JP2005026081A - 導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤、及び、導電性構造物 - Google Patents
導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤、及び、導電性構造物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】安定な金属コロイド粒子を含有し、熱に弱い基材に対しても適用することができ、抵抗の低い導電性構造物を得ることができる導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤及びそれらを塗布してなる導電性構造物を提供する。
【解決手段】分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる導電性金属ペーストであって、上記分散層は、高分子顔料分散剤からなるものであり、上記吸着剤は、上記金属コロイド粒子の分散層に吸着するものである導電性金属ペースト。
【選択図】 なし
【解決手段】分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる導電性金属ペーストであって、上記分散層は、高分子顔料分散剤からなるものであり、上記吸着剤は、上記金属コロイド粒子の分散層に吸着するものである導電性金属ペースト。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤、及び、導電性構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性ペーストは、スクリーン印刷やディスペンサー等により回路印刷、基板の貫通穴の穴埋め、基板上に他の部品を搭載したり接続するための接着剤として汎用されている。また、接着目的では半田が一般的に用いられているが、環境保護の観点から鉛フリーの半田の開発が求められてきた。しかしながら、このような鉛フリーの半田は、焼結時に高温での加熱を必要とするため、熱に対して弱い材質には使用することが困難という問題を有する。
【0003】
このため、鉛を用いない導電性ペーストとして、銀粉及び熱硬化性樹脂からなる導電性ペーストが開発されている(例えば、特許文献1参照)。更に、近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、より軽量のプラスチック基板が用いられる要求があり、より低温の加熱温度で良好な接着性、導電性を有する導電性ペーストが求められている。
【0004】
一般に平均粒子径が数nm〜数十nm程度の金属微粒子は、その金属自体の融点よりも格段に低い温度で焼結することが知られている。これは、金属の微粒子においては、その粒子径を充分に小さくすると、全体に対する粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が無視し得ないほど大きくなるために、粒子相互の界面の延伸がなされ焼結が行われるためである。このため、このような金属微粒子を使用することによって、低温焼付条件でも充分に導電性を有する導電性金属ペーストを得られることが期待される。
【0005】
このような金属微粒子表面に分散層を形成し、分散媒に安定に分散させた金属コロイド粒子が開発されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような金属コロイド粒子を導電性金属ペーストに配合すると、金属コロイド粒子が非常に安定なコロイド状になっているために、金属間のランダムチェーンを形成することができず、低温硬化では充分な導電性を得ることができない。つまり、高い導電性を得るためには、分散層を分解するだけの温度で加熱する工程が必要となり、低温硬化性という効果を得ることができなかった。
【0006】
このような問題を解決するため、加熱時に金属微粒子表面に存在する分散層と反応する成分を配合することによって分散層を除去し、金属同士の接触面を増加することができる導電性金属ペーストが開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような導電性金属ペーストは、分散層を有機酸等と反応させることによって効果が得られるものであることから、分散層を形成する際に使用できる分散剤の種類が制限され、金属コロイド粒子を充分安定に分散させることが困難となる。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−16838号公報
【特許文献2】
特開平11−319538号公報
【特許文献3】
国際公開第02/35554号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、安定な金属コロイド粒子を含有し、熱に弱い基材に対しても適用することができ、抵抗の低い導電性構造物を得ることができる導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤及びそれらを塗布してなる導電性構造物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる導電性金属ペーストであって、上記分散層は、高分子顔料分散剤からなるものであり、上記吸着剤は、前記金属コロイド粒子の分散層に吸着するものであることを特徴とする導電性金属ペーストである。
上記吸着剤は、塩基性表面を有する無機粒子であることが好ましい。
上記吸着剤は、コロイダルアルミナであることが好ましい。
上記吸着剤は、含有量が上記分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、固形分で0.5質量部以上であることが好ましい。
【0010】
上記金属コロイド粒子は、高分子顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより得られたものであることが好ましい。
上記金属コロイド粒子は、銀コロイド粒子であることが好ましい。
上記樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
上記導電性金属ペーストは、更に、金属フィラーを含有することが好ましい。
【0011】
本発明は、高分子顔料分散剤からなる分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなることを特徴とする導電性ペースト用添加剤でもある。
上記樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記導電性金属ペーストを塗布してなることを特徴とする導電性構造物でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の導電性金属ペーストは、高分子顔料分散剤からなる分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなるものである。本発明の導電性金属ペーストとは、回路印刷等に用いられる導電性コーティング剤、導電性インク、及び、半田代替の導電性接着剤としての用途に使用されるものである。また、本発明で使用する吸着剤は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成している高分子顔料分散剤に吸着する性質を有するものであれば特に限定されない。上記吸着剤が高分子顔料分散剤に吸着することで高分子顔料分散剤が金属コロイド粒子の表面から除去される。すなわち、本発明の導電性金属ペーストは、上記金属コロイド粒子の分散層が除去され、加熱時に金属コロイドが融着して、導電経路が形成されることで、高い電気伝導性を得ることができるものである。また、金属フィラーを添加した系では、加熱時に金属フィラー間で金属コロイドが溶融することで、接触面積が増加するために、高い電気伝導度を得ることができる。吸着は室温でも進行するため、加熱による化学反応でコロイド表面の分散剤を除去するよりも低温での除去が期待できる。
【0014】
