JP4886444B2 - 流動性組成物及びそれを用いて形成した電極、配線パターン、塗膜並びにその塗膜を形成した装飾物品 - Google Patents

流動性組成物及びそれを用いて形成した電極、配線パターン、塗膜並びにその塗膜を形成した装飾物品 Download PDF

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本発明は、金属粒子を配合した流動性組成物、及びその流動性組成物を用いて形成した電極、配線パターン、塗膜並びにその塗膜を形成した装飾物品に関する。
金属粒子を配合した流動性組成物は、金属粒子を溶媒に分散し、必要に応じてバインダーや分散剤、粘度調整剤などの添加剤を更に配合した、一般にコーティング剤、塗料、ペースト、インキ、インクなどの組成物を含む総称であり、その金属粒子の性質を活用して、例えば電気的導通を確保するため、あるいは帯電防止、電磁波遮蔽または金属光沢を付与するためなどの種々の用途に用いられている。しかも、近年になって、配合する金属粒子として、平均粒子径が1〜100nm程度の金属コロイド粒子が用いられるようになり、その用途は多方面に拡大している。具体的には、金属コロイド粒子の高い導電性を活用して、ブラウン管、液晶ディスプレイ等の透明性部材の電磁波遮蔽に適用されている。また、ナノマテリアルである金属コロイド粒子を用いて、微細な電極、回路配線パターンを形成する技術が提案されている。これは、金属コロイド粒子を配合した流動性組成物を、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の手法で基板上に電極や回路配線のパターンを塗布した後、比較的低温で加熱して金属コロイド粒子を融着させるもので、特に、プリント配線基板の製造に応用されつつある。更に、金属コロイド粒子は穏やかな加熱条件下においても容易に粒子の融着が進行し金属光沢が発現するため、簡便な鏡面の作製技術が、意匠・装飾用途において注目されている。
このような流動性組成物として例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなどの有機成分を分散安定化剤として金属コロイド粒子に含ませ、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等を造膜助剤として用いた導電性インクが知られている(特許文献1参照)。
特開2001−325831号公報
特許文献1に記載の導電性インクを基材に塗布し、150℃程度の比較的低温での加熱によって得られる塗膜は、基材との密着性が低く、塗膜強度が脆弱であるため、クラック等の表面欠陥や剥離等の欠損が生じ易く、商品価値を損ねるばかりでなく、導電性等の特性が低下するという問題がある。具体的には、回路配線や電極を形成しても断線や電気的導通の低下等の障害が生じたり、形成した塗膜の帯電防止性、電磁波遮蔽性の低下が生じる。また、塗膜を乾燥する間に金属粒子が凝集して、塗膜の平滑性が低下し易く、金属光沢の低下や白濁が生じるという問題もある。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献1に記載のクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなどよりも強固に化学結合する特定の化合物を金属粒子の表面に存在させ、しかも、その化合物の末端等には親水性基を持たせること、そして、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤などを配合して流動性組成物を調製すると、150℃程度の比較的低温での加熱によっても塗膜の密着性が改良され、しかも塗膜の平滑性にも優れ、金属光沢等の仕上り外観も向上することを見出し、本発明を完成した。更に、上記の知見を詳細に検討した結果、使用する架橋剤に存在する活性基が、金属粒子の表面に化学結合した化合物に存在する親水性基と反応するとより一層密着性等が改良されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、(1)金属粒子、架橋剤及び溶媒を少なくとも含み、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素と親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、架橋剤が前記化合物の親水性基と反応し得る活性基を有するものであることを特徴とする流動性組成物であり、また、(2)金属粒子、架橋剤及び溶媒を少なくとも含み、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素とカルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする流動性組成物であり、(3)前記の(1)、(2)の流動性組成物を用いて形成されることを特徴とする電極、配線パターンまたは塗膜であり、(4)前記の(3)の塗膜を形成したことを特徴とする装飾物品である。
本発明の流動性組成物は従来のものに比べて、乾燥や比較的低温での加熱によっても基材との密着性に優れた強固な塗膜が得られ、しかも平滑性に優れた、金属光沢による鏡面状の表面を有する塗膜が得られる。このため、塗膜表面の欠陥や塗膜の脱落、欠損などによる不良品が生じ難く、電気的導通を確保する材料、あるいは帯電防止、電磁波遮蔽または金属光沢を付与する材料などに信頼性良く用いられるほか、特に、塗膜の導電性を活用したプリント配線基板等の微細電極及び回路配線パターンの形成、塗膜の鏡面を活用した意匠・装飾用途に用いられる。
