の方法。
  12. 表面活性物質がリン脂質である、請求項2または3に記載の方法。
  13. リン脂質がLipoid E80、Lipoid EPC、Lipoid SPC、DMPG、Phospholipon 100H、水素化大豆ホスファチジルコリン、Phospholipon 90H、Lipoid SPC−3およびそれらの混合物より成る群から選ばれる、請求項12に記載の方法。
  14. 流体キャリアーがガス、液化圧縮ガス、超臨界流体、1種または2種以上の溶解医薬品添加剤を含んでいる超臨界流体、および1種または2種以上の表面活性物質を含んでいる超臨界流体より成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
  15. 微粉砕方法がバッチ式である、請求項1に記載の方法。
  16. 微粉砕方法が連続式である、請求項1に記載の方法。
  17. 第一材料が、シリカ、炭酸カルシウム、大理石、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ドロマイト、石灰、マグネシア、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、コロイドシリカ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、生分解性重合体、生体適合性重合体、生体適合性重合体の複合材、生分解性重合体の複合材、重合体樹脂、イオン交換樹脂、二酸化ケイ素およびガラスビーズより成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
  18. 砕かれる第一材料の微粉砕物体の部分が0.01〜100%である、請求項1に記載の方法。
  19. 所望粒度Sが10マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  20. 所望粒度Sが5マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  21. 所望粒度Sが2マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  22. 所望粒度Sが1マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  23. 所望粒度Sが500ナノメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  24. 第一材料の複数の微粉砕物体が第二材料の複数の微粉砕物体の1:1000〜1000:1倍である、請求項1に記載の方法。
  25. 第一材料の複数の微粉砕物体が第二材料の複数の微粉砕物体の1:100〜100:1倍である、請求項1に記載の方法。
  26. 第一材料の複数の微粉砕物体が第二材料の複数の微粉砕物体の1:10〜10:1倍である、請求項1に記載の方法。
  27. 媒体ミルが固体の融点より低い温度に保持される、請求項1に記載の方法。
  28. 小粒子および小粒状物の粒度が2マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  29. 小粒子および小粒状物の粒度が1マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  30. 小粒子および小粒状物の粒度が0.5マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  31. 小粒子および小粒状物の粒度が0.4マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
  32. 分離が、フィルター、媒体ミル中のセパレーター、媒体ミルの出口部にあるセパレーター、ディプスフィルター、メッシュ、スクリーン、篩、牛乳用フィルターおよび粒子床より成る群から選ばれる分離装置を用いる、請求項1に記載の方法。
  33. 第一材料が破壊靭性KC1を有し、また第二材料が破壊靭性KC2を有し、ここでKC1はKC2より小さい、請求項1に記載の方法。
  34. C1が1未満である、請求項33に記載の方法。
  35. C1が1.5未満である、請求項33に記載の方法。
  36. C1が2未満である、請求項33に記載の方法。
  37. C2がKC1より少なくとも1.1倍大きい、請求項33に記載の方法。
  38. C2がKC1より少なくとも1.3倍大きい、請求項33に記載の方法。
  39. C2がKC1より少なくとも1.5倍大きい、請求項33に記載の方法。
  40. 第一材料が脆性指数B1Lを有し、また第二材料が脆性指数B2Lを有し、ここでB1LはB2Lより小さく、そしてB1LおよびB2Lは約5.5未満である、請求項1に記載の方法。
  41. 第一材料が脆性指数B1Hを有し、また第二材料が脆性指数B2Hを有し、ここでB1HはB2Hより大きく、そしてB1HおよびB2Hは共に約5.5より大きい、請求項1に記載の方法。
  42. 第一材料が硬度Hを有し、また第二材料が硬度Hを有し、ここでHはHより小さい、請求項1に記載の方法。
  43. 第一材料の微粉砕物体がイオン交換樹脂から成る、請求項1に記載の方法。
  44. 第二材料の微粉砕物体がイオン交換樹脂から成る、請求項1に記載の方法。
  45. 請求項5に記載の方法で製造された混合物を含む製剤組成物。
  46. 製剤上許容できるキャリアーをさらに含む、請求項45に記載の製剤組成物。
  47. 哺乳動物に有効量の請求項45または46に記載の製剤組成物を投与する工程を含む哺乳動物の治療方法。
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