上記吸着剤としては金属コロイド粒子の分散層を形成している高分子顔料分散剤に吸着するものであれば特に限定されず、例えば、塩基性表面を有する無機粒子を挙げることができる。上記塩基性表面を有する無機粒子としては特に限定されず、例えば、アルミナ、チタニア、ゼオライト、カーボン、シリカ等を挙げることができるが、なかでも、コロイダルアルミナが好ましい。上記コロイダルアルミナを含有する導電性金属ペーストは、アルミナゾルを添加することにより得ることができる。上記アルミナゾルは、水中で陽性に帯電したアルミナ粒子の表面及びその近辺に陰イオンが存在し、安定化した状態のものである。市販のアルミナゾルとしては、例えば、日産化学工業株式会社製のアルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−520、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10等を使用することができる。
【0015】
上記吸着剤の含有量は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、固形分で0.5質量部以上であることが好ましい。上記含有量が0.5質量部より少ないと十分な導電性を得ることができない。上記含有量の上限としては特に限定されないが、得られる導電性金属ペーストの物性を低下させないため、上記導電性金属ペースト全体量100質量部に対して、固形分で20質量部以下であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いる金属コロイド粒子は、高分子顔料分散剤からなる分散層を表面に有し、コロイド状に安定に分散した金属の微粒子である。上記金属コロイド粒子としては特に限定されず、例えば、高分子顔料分散剤存在下で金属化合物を還元することにより得られるもの等を挙げることができる。上記金属化合物は、溶媒に溶解することにより金属イオンを生じ、上記金属イオンが還元されて金属コロイド粒子を供給するものである。上記金属コロイド粒子となる金属としては特に限定されないが、優れた導電膜を得る点から、貴金属又は銅が好ましい。上記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムがより好ましく、導電性付与の観点から銀が最も好ましい。
【0017】
上記金属化合物としては上述の金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
上記金属化合物は、溶媒中の金属モル濃度が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる金属コロイド溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
【0019】
上記溶媒としては上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒等としては特に限定されず、例えば、エタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。上記溶媒としては1種又は2種以上を用いることができる。上記溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には、上記有機溶媒としては、水可溶性のものが好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。本発明においては、排水に要する作業性の観点から、水、アルコール、並びに、水及びアルコールの混合溶液が好ましい。
【0020】
上記高分子顔料分散剤は、高分子量の重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されているとともに、溶媒和部分を含む構造を有する両親媒性の共重合体であり、通常は顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
【0021】
上記高分子顔料分散剤は、上記金属コロイド粒子表面に分散層を形成し、上記金属コロイド粒子が溶媒中で分散するのを安定化する働きをしていると考えられる。
上記高分子顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜100万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではないことがあり、100万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。より好ましくは、2000〜50万であり、更に好ましくは、4000〜50万である。
上記高分子顔料分散剤としては上述の性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示したものを挙げることができる。
【0022】
上記高分子顔料分散剤としては、種々のものが利用できるが、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック182、ディスパービック−183、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック−2000、ディスパービック−2001(以上、ビックケミー社製)、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記高分子顔料分散剤の使用量は、上記金属化合物中の金属と高分子顔料分散剤との合計量に対して5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満であると、還元時の分散安定性が低下するおそれがある。上限は特に規定されないが、例えば、上記金属化合物中の金属の質量に対して10倍の量以下とすることができる。
【0024】
上記金属イオンの還元は、高分子顔料分散剤存在下で、還元性化合物を用いて行うことができる。上記還元性化合物としては、アミンが好ましく、上記金属化合物及び高分子顔料分散剤の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオンが常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属化合物を還元することができる。
【0025】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルエタノールアミンがより好ましい。
【0026】
上記アミンの他に、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸;ギ酸;ホルムアルデヒド;亜ニチオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体等を使用することができる。入手容易なことから、クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸が好ましい。これらは、単独又は上記アミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオンと併用することによって、還元性の向上を図ることができる。
【0027】
上記還元性化合物の添加量は、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不充分となるおそれがある。また、上限は特に規定されないが、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
【0028】
また、これらの還元性化合物の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法も使用することも可能である。
【0029】
上記還元性化合物を添加する方法としては特に限定されず、例えば、上記高分子顔料分散剤の添加後に行うことができ、この場合は、例えば、まず溶媒に上記高分子顔料分散剤を溶解させ、更に、上記還元性化合物又は金属化合物の何れかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物又は金属化合物の残った方を加えることで、還元を進行させることができる。上記還元性化合物を添加する方法としては、また、先に高分子顔料分散剤と上記還元性化合物とを混合しておき、この混合物を金属化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
【0030】
上記還元により、平均粒子径が約5〜100nmである金属コロイド粒子を含む溶液が得られる。
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子及び上述の高分子顔料分散剤を含むものであり、コロイド溶液となる。上記コロイド溶液とは、金属の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものを意味している。