本発明は、金属粒子、架橋剤及び溶媒を少なくとも含む流動性組成物であって、(1)金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素と親水性基とを有する化合物(以下、親水性化合物と記載する場合がある。)が前記の元素を介して化学結合しており、(2)架橋剤が前記化合物の親水性基と反応し得る活性基を有するものであることが重要である。前記の親水性化合物は、硫黄、窒素またはリンの元素を介して金属粒子と強い化学結合を形成するとともに、親水性基は金属粒子の外面に配向することで、金属粒子に優れた親水性を付与すると同時に、粒子の凝集を抑制する効果が高いと考えられる。一方、架橋剤が有する活性基は、外部に配向した親水性基、及び基材表面の水酸基等の活性水素と加熱条件下において反応し、金属粒子の融着により形成された金属膜と基材間を架橋すると考えられる。そのため本発明の流動性組成物から形成された金属膜は基材との密着性も高くなるものと推測される。また、金属粒子の表面に強く結合している親水性化合物は、その親水性化合物からの電子供与により金属表面の電子欠損を緩和すると同時に、立体反発により粒子間距離を一定に保つため、本発明の流動性組成物においては金属粒子の分散安定性が低下することはほとんどない。
本発明の流動性組成物は、一般にコーティング剤、塗料、ペースト、インキ、インクなどと称される組成物を包含し、流動性組成物における金属粒子、親水性化合物、架橋剤の配合量は、それぞれの用途に応じて適宜設定できる。金属粒子は、例えば、導電性が安定した電極、回路配線パターンを得るには、一回の塗工で膜厚の厚い塗布物を形成するのが望ましいので、電極材料用途において金属粒子はより高濃度で配合されるのが好ましく、その配合量は流動性組成物全重量に対して5重量%以上であれば良く、10重量%以上であればより好ましく、15重量%以上であれば更に好ましい。電極材料用途における金属粒子の配合量の上限値は、90重量%程度が可能であり、85重量%が好ましく、80重量%がより好ましい。一方装飾用途においてはコストの面から、より低濃度の金属粒子を用いて鏡面を呈する塗膜が得られることが望ましく、その配合量は50重量%以下であれば良く、20重量%以下であればより好ましく、15重量%以下であれば更に好ましい。塗装用途における金属粒子の配合量の下限値は、0.1重量%程度が可能であり、0.5重量%が好ましく、1重量%がより好ましい。親水性化合物は、金属粒子1000重量部に対し、0.01〜200重量部程度の範囲で存在していれば、所望の効果が得られるので好ましく、更に好ましい範囲は0.5〜100重量部程度である。架橋剤は、金属粒子100重量部に対し0.01〜10重量部の範囲であれば所望の効果が得られるので好ましく、この範囲より少なすぎると本発明の効果が得られ難いため好ましくなく、多すぎると硬化が進み過ぎ、塗料粘度が高くなり塗装性が阻害されるので好ましくない。より好ましい範囲は、0.01〜8重量部程度であり、0.01〜5重量部程度であれば更に好ましい。
本発明の流動性組成物は、所定量の金属粒子、親水性化合物、架橋剤、溶媒とを公知の方法により混合して、親水性化合物を金属粒子の表面に化学結合させるとともに、金属粒子を溶媒に分散させる。また、別のより好ましい方法として、後述するように親水性化合物を化学結合した金属粒子の粉末やその金属粒子を溶媒に分散した分散液を予め製造した後で、架橋剤、溶媒と混合すると、より均一な分散状態とすることができる。混合方法としては、例えば、ディスパー等の撹拌機を用いた撹拌混合、サンドミル、コロイドミル等の湿式粉砕混合などの方法を用いることができる。混合の際に、必要に応じて、後述する水性バインダー等のその他の成分を添加し混合することもできる。架橋剤は他の成分と同様に予め混合して流動性組成物を調製しても良いが、架橋反応が急激に進む場合などは金属粒子の溶媒分散液と架橋剤の溶液との二液性組成物として、塗布前にそれらを混合して用いることもできる。
次に、本発明の流動性組成物に配合する各成分について説明する。
(1)金属粒子
本発明で用いる金属粒子は、その構成成分、粒子径等には特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。構成成分としては、1種の金属であっても、合金にしたり積層するなど2種以上の金属で構成されても良い。その金属成分としては周期表VIII族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及びIB族(銅、銀、金)からなる群より選ばれる少なくとも1種であれば、導電性が高いので好ましく、中でも銀、金、白金、パラジウム、銅は特に導電性が高くより好ましく、電極、回路配線パターン形成用の流動性組成物に用いるには、導電性とコストのバランスから銀または銅が特に好ましい。また、金属粒子には、製法上不可避の酸素、異種金属等の不純物を含有していても良く、あるいは、金属粒子の急激な酸化防止のために必要に応じて予め酸素、金属酸化物や有機化合物などが含まれていても良い。金属粒子の粒子径は、入手し易いことから1nm〜10μm程度の平均粒子径を有する金属粒子を適宜用いるのが好ましく、1nm〜1μm程度の平均粒子径の金属粒子がより好ましく、多方面の用途に用いることができることから1〜100nm程度の平均粒子径を有する金属コロイド粒子が更に好ましく、より微細な電極、回路配線パターンを得るためには、5〜50nmの範囲の平均粒子径を有する金属コロイド粒子を用いるのが更に好ましい。本発明では1種の金属粒子を用いても良いし、2種以上の金属粒子を混合して用いても良く、例えば平均粒子径が異なる2種以上の金属粒子、構成成分が異なる2種以上の金属粒子を混合して用いても良い。
