JPH06299118A - コーティング用組成物及びコーティング方法 - Google Patents

コーティング用組成物及びコーティング方法

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JPH06299118A
JPH06299118A JP5093275A JP9327593A JPH06299118A JP H06299118 A JPH06299118 A JP H06299118A JP 5093275 A JP5093275 A JP 5093275A JP 9327593 A JP9327593 A JP 9327593A JP H06299118 A JPH06299118 A JP H06299118A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低温(150〜350℃)焼成により、又は
焼成なしで、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れ、クラッ
クのない緻密な塗膜を与えるコーティング用組成物と、
その施工法を提供すること。 【構成】 数平均分子量100〜5万のポリシラザンと
ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ル
テニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アル
ミニウムを含む金属カルボン酸塩を反応して得られる金
属カルボン酸塩/ポリシラザンの原子比が0.0000
01〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万
の金属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物を含有する
コーティング用組成物。この組成物を基板に塗布後、5
0℃以上で焼成すると耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れ
たSi−N−O−M−又はSi−N−O−C−M(Mは
上記金属元素)系のセラミックス膜が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、変性ポリシラザンを必
須成分とし、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れた被覆膜
を形成できるコーティング用組成物、及びこれを用いた
コーティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高度の耐熱、耐摩耗、耐食性を得るため
には、有機系塗料では不十分であり、セラミックス系コ
ーティングが用いられる。従来、セラミックス系コーテ
ィングの形成方法としては、PVD(スパッタ法等)、
CVD、ゾルーゲル法、ポリチタノカルボシラン系塗
料、ポリ(ジシル)シラザン系塗料、ポリシラザン系塗
料、ポリメタロシラザン系塗料などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の如きセラミック
ス系コーティング法が知られているが、いずれも問題が
ある。すなわち、PVD,CVD法では装置が高価であ
る。ゾルーゲル法では、必要焼成温度が500℃以上と
高い。ポリチタノカルボシラン系塗料では低温焼成(4
00℃以下)における表面強度が不十分である。ポリ
(ジシル)シラザン系重合体を用いたものは、施工に難
があり、クラックが発生する。ポリシラザン、ポリメタ
ロシラザンコーティングでは、200〜500℃で焼成
できるが、300℃未満の焼成では膜質が必ずしも良好
でない。
【0004】そこで、本発明は、上記の如き従来技術に
おける問題を解決し、低温(50℃〜350℃)焼成に
より、または焼成せずに50℃未満の温度で保持するこ
とにより、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れ、クラック
のない緻密な塗膜を与えるコーティング用組成物とその
施工法を提供すること、特に、低温焼成という特長によ
り、従来不可能であった、電子部品、プラスチック等へ
のコーティングを可能とすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために鋭意検討した結果、ポリシラザン
と、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、
鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウ
ム、アルミニウムの群から選択される少なくとも一種の
金属を含む金属カルボン酸塩を反応させることにより、
該反応物の塗膜を空気中で焼成する際の硬化反応が促進
され、従来よりも低い焼成温度で良好な被覆が形成され
ることを見出した。
【0006】こうして、本発明によれば、主として一般
式(I):
【0007】