【0031】
上述のように得られた金属コロイド溶液は、上記金属コロイド粒子及び高分子顔料分散剤のほかに、塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩、場合によりアミン等を含むものである。これらの雑イオン、塩やアミンは、得られる金属コロイド溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過の方法が用いられるが、遠心分離及び限外濾過の方法を用いた場合、同時に金属濃度が高められるので好ましい。
【0032】
上記金属コロイド溶液は、更に上記高分子顔料分散剤の一部を除去することにより、金属濃度を高めることが好ましい。上記高分子顔料分散剤の一部を除去する方法としては、国際公開第02/094954号パンフレットに記載の方法を挙げることができる。
【0033】
上記金属コロイド粒子の含有量は、金属分として金属コロイド粒子のみを含有する系では、得られる導電性金属ペースト全体量100質量部に対して金属分として50質量部以上が好ましく、95質量部以下が好ましい。上記含有量が50質量部より少ないと、充分な導電性が得られず、95質量部を超えると、得られる導電性構造物の物性が不良になる。より好ましくは、70質量部以上、95質量部以下である。
【0034】
本発明の導電性金属ペーストは、更に、樹脂を含有するものである。上記樹脂を含有することにより、硬化又は成形後の構造体の物性を保ち、導電膜と基材との密着性を得ることができる。その際、熱硬化性樹脂を用いれば、樹脂が加熱硬化時に収縮することにより、金属間の間隙が狭められ導電性を高めることができるものである。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0035】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が特に好ましい。上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、なかでも、25℃において液状であるエポキシ樹脂が好ましい。本発明に用いるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントインなどの複素環式エポキシ、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイト等の脂環式エポキシ等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いることができ、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
上記熱硬化性樹脂を使用する場合、本発明の導電性金属ペーストは、更に、硬化剤、硬化促進剤を含有することが好ましい。好ましい組み合わせとしては、以下のような例を挙げることができる。例えば、上記エポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤として酸無水物、アミン化合物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド等を、硬化促進剤としてアクリル樹脂等の他の樹脂を併用することができる。
【0037】
例えば、上記熱硬化性アクリル樹脂を使用する場合、硬化剤としてエポキシ樹脂又はメラミン樹脂等の他の樹脂、多価カルボン酸、ブロックイソシアネート化合物等を使用することができる。
例えば、上記熱硬化性ポリエステル樹脂を使用する場合、硬化剤としてメラミン樹脂又はエポキシ樹脂等の他の樹脂、多塩基酸、ブロックイソシアネート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等の硬化剤を使用することができる。
【0038】
上記導電性金属ペーストにおける上記樹脂の含有量は、上記導電性金属ペースト全体量100質量部に対して下限1質量部、上限30質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が1質量部未満であると構造体として成形後の物性が不良もしくは基材との密着性が不充分となり、30質量部を超えると導電性が低下するため好ましくない。
【0039】
本発明の導電性金属ペーストは、更に、金属フィラーを含有することが好ましい。上記金属フィラーとしては特に限定されず、従来導電性金属ペースト等に使用されてきた金属フィラーを挙げることができる。上記金属フィラーの平均粒子径は、下限0.1μm、上限20μmの範囲内であることが好ましい。このような金属フィラーを配合することによって、上記金属コロイド粒子が金属フィラー間の融着剤として作用し、接触面積が増大することでより高い導電性を得ることができる。上記金属フィラーとしては、具体的には、銀、金、白金、パラジウム、銀−白金、パラジウム−白金等を挙げることができるが、上記金属コロイド粒子を形成する金属と同一の金属であることが好ましい。更に好ましくは銀フィラーに対し,銀のコロイドを使用する例が挙げられる。
【0040】
また、金属フィラーを添加する系では、得られる導電性金属ペースト全体量100質量部に対してトータル金属量が50質量部以上であることが好ましく、金属コロイド粒子の金属分1質量部に対して金属フィラーの金属分は、100質量部以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の導電性金属ペーストは、得られる導電膜の性能を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては特に限定されず、例えば、溶剤や塗面調整剤、たれ止め剤及び界面活性などの塗料用添加剤、着色顔料、体質顔料及びメタリック顔料等の顔料類を必要に応じて配合することができる。
【0042】
上記溶剤としては特に限定されないが、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶剤等を挙げることができる。
【0043】
本発明の導電性金属ペーストの調製方法としては特に限定されず、例えば、上記金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる混合物を調製した後、他の成分を順次添加する方法等を挙げることができる。また、金属コロイド溶液に溶媒が含まれるため、無溶媒の導電性金属ペーストを得たい場合は、混合時又は混合後に減圧で溶媒を除去しても良い。また、上記金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる混合物を市販の導電性金属ペーストに添加すると、より高い導電性を有する皮膜が得られることから、上記混合物を導電性ペースト用添加剤として使用することもできる。このような導電性ペースト用添加剤も本発明の一つである。
【0044】
上記導電性ペースト用添加剤における上記金属コロイド粒子の含有量は、導電性ペースト用添加剤100質量部に対して金属として、下限10質量部、上限80質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が10質量部未満であると、最終導電性ペースト中の金属含有率を上げることが難しくなるため好ましくない。上記含有量が80質量部を超えると、添加剤としての安定性が低下したり、粘度が高くなりすぎるおそれがある。上記下限は、20質量部がより好ましく、上記上限は、60質量部がより好ましい。
上記吸着剤の含有量は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、上述と同様の範囲内であることが好ましい。
【0045】
上記導電性ペースト用添加剤における樹脂としては、上記金属コロイド粒子及び吸着剤が安定に存在するものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。なかでも、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0046】
上記導電性ペースト用添加剤における上記樹脂の含有量は、導電性ペースト用添加剤100質量部に対して5〜80質量部であることが好ましい。上記含有量が80質量部を超えると、得られる導電性ペーストの導電性が低下するおそれがあり、5質量部未満となると高粘度化のため取り扱いが困難となる。上記下限は、10質量部がより好ましく、上記上限は、50質量部がより好ましい。
【0047】
上記導電性ペースト用添加剤は、更に、上述の他の成分、例えば、粘度調整のための溶剤等を含有してもよい。
