JPWO2018109983A1 - ファスナーチェーンの電気めっき方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
金属製エレメントの列を有するファスナーチェーンの電気めっき方法であって、
A.各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器内を該ファスナーチェーンが通過する工程を含み、
該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内を通過中に、主として該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第一の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触させることにより給電し、
第一の陽極を該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置する、
第一電気めっき工程と、
B.第一電気めっき工程の後、各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器内を該ファスナーチェーンが通過する工程を更に含み、
該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器内を通過中に、主として該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第二の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触させることにより給電し、
第二の陽極を該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置する、
第二電気めっき工程とを含み、
第二電気めっき工程における該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に対する前記給電は、第一電気めっき工程で第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき液に最初に接触してから30秒以内に開始される電気めっき方法。
[2]
第二電気めっき工程における該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に対する前記給電は、第一電気めっき工程で第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき液に最初に接触してから5秒以上経過した後に開始される[1]に記載の電気めっき方法。
[3]
第一電気めっき工程において厚さ0.1μm以上の電気めっき被膜を該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に形成する[1]又は[2]に記載の電気めっき方法。
[4]
金属製エレメントは亜鉛を含有する金属であり、第一電気めっき工程及び第二電気めっき工程における各めっき液はノンシアン銅めっき液である[1]〜[3]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[5]
第一電気めっき工程及び第二電気めっき工程における各めっき液は貴金属めっき液である[1]〜[3]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[6]
前記ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内及び第二の絶縁性容器内の少なくとも一方を上昇しながら通過する[1]〜[5]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[7]
前記ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内及び第二の絶縁性容器内の少なくとも一方を鉛直方向に上昇しながら通過する[6]に記載の電気めっき方法。
[8]
第一電気めっき工程においては、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内を通過中に、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面のみを第一の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触させることにより給電し、
第二電気めっき工程においては、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器内を通過中に、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面のみを第二の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触することにより給電する[1]〜[7]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[9]
導電性媒体が球状である[1]〜[8]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[10]
導電性媒体の直径が2〜10mmである[1]〜[9]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[11]
該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内及び第二の絶縁性容器内を通過する速度がそれぞれ1m/分〜15m/分である[1]〜[10]の何れか一項に記載の電気めっき方法。
[12]
金属製エレメントの列を有するファスナーチェーンの電気めっき装置であって、
めっき液を収容可能なめっき槽と、
めっき槽中に配置された第一の陽極と、
めっき槽中に配置された第二の陽極と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器と、
を備え、
第一の絶縁性容器は、主として該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第一の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触させながら、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器内を入口から出口まで通過することが可能なように構成されており、