【化2】
【0008】(但し、R1 ,R2 ,R3 はそれぞれ独立
に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキ
ル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ素に直
結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキル
アミノ基、アルコキシ基を表わす。ただし、R1
2 ,R3 のうち少なくとも1つは水素原子である。)
で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分子量
が100〜5万のポリシラザンとニッケル、チタン、白
金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウ
ム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群から選
択される少なくとも一種の金属を含む金属カルボン酸塩
を反応させて得られる、金属カルボン酸塩/ポリシラザ
ン重量比が0.000001〜2の範囲内かつ数平均分
子量が約200〜50万の金属カルボン酸塩とポリシラ
ザンの反応物を少なくとも含有するコーティング用組成
物が提供される。
【0009】本発明で用いる金属カルボン酸塩とポリシ
ラザンの反応物の数平均分子量は200〜50万、好ま
しくは500〜10,000の範囲内である。本発明に
用いる金属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物を製造
する方法は、ポリシラザンと金属カルボン酸塩を無溶媒
または溶媒中で、かつ反応に対して不活性な雰囲気下で
反応させることからなる。
【0010】用いるポリシラザンは、分子内に少なくと
もSi−H結合、あるいはN−H結合を有するポリシラ
ザンであればよく、ポリシラザン単独は勿論のこと、ポ
リシラザンと他のポリマーとの共重合体やポリシラザン
と他の化合物との混合物でも利用できる。用いるポリシ
ラザンには、鎖状、環状、あるいは架橋構造を有するも
の、あるいは分子内にこれら複数の構造を同時に有する
ものがあり、これら単独でもあるいは混合物でも利用で
きる。
【0011】用いるポリシラザンの代表例としては下記
のようなものがあるが、これらに現定されるものではな
い。一般式(I)でR1 ,R2 、及びR3 に水素原子を
有するものは、ペルヒドロポリシラザンであり、その製
造法は例えば特開昭60−145903号公報、D.S
eyferthらCommunication of
Am.Cer.Soc.,C−13,January
1983.に報告されている。これらの方法で得られる
ものは、種々の構造を有するポリマーの混合物である
が、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含み、
【0012】
【化3】
【0013】の化学的で表わすことができる。ペルヒド
ロポリシラザンの構造の一例を示すと下記の如くであ
る。
【0014】
【化4】
【0015】一般式(I)でR1 及びR2 に水素原子、
3 にメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、
D.SeyferthらPolym.Prepr.,A
m.Chem.Soc.,Div.Polym.Che
m,.25,10(1984)に報告されている。この
方法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−
(SiH2 NCH3 )−の鎖状ポリマーと環状ポリマー
であり、いずれも架橋構造をもたない。
【0016】一般式(I)でR1 及びR3 に水素原子、
2 に有機基を有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン
の製造法は、D.SeyferthらPolym.Pr
epr.,Am.Chem.Soc.,Div.Pol
ym.Chem.,25,10(1984)、特開昭6
1−89230号公報に報告されている。これらの方法
により得られるポリシラザンには、−(R2 SiHN
H)−繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の
環状構造を有するものや(R3 SiHNH)x〔(R2
SiH)1.5 N〕1-x (0.4<x<1)の化学式で示
せる分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するものが
ある。
【0017】一般式(I)でR1 に水素原子、R2 及び
3 に有機基を有するポリシラザン、またR1 及びR2
に有機基、R3 に水素原子を有するものは−(R1 2
SiNR3 )−を繰り返し単位として、主に重合度が3
〜5の環状構造を有している。次に用いるポリシラザン
の内、一般式(I)以外のものの代表例をあげる。
