JP4651533B2 - 銅粒子の製造方法 - Google Patents

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本件出願に係る発明は、銅粒子の製造方法に関する。特に、導電性ペーストの導電性フィラーとして好適な銅粒子(銅粉)の提供を目的とする。
従来から銅粒子により構成される銅粉は、銅ペースト原料として広く用いられてきた。この銅ペーストは、プリント配線板の回路形成、セラミックコンデンサの外部電極に代表されるように各種電気的接点部等に応用され、電気的導通確保の手段に用いられてきた。従って、銅ペーストを用いて形成した導電膜には、電気的導電性の低いことが要求されてきた。
そして、銅ペースト用の銅粉は、特許文献1にあるように略球形の銅粒子で構成されたものが一般的であった。この略球形の粒子からなる銅粉を用いることで、銅ペーストの粘度上昇を抑制し、導電性ペーストとしては取扱性に優れた製品の提供が可能であった。ところが、当該銅ペーストを用いてバインダー樹脂を硬化させる使用方法において、導体膜内では略球形の銅粒子同士が、点接触の状態でネットワークを組んで電気的導通が得られていた。その結果、導体膜の電気的抵抗を低くすることには限界があった。
そこで、当業者間では、前記導体膜の電気抵抗を下げるため、導電性フィラーとして略球形の粒子からなる銅粉を用いるのではなく、特許文献2に開示されているようなフレーク状の銅粒子で構成された銅粉(本件明細書においては、単に「フレーク銅粉」と称する。)を用いることが検討されてきた。このフレーク銅粉を構成する銅粒子は、鱗片化又は扁平化した形状であるが故に粉粒の比表面積が大きくなり、粒子同士の接触面積が大きくなる。しかも、導体膜内では粒子同士が平面的に堆積した状態で存在するので、導体膜の電気的抵抗を減少させるには有効な方法であった。
特開平2003−342621号公報 特開平8−325612号公報
しかしながら、フレーク銅粉は、専ら物理的な製造方法を採用し、略球形の銅粉の粉粒を押しつぶす等して得られるものであり、物理加工により得られるものであった。このような手法を採用する限り、粒子の粒度の安定性に欠け、所謂粒径が30μmを超える粗粒が発生し、製品に混入する現象が存在する。このような粗粒が存在すると、プリント配線板の100μm径以下のビアホールの穴埋めに使用する場合等には良好な穴埋めが困難となり、充填性が悪いため、折角の低電気抵抗特性を生かし切れない。
また、図5に示す如きフレーク粉は、銅ペーストに加工したとき、ペースト増粘を上昇させ、取扱性に欠けるようになる。しかも、導電性フィラーとして通常のフレーク銅粉を用いたペーストをスクリーン印刷法で用いると、粗粒の存在によりスクリーンの目詰まりを起こす傾向が顕著で、当該手法による導体膜(回路パターン)の形成及び微細回路配線の形成には不向きである。
以上のことから、市場では、導電性フィラーとしてフレーク銅粉を用いた銅ペーストに比べ取扱性が容易で、且つ、従来の略球形の銅粒子を導電性フィラーとして用いた銅ペーストを用いて形成した導電膜と同等の微細回路配線の形成が可能で、且つ、当該導電膜の電気抵抗と比べ、低電気抵抗の導電膜形成の可能な銅ペーストに対する要求が高まっている。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、上記課題を達成するため、以下のような銅粒子(銅粉)及びその銅粒子の製造方法を採用することに想到したのである。
本件発明に係る銅粒子の製造方法: 本件発明に係る銅粒子の製造方法は、以下に述べる工程A〜工程Fを備え、工程A〜工程Dのいずれかの工程で溶液中の銅1molに対して塩素濃度を0.05mol以上とすることを特徴としたものである。
工程A: 銅塩を温水に溶解させ銅塩含有溶液を得る銅塩含有溶液調製工程。
工程B: 前記銅塩含有溶液にキレート剤を添加して成分調整溶液を得る成分調整工程。
工程C: 前記成分調溶液にpH調整剤を添加しpH調整操作を行いpH調整溶液とするpH調工程。
工程D: 前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して亜酸化銅粒子を生成する還元処理を行う第1還元工程。
工程E: 更に、第2還元剤を添加して、前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行う第2還元工程。
工程F: 銅粒子を洗浄し、乾燥し採取し、銅粒子を得る洗浄乾燥工程。
上記本件発明に係る銅粒子の製造方法において、前記工程A〜工程Dのいずれかの工程の溶液中の前記塩素イオン濃度の調整は塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
上記本件発明に係る銅粒子の製造方法において、前記工程Bの成分調整溶液は、銅塩(Cu換算)濃度1.0mol/l〜4.0mol/l、キレート剤濃度は銅1molに対し0.05mol〜0.5molの組成とすることが好ましい。
上記本件発明に係る銅粒子の製造方法において、前記工程CのpH調整溶液のpHは、10.0〜12.5の範囲とすることが好ましい。
上記本件発明に係る銅粒子の製造方法において、前記工程Dの第1還元剤は、グルコースを用いる事が好ましい。
上記本件発明に係る銅粒子の製造方法において、前記工程Eの第2還元剤は、ヒドラジン、ホルマリン、ヒドロキノンのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いる事が好ましい。
件発明に係る銅粒子の製造は、銅イオンを含有した溶液中に塩素イオンを一定レベル以上含有させ、還元を2段階に分けて行う点に特徴を有している。