第一の陽極は、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器を通過する際に、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置されており、
第二の絶縁性容器は、第一の絶縁性容器の後段に設置されており、主として該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第二の絶縁性容器内の前記複数の導電性媒体に接触させながら、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器内を入口から出口まで通過することが可能なように構成されており、
第二の陽極は、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器を通過する際に、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置されており、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までの、該ファスナーチェーンの通過距離が110cm以内となるように構成されている、
電気めっき装置。
[13]
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までの、該ファスナーチェーンの通過距離が40〜90cmとなるように構成されている[12]に記載の電気めっき装置。
[14]
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までの、ファスナーチェーンの通過距離Aと、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最後に接触する出口側の地点までのファスナーチェーンの通過距離Bとが、
A/B≦0.5の関係を満たす[12]又は[13]に記載の電気めっき装置。
[15]
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最後に接触する出口側の地点までのファスナーチェーンの通過距離Bと、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最後に接触する出口側の地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までのファスナーチェーンの通過距離Cとが、C/B≦1.5の関係を満たす[12]〜[14]の何れか一項に記載の電気めっき装置。
[16]
第一の絶縁性容器から出た該ファスナーチェーンの第一の主表面と第二の主表面の位置関係を反転させてから該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器に入るように構成されている[12]〜[15]の何れか一項に記載の電気めっき装置。
[17]
第一の絶縁性容器は、入口と出口を繋ぎ、該ファスナーチェーンの走行経路を案内する通路、及び複数の導電性媒体を流動可能に収容する収容部を内部に有し、
該通路は前記ファスナーチェーンの第一の主表面側と対向する側の路面に前記複数の導電性媒体へのアクセスを可能とする一つ又は二つ以上の開口と、前記ファスナーチェーンの第二の主表面側と対向する側の路面にめっき液が連通可能な一つ又は二つ以上の開口とを有し、
第二の絶縁性容器は、入口と出口を繋ぎ、該ファスナーチェーンの走行経路を案内する通路、及び複数の導電性媒体を流動可能に収容する収容部を内部に有し、
該通路は前記ファスナーチェーンの第二の主表面側と対向する側の路面に前記複数の導電性媒体へのアクセスを可能とする一つ又は二つ以上の開口と、前記ファスナーチェーンの第一の主表面側と対向する側の路面にめっき液が連通可能な一つ又は二つ以上の開口とを有する、
[12]〜[16]の何れか一項に記載の電気めっき装置。
[18]
第一の絶縁性容器及び第二の絶縁性容器はそれぞれ、入口の上方に出口を有する[17]に記載の電気めっき装置。
[19]
第一の絶縁性容器及び第二の絶縁性容器はそれぞれ、入口の鉛直上方に出口を有する[18]に記載の電気めっき装置。
図1に例示的に金属ファスナーの模式的な正面図を示す。図1に示すように金属ファスナーは、内側縁側に芯部2が形成された一対のファスナーテープ1とファスナーテープ1の芯部2に所定の間隔をおいて加締め固定(装着)された金属製エレメント3の列と、金属製エレメント3の列の上端及び下端でファスナーテープ1の芯部2に加締め固定された上止具4及び下止具5と、対向する一対のエレメント3の列間に配され、一対の金属製エレメント3の噛合及び開離を行うための上下方向に摺動自在なスライダー6を備える。一本のファスナーテープ1の一側縁にエレメント3の列が固定された状態のものをファスナーストリンガーといい、一対のファスナーストリンガーの対向するエレメント3の列が噛み合わされた状態となっているものをファスナーチェーンという。なお、下止具5は、蝶棒、箱棒、箱体からなる開離嵌挿具とし、スライダーの開離操作にて一対のファスナーチェーンを分離できるようにしたものであっても構わない。図示しないその他の実施形態も可能である。
本発明は一側面において、金属製エレメントの列を有するファスナーチェーンを搬送しながら連続的に電気めっきする方法を提案する。
A.ファスナーチェーンの一方の主表面側に露出した金属製エレメント列の表面を主としてめっきすることを目的として、各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器内を該ファスナーチェーンが通過することを含む第一電気めっき工程と、
B.第一電気めっき工程の後、ファスナーチェーンの他方の主表面側に露出した金属製エレメント列の表面を主としてめっきすることを目的として、各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器内を該ファスナーチェーンが通過することを含む第二電気めっき工程とを含む。
加速電圧:10kV
電流量:3×10-8A
イオンガン:2kV
測定径:50μm
エッチング:20秒毎に測定
試料傾斜:30°
検出深さは、SiO2標準物質のエッチング速度8.0nm/minを用いて換算、算出。
