JP5571053B2 - 低炭素銅粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素の含有量が極めて低減した低炭素銅粒子に関する。本発明の低炭素銅粒子は、例えばプリント配線板の回路形成や、セラミックコンデンサの外部電極の電気的導通確保のために用いられる銅ペーストの原料として特に好適に用いられる。
従来、電子部品等の電極や回路を形成する方法として、導電性材料である銅粉をペーストに分散させた導電性ペーストを基板に印刷した後、該ペーストを焼成し硬化させて回路を形成する方法が知られている。
例えば、セラミックコンデンサの外部電極の導通に導電性ペーストを用いる場合は、外部電極に導電性ペーストを塗布し、次いで加熱することで脱バインダーを行い、その後に銅粒子を焼結させる。この場合、銅粒子中に含まれる炭素の量が過度に多い場合、焼成によって炭素を含むガスが発生し、そのガスに起因して導体にクラックが発生したり、導体が基板から剥離したりすることがある。
導電性ペーストの原料となる銅粒子の製造方法は、アトマイズ法に代表される乾式法と、水中における銅イオンの還元を利用した湿式法とに大別されるところ、乾式法を採用すると銅粒子中に炭素が混入しにくいという利点がある。しかし乾式法では、粒径の小さな銅粒子を製造することに限界がある。一方、湿式法によればサブミクロンオーダーの微小な銅粒子を容易に製造できるという利点があるが、その反面、反応系に存在する分散剤や還元剤に由来する炭素が多く混入する傾向にある。
そのような製造方法の一つとして、本出願人は先に、二価の銅イオンを有する銅塩水溶液に水酸化アルカリを混合して酸化第二銅を生成し、還元糖を加えることで酸化第二銅を酸化第一銅に還元し、更にヒドラジン系還元剤を加えることで酸化第一銅を還元することにより金属銅を生成する銅粉の製造方法において、銅塩水溶液に錯化剤を予め投入した後、反応当量で1.10〜1.60に相当する水酸化アルカリを混合して、黒色の酸化第二銅を生成するように熟成反応させる銅粉の製造方法を提案した(特許文献1参照)。この方法では、還元剤として還元糖を用いているので、これに由来する炭素が銅粒子中に混入する可能性がある。
そこで本出願人は先に、湿式法で銅粒子を製造するときに用いられる有機化合物からなる分散剤に代えて、リン酸化合物を用いる銅粒子の製造方法を提案した(特許文献2参照)。リン酸化合物を用いる銅粒子の製造方法は、これ以外にも、例えば特許文献3に記載されている。
特開2003−342621号公報 特開2009−74152号公報 特開平9−256007号公報
特許文献2に記載の方法によれば、炭素の含有量の少ない銅粒子を得ることができる。しかしこの方法では、得られる銅粒子の分散性を向上させ、また粒径を揃えることを目的として、工程の途中に洗浄を行って反応系のpHを調整している。pHの調整は、分散性を向上させるためや、均一な粒径の銅粒子を得るために必要な操作であるが、そのぶん作業工程が増えて生産性の点から有利とは言えない。また、そのようなpH調整を行っても、分散性の程度は未だ満足すべきものとはなっていない。
特許文献3に記載の方法では、反応制御のために多量のリン酸を用いているので、得られる銅粒子中に含まれるリンの量が多くなる傾向にある。多量にリンを含む銅粒子は、電気伝導性の点からマイナスに作用することがあり、また廃液中のリンの量も多くなり環境負荷の点から好ましいとは言えない。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術の銅粒子よりも各種の特性が一層向上した低炭素銅粒子を提供することにある。
本発明は、炭素の含有量が0.01重量%未満であり、
リンを100〜1000ppm含有し、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90と、累積体積50容量%における体積累積粒径D50との比D90/D50が1.3〜2.5であり、かつ画像解析によって測定された一次粒子の平均粒径Dが0.1〜4μmであり、
累積体積50容量%における体積累積粒径D 50 と、画像解析によって測定された一次粒子の平均粒径Dとの比(D 50 /D)をyとし、一次粒子の平均粒径Dをxとしたとき、yとxが以下の式(1)を満たす低炭素銅粒子を提供することで前記の課題を解決したものである。
また本発明は、前記の低炭素銅粒子の製造方法として、含炭素化学種の不存在下(ただし、含炭素銅化合物は除く)、銅化合物を含む水性液に還元剤を添加して銅の還元を行う還元工程を有する低炭素銅粒子を製造する方法であって、
銅化合物を含む水性液に塩基性化合物を添加して酸化第二銅を生成させ、
生成した酸化第二銅を第1の還元工程において酸化第一銅に還元させ、次いで
酸化第一銅を第2の還元工程において還元して銅粒子を生成させる工程を含み、
第2の還元工程において、還元反応に寄与しない塩が11〜15mol/L存在する条件下に、還元によって銅粒子を生成させ
前記塩基性化合物としてアンモニアを用い、
前記のいずれかの工程においてリン化合物を添加する低炭素銅粒子の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、炭素の含有量が低減されたものでありながら、微粒でかつ粒度分布の揃った銅粒子が提供される。