そして、本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られた銅粒子は、その粒子表面にコブ状の凹凸を備えるものであっても、従来の略球形の銅粒子と比べ、殆ど同等の粉体特性を示す。その結果、銅ペーストに加工しても、従来の略球形の銅粒子を導電性フィラーとして用いた銅ペーストと同等の粘度を得ることが可能で、導電性フィラーとしてフレーク銅粉を用いた銅ペーストに比べ取扱性が容易となる。しかも、本件発明に係る銅粉を用いた銅ペーストを用いて形成した導体膜は、従来の略球形の銅粒子からなる銅粉を用いた銅ペーストにより形成した導電膜と同等の微細回路配線の形成が可能で、且つ、当該導電膜の電気抵抗と比べ、低電気抵抗の導電膜形成が可能である。
以下、本件発明に係る銅粒子の製造方法の形態に関して説明する。
件発明に係る銅粒子の製造方法: 本件発明に係る銅粒子の製造方法は、以下に述べる工程A〜工程Fを備え、工程A〜工程Dのいずれかの工程で溶液中の銅量1molに対して塩素イオン濃度が0.05mol以上となるように調製することを特徴としたものである。
まず、最初に上記塩素イオン濃度に関して説明する。ここで言う塩素イオン濃度は、工程A〜工程Dのいずれかの工程の溶液に対して制御されるものであり、工程A〜工程Dのいずれの段階で調しても構わない。即ち、工程Eに入る前に塩素イオン濃度調整を行えば良いのである。そして、当該溶液中の塩素濃度は、当該溶液に含有した銅量を1molとしたとき、塩素濃度が0.05mol以上となるように調することが好ましい。当該塩素濃度が0.05mol未満の場合には、銅粒子の粒子表面にコブ状の凹凸を備えることが出来なくなる。そして、上限の塩素濃度に関して、特に規定していないが、0.5mol程度が上限であると考えている。何故なら、0.5molを超えると粒子同士の凝集が顕著になっていくからである。
そして、このときの塩素濃度は、塩化ナトリウムを用いて調することが好ましい。塩化ナトリウム以外の、塩素含有塩(塩化銅、塩化カルシウム等)も用いる事が出来るが、銅粒子の安定した還元析出させるための溶液として工程安定性に欠ける。このときの塩化ナトリウムの添加量は、上記塩素濃度の範囲となるように添加する。以下、各工程に関して説明する。
工程A: この銅塩含有溶液調製工程では、銅塩を温水に溶解させ銅塩含有溶液を得る。ここで、温水を溶媒に用いているのは、銅塩の溶解が容易になり、且つ、溶液中の溶解度を高め工業的生産性を満足させるための必要な濃度を得るためである。ここで言う温水には、純水、イオン交換水等のレベルの水を用いる。そして、温水の温度は45℃〜75℃の範囲の温水を用いることが好ましい。温水温度が45℃未満の場合には、銅塩の溶解速度が遅いと共に、溶解可能な飽和量が少なくなるため、工業的に求められる製品の収率が低くなる。一方、温水温度が75℃を超えれば、溶解可能な飽和量が増加し製品収率が高くなるが、粒子の分散性に劣る銅粉が得られやすくなる。しかも、液温が高く溶解量が増加すると、僅かに温度が低下するだけで、再結晶化を起こし易くなる。従って、反応を行わせる溶液に関しては、還元が終了するまで、この段階の温水温度を維持する事が好ましい。この段階で、ある一定の濃度の銅塩含有溶液とするのであるが、以下の工程Bでの成分調整溶液としての濃度管理を行えば足りるので、ここで濃度に関しての記述は省略する。
工程B: この成分調整工程では、前記銅塩含有溶液にキレート剤を添加し、銅塩含有溶液中で電離した銅イオンをキレート化して安定させる。また、この工程Bで、粒子表面にコブ状の凹凸を備えた銅粒子を得るため、含有した銅1molに対して塩素濃度を0.05mol以上となるように調製することが、安定操業の観点から最も好ましいと考える。
まず、前記成分調整溶液中の銅濃度に関して述べる。当該成分調整溶液中の銅濃度は、銅濃度として1.0mol/l〜4.0mol/lの範囲であることが好ましい。当該銅濃度が1.0mol/l未満の場合には、還元析出する銅粒子(銅粉)量が少なく、工業的に求められる生産性を満足しない。一方、当該銅濃度が4.0mol/lを超える場合には、還元析出する粒子同士の凝集が顕著になり、粒子分散性が劣化し、銅粉としての粒度分布がブロードなる。
また、前記キレート剤は、アミノ酸(アスパラギン酸、グリシン、システィン等)、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)塩から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。このキレート剤は、銅塩含有溶液中で電離した銅イオンをキレート錯体として安定化させるものである。ここで言うキレート剤は、上記成分調整溶液中の銅含有量の範囲を基準として、成分調整溶液中に銅1molに対し0.05mol〜0.5mol濃度となるよう含ませることが好ましい。中でも、キレート剤としてグリシンを用いることで、最も安定した銅キレート錯体を形成し、反応の均一性が向上する。ここで、成分調整溶液中のキレート剤の添加量は、本来、キレート剤の種類、溶液中の銀量に応じて定められるものである。しかしながら、上述のいずれのキレート錯体を用いても、キレート剤濃度は、銅1molに対し0.05mol〜0.5molの範囲に適正量が存在するため、一般化した標記を採用している。そして、2種以上のキレート剤を併用する場合には、2種以上のキレート剤のトータル濃度が銅1molに対し0.05mol〜0.5mol濃度の範囲となればよい。キレート剤濃度が銅1molに対し0.05mol未満の場合には、上記成分調整溶液中の銅量から見て、当該溶液中の銅イオンとのキレート錯体形成が不十分となり、得られる銅粉の粒子の均一性が悪くなる。一方、キレート剤濃度が銅1molに対し0.5molを超えるものとした場合には、得られる銅粉の凝集が顕著となり好ましくない。
