JP6647559B2 - スライドファスナー用エレメント - Google Patents

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Description

本発明はスライドファスナーに関し、とりわけスライドファスナー用エレメントに関する。
従来、例えばスライドファスナーの構成部品として主に丹銅、真鍮等の銅−亜鉛合金、洋白等の銅−亜鉛−ニッケル合金の銅合金が使用されている。これらの合金は色調が銅色、黄金色、シルバー色と使用される材料によって色調が特定されるものである。近年、スライドファスナーは、その使用される用途からも外観意匠性が求められ、各種色調からなる部品の提供が必要になってきている。
一方、各種色調を備えたスライドファスナーとしては、例えばアルミニウム又はその合金からなるエレメント(務歯)に陽極酸化処理、電解メッキ、電着塗装などの電気化学的表面処理を施すことが知られている。
しかしながら、既存のアルミニウム合金(例えばJIS 5183等)をもとに電気化学的表面処理を行った場合、金属光沢性の乏しい各種色調のスライドファスナー用のエレメントとなり易く、金属光沢性を重視するように合金組成を調整した場合、あるいは既存のアルミニウム合金(例えば、JIS 5052、5056、5154等)を選択した場合、使用用途に求められる機械的特性、特に強度面が低下してしまい実用上の制限が生じている。
特許文献1には、一般式:AlaMgbMncCrd(a、b、c、dは、質量%で、aは残部、3.0≦b≦5.6、0.05≦c≦1.0、0.05≦d≦0.7、c+d>0.2、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、実質的にマトリクスがアルニミウムの固溶体からなり、β相が存在しない組織構造である装飾性に優れたアルミニウム合金が開示され、これにより得られるスライドファスナー部品は強度、硬度等の機械的特性を備える旨が記載されている。
特許文献2には、以下の四種類のアルミニウム合金からなるスライドファスナーの構成部品、エレメント、止具、引手およびスライダーからなる群から選ばれる少なくとも一種が開示されている。
(1)一般式:AlaMgbCuc(a、b、cは質量%で、aは残部、4.3≦b≦5.5、0.5≦c≦1.0、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
(2)一般式:AldMgeCufg(XはMn及び/又はCr)(d、e、f、gは質量%で、dは残部、4.3≦e≦5.5、0.5≦f≦1.0、0.05<g≦0.2、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
(3)一般式:AlhMgiCujZnk(h、i、j、kは質量%で、hは残部、4.3≦i≦5.5、0.5≦j≦1.0、0<k≦1.0、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有し、さらにj+k≦1.5の関係式が成り立つことを特徴とするアルミニウム合金。
(4)一般式:AllMgmCunZnpq(XはMn及び/又はCr)(l、m、n、p,qは質量%で、lは残部、4.3≦m≦5.5、0.5≦n≦1.0、0<p≦1.0、0.05<q≦0.2、不可避的不純物を含み得る)で示される組成を有し、さらにn+p≦1.5の関係式が成り立つことを特徴とするアルミニウム合金。
特開2004−250760号公報 特開2006−291298号公報
ところで、従来のアルミニウム合金を用いたスライドファスナー用エレメントは、強度が十分とは言えず、強度が必要な場所、例えばパンツなどには使用することが困難であった。また、スライダーによる摩耗またはエレメント同士の摩耗により、黒い摩耗粉が発生して衣類などが汚れることがある。また、摩耗量が増えるとエレメント同士の噛み合わせが弱くなり、エレメントの横引き強度も低下し、未だ改善の余地があった。
特許文献1、2に記載のアルミニウム合金は固溶強化型であることから、固溶量の増加と冷間圧延により強度を上昇させると加工性が低下し、エレメント形状を得るためには、加工途中で熱処理による歪除去が必要となり、強度が低下してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、強度及び耐摩耗性を向上させたアルミニウム合金製のスライドファスナー用エレメントを提供することを目的としている。
前記目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討した結果、従来の固溶強化を主な強化機構とするアルミニウム合金ではなく、所定の組成を有する時効硬化型のアルミニウム合金を用い、適切な製造工程を経ることで、優れた強度及び耐摩耗性をもつエレメントが得られることを見出し、本発明の完成に至った。本発明においてはCuの組成割合を高めることで強度及び耐摩耗性の向上を図っているが、本来Cuの組成割合を高くすると冷間加工性が悪化するため、エレメント形状への加工が困難である。しかしながら、本発明者は後述するようにMg及びSiを含めた組成範囲を最適化し、製造プロセスを工夫することで高濃度のCuを含有する時効硬化型のアルミニウム合金製のエレメントを製造することに成功した。
