JP2017066462A - 銀コート銅粉の製造方法、及びそれを用いた導電性ペーストの製造方法 - Google Patents

銀コート銅粉の製造方法、及びそれを用いた導電性ペーストの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】銀を被覆した樹枝状銅粉同士が接触する際における接点を多くして優れた導電性を確保しつつ、凝集を防止し、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用できる樹枝状の銀コート銅粉の製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る銀コート銅粉の製造方法は、電解法により電解液から陰極上に銅粉を析出させる工程と、銅粉の表面に銀を被覆する工程とを有する方法であって、銀コート銅粉が、主幹と複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、主幹及び枝は断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの、表面に銀が被覆された平板状の銅粒子から構成され、平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmとなる製造方法である。電解法において、電解液には、特定のフェナジン構造を有する化合物、特定のアゾベンゼン構造を有する化合物、及び特定のフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物から選ばれる1種以上を含有させる。【選択図】図1

Description

本発明は、表面に銀を被覆した銅粉(銀コート銅粉)の製造方法に関するものであり、より詳しくは、導電性ペースト等の材料として用いることで導電性を改善させることができる新たな樹枝状形状の銀コート銅粉の製造方法及びそれを用いた導電性ペーストの製造方法に関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型ペーストや焼成型ペースト、電磁波シールド塗料のような、銀粉や銀コート銅粉等の金属フィラーを使用したペーストや塗料が多く用いられている。銀粉や銀コート銅粉の金属フィラーペーストは、各種基材上に塗布又は印刷され、加熱硬化あるいは加熱焼成の処理を受けて、配線層や電極等となる導電膜を形成する。
例えば、樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、100℃〜200℃で加熱硬化させて導電膜として配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するため、金属フィラーが圧着されて接触することで金属フィラーが重なり、電気的に接続した電流パスが形成される。この樹脂型導電性ペーストは、硬化温度が200℃以下で処理されることから、プリント配線板等の熱に弱い材料を使用している基板に用いられている。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、600℃〜800℃に加熱焼成させて導電膜として配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストは、高い温度によって処理することで、金属フィラーが焼結して導通性が確保されるものである。この焼成型導電性ペーストは、焼成温度が高いため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できないものの、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現することが可能となる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に用いられる。
一方、電磁波シールドは、電子機器からの電磁気的なノイズの発生を防止するために使用されるもので、特に近年では、パソコンや携帯の筐体が樹脂製になったことから、筐体に導電性を確保するために、蒸着法やスパッタ法で薄い金属皮膜を形成する方法や、導電性の塗料を塗布する方法、導電性のシートを必要な箇所に貼り付けて電磁波をシールドする方法等が提案されている。その中でも、樹脂中に金属フィラーを分散させて塗布する方法や樹脂中に金属フィラーを分散させてシート状に加工してそれを筐体に貼り付ける方法では、加工工程において特殊な設備を必要とせず自由度に優れており多用されている。
しかしながら、このような金属フィラーを樹脂中に分散させて塗布する場合やシート状に加工する場合においては、金属フィラーの樹脂中における分散状態が一様にならないため、電磁波シールドの効率を得るために金属フィラーの充填率を高める等の方法が必要となる。ところが、その場合には、多量の金属フィラーの添加することによってシート重量が重くなるとともに、樹脂シートの可撓性を損なう等の問題が発生していた。そのため、例えば特許文献1においては、それらの問題を解決するために平板状の金属フィラーを使用する方法が提案されており、このことによって、電磁波シールド効果に優れ、可撓性も良好な薄いシートを形成することができるとしている。
ここで、平板状の銅粉を作製するために、例えば特許文献2では、導電性ペーストのフィラーに適したフレーク状銅粉を得る方法が開示されている。具体的には、平均粒径0.5μm〜10μmの球状銅粉を原料として、ボールミルや振動ミルを用いて、ミル内に装填したメディアの機械的エネルギーにより機械的に平板状に加工するものである。
また、例えば特許文献3では、導電性ペースト用銅粉末、詳しくはスルーホール用及び外部電極用銅ペーストとして高性能が得られる円盤状銅粉末及びその製造方法に関する技術が開示されている。具体的には、粒状アトマイズ銅粉末を媒体攪拌ミルに投入し、粉砕媒体として1/8インチ〜1/4インチ径のスチールボールを使用して、銅粉末に対して脂肪酸を重量で0.5%〜1%添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工するものである。
一方、これら導電性ペーストや電磁波シールド用に使用されている金属フィラーとしては、銀粉が多く用いられているが、低コスト化の流れにより、銀粉より安価な銅粉の表面に銀をコートすることで銀の使用量を低減させた銀コート銅粉を使用する傾向にある。
銅粉の表面に銀を被覆する方法としては、置換反応によって銅表面に銀を被覆する方法と、還元剤が含まれる無電解めっき溶液中で銀を被覆する方法がある。
置換反応によって銀を被覆する方法では、溶液中で銅が溶出するときに発生した電子によって銀イオンが還元されることで銅表面に銀の被膜が形成される。例えば特許文献4には、銀イオンが存在する溶液中に銅粉を投入することで、銅と銀イオンの置換反応によって銅表面に銀の被膜が形成される製造方法が開示されている。しかしながら、この置換反応による方法では、銅表面に銀の被膜が形成されると、それ以上の銅の溶解が進行しないため、銀の被覆量を制御できないという問題がある。
そのような問題を解決するために、還元剤が含まれた無電解めっき液で銀を被覆する方法がある。例えば特許文献5には、還元剤が溶存した溶液中で銅粉と硝酸銀との反応によって銀を被覆した銅粉を製造する方法が提案されている。
さて、銅粉としては、デンドライト状と呼ばれる樹枝状に析出した電解銅粉が知られており、形状が樹枝状になっていることから表面積が大きいことが特徴となっている。このようにデンドライト状の形状であることにより、これを導電膜等に用いた場合には、そのデンドライトの枝が重なり合い、導通が通りやすく、また球状粒子に比べて粒子同士の接点数が多くなることから、導電性ペースト等における導電性フィラーの量を少なくすることができるという利点がある。例えば、特許文献6及び7には、デンドライト状を呈した銅粉表面に銀を被覆した銀被覆銅粉が提案されている。
具体的に、その特許文献6及び7には、デンドライト状により一層成長したものとして、主軸から分岐した長い枝が特徴のデンドライトが開示され、その銀被覆銅粉は、従来のデンドライトよりも粒子同士の接点が多くなることで導通性が向上し、導電性ペースト等に用いると導電性粉末の量を少なくしても導電性を高めることができるとしている。
一方、電解銅粉の樹枝を発達させると、導電性ペースト等に用いた場合に電解銅粉同士が必要以上に絡み合って凝集が発生してしまい樹脂中に均一に分散しなくなり、また流動性が低下して非常に扱い難くなり、印刷等による配線形成に問題が生じて生産性を低下させることの指摘が特許文献8に示されている。なお、特許文献8では、電解銅粉自体の強度を高めるため、電解銅粉を析出させるための電解液の硫酸銅水溶液中にタングステン酸塩を添加することで、電解銅粉自体の強度を向上させ、樹枝を折れ難くし、高い強度に成形することができるとしている。
このように、樹枝状の銅粉を導電性ペースト等の金属フィラーとして用いるのは容易でなく、ペーストの導電性の改善がなかなか進まない原因ともなっている。
導電性を確保するためには、3次元的な形状を有する樹枝状形状の方が粒状のものよりも接点を確保しやすく、導電性ペーストや電磁波シールドとして高い導電性を確保することが期待できる。しかしながら、従来のデンドライト状の形状を呈した銀被覆銅粉では、主軸から分岐した長い枝が特徴であるデンドライトであって、細長い枝状の形状であったことから、接点を確保する点から考えると構造が単純であり、より少ない銀被覆銅粉を用いて効果的に接点を確保する形状としては理想的な形状となっていない。