工程C: このpH調工程では、前記成分調溶液にpH調整剤を添加しpH調整操作を行いpH調整溶液とする。このpH調整操作は、前記成分調溶液の中に含まれる銅の還元が容易となるpH10〜pH12.5の領域に近づける為のものである。ここで、pH調整剤として水酸化ナトリウム(水溶液の場合を含む)、水酸化カリウム(水溶液の場合を含む)、アンモニア水等を用いることが出来るが、最も好ましくは水酸化ナトリウムを用いて、水酸化ナトリウム水溶液の状態でpH調整を行うことである。本件発明で得られる銅粒子の表面の凹凸のコブ形状のバラツキが少なく、総合的に見た粒子形状の安定性を得やすいためである。
工程D: この第1還元工程では、前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して亜酸化銅粒子を生成する還元処理を行うものである。ここで、前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して亜酸化銅粒子を生成するためには、添加後、30分〜120分程度の還元時間を必要とする。従って、前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して、前記還元時間の間、液温を一定に維持したまま溶液攪拌を行い、均一な還元反応を行わせることが好ましい。そして、ここで言う第1還元剤は、所謂還元糖と言われるもので、上記亜酸化銅粒子(CuO)を生成するまでの還元反応を行うことが出来れば、還元糖の種類に特段の限定はない。しかしながら、本件発明に係る銅粒子の製造にあたっては、分散剤としても一定の機能を発揮するグルコースを用いることが、粒子分散性を高める観点から好ましい。
工程E: この第2還元工程では、第1還元工程の終了した亜酸化銅を含むスラリーに、更に第2還元剤を添加して、前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行う。最初に、第2還元剤の添加方法に関して説明する。第2還元剤の添加は一括で一時期に全量を添加するのではなく、5分〜120分の時間をかけ緩やかに添加する事が好ましい。この添加時間が5分未満の場合には、粒子同士の凝集が顕著になり、分散性に優れた粒子が得られにくくなる。これに対し、添加時間を120分を超えるものとすると、粒子表面にコブ状の凹凸形状を形成し得なくなる。
そして、ここでも第2還元剤の添加が終了した後、10分〜120分程度の還元時間を設けることが好ましい。従って、第2還元剤を添加して、前記還元時間の間、液温を一定に維持したまま溶液攪拌を行い、均一な還元反応を行わせることが好ましい。ここで言う第2還元剤は、ヒドラジン、ホルマリン、ヒドロキノンのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いる事が好ましい。還元剤として見れば、水素化ホウ素化合物(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等)を用いることも考えられる。しかし、比較的還元力の強い水素化ホウ素化合物を用いると、得られる銅粒子の粒子表面にコブ状の凹凸形状を備えさせること及び粒子の分散性を高めることが困難となる。これに対し、還元力の弱い還元剤を持つヒドラジン、ホルマリン等の還元剤を用いれば、粒子表面のコブ状の凹凸形状の形成が安定して行え、粒子分散性も向上するのである。
工程F: この洗浄乾燥工程では、上述のようにして得られ溶液中にある銅粒子を洗浄し、乾燥し採取することで銅粒子を得るのである。ここでの洗浄、乾燥に関する手法としては、特段の限定はなく、公知のあらゆる手段を採用することが可能である。
以上述べてきた工程A〜工程Fを考えると、本件発明に係る銅粒子の製造方法の主な特徴は、以下のi)〜iv)であると言える
i)銅イオンを銅粒子に還元するまでのいずれかの段階の溶液中に、含有した銅1molに対し塩素濃度を0.05mol以上となるように含ませること。
ii)第1還元工程と第2還元工程との2段の還元工程を採用すること。
iii)第1還元工程及び第2還元工程のそれぞれで用いる還元剤に、比較的還元力の弱い還元剤を使用して還元処理を行うこと。
iv)第2還元工程で用いる第2還元剤は、一括で添加するのではなく、緩やかに添加すること。
本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られる銅粒子: 本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られる銅粒子は、湿式還元法により得られた銅粒子であって、当該銅粒子は、その粒子表面にコブ状の凹凸を備えたことを特徴とするものである。ここでコブ状と称しているが、便宜的に、このように称したのであり、言葉として明確に定義できてはいないと考える。そこで、以下に示す実施例1及び実施例2で得られた図1及び図2に示した銅粒子の走査型電子顕微鏡観察像を参照しつつ説明する。
