JP3750897B2 - ニッケルフリー白色銅合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばスライドファスナーのエレメント、スライダー、止具などあるいは金属性のボタン、被服の係止具などの装身用に適した強度、硬度、延性、加工性、耐食性に優れ、アレルギーのない白色性の高いニッケルフリー白色銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の例えば上記ファスナー用銅合金としては、その合金色相が白色である洋白等の銅−ニッケル−亜鉛合金、又、丹銅、真鍮に代表される銅−亜鉛合金などが用いられてきた。しかしながら洋白はニッケルを合金元素として含むため、耐食性には優れているが、例えば、これをスライドファスナー用として適用した場合に、ファスナーは皮膚に接触することが多いので、ニッケルアレルギーの問題が生じている。また、丹銅、真鍮に代表される銅−亜鉛合金はニッケルを含まないため、ニッケルアレルギーの問題は発生しないが、その色相が黄色くなり、白色の合金を得ることができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、洋白と同等の強度および硬度に優れ、さらに延性を加えて、加工性、耐食性、白色性に優れ、ニッケルを含まないためにアレルギーの問題もない白色銅合金を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(5)よりなる。
(1)一般式:CuaZnbMncAld
ただし、a,b,c,dは質量%で、aは残部、0.5≦b<5,7≦c≦17,0.5≦d≦4で、不可避的不純物を含み得ることを特徴とするニッケルフリー白色銅合金。
【0005】
(2)一般式:CuaZnbMncAldXe
ただし、XはSi,Ti,Crから選ばれる少なくとも1種の元素、a,b,c,d,eは質量%で、aは残部、0.5≦b<5,7≦c≦17,0.5≦d≦4で、0<e≦0.3で、不可避的不純物を含み得ることを特徴とするニッケルフリー白色銅合金。
【0006】
(3)b,c,dが、0.5≦b≦4,7≦c≦15,0.5≦d≦2である上記(1)又は(2)記載のニッケルフリー白色銅合金。
(4)室温においてα相単相である上記(1),(2)又は(3)記載のニッケルフリー白色銅合金。
【0007】
(5)合金の色調に関しJIS Z 8729にて規定される色調を示すa*値、b*値が、0<a*<5、7<b*<15である請求項1,2又は3記載のニッケルフリー白色銅合金。
【0008】
本発明の組成において、Znは固溶強化により合金の機械的特性を向上させると共に、合金の価格を低下させる効果がある。0.5%より少ないと合金の低価格化が不十分で、しかも強化量が不足する。5%より多いと固液共存温度幅が拡がり、マクロ偏析が激しくなりやすいとともに熱伝導が悪くなり、鋳造性が劣化しやすくなる。又、22%より多いと耐時季割れ性が劣化すると共に、結晶構造がα+β相となり、十分な冷間加工性が確保できなくなるが、5%以下とすることにより耐時季割れ性の問題は生じなくなるとともに、請求項2に記載のX元素を添加してもより安定した状態を維持できる。より好ましくは4%以下が良い。Mnは固溶強化により合金の機械的特性を向上させると共に合金の価格を低下させる効果がある。又、亜鉛の代わりに添加することにより、耐時季割れ性を向上させる効果と、銅合金の色調が黄色くなり過ぎることを抑える効果がある。又、融点を下げる効果があり、鋳造性を向上させると共に溶湯からの亜鉛の蒸発を抑える働きがある。7%より少ないと色調が黄色くなってしまう。逆に17%より多いと結晶構造がα+β相となり、十分な冷間加工性が確保できなくなる。Mnの上限は15%がより好ましい。
【0009】
Alは合金表面に安定な酸化皮膜を形成することにより、耐時季割れ性を向上させる効果がある。又、固溶強化により合金の機械的特性を向上させると共に、合金の価格を低下させる効果がある。下限は0.5%以上であれば良いが余り少ないと合金の耐時季割れ性が不十分であると共に強化量が不足する。又、4%より多いと結晶構造がα+β相となり、十分な冷間加工性が確保できなくなる。2%以下がさらに好ましい。
【0010】
請求項2におけるX元素(Si,Ti,Crから選ばれた少なくとも1種の元素)は溶解時の溶湯表面に皮膜を形成する働きがあり、Mnの酸化、Znの蒸発を防ぐ働きがある。また、合金表面に安定な酸化皮膜を形成することにより、焼鈍時の脱Mnの防止、耐時季割れ性を向上する働きおよびMnの酸化による色調の経時変化を防ぐ効果がある。その量の下限は0%を越える量であれば良いが、余り少ないと充分な上記効果が得られないので、好ましくは0.02%以上がよい。0.3%より多いと組成中の元素と金属間化合物を形成し、冷間加工性を劣化させる。
【0011】
本発明合金はα相単相であり、十分な冷間加工性を確保できる。本発明の組成範囲を外れると結晶構造がα+β相となり易く、加工性が低下する。
又、本発明合金はJIS Z 8729に規定するとL*,a*,b*表色系色度図に基づいて、0<a*<5、7<b*<15の範囲内にある。
【0012】
なお、本明細書中でいう色調とは、JIS Z 8729に規定される物体色の表示方法で表現した明度指数L*(明度:エルスター)及びクロマティクス指数a*(緑味〜赤味:エースター)、b*(青味〜黄味:ビースター)の値で示される。特に本発明の特徴である白色であるためには、無体色に近い方が良く、上記のようにクロマティクス指数a*,b*により規定される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
