JP5065607B2 - 微粒銀粒子製造方法及びその製造方法で得られた微粒銀粒子 - Google Patents

微粒銀粒子製造方法及びその製造方法で得られた微粒銀粒子 Download PDF

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Description

本件出願に係る発明は、微粒銀粒子製造方法及びその製造方法で得られた微粒銀粒子に関する。特に微細配線の形成に用いる導電性ペースト又は導電性インクの導電性フィラーとして好適な微細銀粒子の提供を目的とする。
従来から、金属粉等の導電性フィラーを含む銀ペースト、銀インクは、セラミック基板と同時焼成して回路形成に用いる等の相対的に高温での焼成用途の他、特許文献1に開示されているように、プリント配線板の配線回路、ビアホール充填、部品実装用接着剤等の種々の樹脂成分と混合して硬化させて用いるような用途が存在している。後者のような用途においては、導電フィラーとしての銀粉の粉粒同士が焼結することなく、粉粒同士の接触のみで電気的導電性を得るというのが一般的であった。
ところが、近年は、銀粉を用いて形成した導体に対する電気抵抗の低減と、高い接続信頼性とが要求され、樹脂成分の硬化と共にフィラーである銀粉自体も焼結して導電性を発揮する銀インクあるいは銀ペーストに対する要求が高まっている。一般に、このような要求に応えるには、焼結温度を下げることを考え、導電性フィラーである銀粉の粒子を微細化する努力が払われてきた。
従来からの銀粉製造は、特許文献2に開示されているように、硝酸銀溶液とアンモニア水とで銀アンミン錯体水溶液を製造し、これに有機還元剤を添加する湿式還元プロセスが採用されてきた。そして、このような銀粉を超える低温焼結性を確保しようと、特許文献3に開示されているような、銀ナノ粒子を含む銀インクが提唱されてきた。
特開2001−107101号公報 特開2002−334618号公報 特開2002−324966号公報
しかしながら、銀粉を初めとする金属粉では、粒子の微粒化と良好な粒子分散性とを両立させることは困難である。例えば、上記特許文献1に開示されているように、銀ナノ粒子を含む銀インクの場合には、ナノ粒子の分散性を確保するため、保護コロイドとして多量の分散剤を添加するのが一般的である。このような場合に使用される分散剤は、銀ナノ粒子の焼結温度よりも高い分解温度の分散剤が使用されるのが一般的であり、銀ナノ粒子自体の低温焼結特性を充分に生かしきれないという欠点がある。
また、銀粉に不純物量の少ないことが求められてきた。即ち、銀粉の製造は、上述した湿式還元プロセスが採用されており、そのプロセスで使用する還元剤、分散剤等が銀粉の粉粒表面及び内部に残留するのである。従って、従来の製造方法を採用する以上、不可避的な問題であった。そして、銀粉の不純物量が増加すると、その銀粉を含ませた導電性ペースト等を用いて形成した導体の電気的抵抗が増加するのである。
以上のことから、市場では、良好な粒子分散性を示すnmオーダーの1次粒子径を備える微粒銀粒子であって、分散剤の影響を受けない低温焼結性を示し、且つ、低抵抗を実現するための不純物含有量が少ない製品への要求が行われてきた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下のような製造方法を採用することによって、粒子分散性に優れたnmレベルの粒径を備えた微粒銀粒子を得ることが出来ることに想到したのである。しかも、この製造方法でも分散剤を使用するが、銀粒子に付着した分散剤は、事後的に容易に除去可能なものである。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法: 本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法は、湿式還元法による微粒銀粒子の製造方法であって、銀塩、キレート剤、銀含有量1g/lに対して0.1g/l〜0.5g/lのゼラチンを含有した銀塩含有溶液と、還元剤を含んだ還元剤含有溶液とを混合させて還元反応を起こさせ微粒銀粒子を得ることを特徴とするものである。