この図1及び図2から分かるように、本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られる銅粒子の表面形状は、粗いゴツゴツした状態を示し、当該粒子全体として見れば、ある程度いびつな球状であると言える。このような粒子形状を比喩的表現ではなく、言語として言い表すには「コブ状の凹凸」以外に無かった。ここで言う「コブ状の凹凸」は、略球状の粒子の表面に他の微細な銅粒子が付着して形成された形状ではなく、還元析出する際の製造条件の制御により、直接的に形成される形状であることを明記しておく。このような銅粒子で構成した銅粉を用いて、銅ペーストを製造し、導体膜の形成を行うと、導体膜内の隣接した粒子同士の接触点が増加し、導体の電気抵抗を低くすることが可能となる。
また、当該銅粒子の粒子形状故に、プリント配線板の層間導通を確保するためのビアホール内の充填用に用いると、当該銅粒子のコブ状の凹凸と接触配置される銅箔回路との接続が容易で、その界面での電気抵抗を低くすることが期待できる。
当該銅粒子のような粒子形状は、一見すると、銅ペーストに加工した際の粘度上昇を顕著に招くのではないかと考えられる。しかしながら、従来の略球状の銅粒子と同程度の銅ペースト粘度が達成できるのである。
本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られる銅粉の形態: 本件発明に係る銅粒子の製造方法で得られる上述の銅粒子により構成される銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50が1.0μm〜6.0μmであることを特徴とするものである。ここで言う平均体積累積粒径D50の範囲は、本件発明に係る銅粒子の製造方法を採用して、粒子表面にコブ状の凹凸を備える形状を呈した銅粒子を効率よく製造できる範囲と一致する。
即ち、平均体積累積粒径D50が1.0μm未満の銅粉を得ようとすると、粒子が細かいため、その粒子表面に一定の凹凸は出来ても、上述のように導電膜の電気抵抗を下げる効果は得られない。一方、平均体積累積粒径D50が6.0μmを超える銅粉を得ようとすると、粒子表面の凹凸が顕著になり、粒径のバラツキが大きくなり、粒度分布がブロードになり好ましくない。
また、当該銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは、0.2μm〜1.5μmとバラツキの小さなものとなる。従って、粒度分布がシャープであるため、銅ペーストを製造する際のペースト粘度の予測、管理が容易となる。
なお、本件明細書におけるレーザー回折散乱式粒度分析は、銅粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて行った。
本件発明に係る銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50と標準偏差σとで表される工程変動指数CV値=([標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])が0.3以下である。この工程変動指数は、このCV値が小さな値であるほど、1ロット内での粒子径のバラツキが小さく、粒度分布がシャープであることを意味する。従って、上記標準偏差と同様の意味合いを持つパラメータである。
そして、当該銅粉は、比表面積(SSA)が1.0m/g以下である。この比表面積の値は、従来の略球状の滑らかな粒子表面を備える銅粒子で構成された銅粉の場合でも、0.1m/g〜1.0m/gの範囲であることを考えれば、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子の粒子表面には、大きな凹凸は存在しても、比表面積を飛躍的に増大させるような、小さな凹凸は粒子表面に存在しないと考えられる。なお、本件明細書における比表面積(SSA)は、銅粉試料2.00gを75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定した結果得られる比表面積のことである。
更に、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粉は、その粒子形状にもかかわらず、そのタップ充填密度は、4.0g/cm以上の高い値を示す。即ち、従来の略球状の滑らかな粒子表面を備える銅粒子で構成された銅粉のタップ充填密度と何ら変わりのない良好な値を示す。このタップ充填密度の値が高いほど、銅ペーストの構成にチクソトロピック性に優れた樹脂成分を用いることで、膜密度が高く、電気的抵抗の低い導電膜の形成が可能と言える。なお、本件明細書における「タップ充填密度の測定」には、試料重量を120gとして、パウダーテスターPT−E(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定した。
以下、実施例及び比較例を示しつつ、本件発明に係る銅粒子の製造方法に関して、より詳細に説明する。
<銅粒子の製造>
工程A: この銅塩含有溶液調製工程では、3.2mol(800g)の硫酸銅(五水塩)を、1.5Lの70℃の純水に溶解させ銅塩含有溶液を得た。
工程B: この成分調整工程では、前記銅塩含有溶液を攪拌しつつ、ここにキレート剤(グリシン:0.64mol(48g))を添加し、銅塩含有溶液中で電離した銅イオンをキレート化して安定させ、且つ、含有した銅1molに対し塩素濃度を0.05mol以上となるように、0.17mol(10g)の塩化ナトリウムを添加して成分調整溶液とした。このときの前記成分調整溶液中の組成は、銅濃度1.6mol/l、グリシン0.2mol(含有した銅1molに対して)、塩素濃度0.05mol(含有した銅1molに対して)、液温70℃である。
工程C: このpH調工程では、前記成分調溶液を攪拌しつつ、pH調整剤として25wt%濃度のNaOH水溶液1164gを一括で添加して、液温70℃を維持して30分間攪拌を継続して保持し、pH11.5としてpH調溶液を得た。