【0048】
本発明の導電性ペースト用添加剤を添加することができる既製の導電性金属ペーストとしては特に限定されず、金属フィラー及び樹脂からなる従来公知の導電性金属ペーストを挙げることができる。上記既製の導電性金属ペーストに含まれる金属フィラーとしては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができるが、上記金属コロイド粒子を形成する金属と同一の金属であることが好ましい。上記導電性金属ペーストとしては、例えば、RM9030(福田金属箔粉工業株式会社製)、ドータイトSA−0425(藤倉化成株式会社製)等の市販の製品を使用することもできる。
【0049】
本発明の導電性ペースト用添加剤は、導電性金属ペースト中の金属フィラー100質量部に対し、添加剤中のコロイド金属分として、下限1質量部以上配合されることが好ましい。上記配合量が1質量部未満であると、導電性付与効果が不充分である。
【0050】
本発明の導電性金属ペーストの塗布方法としては特に限定されず、従来公知の方法によって塗装することができる。上記塗布方法としては、具体的には、ディスパンス法、印刷法、スタンピング法等を挙げることができる。導電膜の加熱硬化工程としては特に限定されず、例えば、50〜300℃、1秒〜60分程度の条件で行うことができる。本発明の導電性金属ペーストにより得られる導電膜は、低温で加熱硬化しても高い導電性が得られるため、熱に弱い基材に対しても好適に適用することができるものである。上記導電性金属ペーストを塗装してなる導電性構造物も本発明の一つである。
【0051】
本発明の導電性構造物の基材としては特に限定されず、例えば、セラミック、ガラス、ガラスエポキシ基板、BT基板、及び、半導体を接着するための42アロイ、銅等のリードフレーム等を挙げることができる。上記導電性構造物としては特に限定されず、例えば、コンデンサ、チップ抵抗器、導体回路、リードフレームと半導体の接着部分等を挙げることができる。
【0052】
本発明は、低温硬化でも、抵抗が充分小さい導電膜を得ることができる導電性金属ペーストである。つまり、本発明の導電性金属ペーストは、熱に弱い基材に対しても好適に適用できるものである。また、本発明の導電性金属ペーストは、金属の微小粒子を含有するため、近年の微細な回路形成、層間接合にも利用することができる。また、本発明の導電性ペースト用添加剤を従来の導電性金属ペーストに配合すると、導電性を高めることができるものである。
【0053】
【実施例】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0054】
製造例1 銀コロイド溶液Aの製造
10Lコルベンにディスパービック190(ビックケミー社製)(以下BYK190)595g、1mol/l硝酸1472g、及び、イオン交換水1472gを入れ溶解した。ここに、イオン交換水4415gに溶解させた硝酸銀250gを攪拌しながら加えて、70℃で10分間攪拌した。次に、ジメチルアミノエタノール655gを加えたところ、液が一瞬で黒変し、液温が上昇した。そのまま放置して液温が70℃まで下がったところで、この温度を保ちながら2時間攪拌を続け、黒っぽい黄色を呈する銀コロイドの水溶液が得られた。次に、限外濾過モジュールAHP1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、ダイアフラムポンプ、下部にチューブ接続口のある3lのステンレスカップをシリコンチューブでつないで、限外濾過装置とした。先の反応液をステンレスカップに入れて、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。液量が2lになった時点で、ステンレスカップに5lのイオン交換水を加えた。その後、同様に限外濾過を行い、イオン交換水5lを2回、さらにエタノール5lを3回加えて洗浄及び溶媒置換した。
母液が約800mlになった時点でポンプを停止して、濃縮を終了することにより、固形分28%の銀コロイドのエタノール溶液が得られた。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は、12nmであった。また、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、固形分中の銀の含有率を計測したところ、69質量%であり、顔料分散剤の含有率は31質量%であった。
【0055】
製造例2 銀コロイド溶液Bの製造
10lコルベンにディスパービック190(ビックケミー社製)75g、及び、イオン交換水2628gを順番に入れる。このコルベンをウォーターバスに入れ、ディスパービック190が溶解するまで攪拌した。ここにイオン交換水2628gに溶解させた硝酸銀625gを攪拌しながら加えて、50℃で10分間攪拌した。次に、ジメチルアミノエタノール1637gを加えたところ、この時、液が一瞬で黒変し、液温が上昇した。そのまま放置して液温が50℃まで下がったところで、この温度を保ちながら2時間攪拌を続け、黒っぽい黄色を呈する銀コロイドの水溶液が得られた。
この反応液を製造例1と同様に限外濾過で洗浄、溶媒置換、濃縮し、固形分34%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は26nmであった。また、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、固形分中の銀の含有率を計測したところ、95質量%であり、顔料分散剤の含有率は5質量%であった。
【0056】
実施例1〜3、比較例1、2
市販の導電性金属ペーストとして銀フィラーを有するRM9030(福田金属箔粉工業株式会社製)、製造例1、2で得られた銀コロイド溶液A、B、吸着剤としてアルミナゾル200及びアルミナゾル100(いずれも日産化学工業社製)を順次攪拌混合して表1に示した組成からなる混合液を調製した。更に、減圧下で溶媒を除去し、導電性金属ペーストを得た。
【0057】
得られた導電性金属ペーストをガラス基板上に巾約1cm、長さ約10cm、膜厚約40μmに塗布し、150℃で30分焼き付けを行った。得られた硬化膜の抵抗値をローノイズマルチメーター2010/J(ケースレーインスツルメンツ社製)を用いて測定し、形状を測定して体積抵抗値を算出した。結果を表1に示す。更に、表1に銀フィラーの銀分/銀コロイドの銀分(質量比)を示した。なお、表中のアルミナゾル/顔料分散剤量(質量比)は、アルミナゾル200の固形分と銀コロイドの顔料分散剤量との質量比である。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例4、5
実施例1と同様にして、表2に示した配合からなる導電性金属ペーストを調製し、得られた導電膜の体積抵抗値を測定した。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例6、7、比較例3
実施例1と同様にして、表3に示した配合からなる導電性金属ペーストを調製し、得られた導電膜の体積抵抗値を測定した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例8、9
表4に示した配合を有する導電性ペースト用添加剤を調製し、更に、減圧下で銀コロイド溶液に含まれている溶媒を除去した。表中、YD128、YDF170は、東都化成社製のそれぞれ、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である。次に、市販の導電性金属ペーストであるRM9030と表4に示した割合で攪拌混合して導電性金属ペーストを調製した。導電膜を形成し、実施例1と同様にして評価した。
【0064】
【表4】
【0065】
本発明の導電性金属ペースト及び導電性ペースト用添加剤により、抵抗値の低い導電性に優れた導電膜を得ることができる。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成を有しているので、熱に弱い基材に対しても抵抗の小さい導電膜を形成することができる導電性金属ペーストである。また、本発明の導電性金属ペーストにより得られる導電膜は、金属の微粒子からなる金属構造を形成するため、微細な回路形成等の用途にも適用できるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤、及び、導電性構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性ペーストは、スクリーン印刷やディスペンサー等により回路印刷、基板の貫通穴の穴埋め、基板上に他の部品を搭載したり接続するための接着剤として汎用されている。また、接着目的では半田が一般的に用いられているが、環境保護の観点から鉛フリーの半田の開発が求められてきた。しかしながら、このような鉛フリーの半田は、焼結時に高温での加熱を必要とするため、熱に対して弱い材質には使用することが困難という問題を有する。
