JP4759271B2 - 複合粒子分散体および複合粒子分散体の製造方法 - Google Patents

複合粒子分散体および複合粒子分散体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性を有する導電材料として利用可能な複合粒子分散体および複合粒子分散体の製造方法に関するものである。
導電性に優れた材料が種々開発されている。具体的には、太陽電池パネル配線、フラットパネルディスプレイの電極、回路基板やICカードの配線、スルーホールまたは回路自体、ブラウン管の電磁波遮蔽用、建材または自動車の赤外線遮蔽用、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止剤用、曇りガラスの熱線用、樹脂に導電性を付与するためのコーティング用等が挙げられ、特許文献1ないし5のように、これらに好適に用いられる導電材料や、そのための導電性被膜が種々開発されている。
導電性被膜の製造方法としては従来から、例えば金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリングなどが行われていた。しかしながら、これらの方法は真空系または密閉系での作業を必要とするため、操作が煩雑であり、また、装置が大がかりなためスペースを必要とし、投資に費用が掛かる上、量産性に乏しい等の問題があった。
また、メッキによって導電性被膜を形成する方法もあるが、この場合、多量の廃液を処理する必要があり、材料ロスが大きく余分なコストが掛かる上、環境に対する負荷が大きい問題があった。
さらに、配線のパターニングを形成するときには、フォトリソグラフィー法が広く用いられているが、この場合、基材上に形成された導電性被膜の必要部分をマスクする工程が余分に必要である。用いられる感光性樹脂や除去された金属被膜、およびそれらを溶解させた廃液が多量に排出されるため、この点でも、処理費用がかさみ、環境負荷が大きい。
これらの方法に対して、導電性被膜を形成する液状材料からなるコーティング液を基材上に描画する方法では、特別な環境を設ける必要もなく簡単な設備で生産できるため、広いスペースを占有する必要もなく、投資も少なくてすむ。また、材料ロスや廃液もほとんどないことから、コスト面でも有利であり、環境負荷も小さくできる。
上記コーティング液には、従来より、銀やその他の金属粒子を樹脂成分や有機溶媒で繰り込んだ金属ペーストや、導電性インクと称されるものを、ディスペンサーやスクリーン印刷で塗布することが多い。また、最近では粘度の低いコロイド状の金属分散液をインクジェット方式で描画し、配線パターンを形成する方法も試みられている。
特開2001−167647号公報(公開日平成13年6月22日) 特開2003−187640号公報(公開日平成15年7月4日) 特開2004−143325号公報(公開日平成16年5月20日) 特許第3162405号公報(公開日平成13年4月25日) 特許第3425645号公報(公開日平成15年7月14日)
このような導電性被膜を形成する手法では、形成した被膜の導電性と基材に対する密着性がその信頼性に直結することから、両立が非常に重要である。
これら金属ペーストや導電性インクでは、金属粒子表面の保護層やバインダー樹脂が強い吸着力・接着力を有すると、金属粒子と基材とをしっかりと固着させる一方で、金属粒子間の接触および焼結を阻害し、被膜の導電性を低下させる原因となる。
逆に、被膜の導電性を優先させて、弱い吸着力・接着力の保護層やバインダー樹脂を用いる設計を行った場合、被膜の基材に対する密着性が不十分となり、両立が困難である。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属粒子の接触および焼結を阻害せず導電性を発現させることと、金属粒子と基材を密着させることとを両立できる複合粒子分散体および複合粒子分散体の製造方法を実現することにある。
上記の課題を解決するため、本発明に係る複合粒子分散体は、金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体において、分子内に炭化水素不飽和環状構造とカルボニル基および水酸基を有する炭化水素化合物を化合物Aと称するとき、上記複合粒子が、上記金属粒子に対応する金属イオンを上記化合物Aにて還元して得られる上記金属粒子が、上記化合物Aを成分として有する表面保護層で覆われた構造を有していることを特徴としている。
上記の構成により、上記複合粒子が、上記金属粒子に対応する金属イオンを上記化合物Aにて還元して得られる上記金属粒子が、上記化合物Aを成分として有する表面保護層で覆われた構造を有している。