金属粒子は、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、(1)金属を真空中で蒸発させて、気相中から金属粒子を凝結させる方法、(2)金属化合物溶液に還元剤を添加して、液相中から金属粒子を析出させる方法などを用いることができ、(2)の方法では廉価に金属コロイド粒子が得られるため、より好ましい方法である。(2)の方法において、金属粒子を製造するための原料である金属化合物は、例えば、前記金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等を用いることができる。金属化合物を溶解する媒液には、水またはアルコール等の有機溶媒、あるいはこれら2種以上の混合溶媒を用いることができる。金属化合物の媒液中の濃度は、金属化合物が溶解する範囲であれば特に制約はないが、工業的には5ミリモル/リットル以上とすることが好ましい。金属化合物が水に難溶のものであれば、金属成分と可溶性の錯体を形成する塩素イオンやアンモニア等を含む化合物を加えて用いることもできる。
液相での反応に用いる還元剤としては公知のものを用いることができ、例えば、(1)ヒドラジンまたはその水和物、(2)ヒドラジン系化合物(例えば、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等)、(3)アルデヒド類((a)脂肪族アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等)、(b)芳香族アルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド等)、(c)複素環式アルデヒド類等)、(4)アミン類((a)1級アミン類(例えば、ブチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等)、(b)2級アミン類(例えば、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等)、(c)3級アミン類(例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等)等)、(5)アミノアルデヒド類(例えば、アミノアセトアルデヒド等)、(6)アルカノールアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(7)還元糖(例えば、ショ糖、トレパース、マルトース、ラクトース等)、(8)水素化合物(例えば、水素化ホウ素ナトリウム等)、(9)低次無機酸素酸(例えば、亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等)及びその水化物(例えば、亜硫酸水素)またはそれらの塩(例えば、ナトリウム等のアルカリ金属塩)等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。還元反応は任意の温度で行うことができ、水性媒液中で行う場合には、5〜90℃の範囲の温度であれば、反応が進み易いので好ましい。還元剤の添加量は金属に還元できる範囲であれば適宜設定することができ、金属化合物1モルに対して、0.2〜50モルであることが好ましい。添加量が0.2モル未満では還元反応が十分に進行し難いため好ましくなく、50モルを超えると生成した金属粒子の分散が不安定になり易いため好ましくない。
金属化合物と還元剤の混合液のpHを8〜14の範囲に調整すると、金属化合物が媒液中に均一に分散し、還元反応が生じ易いので好ましい。更に好ましいpHの範囲は8〜13であり、8〜12であれば一層好ましい。具体的には、例えば、金属化合物を含む媒液のpHを調整した後、金属化合物を還元しても良く、あるいは、還元剤を混合した後、pHを調整しても良い。pH調整には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニア等のアンモニウム化合物、アミン類等の塩基性化合物を用いることができる。このようにして得られた金属粒子は、媒液のpHを5以下にすると容易に凝集するので、吸引ろ過、沈降分離等の比較的簡単な操作でろ別できる。より好ましいpHの範囲は0〜5である。ろ別した金属コロイド粒子は常法により洗浄することができ、可溶性塩類や残存する還元剤を十分に除去できる。pH調整には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸等の酸性化合物を用いることができる。
(2)親水性化合物
前記の金属粒子の表面に化学結合させる親水性化合物は、親水性基を有する化合物であって、しかも、硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物である。硫黄、窒素、リンのそれぞれの元素は金属粒子の表面に配位し化学結合するため、硫黄、窒素、リンの元素を含む親水性化合物は、これらの元素を介して金属粒子の表面に配位する。これらの元素の中でも硫黄が金属粒子との化学結合力が強いので好ましい。硫黄、窒素、リンの元素は親水性基とは別の官能基に含まれていても良く、親水性化合物が親水性基を2個以上有していれば、親水性基に含まれていても良い。ただし、本発明においては、金属粒子表面に存在する全ての親水性化合物が金属粒子と化学結合している必要は必ずしもなく、少なくとも一部が化学結合していれば本発明の効果が得られ、残部が粒子表面に吸着または沈着した状態にあっても良い。親水性基は、水と親和性を有する官能基を意味し、架橋剤が有する活性基と反応し得るものが好ましく、少なくとも1個の親水性基が存在した化合物を用いる。親水性基としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、ヒドラジド基(−NH−NH)、アミド基(−CONH−)等が挙げられ、親水性化合物にはこれらが1種または2種以上含まれているのが好ましい。