本発明は一側面において、一般式:AlaSibCucMgdTief(a、b、c、d、e及びfは質量%で、aは残部、0.2≦b≦0.8、0.8≦c≦1.8、0.8≦d≦1.8、0<e≦0.05、0<f≦0.01、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、Al、Si、Cu及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含有する析出物が分散したアルミニウム合金を母材とし、一対の脚部と当該一対の脚部を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位及び凹状部位を有する頭部とを備えたスライドファスナー用エレメントである。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの一実施形態においては、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv140〜170である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの別の一実施形態においては、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv145〜170である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの更に別の一実施形態においては、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv150〜170である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの更に別の一実施形態においては、前記頭部のビッカース硬さの平均がHv140〜170である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの更に別の一実施形態においては、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均と前記頭部のビッカース硬さの平均の差が10以内である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの別の一実施形態においては、前記一対の脚部及び前記頭部の両方を眺める方向から断面観察したときに、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部における結晶粒の平均アスペクト比が5.1以上である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの別の一実施形態においては、析出物には、Al−Cu−Mg系、Mg−Si系及びAl−Cu−Mg−Si系から選択される少なくとも一種類の析出物が含まれる。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの別の一実施形態においては、析出物の内、Al−Cu−Mg系の析出物の含有量が最も多い。
本発明は別の一側面において、本発明に係るスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナーである。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係るスライドファスナーを備えた物品である。
本発明によれば、強度及び耐摩耗性が向上したアルミニウム合金製のスライドファスナー用エレメントを提供することができる。このため、アルミニウム合金の特徴である軽さと意匠性に加えて優れた機械的特性が備わったスライドファスナーを提供することが可能となる。例えば、高い強度が要求される為に、今までは丹銅しか用いることができなかったパンツ用のスライドファスナーにもアルミニウム合金を使用することができるようになるなど、ユーザに対して幅広いラインアップのファスナー商品を提案可能とすることに貢献する。
エレメントを一対の脚部及び頭部の両方を眺める方向から断面観察したときの写真の例である。 スライドファスナーの模式図である。 ファスナーテープに下止具、上止具及びエレメントを取り付ける仕方を説明する図である。
