WO2007004649A1 - 高結晶銀粉及びその高結晶銀粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
微粒領域の粉粒を含む高結晶性の銀粉であって、良好な粒度分布を備える高結晶性銀粉の製造方法及びその製造方法で得られた高結晶性銀粉を提供することを目的とする。この目的を達成するため、銀粉を製造する方法として、ゼラチンと硝酸銀と硝酸とを水に溶解させた液温45°C~55°Cの第1水溶液と、エルソルビン酸及び/又はアスコルビン酸と水溶性有機酸とを溶解させた第2水溶液とを調製し、第1水溶液に対し第2水溶液を緩やかに添加し、添加が終了した後、攪拌して粒子成長を行い銀粒子を生成し、その後、静置して銀粒子を沈降させた後に、上澄みを廃棄し、濾過、洗浄を行ない高結晶銀粉を得ることを特徴とした高結晶銀粉の製造方法を採用する。
Description
明 細 書
高結晶銀粉及びその高結晶銀粉の製造方法
技術分野
[0001] 本件発明は、銀粉の中でも、高結晶銀粉及びその高結晶銀粉の製造方法に関す る。
背景技術
[0002] 従来から、高結晶性 (結晶子径が大)の銀粉は、焼成時の耐熱収縮性能に優れると して、銀インクや銀ペーストにカ卩ェされ、広く使用されてきた。例えば、セラミック基板 と同時焼成して回路形成に用いる等の相対的に高温での焼成用途の他、プリント配 線板の配線回路、ビアホール充填、部品実装用接着剤等の種々の樹脂成分と混合 して硬化させて用いるような用途である。特に、回路又は電極等の配線形成に用いる 銀インクや銀ペーストに用いられる銀粉には、導体としての形状精度を向上させる観 点から、焼成時の耐熱収縮性能に優れる銀粉が要求されてきた。
[0003] 銀粉の持つ結晶性は、その製造方法に負うところが大きい。例えば、銀粉を製造す る方法には、特許文献 1 (特開 2003— 286502号公報)に開示されているような、ァ トマイズ法を用いることが可能である。し力 ながら、このアトマイズ法で得られる銀粉 は、結晶性の高い銀粉を得ることが出来ても、微粒で且つシャープな粒度分布を備 える銀粉を得ることが困難である。確かに、分級作業を繰り返し行うことにより、シヤー プな粒度分布を備える製品としての銀粉を得ることが出来ると考えられるが、製造コス ト的な観点から見れば、全く好ましくない。従って、以下に述べる湿式製造法により銀 粉を得ることが試みられてきた。
[0004] 例えば、特許文献 2 (特公昭 57— 21001号公報)には、硝酸銀溶液とホルマリンと の混合水溶液に、析出銀量に対して 0.:!〜 5. Owt%の脂肪酸を添加攪拌し、これ にアルカリ性溶液を添加し銀微粉末を析出させる方法が開示されている。そして、こ の特許文献 2に開示の製造方法では、銀微粉末として、平均粒子径 0. 8〜0. 9 μ η の製品が得られるとある。
[0005] また、特許文献 3 (特開平 4— 323310号公報)には、金属、合金、金属塩などを含
む水性溶媒中に溶解し、それに塩基を添加して pH調節し、そこに還元剤を加えて金 属微粉末を析出させる方法が開示され、液温を 10〜30°Cの範囲として球状の微粒 子とする。また、液温を 50°C以上にして、多面体状の金属微粉末を得る方法が開示 されている。この方法に於いて、得られる金属粉の粒度分布は、略 0. 3〜2. O z mと されている。
[0006] 以上の特許文献 2及び特許文献 3に開示の製造方法で得られる銀粉は、その析出 結晶の制御がなされていないため、焼結加工を行った場合の耐熱収縮性が大きかつ た。そこで、この問題を解決すベぐ特許文献 4 (特開 2000— 1706号公報)には、硝 酸銀水溶液と、アクリル酸モノマーを Lァスコルビン酸水溶液に溶解した液とを、混合 と同時に反応させ、その反応時に紫外線照射することを特徴とする高結晶体銀粒子 の製造方法が開示されている。この製造方法で得られる、高結晶体銀粒子は、粒子 径が 2〜4 μ mで占められる単結晶体及び準結晶体の高結晶体からなるもので、 2 μ m以下だと焼成時の収縮率が大きぐ 4 μ m以上になると導体表面の凹凸が大きく電 気回路としてロスが多くなる等の問題があると明記されている。そして、ここで言う高結 晶体銀粒子とは、 X線回折法による(1. 1. 1)ピークの半値幅から計算された結晶子 サイズ力 ¾00 A以上のものを指している。
[0007] また、特許文献 5 (特開 2003— 49202号公報)には、結晶子径が 400〜60θΑ、 タップ密度が 5g/cm3以上、比表面積が 0. 15 m2/g以下である銀粒子が開示され ている。そして、この銀粒子は、銀イオンを含有するアルカリ性水溶液 (水酸化アンモ ニゥム水溶液 +水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選ばれる 1種以 上)と過酸化水素水溶液 (必要に応じて脂肪酸、脂肪酸塩およびそれらの誘導体か らなる群から選ばれる 1種以上を添加)とを反応させることを特徴とする製造方法によ り得られるものであること力明記されてレ、る。そして、ここで得られる銀粒子の結晶子 径の範囲は、 400〜600Aであり、 400A未満では高温焼成導体ペースト用の銀粒 子としては結晶性が低ぐ 600 Aを超えると銀粒子形状が不安定化する旨を明記し ている。なお、特許文献 5には、銀粒子のタップ密度については 5g/cm3以上、銀粒 子の比表面積については 0. 15m2Zg以下という記述が存在する力 双方の要素と も、本来粒子径との関係が前提にあるべきなのに、粒子径に関する記述が全く存在