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法において、前記銀塩は、硝酸銀を用いることが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法において、前記キレート剤は、エチレンジアミン錯塩、グルコン酸、グルコン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法において、前記還元剤は、亜硫酸塩、ホルマリン、ヒドロキノン、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法に用いる前記銀塩含有溶液は、その銀含有量が銀として0.1g/l〜50.0g/lを含むことが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法に用いる前記還元剤含有溶液は、還元剤濃度が0.1mol/l〜10.0mol/lであることが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子: 本件発明に係る微粒銀粒子は、上記製造方法に記載の微粒銀粒子製造方法により得られた微粒銀粒子であって、その平均1次粒子径が100nm以下であることを特徴としたものである。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法を採用することで、良好な粒子分散性を示し、且つ、100nm以下の1次粒子径を備える微粒銀粒子の製造が可能である。そして、この製造方法において、ゼラチンを用いることで、微粒銀粒子の製造後に、粒子表面に付着したゼラチン成分を除去することも容易で、分散剤の影響を受けない微粒銀粒子本来の低温焼結性を得ることが可能となる。
以下、本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法及び微粒銀粒子の最良の形態に関して説明する。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造形態: 本件発明に係る微粒銀粒子の製造は、湿式還元法による微粒銀粒子の製造方法を採用する。即ち、銀塩、キレート剤、銀含有量1g/lに対して0.1g/l〜0.5g/lのゼラチンを含有した銀塩含有溶液と、還元剤を含んだ還元剤含有溶液とを接触させ還元反応を起こさせ微粒銀粒子を得るのである。本件発明は、後述するキレート剤とゼラチンとを組み合わせて用いた点に大きな特徴を有する。そして、このゼラチンとは、膠をも含む概念として記述している。このゼラチンは、得られる微粒銀粒子の粒子表面に付着残留するが、事後的に化学的処理によって容易に粒子表面から剥離除去可能なものである。
この前記銀塩含有溶液において、銀含有量1g/lに対して、ゼラチン含有量が0.1g/l〜0.5g/lとする。ゼラチン含有量が0.01g/l未満の場合には、還元析出する微粒銀粒子の連結を防止するための立体障害として機能し得ず保護コロイドとしての役割を果たさない。一方、ゼラチン含有量が1.00g/lを超える場合には、銀塩含有溶液の粘度にも影響を与えるようになり、微粒銀粒子の還元析出速度が遅くなり、生産性の低下を招く。そのため、適度な還元析出速度を得ることができ、且つ、安定した析出粒子の粒子分散性を得るためには、上述したように、ゼラチン含有量を0.1g/l〜0.5g/lの範囲とする。また、粒子表面へのゼラチン残留量を減らし、事後的に剥離除去することを予定すると、可能な限りゼラチン濃度を希薄にして用いることが好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法で用いる銀塩含有溶液中の前記銀塩としては、硝酸銀を用いることが好ましい。このように銀の供給源として硝酸銀を用いるのは、水に対する溶解性に優れ、水中での電離特性に優れるため、後述するキレート剤との反応が円滑に行えるのである。銀塩含有溶液中の銀濃度に関しては、銀として0.1g/l〜50.0g/lを含むことが好ましい。ここでの銀濃度が50.0g/lを超えるものとすると、析出する銀粒子に粗粒が混入したり、凝集粒子が生成する傾向があり、粒度分布のシャープな高粒子分散性を備えた微粒銀粒子を得ることができなくなる。これに対し、銀濃度が0.1g/l未満となると、微粒銀粒子として良好なものが得られるが、還元析出する粒径にバラツキが生じやすく、且つ、必要とされる工業的生産性を満足しないものになる。そして、粒度分布のより安定化を図る観点からは、銀として0.1g/l〜30.0g/lの範囲とすることが、より好ましい。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法に用いる銀塩含有溶液中の前記キレート剤は、エチレンジアミン錯塩、グルコン酸、グルコン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。このキレート剤は、銀塩含有溶液中で銀塩から供給された銀イオンをキレート錯体として安定化させるものである。そして、ここで掲げるキレート剤と、上記ゼラチンとを組み合わせて用いることで、初めてnmオーダーの粒径を備える微粒銀粒子を効率よく生産することが可能となる。
