JPWO2012017503A1 - 有機el素子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、有機ELディスプレイパネルの量産プロセスに耐え、かつ、優れたホール注入効率を実現し、低電圧駆動で高い発光効率を持つ有機EL素子を提供する。具体的には基板10の片面に、陽極2、ホール注入層3、バッファ層6A、発光層6B、陰極8を順次積層して有機EL素子1を構成する。ホール注入層3の表面に、前記バッファ層6A以上の構成を取り囲むようにバンク12を形成する。ホール注入層3は酸化タングステン薄膜をスパッタ成膜して形成する。このとき、酸化タングステンをその電子状態において、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりも1.8〜3.6eV低い結合エネルギーの範囲内に占有準位を存在させるように成膜し、前記バッファ層6Aに対するホール注入障壁を低減する。ホール注入層3の上面に凹部4aを形成し、当該凹部の内面を機能層(バッファ層6Aまたは発光層6B)に接触させる。

Description

本発明は、電気的発光素子である有機電界発光素子(以下「有機EL素子」と称する)に関し、特に、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲を低電力で駆動するための技術に関する。
近年、有機半導体を用いた各種機能素子の研究開発が進められている。
代表的な機能素子として、有機EL素子がある。有機EL素子は電流駆動型の発光素子であり、陽極および陰極とからなる一対の電極対の間に、有機材料を含んでなる機能層を設けた構成を有する。機能層には、発光層、バッファ層等が含まれる。機能層と陽極との間には、ホールを注入するためのホール注入層が配設されることがある。駆動には電極対間に電圧を印加し、陽極から機能層に注入されるホールと、陰極から機能層に注入される電子との再結合によって発生する、電界発光現象を利用する。自己発光を行うため視認性が高く、かつ、完全固体素子であるため耐衝撃性に優れるなどの特徴を有することから、各種表示装置における発光素子や光源としての利用が注目されている。
有機EL素子は、使用する機能層材料の種類によって大きく2つの型に分類される。第一に、主として低分子材料を機能層材料とし、これを蒸着法などの真空プロセスで成膜してなる蒸着型有機EL素子である。第二に、高分子材料や薄膜形成性の良い低分子材料を機能層材料とし、これをインクジェット法やグラビア印刷法等のウェットプロセスで成膜してなる塗布型有機EL素子である。
これまでは、発光材料の発光効率が高いことや駆動寿命が長い等の理由により、蒸着型有機EL素子の開発が先行しており(例えば、特許文献1、2参照)、すでに携帯電話用ディスプレイや小型テレビなどで実用化が始まっている。
蒸着型有機EL素子は、小型の有機ELパネル用途には好適であるが、例えば100インチ級のフルカラー大型有機ELパネルに適用することは非常に困難である。その要因は製造技術にある。蒸着型有機EL素子を用いて有機ELパネルを製造する場合、一般に発光層を色ごと(例えばR、G、B)に分けて成膜する際にはマスク蒸着法が用いられる。しかし、パネルが大面積になると、マスクとガラス基板の熱膨張係数の違い等により、マスクの位置合わせ精度を保つことが困難になるため、正常なディスプレイを作製することができない。これらを克服するために、白色の発光層材料を全面に使用し、RGBのカラーフィルタを設けて塗り分けを回避する方法があるが、この場合は取り出せる光が発光量の1/3になるため、原理的に消費電力が増大するという欠点がある。
そこで、この有機ELパネルの大型化については、塗布型有機EL素子を用いて実現しようという試みが始まっている。前述したように、塗布型有機EL素子では、機能層材料をウェットプロセスによって作製する。このプロセスでは機能層を所定位置に塗り分ける際の位置精度が基本的に基板サイズに依存しないため、大型化に対する技術的障壁が低いというメリットがある。
一方、有機EL素子の発光効率を向上させる研究開発も盛んに行われている。有機EL素子を効率よく、低消費電力かつ高輝度で発光させるためには、電極から機能層へキャリア(ホールおよび電子)を効率よく注入することが重要である。一般にキャリアを効率よく注入するためには、それぞれの電極と機能層との間に、注入の際のエネルギー障壁を低くするための注入層を設けるのが有効である。このうちホール注入層としては、銅フタロシアニンや酸化モリブデンをはじめとする蒸着膜や、PEDOTなどの塗布膜が用いられている。中でも酸化モリブデンを用いた有機EL素子においては、ホール注入効率の改善や寿命の改善が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
特許3369615号公報 特許3789991号公報 特開2005−203339公報 特開2003−249375号公報
Jingze Li et al.、 Synthetic Metals 151、 141 (2005) 渡邊寛己 他、有機EL討論会第7回例会予稿集、17 (2008) Hyunbok Lee et al.、 Applied Physics Letters 93、 043308 (2008) 小泉健二 他、第56回応用物理学関係連合講演会予稿集、30p−ZA−11(2009) 中山泰生 他、有機EL討論会第7回例会予稿集、5 (2008)
しかしながら、上記した利点を有する塗布型有機EL素子においては、現状よりも一層良好な低電圧駆動性や発光効率の向上が求められている。特に、塗布型有機EL素子を製造する場合において、ホール注入効率の更なる改善や寿命のより一層の改善が求められている。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであって、ホール注入層と機能層との間のホール注入障壁が低く、優れたホール注入効率を発揮し、これにより良好な低電圧駆動が期待できる有機EL素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置され、有機材料を用いてなる発光層を含む、1または複数の層からなる機能層と、前記陽極と前記機能層との間に配置されたホール注入層と、前記発光層を規定するバンクと、を備え、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位を有し、前記バンクに規定された領域においては前記機能層側の表面の一部が他の部分よりも前記陽極側に位置する凹入構造に形成され、前記凹入構造における凹部の内面が前記機能層に接触している構成とする。
本発明の一態様の有機EL素子では、ホール注入層が酸化タングステンを含んで構成されている。さらに、このホール注入層は、その電子状態において、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位を有するように構成されている。この占有準位が存在することで、ホール注入層と機能層との間のホール注入障壁を小さく抑えることができる。その結果、本発明の一態様の有機EL素子は、ホール注入効率が高く、低電圧で駆動できるとともに、優れた発光効率の発揮を期待することができる。
ところで、ホール注入層が上記した所定の占有準位を有する酸化タングステンで構成されている場合、製造工程においてホール注入層の膜厚が減少する(以下、膜減りとも記載する)という特有かつ新たな問題を生じ、バンクで規定された領域の発光部面内における輝度ばらつきや素子寿命の低下等、発光特性に影響を及ぼすおそれがある。
これに対し、上記した本発明の一態様の有機EL素子では、ホール注入層が、機能層側の表面の一部が他の表面部分よりも陽極側に位置する凹入構造をなすように形成される。さらに、ホール注入層の凹部の内面(底面及び側面)には機能層が接触するように形成される。このため、ホール注入層に対する機能層の濡れ性が向上し、たとえホール注入層が膜減りを生じても、機能層材料の塗布むらを防止して高精細なパターニングにより素子を良好に形成できる。従って、輝度ばらつきや素子寿命の低下等の問題の発生を防止して、発光特性に対する影響の発生を未然に防止することができる。
実施の形態に係る有機EL素子の構成を示す模式的な断面図である。 ホールオンリー素子の構成を示す模式的な断面図である。 ホール注入層の成膜条件に対するホールオンリー素子の駆動電圧の依存性を示すグラフである。 ホールオンリー素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 作製した有機EL素子の印加電圧と電流密度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 作製した有機EL素子の電流密度と発光強度の関係曲線を示すデバイス特性図である。 光電子分光測定用のサンプルの構成を示す模式的な断面図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 図9のUPSスペクトルの微分曲線を示す図である。 大気曝露した酸化タングステンのUPSスペクトルを示す図である。 本発明の酸化タングステンのUPSスペクトルおよびXPSスペクトルを併せて示す図である。 酸化タングステンとα−NPDの界面エネルギーダイアグラムである。 ホール注入層と機能層の注入サイトの効果を説明するための図である。 ホール注入層の膜減り量と膜密度の関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態2に係る発光素子の各層の積層状態を示す模式図である。 図16における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。 変形例に係る発光素子の図16における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。 変形例に係る発光素子の図16における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。 発光層の最適膜厚を説明するための模式図である。 変形例に係る発光素子の図16における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。 本発明の実施の形態2に係る発光素子の製造方法を説明する工程図である。 図22に続く本発明の実施の形態2に係る発光素子の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態3に係る発光素子の各層の積層状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態3に係る発光素子の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態4に係る発光素子の各層の積層状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態4に係る発光素子の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態5に係る表示装置等を示す斜視図である。
本発明の一態様である有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置され、有機材料を用いてなる発光層を含む、1または複数の層からなる機能層と、前記陽極と前記機能層との間に配置されたホール注入層と、前記発光層を規定するバンクと、を備え、前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位を有し、前記バンクに規定された領域においては前記機能層側の表面の一部が他の部分よりも前記陽極側に位置する凹入構造に形成され、前記凹入構造における凹部の内面が前記機能層に接触しているものとする。
また、前記占有準位の存在によって、前記ホール注入層と前記機能層との積層界面において、前記機能層の最高被占軌道の結合エネルギーが前記占有準位の結合エネルギーの近傍に位置づけられていてもよい。
また、前記ホール注入層と前記機能層との積層界面において、前記占有準位の結合エネルギーと前記機能層の最高被占軌道の結合エネルギーの差が±0.3eV以内でもよい。
また、前記ホール注入層は、UPSスペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有していてもよい。
