JP5293203B2 - 金属ナノ粒子の合成方法 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、腐食性材料を含まずに不溶性の金属塩から金属ナノ粒子を合成し、導電材料として用いるのに好適な金属ナノ粒子を製造し得る金属ナノ粒子の合成方法を提供することにある。
この第2の観点の金属ナノ粒子の合成方法では、異なる金属ナノ粒子同士の混合物、合金、若しくは一方の元素の中心部に他方が外殻を形成するいわゆるコアーシェル構造をとることにより、反射率、体積抵抗率を制御する効果がある。
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及びグルコースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする。
これら第3及び第4の観点の金属ナノ粒子の合成方法では、上記種類の化合物であれば、腐食性物質を含まず、製品である分散液内に残留しても、焼成によって容易に分解することが可能という効果が得られる。
本発明の第6の観点は、第1ないし第4の観点の合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に分散させて金属ナノ粒子分散液を得る工程と、その金属ナノ粒子分散液を金属膜製造用組成物として基材上に湿式塗工法で塗工して金属膜を形成する工程とを含む金属膜の製造方法である。
図1に示すように、本発明における合成方法では、先ず、金属塩水溶液Aを調製する工程とカルボン酸類水溶液Bを調製する工程と還元剤水溶液Cを調製する工程と塩基性水溶液Dを調製する工程を含む。
金属塩水溶液Aの調製は溶媒である水に金属塩を溶解させることにより行う。金属塩を脱イオン水に溶解させ、室温での飽和水溶液を調製することが好ましい。ここで溶解させる金属塩は少なくとも銀塩を含むのものである。そして、金属塩に含まれる金属元素部分全体の質量を100としたとき、その銀は75質量%以上を占めるように調整される。よって、銀が100質量%であっても良いけれども、銀以外の金属塩を含む場合には、その金属塩に含まれる金属元素の銀以外の残部は、金、白金、パラジウム及びルテニウムより選ばれた1種又は2種以上の金属を含むようにすることが好ましい。これにより、異なる金属ナノ粒子同士の混合物、合金、若しくは一方の元素の中心部に他方が外殻を形成するいわゆるコアーシェル構造をとることにより、反射率、体積抵抗率を制御する効果が得られる。
カルボン酸類水溶液Bの調製は、溶媒である水にカルボン酸類を溶解させることにより行う。カルボン酸類を脱イオン水に溶解させ、室温での飽和水溶液を調製することが好ましい。ここで溶解させるカルボン酸類は、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸などのカルボン酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である。カルボン酸類をこれに限定するのは、金属ナノ粒子の表面を修飾する保護材として良好に機能するからである。また、チオール等のように腐食性物質を含まないからである。更に、これらを、ナトリウム、銅、アンモニアなどの塩とすることことにより、合成時のpHを塩基側へ設定できるからである。
還元剤水溶液Cの調製は、溶媒である水に還元剤を溶解させることにより行う。還元剤を脱イオン水に溶解させ、室温での飽和水溶液を調製することが好ましい。ここで溶解させる還元剤は、ヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である。これにより腐食性物質を含まず、製品であるペースト内に残留しても、焼成によって容易に分解することが可能という効果が得られる。
一方、溶媒である水に溶解させる還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及びグルコースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であっても良い。この場合にも、腐食性物質を含まず、製品であるペースト内に残留しても、焼成によって容易に分解することが可能という効果が得られる。
塩基性水溶液Dの調製は、溶媒である水に塩基化合物を溶解させることにより行う。その濃度は1〜5Mの範囲に調整されるが、主として取扱いや調製の容易さを理由としており、特にこの範囲に限定されない。ここで溶解させる塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
先ずカルボン酸類水溶液Bに金属塩水溶液Aを滴下しつつ撹拌して混合液を形成する。カルボン酸類水溶液Bに金属塩水溶液Aを滴下しつつ撹拌することで、形成された混合液中で金属イオンがカルボン酸錯体を形成する。滴下する割合は、カルボン酸類水溶液Bに含まれるカルボン酸、カルボン酸塩又はカルボン酸とカルボン酸塩の総量1モルに対して、金属塩水溶液Aに含まれる金属元素が0.3〜3モルとなることが好ましい。下限値未満では、生成するナノ粒子の粒径が増大して比抵抗が増大する不具合を生じ、上限値を越えると、不要な金属塩水溶液Aの滴下作業を生じてコストが増大する不具合を生じる。また、カルボン酸類水溶液Bに対する金属塩水溶液Aの滴下及び攪拌は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行うことが好ましい。
混合液に塩基性水溶液Dを滴下しつつ撹拌してカルボン酸塩懸濁液を形成する。混合液に塩基性水溶液Dを滴下しつつ撹拌することで、形成されたカルボン酸塩懸濁液中の金属錯体の溶解度が低下し、カルボン酸塩としてその大半が析出する。滴下する割合は、混合液の原料である金属元素1モルに対して、塩基性水溶液Dに含まれる塩基化合物が0.3〜3.0モルとなることが好ましい。下限値未満では、生成するナノ粒子の粒径が増大して比抵抗が増大する不具合を生じ、上限値を越えると、不要な塩基性水溶液Dの滴下作業を生じてコストが増大する不具合を生じる。また、混合液に対する塩基性水溶液Dの滴下及び攪拌は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行うことが好ましい。混合液に塩基性水溶液Dを滴下しつつ撹拌すると、難溶性のカルボン酸塩が析出してカルボン酸塩懸濁液が得られる。よって、混合液に塩基性水溶液Dを滴下した後の撹拌はその懸濁液が十分に得られる程度の時間行うことが好ましい。