ここで言うキレート剤は、上記銀含有量の範囲であることを前提として、銀イオンの量に応じて適宜、その添加量が調整されるものであるため、特段の限定は要さないと考える。しかし、本件発明の場合には、銀塩含有溶液中に0.01mol/l〜5.00mol/lの濃度で含ませることが好ましい。ここに記載したキレート剤が、銀イオン供給源である銀塩から溶液中に電離した銀イオンと効率よくキレート錯体を形成する範囲である。中でも、エチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩を用いることで、最も安定した銀キレート錯体を形成し、銀粒子の成長を抑制すると共に、銀の析出核の生成を促進するため、よち微細なナノ粒子を生成しやすくなる。ここで、キレート剤の添加量は、本来、キレート剤の種類、溶液中の銀量に応じて定められるものである。しかしながら、上述のいずれのキレート錯体を用いても、キレート剤濃度は、0.01mol/l〜5.00mol/lの範囲に適正量が存在するため、一般化した標記を採用している。そして、2種以上のキレート剤を併用する場合には、2種以上のキレート剤のトータル濃度が0.01mol/l〜5.00mol/l濃度の範囲となればよい。キレート剤濃度が0.01mol/l未満の場合には、粒子の成長が遅く、粒子同士の凝集が顕著となる傾向となる。一方、キレート剤濃度が5.00mol/lを超えるものとすると、銀粒子の成長が速くなり、粒径の大きな銀粒子となる。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法において、還元剤含有溶液に含ませる前記還元剤は、亜硫酸塩、ホルマリン、ヒドロキノン、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。そして、ここで言う亜硫酸塩とは、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムのいずれか一種又は二種以上を用いることが好ましい。また、亜硫酸水素化ホウ素化合物とは、水素化ホウ素ナトリウム(SBH)又は水素化ホウ素カリウムを用いることが好ましい。ここで言う還元剤含有溶液には、還元剤を、0.1mol/l〜10.0mol/l含有する溶液とする事が好ましい。還元剤は銀含有溶液中の銀量に応じて使用するものであり、当該還元剤濃度が0.1mol/l未満の場合には、存在する銀イオンの還元が不十分となり、工業的経済性を満足しなくなり、還元反応を起こさせるときの溶液量が多くなり、廃液処理負荷が大きくなる。一方、当該還元剤濃度が10.0mol/lを超えると、還元剤濃度が濃くなり過ぎて、還元反応時の溶液攪拌を如何に行っても、還元反応の場所的不均一が生じ、得られる微粒銀粒子の粒度分布がブロードになる、連結粒子が生成しやすくなる等の傾向が発生する。また、還元析出する粒子凝集の進行が著しくなり、有機還元剤を用いた場合には粒子に含まれる不純物量(本件明細書では、不純物量を炭素含有量として捉えている。)が急激に多くなり始める。そして、より安定した還元析出反応を起こさせ、粒度分布の優れた微粒銀粒子を安定的に生産するためには、還元剤を1.0mol/l〜5.0mol/l含有する溶液とする事が、より好ましい。
以上のことから、銀塩含有溶液と、還元剤を含んだ還元剤含有溶液とを混合させ還元反応を起こさせ微粒銀粒子を得る際には、混合液中の銀濃度(銀として)が1g/l〜30g/lの範囲として、当該還元剤濃度を1.0mol/l〜5.0mol/lに維持することが、本件発明にかかる微粒銀粒子を歩留まり良く得るのに最も適した条件と言える。
そして、還元反応を行わせる際の、銀塩含有溶液と還元剤含有溶液とを混合した混合液の液温は、40℃〜80℃の温度であることが好ましい。従って、混合後に40℃〜80℃の液温となるように、混合する前の銀塩含有溶液の液温及び還元剤含有溶液の双方の液温を調製することが好ましい。当該混合液の液温が40℃未満の場合には、還元反応の進行が遅く、適正な工業的生産性が得られない。一方、当該混合液の液温が80℃を超える場合には、還元反応速度が速くなり、同時に、水分蒸発が顕著になり、還元反応時の濃度変動が大きくなるため、得られる微粒銀粒子の粒度分布がブロードになる。
