JP2016094665A - 銀コート銅粉及びそれを用いた導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート - Google Patents

銀コート銅粉及びそれを用いた導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート Download PDF

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浩 岡田
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Abstract

【課題】導電性を低下させることなく、耐酸化性を高めるとともにマイグレーションを効果的に抑制するという両方の特性を有し、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる銀コート銅粉の提供。
【解決手段】芯材として銅粉を用い、その表面が、ニッケルを含む銀で被覆してなる銅粉。銀被覆中に含まれるニッケル含有量は、銀質量に対して5〜800質量ppmであることが好ましく、銀含有量(銀被覆量)は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して0.5〜50質量%であることが好ましい。前記銅粉が球状、フレーク状、円盤状又は楕円体状であり、平均粒径が0.1〜20μmである銀コート銅粉。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性ペースト等の材料として用いられる表面に銀を被覆した銅粉(銀コート銅粉)に関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型ペーストや焼成型ペースト、電磁波シールド塗料のような、銀粉や銀コート銅粉等の金属フィラーを使用した導電性ペーストや導電性塗料が多用されている。すなわち、銀や銀コート銅の金属フィラーペーストを各種基材上に塗布又は印刷した後、加熱硬化あるいは加熱焼成することによって、配線層や電極等となる導電膜を形成することができる。
例えば、樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷し、100℃〜200℃で加熱硬化させて導電膜とし、配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するため、金属フィラーが圧着されて接触することで金属フィラー同士が重なり、電気的に接続した電流パスが形成される。樹脂型導電性ペーストは、硬化温度が200℃以下で処理することから、プリント配線板等の熱に弱い材料を用いている基板に使用されている。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷し、600℃〜800℃に加熱焼成して導電膜とし、配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストは、高い温度によって処理することで、金属フィラー同士が焼結して導通性が確保されるものである。この焼成型導電性ペーストは、このように高い焼成温度で処理されるため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できない点があるが、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現することが可能となる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に使用されている。
一方、電磁波シールドは、電子機器からの電磁気的なノイズの発生を防止するために使用されるもので、特に近年では、パソコンや携帯の筐体が樹脂製になったことから、筐体に導電性を確保するため、蒸着法やスパッタ法で薄い金属皮膜を形成する方法や、導電性の塗料を塗布する方法、導電性のシートを必要な箇所に貼り付けて電磁波をシールドする方法等が提案されている。その中でも、樹脂中に金属フィラーを分散させて塗布する方法や樹脂中に金属フィラーを分散させてシート状に加工してそれを筐体に貼り付ける方法は、加工工程において特殊な設備を必要とせず、自由度に優れた方法として多用されている。
さて、金属フィラーとしては、通常、銅粉や銀粉が使用されている。銅粉は、銀粉に比べて安価であるものの耐酸化性に劣り、110℃以上の温度で取り扱うと酸化被膜が容易に形成されて、導電性が著しく低下するという問題がある。一方、銀粉は、耐酸化性は良好であるものの、マイグレーションが発生しやすいことと価格が高いという問題がある。
このことから、安価な銅粉の耐酸化性を向上させるために、銅粉表面に銀を被覆する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、銀錯塩溶液を用いて銅粉表面に銀を析出させて被覆する方法が提案されている。また、特許文献3には、キレート剤としてEDTA(エチレンジアミン4酢酸)中に銅粉を分散させて、銅表面に銀を還元被覆する方法が提案されている。さらに、特許文献4には、銅粉表面にリン及び/又はホウ素を含有しているニッケル合金を被覆し、さらにこのニッケル合金に銀を被覆する被覆銅粉が提案されている。しかしながら、これらの方法では、銀によるマイグレーションの発生を抑制する方法については何ら示されていない。
一方、銀のマイグレーションを抑制するものとして、特許文献5では銅粒子の表面に銀とチタネートカップリング剤を被覆する方法や、特許文献6では銅と銀の融液を不活性ガス気流中で急冷して凝固することで紛体化して内部から表面に向けて銀濃度が次第に増加する粒子とする方法が提案されている。また、特許文献7では、銅粉表面全体へ均一に銀を被覆せず、銅が表面に露出する部分を残存させることでマイグレーションを改善する方法が提案されている。