親水性基を有する硫黄化合物としては例えば、(a)メルカプトカルボン酸類(親水性基がカルボキシル基:例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸、チオ酢酸、チオジグリコール酸等)、(b)チオグリコール類(親水性基が水酸基:例えば、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール等)、(c)アミノチオール類(親水性基がアミノ基:アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン等)、(d)チオアミド類(親水性基がアミド基:例えば、チオホルムアミド等)、(e)含硫黄アミノ酸類(親水性基がアミノ基及びカルボキシル基:例えば、システイン、メチオニン等)が挙げられる。中でも、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にメルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプトエタノールは、金属粒子、とりわけ金属コロイド粒子に親水性と分散安定性を付与する効果が高くより好ましい。
また、親水性基を有する窒素化合物としては、(a)アミノ酸類(親水性基がカルボキシル基:例えば、グリシン、アラニン等の中性アミノ酸類、ヒスチジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸類、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類)、(b)アミノポリカルボン酸類(親水性基がカルボキシル基:例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、エチレンジアミンジ酢酸(EDDA)、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDA)等)、(c)アルカノールアミン類(親水性基が水酸基:例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、(d)アミン類(親水性基がアミノ基:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノトリエチルアミン等)が挙げられる。
また、親水性基を有するリン化合物としては、アルキルホスフィン(−PR:Rはアルキル基)のアルキル基の一部が親水性基を有する官能基と置換したものなどが挙げられる。
金属粒子の表面に親水性化合物を予め化学結合させるには、金属粒子を分散した媒液中に親水性化合物を添加し混合するか、あるいは、前記の金属化合物と還元剤とを液相中で反応させる際に親水性化合物を存在させても製造することができる。後者の方法では還元反応の際に親水性化合物が存在しており、より高度に分散した金属粒子が得られ、特に微細な金属コロイド粒子が得られるため好ましい方法である。このことから、金属化合物と親水性化合物とを媒液に溶解した溶液と還元剤とを混合して還元する方法、金属化合物と親水性化合物とを媒液に溶解した溶液に還元剤を添加して還元する方法などがより好ましい方法である。
(3)架橋剤
流動性組成物に配合する架橋剤は、前記親水性化合物の親水性基と反応し得る活性基を有し、この架橋剤が有する活性基と、親水性化合物が有する親水性基とが架橋反応を行い得るものであって、例えば、先に挙げたカルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アミド基等とが、縮合、付加重合または開環重合し得るものを言う。このような活性基としては、オキサゾリン基(−CONC)、カルボジイミド基(−N=C=N−)、ブロックイソシアネート基、エポキシ基(−COC)、カルボニル基(−C=O)等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種の活性基を持つ架橋剤が好ましく、オキサゾリン基、カルボジイミド基、ブロックイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の活性基を持つ架橋剤がより好ましい。本発明では、これらの活性基は1種の架橋剤中に1種または2種以上含まれていても良く、異なる活性基を有する架橋剤を2種以上用いることも、同種の活性基を有する異種の架橋剤を2種以上用いることもできる。また、架橋剤としてメラミン、メラミン誘導体から選ばれる1種の化合物も用いることができる。具体的には、オキサゾリン系架橋剤としては、2、2’−ビス(2オキサゾリン)、2、2’−メチレン−ビス(2オキサゾリン)、2、2’−エチレン−ビス(4、4’ジメチル−2オキサゾリン)、2、2’−フェニレン−ビス(2オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリンシクロヘキサノン)スルフィド等が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤としては、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の縮合物が挙げられる。ブロックイソシアネート系架橋剤としては、先に挙げたジイソシアネート化合物のイソシアネート基(−N=C=O)をアルコール系、フェノール系、オキシム系、酸アミド系等のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート等が挙げられる。カルボニル系架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ジアセトン、シクロペンタジオン、ダイアセトンアクリルアミド、アジピン酸ヒドラジド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセト酢酸アリル等のケトン系化合物等が挙げられる。メラミン系架橋剤としては、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