特開2003−258490号公報 特開2005−200734号公報 特開2002−15622号公報 特開2000−248303号公報 特開2006−161081号公報 特開2013−89576号公報 特開2013−100592号公報 特開2011−58027号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、銀を被覆した樹枝状銅粉同士が接触する際における接点を多くして優れた導電性を確保しつつ、凝集を防止して、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる樹枝状形状の銀コート銅粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するための鋭意検討を重ねた。その結果、樹枝状に成長した主幹とその主幹から分かれた複数の枝とを有する形状であり、断面平均厚さが特定の範囲である平板状の銅粒子が集合して構成され、その表面に銀が被覆された銀コート銅粉であって、当該銀コート銅粉の平均粒子径(D50)が特定の範囲であることにより、優れた導電性を確保しつつ、例えば樹脂と均一に混合させることができ導電性ペースト等の用途に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、電解法により電解液から陰極上に銅粉を析出させる工程と、前記銅粉の表面に銀を被覆する工程と、を有する銀コート銅粉の製造方法であって、前記銀コート銅粉は、主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、該主幹及び該枝は、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの、表面に銀が被覆された平板状の銅粒子から構成され、平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmであることを特徴とする銀コート銅粉の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銀コート銅粉の嵩密度が0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲である、銀コート銅粉の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記銀コート銅粉のBET比表面積が0.2m/g〜5.0m/gである、銀コート銅粉の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、銀被覆量が銀被覆した銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%となるように前記銅粉に銀を被覆させる、銀コート銅粉の製造方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記電解液は、銅イオンを含む硫酸酸性の銅電解液であり、前記電解液に、1mg/L〜10,000mg/Lの含有量で、下記式(1)で示されるフェナジン構造を有する化合物、下記式(2)で示されるアゾベンゼン構造を有する化合物、及び下記式(3)で示される、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選ばれる1種以上を含有させる、銀コート銅粉の製造方法である。
Figure 2017066462
[式(1)中、R,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基であり、Aがハライドアニオンである。]
Figure 2017066462
[式(2)中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。]
Figure 2017066462
[式(3)中、R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12,R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基であり、Aがハライドアニオンである。]
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、前記電解液に、500mg/L以下の含有量で塩化物イオンを含有させる、銀コート銅粉の製造方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記電解液中の銅イオンの濃度は1g/L〜20g/Lである、銀コート銅粉の製造方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明に係る銀コート銅粉の製造方法により得られる銀コート銅粉を、当該金属フィラー全体において20質量%以上の割合で含有させることを特徴とする金属フィラーの製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第8の発明に係る金属フィラーの製造方法により得られる金属フィラーを、樹脂に混合させることを特徴とする導電性ペーストの製造方法である。
本発明によれば、接点を多く確保することができるとともに接触面積を大きくとることができ、優れた導電性を確保し、また凝集を防止して導電性ペーストや電磁波シールド等の用途に好適に利用することができる銀コート銅粉を製造することができる。
電解液中のサフラニン濃度と銀コート銅粉の比表面積の関係を表す図である。 電解液中のサフラニン濃度と銀コート銅粉を構成する銅粒子の断面平均厚さの関係を表す図である。 電解液中のメチルオレンジ濃度と銀コート銅粉の比表面積の関係を表す図である。 電解液中のメチルオレンジ濃度と銀コート銅粉の嵩密度の関係を表す図である。 電解液中のヤヌスグリーンB濃度と銀コート銅粉の比表面積の関係を表す図である。 電解液中のヤヌスグリーンB濃度と銀コート銅粉の比表面積の関係を表す図である。
本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.樹枝状銀コート銅粉の形状≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法は、電解法により電解液から陰極上に析出させて銅粉を得た後、その銅粉の表面に銀を被覆することによって製造するものである。まず、この製造方法により得られる銀コート銅粉及びその形状について説明する。
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて銅粉を観察したとき、直線的に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、その主幹及び枝は、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの表面が銀で被覆された平板状の銅粒子から構成されている。本実施の形態に係る銀コート銅粉は、このように銀が被覆された平板状の銅粒子から構成されており、その平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmである。
この平板状の銅粒子から構成されて樹枝状の形状をなす銀コート銅粉は、1層のみから構成されるものに限られず、複数の重なった積層構造で構成されていてもよい。以下では、本実施の形態に係る銀コート銅粉を「樹枝状銀コート銅粉」ともいう。
なお、上述したように、本実施の形態に係る銀コート銅粉は、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、直流電流を流して電気分解することにより陰極上に析出させて得た樹枝状銅粉の表面に、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法により銀を被覆することで製造することができる。銀を被覆する前の平板状の銅粒子の断面平均厚さ、樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径、嵩密度、及びBET比表面積等は、その電解条件を変更することで制御可能である。詳しくは後述する。
また、詳しくは後述するが、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉の銀被覆量は、銀被覆した銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%であるが、銀の厚さ(被覆厚さ)は0.15μm程度以下の極薄い被膜である。そのため、樹枝状銀コート銅粉は、銀を被覆する前の樹枝状銅粉の形状をそのまま保持した形状になる。また、銀を被覆する前後で、平板状の銅粒子の断面平均厚さ、平均粒子径、嵩密度、及びBET比表面積値は実質的に変わらない。
ここで、主幹及び枝を構成する銀が被覆された平板状の銅粒子は、その断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである。銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さは、より薄い方が平板としての効果が発揮されることになる。すなわち、断面平均厚さが5.0μm以下の平板状の銅粒子により主幹及び枝が構成されることで、その銀が被覆された銅粒子同士、また銀コート銅粉同士が接触する面積を大きく確保することができ、その接触面積が大きくなることで、低抵抗、すなわち高導電率を実現することができる。このことにより、より導電性に優れ、またその導電性を良好に維持することができ、導電性塗料や導電性ペーストの用途に好適に用いることができる。また、この銀コート銅粉が、銀が被覆された微細な平板状の銅粒子により構成されていることで、配線材等の薄型化に貢献することができる。