工程D: この第1還元工程では、前記pH調整溶液を攪拌しつつ、ここに第1還元剤(グルコース:289g)を添加し、液温70℃で60分間の還元時間を採用して、亜酸化銅粒子を生成する還元処理を行った。
工程E: この第2還元工程では、第1還元工程の終了した亜酸化銅を含むスラリーを攪拌しつつ、更に第2還元剤(水和ヒドラジン:200g)を45分間かけて緩やかに添加して、液温70℃で前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行った。
工程F: この洗浄乾燥工程では、上述のようにして得られたスラリー中にある銅粒子を採取するため、リパルプ洗浄を行い、最終的に銅粒子を濾別し、オレイン酸処理し、80℃×5時間のオーブン乾燥を行い、本件発明に係る銅粒子(銅粉)として採取した。なお、ここで言うオレイン酸処理とは、100mlのメタノールにオレイン酸2gを溶解させた溶液と、前記銅粒子(銅粉)とを接触させる処理のことである。
<銅粒子の観察>
以上のようにして得られた銅粒子の形状を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いて、2000倍の倍率で観察像を見た。その結果を示したのが図1である。この図1によれば、銅粒子の表面に、比較的大きなコブ状の凹凸が形成されていることが分かる。
<銅粉としての粉体特性の測定>
この実施例1で得られた銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50は3.45μm、本件発明に係る銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは0.98μm、CV値(=[標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])は0.28、比表面積(SSA)は0.27m/g、タップ充填密度は4.8g/cmであった。
<銅ペーストの調製>
上記銅粉を用いてエポキシ系銅ペーストを製造した。ここで製造したエポキシ系銅ペーストは、銅粉を88重量部、第1のエポキシ樹脂には油化シェル社製のエピコート806を2.75重量部、第2のエポキシ樹脂には東都化成株式会社製のYD−141を8.15重量部、エポキシ樹脂硬化剤として味の素株式会社製のアミキュアMY−24を1.10重量部として、これらの混錬を行ってエポキシ系銅ペーストを得たのである。以上のようにして得られたエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると432Pa・sであった。なお、本件明細書における粘度の測定は、東機産業社製の粘度計であるRE−105Uを用いて、0.5rpmの回転数で測定したものである。
<導体抵抗の測定>
上記銅粒子を15gを直径25mmの金型に入れ、プレス圧400kgf/cmで、ペレット状に圧縮成型し、三菱化学株式会社製のロレスタAP及びロレスタPD−41型により抵抗測定を行った。その結果の抵抗値は、5.5×10−4Ω・cmであった。
<スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験>
銅張積層板に炭酸ガスレーザー加工による80μm径の貫通ビアホールを設け、その位置に、スクリーン印刷のスキージ圧で前記銅ペーストを押し込み埋設する試験を行った。その結果、当該ビアホール内への銅ペースト充填が良好に行えた。
この実施例2は、実施例1の銅粒子の製造における工程Bでの塩化ナトリウム使用量を変更したのみで、その他の工程は、実施例1と同様である。従って、銅粒子の製造に関しては、重複した記載を可能な限り省くこととする。
<銅粒子の製造>
実施例1の工程A〜工程Fの内、以下に述べる工程Bのみを変更し、その他の工程は実施例1と同様にして銅粒子(銅粉)を得た。
工程B: この実施例2の成分調整工程では、前記銅塩含有溶液を攪拌しつつ、ここにキレート剤(グリシン:0.64mol(48g))を添加し、銅塩含有溶液中で電離した銅イオンをキレート化して安定させ、且つ、含有した銅1molに対し塩素濃度を0.05mol以上となるように、0.34mol(20g)の塩化ナトリウムを添加して成分調整溶液とした。このときの前記成分調整溶液中の組成は、銅濃度1.6mol/l、グリシン0.2mol(含有した銅1molに対して)、塩素濃度0.11mol(含有した銅1molに対して)、液温70℃である。
<銅粒子の観察>
以上のようにして得られた銅粒子の形状を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いて、2000倍の倍率で観察像を見た。その結果を示したのが図2である。この図2によれば、銅粒子の表面に、実施例1に比べれば小さいが、比較的大きなコブ状の凹凸が形成されていることが分かる。
<銅粉としての粉体特性の測定>
この実施例2で得られた銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50は4.50μm、レーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは1.18μm、CV値(=[標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])は0.26、比表面積(SSA)は0.24m/g、タップ充填密度は4.6g/cmであった。
<銅ペーストの調製>
