JP6441458B2 - スライドファスナー用エレメント - Google Patents
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Description
(1)一般式:AlaMgbCuc(a、b、cは質量%で、aは残部、4.3≦b≦5.5、0.5≦c≦1.0、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
(2)一般式:AldMgeCufXg(XはMn及び/又はCr)(d,e,f,gは質量%で、dは残部、4.3≦e≦5.5、0.5≦f≦1.0、0.05<g≦0.2、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
(3)一般式:AlhMgiCujZnk(h,i,j,kは質量%で、hは残部、4.3≦i≦5.5、0.5≦j≦1.0、0<k≦1.0、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有し、さらにj+k≦1.5の関係式が成り立つことを特徴とするアルミニウム合金。
(4)一般式:AllMgmCunZnpXq(XはMn及び/又はCr)(l,m,n,p,qは質量%で、lは残部、4.3≦m≦5.5、0.5≦n≦1.0、0<p≦1.0、0.05<q≦0.2、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有し、さらにn+p≦1.5の関係式が成り立つことを特徴とするアルミニウム合金。
(1)一般式:AlaSibCucMgd(a、b、c、dは、質量%で、aは残部、0.4≦b≦0.9、0.15≦c≦0.8、0.8≦d≦2.0、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、MgとSiとを含む析出物を含むアルミニウム合金を母材とするスライドファスナー用エレメント。
(2)(1)に記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、スライドファスナーを挟持する脚部のビッカース硬さの平均がHv120〜145であり、その標準偏差が2.2〜4.1である、スライドファスナー用エレメント。
(3)(2)に記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、前記脚部および噛合頭部の両方を眺める方向から平面視したときに、前記脚部を、付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の当該付け根部分から70%の長さに相当する部分である脚元部と、残りの30%の長さに相当する部分である脚先部とに分けたときに、当該脚先部のビッカース硬さの平均がHv116〜137である、スライドファスナー用エレメント。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、前記析出物の一片の長さが1〜120nmである、スライドファスナー用エレメント。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナー。
(組成)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントでは、所定の組成をもち、時効硬化型の銅合金で母材を構成することにより、高強度であり、かつ、優れた耐摩耗性を発揮することを狙いとしている。
Siは、Alマトリックス中に一度、固溶させた後、時効熱処理を行うことによりMgと極微小な金属間化合物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。
Siの組成割合(b)は0.4(質量%)≦b≦0.9(質量%)、すなわち0.4質量%以上0.9質量%以下であり、好ましくは0.4質量%以上0.8質量%以下である。Siの組成割合が小さすぎると、アルミニウム合金の強度、硬度が向上しにくくなる。一方で、大きすぎると、Si単体の粗大な析出あるいは晶出を促進し、塑性変形における伸びが小さくなり加工性を低下させる。また、適量を添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができる。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリックス中に析出した原子(Si)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。Siの組成割合が小さすぎるとその効果が少なく、一方で大きすぎると冷間加工性が劣るため、特にファスナー用材料として適さない。
CuはAlマトリックス中に一度、固溶させた後、時効熱処理を行うことにより極微小な析出物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。
Cuの組成割合(c)は0.15(質量%)≦c<0.8(質量%)、すなわち0.15質量%以上0.8質量%未満であり、好ましくは0.15質量%以上0.4質量%以下である。また、適量を添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができる。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリックス中に析出した原子(Cu)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。Cuの組成割合が小さすぎるとその効果が少なく、一方で大きすぎると冷間加工性や耐食性が劣るため、特にファスナー用材料として適さない。
Mgは、熱処理を行うことによりSiと極微小な金属間化合物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。また、マトリックスであるAl中に固溶することにより合金の機械的性質(強度,硬度)を向上させる効果がある。
Mgの組成割合(d)は0.8(質量%)≦d≦2.0(質量%)、すなわち0.8質量%以上2.0質量%であり、好ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下である。適量を添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができる。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリックス中に析出した原子(Mg)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。Mgの組成割合が小さすぎるとその効果が少なく、一方で大きすぎると冷間加工性が劣るため、特にファスナー用材料として適さない。