【0018】ポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの中に
は、D.SeyferthらCommunicatio
n of Am.Cer.Soc.,C−132,Ju
ly1984.が報告されている様な分子内に架橋構造
を有するものもある。一例を示すと下記の如くである。
【0019】
【化5】
【0020】また、特開昭49−69717号に報告さ
れている様なR1 SiX3 (X:ハロゲン)のアンモニ
ア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラザン
(R 1 Si(NH)x)、あるいはR1 SiX3 及びR
2 2 SiX2 の共アンモニア分解によって得られる下記
の構造を有するポリシラザンも出発材料として用いるこ
とができる。
【0021】
【化6】
【0022】用いるポリシラザンは、上記の如く一般式
(I)で表わされる単位からなる主骨格を有するが、一
般式(I)で表わされる単位は、上記にも明らかな如く
環状化することがあり、その場合にはその環状部分が末
端基となり、このような環状化がされない場合には、主
骨格の末端はR1 ,R2 ,R3 と同様の基又は水素であ
ることができる。
【0023】用いるポリシラザンの分子量に特に制約は
なく、入手可能なものを用いることができるが、金属カ
ルボン酸塩との反応性の点で、式(I)におけるR1
2、及びR3 は立体障害の小さい基が好ましい。即
ち、R1 ,R2 及びR3 としては水素原子及びC1 〜C
5 のアルキル基が好ましく、水素原子及びC1 〜C2
アルキル基がさらに好ましい。
【0024】用いる金属カルボン酸塩は、式(RCO
O)n M〔式中、Rは脂肪族基または脂環基で炭素数1
〜22のものを表わし、MはNi,Ti,Pt,Rh,
Co,Fe,Ru,Os,Pd,Ir,Alからなる群
より選択される少なくとも1種の金属を表わし、nはM
の原子価である。〕で表わされる化合物である。また、
金属カルボン酸塩は無水物でも水和物でもよい。
【0025】ポリシラザンと金属カルボン酸塩との混合
比は、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比が0.0
00001から2になるように、好ましくは0.001
から1になるように、さらに好ましくは0.01から
0.5になる様に加える。金属カルボン酸塩の添加量を
これより増やすとポリシラザンの分子量が上がり過ぎて
ゲル化し、また、少ないと十分な効果が得られない。
【0026】反応は、無溶媒で行なうこともできるが、
有機溶媒を使用する時に比べて、反応制御が難しく、ゲ
ル状物質が生成する場合もあるので、一般に有機溶媒を
用いた方が良い。溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪
族炭化水素、脂環式炭化水素の炭化水素溶媒、ハロゲン
化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環式エーテル類、芳香
族アミン類が使用できる。好ましい溶媒としては、例え
ばベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロ
ロホルム、n−ヘキサン、エチルエーテル、テトラヒド
ロフラン、ピリジン、メチルピリジン等があり、特に好
ましい溶媒としてはキシレン、ピリジン、メチルピリジ
ン等があげられる。また反応に対して不活性な雰囲気、
例えば、窒素、アルゴン等の雰囲気中において反応を行
なうことが好ましいが、空気中のような酸化性雰囲気中
でも可能である。
【0027】反応温度は広い範囲にわたって変更するこ
とができ、例えば有機溶媒を使用する場合には、その有
機溶媒の沸点以下の温度に加熱してもよいが、数平均分
子量の高い固体を得るには、引続き有機溶媒の沸点以上
に加熱して有機溶媒を留去させて反応を行なうこともで
きる。反応温度は、一般に150℃以下にするのが好ま
しい。
【0028】反応時間は特に重要ではないが、通常、1
〜50時間程度である。反応は一般に常圧付近で行なう
のが好ましい。本発明において、前記の金属カルボン酸
塩とポリシラザンの反応物を用いてコーティング用組成
物を調製するには、通常金属カルボン酸塩とポリシラザ
ンの反応物を溶剤に溶解させればよい。
【0029】溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭
化水素、芳香族炭化水素の炭化水素溶媒、ハロゲン化メ
タン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン等のハロ
ゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等の
エーテル類が使用できる。好ましい溶媒は、塩化メチレ
ン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エ
チレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラク
ロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、
イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチル
エーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、ジメ
チルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピ
ラン等のエーテル類、ペンタンヘキサン、イソヘキサ
ン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタ
ン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペン
タン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素
等である。
【0030】これらの溶剤を使用する場合、前記の金属
カルボン酸塩とポリシラザンの反応物の溶解度や溶剤の
蒸発速度を調節するために、2種類以上の溶剤を混合し
てもよい。溶剤の使用量(割合)は採用するコーティン
グ方法により作業性がよくなるように選択され、また金
属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物の平均分子量、
分子量分布、その構造によって異なるので、コーティン
グ用組成物中溶剤は90重量%程度まで混合することが
でき、好ましくは10〜50重量%の範囲で混合するこ
とができる。
【0031】また溶剤濃度は金属カルボン酸塩とポリシ
ラザンの反応物の平均分子量、分子量分布、その構造に
よって異なるが、通常0〜90重量%の範囲で良い結果
が得られる。また、本発明においては、必要に応じて適
当な充填剤を加えてもよい。充填剤の例としてはシリ
カ、アルミナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物
系無機物あるいは炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無
機物の微粉等が挙げられる。また用途によってはアルミ
ニウム、亜鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。さ
らに充填剤の例を詳しく述べれば、ケイ砂、石英、ノバ
キュライト、ケイ藻土などのシリカ系:合成無定形シリ
カ:カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、ア
スベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等の
ケイ酸塩:ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラ
スフレーク、泡ガラス球等のガラス体:窒化ホウ素、炭
化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化
ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化
チタン等の非酸化物系無機質:炭酸カルシウム:酸化亜
鉛、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化ベリリウ
ム等の金属酸化物:硫酸バリウム、二硫化モリブデン、
二硫化タングステン、弗化炭素その他無機物:アルミニ
ウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛等の金
属粉末、カーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分解炭
素、中空カーボン球等のカーボン体等があげられる。
【0032】これら充填剤は、針状(ウィスカーを含
む。)、粒状、鱗片状等種々の形状のものを単独又は2
種以上混合して用いることができる。又、これら充填剤
の粒子の大きさは1回に塗布可能な膜厚よりも小さいこ
とが望ましい。また充填剤の添加量は金属カルボン酸塩
とポリシラザンの反応物1重量部に対して、0.05重
量部〜10重量部の範囲であり、特に好ましい添加量は
0.2重量部〜3重量部の範囲である。又、充填剤の表
面をカップリング剤処理、蒸着、メッキ等で表面処理し
て使用してもよい。
【0033】コーティング用組成物には、必要に応じて
各種顔料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線
吸収剤、pH調整剤、分散剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥
促進剤、流れ止め剤を加えてもよい。本発明によれば、
同様にして、上記の如きコーティング用組成物を用いた
コーティング方法が提供され、このコーティング方法は