還元は例えば液相中で行う。
金属は、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びオスミウムからなる群より選ばれる1種以上の金属である。
したがって、金属粒子の接触および焼結を阻害せず導電性を発現させることと、金属粒子と基材を密着させることとを両立させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る複合粒子分散体は、上記の構成に加えて、上記化合物Aには属さず、かつ、上記金属イオンを還元する能力、あるいは還元後の上記金属に配位または吸着する能力を有する物質を含有していないことを特徴としている。
上記の構成により、上記化合物Aとは構造が異なり、かつ、上記金属イオンを還元する能力、あるいは還元後の上記金属に配位または吸着する能力を有する物質が含まれていない。なお、このような物質としては、例えば、グリシンやグリコール酸などを挙げることができる。したがって、上記の構成による効果に加えて、被膜導電性と基材密着性とをいっそう高めることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る複合粒子分散体は、上記の構成に加えて、上記化合物Aが没食子酸であることを特徴としている。
上記の構成により、上記化合物Aが没食子酸である。したがって、上記の構成による効果に加えて、被膜導電性と基材密着性とをいっそう高めることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る複合粒子分散体の製造方法は、金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体を製造する複合粒子分散体の製造方法において、分子内に炭化水素不飽和環状構造とカルボニル基および水酸基を有する炭化水素化合物を化合物Aと称するとき、金属イオンを上記化合物Aにて還元するとともに、その還元により得られる金属粒子を、上記化合物Aを成分として有する表面保護層にて覆うことを特徴としている。
上記の構成により、上記金属粒子に対応する金属イオンを上記化合物Aにて還元するとともに、その還元により得られる金属粒子を、上記化合物Aを成分として有する表面保護層にて覆い、安定な分散体を作る。したがって、上記複合粒子が、上記金属粒子に対応する金属イオンを上記化合物Aにて還元して得られる上記金属粒子が、上記化合物Aを成分として有する表面保護層で覆われた構造のものを製造することができる。それゆえ、金属粒子の接触および焼結を阻害せず導電性を発現させることと、金属粒子と基材を密着させることとを両立させることができるという効果を奏する。
以上のように、本発明に係る複合粒子分散体は、分子内に炭化水素不飽和環状構造とカルボニル基および水酸基を有する炭化水素化合物を化合物Aと称するとき、上記複合粒子が、上記金属粒子に対応する金属イオンを上記化合物Aにて還元して得られる上記金属粒子が、上記化合物Aを成分として有する表面保護層で覆われた構造を有している構成である。
また、本発明に係る複合粒子分散体の製造方法は、分子内に炭化水素不飽和環状構造とカルボニル基および水酸基を有する炭化水素化合物を化合物Aと称するとき、金属イオンを上記化合物Aにて還元するとともに、その還元により得られる金属粒子を、上記化合物Aを成分として有する表面保護層にて覆う構成である。
これにより、金属粒子の接触および焼結を阻害せず導電性を発現させることと、金属粒子と基材を密着させることとを両立させることができるという効果を奏する。
本実施形態では、金属イオンが還元剤で還元されて金属原子(金属粒子)となるとともに、その複数の金属原子が、その還元剤のうちで還元反応に使われなかった分(分散剤)によって表面保護層として覆われる(配位または吸着される)ことで、コロイド粒子状の複合粒子となる。
例えば、金属塩を溶解して生じる金属イオンを還元し、金属粒子の水分散体を得る際、未反応の還元剤を還元後の金属粒子の表面に付着被覆させて表面保護層を形成し、これによりコロイド粒子状の複合粒子の水分散体(複合粒子分散体)を得る。この水分散体を減圧乾燥などにより乾燥させると、コロイド粒子状の複合粒子を得ることができる。
また、この水分散体を基材に塗布することで被膜を形成し、その被膜を焼成することで、焼成被膜である導電性被膜を形成することができる。
この表面保護層により、金属粒子同士が分散媒(水など)中で接触して凝集するのを抑制できるので、長期にわたり沈降せず安定に分散させることができる。すなわち、複合粒子に、水分散体中での分散安定性(貯蔵安定性)を付与することができる。