また、前記ホール注入層は、XPSスペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有していてもよい。
また、前記ホール注入層は、UPSスペクトルの微分スペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域に渡り、指数関数とは異なる関数として表される形状を有していてもよい。
また、前記機能層は、アミン系材料を含んでいてもよい。
また、前記機能層は、ホールを輸送するホール輸送層、注入されたホールと電子とが再結合することにより発光する発光層、光学特性の調整または電子ブロックの用途に用いられるバッファ層の少なくともいずれかであってもよい。
また、前記ホール注入層における前記占有準位は、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域内に存在していてもよい。
また、前記バンクは撥液性であり、前記ホール注入層は親液性である構成とすることもできる。ここで「親液性」及び「撥液性」との用語は、相対的な意味で用いている。上記のように、バンクは少なくともその表面が撥液性となっており、一方、電荷注入輸送層は親液性のある金属化合物からなる場合、電荷注入輸送層の表面はバンクの表面よりも親液性であり、バンクの表面は電荷注入輸送層の表面よりも撥液性である。そして、親液性である電荷注入輸送層の表面はインクに対して相対的に濡れ性が良く、撥液性であるバンクの表面はインクに対して相対的に濡れ性が悪い。なお、親液性及び撥液性は、例えば、バンク又は電荷注入輸送層の表面に対するインクの接触角で定義することが可能であり、例えば、接触角が10°以下の場合を親液性、接触角が35°以上の場合を撥液性と定義することができる。
また、本発明の一態様である表示装置は、上記有機EL素子を備えていてもよい。
また、本発明の一態様である有機EL素子の製造方法は、陽極を準備する陽極準備工程と、アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、前記ガスの全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件下で、前記陽極の上方に前記酸化タングステン層を成膜する酸化タングステン層形成工程と、前記酸化タングステン層の上方に、レジスト材料を含むレジスト膜を形成し、現像液によりエッチング処理し、バンクを形成するバンク形成工程と、前記バンクを形成した後、前記酸化タングステン層表面に付着するレジスト残渣を洗浄液を用いて洗浄するとともに、前記洗浄液で前記酸化タングステン層の一部を溶解させ、上面の一部分が上面の他の部分よりも前記陽極側に位置し、内底面と前記内底面に連続する内側面とを備える凹部を有するホール注入層を形成するホール注入層形成工程と、前記バンクにより規定された領域内にインクを滴下し、前記ホール注入層の前記凹部の内面に前記インクを接触するように塗布して乾燥させ、機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層の上方に、陰極を形成する陰極形成工程とを有する。
また、本発明の一態様である有機EL素子の製造方法は、陽極を準備する陽極準備工程と、アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、前記ガスの全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件下で、前記陽極の上方に前記酸化タングステン層を成膜する酸化タングステン層形成工程と、前記酸化タングステン層の上方に、レジスト材料を含むレジスト膜を形成し、現像液によりエッチング処理し、バンクを形成するとともに、前記現像液により前記タングステン層表面に付着するレジスト残渣を洗浄し、且つ、前記洗浄液により前記酸化タングステン層の一部を溶解させ、その上面の一部が上面の他の部分よりも前記陽極側に位置し、内底面と前記内底面に連続する内側面とを備える凹部を有するホール注入層を形成するホール注入層形成工程と、前記バンクにより規定された領域内にインクを滴下し、前記ホール注入層の前記凹部の内面に前記インクを接触するように塗布して乾燥させ、機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層の上方に、陰極を形成する陰極形成工程とを有するものとする。
ここで、「レジスト材料を含むレジスト膜」とは、「バンク材料としてのレジスト材料を含む、バンク膜としてのレジスト膜」を指す。
ここで本発明の一態様である有機EL素子の製造方法では、前記酸化タングステン層を、前記酸化タングステン層形成工程により、UPSスペクトルが、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有するように成膜してもよい。
また、本発明の一態様である有機EL素子の製造方法では、前記酸化タングステン層形成工程により、UPSスペクトルの微分スペクトルが、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域に渡り、指数関数とは異なる関数として表される形状を有するように前記酸化タングステン層を成膜してもよい。
以下、本発明の実施の形態の有機EL素子を説明し、続いて本発明の各性能確認実験の結果と考察を述べる。
なお、各図面における部材縮尺は、実際のものとは異なる。
<実施の形態1>
(有機EL素子の構成)
図1は、本実施の形態における有機EL素子1000の構成を示す模式的な断面図である。
有機EL素子1000は、機能層をウェットプロセスにより塗布して製造する塗布型であって、ホール注入層4と、所定の機能を有する有機材料を含んでなる各種機能層(ここではバッファ層6Aおよび発光層6B)が互いに積層された状態で、陽極2および陰極8からなる電極対の間に介設された構成を有する。
具体的には図1に示すように、有機EL素子1000は、基板1の片側主面に対し、陽極2、ホール注入層4、バッファ層6A、発光層6B、陰極8(バリウム層8Aおよびアルミニウム層8B)とを同順に積層して構成される。
基板1は、例えば、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料を用いて構成される。その一方の表面には所定のTFT配線が形成されている。
陽極2は、例えば、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成することができる。トップエミッション型の発光素子の場合は、光反射性の材料で形成することが好ましい。
(ホール注入層)
ホール注入層4は、厚さ30nmの酸化タングステン薄膜(層)からなる。その組成式(WOx)において、xは概ね2<x<3の範囲における実数である。
ホール注入層4はできるだけ酸化タングステンのみで構成されることが望ましいが、通常レベルで混入し得る程度に、極微量の不純物が含まれていてもよい。
ここで、当該ホール注入層4は特定の成膜条件で成膜されている。これにより、その電子状態において、価電子帯の上端、すなわち価電子帯で最も低い結合エネルギーよりも、1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位が存在している。この占有準位がホール注入層4の最高占有準位に該当し、すなわち、その結合エネルギー範囲はホール注入層4のフェルミ面に最も近い。従って、以降では、この占有準位を「フェルミ面近傍の占有準位」と称する。
このフェルミ面近傍の占有準位が存在することで、ホール注入層4と機能層(ここではバッファ層6A)との積層界面では、いわゆる界面準位接続がなされ、バッファ層6Aの最高被占軌道の結合エネルギーが、ホール注入層4の前記フェルミ面近傍の占有準位の結合エネルギーと、ほぼ等しくなる。
なお、ここで言う「ほぼ等しくなる」および「界面準位接続がなされた」とは、ホール注入層4とバッファ層6Aとの界面において、前記フェルミ面近傍の占有準位で最も低い結合エネルギーと、前記最高被占軌道で最も低い結合エネルギーとの差が、±0.3eV以内の範囲にあることを意味している。
さらに、ここで言う「界面」とは、ホール注入層4の表面と、当該表面から0.3nm以内の距離におけるバッファ層6Aとを含む領域を指す。
また、前記フェルミ面近傍の占有準位は、ホール注入層4の全体に存在することが望ましいが、少なくともバッファ層6Aとの界面に存在すればよい。
(バンク)
ホール注入層4の表面には、絶縁性材料からなるバンク5が、一定の台形断面を持つストライプ構造または井桁構造をなすように形成される。バンク5は、樹脂等の有機材料又はガラス等の無機材料で形成される。有機材料の例には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられ、無機材料の例には、SiO2(シリコンオキサイド)、Si34(シリコンナイトライド)等が挙げられる。バンク5は、有機溶剤耐性を有することが好ましく、また可視光をある適度透過させることが好ましい。さらに、バンク5はエッチング処理、ベーク処理等がされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されることが好ましい。各々のバンク5に区画されたホール注入層4の表面には、バッファ層6Aと、RGBのいずれかの色に対応する発光層6Bからなる機能層が形成されている。図1に示すように、有機EL素子1000を有機ELパネルに適用する場合には、基板1上にRGBの各色に対応する一連の3つの素子1000を1単位(画素、ピクセル)とし、これが複数単位にわたり並設される。
なお、バンク5は本発明に必須の構成ではなく、有機EL素子1000を単体で使用する場合等には不要である。
(バッファ層)
バッファ層6Aは、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFB(poly(9、9−di−n−octylfluorene−alt−(1、4−phenylene−((4−sec−butylphenyl)imino)−1、4−phenylene))で構成される。
(発光層)
発光層6Bは、厚さ70nmの有機高分子であるF8BT(poly(9、9−di−n−octylfluorene−alt−benzothiadiazole))で構成される。しかしながら、発光層6Bはこの材料からなる構成に限定されず、公知の有機材料を含むように構成することが可能である。たとえば特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。発光層6Bが高分子材料からなる層を含む場合は、その層を、例えばインクジェット法、ノズルコート法などの印刷技術によって発光層6Bを形成することができるため、低分子材料を用いた蒸着法に比べ大判化に対して容易に低コスト化に対応できる効果がある。
(機能層)
本発明における機能層は、ホールを輸送するホール輸送層、注入されたホールと電子とが再結合することで発光する発光層、光学特性の調整または電子ブロックの用途に用いられるバッファ層等のいずれか、もしくはそれら2層以上の組み合わせ、または全ての層を指す。本発明はホール注入層を対象としているが、有機EL素子はホール注入層以外に上記したホール輸送層、発光層等のそれぞれ所要機能を果たす層が存在する。機能層とは、本発明の対象とするホール注入層以外の、有機EL素子に必要な層を指している。
(その他電極、基板等)
陰極8は、厚さ5nmのバリウム層8Aと、厚さ100nmのアルミニウム層8Bを積層して構成される。
陽極2および陰極8には電源DCが接続され、外部より有機EL素子1000に給電されるようになっている。
基板1は、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
(有機EL素子の作用および効果)
以上の構成を持つ有機EL素子1000では、ホール注入層4に前記フェルミ面近傍の占有準位が存在することにより、バッファ層6Aとの間のホール注入障壁が小さくなっている。このため、駆動時に有機EL素子1000に電圧を印加すると、ホール注入層4における前記フェルミ面近傍の占有準位から、バッファ層6Aの最高被占軌道に対して、低電圧で比較的スムーズにホールが注入され、高いホール注入効率が発揮される。