親水性化合物と架橋剤の好ましい実施態様は、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素とカルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤から選ばれる少なくとも1種であり、親水性化合物の親水性基と架橋剤の活性基との反応が塗布物において確認できない場合でも、優れた密着性等の本発明の効果が得られる。また、より好ましい実施態様は、金属粒子の表面には硫黄の元素とカルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の親水性基とを有する化合物が前記の硫黄元素を介して化学結合しており、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤から選ばれる少なくとも1種であり、硫黄化合物としてメルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミンから選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましい。
更に、親水性化合物と架橋剤の反応性を考慮すると、それぞれの親水性基、活性基の種類に応じて、適切な組合せを選択するのがより好ましい。例えば、親水性基がカルボキシル基であれば、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤から選ばれる少なくとも1種が優れた密着性等の本発明の効果が得られ更に好ましく、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤が更に好ましい。また、親水性基が水酸基であればブロックイソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤等を選択し、アミノ基やアミド基であればブロックイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を選択し、ヒドラジド基であればカルボニル系架橋剤を選択するのが更に好ましい。
(4)溶媒
流動性組成物に配合する溶媒は、水、あるいはアルコール類、ケトン類等の有機溶媒のいずれでも良く、使用場面に応じて適宜設定することができるが、金属粒子の表面には親水性化合物が化学結合しているため、水や水を主体とした水性溶媒でも十分な分散安定性が得られることから、好適に用いることができる。水性溶媒中の水の含有量は使用場面に応じて適宜設定することができ、例えば電極、回路配線パターンを形成するには水が50重量%以上含まれているのが好ましく、80重量%以上であればより好ましい。一方、装飾用途の塗膜を形成するには水が1重量%以上含まれているのが好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上であれば更に好ましい。水性溶媒には、電極、配線パターン並びに塗膜を作製する際の溶媒の揮発速度を制御する目的で、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、グリセリンなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、等の親水性有機溶媒を混合することができる。水は表面張力が大きいので、必要に応じて、比誘電率が35以上、好ましくは35〜200の範囲の、沸点が100℃以上、好ましくは100〜250℃の範囲の有機溶媒を添加すると、加熱乾燥時や加熱焼成時に塗布物にシワや縮み等の表面欠陥が生じ難く、均一で密度の高い塗布物が得られ易いので好ましい。このような有機溶媒としてN−メチルホルムアミド(比誘電率190、沸点197℃)、ジメチルスルホキシド(比誘電率45、沸点189℃)、エチレングリコール(比誘電率38、沸点226℃)、4−ブチロラクトン(比誘電率39、沸点204℃)、アセトアミド(比誘電率65、沸点222℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(比誘電率38、沸点226℃)、ホルムアミド(比誘電率111、沸点210℃)、N−メチルアセトアミド(比誘電率175、沸点205℃)、フルフラール(比誘電率40、沸点161℃)等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上を用いることができる。中でも、表面張力が50×10−3N/m以下のN−メチルホルムアミド(表面張力38×10−3N/m)、ジメチルスルホキシド(表面張力43×10−3N/m)、エチレングリコール(表面張力48×10−3N/m)、4−ブチロラクトン(表面張力44×10−3N/m)、アセトアミド(表面張力39×10−3N/m)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(表面張力41×10−3N/m)等であれば、更に効果が高く好ましい。これらの高比誘電率、高沸点の有機溶媒は、水を除く溶媒中に20〜100重量%の範囲で含まれているのが好ましく、40〜100重量%の範囲が更に好ましい。