(組成)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントでは、時効硬化型のアルミニウム合金で母材を構成することにより、高強度であり、かつ、優れた耐摩耗性を発揮することを狙いとしている。母材の具体的な組成は以下の通りである。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは一実施形態において、一般式:AlaSibCucMgdTief(a、b、c、d、e及びfは質量%で、aは残部、0.2≦b≦0.8、0.8≦c≦1.8、0.8≦d≦1.8、0<e≦0.05、0<f≦0.01、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、Al、Si、Cu及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含有する析出物が分散したアルミニウム合金を母材とする。
<Si>
Siは、Alマトリクス中に一度、固溶させた後、時効熱処理を行うことにより主にMgと極微小な金属間化合物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。
本発明ではSiの組成割合(b)は0.2(質量%)≦b≦0.8(質量%)、すなわち0.2質量%以上0.8質量%以下に規定している。アルミニウム合金の強度を向上させるという観点からはSiの組成割合は0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。一方で、大きすぎると、Si単体の粗大な析出あるいは晶出を促進し、塑性変形における伸びが小さくなり加工性を低下させることから、Siの組成割合は0.8質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、Siを適量添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができるという利点もある。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリクス中に析出した原子(Si)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。
<Cu>
CuはAlマトリクス中に一度、固溶させた後、時効熱処理を行うことによりAl−Cu−Mg系及びAl−Cu−Mg−Si系に代表される極微小な析出物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。
本発明ではCuの組成割合(c)は0.8(質量%)≦c≦1.8(質量%)、すなわち0.8質量%以上1.8質量%以下に規定している。アルミニウム合金の強度を向上させるという観点からはCuの組成割合は0.8質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上が更により好ましい。但し、Cuを1.8質量%を超えて添加した場合に冷間加工性が急激に低下することから、Cuの組成割合は1.8質量%以下が好ましい。また、Cuを適量添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができるという利点も得られる。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリクス中に析出した原子(Cu)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。
本発明の特徴の一つは、Cuの含有量を高めることで飛躍的な強度向上を図っている点である。Cuの含有量を高めると強度向上に寄与するが、本発明のように0.8質量%以上もの高い組成割合でCuを添加すると、通常はエレメントへの製造過程で材料が硬くなりすぎて、割れが生じてしまう。しかしながら、後述するようにエレメントの製造プロセスを工夫することで、このような高濃度のCuを含有させて高強度のアルミニウム合金製エレメントの製造ができるようになる。
<Mg>
MgはAlマトリクス中に一度、固溶させた後、時効熱処理を行うことによりAl−Cu−Mg系、Mg−Si系及びAl−Cu−Mg−Si系に代表される極微小な金属間化合物を形成し、合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。また、マトリクスであるAl中に固溶することにより合金の機械的性質(強度、硬度)を向上させる効果がある。
本発明ではMgの組成割合(d)は0.8(質量%)≦d≦1.8(質量%)、すなわち0.8質量%以上1.8質量%以下に規定している。Mgは後述するように、Al2CuMg、Mg2Si、Al4Cu2Mg8Si7等、想定されるすべての析出物の構成元素となり得るためCu及びSiに対して十分な量が必要である。このため、Mgの組成割合(d)は0.8質量%以上に設定しており、好ましくは1.0質量%以上である。一方で、Mgの組成割合を過度に高めても硬さの向上効果には限界があることから、Mgの組成割合(d)は1.8質量%以下に設定しており、好ましくは1.2質量%以下である。Mgを適量添加した場合には、冷間加工後の加熱される工程(水洗・乾燥など)における軟化を防ぐことができる。特に、冷間圧延によって導入された転位の移動を時効熱処理によりAlマトリクス中に析出した原子(Mg)が妨げてくれるので熱処理による強度低下を抑えることができる。