図1は、実施例で得られた銅粒子の(D50/D)とDとの関係をプロットしたグラフである。 図2は、実施例1で得られた銅粒子の走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の銅粒子は、炭素の含有量が低減されたものであることを特徴の一つとしている。本発明の銅粒子における炭素の含有量は、0.01重量%未満という極めて少量であり、好ましくは0.005重量%以下、更に好ましくは0.003重量%以下である。炭素の含有量は、堀場製作所製の炭素分析装置であるEMIA−320Vを用い、酸素気流中での燃焼−赤外線吸収方式による測定で求められる。具体的には、るつぼ中に0.5gの試料を入れ、更に助燃剤(タングステンメタル1.5g+スズメタル0.3g)を入れ、このるつぼを装置にセットして測定を行う。
銅粒子の表面に有機化合物からなる表面処理剤が後工程において施されている場合には、該表面処理剤を除去した後に炭素の含有量を測定する。有機化合物からなる表面処理剤は一般に200℃〜300℃の加熱で銅粒子の表面から消失することが知られているので、本発明においては大気雰囲気中で、400℃で30分加熱した後の銅粒子に対して、上述の方法で炭素の含有量を測定する。
本発明の銅粒子に含まれる炭素の量を0.01重量%未満とすることによって、該銅粒子を原料として製造された導電性ペーストは、これを用いて形成された導体を焼成するときに、該導体にクラックが生じたり、基板から剥離したりするという不都合が起こりにくいものとなる。その理由は、銅粒子中に含まれる炭素の量が低減されているので、炭素に起因して発生するガスの量が低減するからである。銅粒子に含まれる炭素の量を低減させるための具体的な手段については後述する。
本発明の銅粒子に含まれる炭素がどのような状態で存在しているかは明らかではないが、例えば有機化合物や炭酸根の状態で存在しているのではないかと推測される。尤も、炭素がどのような状態で存在しているかは、本発明においては臨界的ではない。
本発明の銅粒子は、粒径が揃っていることによっても特徴付けられる。つまり、粒度分布がシャープであることによっても特徴付けられる。本発明の銅粒子の粒度分布の程度は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90と、累積体積50容量%における体積累積粒径D50との比D90/D50で表すことができる。本発明の銅粒子においては、D90/D50の値が1.3〜2.5であり、好ましくは1.35〜2.4であり、更に好ましくは1.4〜2.0である。D90/D50の値がこの範囲内にあることで、ペースト膜としたとき、充填性高く緻密な膜を形成でき、更に膜厚も制御しやすいという有利な効果が奏される。
前記のD90及びD50は、銅粒子の一次粒子の粒径そのものではなく、一次粒子が凝集した二次粒子の凝集径であるところ、本発明の銅粒子は、一次粒子の凝集の程度が低いことによっても特徴付けられる。つまり分散性が良好であることによっても特徴付けられる。一次粒子の凝集を抑制するためには、例えば銅の湿式還元法において、液中に分散剤を存在させることがこれまで一般的に行われてきた手法であった。しかし、分散剤は通常炭素を含む有機化合物であることから、分散剤を用いることに起因して、得られる銅粒子中に炭素が混入してしまう。これに対して、本発明の銅粒子は、炭素の含有量が、上述のとおり低減されているにもかかわらず、分散性の高いものである。つまり本発明の銅粒子は、低炭素量と高分散性という、これまでは相容れなかった二つの特性を同時に満たすものである。
一次粒子の凝集の程度は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50と、画像解析によって測定された一次粒子の平均粒径Dとの比D50/Dで表すことができる。この値が1に近づくほど、一次粒子の凝集の程度は小さくなる。ところで、一般に粒子の凝集は粒径が小さくなるほど、その程度が甚だしくなり、逆に粒径が大きくなるに連れて、凝集は起こりにくくなる。例えば一次粒子の平均粒径Dが数百μmである場合には、D50/Dの値は、特別な処理等を施さなくても1に近づけることができるが、一次粒子の平均粒径Dがサブミクロンオーダーである場合には、D50/Dの値を1に近づけるのは容易ではない。つまり、凝集の程度を表すD50/Dの値は、一次粒子の平均粒径Dの関数となり、D50/Dの値のみを表示しても技術的な意味合いは薄い。そこで本発明者らは、D50/Dの値を一次粒子の平均粒径Dとの関係について種々の検討を行ったところ、D50/Dをyとし、一次粒子の平均粒径Dをxとしたとき、yとxが以下の式(1)を満たす銅粒子を用いることが、導電性ペーストの性能向上の点から有利であることを知見した。
前記の式(1)の関係を満たす銅粒子は、特にペースト膜としたとき平滑な膜を形成できる。更に、充填性高く緻密な膜を形成できるという有利な効果をもたらすので好ましい。
前記の画像解析による平均粒径Dは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、銅粒子を5000倍〜20000倍に拡大して直接観察して得られるSEM像に基づき、個々の銅粒子(測定サンプル数は10個以上)の最大横断長を実測し、測定サンプル数で平均することで求められる。