(5)その他の成分
本発明の流動性組成物に、必要に応じて水性バインダーを更に配合すると、塗布物と基材との密着性が一層向上するので好ましい。水性バインダーとしては、水溶解型、エマルジョン型、コロイダルディスパージョン型等を制限なく用いることができるが、前記架橋剤により硬化されるものであれば、硬度の高い塗布物が得られ易いので好ましく、水溶解型であれば更に好ましい。このような水性バインダーとしてタンパク質系高分子、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性セルロースが好適なものとして例示でき、これらから選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。特に、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系高分子は、金属粒子との相互作用が強く架橋剤との反応においてより効率良く塗布物と基材間の密着性を向上させるので好ましく、特にゼラチンであれば更に好ましい。架橋剤との好適な組合せとしては、例えば、オキサゾリン系架橋剤やカルボジイミド系架橋剤に対しては、タンパク質系高分子、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好ましく、ブロックイソシアネート系架橋剤に対しては、タンパク質系高分子、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性セルロース等が好ましい。水性バインダー成分の配合量は、金属粒子100重量部に対し0.01〜10重量部程度の範囲が好ましく、より好ましい範囲は0.01〜8重量部程度であり、0.01〜5重量部程度であれば更に好ましい。
また、本発明の流動性組成物には、前記の金属粒子、架橋剤、溶媒、水性バインダーの他に、界面活性剤、分散剤、増粘剤、可塑剤、防カビ剤等の添加剤を、必要に応じて適宜配合することもできる。例えば、界面活性剤は金属粒子の分散安定性を更に高める作用や、流動性組成物のレオロジー特性を制御し、塗工性を改良する作用を有するので好ましく、具体的には、第4級アンモニウム塩等のカチオン系、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン系、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等のノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができ、これらから選ばれる1種以上を用いることができる。界面活性剤の配合量は、金属粒子の種類等によって異なるので、塗料組成に応じて適宜設定するが、一般的には金属粒子100重量部に対し、0.01〜0.5重量部程度の範囲が好ましい。
次に、本発明の流動性組成物を用いた電極等について説明する。
電極、回路配線パターンは、本発明の流動性組成物を、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の方法により、基板に塗布した後、塗布物を適当な温度で加熱焼成して得られる。また、塗膜は、前記流動性組成物を、例えば、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、刷毛塗り等の方法により、基材に塗布し乾燥して得られる。あるいは、スクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷方法や転写方法を用いて塗膜を形成することもできる。流動性組成物に含まれる架橋剤と親水性化合物との反応、あるいは架橋剤と水性バインダーとの反応は、加熱することにより促進されるので、塗膜を得る場合にも適当な温度で加熱することが好ましい。また、加熱により、溶媒が短時間で揮発するので、塗膜表面にシワ、チヂレ、クボミ等が生じ難く、良好な外観が一層得られ易くなる。加熱条件は、架橋剤と親水性化合物や水性バインダーとの組合せ、基材の種類などにより適宜設定されるが、架橋剤が前記のオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤であれば、40〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜200℃の範囲の温度で30分から2時間程度加熱すると、所望の効果が得られる。本発明の流動性組成物を用いて製造した塗膜は、金属粒子、硬化成分を少なくとも含み、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素と親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、硬化成分は前記化合物の親水性基と架橋剤が有する活性基とが反応して架橋した構成とすることができる。
本発明の装飾物品は、基材の表面の少なくとも一部に、前記の塗膜を形成したものであって、金属粒子の金属色や光沢を基材表面に付与したものである。基材表面の全面にわたって着色し光沢を付与することができるほか、基材表面の一部分に意匠、標章、ロゴマークを形成したり、その他の文字、図形、記号を形成したりすることもできる。基材としては、金属、ガラス、セラミック、コンクリートなどの無機質材料、ゴム、プラスチック、紙、木、皮革、布、繊維などの有機質材料、無機質材料と有機質材料とを併用あるいは複合した材料を用いることができる。それらの材質の基材を使用物品に加工する前の原料基材に塗膜を形成して装飾を施すこともでき、あるいは、基材を加工した後のあらゆる物品に装飾を施すこともできる。また、それらの基材表面に予め塗装したものの表面に装飾を施すことも含まれる。