なお、酸化タングステンをホール注入層として用いる構成自体については、過去に報告されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この報告で得られた最適なホール注入層の膜厚は0.5nm程度であり、電圧電流特性に及ぼす膜厚依存性も大きく、大型有機ELパネルを量産するだけの実用性は示されていない。さらに、ホール注入層に積極的にフェルミ面近傍の占有準位を形成することも示されていない。本発明は、化学的に比較的安定で、大型有機ELパネルの量産プロセスにも耐える酸化タングステンからなるホール注入層において、所定のフェルミ面近傍の占有準位を存在させ、これにより優れたホール注入効率を得、有機EL素子において低電圧駆動を実現した点で、従来技術と大きく異なるものである。
次に、有機EL素子1000の全体的な製造方法を例示する。
(有機EL素子の製造方法)
まず、基板1をスパッタ成膜装置のチャンバー内に載置する。そしてチャンバー内に所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法に基づき、厚さ50nmのITOからなる陽極2を成膜する。
次に、ホール注入層4を成膜するが、反応性スパッタ法で成膜することが好適である。特に、大面積の成膜が必要な大型有機ELパネルに本発明を適用する場合には、蒸着法等で成膜すると、膜厚等にムラが生じるおそれがある。反応性スパッタ法で成膜すれば、このような成膜ムラの発生の回避は容易である。
具体的には、ターゲットを金属タングステンに交換し、反応性スパッタ法を実施する。スパッタガスとしてアルゴンガス、反応性ガスとして酸素ガスをチャンバー内に導入する。この状態で高電圧によりアルゴンをイオン化し、ターゲットに衝突させる。このとき、スパッタリング現象により放出された金属タングステンが酸素ガスと反応して酸化タングステンとなり、基板1の陽極2上に成膜される。
なお、この成膜条件は後述するように、ガス圧(全圧)が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となるように設定することが好適である。この工程を経ることで、価電子帯で最も低い結合エネルギーから1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位を持つホール注入層4が形成される。
次に、バンク材料として、例えば感光性のレジスト材料、好ましくはフッ素系材料を含有するフォトレジスト材料を用意する。このバンク材料をホール注入層4上に一様に塗布し、プリベークした後、所定形状の開口部(形成すべきバンクのパターン)を持つマスクを重ねる。そして、マスクの上から感光させた後、未硬化の余分なバンク材料を現像液で洗い出す。最後に純水で洗浄することでバンク5が完成する。
ここで、本実施の形態では、ホール注入層4がアルカリ溶液や水、有機溶媒等に対して耐性を持つ酸化タングステンで構成されている。したがって、バンク形成工程において、すでに形成されているホール注入層4が当該溶液や純水等に触れても、溶解、変質、分解等による損傷が抑制される。このようにホール注入層4の形態が維持されることによっても、有機EL素子1000が完成した後には、当該ホール注入層4を介し、バッファ層6Aに効率よくホール注入を行うことができ、低電圧駆動を良好に実現できることとなる。
続いて、隣接するバンク5の間に露出しているホール注入層4の表面に、例えばインクジェット法やグラビア印刷法によるウェットプロセスにより、アミン系有機分子材料を含む組成物インクを滴下し、溶媒を揮発除去させる。これによりバッファ層6Aが形成される。
次に、バッファ層6Aの表面に、同様の方法で、有機発光材料を含む組成物インクを滴下し、溶媒を揮発除去させる。これにより発光層6Bが形成される。
なお、バッファ層6A、発光層6Bの形成方法はこれに限定されず、インクジェット法やグラビア印刷法以外の方法、例えばディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布しても良い。
続いて、発光層6Bの表面に真空蒸着法でバリウム層8A、アルミニウム層8Bを成膜する。これにより陰極8が形成される。
なお、図1には図示しないが、有機EL素子1000が大気に曝されるのを抑制する目的で、陰極8の表面にさらに封止層を設けるか、あるいは素子1000全体を空間的に外部から隔離する封止缶を設けることができる。封止層は例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料で形成でき、素子1000を内部封止するように設ける。封止缶を用いる場合は、封止缶は例えば基板1と同様の材料で形成でき、水分などを吸着するゲッターを密閉空間内に設ける。
以上の工程を経ることで、有機EL素子1000が完成する。
<各種実験と考察>
(酸化タングステンの成膜条件について)
本実施の形態では、ホール注入層4を構成する酸化タングステンを所定の成膜条件で成膜することで、ホール注入層4に前記したフェルミ面近傍の占有準位を存在させ、ホール注入層4とバッファ層6Aとの間のホール注入障壁を低減して、有機EL素子1000を低電圧駆動できるようにしている。
このような性能を得るための酸化タングステンの成膜方法としては、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは金属タングステンとし、基板温度は制御せず、チャンバー内ガスはアルゴンガスと酸素ガスで構成し、ガス圧(全圧)が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力(投入電力密度)が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件に設定して、反応性スパッタ法で成膜することが好適であると考えられる。
上記成膜条件の有効性は以下の諸実験で確認された。
まず、ホール注入層4からバッファ層6Aへのホール注入効率の、成膜条件依存性の評価を確実にするために、評価デバイスとしてホールオンリー素子を作製するものとした。
有機EL素子においては、電流を形成するキャリアはホールと電子の両方であり、したがって有機EL素子の電気特性には、ホール電流以外にも電子電流が反映されている。しかし、ホールオンリー素子では陰極からの電子の注入が阻害されるため、電子電流はほとんど流れず、全電流はほぼホール電流のみから構成され、すなわちキャリアはほぼホールのみと見なせるため、ホール注入効率の評価に好適である。
具体的に作製したホールオンリー素子は、図1の有機EL素子1000における陰極8を、図2に示す陰極9のように金に置き換えたものである。すなわち図2に示すように、基板1上に厚さ50nmのITO薄膜からなる陽極2を形成し、さらに陽極2上に厚さ30nmの酸化タングステンからなるホール注入層4、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFBからなるバッファ層6A、厚さ70nmの有機高分子であるF8BTからなる発光層6B、厚さ100nmの金からなる陰極9を順次積層した構成とした。なお、評価デバイスのため、バンク5は省略した。
この作製工程において、ホール注入層4は、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、反応性スパッタ法で成膜した。チャンバー内ガスは、アルゴンガスおよび酸素ガスの少なくともいずれかから構成し、ターゲットは金属タングステンを用いた。基板温度は制御せず、アルゴンガス分圧、酸素ガス分圧、全圧は各ガスの流量で調節するものとした。成膜条件は以下の表1に示すように、全圧、酸素ガス分圧、および投入電力の各条件を変化させるものとし、これにより各成膜条件で成膜したホール注入層4を備えるホールオンリー素子1000B(素子No.1〜14)を得た。なおこれ以降、酸素ガス分圧は、全圧に対する比(%)として表す。
Figure 2012017503
上記DCマグネトロンスパッタ装置の、投入電力と投入電力密度の関係を表2に示す。
Figure 2012017503
作製した各ホールオンリー素子1000Bを直流電源DCに接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。以降、「駆動電圧」とは、電流密度10mA/cm2のときの印加電圧とする。
この駆動電圧が小さいほど、ホール注入層4のホール注入効率は高いと言える。なぜなら、各ホールオンリー素子1000Bにおいて、ホール注入層4以外の各部位の作製方法は同一であるから、ホール注入層4を除く、隣接する2つの層の間のホール注入障壁は一定と考えられる。また、当該実験で用いた陰極2とホール注入層4は、オーミック接続をしていることが、別の実験により確認されている。したがって、ホール注入層4の成膜条件による駆動電圧の違いは、ホール注入層4からバッファ層6Aへのホール注入効率を強く反映したものになる。
表3は、当該実験によって得られた、各ホールオンリー素子1000Bの、全圧、酸素ガス分圧、投入電力の各成膜条件に対する、駆動電圧の値である。表3中、各ホールオンリー素子1000Bの素子No.は囲み数字で示している。
Figure 2012017503
また、図3の(a)〜(c)は、各ホールオンリー素子1000Bの駆動電圧の成膜条件依存性をまとめたグラフである。図3(a)中の各点は、左から右に向かって、素子No.4、10、2の駆動電圧を表す。図3(b)中の各点は、左から右に向かって、素子No.13、10、1の駆動電圧を表す。さらに図3(c)中の各点は、左から右に向かって、素子No.14、2、8の駆動電圧を表す。
なお当該実験では、全圧が2.7Paで酸素ガス分圧が100%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が30%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が70%の場合、全圧が4.8Paで酸素ガス分圧が100%の場合は、いずれもガス流量などのスパッタ装置の制約で成膜を行えなかった。
まず、駆動電圧の全圧依存性は、図3(a)からわかるように、酸素ガス分圧50%、投入電力500Wの条件下では、少なくとも全圧が2.7Pa超4.8Pa以下の範囲において、駆動電圧の明確な低減が確認できた。この傾向は、少なくとも全圧が7.0Pa以下の範囲まで続くことが別の実験により分かった。したがって、全圧は2.7Pa超7.0Pa以下の範囲に設定することが望ましいと言える。
次に、駆動電圧の酸素ガス分圧依存性は、図3(b)からわかるように、全圧2.7Pa、投入電力500Wの条件下では、少なくとも酸素ガス分圧が50%以上70%以下の範囲において、酸素ガス分圧の上昇とともに駆動電圧の低下が確認できた。ただし、これ以上に酸素ガス分圧が上昇すると、別の実験により逆に駆動電圧の上昇が確認された。したがって、酸素ガス分圧は50%以上で上限を70%程度に抑えることが望ましいと言える。
次に、駆動電圧の投入電力依存性は、図3(c)からわかるように、全圧4.8Pa、酸素ガス分圧50%の条件下では、投入電力が500W超で、急激に駆動電圧が上昇することが確認された。したがって、投入電力は500W以下に抑えるのが望ましいと考えられる。なお、表3の素子No.1、3を見ると、投入電力が500Wであっても、全圧が2.7Pa以下であれば、駆動電圧が上昇するという結果が確認できる。
次に、各ホールオンリー素子1000Bのうち、代表して素子No.14、1、7の電流密度―印加電圧曲線を図4に示した。図中縦軸は電流密度(mA/cm2)、横軸は印加電圧(V)である。素子No.14は、上記した全圧、酸素ガス分圧、投入電力の望ましい条件をすべて満たしている。一方、素子No.1、7は、上記望ましい条件を一部満たしていない。
ここで、以降の説明のために、ホール注入層4(および後述の酸化タングステン層80)の成膜条件に関しては、素子No.14の成膜条件を成膜条件A、素子No.1の成膜条件を成膜条件B、素子No.7の成膜条件を成膜条件Cと呼ぶことにする。また、それに倣い、図4および表3では、素子No.14をHOD−A、素子No.1をHOD−B、素子No.7をHOD−Cとも記述した。
図4に示されるように、HOD−AはHOD−B、HOD−Cと比較して、最も電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、また最も低い印加電圧で高い電流密度が得られている。すなわち、HOD−AはHOD−B、HOD−Cと比較し、ホール注入効率が優れていることが明快である。なお、HOD−Aは、各ホールオンリー素子1000Bの中で最も駆動電圧が低い素子である。