【0003】
このため、鉛を用いない導電性ペーストとして、銀粉及び熱硬化性樹脂からなる導電性ペーストが開発されている(例えば、特許文献1参照)。更に、近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、より軽量のプラスチック基板が用いられる要求があり、より低温の加熱温度で良好な接着性、導電性を有する導電性ペーストが求められている。
【0004】
一般に平均粒子径が数nm〜数十nm程度の金属微粒子は、その金属自体の融点よりも格段に低い温度で焼結することが知られている。これは、金属の微粒子においては、その粒子径を充分に小さくすると、全体に対する粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が無視し得ないほど大きくなるために、粒子相互の界面の延伸がなされ焼結が行われるためである。このため、このような金属微粒子を使用することによって、低温焼付条件でも充分に導電性を有する導電性金属ペーストを得られることが期待される。
【0005】
このような金属微粒子表面に分散層を形成し、分散媒に安定に分散させた金属コロイド粒子が開発されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような金属コロイド粒子を導電性金属ペーストに配合すると、金属コロイド粒子が非常に安定なコロイド状になっているために、金属間のランダムチェーンを形成することができず、低温硬化では充分な導電性を得ることができない。つまり、高い導電性を得るためには、分散層を分解するだけの温度で加熱する工程が必要となり、低温硬化性という効果を得ることができなかった。
【0006】
このような問題を解決するため、加熱時に金属微粒子表面に存在する分散層と反応する成分を配合することによって分散層を除去し、金属同士の接触面を増加することができる導電性金属ペーストが開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような導電性金属ペーストは、分散層を有機酸等と反応させることによって効果が得られるものであることから、分散層を形成する際に使用できる分散剤の種類が制限され、金属コロイド粒子を充分安定に分散させることが困難となる。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−16838号公報
【特許文献2】
特開平11−319538号公報
【特許文献3】
国際公開第02/35554号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、安定な金属コロイド粒子を含有し、熱に弱い基材に対しても適用することができ、抵抗の低い導電性構造物を得ることができる導電性金属ペースト、導電性ペースト用添加剤及びそれらを塗布してなる導電性構造物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる導電性金属ペーストであって、上記分散層は、高分子顔料分散剤からなるものであり、上記吸着剤は、前記金属コロイド粒子の分散層に吸着するものであることを特徴とする導電性金属ペーストである。
上記吸着剤は、塩基性表面を有する無機粒子であることが好ましい。
上記吸着剤は、コロイダルアルミナであることが好ましい。
上記吸着剤は、含有量が上記分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、固形分で0.5質量部以上であることが好ましい。
【0010】
上記金属コロイド粒子は、高分子顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより得られたものであることが好ましい。
上記金属コロイド粒子は、銀コロイド粒子であることが好ましい。
上記樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
上記導電性金属ペーストは、更に、金属フィラーを含有することが好ましい。
【0011】
本発明は、高分子顔料分散剤からなる分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなることを特徴とする導電性ペースト用添加剤でもある。
上記樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記導電性金属ペーストを塗布してなることを特徴とする導電性構造物でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の導電性金属ペーストは、高分子顔料分散剤からなる分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなるものである。本発明の導電性金属ペーストとは、回路印刷等に用いられる導電性コーティング剤、導電性インク、及び、半田代替の導電性接着剤としての用途に使用されるものである。また、本発明で使用する吸着剤は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成している高分子顔料分散剤に吸着する性質を有するものであれば特に限定されない。上記吸着剤が高分子顔料分散剤に吸着することで高分子顔料分散剤が金属コロイド粒子の表面から除去される。すなわち、本発明の導電性金属ペーストは、上記金属コロイド粒子の分散層が除去され、加熱時に金属コロイドが融着して、導電経路が形成されることで、高い電気伝導性を得ることができるものである。また、金属フィラーを添加した系では、加熱時に金属フィラー間で金属コロイドが溶融することで、接触面積が増加するために、高い電気伝導度を得ることができる。吸着は室温でも進行するため、加熱による化学反応でコロイド表面の分散剤を除去するよりも低温での除去が期待できる。
【0014】
上記吸着剤としては金属コロイド粒子の分散層を形成している高分子顔料分散剤に吸着するものであれば特に限定されず、例えば、塩基性表面を有する無機粒子を挙げることができる。上記塩基性表面を有する無機粒子としては特に限定されず、例えば、アルミナ、チタニア、ゼオライト、カーボン、シリカ等を挙げることができるが、なかでも、コロイダルアルミナが好ましい。上記コロイダルアルミナを含有する導電性金属ペーストは、アルミナゾルを添加することにより得ることができる。上記アルミナゾルは、水中で陽性に帯電したアルミナ粒子の表面及びその近辺に陰イオンが存在し、安定化した状態のものである。市販のアルミナゾルとしては、例えば、日産化学工業株式会社製のアルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−520、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10等を使用することができる。
【0015】
上記吸着剤の含有量は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、固形分で0.5質量部以上であることが好ましい。上記含有量が0.5質量部より少ないと十分な導電性を得ることができない。上記含有量の上限としては特に限定されないが、得られる導電性金属ペーストの物性を低下させないため、上記導電性金属ペースト全体量100質量部に対して、固形分で20質量部以下であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いる金属コロイド粒子は、高分子顔料分散剤からなる分散層を表面に有し、コロイド状に安定に分散した金属の微粒子である。上記金属コロイド粒子としては特に限定されず、例えば、高分子顔料分散剤存在下で金属化合物を還元することにより得られるもの等を挙げることができる。上記金属化合物は、溶媒に溶解することにより金属イオンを生じ、上記金属イオンが還元されて金属コロイド粒子を供給するものである。上記金属コロイド粒子となる金属としては特に限定されないが、優れた導電膜を得る点から、貴金属又は銅が好ましい。上記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムがより好ましく、導電性付与の観点から銀が最も好ましい。