不可避的不純物というのは原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物のことである。本発明において、不可避的不純物として許容される各不純物元素の含有量は一般に0.1質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下である。なお、不可避的不純物よりも含有量の高い、その他の元素としては、Feが0.7質量%以下、Mnが0.15質量%以下、Crが0.35質量%以下、Znが0.25質量%以下となり、これらはスライドファスナー用エレメントの用途の観点から、許容されるものである。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは一実施形態において、脚部のビッカース硬さが平均でHv120以上145以下(JIS 2244:2009に準拠、以下同じ。)である。この範囲のビッカース硬度は、成形金型の寿命を確保しながら、金属製ファスナーのエレメントとして機能するのに十分な強度が得られるという点で好ましい。
上述した組成のアルミニウム合金、例えばJIS H4000にて規定されたA6061のアルミニウム合金に、T8処理(溶体化処理後冷間加工を行い、更に人工時効硬化処理、例えば170℃で5〜6時間程度の加熱処理をする)を行ったものを好適に使用することができる。このT8処理後のアルミニウム合金の線材を用いて、冷間圧延により所定の圧下率の加工歪を付与して断面略Y字状の連続異形線を製造する。さらに切断、プレス、曲げ、かしめの各種冷間加工を施して、所定の大きさのエレメント形状とすることにより、スライドファスナー用エレメントが得られる。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントには必要に応じて、各種の表面処理を行うことができる。例えば、平滑化処理、防錆処理、塗装処理、及び鍍金処理などを行うことができる。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナーの例を図面に基づき具体的に説明する。図1は、スライドファスナーの模式図であり、図1に示すようにスライドファスナーは、一側端側に芯部2が形成された一対のファスナーテープ1とファスナーテープ1の芯部2に所定の間隔をおいてかしめ固定(装着)されたエレメント3と、エレメント3の上端及び下端でファスナーテープ1の芯部2にかしめ固定された上止具4及び下止具5と、対向する一対のエレメント3間に配され、エレメント3の噛合及び開離を行うための上下方向に摺動自在なスライダー6を備える。なお、一本のファスナーテープ1の芯部2にエレメント3が装着された状態のものをスライドファスナーストリンガーといい、一対のファスナーテープ1の芯部2に装着されたエレメント3が噛合状態となっているものをスライドファスナーチェーン7という。
原材料として、Al(純度99.9質量%以上)、Cu(純度99.9質量%以上)、Mg(純度99.9質量%以上)、Si(純度99.9質量%以上)を使用して、表1に記載の試験番号に応じた各成分組成をもつようにこれら原材料を配合して鋳造装置内で溶解し、次いで押出装置により棒材を作製した。得られた棒材に減面率70%以上の伸線処理を施し、500℃〜600℃の温度範囲で1h〜6hの熱処理を施した直後に急冷し、溶体化処理を行った。その後、減面率1%以上の伸線処理を施したワイヤを100℃〜200℃の温度範囲で1h〜12hの熱処理を施すことにより人工時効処理(T8処理)を行い、連続ワイヤを作製した。得られた連続ワイヤを冷間圧延により圧下率70%以上の加工歪を付与して断面略Y字状の連続異形線を製造した後、切断、プレス、曲げ、かしめの各種冷間加工を施してYKK株式会社カタログ「FASTENING専科(2009年2月発行)」で規定する「5R」の大きさのエレメント形状とした後、これをポリエステル製ファスナーテープに装着してファスナーストリンガーを作成し、更に一対のファスナーストリガーの対向するエレメント同士を噛み合わせてファスナーチェーンを作製した。
T8処理直後の線材から圧延方向と平行に引張試験片(9A号試験片)を切り出し、引張強度(JIS Z2241:2011に準拠)を測定した。結果を表1に示す。
<硬度試験>
試験番号に応じた組成をもつアルミニウム合金で得られたエレメントについて、脚部(脚元部および脚先部)における、ビッカース硬さ(JIS Z2244:2009に準拠し、荷重を0.9807Nとした。)を複数個所で測定し、その平均値を得た。また、各部におけるビッカース硬さの標準偏差も求めた。結果を表2に示す。
JIS S3015:2007の「往復開閉耐久試験」の項に記載された方法に準拠し、往復開閉負荷をLランク(横方向9.8N;縦方向6.9N)として、2000回の開閉動作を実施した。途中で、エレメントのかみ合いができなくなったり、又は目視でテープ部の切れ、エレメントかみ合い部の割れ、及び/又は抜けが発生した場合には、試験を中止した。結果を表3に示す。
ファスナーの強度の指標としてのチェーンの横引強度の評価を、JIS S3015:2007の「往復開閉耐久試験」の項に記載された方法に準拠し、実施した。
結果を表3に示す。
2 芯部
3 エレメント
4 上止具
5 下止具
6 スライダー
7 スライドファスナーチェーン
8 断面略Y字状の異形線
9 係合頭部
10 脚部
11 矩形線
12 断面略X字状の異形線
Claims (5)
- 一般式:AlaSibCucMgd(a、b、c、dは、質量%で、aは残部、0.4≦b≦0.9、0.15≦c≦0.8、0.8≦d≦2.0、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、MgとSiとを含む析出物を含むアルミニウム合金を母材とするスライドファスナー用エレメント。
- 請求項1に記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、スライドファスナーを挟持する脚部のビッカース硬さの平均がHv120〜145であり、その標準偏差が2.2〜4.1である、スライドファスナー用エレメント。
- 請求項2に記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、前記脚部および噛合頭部の両方を眺める方向から平面視したときに、前記脚部を、付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の当該付け根部分から70%の長さに相当する部分である脚元部と、残りの30%の長さに相当する部分である脚先部とに分けたときに、当該脚先部のビッカース硬さの平均がHv116〜137である、スライドファスナー用エレメント。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のスライドファスナー用エレメントにおいて、前記析出物の一片の長さが1〜120nmである、スライドファスナー用エレメント。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナー。
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