JP5560459B2 - 金属ナノ粒子の合成方法 - Google Patents
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A.金属ナノ粒子の合成方法
図1に示すように、本発明における合成方法は、カルボン酸金属塩水溶液15にカルボン酸13を混合して第1カルボン酸塩懸濁液17を調製する工程を含む。この実施の形態ではそのカルボン酸金属塩水溶液15がカルボン酸金属塩11を塩基性水溶液又は酸性水溶液12に混合してこの水溶液に溶解することにより調製される場合(以下、「第1の調製」という。)と、カルボン酸13を金属塩水溶液14に混合溶解した後、この溶液に塩基性水溶液又は酸性水溶液12を混合してpH調整することにより調製される場合(以下、「第2の調製」という。)について述べる。
(1) 第1の調製
この調製のために用いられるカルボン酸金属塩11は粉末である。このカルボン酸金属塩11に含まれるカルボン酸は、グリコール酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸などのカルボン酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である。カルボン酸を上記に限定するのは、金属ナノ粒子の表面を修飾する保護材として良好に機能するからである。また、チオール等のように腐食性物質を含まないからである。更に、これらを、ナトリウム、銅、アンモニアなどの塩とすることことにより、合成時のpHを塩基側へ設定できるからである。カルボン酸金属塩11は、例示すれば、クエン酸銀、酢酸銀、酢酸銅、酢酸ルテニウム、酢酸金、マレイン酸スズ、酒石酸亜鉛、酒石酸銅などである。そして金属塩は銀を含むものが好ましい。金属塩に含まれる金属元素全体の質量を100%としたとき、その銀は75質量%以上を占めることが好ましい。銀は100質量%であってもよい。銀以外の金属を含む場合には、銀以外の元素として、金、白金、銅、鉄、亜鉛、スズ、パラジウム及びルテニウムより選ばれた1種又は2種以上の金属が挙げられる。銀と銀以外の金属を含むことにより、異なる金属ナノ粒子同士の混合物、合金、若しくは一方の元素の中心部に他方が外殻を形成するいわゆるコアーシェル構造をとることができ、この場合には、反射率、体積抵抗率を制御する効果が得られる。
(2) 第2の調製
この調製のために用いられるカルボン酸13は第1の調製で述べたカルボン酸金属塩に含まれるカルボン酸と同じである。また金属塩水溶液14は金属塩を室温で脱イオン水に溶解し調製される。この金属塩を例示すれば、硝酸白金、塩化白金、硝酸銀、硝酸亜鉛、酢酸銀、硫化銀などである。この金属塩に含まれる金属は、第1の調製で述べた金属と同じである。更にこの調製のために用いられる塩基性水溶液又は酸性水溶液は第1の調製で述べたものと同じである。粉末状のカルボン酸13を金属塩水溶液14に添加混合し撹拌すると、混合液中で金属イオンがカルボン酸金属塩を形成する。混合する割合は、カルボン酸1当量に対して、金属塩水溶液に含まれる金属元素がカルボン酸と塩化物を構成する化学当量と同量となる割合か、もしくはその1〜2割倍量となる割合が好ましい。下限値未満では、カルボン酸金属塩の生成が不十分となり収率の低下を招く。上限値を越えると、生成されるナノ粒子の大きさが不揃いになる。またカルボン酸を金属塩水溶液に混合し攪拌する作業は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行うことが好ましく、30〜50℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。カルボン酸13を金属塩水溶液14に添加混合して溶解した後、この溶液に塩基性水溶液又は酸性水溶液12を混合する第2混合は、上記溶液を塩基性水溶液又は酸性水溶液12により溶液のpHを7〜9に調整して、溶液中に析出したカルボン酸金属塩を溶解するために行われる。
この工程では、第1混合工程において得られたカルボン酸金属塩水溶液15に、その水溶液に含まれるカルボン酸と同種のカルボン酸、即ち上記第2の調製で用いたカルボン酸13を混合して第1カルボン酸塩懸濁液17を調製する。カルボン酸金属塩水溶液15にカルボン酸を混合するとカルボン酸金属塩水溶液15中の金属塩の溶解度が低下し、水溶液中にカルボン酸塩の大半が析出する。この混合は、カルボン酸金属塩水溶液15にカルボン酸13を添加しつつ撹拌することにより行われる。添加する割合は、カルボン酸金属塩水溶液15に含まれるカルボン酸1当量に対して、カルボン酸金属塩水溶液に含まれる金属元素が0.2〜5当量となることが好ましい。下限値未満では、カルボン酸金属塩の生成が不十分となり収率の低下を招く。上限値を越えると、反応系内のpHが下がることにより合成時のpHを塩基側に調整する際に大量のpH調整液が必要となる不具合を生じる。またカルボン酸金属塩水溶液15にカルボン酸13を添加し攪拌する作業は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行うことが好ましく、30〜50℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