<Ti、B>
Ti及びBを微量添加すると、冷間加工性の向上効果が得られる。理論によって本発明が限定されることを意図しないが、この効果は以下のメカニズムにより発現されるものと考えられる。TiB2等のチタンとホウ素の化合物が形成され、当該化合物が鋳造時に結晶粒を微細化することで冷間加工性が向上する。逆に、結晶粒が微細化されないと樹枝状に成長して粗大化した結晶粒が増えるため、樹枝間に粗大な晶出物が表れる可能性が大きくなり、この晶出物が冷間加工時に割れの原因となる。Ti及びBの微量添加は本発明のように高濃度のCuを含有する場合に特に有効である。本発明では、Tiの組成割合(e)は0(質量%)<e≦0.05(質量%)、すなわち0質量%超0.05質量%以下に規定している。Tiの好ましい組成割合は0.01質量%以上である。但し、Tiの組成割合が高くなると粗大晶出物が生成され、逆に強度低下を引き起こすことから、Tiの組成割合は0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。また、Bの組成割合(f)は0(質量%)<f≦0.01(質量%)、すなわち0質量%超0.01質量%以下に規定している。Bの好ましい組成割合は0.001質量%以上であり、0.002質量%以上がより好ましい。但し、Bの組成割合が高くなると粗大晶出物が生成され、逆に強度低下を引き起こすことから、Bの組成割合は0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がより好ましい。
<不可避的不純物>
不可避的不純物というのは原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするもので、本来は不要なものであるが、微量であり、特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物のことである。本発明において、不可避的不純物として許容される各不純物元素の含有量は一般に0.1質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下である。なお、本発明においては、Fe、Mn、Cr及びZnも不可避的不純物に該当するが、これらの元素の含有量は他の不可避的不純物に比べて多く含有していても弊害はない。許容量としては、Feが0.7質量%以下、Mnが0.15質量%以下、Crが0.35質量%以下、Znが0.25質量%以下である。
(機械的特性)
図1を参照すると、これはスライドファスナー用のエレメント20を一対の脚部21及び頭部22の両方を眺める方向から断面観察したときの写真の例である。この断面は、研磨及び腐食処理により外観面から約0.1mmの厚みを除去して得られたものである。スライドファスナー用のエレメント20は一般に、ファスナーテープを挟持するための一対の脚部21と当該一対の脚部21を連結するとともに噛み合わせのための凸状領域25及び凹状領域(図示せず)を有する頭部22とを備える。凹状領域は図示していないが、凸状領域25の裏側に形成することができる。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは一実施形態において、脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部が平均でHv140以上170以下(JIS 2244:2009に準拠、以下同じ。)のビッカース硬さを有することができる。なお、脚元部の図解は後述する結晶粒のアスペクト比の説明中で図1を参照しながら行う。このように高いビッカース硬さを有することで、耐摩耗性が向上するほか、パンツなど高い強度が必要な場所への使用にも耐えられるようになる。脚元部のビッカース硬さの平均は好ましくはHv145以上であり、より好ましくはHv150以上であり、更により好ましくはHv155以上であり、更により好ましくはHv160以上である。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは一実施形態において、頭部が平均でHv140以上170以下のビッカース硬さを有することができる。頭部は対向するエレメントとの噛み合わせにより摩擦を受けやすい部位であることから、このように高いビッカース硬さを有することが有利である。頭部のビッカース硬さの平均は好ましくはHv145以上であり、より好ましくはHv150以上であり、更により好ましくはHv155以上であり、更により好ましくはHv160以上である。なお、頭部のビッカース硬さを測定するときは、先述した凸状部位及び凹状部位を測定対象から除外する。これは、エレメントの脚部及び頭部のビッカース硬さを同一平面のマッピングにて同時に自動測定できるようにするためである。ただし、凸状部位及び凹状部位におけるビッカース硬さはこれらの部位以外の部位と概ね同等のビッカース硬さを有することができる。