本発明の銅粒子は、一次粒子の凝集の程度が低いことに加えて微粒であることによっても特徴付けられる。上述のとおり、粒子の凝集は粒径が小さくなるほど、その程度が甚だしくなる。これに対して本発明の銅粒子は、微粒であるにもかかわらず、上述のとおり一次粒子の凝集が低いものである。つまり本発明の銅粒子は、小粒径と高分散性という、これまでは相容れなかった二つの特性を同時に満たすものである。
具体的には、本発明の銅粒子の一次粒子の平均粒径Dは0.1〜4μmである。一次粒子の平均粒径Dがこの範囲内であることによって、膜厚が薄くピッチ幅の狭い導電膜の形成が可能となるという有利な効果がもたらされる。この有利な効果を一層顕著なものとする観点から、本発明の銅粒子の一次粒子の平均粒径Dは好ましくは0.13〜3μmであり、更に好ましくは0.15〜2μmである。
本発明の銅粒子は、その形状に特に制限はなく、例えば球状、多面体状、紡錘状、扁平状、不定形等の種々の形状であり得る。後述する銅粒子の好適な製造方法に従い得られた銅粒子は一般に、表面の一部に非曲面部を有する略球状をしている(後述する図2参照)。例えば、表面の一部に平面部を有し、かつ該平面部端部に稜線や角部を有する略球状をしている。このような形状は、例えばアトマイズ法で製造された表面が滑らかな曲面になっている球状の銅粒子の形状と明らかに相違するものである。表面の一部に非曲面部を有する略球状をしている銅粒子は、真球の粒子に比べて充填性が低いが、かつフレーク状の粒子よりは充填性が高いので、該銅粒子を含むペーストから導電膜を形成した場合、該導電膜は十分な導電性を発現するととともに、脱ガス性に優れるという利点を有する。脱ガス性に優れることは、導電膜にクラック等が生じにくくなる点から有利である。
本発明の低炭素銅粒子は、リンを含有している。リンを含有させることで、低炭素銅粒子の耐酸化性を向上させることができる。尤も、多量のリンを含有させることは銅粒子の電気伝導性の低下の一因となることから、本発明の低炭素銅粒子におけるリンの含有量は、100〜1000ppmとすることが必要であり、好ましくは130〜800ppm、更に好ましくは150〜500ppmである。なおppmは、重量基準の百万分率のことである。また、本発明の低炭素銅粒子は、銅及びリン以外の元素を実質的に含有していないことが好ましい。実質的に含有していないとは、意図的に当該元素を添加することを排除する趣旨であり、例えば製品の製造過程において不可避的に混入する微量の元素や、精製によって除去しきれず不可避的に残留する微量の元素の存在は許容する趣旨である。
本発明の低炭素銅粒子にリンを含有させるためには、例えば後述する製造方法において、リン含有の化合物を添加すればよい。また本発明の低炭素銅粒子におけるリンの含有量は、例えばICP測定で求めることができる。本発明の低炭素銅粒子においてリンは好ましくは酸化物の状態、例えばH3PO4、Na427の状態で存在している。リンが酸化物の状態で存在しているか否かは、X線電子分光法(XPS)やX線回折装置(XRD)によって確認できる。また好ましくは、リンは、銅と化学的に結合していない状態で存在している。リンが銅と化学的に結合した状態で銅粒子中に含まれている場合には、電気伝導性にマイナスに作用することがある。リンが銅と化学的に結合しているか否かは、XPSやXRDによって確認できる。
次に、本発明の銅粒子の好適な製造方法について説明する。本製造方法では、銅化合物を含む水性液に還元剤を添加して銅の還元を行う。この方法においては、その開始から終了にわたり、含炭素化学種の不存在下(ただし、酢酸銅やギ酸銅などの含炭素銅化合物は除く)にすべての工程を行う。含炭素化学種としては、各種の有機化合物(例えば、炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エステル、エーテル、ケトン、オルガノシラン、アミノ酸等)、炭素を含むイオン種(例えばカルボン酸イオンや炭酸イオン等)、炭素材料(例えば黒鉛やグラファイト等)が挙げられる。
本製造方法においては、先ず二価の銅化合物を含む水性液(以下「銅含有液」とも言う。)を調製する。銅化合物としては、例えば硫酸銅、硝酸銅又はこれらの水和物等の水溶性銅化合物を用いることができる。また、銅化合物として酢酸銅を用いることもできる。酢酸銅は含炭素化合物であるが、酢酸銅に由来する炭素は微量なので、酢酸銅に由来する炭素が目的とする銅粒子中に多量に包含されることはない。これらの銅化合物のうち、硫酸銅五水和物及び硝酸銅は、水溶性が高く、水溶液中での銅濃度を高くすることができ、また粒度の均一性の高い銅粒子が得られやすいので好適に用いられる。
銅含有液は、水100重量部に対して銅化合物を好ましくは2.0重量部〜4.0重量部、更に好ましくは3.0重量部〜3.8重量部含む。この範囲の割合で銅化合物が含まれていることで、生産性に優れた合成となるので好ましい。
銅含有液は、水に二価の銅化合物を溶解又は分散させることにより調製される。銅化合物の溶解方法としては例えば、水を攪拌した状態にしておき、これに銅化合物を添加して攪拌する方法が挙げられる。銅含有液の調製の際の液温は、均一な粒径の銅粒子を得る観点から、好ましくは40℃〜90℃、更に好ましくは50℃〜80℃である。