更に、還元反応に要する時間(以下、「還元反応時間」と称する。)は、20分〜2時間の範囲を採用する事が好ましい。還元反応時間が20分未満の場合には、上記液温の上限値を採用しても、十分な還元反応が進行していない。これに対し、還元反応時間が2時間を超えるものとしても、2時間以内に存在する銀イオンの還元は殆ど終了するのが通常である。仮に、この段階で溶液中に銀イオンが存在していても、還元析出する銀粒子が成長して、100nm以下の粒径の微粒銀粒子が得られなくなる。
以上のようにして得られた微粒銀粒子は、濾別、洗浄、脱水、乾燥して微粒銀粒子(微粒銀粉)として採取することが可能である。しかし、極めて微粒で、良好な分散状態を維持するためスラリー状態で保存することが好ましい。スラリー状態で保存する場合には、定法によって洗浄を行い、水を溶媒とした銀粒子スラリーの状態で保存することが好ましい。なお、本件発明に係る微粒銀粒子を、乾燥状態で得るには、種々の方法を用いることが可能であり、特に、その手法、条件に関する限定は要さないものである。
本件発明に係る微粒銀粒子: 本件発明に係る微粒銀粒子は、上記製造方法に記載の微粒銀粒子製造方法により得られた微粒銀粒子であって、その平均1次粒子径が100nm以下であることを特徴とする。ここで言う平均1次粒子径とは、走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる1次粒子の平均粒径(以下、「DIA」と称する。)である。ここで、本件発明にかかる微粒銀粒子の場合には倍率30000倍以上を採用して得られた観察像の中にある粒子を画像解析することにより得られる平均粒径のことである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される微粒銀粉の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均1次粒子径DIAを求めたものである。この微粒銀粉の観察像を画像処理することにより得られる平均1次粒子径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、1次粒子の粒径が確実に捉えられていることになる。本件発明で言う微粒銀粒子のDIAは、本件発明者らが観察する限り15nm〜100nmの範囲に殆どが入ってくるが、現実には更に微細な粒径のものが確認できる場合もあり、下限値を敢えて明記していないのである。
以下、本件発明にかかる微粒銀粒子を特定する事の出来る粉体特性に関して述べておく。更に、上記してきた粉体特性を備える効果として、本件発明にかかる微粒銀粉を用いた銀ペーストにより得られる導電膜の膜密度は4.0g/cm以上という高いものとなるのである。ここで言う膜密度は、微粒銀粒子70wt%、エチルセルロース5wt%、ターピネオール25wt%の組成の銀ペーストを作製して、アプリケータを用いて約300μm厚さの銀ペースト塗膜をポリエステルフィルム上に作成し、これを80℃で乾燥後に膜密度の測定を行った。なお、従来のナノ粒子により構成される銀粉の膜密度が4.0g/cm 未満であることを考慮すれば、本件発明にかかる微粒銀粒子は、ナノ粒子としても分散性及び充填性に優れたものであるとの裏付けになる。以下、実施例に関して説明する。
本実施例では、銀塩として100gの硝酸銀、キレート剤として150gのエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩、15gのゼラチンの各成分を2.0リットルの純水に攪拌して溶解させ、液温50℃の銀塩含有溶液を調製した。このときの銀塩含有溶液中の銀濃度31.8g/l(銀として)、キレート剤濃度75g/l(1.66mol/l)、ゼラチン濃度7.5g/lである。
一方、還元剤である亜硫酸カリウム150gを2.0リットルの純水に攪拌して溶解させ、液温50℃の還元剤含有溶液を調製した。このときの還元剤含有溶液の還元剤濃度は75g/l(0.47mol/l)である。
次に、上記銀塩含有溶液に対し、上記還元剤含有溶液を一括で添加し混合液とした。そして、この混合液の液温を50℃に維持したまま、1時間の攪拌を行い還元反応を行い、混合液中に微粒銀粒子を生成した。
以上のようにして得られた微粒銀粒子を、限外濾過法によって洗浄し余分な不純物を除去して、純水を溶媒とした微粒銀粒子スラリーの状態として採取した。