なお、銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さが5.0μm以下の薄いものであっても、平板の大きさが小さすぎると凹凸が減少することになるため、銀コート銅粉同士が接触する際に接点の数が少なくなってしまう。したがって、銀が被覆された銅粒子の断面平均厚さの下限値としては、上述したように0.02μm以上であることが好ましい。このように銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmであることより、接点の数を有効に増やすことができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉においては、その平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmである。平均粒子径は、後述する電解条件を変更することで制御可能である。また、必要に応じて、ジェットミル、サンプルミル、サイクロンミル、ビーズミル等の機械的な粉砕を付加することによって、所望とする大きさにさらに調整することが可能である。なお、平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。
ここで、例えば特許文献1でも指摘されているように、樹枝状銀コート銅粉の問題点としては、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、樹脂中の金属フィラーが樹枝状に発達した形状であることにより、樹枝状の銅粉同士が絡み合って凝集が発生し、樹脂中に均一に分散しないことが挙げられる。また、その凝集により、ペーストの粘度が上昇して印刷による配線形成に問題が生じる。このことは、樹枝状銀コート銅粉の形状(粒子径)が大きいために発生するものであり、樹枝状の形状を有効に活かしながらこの問題を解決するためには、樹枝状銀コート銅粉の形状を小さくすることが必要となる。ところが、樹枝状銀コート銅粉の粒子径を小さくしすぎると、その樹枝状形状を確保することができなくなる。そのため、樹枝状形状であることの効果、すなわち3次元的形状であることにより表面積が大きく成形性や焼結性に優れ、また枝状の箇所を介して強固に連結されて高い強度で成形できるという効果を確保するには、樹枝状銀コート銅粉が所定以上の大きさであることが必要となる。
この点において、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉では、その平均粒子径が1.0μm〜100μmであることにより、表面積が大きくなり、良好な成形性や焼結性を確保することができる。そして、この樹枝状銀コート銅粉では、樹枝状の形状であることに加えて、樹枝状形状を形成する主幹及び枝が平板状の銅粒子が集合して構成されているため、樹枝状であることの3次元的効果と、その樹枝形状を構成する銅粒子が平板状であることの効果により、銀コート銅粉同士の接点をより多く確保することができる。
平板状の銀コート銅粉を作製する方法として、特許文献2や特許文献3には、機械的な方法で例えば球状銅粉を平板状にする方法が記載されている。このように、機械的な方法で平板状の形状にする場合には、機械的加工時に銅の酸化を防止する必要があるため、脂肪酸を添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工している。しかしながら、完全に酸化を防止することができないことや、加工時に添加している脂肪酸がペースト化するときに分散性に影響を及ぼす場合があるため、加工終了後に除去することが必要となるが、その脂肪酸が機械加工時の圧力で銅表面に強固に固着することがあり完全に除去できないという問題が発生し、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用したときに酸化被膜や脂肪酸の付着が抵抗を大きくする原因となる。
これに対して、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉では、機械的な加工を行うことなく直接電解法により平板状の銅粒子を形成させ樹枝状の形状に成長させることによって作製できるため、機械加工で問題となる酸化の発生がなく、また脂肪酸を除去する必要もなく、電気導電性の特性を極めて良好な状態とすることができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉では、特に限定されないが、その嵩密度が0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲であることが好ましい。嵩密度が0.5g/cm未満であると、銀コート銅粉同士の接点を十分に確保することができない可能性がある。一方で、嵩密度が5.0g/cmを超えると、銀コート銅粉の平均粒子径も大きくなり、表面積が小さくなって成形性や焼結性が悪化することがある。
また、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉では、特に限定されないが、そのBET比表面積の値が0.2m/g〜5.0m/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.2m/g未満であると、銀が被覆された銅粒子が、上述したような所望の形状とはならないことがあり、高い導電性が得られないことがある。一方で、BET比表面積値が5.0m/gを超えると、樹枝状銀コート銅粉の表面の銀被覆が不均一となり高い導電性が得られない可能性がある。また、銀コート銅粉を構成する銅粒子が細かくなりすぎてしまい、銀コート銅粉が細かいひげ状の状態となって、導電性が低下することがある。なお、BET比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠して測定することができる。
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉は、上述したように、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの平板状であって表面に銀が被覆されている銅粒子によって樹枝状に構成されたものである。この樹枝状銀コート銅粉は、銀被覆する前の樹枝状銅粉に、好ましくは銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%の割合で銀が被覆されたものであり、銀の厚さ(被覆厚さ)としては極薄い被膜である。
銀被覆厚さは、銀を被覆する前の銅粉の比表面積に関係する。つまり、樹枝状銅粉を構成する平板状の銅粒子の厚さが厚いと比表面積は小さくなり、薄くなるほど比表面積は大きくなる。そのため、同じ銀被覆量でも、平板状の銅粒子の厚さが薄いほど銀被覆厚さは薄くなる。そして、銀被覆厚さは、比表面積の関係から平板状の銅粒子の厚さに比べて1/10以下の厚さになることから、樹枝状銀コート銅粉は、常に銀被覆する前の樹枝状銅粉の形状をそのまま保持した形状になる。
樹枝状銀コート銅粉における銀の被覆量は、上述したように、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。銀の被覆量は、コストの観点からはできるだけ少ない方が好ましいが、少なすぎると銅粉表面に均一な銀の被膜が確保できず、導電性の低下の原因になる。そのため、銀の被覆量としては、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、銀の被覆量が多くなるとコストの観点から好ましくなく、銀の被覆量としては、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉において、樹枝状銅粉の表面に被覆する銀の平均厚みとしては0.0003μm〜0.15μm程度であり、0.005μm〜0.05μmであることが好ましい。銀の被覆厚みが平均で0.0003μm未満であると、銅粉の表面に均一な銀の被覆を確保することができず、また導電性の低下の原因となる。一方で、銀の被覆厚みが平均で0.15μmを超えると、コストの観点から好ましくない。このように樹枝状銀コート銅粉の表面に被覆する銀の平均厚みは0.15μm以下であり、銀を被覆する前の樹枝状銅粉を構成する平板状の銅粒子の断面平均厚さ(0.02μm〜5.0μm)と比べて小さい。そのため、樹枝状銅粉の表面を銀で被覆する前後で、平板状の銅粒子の断面平均厚さは実質的に変化することはない。
ここで、詳しくは後述する電解法により得られた銀コート銅粉のうち、電子顕微鏡で観察したときに、上述したような形状の樹枝状銀コート銅粉が所定の割合で占められていれば、それ以外の形状の銅粉が混じっていても、その樹枝状銀コート銅粉のみからなる銀コート銅粉と同様の効果を得ることができる。具体的には、電子顕微鏡(例えば500倍〜20,000倍)で観察したときに、上述した形状の樹枝状銀コート銅粉が全銀コート銅粉のうちの50個数%以上、好ましくは80個数%以上の割合を占めていれば、その他の形状の銀コート銅粉が含まれていてもよい。
≪2.銀コート銅粉の製造方法≫
次に、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉の製造方法について説明する。本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉は、例えば、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液を電解液として用いて所望の形状の樹枝状銅粉を作製し、その樹枝状銅粉の表面に銀を被覆することで得ることができる。
以下では、先ず、樹枝状銀コート銅粉を構成する樹枝状銅粉の作製方法について説明し、続いて、その樹枝状銅粉に対して銀を被覆して樹枝状銀コート銅粉を得る方法について説明する。
<2−1.樹枝状銅粉の作製方法>
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉を構成する樹脂状銅粉は、例えば、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液を電解液として用いて所定の電解法により作製することができる。
電解に際しては、例えば、金属銅を陽極(アノード)とし、ステンレス板やチタン板等を陰極(カソード)として設置した電解槽中に、上述した銅イオンを含有する硫酸酸性の電解液を収容し、その電解液に所定の電流密度で直流電流を通電することによって電解処理を施す。これにより、通電に伴って陰極上に微細な樹枝状銅粉を析出(電析)させることができる。特に、本実施の形態においては、電解により得られた粒状等の銅粉をボール等の媒体を用いて機械的に変形加工等することなく、その電解のみによって、平板状の銅粒子が集合して樹枝状を形成した樹枝状銅粉を陰極表面に析出させることができる。