このようにして得られた銅含有液に塩基性化合物を添加して酸化第二銅(CuO)を生成させる。このために用いられる塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物及びアンモニアが挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。生成した酸化第二銅は微小な固体状粒子の状態で液中に懸濁している。
銅含有液への塩基性化合物の添加方法としては例えば、銅含有液を攪拌した状態にしておき、これに塩基性化合物の水溶液を添加して攪拌する方法が挙げられる。このときの液温は好ましくは40℃〜90℃、更に好ましくは50℃〜80℃とすることができる。液温がこの範囲内にあると、一次粒子の凝集が少なく、かつ粒径の均一性の高い銅粒子が得られやすいので好ましい。塩基性化合物として2種以上の組み合わせを用いる場合には、それらを同時に添加してもよく、あるいは順次添加してもよい。
塩基性化合物の銅含有液への添加量は、銅1モルに対して好ましくは0.7〜2.0モル、更に好ましくは0.75〜1.8モルとなるような量とする。塩基性化合物の添加量をこの範囲内にすることで、粒径の均一性の高い銅粒子が得られやすいので好ましい。
銅含有液への塩基性化合物の添加によって酸化第二銅が生成した後も液の攪拌を継続させて熟成を行うことが好ましい。熟成は10分〜60分、特に20分〜40分行うことが好ましい。熟成によって酸化第二銅が十分に生成し、それによって粒度の均一性の高い銅粒子が得られやすいので好ましい。
このようにして酸化第二銅が生成したら、次に第1の還元工程を行う。本還元工程においては、液を攪拌しながら還元剤を添加することで、液中に含まれている酸化第二銅を酸化第一銅(Cu2O)に還元する。したがって、本還元工程において用いられる還元剤は、酸化第二銅を酸化第一銅に還元する作用を有するものである。この還元剤としては、例えばヒドラジンを用いることができる。
本還元工程においては、液中に含まれる銅1モルに対して還元剤を好ましくは0.1モル〜3モル、更に好ましくは0.3モル〜1.5モル添加する。還元剤の添加量がこの範囲内であると、酸化第二銅の酸化第一銅への還元反応が十分に行われ、その結果、目的とする銅粒子はその一次粒子の凝集が起こりにくくなるので好ましい。
本還元工程によって酸化第二銅が酸化第一銅へ還元した後も、液の攪拌を継続させて熟成を行うことが好ましい。熟成は10分〜60分、特に20分〜40分行うことが好ましい。熟成によって酸化第一銅が十分に生成し、目的とする銅粒子はその一次粒子の凝集が起こりにくくなるので好ましい。
第1の還元工程が完了したら、次いで第2の還元工程を行う。本還元工程においては、液を攪拌しながら還元剤を添加することで、液中に含まれている酸化第一銅を銅に還元して銅粒子を生成させる。したがって、本還元工程において用いられる還元剤は、酸化第一銅を銅に還元する作用を有するものである。この還元剤としては、例えばヒドラジンを用いることができる。
第2の還元工程においては、液中に含まれる銅1モルに対して還元剤を好ましくは0.3モル〜3モル、更に好ましくは0.31モル〜2モル添加する。還元剤の使用量をこの範囲内に設定することで、目的とする銅粒子を首尾良く得ることができる。
第2の還元工程における銅粒子の生成に際しては、反応系中に、還元反応に寄与しない水溶性塩を多量に含有させておくことが、粒径の揃った銅粒子を首尾良く得る点から有利であることが本発明者らの検討の結果判明した。銅粒子の粒径を揃えるためには、銅粒子の生成時における液のpHの変動を極力抑えることが重要であるところ、液中に多量の塩を含有させておくことで、該塩が緩衝剤として作用してpHの変動が抑制される。この観点から、銅粒子を生成させるときの液中に存在する塩の濃度を11〜15mol/L、特に11.5〜14mol/Lに設定することが好ましい。
還元反応に寄与しない塩としては、水中で電離して生じたカチオン及びアニオンのいずれもが、第一酸化銅からの銅粒子の生成に寄与しないものが挙げられる。そのようなカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、プロトン等が挙げられる。アニオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、水酸化物イオン等が挙げられる。これらのカチオンとアニオンとの組み合わせからなる塩の具体例としては、NaNO3、NaCl、Na2SO4等が挙げられる。
前記の水溶性塩は、第2の還元工程の開始前に液中に存在していることが好ましい。この目的のために、(イ)第1の還元工程の後、酸化第一銅を液から分離せずに第2の還元工程に付し、かつ第1の還元工程の後、第2の還元工程の前に、かかる水溶性塩を、その濃度が11〜15mol/Lとなるように液中に添加することができる。別法として、(ロ)第1の還元工程の後、酸化第一銅を液から分離して洗浄等の操作を行った後に、分離された酸化第一銅を含み、かつ前記の水溶性塩を11〜15mol/L含むスラリーを調製し、調製されたスラリーを第2の還元工程に付してもよい。