しないため、粉体を特定する要素として不十分である。
[0008] 特許文献 1 :特開 2003— 286502号公報
特許文献 2:特公昭 57— 21001号公報
特許文献 3 :特開平 4— 323310号公報
特許文献 4:特開 2000 - 1706号公報
特許文献 5:特開 2003— 49202号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 高結晶性銀粉に関する上記特許文献 4に開示の製造方法で用いる還元剤としての Lァスコルビン酸は、高価であるが故に製品価格を上昇させる要因となる。そして、還 元剤にァスコルビン酸を主体的に用レ、、還元反応時に紫外線照射した場合に得られ る高結晶体銀粒子は、粒子径と結晶子径との値がほぼ比例する関係にあり、粒子径 2 μ m〜4 μ mの大粒の粉粒を得ようとすると、一定の安定した品質の製品を得るこ とが可能である。ところ力 粒子径が 2 / m未満で且つ結晶子径が 400 Aを超える微 粒銀粉を得ようとしても、結晶子径のバラツキが大きぐ工程安定性に欠ける製造方 法であり、 2 / m未満の微粒銀粉の焼成時の収縮率が大きくなり、微粒では良好な耐 熱収縮性を得ることが出来ない場合が多く確認された。
[0010] また、特許文献 5に開示の製造方法で用いる溶液は、アンモニア水溶液及び硝酸 アンモニゥムという臭気の強い薬品を用いるため作業環境の劣化を招き、設備内に ある銅製部品の損傷を加速させるという欠点がある。そして、力価の変動の激しい過 酸化水素水溶液を用いるため、溶液の品質安定性に欠け、得られる銀粉の平均粒 子径のバラツキが大きぐ粒子径、粒度分布の制御が困難であった。
[0011] 以上のことから、微粒且つ高結晶性の銀粉が求められてきた力 市場の要求を充 分に満たすような高結晶銀粉は存在しなかった。
課題を解決するための手段
[0012] そこで、上記問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、以下に述べる製造方法 で得られた銀粉は、従来の銀粉には無かった高結晶性と微粒化レベルを備えること が分かった。
[0013] 高結晶銀粉の製造方法: 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法は、ゼラチンと硝 酸銀と硝酸とを水に溶解させた第 1水溶液と、エルソルビン酸と水溶性有機酸とを溶 解させた第 2水溶液とを調製し、第 1水溶液に対し第 2水溶液を緩やかに添加し、添 加が終了した後、攪拌して粒子成長を行い銀粒子を生成し、その後、静置して銀粒 子を沈降させた後に、上澄みを廃棄し、濾過、洗浄を行ない高結晶銀粉を得ることを 特徴とするものである。
[0014] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法において、前記第 1水溶液中におけるゼラ チン濃度は、 2g/l〜: l Og/lであることが好ましい。
[0015] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法にぉレ、て、前記第 1水溶液中における硝 酸銀濃度は、銀として 50g/l〜: 150g/lであることが好ましい。
[0016] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法にぉレ、て、前記第 1水溶液中におけるフリ 一硝酸濃度は、硝酸水溶液を調整して 40g/l〜: 120g/lとなるように添加することが 好ましい。
[0017] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法において、前記第 2水溶液中におけるェ ルソルビン酸濃度は、 45g/l〜: 120g/lであることが好ましい。
[0018] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法にぉレ、て、前記第 2水溶液中における水 溶性有機酸濃度は、 lg/l〜50g/lであることが好ましい。
[0019] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法において、前記水溶性有機酸は、 DL—リ ンゴ酸、クェン酸、蟻酸、吉草酸、イソ吉草酸、コハク酸、プロピオン酸、乳酸、アジピ ン酸のいずれ力 1種又は 2種以上を組み合わせたものであることが好ましい。
[0020] 高結晶銀粉: 本件発明に係る高結晶銀粉は、銀イオン含有溶液に対し還元剤とし てのエルソルビン酸及び Z又はァスコルビン酸と水溶性有機酸とを添加して還元析 出させて得た銀粉である。
[0021] そして、上記高結晶性銀粉は、一次粒子径が 0. 07 μ m〜4. 5 μ m、結晶子径が 2
OOA以上であることを特徴とするものである。
[0022] また、上記高結晶性銀粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で測定すると体 積累積平均粒子径 D が 0. Ι μ π!〜 5. O z m、粒度分布指標である(D — D ) /
50 90 10
D の値が 1. 5以下という粉体特性を示すことが好ましい。
[0023] 更に、本件発明に係る高結晶銀粉は、一定の割合で粗粒を含有するのが通常であ るが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積最大粒子径 D 力 6.