装飾を施す物品の具体例としては、(1)自動車、トラック、バスなどの輸送機器の外装、内装、バンパー、ドアノブ、サイドミラー、フロントグリル、ランプの反射板、表示機器等、
(2)テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、パーソナルコンピューター、携帯電話、カメラなどの電化製品の外装、リモートコントロール、タッチパネル、フロントパネル等、
(3)家屋、ビル、デパート、ストアー、ショッピングモール、パチンコ店、結婚式場、葬儀場、神社仏閣などの建築物の外装、窓ガラス、玄関、表札、門扉、ドア、ドアノブ、ショーウインド、内装等、
(4)照明器具、家具、調度品、トイレ機器、仏壇仏具、仏像などの家屋設備、
(5)金物、食器などの什器、
(6)飲料水、タバコなどの自動販売機、
(7)合成洗剤、スキンケア、清涼飲料水、酒類、菓子類、食品、たばこ、医薬品などの容器、
(8)表装紙、ダンボール箱などの梱包用具、
(9)衣服、靴、鞄、メガネ、人口爪、人口毛、宝飾品などの衣装・装飾品、
(10)野球のバット、ゴルフのクラブなどのスポーツ用品、つり具などの趣味用品、
(11)鉛筆、色紙、ノート、年賀はがきなどの事務用品、机、椅子などの事務機器、
(12)書籍類のカバーやオビ等、人形、ミニカーなどのおもちゃ、定期券などのカード類、CD、DVDなどの記録媒体、などが挙げられる。また、人間の爪、皮膚、眉毛、髪の毛などを基材とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1〜6、比較例1
(金属コロイド粒子の調製)
金属化合物として硝酸銀50g、親水性化合物として3−メルカプトプロピオン酸1.6gを純水220ミリリットルに溶解し、28%アンモニア水70ミリリットルを加え、pHを11.6に調整した。一方、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム2.1gを、28%アンモニア水4ミリリットルを加えた295ミリリットルの純水に溶解した。両者を30分間かけて600ミリリットルの純水中に撹拌しながら同時に滴下し、硝酸銀を還元して、3−メルカプトプロピオン酸が表面に存在する銀コロイド粒子を媒液中に生成させた。次いで、得られた銀コロイド粒子の媒液を、硝酸(30%)を用いて媒液のpHを2.5に調整し、銀コロイド粒子を沈降させ、真空ろ過機で銀コロイド粒子(銀コロイド粒子1000重量部に対し、メルカプトプロピオン酸を3重量部含む。銀コロイド粒子の平均粒子径は約10nm)をろ別し、ろ液の比導電率が10μS/cm以下になるまで水洗した後、水中に再分散して、水性銀コロイド溶液(銀コロイド粒子を70重量%含有)を得た。
(流動性組成物の調製)
前記の銀コロイド溶液を用いて、表1に示す処方をスクリュー瓶に仕込み、10分間超音波分散して本発明及び比較対象の流動性組成物(銀コロイド粒子濃度:50重量%)を得た。それぞれを試料A〜Gとする。
Figure 0004886444
(1)オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製)
(2)ブロックイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製)
(3)カルボジイミド系架橋剤(日清紡社製)
(4)分散剤(有効成分40重量%:ビックケミー社製)
比較例2〜8
(金属コロイド粒子の調製)
金属化合物として硝酸銀39.4gを純水に溶解した水溶液60ミリリットルを、表面保護剤としてクエン酸3ナトリウム2水和物262.8g、還元剤として硫酸第一鉄7水和物129.2gを、純水800ミリリットルに溶解した水溶液に、撹拌しながら20分間かけて滴下し、硝酸銀を還元して、クエン酸3ナトリウムが表面に存在する銀コロイド粒子を媒液中に生成させた。次いで、得られた銀コロイド粒子の媒液を、遠心分離機を用いて98000m/sで30分間遠心分離を行い、沈降分を回収して800ミリリットルの純水に再分散させ、更に、98000m/sで30分間遠心分離を行い沈降分を除去し、水性銀コロイド溶液を得た。この水性銀コロイド溶液の比導電率を測定したところ、10μS/cm以下であった。得られた水性銀コロイド溶液にアセトン800ミリリットルを添加し、銀コロイド粒子を凝集させ、再度、29400m/sで30分間遠心分離して沈降分を回収し、銀コロイド粒子のケーキ(銀コロイド粒子を61重量%含有)を得た。
(流動性組成物の調製)
前記の銀コロイド粒子のケーキを用いて、表2に示す処方をスクリュー瓶に仕込み、10分間超音波分散して比較対象の流動性組成物(銀コロイド粒子濃度:20重量%)を得た。それぞれを試料H〜Nとする。
Figure 0004886444
(1)オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製)
(2)ブロックイソシアネート系架橋剤(第一工業製薬社製)
(3)カルボジイミド系架橋剤(日清紡社製)
(4)分散剤(有効成分40重量%:ビックケミー社製)
評価1:塗膜の比抵抗の評価
