JP6670952B2 - めっき被膜を有する金属製エレメント列を備えたファスナーストリンガー、ファスナーチェーン及びスライドファスナー - Google Patents
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Description
ファスナーテープの長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定されためっき被膜を有する金属製エレメントの列を備えたファスナーストリンガーであって、
各金属製エレメントが接触しているファスナーテープの部分は絶縁性であり、
各金属製エレメントは、一対の脚部と当該一対の脚部を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位及び凹状部位を有する頭部とを備えており、
各金属製エレメントの表面のうちファスナーテープと接触して隠蔽されている部分にはめっき被膜が形成されておらず、
金属製エレメントの列は2n個又は2n+1個(nは5以上の整数)の金属製エレメントにより構成されており、
金属製エレメントの列の何れかの一端から長手方向にn−4番目からn+5番目までの隣り合う10個の金属製エレメントについて、ファスナーテープの何れか一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みの平均値をA1、ファスナーテープの当該一方の主表面側のエレメント中央におけるそれぞれのめっき被膜の厚みをD1とすると、これら何れの金属製エレメントについても0.6≦D1/A1≦2.0が成立するファスナーストリンガー。
[2]
前記めっき被膜の厚みの平均値A1が0.05μm以上である[1]に記載のファスナーストリンガー。
[3]
前記10個の各金属製エレメントについて、頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点に母材が表出しないようにめっき被膜が形成されている[1]又は[2]に記載のファスナーストリンガー。
[4]
前記10個の各金属製エレメントについて、前記一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みD1に対する頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点におけるめっき被膜の厚みが共に30%以上である[1]〜[3]の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
[5]
前記10個の各金属製エレメントについて、頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点におけるめっき被膜の厚みが共に0.02μm以上である[1]〜[4]の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
[6]
ファスナーテープの長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定されためっき被膜を有する金属製エレメントの列を備えたファスナーストリンガーであって、
各金属製エレメントが接触しているファスナーテープの部分は絶縁性であり、
各金属製エレメントは、一対の脚部と当該一対の脚部を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位及び凹状部位を有する頭部とを備えており、
各金属製エレメントの表面のうちファスナーテープと接触して隠蔽されている部分にはめっき被膜が形成されておらず、
金属製エレメントの列は2n個又は2n+1個(nは5以上の整数)の金属製エレメントにより構成されており、
金属製エレメントの列の何れかの一端から長手方向にn−4番目からn+5番目までの隣り合う10個の金属製エレメントについて、頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点に母材が表出しないようにめっき被膜が形成されているファスナーストリンガー。
[7]
前記10個の各金属製エレメントについて、ファスナーテープの何れか一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みをD1とすると、D1に対する頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点におけるめっき被膜の厚みが共に30%以上である[6]に記載のファスナーストリンガー。
[8]
前記10個の各金属製エレメントについて、頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点におけるめっき被膜の厚みが0.02μm以上である[6]又は[7]に記載のファスナーストリンガー。
[9]
前記10個の金属製エレメントについて、ファスナーテープの前記一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みの平均値をA1、ファスナーテープの当該一方の主表面側のエレメント中央におけるそれぞれのめっき被膜の厚みをD1とすると、これら何れの金属製エレメントについても0.6≦D1/A1≦2.0が成立する[6]〜[8]の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