以上は、ホールオンリー素子1000Bにおけるホール注入層4のホール注入効率に関する検証であったが、ホールオンリー素子1000Bは、陰極以外はまったく図1の有機EL素子1000と同一の構成である。したがって、有機EL素子1000においても、ホール注入層4からバッファ層6Aへのホール注入効率の成膜条件依存性は、本質的にホールオンリー素子1000Bと同じである。このことを確認するために、成膜条件A、B、Cのホール注入層4を用いた各有機EL素子1000を作製した。
具体的に作製した各有機EL素子1000は、図1に示すように、基板1上に厚さ50nmのITO薄膜からなる陽極2を形成し、さらに陽極2上に厚さ30nmの酸化タングステンからなるホール注入層4、厚さ20nmのアミン系有機高分子であるTFBからなるバッファ層6A、厚さ70nmの有機高分子であるF8BTからなる発光層6B、厚さ5nmのバリウムおよび厚さ100nmのアルミニウムからなる陰極8を順次積層した構成とした。なお、評価デバイスのため、バンク5は省略した。
作製した成膜条件A、B、Cの各有機EL素子1000を直流電源DCに接続し、電圧を印加した。このときの印加電圧と、各々の電圧値に応じて流れた電流値について、素子の単位面積当たりの値に換算したときの関係を表す、電流密度―印加電圧曲線を図5に示した。図中縦軸は電流密度(mA/cm2)、横軸は印加電圧(V)である。
なお、以降の説明のために、図5では、成膜条件Aの有機EL素子1000をBPD−A、成膜条件Bの有機EL素子1000をBPD−B、成膜条件Cの有機EL素子1000をBPD−Cと記述した。
図5に示されるように、BPD−AはBPD−B、BPD−Cと比較して、最も電流密度―印加電圧曲線の立ち上がりが早く、また最も低い印加電圧で高い電流密度が得られている。これは、それぞれ同じ成膜条件のホールオンリー素子であるHOD−A、HOD−B、HOD−Cと同様の傾向である。
さらに、上記作製した各有機EL素子1000について、電流密度の変化に応じた発光強度の関係を表す、発光強度―電流密度曲線を図6に示した。図中、縦軸は発光強度(cd/A)、横軸は電流密度(mA/cm2)である。この図6によれば、少なくとも測定した電流密度の範囲では、BPD−Aが最も発光強度が高いことが確認された。
以上の結果により、ホール注入層4のホール注入効率の成膜条件依存性が、有機EL素子1000においても、ホールオンリー素子1000Bの場合と同様に作用していることが確認された。すなわち、当該実験の有機EL素子1000において、ホール注入層4を構成する酸化タングステンを、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは金属タングステンとし、基板温度は制御せず、チャンバー内ガスはアルゴンガスと酸素ガスで構成し、全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらに投入電力密度が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件下で、反応性スパッタ法で成膜すると、ホール注入層4からバッファ層6Aへのホール注入効率が良く、それにより優れた低電圧駆動と高い発光効率が実現されることが確認された。
なお、上記においては、投入電力の条件は、表2をもとに改めて投入電力密度で表した。本実験で用いたDCマグネトロンスパッタ装置とは異なるDCマグネトロンスパッタ装置を用いる場合は、ターゲットのサイズに合わせて、投入電力密度が上記条件になるように投入電力を調節することにより、本実験と同様に、優れたホール注入効率の酸化タングステンからなるホール注入層4を得ることが出来る。なお、全圧、酸素分圧については、装置やターゲットのサイズに依存しない。
また、ホール注入層4の反応性スパッタ法による成膜時は、室温環境下に配置されるスパッタ装置において、基板温度を意図的には設定していない。したがって、少なくとも成膜前は基板温度は室温である。ただし、成膜中に基板温度は数10℃程度上昇する可能性がある。
なお、成膜条件Aでホール注入層4を作製した有機EL素子1000が、本実施の形態の有機EL素子1000であり、前記したフェルミ面近傍の占有準位を持つ。これについては、以降で考察する。
(ホール注入層の電子状態について)
本実施の形態の有機EL素子1000のホール注入層4を構成する酸化タングステンには、前記フェルミ面近傍の占有準位が存在している。このフェルミ面近傍の占有準位は、先の実験で示した成膜条件の調整により形成されるものである。詳細を以下に述べる。
前述の成膜条件A、B、Cで成膜した酸化タングステンにおける、前記フェルミ面近傍の占有準位の存在を確認する実験を行った。
各成膜条件で、光電子分光測定用のサンプルを作製した。当該サンプルの構成としては、図7に示す1Aのように、導電性シリコン基板70の上に、厚さ10nmの酸化タングステン層80(ホール注入層4に該当する)を、前記の反応性スパッタ法により成膜した。以降、成膜条件Aのサンプル1AをサンプルA、成膜条件Bのサンプル1AをサンプルB、成膜条件Cのサンプル1AをサンプルCと記述する。
サンプルA、B、Cは、いずれもスパッタ装置内において酸化タングステン層80を成膜した後、当該スパッタ装置に連結され窒素ガスが充填されたグローブボックス内に移送し、大気曝露しない状態を保った。そして、当該グローブボックス内でトランスファーベッセルに封入し、光電子分光装置に装着した。これにより、酸化タングステン層80を成膜後に大気曝露することなく、紫外光電子分光(UPS)測定を実施した。
ここで、一般にUPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、価電子帯などの占有準位の状態を反映したものになる。そこで本実験では、UPSを用いて酸化タングステン層80の表層における占有準位の状態を観察するものとした。
UPS測定条件は以下の通りである。なお、サンプルA、B、Cでは導電性シリコン基板70を用いたため、測定中チャージアップは発生しなかった。測定点間隔は0.05eVとした。
光源 :He I線
バイアス:なし
出射角 :基板法線方向
図8に、サンプルAの酸化タングステン層80のUPSスペクトルを示す。横軸の結合エネルギーの原点は基板70のフェルミ面とし、左方向を正の向きとした。
以下、図8を用いて、酸化タングステン層80の各占有準位について説明する。
一般に酸化タングステンが示すUPSスペクトルにおいて、最も大きく急峻な立ち上がりは一意に定まる。この立ち上がりの変曲点を通る接線を線(i)、その横軸との交点を点(iii)とする。これにより、酸化タングステンのUPSスペクトルは、点(iii)から高結合エネルギー側に位置する領域(x)と、低結合エネルギー側(すなわちフェルミ面側)に位置する領域(y)に分けられる。
ここで、以下の表4に示した酸化タングステン層80の組成比によれば、サンプルA、B、Cとも、タングステン原子と酸素原子の数の比率がほぼ1:3である。なお、この組成比は、X線光電子分光(XPS)により求めた。具体的には、当該光電子分光装置を用い、前記UPS測定と同様に、酸化タングステン層80を大気曝露することなくXPS測定し、酸化タングステン層80の表面から深さ数nmまでにおけるタングステンと酸素の組成比を見積もった。なお、表4には、酸化タングステン層80の成膜条件も併記してある。
Figure 2012017503
この組成比から、サンプルA、B、Cのいずれにおいても、酸化タングステン層80は少なくとも表面から深さ数nm以内の範囲において、三酸化タングステンを基本とする原子配置、つまり酸素原子がタングステン原子に対し8面体配位で結合した、歪んだルチル構造(8面体が互いに頂点の酸素原子を共有する構造)を基本構造に持つと考えられる。したがって、図8における領域(x)は、三酸化タングステン結晶、あるいはその結晶の秩序が乱れた(ただし結合は切れておらず、上記基本構造が保たれている)非晶質が持つ、上記基本構造に由来する占有準位であり、いわゆる価電子帯に対応する領域である。なお、本願発明者は酸化タングステン層80のX線吸収微細構造(XAFS)測定を行い、サンプルA、B、Cのいずれにおいても、上記基本構造が形成されていることを確認した。
したがって、図8における領域(y)は、価電子帯と伝導帯の間のバンドギャップに対応するが、本UPSスペクトルが示すように、酸化タングステンにはこの領域にも、価電子帯とは別の占有準位が存在することがあることが知られている。これは上記基本構造とは異なる別の構造に由来する準位であり、いわゆるバンドギャップ間準位(in−gap stateあるいはgap state)である。
続いて図9に、サンプルA、B、Cにおける各酸化タングステン層80の、領域(y)におけるUPSスペクトルを示す。図9に示すスペクトルの強度は、図8における点(iii)よりも3〜4eVほど高結合エネルギー側に位置するピーク(ii)のピークトップの値で規格化した。図9にも図8の点(iii)と同じ横軸位置に点(iii)を示している。横軸は点(iii)を基準とした相対値(相対結合エネルギー)として表し、左から右(フェルミ面側)に向かって結合エネルギーが低くなるように示している。
図9に示されるように、サンプルAの酸化タングステン層80では、点(iii)からおおよそ3.6eV低い結合エネルギーの位置から、点(iii)からおおよそ1.8eV低い結合エネルギーの位置までの領域に、ピークの存在が確認できる。このピークの明瞭な立ち上がり位置を図中に点(iv)で示した。このようなピークは、サンプルB、Cでは確認できない。
本発明はこのように、UPSスペクトルにおいて点(iii)から1.8〜3.6eV程度低い結合エネルギーの領域内に隆起(ピークとは限らない)した構造を持つ酸化タングステンを、ホール注入層として用いることにより、有機EL素子において優れたホール注入効率が発揮できるようになっている。
ここで、当該隆起の程度が急峻であるほど、ホール注入効率が高くなることが分かっている。したがって、図9に示すように、点(iii)から2.0〜3.2eV程度低い結合エネルギーの領域は、比較的当該隆起構造を確認しやすく、かつ、その隆起が比較的急峻である領域として、特に重要であると言える。
なお、以降、UPSスペクトルにおける当該隆起構造を、「フェルミ面近傍の隆起構造」と称する。このフェルミ面近傍の隆起構造に対応する占有準位が、前記した「フェルミ面近傍の占有準位」である。
次に、上記フェルミ面近傍の隆起構造をより明確にするために、図9に示したサンプルA、B、CのUPSスペクトルにおける規格化強度の微分を計算した。
具体的には、グラフ解析ソフトウェアIGOR Pro 6.0を用い、図9に示すUPSスペクトルについて2項スムージング(スムージングファクターは1とした)を11回行い、その後に中心差分法による微分処理を行った。これはUPS測定時のバックグラウンドノイズなどのばらつき要因を平滑化し、微分曲線をスムーズにし、下記の議論を明快にするためである。
この処理により得られた微分曲線を図10に示した。図10中の点(iii)、(iv)は図9と同一の横軸位置である。
図10に示す微分曲線によれば、サンプルB、Cの酸化タングステン層80では、光電子分光装置で測定可能な結合エネルギーから点(iv)に至るまでの領域(v)においては、微分値は0付近をほぼ前後するのみであり、さらに点(iv)から高結合エネルギー側におおよそ1.2eVまでの領域(vi)では、微分値は高結合エネルギー側に向かって、ほぼその増加率を増しながら漸増していくのみである。そして、この領域(v)、(vi)におけるサンプルB、Cの各微分曲線の形状は、当該各微分曲線の元である図9に示したサンプルB、CのUPSスペクトルとほぼ相似である。したがって、サンプルB、Cの領域(v)、(vi)におけるUPSスペクトルとその微分曲線の形状は、指数関数的な形状であると言える。
一方、サンプルAの酸化タングステン層80では、点(iv)付近から点(iii)に向かって急な立ち上がりを見せており、領域(v)、(vi)における微分曲線の形状は指数関数的な曲線の形状とは明らかに異なっている。このようなサンプルAについては、図9の微分前のスペクトルにおいても、点(iv)付近から隆起し始め、また指数関数的なスペクトル形状とは異なる、フェルミ面近傍の隆起構造を持つことが確認できる。