なお、めっき皮膜が合金めっき等の複数元素で構成される場合は、エレメントの母材を構成する主成分以外で検出強度が最も高い金属元素を分析対象としてめっき被膜の厚みを評価する。例えば、主成分がCuのエレメント表面に対してCu−Sn合金めっき被膜を形成するときは、Snを基準にめっき被膜の厚みを測定する。また、主成分がCuのエレメントに対してCo−Sn合金めっき被膜を形成するときは、何れか検出強度の高い元素を基準にめっき被膜の厚みを測定する。
次に、本発明に係る電気めっき方法を実施するのに好適な電気めっき装置の実施形態について説明する。ただし、電気めっき方法の実施形態の説明の中で述べた構成要素と同一の構成要素に関する説明は、電気めっき装置の実施形態の説明においても該当するため、原則として重複する説明を省略する。
めっき液を収容可能なめっき槽と、
めっき槽中に配置された第一の陽極と、
めっき槽中に配置された第二の陽極と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器と、
を備える。
A:ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までの、ファスナーチェーンの通過距離。
B:ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最後に接触する出口側の地点までのファスナーチェーンの通過距離。
C:ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器内の導電性媒体に最後に接触する出口側の地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器内の導電性媒体に最初に接触する入口側の地点までのファスナーチェーンの通過距離。
次に、本発明に係る電気めっき装置の具体的な構成例である固定セル方式の電気めっき装置について説明する。固定セル方式は一方の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面のみを絶縁性容器内の導電性媒体に接触させることができるという点で有利である。固定セル方式のめっき装置においては、絶縁性容器はめっき装置内で固定されており、回転動作等の動きを伴わない。固定セル方式のめっき装置の一構成例における絶縁性容器(第一及び第二の絶縁性容器の何れにも使用可能である。)の構造を図3〜図5に模式的に示す。図3は、固定セル方式のめっき装置の絶縁性容器をファスナーチェーンの搬送方向と向き合う方向から見たときの模式的な断面図である。図4は、図3に示す絶縁製容器の模式的なAA’線断面図である。図5は、図3に示す絶縁製容器から導電性媒体及びファスナーチェーンを取り除いたときの模式的なBB’線断面図である。
まず、図6に示す電気めっき装置について説明する。図6に示す電気めっき装置においては、めっき槽201は入口槽201aと主槽201bを有する。入口槽201a及び主槽201bは共にめっき液202を保持することができ、両者は底部の連結部201cを介してめっき液202が連通可能に連結されている。図6に示す電気めっき装置においては、第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bが主槽201b内のめっき液に浸漬されており、鉛直方向に直列に配置されている。第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bは共に鉛直方向に延びたファスナーチェーンの走行通路を有する。ファスナーチェーン7は、入口槽201aの上部に位置するめっき槽入口204からめっき液202中に入った後、入口槽201aの底部まで鉛直下方に進む。底部に到達後、ファスナーチェーン7は連結部201cを通って主槽201bに入る。ファスナーチェーン7は第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bを順に鉛直上方に通過した後にめっき液202から出て、次いで主槽201bの上面に設置されためっき槽出口205から出て行く。
次に、図8に示す電気めっき装置について説明する。図8に示す実施態様においては、第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bがめっき槽201内のめっき液中に浸漬されている。第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bは共に水平方向に延びたファスナーチェーンの走行通路を有する。第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bは平面視したときにファスナーチェーンの走行方向が互いに平行で逆向きになるように隣り合って配置されている。
次に、図9に示す電気めっき装置について説明する。図9に示す電気めっき装置においては、第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bがめっき槽201内のめっき液中に浸漬されている。第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bは共に上方に傾斜したファスナーチェーン7の走行通路を有する。第一の絶縁性容器110a及び第二の絶縁性容器110bは平面視したときにファスナーチェーンの走行方向が互いに平行で逆向きになるように隣り合って配置されている。
図12に示す電気めっき装置を構築し、搬送中のファスナーチェーンに対して電気めっきを連続的に行った。当該電気めっき装置においては、めっき液202を入れためっき槽201の中に、多数の導電性媒体111を収容した絶縁性容器110が配置されている。絶縁性容器110の内部中央には陰極118が設置されており、導電性媒体111は陰極と電気的に接触している。絶縁性容器110はファスナーチェーン7の走行方向に対して前方及び後方の内側面に陽極119を有する。この例においては、ファスナーチェーン7がめっき液202中を通過する最中、ファスナーチェーン7の両方の主表面側に露出したエレメントに導電性媒体がランダムに接触することで、エレメントの表面にめっき被膜が成長する。
・ファスナーチェーンの仕様:YKK(株)製型式5RGチェーン(チェーン幅:5.75mm、エレメント素材:丹銅)
・めっき液:5L、組成:Sn−Co合金めっき用めっき液
・導電性媒体:ステンレス球、直径4.5mm、2700個
・電流密度:5A/dm2
電流密度は、整流器の電流値(A)を、ガラス容器内のエレメントの全表面積(両面)及びステンレス球の表面積の合計(dm2)で除した値とした。ステンレス球の表面積を加味したのはステンレス球にもめっきが付着するためである。