実施例1〜6、比較例1〜8の流動性組成物(試料A〜N)を、#16バーコーターでガラス板上に塗布し、150℃の温度で1時間焼きつけた。得られた塗膜の体積抵抗率を、ロレスタ−GP型低抵抗率計(三菱化学社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。本発明の流動性組成物により得られる導電性塗膜は、従来の方法により得られる塗膜と同等の優れた導電性を示すことが判る。
評価2:塗膜強度及び塗膜外観の評価
実施例1〜6、比較例3〜8の流動性組成物(試料A〜F、I〜N)を、#10バーコーターでPETフィルム上に塗布し、150℃の温度で1時間焼きつけた。得られた塗膜にカッターで10mm×10mm大のゴバン目状の切り込みを100個作り、その上にセロハンテープを貼付した後、90°の角度でセロハンテープを急激に剥離した。剥離後にPETフィルム上に残ったゴバン目の数を測定した。この数値が大きい程、塗膜強度が高いことを示す。また、塗膜を水及び70℃の温水に1晩浸漬した後、同様にして塗膜強度を評価した。更に、これらの塗膜の外観を目視により観察した。尚、比較例1、2は塗膜が硬化しないので、本評価は行っていない。結果を表3に示す。本発明の流動性組成物により得られる導電性塗膜は、塗膜強度が高く、しかも優れた外観が得られることが判る。以上は、親水性硫黄化合物を化学結合した銀粒子の具体例であるが、親水性窒素化合物、親水性リン化合物でも同様の結果が得られており、また、銀粒子以外の金属粒子でも同様の結果が得られることを確認した。
Figure 0004886444
実施例7、比較例9
前記の実施例1と同様にして水性銀コロイド溶液(銀コロイド粒子を70重量%含有)を得、次いで、この水性銀コロイド溶液を用いて、表4に示す処方をスクリュー瓶に仕込み、10分間超音波分散して本発明及び比較対象のインク組成物(銀コロイド粒子濃度:10重量%)を得た。それぞれを試料O、Pとする。
Figure 0004886444
(1)オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製)
(2)分散剤(有効成分40重量%:ビックケミー社製)
実施例7、比較例9のインク組成物(試料O、P)をスプレー塗装機の一種であるエアブラシ(アネスト岩田社製HP−CH)でPETフィルム、ガラス板、アクリル板上に塗布し、80℃または150℃の温度で1時間焼きつけた。得られた塗膜を前記の評価2の方法でカッターで10mm×10mm大のゴバン目状の切り込みを100個作り、その上にセロハンテープを貼付した後、90°の角度でセロハンテープを急激に剥離した。剥離後にPETフィルム、ガラス板、アクリル板上に残ったゴバン目の数を測定して、塗膜強度、塗膜外観を評価した結果を表5に示す。本発明の流動性組成物により得られた塗膜は、塗膜強度が高く、金属光沢の鏡面を有することが判った。
Figure 0004886444
本発明の流動性組成物は、従来のものよりも基材との密着性等に優れており、従来から用いられている電気的導通を確保する材料、あるいは帯電防止、電磁波遮蔽または金属光沢を付与する材料などの用途に幅広く用いられるほか、比較的低温での加熱によっても優れた導電性、金属光沢を有する塗膜が得られることから、近年活発に開発が進められている電極、回路配線パターンの形成といったナノテクノロジーの新規用途にも適用でき、また、金属光沢による意匠性、装飾性の付与などのメッキ技術の代替用途にも適用できる。

Claims (13)

  1. 金属粒子、架橋剤及び溶媒を少なくとも含み、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素とカルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする流動性組成物。
  2. 金属粒子と結合している化合物が硫黄化合物であることを特徴とする請求項1に記載の流動性組成物。
  3. 硫黄化合物がメルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の流動性組成物。
  4. 金属粒子と化学結合している化合物の親水性基がカルボキシル基であり、架橋剤がオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の流動性組成物。
  5. 金属粒子100重量部に対し架橋剤を0.01〜10重量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の流動性組成物。
  6. 金属粒子を構成する金属が、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の流動性組成物。
  7. 金属粒子が銀粒子であることを特徴とする請求項に記載の流動性組成物。
  8. 更に、水性バインダーを含むことを特徴とする請求項1に記載の流動性組成物。
  9. 水性バインダーがタンパク質系高分子、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性セルロースから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の流動性組成物。
  10. 請求項1に記載の流動性組成物を用いて形成されることを特徴とする電極。
  11. 請求項1に記載の流動性組成物を用いて形成されることを特徴とする配線パターン。
  12. 請求項1に記載の流動性組成物を用いて形成されることを特徴とする塗膜。
  13. 基材の表面の少なくとも一部に、請求項12に記載の塗膜を形成したことを特徴とする装飾物品。
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