max
O x m以下となる。
[0024] また、本件発明に係る高結晶銀粉の比表面積は、 0. 2m2Zg以上であることが好ま しい。
発明の効果
[0025] 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法は、還元剤と水溶性有機酸とを併用するこ とで、微粒から大粒子径の高結晶銀粉の製造に好適である。特に、還元反応時の温 度変動、濃度変動等の工程変動に対しての影響を受けにくぐ高収率で高結晶銀粉 の製造を可能とする。
[0026] そして、本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法で得られる高結晶銀粉は、レーザ 一回折散乱式粒度分布測定法による体積累積平均粒子径 D が 0. Ι μ π!〜 5. Ο μ
50
m、結晶子径が 200 Α以上、粒度分布指標である(D - D ) /D の値が 1 . 5以
90 10 50
下と言う粉体特性を備えている。この粉体特性から明らかなように、従来存在した粒 子径範囲(2 μ m〜5 μ m)におレ、ては、従来に無レ、レベルのシャープな粒度分布を 備えている。そして、粒子径 2 z m未満の製品であっても、安定して大きな結晶子径 を備え且つシャープな粒度分布を備えている。従って、本件発明に係る高結晶銀粉 を用いて銀ペーストを製造し、その銀ペーストで形成した導体膜は、耐熱収縮性に優 れ、且つ、導体膜の表面粗さが滑らかなものとなる。
発明を実施するための最良の形態
[0027] 以下、本発明に係る高結晶銀粉及びその製造方法を実施するための最良の形態 について説明する。
[0028] 高結晶銀粉の製造方法: 本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法は、ゼラチンと硝 酸銀と硝酸とを水に溶解させた第 1水溶液と、エルソルビン酸及び Z又はァスコルビ ン酸と水溶性有機酸とを溶解させた第 2水溶液とを調製し、第 1水溶液に対し第 2水 溶液を緩やかに添加し、添加が終了した後、攪拌して粒子成長を行い銀粒子を生成 し、その後、静置して銀粒子を沈降させた後に、上澄みを廃棄し、濾過、洗浄を行な レ、高結晶銀粉を得ることを特徴とするものである。
[0029] 最初に第 1水溶液に関して説明する。第 1水溶液は、銀塩含有溶液であり、ゼラチ ンと硝酸銀と硝酸とを水に溶解させたものである。ここでゼラチンと記載しているのは 、ゼラチンに比べ精製度の劣る膠をも含む概念として記載している。このゼラチンは、 高結晶銀粉が還元析出する際の還元速度 (反応速度)を制御するために用いるもの である。また、ゼラチンは、還元析出した粒子凝集を抑制する立体障害剤として機能 し、還元析出した粒子同士の凝集を抑制し、得られる高結晶銀粉の粒度分布がシャ ープになり好ましい。そして、前記第 1水溶液中におけるゼラチン濃度は 2g/卜 10 g/1であることが好ましい。当該ゼラチン濃度が 2g/l未満の場合には、第 1水溶液と 第 2水溶液とを反応させた際の還元速度が速くなり、析出した銀粒子の結晶子径が 大きなものとはならず、且つ、粒子同士の凝集も顕著となり、シャープな粒度分布を 持つ銀粉が得られない。一方、当該ゼラチン濃度力 SlOg/1を超えた場合には、還元 反応速度が遅くなり、工業的生産性を満足しないばかりか、結晶子径のバラツキも大 きくなる。
[0030] そして、前記第 1水溶液中における硝酸銀濃度は、銀として 50g/l〜: 150g/lであ ること力 S好ましい。硝酸銀濃度 (銀として)が 50g/l未満の場合には、還元析出する 銀量が少なぐ且つ、析出する銀の粒子径が小さすぎて結晶子径も小さくなる。一方 、硝酸銀濃度 (銀として)が 150g/lを超える場合には、還元剤等とのバランスから見 て、未還元の銀イオンが残留し資源の無駄遣いとなると共に、還元反応サイトが多く なりすぎて、析出粒子の凝集が顕著で、粒子分散性に優れた体積累積平均粒子径 D が 0. l z m以上の高結晶銀粉の収率が低下するのである。
50
[0031] 更に、前記第 1水溶液中におけるフリー硝酸濃度は、硝酸水溶液を添加して、 40g Z卜 120g/lとなるように調整することが好ましい。このフリー硝酸濃度は、銀塩含有 溶液である第 1水溶液中での銀イオンのスラッジ化を防止し、還元剤による銀粒子の 還元析出を効率よく行うために管理を必要とする要素である。
[0032] そして、第 1水溶液の液温は、 45°C〜55°Cであることが好ましい。当該液温が 45 °C未満の場合には、ゼラチンと硝酸銀と硝酸との迅速な混合が困難で、ここに後述 する第 2水溶液を添加して行う還元反応速度が遅くなり、適正な粒度分布を持つ高 結晶性銀粉の製造が困難となる。そして、当該液温が 55°Cを超える場合には、ゼラ
チンの分解が促進され溶液寿命が短くなり、且つ、適正な結晶子径を備える銀粉が 得られなくなる。
[0033] 次に、第 2水溶液に関して説明する。第 2水溶液は、還元剤を含む水溶液である。
そして、還元剤であるエルソルビン酸及び Z又はァスコルビン酸は、エルソルビン酸 、ァスコルビン酸のそれぞれを単独で還元剤として用いても、エルソルビン酸とァスコ ルビン酸とを併用して用いても構わないことを意味している。従って、以下に述べるェ ルソルビン酸及び Z又はァスコルビン酸の濃度は、エルソルビン酸とァスコルビン酸 とを併用した場合を含む概念であり、エルソルビン酸とァスコルビン酸との重量比 [ェ ルソルビン酸] : [ァスコルビン酸] =0· 1 : 9. 9〜9. 9 : 0. 1、より安定した工程安定 性を考慮すれば好ましくは [エルソルビン酸] : [ァスコルビン酸] =0. 5 : 9. 9〜9. 9 : 0. 5、更に安定した工程安定性を考慮すれば好ましくは [エルソルビン酸]: [ァスコ ルビン酸] = 1: 9〜9: 1で混合使用する。