しかしながら、チタネートカップリング剤を用いる方法では、銀表面にチタネートカップリング剤が被覆されているために導電性が低下するという問題がある。また、銅と銀の融液を不活性ガス気流中で急冷して紛体化する方法では、融点以上の高温の設備が必要となり、また求める粒径の大きさに制御することが困難であるという問題がある。さらに、部分的に銅を表面に露出する方法では、銅が表面に露出しているため耐酸化性が不十分であることと、導電性ペースト中に配合した場合に露出している銅の部分でゲル化が発生するといった問題がある。
特開昭53−134759号公報 特開昭60−243277号公報 特開平1−119602号公報 特開2002−75057号公報 特開昭61−67702号公報 特公平6−72242号公報 特許第4677900号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、導電性を低下させることなく、耐酸化性を高めるとともにマイグレーションを効果的に抑制するという両方の特性を有し、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる銀コート銅粉を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するための鋭意検討を重ねた。その結果、銅粉の表面にニッケルを含む銀を被覆してなる銀コート銅粉によれば、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、芯材として銅粉を用い、その表面が、ニッケルを含む銀で被覆してなることを特徴とする銀コート銅粉である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、ニッケル含有量が、銀質量100%に対して5質量ppm〜800質量ppmであることを特徴とする銀コート銅粉である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、銀含有量が、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して0.5質量%〜50質量%であることを特徴とする銀コート銅粉である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、前記銅粉は、球状、フレーク状、樹枝状、円盤状、及び楕円体状の何れかの形状であり、当該銀コート銅粉の平均粒子径が0.1μm〜20μmであることを特徴とする銀コート銅粉である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4の何れかの発明に係る銀コート銅粉を、全体の20質量%以上の割合で含むことを特徴とする銀コート銅粉金属フィラーである。
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明に係る銀コート銅粉金属フィラーと、バインダ樹脂と、溶剤とを含むことを特徴とする導電性ペーストである。
(7)本発明の第7の発明は、第5の発明に係る銀コート銅粉金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性塗料である。
(8)本発明の第8の発明は、第5の発明に係る銀コート銅粉金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性シートである。
本発明に係る銀コート銅粉によれば、導電性を低下させることなく、耐酸化性を高めるとともにマイグレーションを効果的に抑制するという両方の特性を有し、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる。
実施例1〜6及び比較例1にて得られた銀コート銅粉のニッケル含有量に対するマイグレーション絶縁時間と比抵抗値の結果をプロットしてグラフ化した図である。
以下、本発明に係る銀コート銅粉の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.銀コート銅粉≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、芯材として銅粉を用い、その銅粉の表面が、ニッケルを含む銀で被覆されてなる。本実施の形態に係る銀コート銅粉は、芯材としての銅粉の表面にニッケルを含む銀めっき液により銀が被覆されることで、銀と共にニッケルも析出されるようになる。なお、したがってこの銀コート銅粉は、特許文献4に記載された、芯材の銅粉と表面の銀層との間にニッケル合金層を介した被覆銅粉とは異なる。
そのメカニズムは不明であるが、本発明者らは、銀のマイグレーションの抑制について鋭意研究を重ねた結果、銀被覆中にニッケルを含有させた銀コート銅粉ではマイグレーションを抑制する挙動を示すことを見出した。すなわち、本実施の形態に係る銀コート銅粉では、導電性を低下させることなく、耐酸化性を高めるとともに銀のマイグレーションを効果的に抑制することができるという両方の特性を有し、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる。
本実施の形態に係る銀コート銅粉において、銀の含有量(銀被覆量)は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。銀の被覆量は、コストの観点からはできるだけ少ない方が好ましいが、少なすぎると銅表面に均一な銀の被膜が確保できず、導電性の低下の原因になる。このことから、銀被覆量は銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。一方で、銀被覆量が多くなるとコストの観点から好ましくないことから、銀被覆量は銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して50質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
また、本実施の形態に係る銀コート銅粉において、芯材としての銅粉の表面に被覆する銀の平均厚み(平均被覆厚み)としては、0.001μm〜0.1μm程度であり、0.02μm〜0.03μmであることがより好ましい。銀の被覆厚みが平均で0.001μm未満であると、均一な銀の被覆を確保できず、また導電性の低下の原因となる。一方で、銀の被覆厚みが平均で0.1μmを超えると、コストの観点から好ましくない。