【0017】
上記金属化合物としては上述の金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
上記金属化合物は、溶媒中の金属モル濃度が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる金属コロイド溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
【0019】
上記溶媒としては上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒等としては特に限定されず、例えば、エタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。上記溶媒としては1種又は2種以上を用いることができる。上記溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には、上記有機溶媒としては、水可溶性のものが好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。本発明においては、排水に要する作業性の観点から、水、アルコール、並びに、水及びアルコールの混合溶液が好ましい。
【0020】
上記高分子顔料分散剤は、高分子量の重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されているとともに、溶媒和部分を含む構造を有する両親媒性の共重合体であり、通常は顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
【0021】
上記高分子顔料分散剤は、上記金属コロイド粒子表面に分散層を形成し、上記金属コロイド粒子が溶媒中で分散するのを安定化する働きをしていると考えられる。
上記高分子顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜100万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではないことがあり、100万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。より好ましくは、2000〜50万であり、更に好ましくは、4000〜50万である。
上記高分子顔料分散剤としては上述の性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示したものを挙げることができる。
【0022】
上記高分子顔料分散剤としては、種々のものが利用できるが、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック182、ディスパービック−183、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック−2000、ディスパービック−2001(以上、ビックケミー社製)、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記高分子顔料分散剤の使用量は、上記金属化合物中の金属と高分子顔料分散剤との合計量に対して5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満であると、還元時の分散安定性が低下するおそれがある。上限は特に規定されないが、例えば、上記金属化合物中の金属の質量に対して10倍の量以下とすることができる。
【0024】
上記金属イオンの還元は、高分子顔料分散剤存在下で、還元性化合物を用いて行うことができる。上記還元性化合物としては、アミンが好ましく、上記金属化合物及び高分子顔料分散剤の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオンが常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属化合物を還元することができる。
【0025】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルエタノールアミンがより好ましい。
【0026】
上記アミンの他に、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸;ギ酸;ホルムアルデヒド;亜ニチオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体等を使用することができる。入手容易なことから、クエン酸;酒石酸;アスコルビン酸が好ましい。これらは、単独又は上記アミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオンと併用することによって、還元性の向上を図ることができる。
【0027】
上記還元性化合物の添加量は、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不充分となるおそれがある。また、上限は特に規定されないが、上記金属化合物中の金属を還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
【0028】
また、これらの還元性化合物の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法も使用することも可能である。
【0029】
上記還元性化合物を添加する方法としては特に限定されず、例えば、上記高分子顔料分散剤の添加後に行うことができ、この場合は、例えば、まず溶媒に上記高分子顔料分散剤を溶解させ、更に、上記還元性化合物又は金属化合物の何れかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物又は金属化合物の残った方を加えることで、還元を進行させることができる。上記還元性化合物を添加する方法としては、また、先に高分子顔料分散剤と上記還元性化合物とを混合しておき、この混合物を金属化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
【0030】
上記還元により、平均粒子径が約5〜100nmである金属コロイド粒子を含む溶液が得られる。
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子及び上述の高分子顔料分散剤を含むものであり、コロイド溶液となる。上記コロイド溶液とは、金属の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものを意味している。
【0031】
上述のように得られた金属コロイド溶液は、上記金属コロイド粒子及び高分子顔料分散剤のほかに、塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩、場合によりアミン等を含むものである。これらの雑イオン、塩やアミンは、得られる金属コロイド溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過の方法が用いられるが、遠心分離及び限外濾過の方法を用いた場合、同時に金属濃度が高められるので好ましい。
【0032】
上記金属コロイド溶液は、更に上記高分子顔料分散剤の一部を除去することにより、金属濃度を高めることが好ましい。上記高分子顔料分散剤の一部を除去する方法としては、国際公開第02/094954号パンフレットに記載の方法を挙げることができる。
【0033】
上記金属コロイド粒子の含有量は、金属分として金属コロイド粒子のみを含有する系では、得られる導電性金属ペースト全体量100質量部に対して金属分として50質量部以上が好ましく、95質量部以下が好ましい。上記含有量が50質量部より少ないと、充分な導電性が得られず、95質量部を超えると、得られる導電性構造物の物性が不良になる。より好ましくは、70質量部以上、95質量部以下である。
【0034】