[0034] 前記第 2水溶液中においてエルソルビン酸及び/又はァスコルビン酸の濃度は、 4 5g/l〜: 120g/lとすることが好ましい。この還元剤濃度は、第 1水溶液の銀含有量と の関係に於レ、て決定されるものであるが、第 1水溶液中の銀濃度と第 2水溶液中の 還元剤濃度との双方が、適正な範囲にあることで、粒子径が 2 μ ΐη以下の微粒の銀 粉の還元析出が可能となる。即ち、第 2水溶液中のエルソルビン酸及び/又はァスコ ルビン酸の濃度が 45g/l未満の場合には、第 1水溶液中の銀イオンの還元が不十 分となり資源の無駄遣いとなると共に、得られる銀粉の粒度分布がブロードになり、良 好な結晶子径を備える高結晶銀粉が得られない。一方、第 2水溶液中のエルソルビ ン酸及び Z又はァスコルビン酸の濃度が 120gZlを超える場合には、第 1水溶液中 の銀イオンの還元に必要な還元剤量を超え還元剤の無駄遣いとなると共に、還元反 応が速すぎて結晶子径が小さくなる。
[0035] そして、前記第 2水溶液には、上記還元剤に加えて、水溶性有機酸を加える点に 大きな特徴が存在する。この水溶性有機酸は、還元析出する銀の結晶の結晶子径 を大きくする作用を示し、粒子径が 2 z m未満の微粒銀粉であっても、その結晶子径 を大きくする事が可能となる。そして、この水溶性有機酸は、還元析出する銀粉の粒 度分布を良好にして、粒子分散性に優れたシャープな粒度分布の銀粉とする機能も
果たしている。ここで言う水溶性有機酸は、 DL_リンゴ酸、クェン酸、蟮酸、吉草酸、 イソ吉草酸、コハク酸、プロピオン酸、乳酸、アジピン酸のいずれか 1種又は 2種以上 を組み合わせたものである。
[0036] そして、この水溶性有機酸濃度は、 lgZl〜50g/lであることが好ましい。第 2水溶 液における水溶性有機酸濃度が lgZl未満の場合には、還元析出する銀の結晶の 結晶子径を大きくする効果が得られず、水溶性有機酸を使用する意義が没却する。 一方、水溶性有機酸濃度が 50g/lを超えるものとした場合には、当該結晶子径を大 きくする効果はそれ以上に向上せず、むしろ得られる銀粉の粒度分布を悪化させる ィ頃向にある。
[0037] 以上に述べてきた第 1水溶液に対し第 2水溶液を 10分〜 60分の時間をかけ緩や かに添加する。第 1水溶液と第 2水溶液とを一度期に一括混合すると、得られる銀粉 の粒度分布がブロードになり、シャープな粒度分布の製品が得られず、粗粒の発生 が顕著になる。従って、混合時間が 10分未満の場合には、一括混合と同様であり、 得られる銀粉の粒度分布がブロードで、粗粒の発生が多くなる。一方、混合時間が 6 0分を超えるものとしても、生産性が落ちるだけであり、これ以上ゆっくりと添加しても 粒度分布の改善は望めない。
[0038] このときの第 1水溶液に対する第 2水溶液の添加量は、第 1水溶液中に含まれる銀 量を基準として考え、最低限、その還元に必要な反応当量に見合う還元剤量が供給 出来ればよい。このとき第 1水溶液中に含まれる銀量を基準として考え、その還元に 必要な反応当量に見合う還元剤量を超える過剰量を添加しても何ら問題はなレ、。そ して、還元反応時の温度に関しては、特に限定はないが、第 1水溶液の液温に大き な変動を与えないため、室温から 50°Cの範囲を採用することが好ましい。 50°Cを超 える温度を採用すると、水分蒸発が顕著になり、第 1水溶液と第 2水溶液との混合時 間に組成変動を起こしやすくなる。
[0039] そして、第 1水溶液に対する第 2水溶液の添カ卩が終了した後、 3〜5分間攪拌して 粒子成長を行い銀粒子を生成する。攪拌時間が 3分間未満の場合には、還元反応 が十分に完了していない場合があり、好ましくない。一方、攪拌時間が 5分間を超え るものとしても、還元反応は既に完全に終了しており、実用上意味がない。
[0040] なお、第 1水溶液に対する第 2水溶液の添カ卩が終了し、銀の還元析出が起きてい ないとすれば、この段階の第 1水溶液と第 2水溶液との還元反応液中での組成バラン スは、ゼラチン濃度 2g/l〜: 10gZl、硝酸銀濃度 (銀として) 50gZ卜 150g/l、フリ 一硝酸濃度 40gZl〜: 120g/l、還元剤であるエルソルビン酸及び/又はァスコルビ ン酸濃度 45gZl〜: 120g/l、水溶性有機酸濃度 lg/l〜50gZlとなる。
[0041] 以上の還元操作が終了すると、その後、静置して銀粒子を沈降させる。そして、上 澄み液を廃棄し、濾過、洗浄を行ない高結晶銀粉を得ることが出来る。
[0042] 高結晶銀粉: 本件発明に係る高結晶銀粉は、銀イオン含有溶液に対し還元剤とし てのエルソルビン酸及び/又はァスコルビン酸と水溶性有機酸とを添カ卩して還元析 出させて得た銀粉である。
[0043] そして、一次粒子径が 0. 07 μ m〜4. 5 μ m、結晶子径が 200 A以上であることを 特徴とするものである。本件発明に係る高結晶銀粉は、銀イオン含有溶液からエルソ ルビン酸及び/又はァスコルビン酸を還元剤として用い、水溶性有機酸を添加して 得られるものである。このように水溶性有機酸を併用することで、結晶子径が大きぐ しかも一次粒子径が 2. 0 / m未満の微粒領域になっても、良好な結晶子径とシヤー プな粒度分布を備える高結晶銀粉を得ることが可能となる。ここで、一次粒子径が 0. 07 μ ΐη〜4. 5 μ ΐηという広範な粒子径範囲で、且つ、結晶子径が 200 Α以上という 高結晶性を達成できる。なお、一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡で高結晶性銀粉 の粒子を観察し、その視野内に含まれた粒子 100個分の粒子径を直接観察して、そ の平均値として求めた値である。この一次粒子径の範囲において、微粒と称すること 力 S出来るのは、 0. 07 μ π!〜 2. O z m未満、好ましくは 0. 07 z m〜l . 5 z m、より好 ましくは 0. 07 x m〜l . 0 x mである。一般に、粒子径と結晶子径とは比例係数を有 しているが、一次粒子径が 0. 3 z mを超えると 400 Aを超える結晶子径を得ることが 可能である。そして、本件発明に係る高結晶銀粉の場合には、粒子径が 0. 07 z m 〜0. 3 x mの範囲でも 200 A〜300 Aオーダーの結晶子径が安定して得られる。こ のように粒子径が極めて細かな範囲で、 200 A以上の結晶子径を備える銀粉は、従 来存在しなかった。なお、本件発明に言う結晶子径の測定には、理学電機株式会社 製 RINT2000X線回折装置を用い、 wilson法 (X線回折による結晶子径測定法)に