この工程では、第2混合工程において得られた第1カルボン酸塩懸濁液17にカルボン酸金属塩水溶液15に含まれる金属と同種の金属を含む金属塩水溶液、即ち上記第2の調製で用いた金属塩水溶液14を混合して第2カルボン酸塩懸濁液19を調製する。この混合は、第1カルボン酸塩懸濁液17に金属塩水溶液14を滴下しつつ撹拌することにより行われる。滴下する割合は、第1カルボン酸塩懸濁液17に含まれる金属1当量に対して、金属塩水溶液14に含まれる金属元素が0.6〜2当量となる割合が好ましい。下限値未満では、カルボン酸金属塩が十分に生成しないため収率の低下を招く不具合を生じ、上限値を越えると、粒径の不揃いなナノ粒子が生成し比抵抗が高まる不具合を生じる。また、第1カルボン酸塩懸濁液17に金属塩水溶液を滴下し攪拌する作業は大気圧下において25〜95℃の温度範囲にて行うことが好ましく、30〜50℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。
この工程では、上記第3混合工程において得られた第2カルボン酸塩懸濁液19に還元剤水溶液20を滴下しつつ撹拌して、懸濁液19中に析出したカルボン酸金属塩が還元されて金属ナノ粒子が生成する。ここで、還元剤水溶液20は溶媒である水に還元剤を溶解させることにより調製される。好ましくは還元剤水溶液は還元剤を脱イオン水に溶解し室温で調製される。ここで溶解させる還元剤は、ヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物又は水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及びグルコースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。これにより腐食性物質を含まず、製品であるペースト内に残留しても、焼成によって容易に分解することが可能という効果が得られる。
B.金属膜の製造方法
次に、上記金属ナノ粒子の合成方法により得られた金属ナノ粒子を用いた金属膜の製造方法について説明する。具体的に、この金属膜の製造方法は、その合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に分散させて金属ナノ粒子分散液を得る分散工程と、その金属ナノ粒子分散液を金属膜製造用組成物として基材上に湿式塗工法で塗工して金属膜を形成する金属膜形成工程とを含む。これらの工程の詳細を以下に説明する。
この工程では、上記合成方法により得られた金属ナノ粒子を分散媒に添加混合して、分散媒中に粒子を分散させることにより金属ナノ粒子分散液を調製する。分散液中の銀ナノ粒子を含む金属ナノ粒子の含有量は、金属ナノ粒子及び分散媒からなる組成物100質量%に対して2.5〜95.0質量%、好ましくは3.5〜90.0質量%含有するように調製される。分散媒は、全ての分散媒100質量%に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水と、2質量%以上、好ましくは3質量%以上のアルコール類とを含有することが好適である。例えば、分散媒が水及びアルコール類のみからなる場合、水を2質量%含有するときはアルコール類を98質量%含有し、アルコール類を2質量%含有するときは水を98質量%含有する。
この工程では、上述した金属ナノ粒子分散液を用いて金属膜を形成する工程である。それには先ず、上記金属ナノ粒子分散液を金属膜形成用組成物とし、この金属膜形成用組成物を基材上に湿式塗工法で塗工する。この湿式塗工法での塗工は、焼成後の厚さが0.1〜2.0μm、好ましくは0.3〜1.5μmの範囲内となるように成膜する。上記基材は、シリコン、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料又は金属からなる基板のいずれか、或いはシリコン、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料及び金属からなる群より選ばれた2種以上の積層体であることができる。また基材は太陽電池素子又は透明金属膜付き太陽電池素子のいずれかであることが好ましい。透明金属膜としては、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、アンチモンドープ酸化錫(Antimony Tin Oxide:ATO)、ネサ(酸化錫SnO2)、IZO(Indium Zic Oxide)、AZO(アルミドープZnO)等などが挙げられる。上記金属膜形成用組成物は太陽電池素子の光電変換半導体層の表面や、透明金属膜付き太陽電池素子の透明金属膜の表面に塗布されることが好ましい。