このようなサンプルAの特性は、言い換えると、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりおおよそ1.8〜3.6eV低い範囲内にフェルミ面近傍の占有準位が存在し、特に、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりおおよそ2.0〜3.2eV低い範囲内にて、対応するフェルミ面近傍の隆起構造が、UPSスペクトルで明瞭に確認できるものである。
次に、成膜後大気曝露せずに図9のUPSスペクトルを測定したサンプルA、B、Cの酸化タングステン層80に対し、常温にて大気曝露を1時間行った。そして、再びUPS測定を行い、これによるスペクトルの変化を確認した。その前記領域(y)におけるUPSスペクトルを図11に示す。横軸の取り方は図9と同様であり、図中の点(iii)、(iv)は図9と同一の横軸位置である。
図11に示したUPSスペクトルによれば、サンプルB、Cの酸化タングステン層80では、大気曝露前と同様にフェルミ面近傍の隆起構造は存在しない。これに対し、サンプルAの酸化タングステン層80では、大気曝露後には強度やスペクトル形状に変化はみられるものの、依然としてフェルミ面近傍の隆起構造が存在することが確認できる。これにより、サンプルAについては、一定時間大気曝露を行っても、大気曝露前の特性が維持でき、周辺雰囲気に対して一定の安定性を有することがわかる。
以上では、サンプルA、B、Cについて測定したUPSスペクトルに対して議論を行ったが、上記フェルミ面近傍の隆起構造は、XPSや硬X線光電子分光測定でも同様に確認することができる。
図12は、サンプルAの酸化タングステン層80の、前記大気曝露後のXPSスペクトルである。なお、比較のため、サンプルAの酸化タングステン層80のUPSスペクトル(図8と同一のもの)を重ね書きした。
XPS測定条件は、光源がAl Kα線であること以外は、前述のUPS測定条件と同様である。図12において、図中の点(iii)は図8と同一の横軸位置であり、横軸は図9と同様に、点(iii)を基準とした相対結合エネルギーで示している。また、XPSスペクトルにおける図8の(i)に該当する線を、図12中で(i)’で示した。
図12に示すように、サンプルAの酸化タングステン層80におけるフェルミ面近傍の隆起構造は、XPSスペクトルにおいても、UPSスペクトルの場合と同様に、価電子帯で最も低い結合エネルギーよりもおおよそ1.8〜3.6eV低い範囲内にて、相当の大きさの隆起構造として、存在を明確に確認することができる。なお、別の実験により、硬X線光電子分光でも同様にフェルミ面近傍の隆起構造が確認できた。
なお、上記測定においては、光電子分光測定用のサンプルとして、図1に示す有機EL素子1000の構造とは別に、導電性シリコン基板70の上に酸化タングステン層80を形成してなるサンプル1A(図7)を用いた。これは単に、測定中のチャージアップを防ぐための措置であり、本発明の有機EL素子の構造を当該構成に限定するものではない。
本願発明者が行った別の実験によれば、図1に示す有機EL素子1000の構成(基板1の片面にITOからなる陽極2、および酸化タングステンからなるホール注入層4を、順次形成した構成)を有するサンプルを用い、UPS、XPS測定を行った場合は、測定中にチャージアップが発生した。
しかしながら、チャージアップをキャンセルする中和銃を併用すれば、ホール注入層4の各占有準位の示す結合エネルギーの絶対値(例えば、光電子分光装置自体のフェルミ面を原点とするときの結合エネルギーの値)は、サンプル1Aの酸化タングステン層80のものとは異なることがあるものの、少なくともバンドギャップから価電子帯で最も低い結合エネルギーに至る範囲においては、サンプル1Aと同様の形状のスペクトルが得られている。
(ホール注入効率に関する考察)
酸化タングステンからなるホール注入層において、UPSスペクトル等でフェルミ面近傍の隆起構造として確認できるフェルミ面近傍の占有準位が、ホール注入効率に作用する原理は、以下のように考えることができる。
酸化タングステンの薄膜や結晶に見られる、前記フェルミ面近傍の占有準位は、酸素欠陥やその類似の構造に由来することが、実験および第一原理計算の結果から多数報告されている。
具体的には、酸素原子の欠乏により形成される隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合軌道や、酸素原子に終端されることなく膜表面や膜内に存在するタングステン原子単体の5d軌道に由来するものと推測されている。これらの5d軌道は、半占あるいは非占状態であれば、有機分子と接触したとき、相互のエネルギー安定化のために、有機分子の最高被占軌道から電子を引き抜くことが可能であると推測される。
実際、酸化タングステンと、触媒作用やエレクトロクロミズム、フォトクロミズムなど、多くの共通した物性を持つ酸化モリブデンにおいては、その薄膜上に有機低分子のα−NPDからなる層を積層すると、α−NPD分子から酸化モリブデン薄膜に電子が移動するとの報告がある(非特許文献2参照)。
なお、本願発明者は、酸化タングステンにおいては、隣接したタングステン原子の5d軌道同士の結合軌道よりも結合エネルギーが低い、タングステン原子単体の半占5d軌道あるいはそれに類似した構造が、フェルミ面近傍の占有準位に該当するものと考える。
図13は、本発明のフェルミ面近傍の占有準位を持つ酸化タングステン層と、α−NPD層との界面における、エネルギーダイアグラムである。
図13中では、まず、当該酸化タングステン層(ホール注入層に該当する)における、価電子帯で最も低い結合エネルギー(図中「価電子帯上端」と表記した)と、フェルミ面近傍の占有準位の立ち上がり位置の結合エネルギー(図中「in−gap state上端」と表記した)を示している。UPSスペクトルにおいては、価電子帯上端は図8の点(iii)に該当し、in−gap state上端は図9の点(iv)に該当する。
そして、さらに当該酸化タングステン層の上に、α−NPD(機能層に該当する)を積層したときの、α−NPD層の厚さと、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギー、また真空準位との関係も示している。ここで、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギーとは、UPSスペクトルにおける、当該最高被占軌道によるピークの立ち上がり位置の結合エネルギーである。
具体的には、ITO基板上に成膜した当該酸化タングステン層を、光電子分光装置と当該装置に連結された超高真空蒸着装置との間で基板を往復させながら、UPS測定とα−NPDの超高真空蒸着とを繰り返すことで、図13のエネルギーダイアグラムを得た。UPS測定中にチャージアップは確認されなかったので、図13では、縦軸の結合エネルギーをITO基板のフェルミ面を原点とした絶対値表記にしている。
図13から、α−NPD層の厚さが少なくとも0〜0.3nmの範囲、つまり当該酸化タングステン層とα−NPD層との界面付近においては、当該酸化タングステン層のin−gap state上端と、α−NPDの最高被占軌道の結合エネルギーはほぼ等しく、言わば互いの準位が接続した状態になっていることがわかる(以降、これを「界面準位接続」と称す)。なお、ここで言う「等しい」とは、実際上多少の差を含んでおり、具体的には±0.3eV以内の範囲を指す。
さらに、図13は、前記界面準位接続が、偶然によるものではなく、酸化タングステンとα−NPDとの相互作用により実現しているものであることを示している。
例えば、界面における真空準位の変化(真空準位シフト)は、その変化の向きから、界面に電気二重層が、酸化タングステン層側を負、α−NPD層側を正として形成されていることを示す。また、その真空準位シフトの大きさが2eV近くと非常に大きいため、電気二重層は化学結合に類する作用により形成されたと考えるのが妥当である。すなわち、前記界面準位接続は、酸化タングステンとα−NPDとの相互作用により実現していると考えるべきである。
本願発明者は、具体的な相互作用として、以下のメカニズムを推察している。
まず、フェルミ面近傍の占有準位は、上述のとおり、タングステン原子の5d軌道に由来するものである。これを、以下「隆起構造のW5d軌道」と称する。
当該酸化タングステン層の表面において、隆起構造のW5d軌道に、α−NPD分子の最高被占軌道が近づくと、相互のエネルギー安定化のために、α−NPD分子の最高被占軌道から、隆起構造のW5d軌道に電子が移動する。これにより、界面に電気二重層が形成され、真空準位シフト、界面準位接続が起こる。
さらに具体的には、α−NPD分子の最高被占軌道は、その確率密度がアミン構造の窒素原子に偏って分布しており、当該窒素原子の非共有電子対を主成分として構成されていることが、第一原理計算による結果として多数報告されている。このことから、当該酸化タングステン層と、アミン系有機分子の層との界面においては、アミン構造の窒素原子の非共有電子対から、隆起構造のW5d軌道に電子が移動すると推察される。
上記の推察を支持するものとしては、前述のように酸化タングステンと共通の物性を持つ酸化モリブデンの蒸着膜と、アミン系有機分子であるNPB、α−NPD、F8BTとの各界面において、図13で示した酸化タングステン層とα−NPD層の界面準位接続と同様の界面準位接続の報告がある(非特許文献3、4、5参照)。
本発明の有機EL素子のホール注入層が持つ、優れたホール注入効率は、以上の界面準位接続により説明することができる。すなわち、フェルミ面近傍の占有準位を持つ酸化タングステンからなるホール注入層と、隣接した機能層との間で、界面準位接続が起こり、フェルミ面近傍の占有準位の立ち上がり位置の結合エネルギーと、機能層の最高被占軌道の結合エネルギーがほぼ等しくなる。ホール注入は、この接続された準位間で起こる。したがって、機能層の最高被占軌道にホール注入するときのホール注入障壁は、ほぼ無に等しい。
しかしながら、フェルミ面近傍の占有準位を形成する要因である酸素欠陥やその類似の構造がまったく無い酸化タングステンというものが、現実に存在するとは考えにくい。例えば、前述のサンプルB、C等、光電子分光スペクトルにおけるフェルミ面近傍の隆起構造がない酸化タングステンにおいても、酸素欠陥やその類似の構造が、極めてわずかにでも存在はしていると考えるのが妥当である。
これに対し、先の実験が示すように、サンプルAの酸化タングステン層80に該当するホール注入層4を持つホールオンリー素子HOD−Aおよび有機EL素子BPD−Aが優れたホール注入効率を示す理由を、図14を用いて説明する。
酸化タングステン層に機能層を積層するとき、機能層を構成する有機分子の最高被占軌道と、酸化タングステン層のフェルミ面近傍の占有準位とが相互作用するには、界面において、有機分子において最高被占軌道の確率密度が高い部位(例えば、アミン系有機分子におけるアミン構造の窒素原子。図中「注入サイト(y)」で示す)と、酸化タングステン層の酸素欠陥やその類似の構造(図中「注入サイト(x)」で示す)が、相互作用する距離まで接近(接触)する必要がある。
しかし、図14(b)に示すように、前述のサンプルB、C等、フェルミ面近傍の隆起構造が存在しない酸化タングステン層には、注入サイト(x)が存在するとしても、その数密度は、UPSスペクトルにおいてフェルミ面近傍の隆起構造を発現するまでに至らないほど小さい。したがって、注入サイト(y)が注入サイト(x)と接触する可能性が非常に低い。注入サイト(x)と注入サイト(y)が接触するところにおいてホールが注入されるのであるから、サンプルB、Cはその効率が極めて悪いことがわかる。
これに対し、図14(a)に示すように、前述のサンプルA等、フェルミ面近傍の隆起構造を持つ酸化タングステン層には、注入サイト(y)が豊富に存在する。したがって、注入サイト(y)が注入サイト(x)と接触する可能性が高く、ホール注入効率が高いことがわかる。
以上をまとめると、本発明の有機EL素子が優れたホール注入効率を持つことは、次のように説明できる。
まず、酸化タングステンからなるホール注入層が、その光電子分光スペクトルにおいてフェルミ面近傍の隆起構造を持つ。これは、酸素欠陥やその類似の構造が、その表面に少なからず存在することを意味する。