また、焼成時には、この表面保護層が接着層となることにより、基材と複合粒子とを接着する。ただし、金属粒子同士の接触や焼結により発現する導電性の阻害は軽度である。したがって、得られる水分散体等の複合粒子分散体を用いて形成した焼成被膜の、基材との接着性を良好にし、しかも、焼成被膜の導電性を損なわないようにすることができる。
このような特性を有する物質のみを還元剤、あるいは還元後の上記金属に配位または吸着する分散剤として用いるようにすることができる。すなわち、このような特性を有する還元剤または分散剤があった場合に、それにより上記金属イオンの還元反応や分散剤の配位または吸着が起こる同じ条件において、このような特性を有さない還元剤または分散剤を複合粒子分散体中に含有させないようにすることができる。そのためには、複合粒子分散体を製造するときの金属塩溶液の液相中にこのような還元剤または分散剤を含有させないようにすればよい。
本発明の複合粒子の金属成分は、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムよりなる群より選ばれる1種以上の金属からなる。上記金属のなかでも、銀、銅、白金、パラジウムが好ましい。
上記金属塩としては、適当な溶媒中に溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩、その他の白金属塩等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明において、これらの金属イオンを還元するとともに、微粒子化するときの表面保護層を形成する物質(還元剤または分散剤)として、分子内に炭化水素の不飽和環状構造とC=O基(カルボニル基)および水酸基を有する炭化水素化合物(化合物Aと称する)を用いる。この炭化水素化合物としては、没食子酸、2.ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、3−アルキル−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン)、5−ヒドロキシイソフタル酸、サリチル酸、タンニン酸、カテキン類、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、没食子酸が被膜導電性と基材密着性の面で好適である。
本発明に属さない還元剤または分散剤としては、上記本発明に属する還元剤または分散剤以外のものである。例えば、グリシンやグリコール酸などを挙げることができる。
本発明において、上記複合粒子中の有機成分量としては、0.5〜30重量%が好ましい。なお、複合粒子中の有機成分とは、主として上記保護層の成分である。後述の添加剤も使用している場合は、その添加剤も含む。上記金属コロイド粒子中の有機成分量が1重量%未満であると、得られる金属コロイド液の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、30重量%を超えると、得られる金属コロイド液を用いてなる導電性被膜の導電率が悪くなる傾向がある。より好ましくは、1.0〜20重量%である。
本発明の複合粒子の合成および分散媒に用いられる溶媒は、特に上記炭化水素化合物と相溶性のあるものであれば特に限定されないが、水、水溶性溶剤、またはそれら両方を用いることが好ましい。上記溶媒に水や水溶性溶剤を用いることにより、得られる金属コロイド液を用いて製造される導電性インクの乾燥時や焼成時に溶剤臭が強くなく、環境にも悪影響が少ない。
本発明の複合粒子を用いて作製する導電ペーストあるいは導電インクは、上記複合粒子を主成分とする固形分(以下、単に固形分ともいう)の濃度が3〜70重量%であることが好ましい。ここで、上記固形分とは、微粒子以外の溶媒など揮発成分を、30℃以下でシリカゲル等を用いて乾燥したときに残留する固形分であり、通常、この固形分は、金属粒子と微粒子表面保護層とが主な成分である。
上記固形分の濃度が3重量%未満であると、金属の含有量が少なすぎるので、得られる金属コロイド液を用いて導電性被膜を形成する際、厚みが不足したり、連続的な被膜形成ができなかったりする。上記固形分の濃度が70重量%を超えると、粘度が上昇したり、金属が析出しやすくなったりするなど、取り扱いにくくなる。上記固形分の濃度は、5〜60重量%がより好ましい。
さらに、本発明の複合粒子の平均粒子径は、1〜400nmであることが好ましい。上記金属コロイド粒子の粒子径が1nm未満であっても、良好な導電性インクは得られるが、一般的にそのような微粒子の製造はコスト高で実用的でない。400nmを超えると、金属コロイド粒子の分散安定性が経時的に変化しやすい。上記金属コロイド粒子の平均粒子径は、より好ましくは、5〜80nmである。