このように、本発明に係るスライドファスナー用エレメントは脚元部及び頭部が共に高い強度を有することができ、一実施形態においては、前記脚元部のビッカース硬さの平均と前記頭部のビッカース硬さの平均の差を10以内とすることができ、8以内とすることもでき、6以内とすることもでき、例えば1〜10の範囲内とすることができる。脚元部と頭部で硬さが同等であることにより、硬さが低い部分が局所的に変形・破損することが起こりにくくなる利点も得られる。
(結晶粒のアスペクト比)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは一実施形態において、加工度の高い冷間加工を経て製造されていることにより、結晶粒が細長い形状をしている。結晶粒が細長いということは加工硬化によって強度が上昇していることを表している。とりわけ、エレメントの引き抜き強度を高める観点からは、ファスナーテープを挟持する部位である脚部における結晶粒が細長い形状をしていることが好ましい。
この点、図1の写真に例示される本発明に係るスライドファスナー用エレメント20は一実施形態において、観察面を研磨及び腐食処理することにより約0.1mmの厚みを除去して断面を露出させ、一対の脚部21及び頭部22の両方を眺める方向から当該断面を観察したときに、脚部21の付け根部分から脚部21の先端へ向かって下ろした垂線Aの長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部23における結晶粒の平均アスペクト比を5.1以上とすることができ、好ましくは5.4以上とすることができ、より好ましくは5.5以上とすることができ、更により好ましくは6.0以上とすることができ、更により好ましくは8.0以上とすることができ、更により好ましくは9.0以上とすることができ、例えば5.1〜21.5とすることができる。
ここで、結晶粒のアスペクト比とは結晶粒の短辺長さに対する結晶粒の長辺長さの比率を指し、結晶粒の平均アスペクト比とは複数の結晶粒のアスペクト比の算術平均を指す。ここで、結晶粒の長辺長さとは測定対象となっている結晶粒を取り囲むことのできる最小円の直径を指し、結晶粒の短辺長さとは結晶粒に取り囲まれることのできる最大円の直径を指す。本発明に係るスライドファスナー用エレメントの一実施形態においては、脚元部における結晶粒は脚部の根元から先端に向かう方向に沿って層状に結晶粒が配列され得る。
(析出物の形態)
また、本発明に係るスライドファスナー用エレメントの一実施形態において、マトリクス中にAl、Si、Cu及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含有する析出物が分散している。合金元素は時効熱処理によって金属間化合物を形成して析出することができる。析出物はピン止め効果によって転移の移動を妨げるため、アルミニウム合金の機械的特性の向上が図られる。
本発明に係るスライドファスナー用エレメントの一実施形態においては、析出物の中には、Al−Cu−Mg系、Mg−Si系及びAl−Cu−Mg−Si系から選択される少なくとも一種類の析出物が含まれる。典型的には、Al−Cu−Mg系の析出物の含有量が最も多い。Al−Cu−Mg系析出物としてAl2CuMgが挙げられ、Mg−Si系析出物としてはMg2Siが挙げられ、Al−Cu−Mg−Si系析出物としてはAl4Cu2Mg8Si7等が挙げられる。
(製造方法)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントは例えば以下の手順で製造可能である。まず、上述した組成のアルミニウム合金の棒材を溶解鋳造によって製造する。溶体化処理によって合金元素をアルミニウムのマトリクス中に十分に固溶させた後に、冷間圧延により所定の圧下率の加工歪を付与して断面略Y字状の連続異形線を製造する。次いで時効熱処理することで析出物をマトリクス中に析出させた後、さらに切断、プレス、曲げ、かしめの各種冷間加工を施して、所定の大きさのエレメント形状とすることにより、スライドファスナー用エレメントが得られる。本発明に係るスライドファスナー用エレメントを製造する上では、冷間圧延後、歪取焼鈍や調質焼鈍といった材料強度を低下させる熱処理を実施せずに最終製品形状を作りこむことが好ましい。従来、歪取焼鈍や調質焼鈍を製造過程に挟むことで加工性を回復しながらエレメント形状に加工することが行われていたが、このような熱処理は最終的に得られるエレメントの強度を低下させる要因となる。また、断面略Y字状の連続異形線を作製するための冷間圧延を実施する直前においては、加工硬化や時効硬化されていない軟化した状態にあることが望ましい。アルミニウム合金の棒材はT8処理(JIS H0001)等の熱処理によって硬化した状態で市販されていることが多いが、このような硬化材からは本発明のようにCuの組成割合が高いアルミニウム合金からエレメントを成形加工しようとすると、途中で割れが発生したり圧延が困難となったりする。加工を容易にするために材料を軟化させるような熱処理を行うと結果的に優れた機械的特性(強度及び耐摩耗性)をもつエレメントを得るのが困難となる。