実施例
表1に示す本発明の実施例1〜14は以下のように供試材を作製し、その評価を行った。なお、表1中の比較例1〜10についても同様に行った。
【0014】
純Cu(99.9%)、純Zn(99.9〜99.99%)、純Mn(99.9%)、純Al(99.99%)、純Ti、純Si,純Crを使用して、所定組成に秤量(200cm3)した。これらをAr雰囲気中(10cmHg)で高周波溶解し、4分間保持後、銅鋳型(φ40×28)に注湯した。得られた鋳塊(200m3)を長さ約70mmに切断し、押出用ビレットとした。押出は、ビレット温度800℃、コンテナ温度600℃で行った。得られた押出材(φ8×約1300)に800℃×1h+炉冷の熱処理(以下熱処理と示す)を施した。この熱処理を施した押出材(ワイヤー)を試験の元材とした。
【0015】
得られた供試材について、SiC研磨紙、ダイヤモンドペーストにて鏡面研摩を行い、色彩色差計(ミノルタ(株)製、CR−300)を用い測定し、これをJIS Z 8729に規定するL*,a*,b*にて表示した。
本発明の供試材は色調が全て白色であり、ファスナー部品として用いた場合、高級感のある部品を提供できる。
【0016】
また、得られた供試材について、組織観察を行った。本発明の供試材は全てα相単相合金であり、冷間加工が良好な材料を提供できる。比較例のように第2相が存在した場合、冷間加工中に割れ等が発生したが、本実施例の材料においては割れ等の発生は見られなかった。特にファフナーのエレメントとして用いた場合、生地への取付けの際にY字状のエレメントを加締めて、取付けるが、取付後においてエレメントに割れ等が生じることなく、強固な取付けが行える。
【0017】
硬度(Hv)は25g荷重の微小ビッカース硬度計による測定値DPNで示す。本実施例の材料は現状ファスナー用部品として用いられている洋白(比較例10)とほぼ同等あるいはそれ以上の硬度を有し、ファスナー部品として良好な強度、硬度等の機械的特性を備えていることが分かる。
さらに得られた供試材について、冷間圧縮試験により80%の歪を与え、表面の割れの有無を観察した。
【0018】
表1中○印は表面に割れが存在しなかったもの、×印は表面に割れが存在していたものを表わし、本実施例の材料においては全て表面に割れが存在していないことが分かる。このことから前述に説明したように、ファスナーのエレメントの場合、生地への取付けの際に冷間で最大80%の歪を与えるが、本実施例の材料は冷間で80%の歪を与えても何ら問題がないことが分かる。
【0019】
耐変色性は得られた供試材をSiC研磨紙、ダイヤモンドペーストにて鏡面研磨を行い、80℃、90%RH雰囲気に曝露し、恒温恒湿度試験を行い、その後の供試材の表面を色彩色差計を用い測定した。耐変色性の評価は恒温恒湿度試験前後の指数を下式に代入し、その数値にて行った。
【0020】
【数1】
【0021】
(但し、a*,b*,L*は恒温恒湿度試験前の指数、a'*,b'*,L'*は恒温恒湿度試験後の指数)
本実施例の材料においては前記数値が小さく、耐変色性に優れた材料であることが分かる。このことよりファスナー部品として用いた場合、温水による洗濯に際し、変色しにくいものを提供できることが分かる。なお、本試験においてはヨーロッパでの温水による洗濯を基準に行っている。
【0022】
耐時季割れ性は得られた供試材について、冷間圧縮試験により80%の歪を与え、これを12.5%アンモニア溶液を使用して、アンモニア曝露を行った後、表面の割れの発生を観察した。表1中○印は表面に割れが発生しなかったもの、×印は表面に割れが発生したものを表わし、本実施例の材料においては全ての表面に割れが発生していないことが分かる。このことからファスナーのエレメントとして生地へ加締め固定しても、導入された歪と雰囲気、環境によって割れ等の問題が生じにくい材料を提供できることが分かる。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
本発明は、洋白と同等に強度及び硬度に優れ、さらに延性を有し、加工性、耐食性に優れたNiを含まない白色銅合金であり、例えばファスナーのエレメント、スライダー、止具などにあるいはボタン、被服の係止具などの装身用として用いて肌に触れるようなことがあってもNiフリーであるため、アレルギーの心配がなく、又、美しい白色を保っているので、装飾的価値も高い。
Claims (5)
- 一般式:CuaZnbMncAld
ただし、a,b,c,dは質量%で、aは残部、0.5≦b<5,7≦c≦17,0.5≦d≦4で、不可避的不純物を含み得ることを特徴とするニッケルフリー白色銅合金。 - 一般式:CuaZnbMncAldXe
ただし、XはSi,Ti,Crから選ばれる少なくとも1種の元素、a,b,c,d,eは質量%で、aは残部、0.5≦b<5,7≦c≦17,0.5≦d≦4で、0<e≦0.3で、不可避的不純物を含み得ることを特徴とするニッケルフリー白色銅合金。 - b,c,dが、0.5≦b≦4,7≦c≦15,0.5≦d≦2である請求項1又は2記載のニッケルフリー白色銅合金。
- 室温においてα相単相である請求項1,2又は3記載のニッケルフリー白色銅合金。
- 合金の色調に関しJIS Z 8729にて規定される色調を示すa*値、b*値が、0<a*<5、7<b*<15である請求項1,2又は3記載のニッケルフリー白色銅合金。
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