上記銅粉を用いて、実施例1と同様に、エポキシ系銅ペーストを製造した。このエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると456Pa・sであった。
<導体抵抗の測定>
実施例1と同様にして、導体抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、2.1×10−4Ω・cmであった。
<スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験>
実施例1と同様に、実施例2で得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った。その結果、当該ビアホール内への銅ペースト充填が良好に行えた。
比較例
[比較例1]
この比較例1は、実施例1の銅粒子の製造における工程Bでの塩化ナトリウム使用を省略した。そして、その他の工程は、実施例1と同様である。従って、銅粒子の製造に関しては、重複した記載を可能な限り省くこととする。
<銅粒子の製造>
実施例1の工程A〜工程Fの内、以下に述べる工程Bのみを変更し、その他の工程は実施例1と同様にして銅粒子(銅粉)を得た。
工程B: この比較例1の成分調整工程では、前記銅塩含有溶液を攪拌しつつ、ここにキレート剤(グリシン:48g)を添加し、銅塩含有溶液中で電離した銅イオンをキレート化して安定させ成分調整溶液とした。このときの前記成分調整溶液中の組成は、銅濃度1.6mol/l、グリシン0.2mol(含有した銅1molに対して)液温70℃である。
<銅粒子の観察>
以上のようにして得られた銅粒子の形状を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いて、2000倍の倍率で観察像を見た。その結果を示したのが図3である。この図3によれば、銅粒子の表面形状は、実施例1のようなコブ状の凹凸は無く、平坦な球面状態になり、通常の略球状の銅粒子となっている。
<銅粉としての粉体特性の測定>
この比較例1で得られた銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50は2.38μm、本件発明に係る銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは0.56μm、CV値(=[標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])は0.23、比表面積(SSA)は0.38m/g、タップ充填密度は4.8g/cmであった。
<銅ペーストの調製>
上記銅粉を用いて、実施例1と同様に、エポキシ系銅ペーストを製造した。このエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると410Pa・sであった。
<導体抵抗の測定>
実施例1と同様にして、導体抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、6.8×10−3Ω・cmであった。
<スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験>
実施例1と同様に、比較例1で得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った。その結果、当該ビアホール内への銅ペースト充填が良好に行えた。
[比較例2]
この比較例2は、実施例1の銅粒子の製造における、工程Bでの塩化ナトリウムは省略し、且つ、工程Eでの第2還元剤であるヒドラジンの添加時間が適正な範囲を超えるようにした。そして、その他の工程は、実施例1と同様である。従って、銅粒子の製造に関しては、重複した記載を可能な限り省くこととする。
<銅粒子の製造>
実施例1の工程A〜工程Fの内、以下に述べる工程Eのみを変更し、その他の工程は実施例1と同様にして銅粒子(銅粉)を得た。
工程E: この第2還元工程では、第1還元工程の終了した亜酸化銅を含む溶液を攪拌しつつ、更に第2還元剤(水和ヒドラジン:200g)を150分間かけて、実施例よりも緩やかに添加して、液温70℃で還元して、前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行った。
<銅粒子の観察>
以上のようにして得られた銅粒子の形状を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いて、2000倍の倍率で観察像を見た。その結果を示したのが図4である。この図4によれば、銅粒子の表面形状は、実施例1のようなコブ状の凹凸は無く、平坦な球面状態になり、通常の略球状の銅粒子となっている。
<銅粉としての粉体特性の測定>
この比較例2で得られた銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50は3.38μm、本件発明に係る銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは0.73μm、CV値(=[標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])は0.22、比表面積(SSA)は0.27m/g、タップ充填密度は4.6g/cmであった。
<銅ペーストの調製>
上記銅粉を用いて、実施例1と同様に、エポキシ系銅ペーストを製造した。このエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると385Pa・sであった。