上記金属塩、および本発明において規定する上記炭化水素化合物(化合物A)を用いて金属コロイド粒子を含む溶液を製造する方法としては、例えば、上記金属塩と上記炭化水素化合物(化合物A)(本発明に属する還元剤または分散剤)をそれぞれ溶媒に溶かして溶液を調製し、その溶液を撹拌しながら混合する方法等を挙げることができる。
上記のようにして得られた金属コロイド粒子を含む溶液中には、金属コロイド粒子の他に、還元剤の残留物や不純物イオンが存在しており、複合粒子の分散安定性や被膜の導電性に影響を及ぼすため、除去することが望ましい。
上記不純物の除去方法としては、例えば、得られた金属コロイド粒子を含む液を一定期間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度撹拌し、さらに一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過膜や逆浸透膜によるろ過、イオン交換装置等により脱塩する方法等を挙げることができる。
また、本発明の複合粒子を用いた導電ペーストや導電性インクは、塗工や描画のような加工特性を向上させるために、粘度調整剤、チキソ剤、表面張力調整剤、造膜助剤などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、導電性被膜を形成した場合には表面保護層とともに金属粒子間を満たすあるいは金属粒子表面を覆う。
上記粘度調整剤としては、特に限定されないが、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂、ブロックドイソシアネート等のエマルジョン、ポリエステル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、水性ポリアニリン系樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記粘度調整剤の添加量としては、上記複合粒子100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。上記粘度調整剤の添加量が、上記複合粒子100重量部に対して10重量部を超えると、導電性が悪化することがある。0.1重量部未満であると、粘度調整剤を添加した効果がみられない。より好ましくは、1〜6重量部である。
上記チキソ剤としては、クレイ、ベントナイト、ヘクトライト等の粘度鉱物、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂、ブロックドイソシアネート等のエマルジョン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記チキソ剤の添加量としては、上記複合粒子100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。上記チキソ剤の添加量が、上記複合粒子100重量部に対して10重量部を超えると、導電性が悪化することがある。0.1重量部未満であると、チキソ剤を添加した効果がみられない。より好ましくは、1〜6重量部である。
上記表面張力調整剤としては、各種界面活性能を有するものであれば、特に限定されない。
上記表面張力調整剤の添加量としては、溶媒100重量部に対して、0.01〜0.5重量部であることが好ましい。上記表面張力調整剤の添加量が、上記溶媒100重量部に対して0.5重量部を超えると、導電性が悪化することがある。0.01重量部未満であると、表面張力調整剤を添加した効果がみられない。より好ましくは、0,03〜0.1重量部である。
上記造膜助剤としては、特に限定されないが、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂、ブロックドイソシアネート等のエマルジョン、ポリエステル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、水性ポリアニリン系樹脂等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記造膜助剤の添加量としては、上記複合粒子100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。上記造膜助剤の添加量が、上記複合粒子100重量部に対して10重量部を超えると、導電性が悪化することがある。0.1重量部未満であると、造膜助剤を添加した効果がみられない。より好ましくは、1〜6重量部である。