以上のようにして得られた微粒銀粒子の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例と同様に掲載した。この実施例1で得られた微粒銀粒子は、微粒銀粒子Aと称する。そして、図1には、この微粒銀粒子Aの電子顕微鏡観察像(観察倍率:100000倍)を示した。また、微粒銀粒子Aに関しては、図2に示すように透過型電子顕微鏡(観察倍率:500000倍)による粒子観察を行い、粒子表面にゼラチン被膜が形成されていることを確認した。図2の粒子の周囲の透明に見える部分の層がゼラチン被膜であり、その中に微粒銀粒子が存在することが分かる。
この実施例2では、実施例1のキレート剤であるエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩の添加量を変え、以下のようにして銀塩含有溶液を調製した点が異なるのみである。
本実施例では、銀塩として100gの硝酸銀、キレート剤として300gのエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩、15gのゼラチンの各成分を2.0リットルの純水に攪拌して溶解させ、液温50℃の銀塩含有溶液を調製した。このときの銀塩含有溶液中の銀濃度31.8g/l(銀として)、キレート剤濃度150g/l、ゼラチン濃度7.5g/lである。
以下、実施例1と同様にして微粒銀粒子を製造し、純水を溶媒とした微粒銀粒子スラリーの状態として採取した。
以上のようにして得られた微粒銀粒子の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例と同様に掲載した。この実施例2で得られた微粒銀粒子は、微粒銀粒子Bと称する。そして、図3には、この微粒銀粒子Bの走査型電子顕微鏡観察像(観察倍率:100000倍)を示した。
比較例
[比較例1]
この比較例1では、実施例1のキレート剤であるエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩を省略して、以下のようにして銀塩含有溶液を調製した点が異なる。即ち、キレート剤が無い場合の状態を見るためのものである。
本比較例では、銀塩として100gの硝酸銀、15gのゼラチンの各成分を2.0リットルの純水に攪拌して溶解させ、液温50℃の銀塩含有溶液を調製した。このときの銀塩含有溶液中の銀濃度31.8g/l(銀として)、ゼラチン濃度7.5g/lである。
以下、実施例1と同様にして微粒銀粒子を製造し、純水を溶媒とした微粒銀粒子スラリーの状態として採取した。
以上のようにして得られた微粒銀粒子の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例と同様に掲載した。この比較例2で得られた微粒銀粒子は、微粒銀粒子Cと称する。そして、図4には、この微粒銀粒子Cの電子顕微鏡観察像(観察倍率:50000倍)を示した。
[比較例2]
この比較例2では、実施例1のキレート剤であるエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩に代えてクエン酸・1水和物を用いて、以下のようにして銀塩含有溶液を調製した点が異なるのみである。
本比較例では、銀塩として100gの硝酸銀、キレート剤として150gのクエン酸・1水和物、15gのゼラチンの各成分を2.0リットルの純水に攪拌して溶解させ、液温50℃の銀塩含有溶液を調製した。このときの銀塩含有溶液中の銀濃度31.8g/l(銀として)、キレート剤濃度75g/l、ゼラチン濃度7.5g/lである。
以下、実施例1と同様にして微粒銀粒子を製造し、純水を溶媒とした微粒銀粒子スラリーの状態として採取した。
以上のようにして得られた微粒銀粒子の粉体特性は、表1に他の実施例及び比較例と同様に掲載した。この比較例2で得られた微粒銀粒子は、微粒銀粒子Dと称する。そして、図5には、この微粒銀粒子Dの電子顕微鏡観察像(観察倍率:100000倍)を示した。
<実施例と比較例との対比検討> 上述の各実施例と比較例とを表1を参照しつつ対比することとする。
表1から分かるように、実施例1及び実施例2に記載の本件発明に係る微粒銀粒子A及び微粒銀粒子Bは、平均1次粒子径が100nm以下の粒径を備え、その微粒銀粒子を用いた銀ペーストにより形成した導電膜の膜密度測定でも、4.0g/cmを超える良好な充填性を示している。従って、この各実施例の微粒銀粒子を導電性ペースト又は導電性インクの導電性フィラーとして用い、導体形成を行うと、膜密度が高く、電気抵抗の低い導電膜を得ることが可能となる。また、粒子の凝集が少なく粒子分散性に優れることも図1又は図3の走査型又は透過型電子顕微鏡観察像から明らかである。従って、形成した導体膜の表面形状も滑らかなものとなることが予想できる。