そして、本実施の形態においては、硫酸酸性の電解液に、銅イオンと、フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上とを添加することによって、より好ましく、断面平均厚さや、BET比表面積、嵩密度、及び結晶子径を制御した樹枝状銅粉を析出させることができる。
より具体的に、電解液としては、例えば、水溶性銅塩と、硫酸と、特定の化合物からなる添加剤とを有するものを好ましく用いることができる。
[水溶性銅塩]
水溶性銅塩は、銅イオンを供給する銅イオン源であり、例えば硫酸銅五水和物等の硫酸銅、硝酸銅等が挙げられるが特に限定されない。また、酸化銅を硫酸溶液で溶解して硫酸酸性溶液にしてもよい。
電解液中での銅イオン濃度としては、特に限定されないが、1g/L〜20g/L程度、好ましくは5g/L〜10g/L程度とすることができる。
[硫酸]
硫酸は、硫酸酸性の電解液とするためのものである。電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L〜300g/L程度、好ましくは50g/L〜150g/L程度とすることができる。この硫酸濃度は、電解液の電導度に影響するため、カソード上に得られる銅粉の均一性に影響する。
[添加剤]
添加剤としては、フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選ばれる化合物を、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液に加える。
フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物のそれぞれの種類については後述するが、これらの分子構造が異なる化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いて電解液中に含有させることができる。
このような化合物からなる添加剤は、その添加量によって、平均粒子径や形状の異なる樹枝状銅粉が析出する。そのため、所望とする樹枝状銅粉の比表面積や結晶子径等に応じて、添加量を変化させることが好ましい。
具体的に、フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選ばれる添加剤の電解液中における濃度としては、例えば、添加する化合物の合計で、1mg/L〜10,000mg/L程度とすることが好ましく、10mg/L〜5,000mg/Lとすることがより好ましく、20mg/L〜2,000mg/Lとすることがさらに好ましい。
(フェナジン構造を有する化合物)
フェナジン構造を有する化合物は、下記式(1)によって表すことができる。本実施の形態に係る樹枝状銅粉の製造方法においては、下記式(1)で表されるフェナジン構造を有する化合物の1種又は2種以上を添加剤として電解液中に含有させることができる。
Figure 2017066462
ここで、式(1)中において、R,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、Aが、ハライドアニオンである。
具体的に、フェナジン構造を有する化合物としては、5−メチルフェナジン−5−イウム、エルギノシンB、アエルギノシンA、5−エチルフェナジン−5−イウム、3,7−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、5−エチルフェナジン−5−イウム、5−メチルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−5−フェニル−7−(ジエチルアミノ)フェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3,7−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、1−メトキシ−5−メチルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−(ジメチルアミノ)−1,2−ジメチル−5−(3−スルホナトフェニル)フェナジン−5−イウム、1,3−ジアミノ−5−メチルフェナジン−5−イウム、1,3−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−(ジエチルアミノ)−2−メチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3,7−ジアミノ−5−(4−メチルフェニル)フェナジン−5−イウム、3−(メチルアミノ)−5−メチルフェナジン−5−イウム、3−ヒドロキシ−7−(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、5−アゾニアフェナジン、1−ヒドロキシ−5−メチルフェナジン−5−イウム、4H,6H−5−フェニル−3,7−ジオキソフェナジン−5−イウム、アニリノアポサフラニン、フェノサフラニン、ニュートラルレッド等が挙げられる。
(アゾベンゼン構造を有する化合物)
アゾベンゼン構造を有する化合物は、下記式(2)によって表わすことができる。本実施の形態に係る樹枝状銅粉の製造方法においては、下記式(2)で表されるアゾベンゼン構造を有する化合物の1種又は2種以上を添加剤として電解液中に含有させることができる。
Figure 2017066462
ここで、式(2)中において、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。
具体的に、アゾベンゼン構造を有する化合物としては、アゾベンゼン、4−アミノアゾベンゼン−4’−スルホン酸、4−(ジメチルアミノ)−4’−(トリフルオロメチル)アゾベンゼン、C.I.アシッドレッド13、マーキュリーオレンジ、2’,4’−ジアミノ−5’−メチルアゾベンゼン−4−スルホン酸ナトリウム、メチルレッド、メチルイエロー、メチルオレンジ、アゾベンゼン−2,4−ジアミン、アリザリンイエローGG、4−ジメチルアミノアゾベンゼン、オレンジI、サラゾスルファピリジン、4−(ジエチルアミノ)アゾベンゼン、オレンジOT、3−メトキシ−4−アミノアゾベンゼン、4−アミノアゾベンゼン、N,N,2−トリメチルアゾベンゼン−4−アミン、4−ヒドロキシアゾベンゼン、スダンI、4−アミノ−3,5−ジメチルアゾベンゼン、N,N−ジメチル−4−[(キノリン−6−イル)アゾ]ベンゼンアミン、o−アミノアゾトルエン、アリザリンイエローR、4’−(アミノスルホニル)−4−ヒドロキシアゾベンゼン−3−カルボン酸、コンゴーレッド、バイタルレッド、メタニルイエロー、オレンジII、ディスパースオレンジ3、C.I.ダイレクトオレンジ39、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、アゾベンゼン−4,4’−ジオール、ナフチルレッド、5−フェニルアゾベンゼン−2−オール、2,2’−ジメチルアゾベンゼン、C.I.モルダントイエロー12、モルダントイエロー10、アシッドイエロー、ディスパースブルー、ニューイエローRMF、ビストラミンブラウンG等が挙げられる。
(フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物)
フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物は、下記式(3)によって表わすことができる。本実施の形態に係る樹枝状銅粉の製造方法においては、下記式(3)で表される、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物の1種又は2種以上を添加剤として電解液中に含有させることができる。
Figure 2017066462
ここで、式(3)中において、R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12,R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、Aは、ハライドアニオンである。
具体的に、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物としては、3−(ジエチルアミノ)−7−[(4‐ヒドロキシフェニル)アゾ]−2,8−ジメチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−7−(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、ヤヌスグリーンB、3−アミノ−7−[(2,4−ジアミノフェニル)アゾ]−2,8−ジメチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3−アミノ−5−フェニル−7−(2−ヒドロキシ−1−ナフチルアゾ)フェナジン−5−イウム、3−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−7−(ジメチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチルプロパルギルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチル4−ペンチニルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチル2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン等が挙げられる。
[塩化物イオン]
さらに、電解液には、塩化物イオンを含有させることができる。このように、電解液中に塩化物イオンを含有させ、その濃度を制御することによっても、断面平均厚さや、BET比表面積、及び嵩密度の異なる樹枝状銅粉を析出させることができる。