所望の機械的特性を得るためには、断面略Y字状の連続異形線を作製するときの冷間加工の圧下率を70%以上とし、その後の時効熱処理で更に強度を上げた後、更にプレス、曲げ、かしめ等により圧下率で80%以上に相当する加工度で冷間加工を施すことが好ましい。この際、加工歪が多すぎると加工硬化により硬さが向上しすぎる。その結果、成型金型の寿命が低下し、場合によっては加工限界によりエレメントに割れが発生し、スライドファスナー用エレメントとしての機能を損なってしまうことから、合金組成に応じて割れの発生しない範囲に冷間加工時の加工度を設定することが望まれる。
(表面処理)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントには必要に応じて、各種の表面処理を行うことができる。例えば、平滑化処理、防錆処理、塗装処理、及び鍍金処理などを行うことができる。
(スライドファスナー)
本発明に係るスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナーの例を図面に基づき具体的に説明する。図2はスライドファスナーの模式図である。図2に示すようにスライドファスナーは、一側端側に芯部2が形成された一対のファスナーテープ1とファスナーテープ1の芯部2に所定の間隔をおいてかしめ固定(装着)されたエレメント3と、エレメント3の上端及び下端でファスナーテープ1の芯部2にかしめ固定された上止具4及び下止具5と、対向する一対のエレメント3間に配され、一対のエレメント3の噛合及び開離を行うための上下方向に摺動自在なスライダー6を備える。なお、一本のファスナーテープ1の芯部2にエレメント3が装着された状態のものをスライドファスナーストリンガーといい、一対のファスナーテープ1の芯部2に装着されたエレメント3が噛合状態となっているものをスライドファスナーチェーン7という。
また、図2に示すスライダー6は、図示されていないが断面矩形状の板状体からなる長尺体を多段階にてプレス加工を施し、所定間隔ごとに切断し、スライダー胴体を作製し、さらに必要に応じてスプリング及び引手を装着したものである。さらに、引手も断面矩形状の板状体から、所定形状ごとに打ち抜き、これをスライダー胴体にかしめ固定したものである。なお、下止具5は、蝶棒、箱棒、箱体からなる開離嵌挿具とし、スライダーの開離操作にて一対のスライドファスナーチェーンを分離できるようにしたものであっても構わない。
図3は、図2に示されるスライドファスナーのエレメント3、上止具4及び下止具5の製造方法及びファスナーテープ1の芯部2への取付けの仕方を示す図面である。図に示すようにエレメント3は、断面略Y字状からなる異形線8を所定寸法ごとに切断し、これをプレス成形することにより、頭部9に噛み合せ用の凸状部位及び凹状部位を形成し、その後、ファスナーテープ1の芯部2へ両脚部10をかしめることにより、装着される。
上止具4は、断面矩形状の矩形線11(平角線)を所定寸法ごとに切断し、曲げ加工により略断面コ字状に成形し、その後、ファスナーテープ1の芯部2へかしめることにより、装着される。下止具5は、断面略X字状からなる異形線12を所定寸法ごとに切断し、その後、ファスナーテープ1の芯部2へかしめることにより、装着される。
なお、図においては、エレメント3、上下止具4、5が、同時にファスナーテープ1に装着されるようになっているが、実際は、ファスナーテープ1に所定領域ごと間欠的にエレメント3を取付け、まずファスナーチェーンを作製し、ファスナーチェーンのエレメントが取着されていない領域のうち、前後に備える取着されたエレメント3に近接して所定の上下止具4又は5を装着するものである。以上のようにして製造及び取付けを行うため、スライドファスナーの構成部材となるエレメント及び止具は、冷間加工性に優れた材料とする必要性がある。この点、本発明に係る金属製ファスナー部材は冷間加工性に優れており、例えば圧下率70%以上の加工が可能であるため、エレメントや上下止具の材料として好適である。
スライドファスナーは各種の物品に取着することができ、特に開閉具として機能する。スライドファスナーが取着される物品としては、特に制限はないが、例えば衣料品、鞄類、靴類及び雑貨品といった日用品の他、貯水タンク、漁網及び宇宙服といった産業用品が挙げられる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明及びその利点をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図しない。