これに対し、比較例1の微粒銀粒子は、銀塩含有溶液にゼラチンを含ませても、キレート剤であるエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩を含まない反応系で銀粒子を還元析出させると粒子分散性が悪くなることを証明する結果となっている。即ち、図4の走査型電子顕微鏡観察像を見れば、明らかに粒子の凝集が起きており、粒子分散性に乏しい事が分かる。更に、膜密度は3.7g/cmであり、4.0g/cmを下回っている。従って、この比較例の微粒銀粒子を導電性ペースト又は導電性インクの導電性フィラーとして用い、導体形成を行っても、膜密度が高く、電気抵抗の低い導電膜は得られず、当該導体膜はポーラスな構造となることが予想できる。
更に、比較例2では、キレート剤としてのエチレンジアミン4酢酸・4ナトリウム塩に代えてクエン酸・1水和物を用いて微粒銀粒子Dを得ている。この微粒銀粒子Dを用いた膜密度の測定でも、4.0g/cmを超える良好な充填性を示し、また、粒子の凝集が少なく粒子分散性に優れることも図5の走査型電子顕微鏡観察像から明らかである。しかしながら、平均1次粒子径が100nmを超えるものとなり、平均1次粒子径100nm以下を安定的に生産することは出来ないことが理解できる。
本件発明に係る微粒銀粒子の製造方法は、従来の湿式法による銀粒子の製造装置をそのまま利用できるものであり、新たな製造設備を要するものではない。従って、製造コストの増大を招くことなく、良好な粒子分散性を示すnmオーダーの1次粒子径を備える微粒銀粒子の効率の良い製造が可能である。そして、本件発明に係る微粒銀粒子銀粉は、その製造過程において、ゼラチンを用いることで、事後的に粒子表面に付着したゼラチン成分を除去することも容易で、分散剤の影響を受けない微粒銀粒子本来の低温焼結性を得ることが可能となる。
実施例1に係る微粒銀粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 実施例1に係る微粒銀粒子の透過型電子顕微鏡観察像である。 実施例2に係る微粒銀粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 比較例1に係る微粒銀粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。 比較例2に係る微粒銀粒子の走査型電子顕微鏡観察像である。

Claims (7)

  1. 湿式還元法による微粒銀粒子の製造方法であって、
    銀塩、キレート剤、銀含有量1g/lに対して0.1g/l〜0.5g/lのゼラチンを含有した銀塩含有溶液と、還元剤を含んだ還元剤含有溶液とを混合して還元反応を起こさせ微粒銀粒子を得ることを特徴とする微粒銀粒子製造方法。
  2. 前記銀塩は、硝酸銀を用いる請求項1に記載の微粒銀粒子製造方法。
  3. 前記キレート剤は、エチレンジアミン錯塩、グルコン酸、グルコン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いた請求項1又は請求項2に記載の微粒銀粒子製造方法。
  4. 前記還元剤は、亜硫酸塩、ホルマリン、ヒドロキノン、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いた請求項1〜請求項3のいずれかに記載の微粒銀粒子製造方法。
  5. 前記銀塩含有溶液は、その銀含有量が銀として0.1g/l〜50.0g/lを含むものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の微粒銀粒子製造方法。
  6. 前記還元剤含有溶液は、還元剤濃度が0.1mol/l〜10.0mol/lである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の微粒銀粒子製造方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の微粒銀粒子製造方法により得られた微粒銀粒子であって、その平均1次粒子径が100nm以下であることを特徴とした微粒銀粒子。
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