・めっき液中での滞留時間:7.2秒
・搬送速度:2.5m/分
・絶縁性容器:ガラスビーカー
図3〜図5に示す構造の絶縁性容器を以下の仕様で作製した。
・導電性媒体:3μm程度の厚みのピロリン酸銅めっき被膜を表面に有する鉄球、直径4.5mm、450個、積層数=6個
・絶縁性容器:アクリル樹脂製
・傾斜角度:9°
・開口116:開口率54%、直径2mmの円形状の穴、千鳥状に配列
・隙間C1、C2:2mm
・幅W2:10mm
・ファスナーチェーンの仕様:YKK(株)製型式5RGチェーン(チェーン幅:5.75mm、エレメント素材:丹銅)
・めっき液:40L、組成:ノンシアン銅ストライクめっき液
・電圧:5V
・めっき時間:9秒
めっき時間は各エレメントが片方の絶縁性容器を通過するのに要する時間(片面毎のめっき時間)である。
・第一電気めっき工程で第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき液に最初に接触してから、第二電気めっき工程におけるファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に対する給電が開始されるまでの時間(以下、「第二電気めっきまでの待機時間」という。):30秒
・搬送速度:2m/分
・各エレメントと陽極の間の最短距離:3cm
・通過距離A(定義は先述した通り):10cm
・通過距離B(定義は先述した通り):40cm
・通過距離C(定義は先述した通り):50cm
・通過距離D(定義は先述した通り):40cm
通過距離A〜Cが表1に記載の条件となるように電気めっき装置の構造を変化させることでめっき時間を調整した他は実施例1と同様の方法で、搬送中のファスナーチェーンに対して電気めっきを連続的に行った。
上記の実施例及び比較例について、得られたファスナーチェーンのエレメントのめっき被膜を目視により観察したときの評価結果を以下に示す。
評価は以下の手順により行った。各エレメントについて表裏の両方にめっきが付着しているか否かを調査する。各エレメントにめっきが付着しているかどうかの評価は目視によりエレメント表面が全体的に銅色に変化しているか否かで行う。エレメント表裏の両方の面にめっきが付着しているときのみ、当該エレメントにめっきが付着していると判断する。当該調査を隣接し合うエレメント200個について行い、表裏にめっきが付着しているエレメントの個数割合(%)を算出する。結果を表2に示す。結果は同様のめっき試験を複数回行ったときの平均値で示した。
上記の比較例2〜3及び実施例1〜6について、ファスナーチェーンの両主表面側に露出した各エレメントのエレメント中央Qにおけるめっき被膜の厚みを先述した方法により、任意に20個測定したところ、何れの主表面側に露出した金属製エレメントのエレメント中央Qにおいても厚さが約0.1μmのめっき被膜が形成されていた。
上記の実施例1〜5、比較例2〜3について、ファスナーチェーンの両主表面側に露出したエレメント表面におけるめっき被膜の密着性を評価した。評価方法は以下とした。めっき面に縦2本、横2本づつカッターで母材に到達するまで(#の)傷をつける。その上にセロハンテープを貼り、指で押さえてからセロハンテープを引き剥がし、#カット部のめっき膜の剥がれの有無を目視で観察する。100個のエレメントのうち剥がれが見られなかった個数の割合を表3に示す。
実施例1〜5ではファスナーチェーンの両主表面側に露出したエレメントの表面に対して密着性の高いめっき被膜を均一に形成可能であった。一方、比較例1では均一性の高いめっき被膜が得られなかった。比較例2及び3ではめっき被膜の均一性は高かったが、実施例1〜5に比べて密着性の高いめっき被膜を得ることができなかった。これは比較例2及び3では第二電気めっきまでの待機時間が長く、第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に密着性の悪い置換めっきが有意に生じたことによると推察される。なお、給電用鉄球は陽極と離れており、かつ樹脂容器で囲まれているので鉄球にはほとんどめっきが付かなかった。
電気めっきの条件を以下のように変更した他は実施例1と同一の条件で、搬送中のファスナーチェーンに対して電気めっきを連続的に行った。
・めっき液:ノンシアン金めっき液
・電圧:3V
得られたファスナーチェーンのエレメントのめっき被膜を目視により観察することで各エレメントについて表裏の両方にめっきが付着しているか否かを実施例1と同様の方法で調査した。但し、本実施例ではエレメント表面が全体的に金色に変化しているか否かでめっきの付着有無を判断した。その結果、99%以上のエレメントにめっきが付着していた。
実施例6について、ファスナーチェーンの両主表面側に露出した各エレメントのエレメント中央Qにおけるめっき被膜の厚みを先述した方法により、任意に5個測定したところ、何れの主表面側に露出した金属製エレメントのエレメント中央Qにおいても厚さが約0.05μmのめっき被膜が形成されていた。
実施例6ついて、ファスナーチェーンの両主表面側に露出したエレメント表面におけるめっき被膜の密着性を実施例1と同様の方法で評価した。その結果、99%以上のエレメントで密着性が確認された。
2 芯部
3 エレメント
4 上止具
5 下止具
6 スライダー
7 ファスナーチェーン
9 頭部
10 脚部
110 絶縁性容器
110a 第一の絶縁性容器
110b 第二の絶縁性容器
111 導電性媒体
112 通路
112a ファスナーチェーンの第一の主表面側と対向する側の路面
112b ファスナーチェーンの第二の主表面側と対向する側の路面
113 収容部
113a 収容部の搬送方向の先頭側の内側面
113b 収容部の搬送方向と平行な内側面
114a 第一の絶縁性容器の入口
114b 第二の絶縁性容器の入口
115a 第一の絶縁性容器の出口
115b 第二の絶縁性容器の出口
116 開口
117 開口
118 陰極
119(119a、119b) 陽極
120 ガイド溝
121 仕切り板
201 めっき槽
202 めっき液
203 貯留槽
204 めっき槽入口
205 めっき槽出口
208 循環ポンプ
209 放出口
212 送りパイプ
214 ガイドローラー
216 反転用ガイドローラー
218 流量絞り部材
Claims (19)
- 金属製エレメントの列を有するファスナーチェーンの電気めっき方法であって、