より測定した。
[0044] さらに、上記粉体特性を備える高結晶性銀粉を、レーザー回折散乱式粒度分布測 定法によって測定すると、体積累積平均粒子径 D が 0. 1 μ m〜5. 0 μ m、粒度分
50
布指標である(D - D ) /D の値が 1. 5以下という粉体特性を示す。
90 10 50
[0045] 即ち、一次粒子径が 0. 07 x m〜4. 5 x mという範囲に対応するレーザー回折散 乱式粒度分布測定法による体積累積平均粒子径 D は、およそ 0. l x m〜5. Ο μ
50
mの範囲の値として測定される。そして、一次粒子径の範囲で微粒として分類した、 一次粒子径が 0. 07 μ m〜2. 0 μ m未満の製品の体積累積平均粒子径 D は、 0.
50
1 μ m〜l . 6 μ mの範囲に殆ど収まる。そして、一次粒子径が 0. 07 μ m〜l . 5 μ m の製品の体積累積平均粒子径 D は、 0. l /i m〜l . 2 / mの範囲に殆ど収まる。一
50
次粒子径が 0. 07 /i m〜: 1. 0 /i mの製品の体積累積平均粒子径 D は、 0. 1 μ m
50
〜0· 7 μ ΐηの範囲に殆ど収まる。
[0046] 更に、本件発明に係る高結晶銀粉は、粒子分散性を表す指標である (D - D )
90 10
/D の値が 1. 5以下という分散性を備えることができる。ここで、(D — D ) /D
50 90 10 50 とは、体積累積粒子径 90%の D と体積累積粒子径 10%の D と差を体積累積平
90 10
均粒子径 D で割ったものである。即ち、体積累積平均粒子径 D を基準としたとき、
50 50
粒度分布の広がりが体積累積平均粒子径 D の何倍にあたるか算出したものであり
50
、この値が 1に近づく程、粒度分布の分布曲線がシャープであることを示す。従って、 この(D - D ) /Ό の値が 1. 5以下というのは、粒度分布力 かなりシャープな状
90 10 50
態を意味しており、殆どの粒子の粒子径が体積累積平均粒子径 D の 1. 5倍以下で
50
あると言える。これに対し、従来のァスコルビン酸等の還元剤を単独で用いた場合で も、結晶子径のみに着目すれば 400 Αを超える結晶子径を備える銀粉が得られる。 しかし、係る場合、一次粒子径を 1. 6 μ m (体積累積平均粒子径 D が約 2. 0 μ m)
50
未満とした場合には、得られる銀粉の粒度分布がブロードになり、(D - D ) /D
90 10 50 の値が 2. 0を超えるブロードな粒度分布を持つものとなる。このようなブロードな粒度 分布を持つ銀粉をペースト化して、導電膜を形成すると、その導電膜表面が粗くなり 好ましくない。
[0047] そして、銀イオン含有溶液からエルソルビン酸及び/又はァスコルビン酸を還元剤
として用い、水溶性有機酸を併用して得られる高結晶銀粉には、一定の割合で粗粒 を含有するのが通常であるが、上記粉体特性を備えることを前提として、体積累積最 大粒子径 D は 16. 0 μ m以下となる。この最大粒子径は、ある意味、粗粒として認 max
識でき、場合によっては分級操作により、製品からは除外されるものとなる。
[0048] また、上述の製造方法で得られた本件発明に係る高結晶銀粉の比表面積は、 0. 2 m2/g以上の範囲となる。本件発明者等の研究の結果からすると、 0. 2m2/g〜3. 5m2Zgの範囲となる。この比表面積は、滑らかな表面の粒子となるほど値が小さぐ ペース H匕又はインク化したときの粘度を小さくすることが出来る。
実施例 1
[0049] 第 1水溶液の調整: 純水 250gに、ゼラチン 1. 0g、硝酸銀 50g、硝酸 26. 4gを入れ
、攪拌しつつ液温を 50°Cまで加熱し溶解して調整した。
[0050] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのエルソルビン酸 26. 4g、水溶性有機酸として D
L—リンゴ酸 4. 2gを、純水 250gに溶力 た溶液として調整した。
[0051] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0052] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 1に掲載する。
実施例 2
[0053] 第 1水溶液の調整: 実施例 1と同様であり、重複した記載を避けるため、省略する。
[0054] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのエルソルビン酸 26. 4g、水溶性有機酸としてク ェン酸 3. 6gを、純水 250gに溶力した溶液として調整した。
[0055] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0056] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した
銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 1に掲載する。
実施例 3
[0057] 第 1水溶液の調整: 純水 550gに、ゼラチン 3. 3g、硝酸銀 55g、硝酸 27gを入れ、 攪拌しつつ液温を 50°Cまで加熱し溶解して調整した。
[0058] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのエルソルビン酸 28. lg、水溶性有機酸として D