上記のコーティング用組成物を基盤に1回又は2回以上
繰り返し塗布した後、焼成し珪素−窒素−酸素−金属元
素系又は珪素−窒素−酸素−炭素−金属元素系セラミッ
クスから成る被覆膜を形成させることを特徴とするもの
である。
【0034】また本発明は上記のごとく焼成した被覆膜
を50℃未満の条件で長時間保持し、被覆膜の性質を向
上させることを特徴とするコーティング方法を提供す
る。更に本発明は上記のごときコーティング用組成物を
基板に1回または2回以上繰り返し塗布した後、被覆膜
を50℃未満の条件で長時間保持し、珪素−窒素−酸素
−金属元素系又は珪素−窒素−酸素−炭素−金属元素系
セラミックスから成る被覆膜を形成させることを特徴と
するコーティング方法を提供する。
【0035】コーティング組成物を塗布する基盤は、特
に限定されず、金属、セラミックス、プラスチックス等
のいずれでもよい。コーティングとしての塗布手段とし
ては、通常の塗布方法、つまり浸漬、ロール塗り、バー
塗り、刷毛塗り、スプレー塗り、フロー塗り等が用いら
れる。又、塗布前に基盤をヤスリがけ、脱脂、各種ブラ
スト等で表面処理しておくとコーティング組成物の付着
性能は向上する。
【0036】このような方法でコーティングし、充分乾
燥させた後、加熱・焼成する。この焼成によって金属カ
ルボン酸塩とポリシラザンの反応物は架橋、縮合、ある
いは、焼成雰囲気によっては酸化、加水分解して硬化
し、強靱な被覆を形成する。上記焼成条件は金属カルボ
ン酸塩とポリシラザンの反応物の分子量や構造によって
異なるが、0.5〜10℃/分の緩やかな昇温速度で5
0℃〜1000℃の範囲の温度で焼成する。好ましい焼
成温度は250℃〜350℃の範囲である。焼成雰囲気
は酸素中、空気中あるいは不活性ガス等のいずれであっ
てもよいが、空気中がより好ましい。空気中での焼成に
より金属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物の酸化、
あるいは空気中に共存する水蒸気による加水分解が進行
し、上記のような低い焼成温度でSi−O結合あるいは
Si−N結合を主体とする強靱な被覆の形成が可能とな
る。
【0037】コーティングする金属カルボン酸塩とポリ
シラザンの反応物の種類によっては、限られた焼成条件
ではセラミックスへの転化が不完全である場合があり、
この場合には焼成後の被覆膜を50℃未満の条件で長時
間保持し、被覆膜の性質を向上させることが可能であ
る。この場合の保持雰囲気は空気中が好ましく、また水
蒸気圧を高めた湿潤空気中でも更に好ましい。保持する
時間は特に現定されるものではないが、10分以上30
日以内が現実的に適当である。また保持温度は特に現定
されるものではないが、0℃以上50℃未満が現実的に
適当である。ここで50℃以上で保持することも当然有
効であるが、本文では50℃以上での加熱操作を「焼
成」と定義している。即ち、ある温度で一定時間焼成し
た後、温度を例えば50℃に下げて長時間焼成すること
も有効であるが、この操作は前述の「加熱・焼成」操作
の一類型である。
【0038】この空気中での保持により金属カルボン酸
塩とポリシラザンの反応物の酸化、あるいは空気中に共
存する水蒸気による加水分解が更に進行し、セラミック
スへの転化が完了して、性質のより向上した、より強靱
な被覆膜の形成が可能となる。以上の方法によれば焼成
温度が低下でき、高い焼成温度に起因する種々の問題を
軽減することができる。
【0039】更に、コーティングする金属カルボン酸塩
とポリシラザンの反応物の種類によっては、50℃以上
での焼成を全く行なわず、塗布後の被覆膜を50℃未満
の条件で長時間保持し、被覆膜の性質を向上させること
が可能である。この場合の保持雰囲気は空気中が好まし
く、また水蒸気圧を高めた湿潤空気中でも更に好まし
い。保持する時間は特に限定されるものではないが、1
0分以上30日以内が現実的に適当である。また保持温
度は特に限定されるものではないが、0℃以上50℃未
満が現実的に適当である。ここで50℃以上で保持する
ことも当然有効であるが、本文では50℃以上での加熱
操作を「焼成」と定義している。この空気中での保持に
より金属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物の酸化、
あるいは空気中に共存する水蒸気による加水分解が進行
し、セラミックスへの転化が完了して、Si−O結合あ
るいはSi−N結合を主体とした強靱な被覆膜の形成が
可能となる。以上の方法によれば高い焼成温度に起因す
る種々の問題を大幅に軽減することができ、場合によっ
ては室温付近でのセラミックスへの転化が可能となる。
【0040】
【実施例】以下、実施例と比較例により本発明を更に詳
細に説明する。 参考例1〔原料ペルヒドロポリシラザンの製造〕 内容積11の四つ口フラスコにガス吹きこみ管、メカニ
カルスターラー、ジュワーコンデンサーを装置した。反
応器内部を脱酸素した乾燥窒素で置換した後、四つ口フ
ラスコに脱気した乾燥ピリジン490mlを入れ、これを