本製造方法を行うために仕込んだ種々の化合物の添加量によっては、第1の還元工程の終了時点で、液中の前記の水溶性塩の濃度が、既に前記の範囲を満たしている場合がある。そのような場合には、追加の水溶性塩の使用は不要であり、引き続き第2の還元工程を行うことができる。
第2の還元工程によって酸化第一銅が銅へ還元した後も、液の攪拌を継続させて熟成を行うことが好ましい。熟成は20分〜120分、特に40分〜90分行うことが好ましい。熟成によって還元が十分に進行し、目的とする銅粒子はその一次粒子の凝集が起こりにくくなるので好ましい。
以上の製造方法においては、いずれかの工程においてリン化合物を添加して、目的とする低炭素銅粒子がリンを含有するようにする。低炭素銅粒子がリンを含有することによって、該粒子の耐酸化性が向上する。また、工程中にリン化合物を添加することで、一次粒子の凝集が抑制され、分散性の良好な銅粒子を得ることができる。
リン化合物の添加の時期としては、例えば(i)銅含有液に塩基性化合物を添加する前、(ii)銅含有液に塩基性化合物を添加するのと同時又はその後であって、かつ第1の還元工程の前、(iii)第1の還元工程において還元剤を添加するのと同時又はその後であって、かつ第2の還元工程の前、(iv)第2の還元工程において還元剤を添加するのと同時又はその後、のいずれか一つの時期又は二つ以上の時期が挙げられる。特に(i)の時期、又は(i)と(iii)の時期の両方にリン化合物を添加すると、一次粒子の凝集の防止に特に効果的であることから好ましい。
リン化合物としては、水の存在下で、オルトリン酸イオン、ピロリン酸イオン、メタリン酸イオン等のリン酸イオンの生成が可能な化合物を用いることが好ましい。そのようなリン化合物として例えば、オルトリン酸;ピロリン酸及びトリポリリン酸等のポリリン酸;トリメタリン酸等のメタリン酸;オルトリン酸ナトリウム及びオルトリン酸カリウム等のオルトリン酸塩;ピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウム等のポリリン酸塩;トリメタリン酸ナトリウム及びトリメタリン酸カリウム等のメタリン酸塩等が挙げられる。これらのリン化合物のうち、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、オルトリン酸塩を用いると、一次粒子の凝集防止に一層効果的である。
本製造方法において添加されるリン化合物の合計量は、P(リン)に換算した量で表して、銅1モルに対して好ましくは0.1ミリモル〜100ミリモル、更に好ましくは0.2ミリモル〜50ミリモルである。リン化合物の添加量がこの範囲内であると、目的とする低炭素銅粒子の電気伝導性を損なわずに、一次粒子の凝集を効果的に防止できるので好ましい。
以上の方法によって製造された銅粒子は、工程の開始から終了にわたり、含炭素化学種(ただし、含炭素銅化合物は除く)の不存在下に反応が進行するので、原理的には炭素を全く含まないか、又は炭素を含んだとしてもその量が極めて低減化されたものとなる。しかも、粒径が揃い、かつ一次粒子の凝集が抑制されたものとなる。銅粒子が炭素を含んでいるとしても、その炭素は不可避的に銅粒子中に混入したものである。本製造方法においては、意図的に銅粒子中に炭素を含有させる操作は行わない。
以上の方法によって目的とする低炭素銅粒子が得られる。このようにして得られた低炭素銅粒子は例えば導電性ペーストの原料として好適に用いられる。この導電性ペーストは、本発明の低炭素銅粒子を含む金属粒子と、有機ビヒクルと、ガラスフリットとを含有するものである。この有機ビヒクルは、樹脂成分と溶剤とを含む。樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、ターピネオール及びジヒドロターピネオール等のテルペン系溶剤や、エチルカルビトール及びブチルカルビトール等のエーテル系溶剤が挙げられる。ガラスフリットとしては、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス等が挙げられる。導電性ペーストにおける金属粉の割合は36〜97.5重量%とすることが好ましい。ガラスフリットの割合は1.5〜14重量%とすることが好ましい。有機ビヒクルの割合は1〜50重量%とすることが好ましい。この導電性ペーストにおける金属粒子としては、本発明の低炭素銅粒子のみを用いてもよく、あるいは該低炭素銅粒子と扁平等の他の形状の銅粒子とを組み合わせて用いてもよい。本発明の低炭素銅粒子と他の形状の銅粒子とを組み合わせて用いることで、ペーストの粘度調整を精密に行うことが容易になる。
このようにして得られた導電性ペーストは、例えば、プリント配線板の回路形成、セラミックコンデンサの外部電極等の電気的導通確保、EMI対策のために好適に使用される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)銅含有水溶液の調製
65℃の純水6.5Lに、硫酸銅五水和物を、銅の濃度が表1に示す値となるように添加して攪拌を行った。これに更にピロリン酸ナトリウムを添加し、このまま30分攪拌を続け、銅含有水溶液を得た。ピロリン酸ナトリウムの添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。
(2)酸化第二銅の生成