<導体抵抗の測定>
実施例1と同様にして、導体抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、3.0×10−3Ω・cmであった。
<スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験>
実施例1と同様に、比較例2で得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った。その結果、当該ビアホール内への銅ペースト充填が良好に行えた。
[比較例3]
この比較例3は、比較例1で得られた略球状の銅粒子を物理的にフレーク化した銅粒子を製造した。
<銅粒子の製造>
比較例1で得られた銅粒子を、媒体分散ミルであるWilly A.Bachofen AG Maschinenfabrik製のダイノーミル KDL型を用いて、0.7mm径のジルコニアビーズをメディアとして用い、溶媒にメタノールを用いて60分間分散し、銅粉の粉粒を圧縮して塑性変形させる事で、略球形の銅粉をフレーク状の銅粉にした。
<銅粒子の観察>
以上のようにして得られたフレーク銅粒子の形状を観察するため、走査型電子顕微鏡を用いて、2000倍の倍率で観察像を見た。その結果を示したのが図5である。
<銅粉としての粉体特性の測定>
この比較例3で得られたフレーク銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法による平均体積累積粒径D50は3.57μm、本件発明に係る銅粉のレーザー回折散乱式粒度分析法により得られる粒度分布の標準偏差σは1.39μm、CV値(=[標準偏差σ]/[平均体積累積粒径D50])は0.39、粒子としての平均アスペクト比([平均粒子長径(μm)]/[平均厚さ(μm)])は25、比表面積(SSA)は0.72m/g、タップ充填密度は3.2g/cmであった。なお、平均アスペクト比の算出は、上記フレーク銅粒子のチルト角45°で観察した走査型電子顕微鏡観察像から、粒径と厚さとの実測の可能な10個以上の粒子を抽出して、それら粒子のアスペクト比の平均値として求めた。
<銅ペーストの調製>
上記フレーク銅粉を用いて、実施例1と同様に、エポキシ系銅ペーストを製造した。このエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると800Pa・s以上であった。
<導体抵抗の測定>
実施例1と同様にして、導体抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、7.5×10−2Ω・cmであった。
以上に述べてきた実施例及び比較例との評価結果を纏めて表1として、以下に掲載する。
<スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験>
実施例1と同様に、比較例3で得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った。その結果、スクリーンへの目詰まりを起こすと共に、当該ビアホール内への良好な銅ペースト充填は行えなかった。
<実施例と比較例との対比>
銅粒子の観察に関する所見: 実施例及び比較例とで得られた各銅粒子を図1〜図5に掲載している。なお、図5は、フレーク銅粉であるため、実施例を示した図1及び図2との対比は行わない。実施例に係る図1及び図2の走査型電子顕微鏡観察像は、銅粒子の表面に、コブ状の凹凸が形成されていることが分かる。そして、実施例1及び実施例2の製造条件から考え、工程Bの成分調整溶液中の塩素濃度が高いほど、コブ形状が小さくなる傾向が分かる。
これに対し、比較例1の粒子を示した図3から分かるように、工程Bの成分調整溶液中に塩素が無ければ、銅粒子の表面は、平坦な球面状態になり、通常の略球状の銅粒子となることが分かる。また、比較例2の粒子を示した図4から分かるように、工程Eの第2還元剤の添加時間が重要であり、添加時間が適正でなければ、銅粒子の表面は、平坦な球面状態になり、通常の略球状の銅粒子となることが分かる。
銅粉としての粉体特性に関する所見: 表1から分かるように、実施例1及び実施例2で得られた銅粉と、比較例1及び比較例2の粉体特性(平均体積累積粒径D50、標準偏差σ、CV値、比表面積(SSA)、タップ充填密度)を対比すると、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子と、従来の略球形銅粒子との差は大きなものでないことが分かる。これが、後述する銅ペースト粘度を増加させない理由と言える。これに対し、比較例3のフレーク粉の場合には、当然、その他の銅粉との粉体特性が大きく異なり、以下に述べる銅ペースト粘度も大きく異なってくる。
銅ペーストの調製に関する所見: 実施例1及び実施例2で得られた銅粉と、比較例1及び比較例2の粉体特性が大きく差が無いことから、これらを銅ペーストの加工したときのペースト粘度は大差無いと考えられる。表1に示した、実施例1及び実施例2で得られた銅粉と、比較例1及び比較例2で得られた銅粉を用いて製造した銅ペーストのペースト粘度にも大差がない。これに対し、比較例3のフレーク銅粒子(銅粉)を用いて製造した銅ペーストのペースト粘度は、その他のペースト粘度に比べ、かなり粘度が高くなることが分かる。従って、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子(銅粉)を用いて製造した銅ペーストの粘度は、フレーク銅粒子(銅粉)を用いた銅ペーストのような増粘を引き起こさず、従来の球状銅粒子(銅粉)を用いた場合と同等になり、使い勝手の良い銅ペーストを得ることが可能となる。