そして、フェルミ面近傍の占有準位自体は、隣接する機能層を構成する有機分子から電子を奪うことで、有機分子の最高被占軌道と界面準位接続する作用を持つ。
したがって、ホール注入層の表面に、少なからず酸素欠陥やその類似の構造がすれば、フェルミ面近傍の占有準位と、有機分子の最高被占軌道の確率密度が高い部位とが接触する確率が高く、界面準位接続作用が効率的に起こり、優れたホール注入効率が発現することになる。
(ホール注入層の膜減りについて)
本願発明者らは、バンク形成工程を経た有機EL素子の特性を確認するため、上記した評価デバイス(バンク5を省略した構造)とは別に、新たにバンク5を追加した有機EL素子1000(図1)を作製して実験を行った。その結果、上記評価デバイスのように低電圧駆動が可能であり、発光特性が良好に向上することを確認した。
ここで本願発明者らは、作製した有機EL素子を確認したところ、ホール注入層の厚みが当該層を形成した直後に比べて薄くなっている(以下、「膜減り」と記載する。)ことを見出した。本願発明者らは、このホール注入層の膜減りがバンク形成工程にて発生しているものと推測した。そこでホール注入層の膜減り現象を究明するため、さらに以下の確認実験を行った。
具体的手法として、まずガラス基板上にホール注入層となる酸化タングステンからなる層を、スパッタリングにより成膜した(成膜条件はホールオンリー素子と同一条件とした)。そして、このホール注入層の上に、所定の樹脂材料(東京応化工業株式会社製「TFR」シリーズ)からなる樹脂材料層を、スピンコート法に基づき積層し(室温、2500rpm/25sec)、ベーク処理(100℃、90sec)を経て作製した。次に、現像処理(TMAH2.38%溶液使用、現像時間60sec)及び洗浄処理(純水使用、洗浄時間60sec)を行った。その後、樹脂材料層を剥離した。この樹脂材料層の配設と現像処理、洗浄処理は、実際のバンク形成工程を想定したものである。
この実験条件と結果を表5に示す。また、表5中の膜密度と膜減り量の関係を示すグラフを図15に示す。
Figure 2012017503
表5の実験結果に示すように、ホール注入層である酸化タングステン層は、成膜直後の膜厚(80nm)に対し、最終的に23nm程度の膜厚になった。これにより、実に約57nm程度の膜厚分に至る酸化タングステン層が膜減りにより消失したことが確認された(特性が最良であるサンプルAを参照)。
また図15に示すように、酸化タングステン層の膜減り量と膜密度の間には相当の因果関係が存在し、膜密度が低いほど膜減り量が大きいことが分かった。
この理由は、現時点において必ずしも明確ではないが、表4、5と図15のグラフより、酸化タングステン層は、発光特性等の膜特性が良好なほど膜密度が低いことが分かっている。なお本願発明者らが行った別の検討によって、酸化タングステン層は層中に酸素欠陥に由来する構造を有することにより膜密度が低下し、良好なホール注入性が得られるため、素子の低電圧駆動を実現できるものと推測することができる。
また、本願発明者らが酸化タングステン層の膜減り原因を調べたところ、現像処理または洗浄処理において使用する溶剤により、酸化タングステン層が溶解して発生することを突き止めた。上記のように酸化タングステン層が酸素欠陥に由来する構造を持つと膜密度が低下するが、これは層内に微小な結晶構造が多数形成されるためであると思われる。このように微小な結晶構造の多数形成により、バンクを形成する際の成膜プロセスにおいて用いられる溶剤(現像液、洗浄液等)が酸化タングステン層中に浸入しやすくなり、これに起因して膜減りを発生するものと考えられる。
ところで一般的には、上記のような膜減りを生じると酸化タングステン層の膜厚が管理しづらくなり、また、素子完成後のホール注入特性に何らかの影響があると懸念される。このため、仮にこのようなホール注入層の膜減りの発生を当業者が知得することとなった場合には、酸化タングステンを用いてホール注入層を構成することに躊躇すると想定される。
しかしながら本願発明者らは、あえてこの点を鋭意検討した末、例えば現像条件の変更(現像液濃度を2.38%から0.2%前後まで低下させる)、またはベーク条件の変更を適切に行うことで、酸化タングステン層の膜減り量を調節できることを見出した。これにより、膜減りを考慮した酸化タングステン層の膜厚制御が可能となる。そこで本願発明者らは、このホール注入層の膜減り量の調節に係る技術を拠り所とし、さらに現実的な発光素子の試作について検討を進め、以下の技術的事項を確認するに至った。
発光素子の試作の手順として、まず陽極上に酸化タングステンを含むホール注入層を成膜した。このホール注入層上にバンク材料層を積層し、その後、バンク材料層を、機能層を形成するための開口部を有する所定の形状にパターニングした(このとき露光、現像、洗浄の各処理を実施する)。その後、前記開口部に対応する位置に機能層を成膜する。機能層上に陰極を形成した。
この方法で得られた素子の構造を確認したところ、ホール注入層の前記開口部に対応する領域において、酸化タングステンが溶解してなる窪みが形成され、これによってホール注入層は全体として凹入構造を有するように構成されていることを確認した。
ここで、ホール注入層における凹部の内底面と内側面により囲まれる隅部に着眼し、機能層を構成するインク材料を凹部の隅部を含む内面に対して塗布することにより、機能層の濡れ性が向上し、良好な機能層が形成できるであろうとの知見を得た。
そこで本願発明者らは次の実施の形態に示すように、バンクに規定された領域においては、機能層側の表面を凹入構造に形成するとともに、当該凹入構造内の凹部の内面が機能層に接触する構成に着想したものである。
次に、本発明の別の実施の形態について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
<実施の形態2>
(発光素子の概略構成)
図16は、実施の形態2に係る発光素子1000Cの各層の積層状態を示す模式図であり、図17は、図16における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図16に示すように、実施の形態2に係る発光素子1000Cは、RGBの各ピクセルがマトリックス状又はライン状に配置されてなるトップエミッション型の有機EL素子であり、各ピクセルは基板1上に各層を積層した積層構造となっている。
実施の形態1の素子1000との違いとして、発光素子1000Cでは、陽極(陽極2)の上面に、ITO層3を介してホール注入層4を配設している。またバッファー層6Aは省略し、発光層6Bの上に電子注入層7、陰極8の上に封止層9を配設している。
基板1上には、陽極2がマトリックス状又はライン状に形成されており、陽極2上に、ITO(酸化インジウムスズ)層3及び、電荷注入輸送層としてのホール注入層4がその順で積層されている。なお、ITO層3が陽極2上にのみ積層されているのに対し、ホール注入層4は陽極2の上方だけでなく基板1の上面側全体に亘って形成されている。
ホール注入層4上には、ピクセルを規定するバンク5が形成されており、バンク5で規定された領域内に発光層6Bが積層されている。さらに、発光層6Bの上には、電子注入層7、陰極8、及び封止層9が、それぞれバンク5で規定された領域を超えて隣のピクセルのものと連続するように形成されている。
バンク5で規定された領域は、ITO層3、ホール注入層4、発光層6B、及び電子注入層7がその順で積層された多層積層構造となっており、それらの積層構造で機能層が構成されている。なお、機能層にはホール輸送層や電子輸送層等の他の層が含まれていても良い。
(発光素子の各部構成)
陽極2は、ここでは単層構造としており、Ag(銀)で形成されている。なお、陽極2は、例えば、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成されていても良い。トップエミッション型の発光素子の場合は、光反射性の材料で形成されていることが好ましい。
ITO層3は、陽極2及びホール注入層4の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
ホール注入層4は、実施の形態1のものと同様であり、良好なホール注入特性を得ることのできる成膜条件により成膜された、酸化タングステン(WOx)層で構成されている。この材料を用いて構成されたホール注入層4は、バンク5の表面と比較して親液性を有することができる。
(ホール注入層について)
ここで図17に示すように、ホール注入層4は、バンク5の底面に沿って隣のピクセル方向に拡がっていると共に、バンク5で規定された領域においてはバンク5底面のレベルよりも沈下した凹入構造に形成されており、所定の溶剤により溶解されて形成された凹部4a(図17において網目のハッチングで示す部分)を備える。そして、ホール注入層4は、バンク5で規定された領域だけが他の領域と比べて膜厚が薄くなっており、前記他の領域の膜厚は全体に亘って略均一である。ホール注入層4が親液性を有する金属化合物からなるため、凹部4aの内面4bはインクに対して濡れ性が良い。したがって、バンク5で規定された領域に滴下されたインクが凹部4aの内面4bに密着しやすく、インクがバンク5で規定された領域に留まりやすい。
なお、ホール注入層4は、少なくともバンク5の底面における端縁部5aのレベルよりも沈下した凹入構造であれば良く、底面全体のレベルよりも沈下した凹入構造である必要はない。本実施の形態では、底面における端縁部5aのレベルより沈下しているが、底面における中央部5bのレベルより沈下していない凹入構造となっているが、例えば、図17に二点鎖線5cで示すように、中央部5bのバンクの底面のレベルを端縁部5aに揃え、バンク5の底面を平坦にする等して、バンク5の底面全体のレベルより沈下した凹入構造としても良い。
ホール注入層4は、バンクの下端縁5d相当部位から沈下した凹入構造であって、具体的には、ホール注入層4の上面におけるバンク5に規定された領域が下端縁5d相当部位から基板1の上面に対して略垂直下方に沈下している。このように、バンク5の下端縁5d相当部位から沈下した凹入構造である場合は、発光層6Bの膜厚を広範囲に亘って均一にすることができ、発光層6Bに輝度むらが生じにくい。
なお、ホール注入層4は、バンク5の下端縁5d相当部位から沈下した凹入構造に限らず、例えば、図18に示すように、バンク5の下端縁5d相当部位よりも隣のピクセル側に寄った部位から沈下した構造としても良い。さらに、バンク5の下端縁5d相当部位よりもピクセル中央側に寄った部位から沈下した凹入構造であっても良く、その場合は凹部4aの輪郭が図18に二点鎖線10で示すような形状になる。
さらに、ホール注入層4の凹入構造はカップ状であって、より具体的には、凹部4aの内面4bが、基板1の上面と略平行且つ平坦であって発光層6Bの底面6aに接触する内底面4cと、当該内底面4cの端縁から基板1の上面と略垂直な方向に向けて延びており、前記発光層6Bの側面6bに接触する内側面4dとで構成されている。このように、凹入構造がカップ状である場合は、内側面4dの存在によって凹部4a内のインクが基板1の上面と平行な方向へ移動しにくくなるため、バンク5で規定された領域にインクをより安定にとどめておくことができる。しかも、凹入構造をカップ状にすると、凹部4aの内面4bの面積が大きくなり、インクとホール注入層4との密着する面積が大きくなるため、バンク5で規定された領域にインクをより安定にとどめておくことができる。したがって、発光層6Bの高精細なパターニングが可能である。
なお、ホール注入層4の凹入構造はカップ状に限定されず、図19に示すように、例えば凹部4aの断面形状(図19において網目のハッチングで示す部分)が略扇形又は略逆三角形等となる皿状であっても良い。
図17に戻って、凹部4aの平均深さtは本願発明では特に特定されるものではないが、例えば5〜100nmとすることができる。凹部4aの平均深さtが5nm以上であれば、凹部4a内に十分な量のインクを溜めることができ、バンク5で規定された領域にインクを安定に留めることができる。さらに、バンク5端部まで発光層6Bがはじかれることなく形成されるため、電極2、8間のショートを防ぐことができる。
なお、凹部4aの平均深さtは、触針式段差計もしくはAFM(原子間力顕微鏡)にてホール注入層4の表面輪郭を測定し、当該表面輪郭から山となる部分の平均高さと谷となる部分の平均高さとの差を求めて、得ることができる。