この水溶液を攪拌した状態で、該水溶液に、表1に示す2種の塩基性化合物を同時に添加して液中に酸化第二銅を生成させた。そして引き続き30分攪拌した。塩基性化合物の添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。
(3)酸化第二銅の酸化第一銅への還元
次に、ヒドラジン及びアンモニア水を添加して第1の還元反応を行い、酸化第二銅を酸化第一銅に還元させた。そして引き続き30分攪拌した。ヒドラジン及びアンモニア水の添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。この時点での液中における水溶性塩(還元反応に寄与しない塩)の濃度は表1に示すとおりであった。
(4)酸化第一銅の銅粒子への還元
次に液中にピロリン酸ナトリウムを添加し、更にヒドラジンを添加して第2の還元反応を行い、酸化第一銅を銅に還元させた。引き続き1時間攪拌を行って反応を終了させた。ピロリン酸ナトリウムの添加量は、先に添加したピロリン酸ナトリウムの添加量との合計が、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。ヒドラジンの添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。反応終了後、得られたスラリーを、ヌッチェを用いて濾過し、次いで純水で洗浄し、更に乾燥して目的とする銅粒子を得た。この銅粒子をSEMで観察したところ、図2に示すように、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔実施例2〕
(2)の工程までは実施例1と同様の操作を行った。ただし、銅化合物として硫酸銅に代えて硝酸銅を用いた。次に、ヒドラジン及びアンモニア水を添加して第1の還元反応を行い、酸化第二銅を酸化第一銅に還元させた。そして引き続き30分攪拌した。ヒドラジン及びアンモニア水の添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。次に、生成した酸化第一銅を、ヌッチェを用いて濾別し、純水で洗浄した。洗浄後の酸化第一銅を、純水を用いて再スラリー化し(酸化第一銅の割合70%)、更に表1に示す水溶性塩を、同表に示す濃度となるように添加した。
次に液中にピロリン酸ナトリウムを添加し、更にヒドラジンを添加して第2の還元反応を行い、酸化第一銅を銅に還元させた。引き続き1時間攪拌を行って反応を終了させた。ピロリン酸ナトリウムの添加量は、先に添加したピロリン酸ナトリウムの添加量との合計が、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。ヒドラジンの添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。反応終了後、得られたスラリーを、ヌッチェを用いて濾過し、次いで純水で洗浄し、更に乾燥して目的とする銅粒子を得た。この銅粒子をSEMで観察したところ、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔実施例3〕
(2)の工程までは実施例1と同様の操作を行った。ただし、銅含有水溶液は60℃で調製した。次に、ヒドラジン及びアンモニア水を添加して第1の還元反応を行い、酸化第二銅を酸化第一銅に還元させた。そして引き続き30分攪拌した。ヒドラジン及びアンモニア水の添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。次に、酸化第一銅を液と分離せずに、液中に表1に示す水溶性塩を添加した。水溶性塩の添加量は、それまでに液中に存在している水溶性塩との合計の濃度が表1に示す値となるような量とした。
次に液中にヒドラジンを添加して第2の還元反応を行い、酸化第一銅を銅に還元させた。引き続き1時間攪拌を行って反応を終了させた。ヒドラジンの添加量は、銅1モルに対して表1に示す値となる量とした。反応終了後、得られたスラリーを、ヌッチェを用いて濾過し、次いで純水で洗浄し、更に乾燥して目的とする銅粒子を得た。この銅粒子をSEMで観察したところ、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔実施例4ないし実施例16〕
表1に示す条件を採用する以外は、実施例1ないし3と同様にして銅粒子を得た。得られた銅粒子をSEMで観察したところ、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔実施例17〕
本実施例では銅化合物として酢酸銅を用いた。また、表1に示す条件を採用した。これら以外は実施例1ないし3と同様にして銅粒子を得た。得られた銅粒子をSEMで観察したところ、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔比較例1〕
特許文献2に記載の実施例1に従い銅粒子を製造した。先ず、純水6.5Lに硫酸銅6000gを投入して攪拌し、その後、液温を50℃に保持しつつ、硫酸銅水溶液の液量が9Lとなるように、更に水を添加して、濃度を調整した。当該硫酸銅水溶液に、アンモニア水溶液(濃度25%)2537mlを30分で添加して中和し、銅塩化合物スラリーを得た。そして、銅塩化合物スラリーを30分静置して熟成させた。ここまでは銅塩化合物スラリーの液温を50℃に保持したが、熟成後は液温を45℃に調整した。