カルボン酸塩が析出した懸濁液が得られた後、その懸濁液に還元剤水溶液Cを滴下しつつ撹拌して金属ナノ粒子を生成させる。即ち、カルボン酸塩懸濁液に還元剤水溶液Cを滴下しつつ撹拌することで、析出したカルボン酸塩が還元されて金属ナノ粒子が生成するという技術的効果を得ることができる。滴下する割合は、懸濁液の原料である金属元素1モルに対して、還元剤水溶液Cに含まれる還元剤が0.1〜3.0モルとなることが好ましい。下限値未満では、収率が低下する不具合を生じ、上限値を越えると、不要な還元剤水溶液Cの滴下作業を生じてコストが増大する不具合を生じる。また、カルボン酸塩懸濁液に対する還元剤水溶液Cの滴下及び攪拌は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行われる。この温度範囲で攪拌すると、生成した粒子の平均粒径を100nm以下とすることができ、得られた金属ナノ粒子を使用した分散液を電極形成用組成物として用いて成膜した際に、低温で低い体積抵抗率を達成することができる。また、カルボン酸塩懸濁液に対する還元剤水溶液Cの滴下は、10分以内にて行うことが好ましい。滴下速度が上限値を越えると、生成するナノ粒子の粒径が増大して比抵抗が増大する不具合を生じる。このように懸濁液に還元剤水溶液Cを滴下しつつ、所定の温度範囲で撹拌することにより、金属塩が還元され、金属ナノ粒子を生成させることができる。
この工程では、上記合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に添加混合して、分散媒中に粒子を分散させることにより金属ナノ粒子分散液を調製する。分散液中の銀ナノ粒子を含む金属ナノ粒子の含有量は、金属ナノ粒子及び分散媒からなる組成物100質量%に対して2.5〜95.0質量%、好ましくは3.5〜90.0質量%含有するように調製される。分散媒は、全ての分散媒100質量%に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水と、2質量%以上、好ましくは3質量%以上のアルコール類とを含有することが好適である。例えば、分散媒が水及びアルコール類のみからなる場合、水を2質量%含有するときはアルコール類を98質量%含有し、アルコール類を2質量%含有するときは水を98質量%含有する。ここで、銀ナノ粒子を含む金属ナノ粒子の含有量を金属ナノ粒子及び分散媒からなる組成物100質量%に対して2.5〜95.0質量%の範囲に限定したのは、2.5質量%未満では特に焼成後の金属膜の特性には影響はないけれども、必要な厚さの金属膜を得ることが難しく、95.0質量%を越えると組成物の湿式塗工時にインク或いはペーストとしての必要な流動性を失ってしまうからである。また水の含有量を全ての分散媒100質量%に対して1質量%以上の範囲に限定したのは、1質量%未満では、組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また焼成後の金属膜の導電性と反射率が低下してしまい、アルコール類の含有量を全ての分散媒100質量%に対して2質量%以上の範囲に限定したのは、2質量%未満では、上記と同様に組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また焼成後の金属膜の導電性と反射率が低下してしまうからである。
この工程では、上述した金属ナノ粒子分散液を用いて金属膜を形成する工程である。それには先ず、上記金属ナノ粒子分散液を金属膜形成用組成物とし、この金属膜形成用組成物を基材上に湿式塗工法で塗工する。この湿式塗工法での塗工は、焼成後の厚さが0.1〜2.0μm、好ましくは0.3〜1.5μmの範囲内となるように成膜する。上記基材は、シリコン、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料又は金属からなる基板のいずれか、或いはシリコン、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料及び金属からなる群より選ばれた2種以上の積層体であることができる。また基材は太陽電池素子又は透明金属膜付き太陽電池素子のいずれかであることが好ましい。透明金属膜としては、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、アンチモンドープ酸化錫(Antimony Tin Oxide:ATO)、ネサ(酸化錫SnO2)、IZO(Indium Zic Oxide)、AZO(アルミドープZnO)等などが挙げられる。上記金属膜形成用組成物は太陽電池素子の光電変換半導体層の表面や、透明金属膜付き太陽電池素子の透明金属膜の表面に塗布されることが好ましい。更に上記湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法又はダイコーティング法のいずれかであることが特に好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。スプレーコーティング法は金属膜形成用組成物を圧縮エアにより霧状にして基材に塗布したり、或いは金属膜形成用組成物自体を加圧し霧状にして基材に塗布する方法であり、ディスペンサコーティング法は例えば金属膜形成用組成物を注射器に入れこの注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから金属膜形成用組成物を吐出させて基材に塗布する方法である。