一方、発光層6Bの膜厚は特に特定されるものではないが、例えば発光層6Bの乾燥後の平均膜厚hが100nm以上の場合において凹部4aの平均深さtが100nm以下であれば、バンク5で規定された領域における発光層6Bの膜厚を均一にすることができる。
さらに、発光層6Bの平均膜厚hと凹部4aの平均深さtとの差は20nm以下であることが好ましい。発光層6Bの平均膜厚hが凹部4aの平均深さtよりも小さ過ぎる場合は(例えば、t−h>20nmの場合は)、図20(a)に示すように、凹部4aの内側面4dに発光層6Bと接触していない部分(発光層6Bが未塗布の部分)が生じ、その部分において電極2、8間のショートが発生するおそれがある。また、発光層6Bの平均膜厚hが凹部4aの平均深さtよりも大き過ぎる場合は(例えば、h−t>20nmの場合は)、図20(b)に示すように、バンク5の撥液性により発光層6Bのバンク近傍部分6cの膜厚が他の部分よりも薄くなり、当該発光層6Bの断面形状が略凸形となって、膜厚の違いに起因する発光むらが生じるおそれがある。
なお、凹部4aの内側面4dは発光層6Bの側面6bの少なくとも一部に接触していれば良い。例えば、図17や図20(b)に示すように発光層6Bの平均膜厚hが凹部4aの平均深さtよりも大きい、若しくは、それらが同じ大きさである場合は、前記発光層6Bの側面6bの少なくとも一部である下方側にだけ前記凹部4aの内側面4dが接触する。一方、図20(a)に示すように発光層6Bの平均膜厚hが凹部4aの平均深さtよりも小さい場合は、前記発光層6Bの側面6bの全体に前記凹部4aの内側面4dが接触する。
図21に示すように、ホール注入層4の凹部4a内には、例えばIL層(中間層)などの親液性層12が、発光層6Bの下側に形成されていても良い。この場合は、凹部4aの内底面4cではなく親液性層12の上面12aにインクが滴下されることになるが、それでも前記上面12aが親液性であるため、バンク5で規定された領域にインクを安定にとどめることができる。但し、親液性層12によって凹部4aが完全に埋まってしまうと前記凹部4aの内側面4dがインクと接触しなくなってしまうため、前記親液性層12の平均膜厚gは凹部4aの平均深さtよりも薄いことが好ましい。
なお、ホール輸送層12は、厚み10nm〜20nm程度の層であって、ホール注入層4から注入された正孔(ホール)を有機発光層6B内へ輸送する機能を有する。ホール輸送層12としては、ホール輸送性の有機材料を用いる。正孔輸送性の有機材料とは、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を有する有機物質である。これは、p−型の有機半導体と呼ばれることもある。
ホール輸送層12は、高分子材料でも低分子材料であってもよいが、湿式印刷法で製膜される。上層である有機発光層6Bを形成する際に、これに溶出しにくいよう、架橋剤を含むことが好ましい。正孔輸送性の材料の例としてはフルオレン部位とトリアリールアミン部位を含む共重合体や低分子量のトリアリールアミン誘導体を用いることが出来る。架橋剤の例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いることができる。この場合、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)や、その誘導体(共重合体など)で形成されていることが好適である。
バンク5は、樹脂等の有機材料又はガラス等の無機材料で形成されており絶縁性を有する。有機材料の例には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられ、無機材料の例には、SiO2(シリコンオキサイド)、Si34(シリコンナイトライド)等が挙げられる。バンク5は、有機溶剤耐性を有することが好ましく、また可視光をある適度透過させることが好ましい。さらに、バンク5はエッチング処理、ベーク処理等がされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されることが好ましい。
バンク5は、少なくとも表面が撥液性である。したがって、バンク5を親液性の材料で形成する場合は、撥水処理を施す等して表面を撥液性にする必要がある。
また、バンク5は、ピクセルバンクであっても、ラインバンクであっても良い。ピクセルバンクの場合、ピクセルごと発光層6Bの全周を囲繞するようにバンク5が形成される。一方、ラインバンクの場合、複数のピクセルを列ごと又は行ごとに区切るようにバンク5が形成され、バンク5は発光層6Bの行方向両側又は列方向両側だけに存在し、発光層6Bは同列又は同行のものが連続した構成となる。
電子注入層7は、陰極8から注入された電子を発光層6Bへ輸送する機能を有し、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、これらの組み合わせ等で形成されることが好ましい。
陰極8は、ここでは例えばITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)等を用いて単層構造で形成される。トップエミッション型の発光素子の場合は、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
封止層9は、発光層6B等が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料で形成される。トップエミッション型の発光素子の場合は、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
<発光素子1000Cの製造方法>
図22は、実施の形態2に係る発光素子1000Cの製造方法を説明する工程図であり、図23は、図22に続く発光素子1000Cの製造方法を説明する工程図である。
発光素子1000Cの製造工程では、まず、図22(a)に示すように、ガラス製の基板1上に例えばスパッタリングによりAg薄膜を形成し、当該Ag薄膜を例えばフォトリソグラフィでパターニングすることによりマトリックス状又はライン状に陽極2を形成する。なお、Ag薄膜は真空蒸着等で形成しても良い。
次に、図22(b)に示すように、例えばスパッタリングによりITO薄膜を形成し、当該ITO薄膜を例えばフォトリソグラフィによりパターニングすることによりITO層3を形成する。
続いて、所定の溶剤に対して溶解可能である金属化合物を含む薄膜11を形成する。例えば、WOx又はMoWOxを含む組成物を用いて、真空蒸着法、スパッタ法などによって、基板1の上面側全体に亘って均一な膜厚となるように、WOx又はMoWOxの薄膜11を形成する。
次に、図22(c)に示すように、例えばフォトリソグラフィ法によって各ピクセル領域(陽極2が配置された領域)を取り囲むようにバンク5を形成する。その場合、例えば、薄膜11上に塗布等により、バンク材料としてのレジスト材料を含む、バンク膜としてのレジスト膜(例えば樹脂膜)を形成し、さらに当該レジスト膜上にレジストパターンを形成し、その後現像液によりエッチング処理してレジスト膜の所望の部位を除去しバンク5のパターンを形成する。なお、バンク5を無機物材料で形成する場合は、例えばCVD法等を用いる。エッチング後に残った薄膜11の表面に付着するレジスト残渣は、例えばフッ酸等で除去する。さらに、必要に応じてバンク5の表面に撥液処理を施す。
次に、図22(d)に示すように、薄膜11の一部を溶かして凹部4aを形成しホール注入層4とする。これにより、ホール注入層4は、バンク5で規定された領域だけが他の領域よりも膜厚が薄い構成となる。凹部4aの形成は、例えば、レジスト残渣除去後のバンク5表面に残留するフッ酸等の不純物を純水で洗浄する純水洗浄の際に、その純水で薄膜11上面におけるバンク5で規定された領域を溶かすことによって行う。その場合、所定の溶剤とは純水であり、凹部4aの深さ及び形状は純水洗浄の条件を変えることにより適宜調整可能である。
具体的な方法としては、例えば、スピンコーターで基板1を回転させておき、回転中の基板1上に純水(例えば室温)を垂らして洗浄する。その後、基板1を回転させ続けながら純水を垂らすのを止めて水を切る。この場合、純水を垂らす時間により凹部4aの深さ及び形状を調節可能である。また、薄膜11の溶解速度は純水の温度によっても変わるため、純水の温度によって凹部4aの深さ及び形状を調節することも可能である。
凹部4aの形成方法は上記に限定されない。例えば、バンク5を形成後、薄膜11の表面に付着するレジスト残渣を純水等の洗浄液を用いて洗浄すると共に、前記洗浄液により前記薄膜11の一部を溶解させて凹部4aを形成しても良い。その場合、所定の溶剤とは洗浄液である。また、現像液によりレジスト膜をエッチング処理しバンク5を形成すると共に、前記現像液により薄膜11の表面に付着するレジスト残渣を洗浄し、かつ、前記薄膜11の一部を溶解させて凹部4aを形成しても良い。その場合、現像液が所定の溶剤である。
バンク形成処理の際に用いられる洗浄液や現像液などの溶剤を用いて薄膜11を溶解させホール注入層4を形成する場合は、凹部4aを形成するために別途に所定の溶剤を用いる必要がなく、また、前記凹部4aを形成するための追加の工程を実施する必要もないため、生産効率が良い。
なお、凹部4aの形成は上記所定の溶剤を用いる場合に限定されず、例えば、まず、スパッタとフォトリソを用いて陽極2が配置された領域を除いた全ての領域にWOx又はMoWOxの薄膜を形成し、その上から全ての領域にWOx又はMoWOxの薄膜を形成することによって、陽極2が配置された領域に凹型のホール注入層4を形成する等他の方法で行っても良い。
次に、図23(e)に示すように、バンク5で規定された領域内に例えばインクジェット法によりインクを滴下し、そのインクをホール注入層4の内底面4cおよび内側面4dに沿って塗布して乾燥させて発光層6Bを形成する。なお、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等によりインクを滴下しても良い。
次に、図23(f)に示すように、例えば真空蒸着により電子注入層7となるバリウム薄膜を形成し、図23(g)に示すように、例えばスパッタリングにより陰極8となるITO薄膜を形成し、図23(h)に示すように、さらに封止層9を形成する。
<実施の形態3>
実施の形態3に係る発光素子1000Dは、ホール注入層の下にITO層が形成されていない点、及び、ホール注入層の上に保護膜が形成される点が、実施の形態2に係る発光素子1000Cとは大きく異なる。以下では、実施の形態2と異なる点について重点的に説明し、実施の形態2と同様の点ついては重複を避けるため説明を簡略若しくは省略する。
(発光素子1000Dの構成)
図24は発光素子1000Dの各層の積層状態を示す模式図である。図24に示すように発光素子1000Dは、基板101上に陽極である陽極102が形成されており、その上に電荷注入輸送層としてのホール注入層104及び保護層110がその順で積層されている。なお、ホール注入層104が基板101の上面側全体に亘って形成されているのに対し、保護層110は陽極102の上方には形成されていない。また、陽極102とホール注入層104との間にITO層は介在していない。
ホール注入層104上にはピクセルを区画するバンク105が形成されており、バンク105で区画された領域内に発光層106Bが積層され、発光層106Bの上には、電子注入層107、陰極である陰極108及び封止層109が、それぞれバンク105で区画された領域を超えて隣のピクセルのものと連続するように形成されている。
(発光素子の製造方法)
図25は発光素子1000Dの製造方法を説明する工程図である。発光素子1000Dの製造工程では、まず、図25(a)に示すように、ガラス製の基板101上にAl(アルミニウム)系の材料で陽極102を形成し、その上に、後にホール注入層104となるWOx又はMoWOxの薄膜111を形成し、さらにその上に、後に保護層110となるWOx又はMoWOxの薄膜112を形成する。当該薄膜112はバンク105形成時のエッチングの際にホール注入層104を保護する機能を有する。
次に、図25(b)に示すように、薄膜112上にバンク105を形成する。具体的には、薄膜112上にレジスト材料を含むレジスト膜を形成し、さらに当該樹脂膜上にレジストパターンを形成し、その後現像液によりエッチング処理してレジスト膜の所望の部位を除去し、バンク105のパターンを形成する。なお、形成後のバンク105表面に残ったフッ酸等の不純物は純水等の洗浄液で洗浄し除去するが、その洗浄液によって薄膜112の上面におけるバンク105で規定された領域が溶けて沈下する。