次に、銅塩化合物スラリーの銅濃度が2.0mol/Lとなるように水を添加して液量を調整した。この銅塩化合物スラリーをpH6.3、液温50℃の条件に保ち、ここに、ヒドラジン一水和物450gとアンモニア水溶液(濃度25%)591mlとを30分間かけて連続添加し、亜酸化銅スラリーとした(第1還元処理)。そして、還元反応を完全に行うため、更に30分間攪拌を続けた。
その後、リパルプ洗浄のため、亜酸化銅スラリーに純水を加えて18Lに液量調整した後、静置して亜酸化銅粒子を沈殿させ、静置後の上澄液を14L抜く操作をpHが4.7になるまで繰り返した。そして、温めた純水8Lを加えて全液量を12Lにし、液温を45℃に維持して、銅濃度を2.0mol/Lに調整し、これを洗浄亜酸化銅スラリーとした。この時点での水溶性塩の濃度は11.7mol/Lであった。
銅濃度調整後の洗浄亜酸化銅スラリーに、次亜リン酸アンモニウム3.02gを添加し、5分間攪拌した。
再び、洗浄亜酸化銅スラリーの銅濃度が2.0mol/Lとなるように水を添加して液量を調整した。この洗浄亜酸化銅スラリーに、ヒドラジン一水和物1200gを30分間で添加した。次に、更に15分間攪拌を行い、還元反応を完全に行わせ銅粒子を還元析出させた(第2還元処理)。得られた銅粒子をSEMで観察したところ、表面の一部に非曲面部を有する略球状のものであることが確認された。
〔比較例2〕
本比較例は、先に背景技術の項で述べた特許文献3(特開平9−256007号公報)の実施例6に対応する例である。30℃の純水を170rpmで攪拌した状態下に硫酸銅五水和物を添加してこれを溶解させ、0.63mol/Lの硫酸銅水溶液を調製した。この溶液にピロリン酸ナトリウム十水和物を添加した。添加量は、銅1モルに対してピロリン酸ナトリウムが95.1ミリモルとなる量とした。この溶液に25%アンモニア水を添加して、銅アンモニア錯イオン溶液を調製した。アンモニア水の添加量は、銅1モルに対してアンモニアが5.66モルとなる量とした。この時点での水溶性塩の濃度は1.8mol/Lであった。この銅アンモニア錯イオン溶液に、無水ヒドラジンを添加した。ヒドラジンの添加量は、銅1モルに対してヒドラジンが3.9モルとなる量とした。然る後、溶液を80℃まで昇温させ、この温度を2時間保持し、銅粒子を得た。
〔比較例3〕
本比較例は、先に背景技術の項で述べた特許文献1(特開2003−342621号公報)の実施例に対応する例である。60℃の純水を170rpmで攪拌した状態下に硫酸銅五水和物及びグリシンを溶解させて2mol/Lの硫酸銅水溶液を調製した。グリシンの添加量は、銅1モルに対してグリシンが0.1モルとなる量とした。この水溶液を攪拌しながら、25%水酸化ナトリウム水溶液を約5分間かけて定量的に添加し、液温60℃で60分間の攪拌を行い、液色が完全に黒色になるまで熟成させて酸化第二銅を生成させた。水酸化ナトリウムの添加量は、銅1モルに対して水酸化ナトリウムが1.77モルとなる量とした。その後30分間放置し、グルコースを添加して、1時間熟成することで酸化第二銅を酸化第一銅に還元した。グルコースの添加量は、銅1モルに対して水酸化ナトリウムが0.52モルとなる量とした。更に、無水ヒドラジンを5分間かけて定量的に添加して酸化第一銅を還元することで金属銅にして銅粒子を得た。ヒドラジンの添加量は、銅1モルに対してヒドラジンが1.95モルとなる量とした。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた銅粒子に含まれる炭素の量を、先に述べた炭素分析で測定し、リンの量をICP発光分析で測定した。また実施例及び比較例で得られた銅粒子のD90及びD50を、日機装株式会社製マイクロトラックHRAを用いて測定した。また一次粒子の平均粒径Dを上述の方法で測定した。D50及びDの測定結果から、D50/DとDとの関係をプロットしたものを図1に示す。同図には、前記の式(1)に従う曲線も併せて示されている。更に、実施例及び比較例で得られた銅粒子について、以下の方法でスラリーを調製し、該スラリーから作られた膜の表面粗さを測定した。これらの結果を以下の表2に示す。
〔スラリーから作られた膜の表面粗さの測定〕
実施例及び比較例で得られた銅粒子と溶剤(ターピネオール95gとエチルセルロース5gとの混合物)とを、1:1の重量比で混合しスラリーとなした。このスラリーを混合機((株)シンキーARE−250)を用い、2000rpmで45秒間回転させて予備混練をした。次いで三本ロール式ミル((株)アイメックス、モデルRMZ−1)で更にスラリーを練った。ロールの間隙は5μmに設定した。このようにして得られたスラリーを、30μmのアプリケータ((株)YOSHIMITSU SEIKI、モデルYR−1)を用いてガラス基板上に塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を80℃で5分間乾燥させた。このようにして得られた膜の表面粗さRa及びRmaxを、表面粗さ形状測定器((株)東京精密、サーフコム130A)を用いて測定した。