本発明の導電性金属ペーストは、更に、樹脂を含有するものである。上記樹脂を含有することにより、硬化又は成形後の構造体の物性を保ち、導電膜と基材との密着性を得ることができる。その際、熱硬化性樹脂を用いれば、樹脂が加熱硬化時に収縮することにより、金属間の間隙が狭められ導電性を高めることができるものである。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0035】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が特に好ましい。上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、なかでも、25℃において液状であるエポキシ樹脂が好ましい。本発明に用いるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントインなどの複素環式エポキシ、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイト等の脂環式エポキシ等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いることができ、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
上記熱硬化性樹脂を使用する場合、本発明の導電性金属ペーストは、更に、硬化剤、硬化促進剤を含有することが好ましい。好ましい組み合わせとしては、以下のような例を挙げることができる。例えば、上記エポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤として酸無水物、アミン化合物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド等を、硬化促進剤としてアクリル樹脂等の他の樹脂を併用することができる。
【0037】
例えば、上記熱硬化性アクリル樹脂を使用する場合、硬化剤としてエポキシ樹脂又はメラミン樹脂等の他の樹脂、多価カルボン酸、ブロックイソシアネート化合物等を使用することができる。
例えば、上記熱硬化性ポリエステル樹脂を使用する場合、硬化剤としてメラミン樹脂又はエポキシ樹脂等の他の樹脂、多塩基酸、ブロックイソシアネート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等の硬化剤を使用することができる。
【0038】
上記導電性金属ペーストにおける上記樹脂の含有量は、上記導電性金属ペースト全体量100質量部に対して下限1質量部、上限30質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が1質量部未満であると構造体として成形後の物性が不良もしくは基材との密着性が不充分となり、30質量部を超えると導電性が低下するため好ましくない。
【0039】
本発明の導電性金属ペーストは、更に、金属フィラーを含有することが好ましい。上記金属フィラーとしては特に限定されず、従来導電性金属ペースト等に使用されてきた金属フィラーを挙げることができる。上記金属フィラーの平均粒子径は、下限0.1μm、上限20μmの範囲内であることが好ましい。このような金属フィラーを配合することによって、上記金属コロイド粒子が金属フィラー間の融着剤として作用し、接触面積が増大することでより高い導電性を得ることができる。上記金属フィラーとしては、具体的には、銀、金、白金、パラジウム、銀−白金、パラジウム−白金等を挙げることができるが、上記金属コロイド粒子を形成する金属と同一の金属であることが好ましい。更に好ましくは銀フィラーに対し,銀のコロイドを使用する例が挙げられる。
【0040】
また、金属フィラーを添加する系では、得られる導電性金属ペースト全体量100質量部に対してトータル金属量が50質量部以上であることが好ましく、金属コロイド粒子の金属分1質量部に対して金属フィラーの金属分は、100質量部以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の導電性金属ペーストは、得られる導電膜の性能を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては特に限定されず、例えば、溶剤や塗面調整剤、たれ止め剤及び界面活性などの塗料用添加剤、着色顔料、体質顔料及びメタリック顔料等の顔料類を必要に応じて配合することができる。
【0042】
上記溶剤としては特に限定されないが、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶剤等を挙げることができる。
【0043】
本発明の導電性金属ペーストの調製方法としては特に限定されず、例えば、上記金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる混合物を調製した後、他の成分を順次添加する方法等を挙げることができる。また、金属コロイド溶液に溶媒が含まれるため、無溶媒の導電性金属ペーストを得たい場合は、混合時又は混合後に減圧で溶媒を除去しても良い。また、上記金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる混合物を市販の導電性金属ペーストに添加すると、より高い導電性を有する皮膜が得られることから、上記混合物を導電性ペースト用添加剤として使用することもできる。このような導電性ペースト用添加剤も本発明の一つである。
【0044】
上記導電性ペースト用添加剤における上記金属コロイド粒子の含有量は、導電性ペースト用添加剤100質量部に対して金属として、下限10質量部、上限80質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が10質量部未満であると、最終導電性ペースト中の金属含有率を上げることが難しくなるため好ましくない。上記含有量が80質量部を超えると、添加剤としての安定性が低下したり、粘度が高くなりすぎるおそれがある。上記下限は、20質量部がより好ましく、上記上限は、60質量部がより好ましい。
上記吸着剤の含有量は、上記金属コロイド粒子の分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、上述と同様の範囲内であることが好ましい。
【0045】
上記導電性ペースト用添加剤における樹脂としては、上記金属コロイド粒子及び吸着剤が安定に存在するものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。なかでも、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0046】
上記導電性ペースト用添加剤における上記樹脂の含有量は、導電性ペースト用添加剤100質量部に対して5〜80質量部であることが好ましい。上記含有量が80質量部を超えると、得られる導電性ペーストの導電性が低下するおそれがあり、5質量部未満となると高粘度化のため取り扱いが困難となる。上記下限は、10質量部がより好ましく、上記上限は、50質量部がより好ましい。
【0047】
上記導電性ペースト用添加剤は、更に、上述の他の成分、例えば、粘度調整のための溶剤等を含有してもよい。
【0048】
本発明の導電性ペースト用添加剤を添加することができる既製の導電性金属ペーストとしては特に限定されず、金属フィラー及び樹脂からなる従来公知の導電性金属ペーストを挙げることができる。上記既製の導電性金属ペーストに含まれる金属フィラーとしては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができるが、上記金属コロイド粒子を形成する金属と同一の金属であることが好ましい。上記導電性金属ペーストとしては、例えば、RM9030(福田金属箔粉工業株式会社製)、ドータイトSA−0425(藤倉化成株式会社製)等の市販の製品を使用することもできる。
【0049】
本発明の導電性ペースト用添加剤は、導電性金属ペースト中の金属フィラー100質量部に対し、添加剤中のコロイド金属分として、下限1質量部以上配合されることが好ましい。上記配合量が1質量部未満であると、導電性付与効果が不充分である。
【0050】
本発明の導電性金属ペーストの塗布方法としては特に限定されず、従来公知の方法によって塗装することができる。上記塗布方法としては、具体的には、ディスパンス法、印刷法、スタンピング法等を挙げることができる。導電膜の加熱硬化工程としては特に限定されず、例えば、50〜300℃、1秒〜60分程度の条件で行うことができる。本発明の導電性金属ペーストにより得られる導電膜は、低温で加熱硬化しても高い導電性が得られるため、熱に弱い基材に対しても好適に適用することができるものである。上記導電性金属ペーストを塗装してなる導電性構造物も本発明の一つである。
【0051】
本発明の導電性構造物の基材としては特に限定されず、例えば、セラミック、ガラス、ガラスエポキシ基板、BT基板、及び、半導体を接着するための42アロイ、銅等のリードフレーム等を挙げることができる。上記導電性構造物としては特に限定されず、例えば、コンデンサ、チップ抵抗器、導体回路、リードフレームと半導体の接着部分等を挙げることができる。