さらに、図25(c)に示すように、洗浄液による処理を続けると、薄膜112のバンク105で規定された領域の全てが溶けて保護層110の状態になる。そして、薄膜112が溶けたことによって薄膜111が露出するため、当該薄膜111の上面におけるバンク105で規定された領域が溶けて沈下し、凹部104aが形成される。このようにしてホール注入層104が形成される。
次に、図25(d)に示すように、バンク105で規定された領域内に発光層106Bを形成する。その後の工程は実施の形態2に係る工程と同じであるため省略する。
<実施の形態4>
実施の形態4に係る発光素子1000Eは、ホール注入層が形成されている領域が、実施の形態3に係る発光素子1000Dとは大きく異なる。以下では、実施の形態3と異なる点について重点的に説明し、実施の形態3と同様の点ついては重複を避けるため説明を簡略若しくは省略する。
(発光素子の構成)
図26は発光素子1000Eの各層の積層状態を示す模式図である。図26に示すように発光素子1000Eは、基板201上に陽極である陽極202が形成されており、その上に電荷注入輸送層としてのホール注入層204及び保護層210がその順で積層されている。ホール注入層204は、基板1の上面全体に亘って形成されておらず、陽極202上及び当該陽極202の周辺部のみに形成されている。一方、保護層210は陽極202の上方には形成されていない。
ホール注入層204上にはピクセルを区画するバンク205が形成されており、バンク205で区画された領域内に発光層206Bが積層され、発光層206Bの上には、電子注入層207、陰極である陰極208及び封止層209が、それぞれバンク205で区画された領域を超えて隣のピクセルのものと連続するように形成されている。
(発光素子の製造方法)
図27は発光素子1000Eの製造方法を説明する工程図である。発光素子1000Eの製造工程では、まず、図27(a)に示すように、ガラス製の基板101上にAl系の材料で陽極102を形成し、次に、陽極102の露出面(上面及び側面)を酸化させることによってホール注入層204となる酸化膜211を形成し、さらにその上に、後に保護層210となるWOx又はMoWOxの薄膜212を形成する。
次に、図27(b)に示すように、薄膜212上にバンク205を形成する。バンク205表面に残ったフッ酸等の不純物は純水等の洗浄液で洗浄し除去するが、その洗浄液によって薄膜212上面のバンク205で規定された領域が溶けて沈下する。
さらに、図27(c)に示すように、洗浄液による処理を続けると、薄膜212はバンク205で規定された領域が全て溶けて最終形態である保護層210の状態になる。また、薄膜212が溶けたことによって酸化膜211のバンク205で規定された領域が露出するため、その領域の上面も溶けて沈下し、凹部204aが形成される。このようにしてホール注入層204が形成される。
次に、図27(d)に示すように、バンク205で規定された領域内に発光層206Bを形成する。その後の工程は実施の形態2に係る工程と同じであるため省略する。
<実施の形態5>
図28は、実施の形態5に係る表示装置等を示す斜視図である。図28に示すように、本発明の一態様に係る表示装置300は、R、G、又はBの光を出射する各ピクセルが行方向及び列方向にマトリックス状に規則的に配置されてなる有機ELディスプレイであって、各ピクセルが本発明の一態様に係る発光素子で構成されている。
(変形例)
以上、本実施の形態に係る発光素子、表示装置、および発光素子の製造方法を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明の一態様に係る発光素子、表示装置、および発光素子の製造方法は、上記の実施の形態に限定されない。
また、発光素子は、トップエミッション型に限定されず、ボトムエミッション型であっても良い。
<その他の事項>
本明細書において言及する占有準位とは、少なくとも1つの電子によって占められた電子軌道による電子準位、いわゆる半占軌道の準位を内含するものとする。
本発明の有機EL素子は、素子単独で用いる構成に限定されない。複数の有機EL素子を画素として基板上に集積することにより有機ELパネルを構成することもできる。このような有機ELディスプレイは、各々の素子における各層の膜厚を適切に設定することにより実施可能である。
本発明の有機EL素子は、携帯電話用のディスプレイやテレビなどの表示素子、各種光源などに利用可能である。いずれの用途においても、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で低電圧駆動される有機EL素子として適用できる。このような高性能により、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ、照明光源等として、幅広い利用が可能である。
1 TFT基板
2、102、202 陽極
3 ITO(インジウム酸化スズ)層
4、104、204 ホール注入層(酸化タングステン層)
4a 凹部
4c 凹部の内底面
4d 凹部の内側面
5、105、205 バンク
5a バンクの底面
5c バンクの底面のレベル
5d バンクの下端縁
6A バッファ層
6B、106B、206B 発光層
6a 発光層の底面
6b 発光層の側面
7 電子注入層
8、108、208 陰極
8A バリウム層
8B アルミニウム層
9 封止層
10 基板
70 導電性シリコン基板
80 酸化タングステン層
300 表示装置
1000、1000C〜1000E 有機EL素子
1000A 光電子分光測定用サンプル
1000B ホールオンリー素子

Claims (15)

  1. 陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に配置され、有機材料を用いてなる発光層を含む、1または複数の層からなる機能層と、
    前記陽極と前記機能層との間に配置されたホール注入層と、
    前記発光層を規定するバンクと、を備え、
    前記ホール注入層は、酸化タングステンを含み、
    価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に占有準位を有し、
    前記バンクに規定された領域においては前記機能層側の表面の一部が他の部分よりも前記陽極側に位置する凹入構造に形成され、
    前記凹入構造における凹部の内面が前記機能層に接触している
    有機EL素子。
  2. 前記占有準位の存在によって、前記ホール注入層と前記機能層との積層界面において、前記機能層の最高被占軌道の結合エネルギーが前記占有準位の結合エネルギーの近傍に位置づけられている
    請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記ホール注入層と前記機能層との積層界面において、前記占有準位の結合エネルギーと前記機能層の最高被占軌道の結合エネルギーの差が±0.3eV以内である
    請求項1に記載の有機EL素子。
  4. 前記ホール注入層は、UPSスペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有する
    請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL素子。
  5. 前記ホール注入層は、XPSスペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有する
    請求項1〜4のいずれかに記載の有機EL素子。
  6. 前記ホール注入層は、UPSスペクトルの微分スペクトルにおいて、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域に渡り、指数関数とは異なる関数として表される形状を有する
    請求項1〜5のいずれかに記載の有機EL素子。
  7. 前記機能層は、アミン系材料を含んでいる
    請求項1〜6のいずれかに記載の有機EL素子。
  8. 前記機能層は、ホールを輸送するホール輸送層、注入されたホールと電子とが再結合することにより発光する発光層、光学特性の調整または電子ブロックの用途に用いられるバッファ層の少なくともいずれかである
    請求項1〜7のいずれかに記載の有機EL素子。
  9. 前記ホール注入層における前記占有準位は、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域内に存在している
    請求項1〜8のいずれかに記載の有機EL素子。
  10. 前記バンクは撥液性であり、前記ホール注入層は親液性である
    請求項1に記載の有機EL素子。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の有機EL素子を備える表示装置。
  12. 陽極を準備する陽極準備工程と、
    アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、前記ガスの全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件下で、前記陽極の上方に前記酸化タングステン層を成膜する酸化タングステン層形成工程と、
    前記酸化タングステン層の上方に、レジスト材料を含むレジスト膜を形成し、現像液によりエッチング処理し、バンクを形成するバンク形成工程と、
    前記バンクを形成した後、前記酸化タングステン層表面に付着するレジスト残渣を洗浄液を用いて洗浄するとともに、前記洗浄液で前記酸化タングステン層の一部を溶解させ、上面の一部分が上面の他の部分よりも前記陽極側に位置し、内底面と前記内底面に連続する内側面とを備える凹部を有するホール注入層を形成するホール注入層形成工程と、
    前記バンクにより規定された領域内にインクを滴下し、前記ホール注入層の前記凹部の内面に前記インクを接触するように塗布して乾燥させ、機能層を形成する機能層形成工程と、
    前記機能層の上方に、陰極を形成する陰極形成工程と、
    を有する有機EL素子の製造方法。
  13. 陽極を準備する陽極準備工程と、
    アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、前記ガスの全圧が2.7Pa超7.0Pa以下であり、かつ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50%以上70%以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1W/cm2以上2.8W/cm2以下となる成膜条件下で、前記陽極の上方に前記酸化タングステン層を成膜する酸化タングステン層形成工程と、
    前記酸化タングステン層の上方に、レジスト材料を含むレジスト膜を形成し、現像液によりエッチング処理し、バンクを形成するとともに、前記現像液により前記タングステン層表面に付着するレジスト残渣を洗浄し、且つ、前記洗浄液により前記酸化タングステン層の一部を溶解させ、その上面の一部が上面の他の部分よりも前記陽極側に位置し、内底面と前記内底面に連続する内側面とを備える凹部を有するホール注入層を形成するホール注入層形成工程と、
    前記バンクにより規定された領域内にインクを滴下し、前記ホール注入層の前記凹部の内面に前記インクを接触するように塗布して乾燥させ、機能層を形成する機能層形成工程と、
    前記機能層の上方に、陰極を形成する陰極形成工程と、
    を有する有機EL素子の製造方法。
  14. 前記酸化タングステン層形成工程では、前記酸化タングステン層を、UPSスペクトルが、価電子帯で最も低い結合エネルギーより1.8〜3.6eV低い結合エネルギー領域内に、隆起した形状を有するように成膜する
    請求項12記載の有機EL素子の製造方法。
  15. 前記酸化タングステン層形成工程では、UPSスペクトルの微分スペクトルが、価電子帯で最も低い結合エネルギーより2.0〜3.2eV低い結合エネルギー領域に渡り、指数関数とは異なる関数として表される形状を有するように前記酸化タングステン層を成膜する、
    請求項12記載の有機EL素子の製造方法。
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