<時効硬化型アルミニウム合金を使用したファスナーチェーンの作製(実施例1〜6及び比較例1〜5)>
原材料として、Al(純度99.9質量%以上)、Cu(純度99.9質量%以上)、Mg(純度99.9質量%以上)、Si(純度99.9質量%以上)、Ti(純度99.9質量%以上)、B(99.9質量%以上)を使用して、表1に記載の試験番号に応じた各成分組成をもつようにこれら原材料を配合して鋳造装置内で溶解し、次いで押出装置により棒材を作製した。得られた棒材に対して545℃で1時間の溶体化処理を行った後、冷間圧延により所定の圧下率の加工歪を付与して断面略Y字状の連続異形線を製造し、次いで、170℃で2時間の時効処理を行った。次いで、切断、プレス、曲げ、かしめの各種冷間加工を施して、YKK株式会社カタログ「FASTENING専科(2009年2月発行)」で規定する「5R」の大きさのエレメントをポリエステル製ファスナーテープに植え付けてファスナーストリンガーを作成した。更に一対のファスナーストリンガーの対向するエレメント同士を噛み合わせてファスナーチェーンを作製した。なお、植え付け時に割れの見られた試験例については表1中にその旨を記載してある。
<固溶硬化型アルミニウム合金を使用したファスナーチェーンの作製(比較例6)>
先と同様の原材料を使用して、表1に記載の各成分組成をもつようにこれら原材料を配合して鋳造装置内で溶解し、次いでプロペルチ法により棒材を作製した。得られた棒材を歪取焼鈍によって軟化させた。次いで、減面率70%以上の伸線処理を施した後、更に歪取焼鈍(100℃×3.5時間)を実施した。次いで、冷間圧延により所定の圧下率の加工歪を付与して断面略Y字状の連続異形線を製造した後、100℃で3.5時間の調質焼鈍を行った。次いで、切断、プレス、曲げ、かしめの各種冷間加工を施して、YKK株式会社カタログ「FASTENING専科(2009年2月発行)」で規定する「5R」の大きさのエレメントをポリエステル製ファスナーテープに植え付けてファスナーストリンガーを作成した。更に一対のファスナーストリンガーの対向するエレメント同士を噛み合わせてファスナーチェーンを作製した。
<硬さ試験>
得られたファスナーチェーンからエレメントを任意に一つ選び、脚元部及び頭部におけるビッカース硬さ(JIS Z2244:2009に準拠し、荷重を0.9807Nとした。)をマイクロビッカース硬度計にてそれぞれ複数個所で測定し、平均値を得た。結果を表1に示す。
<脚元部における結晶粒の平均アスペクト比>
得られたファスナーチェーンからエレメントを任意に一つ選び、当該エレメントを一対の脚部及び噛合頭部の両方を眺める方向から観察できるように樹脂に埋め込んだ。次いで、0.1mm程度の厚みを鏡面研磨することで除去して観察面の断面を露出させ、結晶粒をSEM(キーエンス社デジタルマイクロスコープVHX−5000)により観察した。そして、脚元部における結晶粒の平均アスペクト比を先述した方法により求めた。結果を表1に示す。なお、何れの試験例におけるエレメントも、脚元部における結晶粒は脚部の根元から先端に向かう方向に沿って層状に結晶粒が配列されていた。
<析出物の分析>
得られたファスナーチェーンからエレメントを任意に一つ選び、これからTEM観察用に薄膜試験片を作製した後、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテクノロジーズ製H−7650)を用いて、制限視野電子回折像(SAED)パターンを撮影した。SAEDパターンから、マトリクスに分散している析出物の組成を分析し、S相:Al−Cu−Mg系、β相:Mg−Si系、Q相:Al−Cu−Mg−Si系の析出物の有無及びそれらの存在比率の順番を調べた。結果を表1に示す。
<加工性試験>
上記で製造した各成分組成をもつ棒材を、所定の圧下率で冷間圧延してから170℃で2時間の時効処理を行った。その後、割れが発生するまで冷間圧延を行い、割れが発生した時点の圧下率を計測した。Y字状の連続異形線からのエレメント形状への加工及びファスナーテープへの植え付けを考慮すると、割れを生じることなく圧下率88%以上の冷間加工が可能であることが望まれる。結果を表1に示す。
<摩耗試験>
実施例2及び比較例6のファスナーチェーンに対して、JIS S3015:2007の「往復開閉耐久試験」の項に記載された方法に準拠し、往復開閉負荷をLランク(横方向9.8N;縦方向6.9N)として、繰り返し開閉動作を実施した。途中で、エレメントの噛み合いができなくなる、あるいは、目視でテープ部の切れ、エレメント噛み合い部の割れ及び/又は抜けが発生した場合には、試験を中止し、その時点での開閉回数を測定値とした。その結果、実施例2においては613回の開閉動作が可能であったのに対し、比較例6においては169回の開閉動作しか行うことができなかった。