A.各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体(111)が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器(110a)内を該ファスナーチェーンが通過する工程を含み、
該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内を通過中に、主として該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第一の絶縁性容器(110a)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触させることにより給電し、
第一の陽極(119a)を該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置する、
第一電気めっき工程と、
B.第一電気めっき工程の後、各金属製エレメントがめっき槽中のめっき液に接触した状態で、陰極に電気的に接触した複数の導電性媒体(111)が流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器(110b)内を該ファスナーチェーンが通過する工程を更に含み、
該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器(110b)内を通過中に、主として該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第二の絶縁性容器(110b)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触させることにより給電し、
第二の陽極(119b)を該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置する、
第二電気めっき工程とを含み、
第二電気めっき工程における該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に対する前記給電は、第一電気めっき工程で第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき液に最初に接触してから30秒以内に開始される電気めっき方法。 - 第二電気めっき工程における該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に対する前記給電は、第一電気めっき工程で第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき液に最初に接触してから5秒以上経過した後に開始される請求項1に記載の電気めっき方法。
- 第一電気めっき工程において厚さ0.1μm以上の電気めっき被膜を該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面に形成する請求項1又は2に記載の電気めっき方法。
- 金属製エレメントは亜鉛を含有する金属であり、第一電気めっき工程及び第二電気めっき工程における各めっき液はノンシアン銅めっき液である請求項1〜3の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 第一電気めっき工程及び第二電気めっき工程における各めっき液は貴金属めっき液である請求項1〜3の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 前記ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内及び第二の絶縁性容器(110b)内の少なくとも一方を上昇しながら通過する請求項1〜5の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 前記ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内及び第二の絶縁性容器(110b)内の少なくとも一方を鉛直方向に上昇しながら通過する請求項6に記載の電気めっき方法。
- 第一電気めっき工程においては、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内を通過中に、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面のみを第一の絶縁性容器(110a)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触させることにより給電し、
第二電気めっき工程においては、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器(110b)内を通過中に、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面のみを第二の絶縁性容器(110b)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触することにより給電する請求項1〜7の何れか一項に記載の電気めっき方法。 - 導電性媒体(111)が球状である請求項1〜8の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 導電性媒体(111)の直径が2〜10mmである請求項1〜9の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内及び第二の絶縁性容器(110b)内を通過する速度がそれぞれ1m/分〜15m/分である請求項1〜10の何れか一項に記載の電気めっき方法。
- 金属製エレメントの列を有するファスナーチェーンの電気めっき装置であって、
めっき液を収容可能なめっき槽(201)と、
めっき槽(201)中に配置された第一の陽極(119a)と、
めっき槽(201)中に配置された第二の陽極(119b)と、
めっき槽(201)中に配置され、且つ、複数の導電性媒体(111)が陰極(118)に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器(110a)と、
めっき槽(201)中に配置され、且つ、複数の導電性媒体(111)が陰極(118)に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器(110b)と、
を備え、