塩化物イオンとしては、例えば、塩酸、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含有させることができる。
また、電解液中の塩化物イオンの濃度としては、特に限定されないが、500mg/L以下とすることが好ましく、1mg/L〜500mg/Lとすることがより好ましく、10mg/L〜300mg/Lとすることがさらに好ましい。
本実施の形態に係る樹枝状銅粉の製造方法においては、例えば、上述したような組成の電解液を用いて電解することによって陰極上に銅粉を析出生成させて製造する。電解方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、電流密度としては、硫酸酸性の電解液を用いて電解するにあたっては5A/dm〜40A/dmの範囲とすることが好ましく、電解液を撹拌しながら通電させる。また、電解液の液温(浴温)としては、例えば20℃〜60℃程度とすることができる。
<2−2.銀の被覆方法(銀コート銅粉の製造)>
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉は、上述した電解法により作製した樹枝状銅粉の表面に、例えば、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法を用いて銀を被覆することにより製造することができる。
樹枝状銅粉の表面に均一な厚みで銀を被覆するためには、銀めっきの前に洗浄を行うことが好ましく、樹枝状銅粉を洗浄液中に分散させ、攪拌しながら洗浄を行うことができる。この洗浄処理としては、酸性溶液中で行うのが好ましく、より好ましくは後述する還元剤にも用いられる多価カルボン酸を用いる。洗浄後には、樹枝状銅粉のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返して、水中に樹枝状銅粉が分散した水スラリーとする。なお、ろ過、分離と、水洗については、公知の方法を用いればよい。
具体的に、還元型無電解めっき法で銀コートする場合には、樹枝状銅粉を洗浄した後に得られた水スラリーに還元剤と銀イオン溶液を添加することによって、樹枝状銅粉の表面に銀を被覆させることができる。ここで、還元剤を水スラリーに予め添加して分散させた後に、その還元剤と樹枝状銅粉を含む水スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することによって、樹枝状銅粉の表面に銀をより均一に被覆させることができる。
還元剤としては、種々の還元剤を用いることができるが、銅の錯イオンを還元させることができない、還元力の弱い還元剤であることが好ましい。その弱い還元剤としては、還元性有機化合物を用いることができ、例えば、炭水化物類、多価カルボン酸及びその塩、アルデヒド類等を用いることができる。より具体的には、ぶどう糖(グルコース)、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、酒石酸ナトリウムカリウム、ホルマリン等が挙げられる。
樹枝状銅粉を含む水スラリーに還元剤を添加した後、十分に還元剤を分散させるために攪拌等を行うことが好ましい。また、水スラリーを所望のpHに調整するために、酸又はアルカリを適宜添加することができる。さらに、アルコール等の水溶性有機溶媒を添加することによって、還元剤である還元性有機化合物の分散を促進させてもよい。
連続的に添加する銀イオン溶液としては、銀めっき液として公知のものを用いることができるが、その中でも硝酸銀溶液を用いることが好ましい。また、硝酸銀溶液は、錯形成が容易であることから、アンモニア性硝酸銀溶液として添加するのがより好ましい。なお、アンモニア性硝酸銀溶液に用いるアンモニアは、硝酸銀溶液に添加したり、予め還元剤と共に水スラリーに添加して分散させておいたり、硝酸銀溶液とは別のアンモニア溶液として同時に水スラリーに添加したり、これらの組み合わせを含めていずれかの方法を用いればよい。
銀イオン溶液は、例えば樹枝状銅粉と還元剤とを含む水スラリーに添加するにあたり、比較的ゆっくりとした速度で徐々に添加することが好ましく、これにより均一な厚みの銀の被膜を樹枝状銅粉の表面に形成することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とすることがより好ましい。さらに、予め水スラリーに添加した還元剤等を別の溶液で調整して、銀イオン溶液と共に徐々に追加で添加するようにしてもよい。
このようにして、銀イオン溶液等を添加した水スラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、樹枝状の銀コート銅粉を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
一方、置換型無電解めっき法で銀コートする方法は、銅と銀のイオン化傾向の違いを利用するものであり、溶液中で銅が溶解したときに発生する電子によって、溶液中の銀イオンを還元させて銅表面に析出させるものである。したがって、置換型の無電解銀めっき液は、銀イオン源として銀塩と、錯化剤と、伝導塩とが主要成分として構成されていれば銀コートが可能であるが、より均一に銀コートするためには必要に応じて界面活性剤、光沢剤、結晶調整剤、pH調整剤、沈殿防止剤、安定剤等を添加することができる。本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造においても、そのめっき液としては特に限定されない。
より具体的に、銀塩としては、硝酸銀、ヨウ化銀、硫酸銀、ギ酸銀、酢酸銀、乳酸銀等を用いることができ、水スラリー中に分散した樹枝状銅粉と反応させることができる。めっき液中の銀イオン濃度としては、1g/L〜10g/L程度とすることができる。
また、錯化剤は、銀イオンと錯体を形成させるものであり、代表的なものとしてクエン酸、酒石酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸等や、エチレンジアミン、グリシン、ヒダントイン、ピロリドン、コハク酸イミド等の窒素含有化合物、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール、チオセミカルバジド等を用いることができる。めっき液中の錯化剤の濃度としては、10g/L〜100g/L程度とすることができる。
また、伝導塩としては、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、またはそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等を用いることができる。めっき液中の伝導塩の濃度としては、5g/L〜50g/L程度とすることができる。
樹枝状銅粉の表面に銀を被覆する際の被覆量のコントロールは、例えば、置換型無電解めっき液への銀の投入量を変えることで制御することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とするのが好ましい。
このようにして、反応終了後のスラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、樹枝状の銀コート銅粉を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
≪4.導電性ペースト、電磁波シールド用導電塗料及び導電性シート等の用途≫
上述した製造方法により得られる樹枝状銀コート銅粉は、主幹と複数の枝とを有する銀が被覆された樹枝状の銅粉であり、断面厚さが0.02μm〜5.0μmである銀が被覆された平板状の銅粒子が集合して構成されている。そして、当該樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は、1.0μm〜100μmである。また好ましくは、そのBET比表面積が0.2m/g〜5.0m/gである。
このような樹枝状銀コート銅粉によれば、樹枝状の形状であることにより表面積が大きくなり、成形性や焼結性に優れたものとなり、また樹枝状であって且つ所定の断面平均厚さを有する平板状の銅粒子から構成されていることにより、接点の数を多く確保することができ、優れた導電性を発揮する。
また、このような所定の構造を有する樹枝状銀コート銅粉によれば、導電性ペースト(銀コート銅ペースト)等とした場合であっても、凝集を抑制することができ、樹脂中に均一に分散させることが可能となり、またペーストの粘度上昇等による印刷性不良等の発生を抑制することができる。また、表面に銀が被覆された平板状の銅粒子の集合体からなる樹枝状銀コート銅粉であることにより、導電性ペーストとして優れた導電性を発揮させることができる。したがって、このような樹枝状銀コート銅粉は、導電性ペーストや導電塗料等の用途に好適に用いることができる。
例えば導電性ペーストとしては、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉を金属フィラーとして含み、バインダ樹脂と、溶剤と、さらに必要に応じて酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤とを混練することによって作製することができる。
本実施の形態においては、金属フィラー中に、上述した樹枝状銀コート銅粉が20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上の量の割合となるよう構成する。さらに、上述した樹枝状銀コート銅粉を1種単独で、または比表面積が異なる2種以上を混合して用いることもできる。金属フィラー中の樹枝状銀コート銅粉の割合が20質量%以上であることにより、例えばその金属フィラーを導電性ペーストに用いた場合に、樹脂中に均一に分散させることができ、またペーストの粘度が過度に上昇して印刷性不良等が生じることを防ぐことができる。