L—リンゴ酸 4. 47gを、純水 250gに溶力 た溶液として調整した。
[0059] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0060] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 2に掲載する。
実施例 4
[0061] 第 1水溶液の調整: 実施例 3と同様であり、重複した記載を避けるため、省略する。
[0062] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのエルソルビン酸 28. lg、水溶性有機酸としてク ェン酸 3. 83gを、純水 550gに溶かした溶液として調整した。
[0063] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0064] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 2に掲載する。
実施例 5
[0065] 第 1水溶液の調整: 純水 700gに、ゼラチン 4. 0g、硝酸銀 66g、硝酸 32. 4gを入れ
、攪拌しつつ液温を 50°Cまで加熱し溶解して調整した。
[0066] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのァスコルビン酸 33. 8g、水溶性有機酸としてク ェン酸 4. 6gを、純水 700gに溶力した溶液として調整した。
[0067] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0068] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 3に掲載する。
実施例 6
[0069] 第 1水溶液の調整: 実施例 5と同様であり、重複した記載を避けるため、省略する。
[0070] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのァスコルビン酸 33. 8g、水溶性有機酸として DL
—リンゴ酸 6. Ogを、純水 700gに溶力した溶液として調整した。
[0071] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0072] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 3に掲載する。
実施例 7
[0073] 第 1水溶液の調整: 実施例 5と同様であり、重複した記載を避けるため、省略する。
[0074] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのァスコルビン酸 16. 9g及びエルソルビン酸 16.
9g水溶性有機酸として DL—リンゴ酸 6. Ogを、純水 720gに溶かした溶液として調整 した。
[0075] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した
後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0076] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 4に掲載する。
実施例 8
[0077] 第 1水溶液の調整: 実施例 5と同様であり、重複した記載を避けるため、省略する。
[0078] 第 2水溶液の調整: 還元剤としてのァスコルビン酸 16. 9g及びエルソルビン酸 16.
9g水溶性有機酸としてクェン酸 4. 6gを、純水 720gに溶力した溶液として調整した。
[0079] 高結晶銀粉の還元析出: 液温 50°Cの前記第 1水溶液に、第 2水溶液を 30分間か けて、ゆっくりと添加した。そして、第 1水溶液と第 2水溶液との混合添加が終了した 後、 5分間攪拌して析出銀粒子を成長させた。
[0080] 高結晶銀粉の濾別採取: 5分間の攪拌が終了したら、そのまま静置して、生成した 銀粉を沈降させ、その上澄み液を捨て、定法に基づいて濾過'洗浄を行ない、高結 晶銀粉を得た。この高結晶銀粉の粉体特性に関しては、他の実施例及び比較例と 共に表 4に掲載する。
比較例
[0081] [比較例 1]
この比較例では、実施例 1の第 2水溶液の水溶性有機酸 (DL—リンゴ酸)を省略し 、その他条件は実施例 1と同様にして、銀粉を製造した。この銀粉の粉体特性に関し ては、他の実施例及び比較例と共に表 1に掲載する。
[0082] [比較例 2]
この比較例では、実施例 3の第 2水溶液の水溶性有機酸 (DL—リンゴ酸)を省略し 、その他条件は実施例 1と同様にして、銀粉を製造した。この銀粉の粉体特性に関し ては、他の実施例及び比較例と共に表 2に掲載する。
[0083] [比較例 3]
この比較例では、実施例 5の第 2水溶液の水溶性有機酸 (タエン酸)を省略し、その 他条件は実施例 1と同様にして、銀粉を製造した。この銀粉の粉体特性に関しては、
他の実施例及び比較例と共に表 3に掲載する。
[比較例 4]
この比較例では、実施例 7の第 2水溶液の水溶性有機酸 (DL—リンゴ酸)を省略し 、その他条件は実施例 1と同様にして、銀粉を製造した。この銀粉の粉体特性に関し ては、他の実施例及び比較例と共に表 4に掲載する。
[0084] <実施例と比較例との対比 >
実施例 1及び実施例 2と比較例 1との対比: 実施例 1と実施例 2とは、還元剤と併用 する水溶性有機酸が DL—リンゴ酸とクェン酸とで異なり、比較例 1は実施例 1の水溶 性有機酸を使用しなレ、ものであるため、これらを表 1に同時掲載して対比する。
[0085] [表 1]
[0086] この表 1の中には、一次粒子径、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による D 、
10