第一の絶縁性容器(110a)は、主として該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第一の絶縁性容器(110a)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触させながら、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)内を入口(114a)から出口(115a)まで通過することが可能なように構成されており、
第一の陽極(119a)は、該ファスナーチェーンが第一の絶縁性容器(110a)を通過する際に、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置されており、
第二の絶縁性容器(110b)は、第一の絶縁性容器(110a)の後段に設置されており、主として該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面を第二の絶縁性容器(110b)内の前記複数の導電性媒体(111)に接触させながら、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器(110b)内を入口(114b)から出口(115b)まで通過することが可能なように構成されており、
第二の陽極(119b)は、該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器(110b)を通過する際に、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面と対向する位置関係で設置されており、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽(201)中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器(110b)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114b)側の地点までの、該ファスナーチェーンの通過距離が110cm以内となるように構成されている、
電気めっき装置。 - 該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽(201)中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器(110b)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114b)側の地点までの、該ファスナーチェーンの通過距離が40〜90cmとなるように構成されている請求項12に記載の電気めっき装置。
- 該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面がめっき槽(201)中のめっき液に最初に接触する地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114a)側の地点までの、ファスナーチェーンの通過距離Aと、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114a)側の地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最後に接触する出口側(115a)の地点までのファスナーチェーンの通過距離Bとが、
A/B≦0.5の関係を満たす請求項12又は13に記載の電気めっき装置。 - 該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114a)側の地点から、該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最後に接触する出口(115a)側の地点までのファスナーチェーンの通過距離Bと、
該ファスナーチェーンの第一の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第一の絶縁性容器(110a)内の導電性媒体(111)に最後に接触する出口(115a)側の地点から、該ファスナーチェーンの第二の主表面側に露出した各金属製エレメントの表面が第二の絶縁性容器(110b)内の導電性媒体(111)に最初に接触する入口(114b)側の地点までのファスナーチェーンの通過距離Cとが、
C/B≦1.5の関係を満たす請求項12〜14の何れか一項に記載の電気めっき装置。 - 第一の絶縁性容器(110a)から出た該ファスナーチェーンの第一の主表面と第二の主表面の位置関係を反転させてから該ファスナーチェーンが第二の絶縁性容器(110b)に入るように構成されている請求項12〜15の何れか一項に記載の電気めっき装置。
- 第一の絶縁性容器(110a)は、入口(114a)と出口(115a)を繋ぎ、該ファスナーチェーンの走行経路を案内する通路(112)、及び複数の導電性媒体(111)を流動可能に収容する収容部(113)を内部に有し、
該通路(112)は前記ファスナーチェーンの第一の主表面側と対向する側の路面(112a)に前記複数の導電性媒体(111)へのアクセスを可能とする一つ又は二つ以上の開口(117)と、前記ファスナーチェーンの第二の主表面側と対向する側の路面(112b)にめっき液が連通可能な一つ又は二つ以上の開口(116)とを有し、
第二の絶縁性容器(110b)は、入口(114b)と出口(115b)を繋ぎ、該ファスナーチェーンの走行経路を案内する通路(112)、及び複数の導電性媒体(111)を流動可能に収容する収容部(113)を内部に有し、
該通路(112)は前記ファスナーチェーンの第二の主表面側と対向する側の路面(112a)に前記複数の導電性媒体(111)へのアクセスを可能とする一つ又は二つ以上の開口(117)と、前記ファスナーチェーンの第一の主表面側と対向する側の路面(112b)にめっき液が連通可能な一つ又は二つ以上の開口(116)とを有する、
請求項12〜16の何れか一項に記載の電気めっき装置。 - 第一の絶縁性容器(110a)及び第二の絶縁性容器(110b)はそれぞれ、入口(114a、114b)の上方に出口(115a、115b)を有する請求項17に記載の電気めっき装置。
- 第一の絶縁性容器(110a)及び第二の絶縁性容器(110b)はそれぞれ、入口(114a、114b)の鉛直上方に出口(115a、115b)を有する請求項18に記載の電気めっき装置。
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