このように銅粉の表面に被覆する銀の平均厚みは、0.001μm〜0.1μm程度であり、銅粉の平均粒子径と比べて極めて小さい。そのため、銅粉の表面を銀で被覆する前後で、銅粉の平均粒子径は実質的に変化することはない。
具体的に、本実施の形態に係る銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は、0.1μm〜20μmである。なお、平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。銀コート銅粉の平均粒子径がこの範囲にあることで、この銀コート銅粉を金属フィラーとして用いて導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート等としたときに、十分な導電性や良好な成形性を確保することができる。
また、本実施の形態に係る銀コート銅粉において、ニッケル含有量としては、銀の質量100%に対して5質量ppm〜800質量ppmであることが好ましい。銀被覆中に含まれるニッケルが含まれることにより、マイグレーションを抑制する効果が発揮されるため、銀被覆中のニッケル含有量は多い方が好ましく、具体的に5質量ppm以上が好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましい。ただし、さらにニッケルを多く含有させようとすると、後述するように銅表面に対する銀被覆に際してめっき液中に投入するニッケルイオンを増加させなければならず、ニッケルイオン濃度を多くし過ぎるとめっき液組成の銀錯体とニッケル錯体とのバランスが悪くなり、均一に銅粉表面に銀を被覆させることが困難となり、導電性が低下することがある。そのため、ニッケル含有量としては、800質量ppm以下であることが好ましく、これにより十分な導電性を得ることができる(低い比抵抗となる)ため好ましく、より好ましくは500質量ppm以下である。
≪2.芯材の銅粉について≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、上述したように、芯材として銅粉を用いる。芯材として使用される銅粉の形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、円盤状、及び楕円体状のいずれかの形状のものを利用することができる。
なお、上述したように、このような形状をした銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は0.1μm〜20μmになる。平均粒子径がこのような範囲であることで、導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート等の金属フィラーとして利用したときに、十分な導電性や良好な成形性を確保することができる。
銅粉の作製方法としては、特に限定するものではなく、一般的な製造方法で製造された銅粉を用いることができる。例えば、球状の銅粉については、湿式還元法やアトマイズ法等を利用して製造することができる。より具体的に、湿式還元法は、銅を含む溶液に還元剤を添加して、銅を還元析出させることによって球状の銅粉を作製する方法である。また、アトマイズ法は、溶解した銅をるつぼ底部の小孔から流出させて細流とし、これに高速の気流又は水等を吹き付けることによって飛散させ急冷凝固して粉末とする方法である。
また、樹枝状の銅粉については、硫酸銅溶液中で電解を行ってカソード上に銅を析出する電解法を利用して製造することができる。また、フレーク状、円盤状、及び楕円体状の銅粉については、上述した湿式還元法やアトマイズ法で作製した球状銅粉を、ビーズミルやスタンプミル等を用いて機械的に平坦にすることによって製造することができる。
≪3.ニッケルを含む銀の被覆方法≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、芯材としての銅粉に対して、その表面に、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法等の方法により、ニッケルを含む銀を被覆することによって製造することができる。
銅粉表面に均一な厚みで銀を被覆するためには、銀めっきの前に銅粉に対して洗浄処理を施すことが好ましく、具体的には、銅粉を洗浄液中に分散させ、攪拌しながら洗浄を行う。この洗浄処理は、酸性溶液により行うことが好ましく、より好ましくは後述する還元剤にも用いられる多価カルボン酸を用いる。洗浄後には、銅粉をろ過し、分離して水洗する処理を適宜繰り返して、水中に銅粉が分散した水スラリーとする。なお、ろ過処理、分離処理、水洗処理は、公知の方法を用いることができる。
例えば、還元型無電解めっき法により銀被覆する場合は、得られた水スラリーに還元剤と銀イオン溶液を添加することによって、水スラリー中に分散した銅粉の表面に銀が被覆される。ここで、還元剤を水スラリーに予め添加して分散させた後に、その還元剤と銅粉を含む水スラリーに、銀イオン溶液を連続的に添加することによって、銅粉の表面に銀を均一に被覆させることができる。
還元剤としては、種々の還元剤を用いることができるが、銅の錯イオンを還元させることができない、還元力の弱い還元剤であることが好ましい。その弱い還元剤としては、還元性有機化合物を用いることができ、例えば、炭水化物類、多価カルボン酸及びその塩、アルデヒド類等を用いることができる。より具体的には、ぶどう糖(グルコース)、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、酒石酸ナトリウムカリウム、ホルマリン等が挙げられる。
銅粉を含む水スラリーに還元剤を添加した後、十分に還元剤を分散させるために攪拌等を行うことが好ましい。また、水スラリーを所望のpHに調整するために、酸又はアルカリを適宜添加することができる。さらに、アルコール等の水溶性有機溶媒を添加することによって、還元剤である還元性有機化合物の分散を促進させてもよい。