なお、金属フィラーとしては、上述したように樹枝状銀コート銅粉が20質量%以上の量の割合となるように含んでいればよく、その他は、例えば1μm〜20μm程度の球状銅粉や球状銀コート銅粉等を混ぜ合わせてもよい。
具体的に、バインダ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、樹枝状銀コート銅粉の粒度を考慮して添加量を調整することができる。
さらに、粘度調整のために他の樹脂成分を添加することもできる。例えば、その樹脂成分としては、エチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂等が挙げられ、ターピネオール等の有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとして添加することができる。なお、その樹脂成分の添加量としては、焼結性を阻害しない程度に抑える必要があり、好ましくは全体の5質量%以下とする。
また、添加剤として、焼成後の導電性を改善するために酸化防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。酸化防止剤の添加量としては、酸化防止効果やペーストの粘度等を考慮して、例えば1質量%〜15質量%程度とすることができる。
次に、電磁波シールド用材料として、本実施の形態に係る金属フィラーを利用する場合においても、特に制限された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂と混合して使用することができる。
例えば、電磁波シールド用導電性シートの電磁波シールド層を形成する場合、使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来使用されている、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体及び共重合体からなる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂等を適宜使用することができる。
電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、上述したような金属フィラーと樹脂とを、溶媒に分散又は溶解して塗料とし、その塗料を基材上に塗布又は印刷することによって電磁波シールド層を形成し、表面が固化する程度に乾燥することで製造することができる。また、金属フィラーを導電性シートの導電性接着剤層に利用することもできる。
また、本実施の形態に係る金属フィラーを利用して電磁波シールド用導電性塗料とする場合においても、特に制限された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂及び溶剤と混合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等を混合して混練することで導電性塗料として利用することができる。
このときに使用するバインダ樹脂及び溶剤についても、特に限定されるものではなく、従来使用されている、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂やフェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤についても、従来使用されている、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等を用いることができる。また、添加剤としての酸化防止剤についても、従来使用されている、脂肪酸アミド、高級脂肪酸アミン、フェニレンジアミン誘導体、チタネート系カップリング剤等を用いることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<評価方法>
下記実施例及び比較例にて得られた銀コート銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定、BET比表面積の測定を行った。
(形状の観察)
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製,JSM−7100F型)により、所定の倍率の視野で任意に20視野を観察し、その視野内に含まれる銀コート銅粉を観察した。
(平均粒子径の測定)
得られた銀コート銅粉の平均粒子径(D50)については、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製,HRA9320 X−100)を用いて測定した。
(BET比表面積)
BET比表面積については、比表面積・細孔分布測定装置(カンタクローム社製,QUADRASORB SI)を用いて測定した。
(比抵抗値測定)
被膜の比抵抗値については、低抵抗率計(三菱化学株式会社製,Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、一方で、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製,SURFCOM130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
(電磁波シールド特性)
電磁波シールド特性の評価は、各実施例及び比較例にて得られた試料について、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定して評価した。具体的には、樹枝状銀コート銅粉を使用していない比較例3の場合のレベルを『△』として、その比較例3のレベルよりも悪い場合を『×』とし、その比較例3のレベルよりも良好な場合を『○』とし、さらに優れている場合を『◎』として評価した。
また、電磁波シールドの可撓性についても評価するために、作製した電磁波シールドを折り曲げて電磁波シールド特性が変化するか否かを確認した。
<実施例、比較例>
[実施例1]
(電解銅粉の作製)
容量が100Lの電解槽に、電極面積が200mm×200mmのチタン製の電極板を陰極とし、電極面積が200mm×200mmの銅製の電極板を陽極として用いて、その電解槽中に電解液を装入し、これに直流電流を通電して銅粉を陰極板に析出させた。
このとき、電解液としては、銅イオン濃度13g/L、硫酸濃度110g/Lの組成のものを用いた。また、この電解液に、塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を塩化物イオン濃度として100mg/Lとなるように添加した。また、この電解液には、添加剤としてフェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で10、50、100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000mg/Lとなるように変化させて添加した。
そして、上述したような濃度に調整した電解液を、ポンプを用いて15L/minの流量で循環しながら、温度を25℃に維持し、陰極の電流密度が15A/dmになるように通電して陰極板上に銅粉を析出させた。
陰極板上に析出した電解銅粉を、スクレーパーを用いて機械的に電解槽の槽底に掻き落として回収し、回収した銅粉を純水で洗浄した後、減圧乾燥器に入れて乾燥した。
得られた電解銅粉の形状を、走査型電子顕微鏡(JSM‐7100F,日本電子株式会社製)により倍率10,000倍の視野で観察した結果、2次元又は3次元の樹枝状の形状の銅粉であって、主幹とその主幹から分岐した複数の枝が平板状の銅粒子で構成された樹枝状銅粉であることが確認された。
(還元法による銀コート銅粉の作製)
次に、上述した方法で作成した電解銅粉を用いて銀コート銅粉を作製した。
すなわち、得られた樹枝状銅粉100gを3%酒石酸水溶液中で約1時間攪拌した後、ろ過、水洗して2Lのイオン交換水中に分散させた。ここに、酒石酸6g、ぶどう糖6g、エタノール60mlを加え、さらに28%アンモニア水60mlを加えて攪拌し、その後、硝酸銀70gをイオン交換水4.5Lに溶かした水溶液と、ぶどう糖30g、酒石酸30g、エタノール300mlをイオン交換水900mlに溶かした水溶液と、28%アンモニア水300mlとを、それぞれ60分間にわたり徐々に添加した。なお、このときの浴温は25℃であった。
各水溶液の添加が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。
得られた樹枝状銀コート銅粉を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上の銀コート銅粉が、銀被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一に銀が被覆された、樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であった。また、その樹枝状銀コート銅粉を回収して銀被覆量を測定したところ、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は30.4質量%〜30.7質量%であった。
また、図1に、得られた銀コート銅粉のBET比表面積を測定した結果を示す。この図1に示す結果から、添加するフェナジン構造を有する化合物の添加量によって、得られる樹枝状銀コート銅粉のBET比表面積が変化し、所望とする比表面積の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
また、図2に、上述したSEMによる方法で観察して、銀コート銅粉を構成する、銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さを求めた結果を示す。この図2に示す結果から、添加するフェナジン構造を有する化合物の添加量によって、銀コート銅粉を構成する銀が被覆された銅粒子の断面平均厚さが変化し、より薄い平板状の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