D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)、結晶子径及び(D -D ) /D の値を示してい
50 90 max 90 10 50
る。まず、一次粒子径に着目すると、実施例 1及び実施例 2と比べて、水溶性有機酸 を使用していない比較例 1の方が、僅かに小さな一次粒子径の銀粉が得られることが 分かる。ここで、実施例 1、実施例 2及び比較例 1の D 、 D 、 D 、 D 、比表面積(
10 50 90 max
SSA)及び結晶子径の各値を比べるに、その値には大きな差異があるとは言えない 。これに対し、 (D — D ) /D の値を見ると、明らかに比較例 1に比べ、実施例 1及
90 10 50
び実施例 2の方が小さくなつている。即ち、比較例 1の粒度分布に比べ、実施例 1及 び実施例 2の粒度分布の方がシャープな粒度分布を持ち、粒子径が揃っていること が分かる。
[0087] この結果を考えるに、比較例 1で得られた銀粉は、その一次粒子径は実施例 1及び 実施例 2と比べて小さくなる傾向にあるが、還元析出した銀粒子の凝集が著しぐ現 実の使用が困難となる。これに対し、実施例 1及び実施例 2の製造方法で得られた高 結晶銀粉は、凝集を起こしにくいため、粗粒の発生も少なぐ粒子分散性に優れたバ
ランスの取れた製品となる。
[0088] 実施例 3及び実施例 4と比較例 2との対比: 実施例 3と実施例 4とは、還元剤と併用 する水溶性有機酸が DL—リンゴ酸とクェン酸とで異なり、比較例 2は実施例 3の水溶 性有機酸を使用しないものであるため、これらを表 2に同時掲載して対比する。
[0089] [表 2]
[0090] この表 2の中には、一次粒子径、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による D 、
10
D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)、結晶子径及び(D -D ) /D の値を示してい
50 90 max 90 10 50
る。まず、一次粒子径に着目すると、実施例 3及び実施例 4と比べて、水溶性有機酸 を使用していない比較例 2の方が、小さな一次粒子径の銀粉が得られることが分かる 。ここで、実施例 3、実施例 4及び比較例 2の D 、 D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)
10 50 90 max
及び結晶子径の各値を比べる。最初に一次粒子径に着目すると D に着目すると、
10
実施例 3及び実施例 4は比較例 2よりも大きくなつてレ、る。 D に着目すると、実施例 3
50
及び実施例 4と比較例 2とは大差なレ、。そして、 D 及び D に着目すると、実施例 3
90 max
及び実施例 4よりも比較例 2の方が大きくなつている。この段階で、実施例 3及び実施 例 4の粒度分布が、比較例 2の粒度分布よりも、良好でシャープなものとなることが予 想できる。次に、比表面積(SSA)及び結晶子径の値は、大きな差異があるとは言え ない。そして、(D — D ) /D の値を見ると、明らかに比較例 2に比べ、実施例 3及
90 10 50
び実施例 4の方が小さくなつている。即ち、比較例 2の粒度分布に比べ、実施例 3及 び実施例 4の粒度分布の方がシャープな粒度分布を持ち、粒子径が揃っていること が分かる。
[0091] この結果を考えるに、比較例 2で得られた銀粉は、その一次粒子径は実施例 3及び 実施例 4と比べて小さくなる傾向にあるが、還元析出した銀粒子の凝集が著し 現 実の使用が困難となる。これに対し、実施例 3及び実施例 4の製造方法で得られた高 結晶銀粉は、凝集を起こしにくいため、粗粒の発生も少なぐ粒子分散性に優れたバ
ランスの取れた製品となる。
[0092] 実施例 5及び実施例 6と比較例 3との対比: 実施例 5と実施例 6とは、還元剤と併用 する水溶性有機酸が DL—リンゴ酸とクェン酸とで異なり、比較例 3は実施例 5の水溶 性有機酸を使用しないものであるため、これらを表 3に同時掲載して対比する。
[0093] [表 3]
[0094] この表 3の中には、一次粒子径、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による D 、
10
D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)、結晶子径及び (D — D ) /D の値を示してい
50 90 max 90 10 50
る。まず、一次粒子径に着目すると、実施例 5及び実施例 6と比べて、水溶性有機酸 を使用していない比較例 3の方力 小さな一次粒子径の銀粉が得られることが分かる 。ここで、実施例 5、実施例 6及び比較例 3の D 、 D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)
10 50 90 max
及び結晶子径の各値を比べる。 D に着目すると、実施例 5及び実施例 6は比較例 3
10
よりも大きくなつている。 D に着目すると、実施例 5及び実施例 6と比較例 3とは大差
50
なレ、。そして、 D 及び D に着目すると、実施例 5及び実施例 6よりも比較例 3の方
90 max
が大きくなつている。この段階で、実施例 5及び実施例 6の粒度分布が、比較例 3の 粒度分布よりも、良好でシャープなものとなることが予想できる。次に、比表面積(SS A)及び結晶子径の値は、大きな差異があるとは言えない。そして、(D -D ) /D
90 10 5 の値を見ると、明らかに比較例 3に比べ、実施例 5及び実施例 6の方が小さくなつて
0
いる。即ち、比較例 3の粒度分布に比べ、実施例 5及び実施例 6の粒度分布の方が シャープな粒度分布を持ち、粒子径が揃っていることが分かる。