連続的に添加する銀イオン溶液としては、銀めっき液として公知のものを用いることができるが、その中でも硝酸銀溶液を用いることが好ましい。また、硝酸銀溶液は、錯形成が容易であることから、アンモニア性硝酸銀溶液として添加するのがより好ましい。なお、アンモニア性硝酸銀溶液に用いるアンモニアは、硝酸銀溶液に添加したり、予め還元剤と共に水スラリーに添加して分散させておいたり、硝酸銀溶液とは別のアンモニア溶液として同時に水スラリーに添加したり、これらの組み合わせを含めていずれかの方法を用いればよい。
銀イオン溶液は、例えば銅粉と還元剤とを含む水スラリーに添加するにあたり、比較的ゆっくりとした速度で徐々に添加することが好ましく、これにより均一な厚みの銀の被膜を銅粉の表面に形成することができ、耐酸化性等をより一層に高めることができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とすることがより好ましい。さらに、予め水スラリーに添加した還元剤等を別の溶液で調整して、銀イオン溶液と共に徐々に追加で添加するようにしてもよい。
このようにして、銀イオン溶液等を添加した水スラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、銀コート銅粉を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
一方、置換型無電解めっき法で銀コートする方法は、銅と銀のイオン化傾向の違いを利用するものであり、溶液中で銅が溶解したときに発生する電子によって、溶液中の銀イオンを還元させて銅表面に析出させるものである。したがって、置換型の無電解銀めっき液は、銀イオン源として銀塩と、錯化剤と、伝導塩とが主要成分として構成されていれば銀コートが可能であるが、より均一に銀コートするためには必要に応じて界面活性剤、光沢剤、結晶調整剤、pH調整剤、沈殿防止剤、安定剤等を添加することができる。本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造においても、そのめっき液としては特に限定されない。
より具体的に、銀塩としては、硝酸銀、ヨウ化銀、硫酸銀、ギ酸銀、酢酸銀、乳酸銀等を用いることができ、水スラリー中に分散した樹枝状銅粉と反応させることができる。めっき液中の銀イオン濃度としては、1g/L〜10g/L程度とすることができる。
また、錯化剤は、銀イオンと錯体を形成させるものであり、代表的なものとしてクエン酸、酒石酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸等や、エチレンジアミン、グリシン、ヒダントイン、ピロリドン、コハク酸イミド等のN含有化合物、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール、チオセミカルバジド等を用いることができる。めっき液中の錯化剤の濃度としては、10g/L〜100g/L程度とすることができる。
また、伝導塩としては、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、またはそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等を用いることができる。めっき液中の伝導塩の濃度としては、5g/L〜50g/L程度とすることができる。
銅粉の表面に銀を被覆する際の被覆量のコントロールは、例えば、置換型無電解めっき液の銀の投入量を変えることで制御することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とするのが好ましい。
このようにして、反応終了後のスラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、銀コート銅粉を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
ここで、上述したように、本実施の形態に係る銀コート銅粉では、芯材である銅粉の表面が、ニッケルを含む銀で被覆されてなる。このように、銀被覆膜中にニッケルが含まれることで、銅粉表面に対する銀被覆により耐酸化性が高められるとともに、そのニッケルによりマイグレーションを効果的に抑制することができる。
銅粉に被覆する銀層中にニッケルを含有させる方法としては、上述した還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法において、銀めっき液中にニッケルイオンを添加する方法により銀中にニッケルを含有することができる。
つまり、銀めっき液中に、塩化ニッケルやスルファミン酸ニッケル等の可溶なニッケル化合物を溶解させるか、硫化ニッケルや水酸化ニッケル等の水に難溶な化合物を錯塩と共に錯体を形成させて溶解させる方法等によって、めっき液中にニッケルイオンを含有させ、これによりめっき処理を行う。このようにすることで、銀の析出と共にニッケルイオンも還元されて、銀被膜中にニッケルを析出させることができる。また、銀中のニッケル含有量についても、銀めっき液中のニッケルイオンの濃度を変化させることによって容易にコントロールすることができる。
なお、本実施の形態においては、このようにして銀被覆中にニッケルを析出させることによって、上述したように、銀の質量100%に対して5質量ppm〜800質量ppmのニッケル含有量となるようにすることが好ましい。
≪4.導電性ペースト、電磁波シールド用導電性塗料、導電性シート等の用途≫
本実施に係る銀コート銅粉は、上述したように、芯材である銅粉の表面に銀が均一に被覆されており、またその被覆されている銀中にはニッケルが含有されている。このような銀コート銅粉では、十分な耐酸化性を有し、且つ、マイグレーションが抑制されたものとなる。したがって、例えば、本実施の形態に係る銀コート銅粉を用いて銅ペーストとした場合、銅粉を使った場合に問題となっていた耐酸化性を向上させることができ、また銀のマイグレーションが問題となって細線化が困難であった配線形成が極めて容易になる等、金属フィラーとして優れた効果を発揮する。