[実施例2]
(電解銅粉の作製)
電解液に、塩化物イオン濃度が200mg/Lとなるように塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を添加し、また添加剤としてアゾベンゼン構造を有する化合物であるメチルオレンジ(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で10、50、100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000mg/Lとなるように変化させて添加した。それ以外は実施例1と同じ条件で電解処理を行い、電解銅粉を作製した。
得られた電解銅粉の形状を、SEMにより倍率10,000倍の視野で観察した結果、2次元又は3次元の樹枝状の形状の銅粉であって、主幹とその主幹から分岐した複数の枝が平板状の銅粒子で構成された樹枝状銅粉であることが確認された。
(還元法による銀コート銅粉の作製)
次に、得られた樹枝状銅粉に対して、実施例1と同じ手順でその表面に銀を被覆したところ、樹枝状銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。
得られた樹枝状銀コート銅粉を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上は銀被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一に銀が被覆された、樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であった。また、その樹枝状銀コート銅粉を回収して銀被覆量を測定したところ、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は30.2質量%〜30.5質量%であった。
また、図3に、得られた銀コート銅粉のBET比表面積を測定した結果を示す。この図3に示す結果から、添加するアゾベンゼン構造を有する化合物の添加量によって、得られる銀コート銅粉の比表面積が変化し、所望とする比表面積の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
また、図4に、得られた銀コート銅粉の嵩密度を測定した結果を示す。この図4に示す結果から、添加するアゾベンゼン構造を有する化合物の添加量によって、得られる銀コート銅粉の嵩密度が変化し、所望とする嵩密度の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
[実施例3]
(電解銅粉の作製)
電解液に、塩化物イオン濃度が20mg/Lとなるように塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を添加し、また添加剤としてフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物であるヤヌスグリーンB(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で10、50、100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000mg/Lとなるように変化させて添加し、陰極の電流密度が10A/dmになるように通電させた。それ以外は実施例1と同じ条件で電解処理を行い、電解銅粉を作製した。
得られた電解銅粉の形状を、SEMにより倍率10,000倍の視野で観察した結果、2次元又は3次元の樹枝状の形状の銅粉であって、主幹とその主幹から分岐した複数の枝が平板状の銅粒子で構成された樹枝状銅粉であることが確認された。
(置換法による銀コート銅粉の作製)
次に、得られた樹枝状銅粉100gを用いて、置換型無電解めっき液によりその銅粉表面に銀被覆を行った。
置換型無電解めっき液としては、硝酸銀25g、クエン酸20g、エチレンジアミン10gをイオン交換水1Lに溶かした組成の溶液を用い、その溶液中に樹枝状銅粉100gを投入して45分間攪拌して反応させた。なお、このときの浴温は30℃であった。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、樹枝状銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。
得られた樹枝状銀コート銅粉を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上は銀被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一に銀が被覆された、樹枝状形状を呈した平板状の樹枝状銀コート銅粉であった。また、その樹枝状銀コート銅粉を回収して銀被覆量を測定したところ、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は10.4質量%〜10.8質量%であった。
また、図5に、得られた銀コート銅粉のBET比表面積を測定した結果を示す。この図5に示す結果から、添加するフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物の添加量によって、得られる銀コート銅粉の比表面積が変化し、所望とする比表面積の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
[実施例4]
電解液に、塩化物イオン濃度が300mg/Lとなるように塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を添加し、また添加剤としてアゾベンゼン構造を有する化合物であるメチルオレンジ(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で100mg/Lとなるように添加し、さらにフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物であるヤヌスグリーンB(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で10、50、100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000mg/Lとなるように変化させて添加し、陰極の電流密度が10A/dmになるように通電させた。それ以外は実施例1と同じ条件で電解処理を行い、電解銅粉を作製した。
得られた電解銅粉の形状を、SEMにより倍率10,000倍の視野で観察した結果、2次元又は3次元の樹枝状の形状の銅粉であって、主幹とその主幹から分岐した複数の枝が平板状の銅粒子で構成された樹枝状銅粉であることが確認された。
(還元法による銀コート銅粉の作製)
次に、得られた樹枝状銅粉に対して、実施例1と同じ手順でその表面に銀を被覆したところ、樹枝状銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。
得られた樹枝状銀コート銅粉を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上は銀被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一に銀が被覆された、平板状の樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であった。また、その樹枝状銀コート銅粉を回収して銀被覆量を測定したところ、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は30.1質量%〜30.6質量%であった。
また、図6に、得られた銀コート銅粉のBET比表面積を測定した結果を示す。図6に示す結果から、添加するフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物の添加量によって、得られる銀コート銅粉の比表面積が変化し、所望とする比表面積の樹枝状銀コート銅粉を作製することができることが分かった。
[実施例5]
実施例1において、フェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解中の濃度で200mg/Lとなるように添加した電解液により得られた、比表面積が1.10m/gの樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
表1に、硬化により得られた被膜の比抵抗値の測定結果をまとめて示す。
[実施例6]
実施例2において、アゾベンゼン構造を有する化合物であるメチルオレンジ(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で200mg/Lとなるように添加した電解液により得られた、比表面積が0.99m/gの樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
表1に、硬化により得られた被膜の比抵抗値の測定結果をまとめて示す。
[実施例7]
実施例1において、フェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で1000mg/Lで添加とした電解液により得られた、比表面積が2.15m/gの樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
表1に、硬化により得られた被膜の比抵抗値の測定結果をまとめて示す。
[実施例8]