[10]
前記めっき被膜の厚みの平均値A1が0.05μm以上である[9]に記載のファスナーストリンガー。
[11]
前記10個の各金属製エレメントの露出面全体にめっき被膜が形成されている[1]〜[10]の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
[12]
前記めっき被膜は金属製エレメントの列がファスナーテープの長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定された後に形成されたものである[1]〜[11]の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
[13]
一対のファスナーストリンガーの対向する金属製エレメントの列が噛み合わされたファスナーチェーンであって、各ファスナーストリンガーが[1]〜[12]の何れか一項に記載のファスナーストリンガーであるファスナーチェーン。
[14]
[13]に記載のファスナーチェーンを備えたスライドファスナー。
[15]
[14]に記載のスライドファスナーを備えた物品。
図1に例示的に金属ファスナーの模式的な正面図を示す。図1に示すように金属ファスナーは、ファスナーテープ1の長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定されためっき被膜を有する金属製エレメント3の列を備える。一本のファスナーテープ1の一側縁にエレメント3の列が固定された状態のものをファスナーストリンガーといい、一対のファスナーストリンガーの対向するエレメント3の列が噛み合わされた状態となっているものをファスナーチェーンという。
各金属製エレメントの前記エレメント中央Qにおけるめっき被膜の厚みはそれぞれ、オージェ電子分光法(AES)により元素デプスプロファイルを得て、めっきした金属元素の濃度が最大値に対して半分になる深さをめっき被膜の厚みとする。分析条件は以下とする。
加速電圧:10kV
電流量:3×10-8A
イオンガン:2kV
測定径:50μm
エッチング:20秒毎に測定
試料傾斜:30°
検出深さは、SiO2標準物質のエッチング速度8.0nm/minを用いて換算、算出。
なお、めっき皮膜が合金めっき等の複数元素で構成される場合は、金属製エレメントの母材を構成する主成分以外で検出強度が最も高い金属元素を分析対象としてめっき被膜の厚みを評価する。例えば、主成分がCuのエレメント表面に対してCu−Sn合金めっき被膜を形成するときは、Snを基準にめっき被膜の厚みを測定する。また、主成分がCuのエレメントに対してCo−Sn合金めっき被膜を形成するときは、何れか検出強度の高い元素を基準にめっき被膜の厚みを測定する。
上記のようなめっき被膜の付き回り性が高く、めっき被膜の厚みの均一性も高い金属製エレメント列を備えた金属ファスナーを製造するためのめっき方法について以下に説明する。工業生産を考える上では、ファスナーチェーンを搬送しながら連続的に電気めっきすることが望ましい。
次に、上述した電気めっき方法を実施するのに好適な電気めっき装置の実施形態について説明する。ただし、電気めっき方法の実施形態の説明の中で述べた構成要素と同一の構成要素に関する説明は、電気めっき装置の実施形態の説明においても該当するため、原則として重複する説明を省略する。
めっき液を収容可能なめっき槽と、
めっき槽中に配置された第一の陽極と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第一の絶縁性容器と、
を備える。
めっき槽中に配置された第二の陽極と、
めっき槽中に配置され、且つ、複数の導電性媒体が陰極に電気的に接触した状態で流動可能に収容された一つ又は二つ以上の第二の絶縁性容器と、
を更に備える。
特公平8−3158号公報の図7に記載されるような給電ドラム方式のめっき装置を使用し、搬送中のファスナーチェーンの両主表面側に露出した金属製エレメントに対して電気めっきを連続的に行った。
・ファスナーチェーンの仕様:YKK(株)製型式5RGチェーン(チェーン幅:5.75mm、エレメント素材:丹銅、ファスナーテープ素材:ポリエステル)
・めっき液:5L、組成:ニッケルめっき用めっき液
・給電ドラム仕様:材質チタン、直径100mm
・めっき液中での滞留時間:18.8秒
・搬送速度:1m/分
図6〜図8に示す構造の絶縁性容器を以下の仕様で作製した。
・導電性媒体:3μm程度の厚みのピロリン酸銅めっき被膜を表面に有する鉄球、直径8mm、300個、積層数=4個
・絶縁性容器:アクリル樹脂製
・傾斜角度:3°
・開口116:開口率54%、直径2mmの円形状の穴、千鳥状に配列
・隙間C1、C2:4mm
・幅W2:17mm
めっき試験条件は以下である。
・ファスナーチェーンの仕様:YKK(株)製型式5RGチェーン(チェーン幅:5.75mm、エレメント素材:丹銅、ファスナーテープ素材:ポリエステル)
・めっき液:120L、組成:ノンシアンCu−Sn合金めっき用めっき液
・めっき時間:14.4秒
・搬送速度:2.5m/分