表2に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた銅粒子は炭素の含有量が低く、粒度分布がシャープであり、かつ微粒のものであることが判る。また、各実施例で得られた銅粒子を用いて形成された膜は、表面性が良好であることが判る。これに対して、比較例1で得られた銅粒子は、炭素の含有量は低いものの、実施例の銅粒子に比べると分散性に欠け、凝集していることが判る。その結果、膜の表面性が良好でないことが判る。
また、表には示していないが、実施例及び比較例で得られた銅粒子について、50ppmの酸素を含むヘリウム雰囲気中で、TG−MSの測定を行ったところ(昇温速度100℃/min)、各実施例の銅粒子は、0〜1000℃の温度範囲にわたって何らのピークも観察されなかったのに対し、比較例3の銅粒子は、800℃付近に、内包されている炭素に起因するピークが観察された。
更に、表には示していないが、実施例で得られた銅粒子中に含まれるリンの状態をXPSによって調べたところ、リンは酸化物の状態で存在しており、かつリンは銅と化学的に結合していない状態で存在していることが確認された。
以上の測定・評価とは別に、粒径が同程度である実施例10及び比較例2で得られた銅粒子について、体積抵抗値を以下の方法で測定した。その結果、実施例10の銅粒子の体積抵抗値は5.1×10-2Ω・cmという低い値であったのに対して、比較例2の銅粒子の体積抵抗値は3.8×101Ω・cmという高い値であった。比較例2の銅粒子の体積抵抗値が高い理由は、リンを多量(0.2%)に含有していることためであると考えられる。
〔体積抵抗値〕
圧粉抵抗測定システム(三菱化学PD−41)と抵抗率測定器(三菱化学MCP−T600)を用いて圧粉抵抗値を測定した。試料15gをプローブシリンダへ投入し、プローブユニットをPD−41へセットした。油圧ジャッキによって1000f/kgの圧力を印加したときの抵抗値を、MCP−T600を用いて測定した。測定した抵抗値と試料厚みから、体積抵抗値を算出した。

Claims (9)

  1. 炭素の含有量が0.01重量%未満であり、
    リンを100〜1000ppm含有し、
    レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90と、累積体積50容量%における体積累積粒径D50との比D90/D50が1.3〜2.5であり、かつ画像解析によって測定された一次粒子の平均粒径Dが0.1〜4μmであり、
    累積体積50容量%における体積累積粒径D 50 と、画像解析によって測定された一次粒子の平均粒径Dとの比(D 50 /D)をyとし、一次粒子の平均粒径Dをxとしたとき、yとxが以下の式(1)を満たす低炭素銅粒子。
  2. リンが酸化物の状態で存在している請求項に記載の低炭素銅粒子。
  3. 表面の一部に非曲面部を有する略球状である請求項1又は2に記載の低炭素銅粒子。
  4. 表面の一部に平面部を有し、かつ該平面部の端部に稜線又は角部を有する略球状をしている請求項3に記載の低炭素銅粒子。
  5. 請求項1に記載の低炭素銅粒子の製造方法であって、
    含炭素化学種の不存在下(ただし、含炭素銅化合物は除く)、銅化合物を含む水性液に還元剤を添加して銅の還元を行う還元工程を有し
    銅化合物を含む水性液に塩基性化合物を添加して酸化第二銅を生成させ、
    生成した酸化第二銅を第1の還元工程において酸化第一銅に還元させ、次いで
    酸化第一銅を第2の還元工程において還元して銅粒子を生成させる工程を含み、
    第2の還元工程において、還元反応に寄与しない塩が11〜15mol/L存在する条件下に、還元によって銅粒子を生成させ
    前記塩基性化合物としてアンモニアを用い、
    前記のいずれかの工程においてリン化合物を添加する低炭素銅粒子の製造方法。
  6. 前記リン化合物の添加の時期が、(i)銅含有液に塩基性化合物を添加する前、(ii)銅含有液に塩基性化合物を添加するのと同時又はその後であって、かつ第1の還元工程の前、(iii)第1の還元工程において還元剤を添加するのと同時又はその後であって、かつ第2の還元工程の前、(iv)第2の還元工程において還元剤を添加するのと同時又はその後、のいずれか一つの時期又は二つ以上の時期である請求項5に記載の製造方法。
  7. 第1の還元工程の後、酸化第一銅を液から分離せずに第2の還元工程に付し、かつ
    第1の還元工程の後、第2の還元工程の前に、還元反応に寄与しない塩を添加して、還元反応に寄与しない塩の全濃度が11〜15mol/Lとなる条件下に、還元によって銅粒子を生成させる請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 第1の還元工程の後、酸化第一銅を液から分離し、
    分離された酸化第一銅を含み、かつ還元反応に寄与しない塩を11〜15mol/L含むスラリーを調製し、
    調製されたスラリーを第2の還元工程に付して、還元によって銅粒子を生成させる請求項5又は6に記載の製造方法。
  9. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の低炭素銅粒子を含有することを特徴とする導電性ペースト。
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