金属フィラーとして用いるにあたっては、その金属フィラー中における本実施の形態に係る銀コート銅粉の含有量としては、特に限定されないが、全体の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。金属フィラー中の銀コート銅粉の割合を20質量%以上とすることにより、例えば銅ペーストに用いた場合、酸化による導電性低下を防止することができ、またマイグレーションをより効果的に抑制することができる。
なお、導電性を低く保ちたい場合には、銀コート銅粉の混合量を高くして耐酸化性を維持する必要があるが、導電性がある程度の低さでも良い場合には、コストを低減化させる観点から銅の混合量を低くすることも可能である。これらの選択は、使用する用途や求める導電性等によって決めることができるため、種々の用途に応じてその混合量を適宜選択して利用することができる。また、上述した金属フィラーには、本実施の形態に係る銀コート銅粉以外に、例えば、球状、フレーク状、樹枝状、円盤状、及び楕円体状等のいずれかの形状の銅粉を、1種類又は2種類以上で混合してもよい。
例えば、導電性ペースト(銅ペースト)としては、本実施の形態に係る銀コート銅粉を金属フィラーとして含み(以降、「銀コート銅粉金属フィラー」ともいう)、バインダ樹脂と、溶剤と、さらに必要に応じて酸化防止剤やカップリング剤、硬化剤、腐食防止剤等の添加剤とを混練することによって作製することができる。
具体的に、バインダ樹脂としては特に限定されるものではなく、従来用いられているものを使用することができる。例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を使用することができる。
また、溶剤についても、従来使用されている、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルセロソルブ等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銀コート銅粉金属フィラーの粒度を考慮して調整することができる。
さらに、粘度調整のために他の樹脂成分を添加することもできる。例えば、エチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂等が挙げられ、ターピネオール等の有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとして添加することができる。なお、その樹脂成分の添加量としては、焼結性を阻害しない程度に抑える必要があり、好ましくは全体の5重量%以下とする。
また、添加剤としては、例えば、焼成後の導電性を改善するために酸化防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。酸化防止剤の添加量としては、酸化防止効果やペーストの粘度等を考慮して、例えば1重量%〜15重量%程度とすることができる。
また、硬化剤についても、従来使用されている2エチル4メチルイミダゾール等を使用することができる。さらに、腐食抑制剤についても、従来使用されているベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール等を使用することができる。
上述した銀コート銅粉金属フィラーを利用して作製した導電性ペーストを用い、各種の電気回路を形成することができる。この場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではなく、従来行われている回路パターン形成法等を利用することができる。例えば、その銀コート銅粉金属フィラーを利用して作製した導電性ペーストを、焼成基板あるいは未焼成基板に塗布又は印刷し、加熱した後に、必要に応じて加圧して硬化して焼き付けることでプリント配線板や各種電子部品の電気回路や外部電極等を形成することができる。
また、電磁波シールド用材料として、本実施の形態に係る銀コート銅粉金属フィラーを利用する場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えばその銀コート銅粉金属フィラーを樹脂と混合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等と混合して使用することができる。
このときに使用するバインダ樹脂及び溶剤としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているものを使用することができる。例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂やフェノール樹脂等を使用することができる。また、溶剤についても、従来使用されているイソプロパノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等を使用することができる。また、酸化防止剤についても、従来使用されている脂肪酸アミド、高級脂肪酸アミン、フェニレンジアミン誘導体、チタネート系カップリング剤等を使用することができる。
また、上述した銀コート銅粉金属フィラーを利用して電磁波シールド用導電性シートとする場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではない、具体的に、電磁波シールド用導電性シートの電磁波シールド層を形成するために使用される樹脂としては特に限定されるものではなく、従来使用されているものを使用することができ、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体及び共重合体からなる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂等を適宜使用することができる。
電磁波シールド材の製造方法として、特に限定されないが、例えば、銀コート銅粉金属フィラーと樹脂とを溶媒に分散又は溶解した塗料を、基材上に塗布又は印刷することによって電磁波シールド層を形成し、表面が固化する程度に乾燥することによって製造することができる。また、導電性シートの導電性接着剤層において、本実施の形態に係る銀コート銅粉を含有する金属フィラーを利用することもできる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<評価方法>