・各エレメントと陽極の間の最短距離:3cm
比較例1について、得られためっき後のファスナーチェーンを構成する片方のファスナーストリンガーは、ファスナーテープの長手方向の一側縁に沿って、2n個(n=100)の金属製エレメントを有しており、n−4番目からn+5番目までの隣り合って並ぶ10個の金属製エレメントを抽出した。
そして、当該隣り合って並ぶ10個の金属製エレメントの各エレメント中央(ファスナーチェーンの何れか一方の主表面側)におけるめっき被膜の厚みをそれぞれ、蛍光X線分析により測定した。測定条件は、電圧:50kV、電流:1000μA、測定時間:120秒、コリメータ:0.2mmφとした。
また、実施例1について、得られためっき後のファスナーチェーンを構成する片方のファスナーストリンガーは、ファスナーテープの長手方向の一側縁に沿って、2n個(n=100)の金属製エレメントを有しており、何れかの一端から長手方向にn−4番目からn+5番目までの隣り合って並ぶ10個の金属製エレメントを抽出した。そして、当該隣り合って並ぶ10個の金属製エレメントの各エレメント中央(ファスナーチェーンの何れか一方の主表面側)、頭部の凸状部位の頂点及び凹状部位の最深点におけるめっき被膜の厚みをそれぞれ、先述した測定条件に従って、オージェ電子分光法(AES)(日本電子株式会社製の型式JAMP9500F)により元素デプスプロファイルを得ることで測定した。
結果を表1−1及び表1−2に示す。比較例1のめっき厚測定法は実施例1と異なるが、実施例1の測定法で測定したとしても大きな差はないと推察される。
なお、比較例1及び実施例1の何れのファスナーチェーンについても、エレメントの表面のうちファスナーテープと接触して隠蔽されている部分にはめっき被膜が形成されていなかった。
実施例1のファスナーチェーンは、エレメント同士が予め電気的に接続されていなくても、めっき被膜の厚みの均一性の高い金属製エレメント列を備えていることが理解できる。また、実施例1のファスナーチェーンは、エレメント同士が予め電気的に接続されていなくても、各エレメント頭部の噛合部位(凸状部位及び凹状部位)におけるめっきの付き回り性が高いことが理解できる。実際、顕微鏡写真を用いて厚みの測定対象となった10個のエレメントを確認したところ、ファスナーテープとの接触部分はCu−Sn合金が形成されておらず母材の丹銅色が見られるが、ファスナーテープと接触していない部分は全てのエレメントにCu−Sn合金めっきが形成されていた。また、観察したエレメント全ての頭部の凸状部位と凹状部位には、母材が表出しないようにめっきが形成されていた。
一方、比較例1のファスナーチェーンは、めっき被膜の厚みのばらつきが多く、また、各エレメント頭部の噛合部位におけるめっきの付き回り性が悪かった。顕微鏡写真を用いて厚みの測定対象となった10個のエレメントを確認したところ、幾つかのエレメントの頭部の凸状部位と凹状部位には全くめっきが付いておらず母材の丹銅色が見られ、また、エレメントの頭部の凸状部位と凹状部位に部分的にめっきが形成されていても母材の表出が見られた。
2 芯部
3 エレメント
4 上止具
5 下止具
6 スライダー
7 ファスナーチェーン
8 異形線
9 頭部
9a 凸状部位
9b 凹状部位
10 脚部
11 矩形線
12 異形線
110 絶縁性容器
110a 第一の絶縁性容器
110b 第二の絶縁性容器
111 導電性媒体
112 通路
112a ファスナーチェーンの一方の主表面側と対向する側の路面
112b ファスナーチェーンの他方の主表面側と対向する側の路面
113 収容部
113a 収容部の搬送方向の先頭側の内側面
113b 収容部の搬送方向と平行な内側面
114 通路への入口
115 通路からの出口
116 開口
117 開口
118 陰極
119 陽極
120 ガイド溝
121 仕切り板
201(201a、201b) めっき槽
202(202a、202b) めっき液
203 貯留槽
204、206 めっき槽入口
205、207 めっき槽出口
208 循環ポンプ
210(210a、210b)、214、216 戻りパイプ
212 送りパイプ
Claims (15)
- ファスナーテープ1の長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定されためっき被膜を有する金属製エレメント3の列を備えたファスナーストリンガーであって、
各金属製エレメント3が接触しているファスナーテープ1の部分は絶縁性であり、
各金属製エレメント3は、一対の脚部10と当該一対の脚部10を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位9a及び凹状部位9bを有する頭部9とを備えており、
各金属製エレメント3の表面のうちファスナーテープ1と接触して隠蔽されている部分にはめっき被膜が形成されておらず、
金属製エレメント3の列は2n個又は2n+1個(nは5以上の整数)の金属製エレメント3により構成されており、