本発明において、被膜を形成させる基材としては特に限定されず、例えば、アルミナ焼結体、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、ガラス等からなる基板;ガラス、樹脂、セラミック等からなる建材;樹脂やセラミック等で表面が形成された電子機器等を挙げることができる。また、その形状としては、例えば、板状、フイルム状等を挙げることができる。
本発明の複合粒子を利用した導電性被膜は、上記基材に対して良好な密着性を発現するが、なかでも、ガラスなどの表面にITO(インジウム錫酸化物)処理した基材のように密着性を発現しにくい基材に対しても密着性を発現させることができる。
上記基材上に本発明を利用した導電ペーストや導電インクを塗布する方法としては特に限定されないが、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、刷毛による方法等を挙げることができる。
本発明では、金属粒子の接触および焼結を阻害せず導電性を発現させることと、複合粒子と基材を密着させることの両立が可能となる。特に、密着が困難なITO基材上での密着性と導電性とを両立させることができる。
その結果、各種基材に対する密着性、とりわけ密着性の発現しにくいITO基材に対する密着性に優れるとともに、同時に高い導電性を両立した導電ペースト・導電インク設計を可能にする銀微粒子などを含有する複合粒子を開発することが可能になる。本技術は、エレクトロニクス、通信、医療機器などの分野で用いる材料として、幅広く応用できる。
本発明の複合粒子は、金属成分が金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムからなる群より選ばれる1種以上の金属からなり、分子内に炭化水素不飽和環状構造とC=O基および水酸基を有する炭化水素化合物によって、これらの金属イオンを液相中において還元するとともに、粒子表面保護層を形成することにより微粒子化する構成とすることができる。
本発明の複合粒子は、上記構成において、分子内に炭化水素の不飽和環状構造とC=O基および水酸基を有する炭化水素が没食子酸である構成とすることができる。
本発明の複合粒子は、上記構成において、30℃以下で乾燥させた固形分について、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で500℃まで昇温する条件で、熱重量分析を行ったときの重量減少が10重量%以下である構成とすることができる。これは、分散体を低温(30℃以下)で減圧乾燥または常圧乾燥させたものである。このように、重量減少が10重量%以下であるくらいにまで水分が抜けた固形分であることにより、被膜にしたときに、金属粒子間に存在して導電性を阻害する成分が少なくなることになる。したがって、複合粒子同士が接触して焼成する率が高くなり、良好な導電性を示すようにすることができる。
本発明の導電材料は、上記構成の複合粒子を用いた構成とすることができる。
〔実施例〕
(A)硝酸銀1.97gをイオン交換水100mLに溶解し、硝酸銀水溶液を調整した。次に没食子酸0.8gをイオン交換水100mLに加えて撹拌しながら、先に調製した硝酸銀水溶液とpH調整用の1規定水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加し、1時間撹拌することで、銀コロイド溶液を得た。得られた銀コロイド溶液は、分画分子量5万の限外濾過膜(アドバンテック東洋製)を用いてろ過し、不純物イオンを除去した。ろ過は、100mLのイオン交換水を20回、計2000ccイオン交換水を通して行った。結果を表1のAに示す。
(B)硝酸銀1.97gをイオン交換水100mLに溶解し、硝酸銀水溶液を調整した。次にタンニン酸0.8gをイオン交換水100mLに加えて撹拌しながら、先に調製した硝酸銀水溶液とpH調整用の1規定水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加し、1時間撹拌することで、銀コロイド溶液を得た。得られた銀コロイド溶液は、分画分子量5万の限外濾過膜(アドバンテック東洋製)を用いてろ過し、不純物イオンを除去した。ろ過は、100mLのイオン交換水を20回、計2000ccイオン交換水を通して行った。結果を表1のBに示す。