実施例1においてフェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で100mg/Lとなるように添加した電解液により得られた比表面積が0.80m/gの樹枝状銀コート銅粉と、実施例2においてアゾベンゼン構造を有する化合物であるメチルオレンジ(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で2000mg/Lとなるように添加した電解液により得られた比表面積が2.20m/gの樹枝状銀コート銅粉との異なる2種類を、50:50の割合で混合させた樹枝状銀コート銅粉55質量部(合計値)に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
表1に、硬化により得られた被膜の比抵抗値の測定結果をまとめて示す。
[実施例9]
実施例1において、フェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で500mg/Lとなるように添加した電解液により得られた、比表面積が1.68m/gの樹枝状銀コート銅粉を樹脂に分散させて電磁波シールド材とした。
すなわち、実施例1にて得られた樹枝状銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを、100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、特性評価の結果を示す。
[実施例10]
実施例1において、フェナジン構造を有する化合物としてサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で1000mg/Lとなるように添加した電解液により得られた、比表面積が2.15m/gの樹枝状銀コート銅粉を樹脂に分散させて電磁波シールド材とした。
すなわち、実施例1にて得られた樹枝状銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを、100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、特性評価の結果を示す。
[実施例11]
実施例1において、フェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で100mg/Lとなるように添加した電解液により得られた、比表面積が0.80m/gの樹枝状銀コート銅粉を樹脂に分散させ電磁波シールド材とした。
すなわち、実施例1にて得られた樹枝状銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを、100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、特性評価の結果を示す。
[比較例1]
塩化物イオンのみを添加し、添加剤としてフェナジン構造等を有する化合物を添加しない条件としたこと以外は、実施例1と同一の条件にて銅粉を陰極板上に析出させた。そして、その後、実施例1と同一の条件で、得られた銅粉の表面に銀を被覆して銀コート銅粉を得た。
得られた銀コート銅粉銅粉の形状を、上述したSEMによる方法で倍率5,000倍の視野で観察した結果、2次元又は3次元の樹枝状の形状の銅粉に銀が被覆されたものではあったものの、主幹とその主幹から分岐した複数の枝は、平板状の銅粒子から構成されていなかった。
また、実施例1と同様にして、得られた銀コート銅粉のBET比表面積を測定した結果、0.16m/gであり、銀の被覆量は当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は30.1質量%であった。
[比較例2]
比較例1において得られた、BET比表面積が0.16m/gの樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて150℃、200℃でそれぞれ30分間硬化させた。
表1に、硬化により得られた被膜の比抵抗値の測定結果をまとめて示す。
[比較例3]
比較例1において得られた、BET比表面積が0.16m/gの樹枝状銀コート銅粉を樹脂に分散させて電磁波シールド材とした。
すなわち、比較例1にて作製した樹枝状銀コート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを、100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、特性評価の結果を示す。
Figure 2017066462
以上より、電解液に、フェナジン構造を有するサフラニン(実施例1)、アゾベンゼン構造を有するメチルオレンジ(実施例2)、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有するヤヌスグリーンB(実施例3)、及び、アゾベンゼン構造を有するメチルオレンジと、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有するヤヌスグリーンBの2種(実施例4)をそれぞれ添加した実施例1〜4から、これらの添加剤の濃度を変化させることにより、得られる銀コート銅粉のBET比表面積、嵩密度、及びその銀コート銅粉を構成する銅粒子の断面平均厚さを制御できることが分かる。また、実施例5〜11の結果から、これらBET比表面積、嵩密度、及び銅粒子の断面平均厚さが制御された銀コート銅粉を金属フィラーとし、その金属フィラーを用いた導電性ペースト、電磁波シールド用の導電性塗料、及び電磁波シールド用の導電性シートでは、良好な特性を示すことが分かった。
これに対して、電解液に、添加剤として、フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物を添加せず、塩化物イオンのみを添加した比較例1では、BET比表面積が実施例1〜4で得られた銀コート銅粉よりも小さい銀コート銅粉しか得られないことが分かった。また、比較例2、3の結果から、その比較例1にて得られたBET比表面積の小さな銀コート銅粉を用いて導電性ペースト、電磁波シールド用の導電性塗料、及び電磁波シールド用の導電性シートとしても、十分な特性を有するものとはならないことが分かった。

Claims (9)

  1. 電解法により電解液から陰極上に銅粉を析出させる工程と、
    前記銅粉の表面に銀を被覆する工程と、を有する銀コート銅粉の製造方法であって、
    前記銀コート銅粉は、
    主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、該主幹及び該枝は、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの、表面に銀が被覆された平板状の銅粒子から構成され、
    平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmである
    ことを特徴とする銀コート銅粉の製造方法。
  2. 前記銀コート銅粉の嵩密度が、0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲である
    請求項1又は2に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  3. 前記銀コート銅粉のBET比表面積が、0.2m/g〜5.0m/gである
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  4. 銀被覆量が銀被覆した銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%となるように前記銅粉に銀を被覆させる
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  5. 前記電解液は、銅イオンを含む硫酸酸性の銅電解液であり、
    前記電解液に、
    1mg/L〜10,000mg/Lの含有量で、下記式(1)で示されるフェナジン構造を有する化合物、下記式(2)で示されるアゾベンゼン構造を有する化合物、及び下記式(3)で示される、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選ばれる1種以上を含有させる
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
    Figure 2017066462
    [式(1)中、R,R,R,R,R,R,R,Rは、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基であり、Aがハライドアニオンである。]
    Figure 2017066462
    [式(2)中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。]
    Figure 2017066462
    [式(3)中、R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12,R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基であり、Aがハライドアニオンである。]
  6. 前記電解液に、500mg/L以下の含有量で塩化物イオンを含有させる
    請求項5に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  7. 前記電解液中の銅イオンの濃度は、1g/L〜20g/Lである
    請求項5又は6に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法により得られる銀コート銅粉を、当該金属フィラー全体において20質量%以上の割合で含有させる
    ことを特徴とする金属フィラーの製造方法。
  9. 請求項8に記載の金属フィラーの製造方法により得られる金属フィラーを、樹脂に混合させる
    ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
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