<エレメント引き抜き強度>
実施例4及び比較例6のファスナーチェーンの噛み合わせを解除してファスナーストリンガーの状態にした上で、インストロン型引張試験機を用いて、任意のエレメント1個の噛合頭部をジグでつかみ、クランプに固定されたファスナーテープからエレメントが引き抜かれるまで引張速度300mm/minで引っ張り、そのときの最大強度を測定するエレメント引き抜き試験を行った。エレメントの引張方向はファスナーテープの長手方向に直角で且つファスナーテープの面に平行な方向とした。測定結果は6個のエレメントに対する測定後の平均値とした。その結果、実施例4においては88Nの引き抜き強度が得られたのに対して、比較例6においては55Nの引き抜き強度しか得られなかった。
<考察>
実施例1〜6は組成及び製造プロセスが適切であったことから、優れた強度をもつエレメントを製造することができた。特に、実施例4は丹銅と同等レベルの強度を得ることができている。一方、比較例1はCuの組成割合が少ないため、本発明ほどの強度を得ることはできなかった。比較例2は逆にCuを過剰に添加したため、ファスナーテープへの植え付けの際にエレメントの脚元部に折れが発生した。比較例3はCuの組成割合が低い上にMgを過剰に添加したことで、強度不足で且つ植え付け時の折れも発生した。比較例4はSiを過剰に添加したため、ファスナーテープへの植え付けの際にエレメントの脚部に折れ発生した。比較例5はTi及びBを添加していないことで、植え付け時の折れが発生した。比較例6は従来の固溶強化型のアルミニウム合金を使用した場合であり、本発明に比べて強度に劣っていることが分かる。
1 ファスナーテープ
2 芯部
3 エレメント
4 上止具
5 下止具
6 スライダー
7 スライドファスナーチェーン
8 断面略Y字状の異形線
9 頭部
10 脚部
11 矩形線
12 断面略X字状の異形線
20 エレメント
21 脚部
22 頭部
23 脚元部
25 凸状領域

Claims (11)

  1. 一般式:AlaSibCucMgdTief(a、b、c、d、e及びfは質量%で、aは残部、0.2≦b≦0.8、0.8≦c≦1.8、0.8≦d≦1.8、0.01≦e≦0.05、0.001≦f≦0.01、不可避的不純物元素を含み得る)で示される組成を有し、Al、Si、Cu及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含有する析出物が分散したアルミニウム合金を母材とし、一対の脚部と当該一対の脚部を連結するとともに噛み合わせのための凸状部位及び凹状部位を有する頭部とを備えたスライドファスナー用エレメント。
  2. 前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv140〜170である請求項1に記載のスライドファスナー用エレメント。
  3. 前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv145〜170である請求項1に記載のスライドファスナー用エレメント。
  4. 前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均がHv150〜170である請求項1に記載のスライドファスナー用エレメント。
  5. 前記頭部のビッカース硬さの平均がHv140〜170である請求項1〜4の何れか一項に記載のスライドファスナー用エレメント。
  6. 前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部におけるビッカース硬さの平均と前記頭部のビッカース硬さの平均の差が10以内である請求項1〜5の何れか一項に記載のスライドファスナー用エレメント。
  7. 前記一対の脚部及び前記頭部の両方を眺める方向から断面観察したときに、前記脚部の付け根部分から脚部の先端へ向かって下ろした垂線の長さのうち、当該付け根部分から50%の長さに相当する部分である脚元部における結晶粒の平均アスペクト比が5.1以上である請求項1〜6の何れか一項に記載のスライドファスナー用エレメント。
  8. 析出物には、Al−Cu−Mg系、Mg−Si系及びAl−Cu−Mg−Si系から選択される少なくとも一種類の析出物が含まれる請求項1〜7の何れか一項に記載のスライドファスナー用エレメント。
  9. 析出物の内、Al−Cu−Mg系の析出物の含有量が最も多い請求項1〜8の何れか一項に記載のスライドファスナー用エレメント。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のスライドファスナー用エレメントを備えたスライドファスナー。
  11. 請求項10に記載のスライドファスナーを備えた物品。
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