(C)硝酸銀1.97gをイオン交換水100mLに溶解し、硝酸銀水溶液を調整した。次にタンニン酸0.8gとグリシン0.35gをイオン交換水100mLに加えて撹拌しながら、先に調製した硝酸銀水溶液とpH調整用の1規定水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加し、1時間撹拌することで、銀コロイド溶液を得た。得られた銀コロイド溶液は、分画分子量5万の限外濾過膜(アドバンテック東洋製)を用いてろ過し、不純物イオンを除去した。ろ過は、100mLのイオン交換水を20回、計2000ccイオン交換水を通して行った。結果を表1のCに示す。
(D)硝酸銀1.97gをイオン交換水100mLに溶解し、硝酸銀水溶液を調整した。次にタンニン酸0.8gとグリコール酸5.2gをイオン交換水100mLに加えて撹拌しながら、先に調製した硝酸銀水溶液とpH調整用の1規定水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加し、1時間撹拌することで、銀コロイド溶液を得た。得られた銀コロイド溶液は、分画分子量5万の限外濾過膜(アドバンテック東洋製)を用いてろ過し、不純物イオンを除去した。ろ過は、100mLのイオン交換水を20回、計2000ccイオン交換水を通して行った。結果を表1のDに示す。
〔評価方法〕
被膜加熱処理を行った。すなわち、まず、基材に塗布した。被膜幅は5mmである。その後、乾燥・焼結させる処理を行った。
被膜厚みを、三次元表面形状測定装置(日本ビーコ(株)/WYKO製)NT1100にて測定した。
電気抵抗を、直流精密測定器であるダブルブリッジ2769−10(横河M&C(株)製)にて測定した。測定端子間距離と被膜厚みとから体積抵抗率に換算した。換算式は次の通りである。すなわち、
(体積抵抗率)=(抵抗値)×(被膜幅)×(被膜厚み)/(端子間距離)
である。
また、剥離試験を、JIS K5600−5−6記載の方法に準拠して行った。表1中、「分類」は、この方法に記載の剥離レベルを示すものである。
なお、結果を示す表1中、判断基準は、「○:剥離少なく、問題なし ×:剥離多く、問題あり」である。
Figure 0004759271
A、Bでは、還元剤または分散剤として、没食子酸またはタンニン酸のみを用いた。一方、C、Dでは、タンニン酸とグリシン、あるいはタンニン酸とグリコール酸、とのように、タンニン酸以外にも、グリシンやグリコール酸などの還元剤または分散剤をも使用した。その結果、基材との接着性で、A、Bは、C、Dと比べて、より優れていることがわかる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
導電性と密着性とに優れており、回路基板に導電性を付与するためのコーティングのような用途にも適用できる。

Claims (4)

  1. 金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体において、
    上記複合粒子が、
    上記金属粒子に対応する金属イオンを没食子酸にて還元して得られた上記金属粒子が、上記没食子酸を成分として有する表面保護層で覆われた構造を有し
    上記没食子酸には属さず、かつ、上記金属イオンを還元する能力、あるいは還元後の上記金属に配位または吸着する能力を有する物質を含有していないことを特徴とする複合粒子分散体。
  2. 金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体において、
    上記複合粒子が、
    上記金属粒子に対応する金属イオンを没食子酸にて還元して得られた上記金属粒子が、上記没食子酸を成分として有する表面保護層で覆われた構造を有し、
    グリシンおよびグリコール酸を含有していないことを特徴とする複合粒子分散体。
  3. 金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体を製造する複合粒子分散体の製造方法において、
    金属イオンを没食子酸にて還元するとともに、その還元により得られた金属粒子を、上記没食子酸を成分として有する表面保護層にて覆い、
    上記没食子酸には属さず、かつ、上記金属イオンを還元する能力、あるいは還元後の上記金属に配位または吸着する能力を有する物質を含有させないことを特徴とする複合粒子分散体の製造方法。
  4. 金属粒子を有する複合粒子を分散体中に分散させた複合粒子分散体を製造する複合粒子分散体の製造方法において、
    金属イオンを没食子酸にて還元するとともに、その還元により得られた金属粒子を、上記没食子酸を成分として有する表面保護層にて覆い、
    グリシンおよびグリコール酸を含有させないことを特徴とする複合粒子分散体の製造方法。
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