[0095] この結果を考えるに、比較例 3で得られた銀粉は、その一次粒子径は実施例 5及び 実施例 6と比べて小さくなる傾向にあるが、還元析出した銀粒子の凝集が著しぐ現 実の使用が困難となる。これに対し、実施例 5及び実施例 6の製造方法で得られた高 結晶銀粉は、凝集を起こしにくいため、粗粒の発生も少なぐ粒子分散性に優れたバ ランスの取れた製品となる。
[0096] 実施例 7及び実施例 8と比較例 4との対比: 実施例 7と実施例 8とは、還元剤と併用 する水溶性有機酸が DL—リンゴ酸とクェン酸とで異なり、比較例 4は実施例 7の水溶 性有機酸を使用しないものであるため、これらを表 4に同時掲載して対比する。
[0097] [表 4]
[0098] この表 4の中には、一次粒子径、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による D 、
10
D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)、結晶子径及び(D -D ) /D の値を示してい
50 90 max 90 10 50
る。まず、一次粒子径に着目すると、実施例 7及び実施例 8と比べて、水溶性有機酸 を使用していない比較例 4の方が、小さな一次粒子径の銀粉が得られることが分かる 。ここで、実施例 7、実施例 8及び比較例 4の D 、 D 、 D 、 D 、比表面積(SSA)
10 50 90 max
及び結晶子径の各値を比べる。すると、 D 及び D の値に関しては、実施例 7及び
90 max
実施例 8に比べ比較例 4の値が明らかに大きくなり、粗粒が形成されている割合が多 レ、と考えられる。その他の値には大きな差異があるとは言えなレ、。そして、(D -D
90 10
) /D の値を見ると、明らかに比較例 4に比べ、実施例 7及び実施例 8の方が小さく
50
なっている。即ち、比較例 4の粒度分布に比べ、実施例 7及び実施例 8の粒度分布の 方がシャープな粒度分布を持ち、粒子径が揃っていることが分かる。
[0099] この結果を考えるに、比較例 4で得られた銀粉は、その一次粒子径は実施例 7及び 実施例 8と比べて小さくなる傾向にあるが、還元析出した銀粒子の凝集が著しぐ現 実の使用が困難となる。これに対し、実施例 7及び実施例 8の製造方法で得られた高 結晶銀粉は、凝集を起こしにくいため、粗粒の発生も少なぐ粒子分散性に優れたバ ランスの取れた製品となる。
産業上の利用可能性
[0100] 以上に述べてきた高結晶銀粉は、従来の高結晶銀粉と比べ、微粒から大粒子径の 全域に亘つて、高結晶且つシャープな粒度分布を備える製品である。従って、本件 発明に係る高結晶銀粉を用いて銀ペーストを製造し、その銀ペーストで形成した導
体膜は、耐熱収縮性に優れ、且つ、導体膜の表面粗さが滑らかなものとなる。従って 、導電性ペーストを用いて形成する導体の品質向上を図ることが出来る。
また、本件発明に係る高結晶銀粉の製造方法は、銀塩を含有した溶液に対して、 還元剤と水溶性有機酸とを含んだ溶液を添加して、還元析出させるものである。この 水溶性有機酸の存在により、高結晶且つシャープな粒度分布を備える高結晶銀粉 の製造が容易となり、工業的生産プロセスに好適となる。
Claims
[1] 銀イオン含有溶液からエルソルビン酸及び/又はァスコルビン酸を還元剤として用 レ、て銀粉を製造する方法であって、
ゼラチンと硝酸銀と硝酸とを水に溶解させた第 1水溶液と、
エルソルビン酸及び/又はァスコルビン酸と水溶性有機酸とを溶解させた第 2水溶 液とを調製し、
第 1水溶液に対し第 2水溶液を緩やかに添加し、添加が終了した後、攪拌して粒子 成長を行い銀粒子を生成し、
その後、静置して銀粒子を沈降させた後に、上澄みを廃棄し、濾過、洗浄を行ない 高結晶銀粉を得ることを特徴とした高結晶銀粉の製造方法。
[2] 前記第 1水溶液中におけるゼラチン濃度は、 2g/l〜10gZlである請求項 1に記載 の高結晶銀粉の製造方法。
[3] 前記第 1水溶液中における硝酸銀濃度は、銀として 50g/l〜: 150gZlである請求項
1又は請求項 2に記載の高結晶銀粉の製造方法。
[4] 前記第 1水溶液中におけるフリー硝酸濃度は、硝酸水溶液を添加して、 40gZl〜: 12
OgZlとなるように調整するものである請求項 1〜請求項 3のいずれかに記載の高結 晶銀粉の製造方法。
[5] 前記第 2水溶液中におけるエルソルビン酸及び Z又はァスコルビン酸濃度は、 45g Z卜 120g/lである請求項 1〜請求項 4のいずれかに記載の高結晶銀粉の製造方 法。
[6] 前記第 2水溶液中における水溶性有機酸濃度は、 lg/l〜50g/lである請求項:!〜 請求項 5のいずれかに記載の高結晶銀粉の製造方法。
[7] 前記水溶性有機酸は、 DL—リンゴ酸、クェン酸、蟻酸、吉草酸、イソ吉草酸、コハク 酸、プロピオン酸、乳酸、アジピン酸のいずれか 1種又は 2種以上を組み合わせたも のである請求項 6に記載の高結晶銀粉の製造方法。
[8] 請求項 1〜請求項 7のいずれかに記載の高結晶銀粉の製造方法により得られること を特徴とした銀粉。
[9] 一次粒子径が 0. 07 μ m〜4. 5 μ m、結晶子径が 200 A以上であることを特徴とす
る請求項 8に記載の高結晶銀粉。
[10] レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積平均粒子径 D 力 : m〜
50
5. O xm、粒度分布指標である(D -D )/D の値が 1. 5以下であることを特徴
90 10 50
とする請求項 8に記載の高結晶銀粉。
[11] レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積最大粒子径 D 力 S16. Ομτη max
以下であることを特徴とする請求項 8に記載の高結晶銀粉。
[12] 比表面積が 0. 2m2/g以上であることを特徴とする請求項 8に記載の高結晶銀粉。
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