導体抵抗の測定に関する所見: 実施例1及び実施例2で得られた導体抵抗と、比較例1及び比較例2で得られた導体抵抗とを対比すると、明らかに実施例1及び実施例2で得られた導体抵抗の方が低くなっている。また、実施例1及び実施例2で得られた導体抵抗と、比較例3で得られた導体抵抗とを対比すると、実施例1及び実施例2で得られた導体抵抗に比べ、フレーク銅粉を用いた導体抵抗が大きくなっている。これはフレーク銅粉の場合の充填密度が低いためと考えられる。
スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填試験の所見: 実施例1、実施例2、比較例1、比較例2のそれぞれで得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った結果、当該ビアホール内への銅ペースト充填は良好に行えている。これに対し、比較例3で得られた銅ペーストを用いて、ビアホール内への銅ペースト充填試験を行った結果では、スクリーンへの目詰まりを起こすと共に、当該ビアホール内への良好な銅ペースト充填は行えていない。従って、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子(銅粉)はプリント配線板の、低抵抗の層間導体の形成に有利であることが理解できる。
本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子(銅粉)は、従来の略球形の銅粒子と比較すると、銅ペーストに加工しても、従来の略球形の銅粒子を導電性フィラーとして用いた銅ペーストと同等の粘度を得ることが可能で、フレーク銅粉を用いた銅ペーストのような取扱性が困難ではない。また、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子を用いた銅ペーストは、フレーク銅粉を用いた場合のようなスクリーンの目詰まりを起こすことも無く、スクリーン印刷法によるビアホール内への銅ペースト充填用としても最適である。
しかも、本件発明に係る銅粒子の製造方法により得られる銅粒子を用いた銅ペーストにより形成した導体膜は、従来の略球形の銅粒子を導電性フィラーとして用いた銅ペーストにより形成した導電膜と同等の微細回路配線の形成が可能で、且つ、当該導電膜の電気抵抗と比べ、低電気抵抗の導電膜形成が可能であり、高品質の導体回路、電極等の形成に好適である。
また、本件発明に係る銅粒子の製造は、銅イオンを含有した溶液中に塩素イオンを一定レベル以上含有させ、還元を2段階に分けて行う点に特徴を有しているが、その製造を行うにあたって従来の既存設備の利用が可能であり、大規模な設備投資が不要であり、製造コストを上昇させる事もない。
実施例1に係る銅粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 実施例2に係る銅粒子の透過型電子顕微鏡観察像である。 比較例1に係る銅粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 比較例2に係る銅粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 比較例3に係る銅粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。

Claims (6)

  1. 粒子表面にコブ状の凹凸を備えた銅粒子の製造方法であって、以下に述べる工程A〜工程Fを備え、工程A〜工程Dのいずれかの工程で溶液中の銅1molに対し塩素濃度を0.05mol以上とすることを特徴とした銅粒子の製造方法。
    工程A: 銅塩を温水に溶解させ銅塩含有溶液を得る銅塩含有溶液調製工程。
    工程B: 前記銅塩含有溶液にキレート剤を添加して成分調整溶液を得る成分調整工程。
    工程C: 前記成分調溶液にpH調整剤を添加しpH調整操作を行いpH調整溶液とするpH調工程。
    工程D: 前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して亜酸化銅粒子を生成する還元処理を行う第1還元工程。
    工程E: 更に、第2還元剤を添加して、前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行う第2還元工程。
    工程F: 銅粒子を洗浄し、乾燥し採取し、銅粒子を得る洗浄乾燥工程。
  2. 工程A〜工程Dのいずれかの工程の溶液中の前記塩素イオン濃度の調整は塩化ナトリウムを用いるものである請求項に記載の銅粒子の製造方法。
  3. 前記工程Bの成分調整溶液は、銅塩(Cu換算)濃度1.0mol/l〜4.0mol/l、キレート剤濃度は銅1molに対し0.05mol〜0.5molである請求項又は請求項に記載の銅粒子の製造方法。
  4. 前記工程CのpH調整溶液のpHは、10.0〜12.5である請求項〜請求項のいずれかに記載の銅粒子の製造方法。
  5. 前記工程Dの第1還元剤は、グルコースを用いるものである請求項〜請求項のいずれかに記載の銅粒子の製造方法。
  6. 前記工程Eの第2還元剤は、ヒドラジン、ホルマリン、ヒドロキノンのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いるものである請求項〜請求項のいずれかに記載の銅粒子の製造方法。
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