氷冷した。次にジクロロシラン51.6gを加えると白
色固体状のアダクト(SiH2 Cl・2C5 5 N)が
生成した。反応混合物を氷冷し、攪拌しながら、水酸化
ナトリウム管及び活性炭管を通して精製したアンモニア
51.0gを吹き込んで加熱した。
【0041】反応終了後、反応混合物を遠心分離し、乾
燥ピリジンを用いて洗浄した後、更に窒素雰囲気下でろ
過してろ液850mlを得た。ろ液5mlから溶媒を減去留
去すると樹脂状固体ペルヒドロポリシラザン0.1gが
得られた。得られたポリマーの数平均分子量は、凝固点
降下法(溶媒:乾燥ベンゼン)により測定したところ、
903であった。IR(赤外吸収)スペクトル(溶媒:
乾燥o−キシレン;ペルヒドロポリシラザンの濃度:1
0.2g/1)は、波数(cm-1)3340(見かけの吸
光係数ε=0.5571g-1cm-1)、及び1175のN
Hに基づく吸収1;2160(ε=3.14)のSiH
に基づく吸収;1020〜820のSiH及びSiNS
iに基づく吸収を示した。1 HNMR(プロトン核磁気
共鳴)スペクトル(60MHZ 、溶媒CDCl3 /基準物
質TMS)は、いずれも幅広い吸収を示している。即
ち、δ4.8及び4.4(br.,SiH);1.5
(br.,NH)の吸収が観測された。
【0042】比較例1 (焼成時のセラミックス化の評価)一般にポリシラザン
の焼成時には、Si−R1 ,N−R2 (R1 ,R2 は水
素原子、またはアルキル基等を示す)結合の切断と、S
i−N,Si−O結合の生成(後者は酸化性雰囲気下で
の焼成時に限る)が起こり、ポリシラザンは窒化珪素、
シリコンオキシナイトライド、シリカなどのセラミック
スに転化する。この過程をセラミックス化と称する。本
比較例または実施例では焼成を大気雰囲気下で行なった
ためポリシラザンは主にシリカに変化したが、このセラ
ミックス化の進行の半定量的評価をIR法にて行なっ
た。
【0043】SiH残存率=(加熱後のSiH吸光度/
加熱前のSiN吸光度)×100(%) SiO/SiN比=加熱後のSiO吸光度/加熱後のS
iN吸光度 両者の数値はセラミックス化進行の指標となるものであ
り、SiH残存率が小さいほど、またSiO/SiN比
が大きいほどセラミックス化が進んでいる事を示す。
【0044】なおここでSiN,SiO,SiHの特性
吸収はそれぞれ約840,1160,2160cm-1のも
のを用いた。また吸光度は、 吸光度=1og(I0 /I) にて計算した。Iは吸収ピークの透過率、I0 はピーク
のベースとなる透過率である。
【0045】実施例1 東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS
−1;数平均分子量600〜900)の4.4%ピリジ
ン溶液113.6gに酢酸パラジウム(三津和化学薬品
(株)製、純度>95%)0.01gを添加し、窒素雰
囲気中、20℃で2時間攪拌しながら反応を行った。こ
の溶液を減圧し溶媒を除去した後、キシレンにて希釈
し、10%キシレン溶液とした。本溶液の数平均分子量
はGPCにより測定したところ1174であった。
【0046】この溶液をコーティング液とし、直径4イ
ンチ、厚さ0.5mmのシリコンウェハー上にスピンコー
ターを用いて塗布(1000rpm ,20秒)し、大気雰
囲気下350℃で1時間加熱し、膜厚4168Åの塗膜
を得た。この塗膜のセラミックス化の進行度をIRで評
価したところ、(評価法は比較例1と同様)SiH残存
率19.9%、SiO/SiN比=2.9であった。更
にこの塗膜を49%フッ酸(ダイキン工業株式会社製)
18ml、61%硝酸(小宗化学株式会社製)1763ml
の混合溶液で処理したところ、エッチングレート981
Å/min .であった。
【0047】一方酢酸パラジウムを付加しないポリシラ
ザンのコーティング液を同様のプロセスで施工、評価し
たところ、SiH残存率21%、SiO/SiN比=
1.1、エッチングレートは2335Å/min .であっ
た。(表1参照)
【0048】実施例2 東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS
−1;数平均分子量600〜900)の20%キシレン
溶液20gに酢酸パラジウム(三津和化学薬品(株)
製、純度>95%)0.004gを添加し、大気中、2
0℃で2時間攪拌しながら反応を行った。この溶液をキ
シレンにて希釈し、15%キシレン溶液とした。本溶液
の数平均分子量はGPCより測定したところ1214で
あった。
【0049】この溶液をコーティング液とし、直径4イ
ンチ、厚さ0.5mmのシリコンウェハー上にスピンコー
ターを用いて塗布(1000rpm ,20秒)し、大気雰
囲気下350℃で1時間加熱し、膜厚638Åの塗膜を
得た。この塗膜のセラミックス化の進行度をIRで評価
したところ、(評価法は比較例1と同様)SiH残存率
8.8%、SiO/SiN比=3.1であった。
【0050】更にこの塗膜を49%フッ酸(ダイキン工
業株式会社製)18ml、61%硝酸(小宗化学株式会社