金属製エレメント3の列の何れかの一端から長手方向にn−4番目からn+5番目までの隣り合う10個の金属製エレメント3について、ファスナーテープ1の何れか一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みの平均値をA1、ファスナーテープ1の当該一方の主表面側のエレメント中央におけるそれぞれのめっき被膜の厚みをD1とすると、これら何れの金属製エレメント3についても0.6≦D1/A1≦2.0が成立するファスナーストリンガー。 - 前記めっき被膜の厚みの平均値A1が0.05μm以上である請求項1に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の各金属製エレメント3について、頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点に母材が表出しないようにめっき被膜が形成されている請求項1又は2に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の各金属製エレメント3について、前記一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みD1に対する頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点におけるめっき被膜の厚みが共に30%以上である請求項1〜3の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の各金属製エレメント3について、頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点におけるめっき被膜の厚みが共に0.02μm以上である請求項1〜4の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
- ファスナーテープ1の長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定されためっき被膜を有する金属製エレメント3の列を備えたファスナーストリンガーであって、
各金属製エレメント3が接触しているファスナーテープ1の部分は絶縁性であり、
各金属製エレメント3は、一対の脚部10と当該一対の脚部10を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位9a及び凹状部位9bを有する頭部9とを備えており、
各金属製エレメント3の表面のうちファスナーテープ1と接触して隠蔽されている部分にはめっき被膜が形成されておらず、
金属製エレメント3の列は2n個又は2n+1個(nは5以上の整数)の金属製エレメント3により構成されており、
金属製エレメント3の列の何れかの一端から長手方向にn−4番目からn+5番目までの隣り合う10個の金属製エレメント3について、頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点に母材が表出しないようにめっき被膜が形成されているファスナーストリンガー。 - 前記10個の各金属製エレメント3について、ファスナーテープ1の何れか一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みをD1とすると、D1に対する頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点におけるめっき被膜の厚みが共に30%以上である請求項6に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の各金属製エレメント3について、頭部9の凸状部位9aの頂点及び凹状部位9bの最深点におけるめっき被膜の厚みが0.02μm以上である請求項6又は7に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の金属製エレメント3について、ファスナーテープ1の前記一方の主表面側のエレメント中央におけるめっき被膜の厚みの平均値をA1、ファスナーテープ1の当該一方の主表面側のエレメント中央におけるそれぞれのめっき被膜の厚みをD1とすると、これら何れの金属製エレメント3についても0.6≦D1/A1≦2.0が成立する請求項6〜8の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
- 前記めっき被膜の厚みの平均値A1が0.05μm以上である請求項9に記載のファスナーストリンガー。
- 前記10個の各金属製エレメント3の露出面全体にめっき被膜が形成されている請求項1〜10の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
- 前記めっき被膜は金属製エレメント3の列がファスナーテープ1の長手方向の一側縁に所定の間隔をおいて固定された後に形成されたものである請求項1〜11の何れか一項に記載のファスナーストリンガー。
- 一対のファスナーストリンガーの対向する金属製エレメント3の列が噛み合わされたファスナーチェーンであって、各ファスナーストリンガーが請求項1〜12の何れか一項に記載のファスナーストリンガーであるファスナーチェーン。
- 請求項13に記載のファスナーチェーンを備えたスライドファスナー。
- 請求項14に記載のスライドファスナーを備えた物品。
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