下記実施例及び比較例にて得られた銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定、結晶子径の測定を行った。
(平均粒子径の測定)
得られた銅粉の平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製,HRA9320 X−100)を用いて測定した。
(比抵抗値測定)
被膜の比抵抗値は、低抵抗率計(三菱化学株式会社製,Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製,SURFCO M130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
(マイグレーション測定)
得られた銅粉を用いてペーストを作製し、そのペーストにより幅1mmの線状パターン2本を間隔0.2mmであけて印刷した。次に、200℃で乾燥させた配線上の間に水滴を垂らし、両側の配線に電圧(10V)印加してその配線間隔における抵抗を測定することによって導通状態になるまでの時間を測定した。
(電磁波シールド特性)
電磁波シールド特性は、各実施例及び比較例の試料について周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定して評価した。具体的に、評価は、ニッケルを含まない銀コート銅粉を使用した比較例3の場合のレベルを『○』とし、これよりも劣る場合を『△』とし、さらに悪い場合を『×』とした。
また、可撓性についても評価するために、作製した電磁波シールドを折り曲げて電磁波シールド特性が変化するかを確認した。
[実施例1]
<還元法による銀コート銅粉の製造>
平均粒子径7.9μmの粒状アトマイズ銅粉(メイキンメタルパウダーズ社製)100gを3%酒石酸水溶液中で約1時間攪拌した後、ろ過、水洗して、2リットルのイオン交換水中に分散させた。ここに、酒石酸2g、ぶどう糖2g、エタノール20mlを加え、さらに28%アンモニア水20mlを加えて攪拌し、その後、硝酸銀23gと硝酸ニッケル6水和物15mgをイオン交換水1.5リットルに溶かした水溶液と、ぶどう糖10g、酒石酸10g、エタノール100mlをイオン交換水300mlに溶かした水溶液と、28%アンモニア水100mlとをそれぞれ60分間にわたり徐々に添加した。なお、このときの浴温は25℃であった。
各水溶液の添加の終了後、粉末をろ過、水洗して、エタノールを通じて乾燥させたところ、銅表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。この銀コート銅粉を回収し、銅粉に被覆された銀の被覆量(銀被覆量)を測定したところ、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.5質量%であった。また、得られた銀コート銅粉のニッケル(Ni)含有量を測定した結果、銀質量100%に対して112質量ppmであった。
<ペースト化>
上述のようにして得られた銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、3.5×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、4.8×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例2]
<フレーク状銅粉の製造>
平均粒子径7.9μmの粒状アトマイズ銅粉(メイキンメタルパウダーズ社製)500gにステアリン酸5gを添加し、ボールミルで扁平化処理を行い、フレーク状銅粉を作製した。ボールミルには、3mmのジルコニアビーズを5kg投入し、500rpmの回転速度で90分間回転させることで扁平化処理を行った。このようにして作製したフレーク状の銅粉について、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器で測定した結果、平均粒子径が18.8μmであり、走査型電子顕微鏡で観察した結果、厚さは0.5μmであった。
<置換法による銀コート銅粉の作製>
得られたフレーク状銅粉に対して、アルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、フレーク状銅粉100gに対して置換型無電解めっき液を用いて銀コートを行った。置換型無電解めっき液としては、硝酸銀30g、硝酸ニッケル6水和物45mg、クエン酸30g、エチレンジアミン15gをイオン交換水1リットルに溶かした組成の溶液とし、その溶液中にフレーク状銅粉を投入し60分間攪拌して反応させた。このときの浴温は25℃であった。
反応終了後、粉末をろ過、水洗し、エタノールを通じて乾燥させたところ、銅表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。この銀コート銅粉を回収し、銅粉に被覆された銀の被覆量(銀被覆量)を測定したところ、銀被覆量は銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して16.6質量%であった。また、得られた銀コート銅粉のニッケル含有量を測定した結果、銀質量100%に対して286質量ppmであった。
<ペースト化>
上述のようにして得られた銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銀コート銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、3.2×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、4.3×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例3]
<球状銅粉の製造>
平均粒子径が30.5μm電解銅粉(ネクセルジャパン製,電解銅粉Cu−300)を、高圧ジェット気流旋回渦方式ジェットミルである株式会社徳寿工作所製のNJ式ナノグラインディングミル(NJ−30)を用いて、空気流量200リットル/分、粉砕圧力10kg/cm、約400g/時間で7パス実施して、粉砕・微粉化した。得られた銅粉は、粒状であり、その平均粒子径は6.4μmであった。