先ず、図1に示す流れ図に従って、第2の調製方法により、カルボン酸金属塩水溶液15を調製した。具体的には、次の表1に示すAg,Au,Pt,Pd,Ruを含む金属塩(硝酸銀、塩化金、塩化白金、硝酸パラジウム、硝酸ルテニウム)の水溶液14に表1に示すカルボン酸13を混合溶解した後、塩基性水溶液又は酸性水溶液としてアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、硝酸を1種又は2種混合してpHを8.0に調整することによりカルボン酸金属塩水溶液15を調製した(第1混合)。金属塩水溶液は金属塩を脱イオン水に溶解し、室温で飽和水溶液として調製した。次いでこのカルボン酸金属塩水溶液15に上記と同一のカルボン酸13を混合して第1カルボン酸塩懸濁液17を調製した(第2混合)。次にこの第1カルボン酸塩懸濁液17に上記と同一の金属塩水溶液14を混合して第2カルボン酸塩懸濁液19を調製した(第3混合)。更にこの第2カルボン酸塩懸濁液19に表1に示す還元剤の水溶液20を混合し、ウォーターバスを用いて表1に示す反応温度(55〜65℃)まで加熱した。還元剤水溶液は還元剤を脱イオン水に溶解し、室温で飽和水溶液として調製した。反応温度に到達した後、還流しながら更に4時間にわたって、マグネチックスターラで400rpmの速度で撹拌を続けた(第4混合)。これにより金属ナノ粒子分散液を得た。
図2に示す流れ図に従って、表1に示すAg,Au,Ptを含む金属塩(硝酸銀、塩化金、塩化白金)の水溶液に表1に示すカルボン酸水溶液を混合溶解した(第1混合)。この混合液に塩基性水溶液又は酸性水溶液としてアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、硝酸を1種又は2種混合溶解した(第2混合)。得られたカルボン酸塩懸濁液に表1に示す還元剤の水溶液を混合し(第3混合)、実施例1〜14と同様に加熱反応させて金属ナノ粒子分散液を得た。即ち比較例1〜3では金属塩水溶液とカルボン酸水溶液とをそれぞれ1回混合した。
反応終了後における実施例1〜14,比較例1〜3の反応液を1000Gで3分間遠心分離した。得られた沈殿物に、沈殿物質量の50倍の0.1Mアンモニア水を加えて10分間撹拌した後、再度1000Gで3分間遠心分離した。この沈殿物に水を加え、更に限外ろ過法を用いて脱塩した後、エタノールやメタノール等の溶媒を加えて撹拌し、金属ナノ粒子分散液を得た。得られた実施例1〜14,比較例1〜3における分散液の組成を表2に示す。
一方、原料のカルボン酸と金属塩を2回に分けずに混合した比較例1〜3では、平均粒径が約50nmで実施例と比較して粒径が大きく、また体積抵抗率は8.7〜10.4×10-6Ωcmと実施例1〜14の3.9〜7.7×10-6Ωcmより高く、導電材料として好適とはいえなかった。
12 塩基性水溶液又は酸性水溶液
13 カルボン酸
14 金属塩水溶液
15 カルボン酸金属塩水溶液
17 第1カルボン酸塩懸濁液
19 第2カルボン酸塩懸濁液
20 還元剤水溶液
21 金属ナノ粒子分散液
Claims (5)
- カルボン酸金属塩水溶液を調製する工程と、
前記カルボン酸金属塩水溶液に前記水溶液に含まれるカルボン酸と同種のカルボン酸を混合して第1カルボン酸塩懸濁液を調製する工程と、
前記第1カルボン酸塩懸濁液に前記カルボン酸金属塩水溶液に含まれる金属と同種の金属を含む金属塩水溶液を混合して第2カルボン酸塩懸濁液を調製する工程と、
前記第2カルボン酸塩懸濁液に還元剤水溶液を混合して加熱反応させることにより金属ナノ粒子を合成する工程とを含み、
前記金属塩水溶液中の金属塩に含まれる金属元素全体の質量を100%としたとき、銀が75〜100質量%であり、銀以外の金、白金又はルテニウムのいずれか1種の金属が0〜25質量%であり、
前記カルボン酸がグリコール酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸及び酒石酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上からなる金属ナノ粒子の合成方法。 - 還元剤水溶液を大気圧下において25〜95℃の温度範囲で攪拌することにより混合して第2カルボン酸塩懸濁液と反応させ、得られた反応液を固液分離し、分離された固形分に水と溶媒を加えて金属ナノ粒子分散液を得る請求項1記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 還元剤水溶液に含まれる還元剤がヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 還元剤水溶液に含まれる還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及びグルコースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子の合成方法。
- 請求項1ないし4いずれか1項に記載の合成方法により得られた金属ナノ粒子分散液を金属膜製造用組成物として基材上に湿式塗工法で塗工し、焼成して金属膜を形成する工程とを含む金属膜の製造方法。
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