スピンコーティング法は金属膜形成用組成物を回転している基材上に滴下し、この滴下した金属膜形成用組成物をその遠心力により基材周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法はナイフの先端と所定の隙間をあけた基材を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基材上に金属膜形成用組成物を供給して基材を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は金属膜形成用組成物を狭いスリットから流出させて基材上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに金属膜形成用組成物を充填し、基材上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して金属膜形成用組成物を基材に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた金属膜形成用組成物を直接基材に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基材に転移させる、インクの撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された金属膜形成用組成物をマニホールドで分配させてスリットより基材上に押し出し、走行する基材の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
<実施例1〜13,比較例1〜4>
先ず、次の表1に示す金属元素を含む金属塩、カルボン酸もしくはカルボン酸塩、及び還元剤を脱イオン水にそれぞれ溶解させ、それぞれ室温での飽和水溶液を調製した。なお、金属塩としては、硝酸塩を用い、Au及びPtについてのみ塩素化合物を用いた。また次の表1に示す塩基化合物をその濃度が3Mになるように脱イオン水に溶解させて塩基性水溶液に調整し、次の表1に示すモル比分を加えた。
次に、図1に示す合成フローに従って混合した。
なお、4時間の反応後、実施例1〜13については、反応液の乾燥物をX線回折法で評価したが、添加した金属のカルボン酸塩は検出されなかった。
反応終了後における実施例1〜13,比較例1〜4の反応液を1000Gで3分間遠心分離した。得られた沈殿物に、沈殿物質量の50倍の0.1Mアンモニア水を加えて10分間撹拌した後、再度1000Gで3分間遠心分離した。この沈殿物に水を加え、更に限外ろ過法を用いて脱塩した後、エタノールやメタノール等の溶媒を加えて撹拌し、金属ナノ粒子分散液を得た。得られた実施例1〜13,比較例1〜4における分散液の組成を表2に示す。
この実施例1〜13,比較例1〜4における分散液を、表2に示す塗工法を用いて表2に示す基材上に塗布し、大気中表2に示す焼成温度で30分に渡ってそれぞれ焼成した。焼成後の塗膜厚さと得られた塗膜の体積抵抗率及び金属ナノ粒子の平均粒径を表2に示す。金属ナノ粒子の平均粒径の測定方法は、先ず、得られた金属ナノ粒子をTEM(Transmission Electron Microscope、透過型電子顕微鏡)により約50万倍程度の倍率で撮影する。次いで、得られた画像から金属ナノ粒子200個について一次粒径を測定し、この測定結果をもとに粒径分布を作成する。次に、作成した粒径分布から得られた平均値を平均粒径とした。また、体積抵抗率は、四端子法により測定して算出し、膜厚はマイクロメータにより測定した。
また、表2の他の溶剤の欄において、『A』はアセトンとイソプロピルグリコールとを質量比で1:1に混合した混合液を示し、『B』はシクロヘキサンとメチルエチルケトンとを質量比で1:1に混合した混合液を示し、『C』はトルエンとヘキサンとを質量比で1:1に混合した混合液を示す。
B カルボン酸類水溶液
C 還元剤水溶液
D 塩基性水溶液
Claims (6)
- 金属塩を溶解させて金属塩水溶液(A)を調製する工程と、
グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物を溶解させてカルボン酸類水溶液(B)を調製する工程と、
還元剤水溶液(C)を調製する工程と、
塩基性水溶液(D)を調製する工程と、
前記カルボン酸類水溶液(B)に前記金属塩水溶液(A)を滴下しつつ撹拌して混合液を形成する工程と、
前記混合液に前記塩基性水溶液(D)を滴下しつつ撹拌してカルボン酸塩懸濁液を形成する工程と、
前記カルボン酸塩懸濁液に前記還元剤水溶液(C)を滴下しつつ撹拌して金属ナノ粒子を生成させる工程と
を有し、
前記金属塩に含まれる金属元素は銀を75質量%以上含み、
前記還元剤水溶液(C)を滴下しつつ撹拌して金属ナノ粒子を生成させる工程が25℃以上95℃以下の温度で撹拌することにより行われる
ことを特徴とする金属ナノ粒子の合成方法。 - 金属塩水溶液(A)の金属塩に含まれる金属元素の銀以外の残部に、金、白金、パラジウム及びルテニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属が含まれる請求項1記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 還元剤が、ヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及びグルコースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 請求項1ないし4いずれか1項に記載の合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に分散させて金属ナノ粒子分散液を得る分散液の製造方法。
- 請求項1ないし4いずれか1項に記載の合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に分散させて金属ナノ粒子分散液を得る工程と、
前記金属ナノ粒子分散液を金属膜製造用組成物として基材上に湿式塗工法で塗工して金属膜を形成する工程と
を含む金属膜の製造方法。
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