【0052】
本発明は、低温硬化でも、抵抗が充分小さい導電膜を得ることができる導電性金属ペーストである。つまり、本発明の導電性金属ペーストは、熱に弱い基材に対しても好適に適用できるものである。また、本発明の導電性金属ペーストは、金属の微小粒子を含有するため、近年の微細な回路形成、層間接合にも利用することができる。また、本発明の導電性ペースト用添加剤を従来の導電性金属ペーストに配合すると、導電性を高めることができるものである。
【0053】
【実施例】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0054】
製造例1 銀コロイド溶液Aの製造
10Lコルベンにディスパービック190(ビックケミー社製)(以下BYK190)595g、1mol/l硝酸1472g、及び、イオン交換水1472gを入れ溶解した。ここに、イオン交換水4415gに溶解させた硝酸銀250gを攪拌しながら加えて、70℃で10分間攪拌した。次に、ジメチルアミノエタノール655gを加えたところ、液が一瞬で黒変し、液温が上昇した。そのまま放置して液温が70℃まで下がったところで、この温度を保ちながら2時間攪拌を続け、黒っぽい黄色を呈する銀コロイドの水溶液が得られた。次に、限外濾過モジュールAHP1010(旭化成社製;分画分子量50000、使用膜本数400本)、ダイアフラムポンプ、下部にチューブ接続口のある3lのステンレスカップをシリコンチューブでつないで、限外濾過装置とした。先の反応液をステンレスカップに入れて、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。液量が2lになった時点で、ステンレスカップに5lのイオン交換水を加えた。その後、同様に限外濾過を行い、イオン交換水5lを2回、さらにエタノール5lを3回加えて洗浄及び溶媒置換した。
母液が約800mlになった時点でポンプを停止して、濃縮を終了することにより、固形分28%の銀コロイドのエタノール溶液が得られた。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は、12nmであった。また、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、固形分中の銀の含有率を計測したところ、69質量%であり、顔料分散剤の含有率は31質量%であった。
【0055】
製造例2 銀コロイド溶液Bの製造
10lコルベンにディスパービック190(ビックケミー社製)75g、及び、イオン交換水2628gを順番に入れる。このコルベンをウォーターバスに入れ、ディスパービック190が溶解するまで攪拌した。ここにイオン交換水2628gに溶解させた硝酸銀625gを攪拌しながら加えて、50℃で10分間攪拌した。次に、ジメチルアミノエタノール1637gを加えたところ、この時、液が一瞬で黒変し、液温が上昇した。そのまま放置して液温が50℃まで下がったところで、この温度を保ちながら2時間攪拌を続け、黒っぽい黄色を呈する銀コロイドの水溶液が得られた。
この反応液を製造例1と同様に限外濾過で洗浄、溶媒置換、濃縮し、固形分34%の銀コロイドのエタノール溶液を得た。この溶液中の銀コロイド粒子の平均粒子径は26nmであった。また、TG−DTA(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、固形分中の銀の含有率を計測したところ、95質量%であり、顔料分散剤の含有率は5質量%であった。
【0056】
実施例1〜3、比較例1、2
市販の導電性金属ペーストとして銀フィラーを有するRM9030(福田金属箔粉工業株式会社製)、製造例1、2で得られた銀コロイド溶液A、B、吸着剤としてアルミナゾル200及びアルミナゾル100(いずれも日産化学工業社製)を順次攪拌混合して表1に示した組成からなる混合液を調製した。更に、減圧下で溶媒を除去し、導電性金属ペーストを得た。
【0057】
得られた導電性金属ペーストをガラス基板上に巾約1cm、長さ約10cm、膜厚約40μmに塗布し、150℃で30分焼き付けを行った。得られた硬化膜の抵抗値をローノイズマルチメーター2010/J(ケースレーインスツルメンツ社製)を用いて測定し、形状を測定して体積抵抗値を算出した。結果を表1に示す。更に、表1に銀フィラーの銀分/銀コロイドの銀分(質量比)を示した。なお、表中のアルミナゾル/顔料分散剤量(質量比)は、アルミナゾル200の固形分と銀コロイドの顔料分散剤量との質量比である。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例4、5
実施例1と同様にして、表2に示した配合からなる導電性金属ペーストを調製し、得られた導電膜の体積抵抗値を測定した。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例6、7、比較例3
実施例1と同様にして、表3に示した配合からなる導電性金属ペーストを調製し、得られた導電膜の体積抵抗値を測定した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例8、9
表4に示した配合を有する導電性ペースト用添加剤を調製し、更に、減圧下で銀コロイド溶液に含まれている溶媒を除去した。表中、YD128、YDF170は、東都化成社製のそれぞれ、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である。次に、市販の導電性金属ペーストであるRM9030と表4に示した割合で攪拌混合して導電性金属ペーストを調製した。導電膜を形成し、実施例1と同様にして評価した。
【0064】
【表4】
【0065】
本発明の導電性金属ペースト及び導電性ペースト用添加剤により、抵抗値の低い導電性に優れた導電膜を得ることができる。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成を有しているので、熱に弱い基材に対しても抵抗の小さい導電膜を形成することができる導電性金属ペーストである。また、本発明の導電性金属ペーストにより得られる導電膜は、金属の微粒子からなる金属構造を形成するため、微細な回路形成等の用途にも適用できるものである。
Claims (11)
- 分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなる導電性金属ペーストであって、
前記分散層は、高分子顔料分散剤からなるものであり、
前記吸着剤は、前記金属コロイド粒子の分散層に吸着するものであることを特徴とする導電性金属ペースト。 - 吸着剤は、塩基性表面を有する無機粒子である請求項1記載の導電性金属ペースト。
- 吸着剤は、コロイダルアルミナである請求項1又は2記載の導電性金属ペースト。
- 吸着剤は、含有量が前記分散層を形成する高分子顔料分散剤1質量部に対して、固形分で0.5質量部以上である請求項1、2又は3記載の導電性金属ペースト。
- 金属コロイド粒子は、高分子顔料分散剤存在下で、金属化合物を還元することにより得られたものである請求項1、2、3又は4記載の導電性金属ペースト。
- 金属コロイド粒子は、銀コロイド粒子である請求項1、2、3、4又は5記載の導電性金属ペースト。
- 樹脂は、エポキシ樹脂である請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電性金属ペースト。
- 更に、金属フィラーを含有する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の導電性金属ペースト。
- 高分子顔料分散剤からなる分散層を有する金属コロイド粒子、吸着剤、及び、樹脂からなることを特徴とする導電性ペースト用添加剤。
- 樹脂は、エポキシ樹脂である請求項9記載の導電性ペースト用添加剤。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の導電性金属ペーストを塗布してなることを特徴とする導電性構造物。
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- 2003-07-02 JP JP2003190613A patent/JP2005026081A/ja active Pending
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