得られた粒状銅粉に対して、アルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、実施例1と同様な方法で銀被覆処理を行った。このとき、硝酸ニッケル6水和物の量を5mgに変更したこと以外は実施例1と同様な方法とした。こうして得られた銀コート銅粉の銀被覆量を測定したところ、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.8質量%であり、また銀コート銅粉のニッケル含有量を測定した結果、銀質量100%に対して30質量ppmであった。
<ペースト化>
上述のようにして得られた銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、2.8×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、3.9×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例4]
銀コート銅粉中のニッケル含有量の影響を調べるために、銀被覆量とニッケル含有量を変化させ、抵抗値とマイグレーションの影響について調べた。
すなわち、先ず、実施例3の方法で得られた粒状銅粉に対してアルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、実施例1と同様な方法で銀被覆処理を行った。このとき、硝酸ニッケル6水和物の量を60mgに変更したこと以外は実施例1と同様な方法とした。こうして得られた銀コート銅粉の銀被覆量を測定したところ、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.9質量%であり、得られた銀コート銅粉のニッケル含有量を測定した結果、銀質量100%に対して452質量ppmであった。
上述のようにして作製した銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、3.0×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、4.6×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例5]
実施例4と同様に、銀コート銅粉中のニッケル含有量の影響を調べるために、銀被覆量とニッケル含有量を変化させ、抵抗値とマイグレーションの影響について調べた。
すなわち、先ず、実施例3の方法で得られた粒状銅粉に対してアルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、実施例1と同様な方法で銀被覆処理を行った。このとき、硝酸銀の量を26gに変更し、硝酸ニッケル6水和物の量を110mgに変更したこと以外は実施例1と同様な方法とした。こうして得られた銀コート銅粉の銀被覆量を測定したところ、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して12.4質量%であり、得られた銀コート銅粉のニッケル含有量を測定した結果、銀質量100%に対して734質量ppmであった。
上述のようにして作製した銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、3.4×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、5.1×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例6]
実施例4及び5と同様に、銀コート銅粉中のニッケル含有量の影響を調べるために、銀被覆量とニッケル含有量を変化させ、抵抗値とマイグレーションの影響について調べた。
すなわち、先ず、実施例3の方法で得られた粒状銅粉に対してアルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、実施例1と同様な方法で銀被覆処理を行った。このとき、硝酸銀の量を21gに変更し、硝酸ニッケル6水和物の量を150mgに変更したこと以外は実施例1と同様な方法とした。こうして得られた銀コート銅粉の銀被覆量を測定したところ、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.3質量%であり、得られた銀コート銅粉のニッケル(Ni)含有量を測定した結果、銀質量100%に対して1054質量ppmであった。
上述のようにして作製した銀コート銅粉45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、4.9×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、9.3×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[実施例7]
実施例1にて作製した銀コート銅粉を樹脂に分散して電磁波シールド材とした。なお、銀コート銅粉を作製するための銅粉の原料及びその銅粉に銀を被覆して銀コート銅粉を作製するまでの条件は、実施例1と同様とし、銀被覆量が銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.5質量%であり、ニッケル含有量が銀質量100%に対して112ppmである銀コート銅粉を使用した。
この銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成して電磁波シールド用導電性シートを得た。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、測定結果を示す。
[実施例8]
実施例2にて作製した銀コート銅粉にフレーク状銅粉を混合し、これらを樹脂に分散し電磁波シールド材とした。なお、銀コート銅粉を作製するための銅粉の作製及びそのフレーク状銅粉に銀を被覆して銀コート銅粉を作製するまでの条件は、実施例2と同様とした。得られた銀コート銅粉の銀被覆量は銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して16.6質量%であり、ニッケル含有量は銀質量100%に対して286質量ppmであった。また、混合するフレーク状銅粉についても、実施例2と同様な方法で作製した。ただし、混合する銅粉の酸化被膜の形成を防ぐために、フレーク状に形成した後にアルカリ水溶液による脱脂処理と希硫酸による酸化被膜の除去処理を行い純水で十分洗浄した後、ステアリン酸ナトリウム水溶液を添加して防錆処理を行った。
この銀コート銅粉10gと、フレーク状銅粉30gとに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成して電磁波シールド用導電性シートを得た。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に結果を示す。
[比較例1]
ニッケルを含まない銀コート銅粉を作製し、比較評価を行った。
ニッケルを含まない銀コート銅粉は、硝酸ニッケル6水和物を添加しないめっき液を用いたこと以外は実施例1と同じ方法により作製した。このようにして得られた銀コート銅粉の銀被覆量は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10.8質量%であった。
上述のようにして得られた銀コート銅粉45gに、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、3.3×10−5Ω・cm(硬化温度150℃)、4.7×10−6Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用いて、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。表1に、測定結果を示す。
[比較例2]
ニッケルの含まない銀コート銅粉を作製し、電磁波シールド特性について比較評価を行った。なお、ニッケルを含有しない銀コート銅粉は、比較例1の銀コート銅粉を用いた。
この銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成して電磁波シールド用導電性シートを得た。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に結果を示す。
[比較例3]
銀を被覆していない銅粉との比較を行うために、実施例2にて作製したフレーク状銅粉に銀を被覆せずに、その特性を評価した。
実施例2にて作製したフレーク状銅粉(銀被覆なし)45gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値を測定した結果、それぞれ、2.8×10−4Ω・cm(硬化温度150℃)、6.6×10−5Ω・cm(硬化温度200℃)であった。
また、作製したペーストを用い、上述した方法によりマイグレーション測定を行った。
また、電磁波シールド材としての特性を調べるため、フレーク状銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成して電磁波シールド用導電性シートを得た。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、測定結果をまとめて示す。
Figure 2016094665
表1の結果から、ニッケルを含む銀コート銅粉(実施例1〜6)では、ニッケルを含まない銀コート銅粉(比較例1)と比べて、マイグレーション絶縁時間が長くなり、マイグレーションが抑制されていることが分かる。また、実施例1〜5のニッケルを含む銀コート銅粉では、比抵抗がニッケルを含まない銀コート銅粉(比較例1)とほぼ同等であることも分かる。なお、比較例1の銀コート銅粉では、マイグレーション絶縁時間が短く、マイグレーションを効果的に抑制できていないことが分かる。
これらのことは図1からも分かる。図1は、実施例1〜6及び比較例1にて得られた銀コート銅粉の、ニッケル含有量に対するマイグレーション絶縁時間と比抵抗(硬化温度200℃)の結果をそれぞれプロットしてグラフ化したものである。
さらに、ニッケルを含む銀コート銅粉(実施例7、8)をペースト化して作製した被膜の比抵抗値や電磁波シールド特性についても、ニッケルを含まない銀コート銅粉(比較例2)による被膜と同等に優れており、比較例3の銅粉(銀被覆なし)と比べて極めて高い特性を有していることが分かる。

Claims (8)

  1. 芯材として銅粉を用い、その表面が、ニッケルを含む銀で被覆してなることを特徴とする銀コート銅粉。
  2. ニッケル含有量が、銀質量100%に対して5質量ppm〜800質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の銀コート銅粉。
  3. 銀含有量が、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して0.5質量%〜50質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀コート銅粉。
  4. 前記銅粉は、球状、フレーク状、樹枝状、円盤状、及び楕円体状の何れかの形状であり、当該銀コート銅粉の平均粒子径が0.1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の銀コート銅粉。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の銀コート銅粉を、全体の20質量%以上の割合で含むことを特徴とする銀コート銅粉金属フィラー。
  6. 請求項5に記載の銀コート銅粉金属フィラーと、バインダ樹脂と、溶剤とを含むことを特徴とする導電性ペースト。
  7. 請求項5に記載の銀コート銅粉金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性塗料。
  8. 請求項5に記載の銀コート銅粉金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性シート。
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