製)1763mlの混合溶液で処理したところ、エッチン
グレートは982Å/min.であった。一方酢酸パラジウ
ムを付加しないポリシラザンのコーティング液を同様の
プロセスで施工、評価したところ、SiH残存率21
%、SiO/SiN比=1.1、エッチングレートは2
335Å/min.であった。(表1参照)
【0051】実施例3 東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS
−1;数平均分子量600〜800)の10%キシレン
溶液20gにピリジンを10g加えた混合溶液に酢酸ニ
ッケル4水和物(関東化学(株)製、特級)0.02g
を添加し、大気中、20℃で6時間攪拌しながら反応を
行った。本溶液の数平均分子量はGPCにより測定した
ところ1576であった。
【0052】この溶液をコーティング液とし、直径4イ
ンチ、厚さ0.5mmのシリコンウェハー上にスピンコー
ターを用いて塗布(1000rpm ,20秒)し、大気雰
囲気下350℃で1時間加熱し、膜厚5086Åの塗膜
を得た。この塗膜のセラミックス化の進行度をIRで評
価したところ、(評価法は実施例1と同じ)SiH残存
率13.0%、SiO/SiN比=2.3であった。更
にこの塗膜を49%フッ酸(ダイキン工業株式会社製)
18ml、61%硝酸(小宗化学株式会社製)1763ml
の混合溶液で処理したところ、エッチングレートは19
18Å/min.であった。
【0053】実施例4 東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS
−1;数平均分子量600〜800)の10%キシレン
溶液20gにピリジンを10g加えた混合溶液に4酢酸
2ロジウム(三津和化学薬品(株)製)0.02gを添
加し、大気中、20℃で6時間攪拌しながら反応を行っ
た。本溶液の数平均分子量はGPCにより測定したとこ
ろ1197であった。
【0054】この溶液をコーティング液とし、直径4イ
ンチ、厚さ0.5mmのシリコンウェハー上にスピンコー
ターを用いて塗布(1000rpm ,20秒)し、大気雰
囲気下350℃で1時間加熱し、膜厚3973Åの塗膜
を得た。この塗膜のセラミックス化の進行度をIRで評
価したところ、(評価法は実施例1と同様)SiH残存
率16.9%、SiO/SiN比=1.9であった。更
にこの塗膜を49%フッ酸(ダイキン工業株式会社製)
18ml、61%硝酸(小宗化学株式会社製)1763ml
の混合溶液で処理したところ、エッチングレートは15
40Å/min.であった。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性、耐
食性に優れ、基材との密着性の良い被覆が、従来にない
低温での焼成で得られる。本発明の組成物は、金属、セ
ラミックス等はもちろん、高温処理に不適なプラスチッ
ク材料、電子部品等の表面保護剤として好適である。特
にプラスチックのハードコーティング剤、合成樹脂フィ
ルムや容器のガス透過抑制用コーティング剤、半導体の
保護膜や絶縁膜、即ちパシベーション膜、層間絶縁膜、
チップコート膜など、また半導体の封止剤、液晶表示体
のアンダーコート膜や配向膜としても利用することがで
きる。
【手続補正書】
【提出日】平成5年8月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正内容】
【0054】この溶液をコーティング液とし、直径4イ
ンチ、厚さ0.5mmのシリコンウェハー上にスピンコー
ターを用いて塗布(1000rpm ,20秒)し、大気雰
囲気下350℃で1時間加熱し、膜厚3973Åの塗膜
を得た。この塗膜のセラミックス化の進行度をIRで評
価したところ、(評価法は実施例1と同様)SiH残存
率16.9%、SiO/SiN比=1.9であった。更
にこの塗膜を49%フッ酸(ダイキン工業株式会社製)
18ml、61%硝酸(小宗化学株式会社製)1763ml
の混合溶液で処理したところ、エッチングレートは15
40Å/min.であった。実施例5 東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS
−1;数平均分子量900)の20%キシレン溶液10
gにプロピオン酸パラジウム(II)(エヌ・イー・ケムキ
ャット(株)製)の0.5%キシレン溶液4gを添加
し、更にキシレンを6g加え、大気中、20℃で3時間
攪拌しながら反応を行った。本溶液の数平均分子量はG
PCにより測定したところ961であった。この溶液を
コーティング液とし、直径4インチ、厚さ0.5mmのシ
リコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布(10
00rpm ,20秒)し、大気雰囲気下350℃で1時間
加熱し、膜厚4161Åの塗膜を得た。この塗膜のセラ
ミックス化の進行度をIRで評価したところ、(評価法
は実施例1と同様)SiH残存率0%、SiO/SiN
比=16.2であった。更にこの塗膜を49%フッ酸
(ダイキン工業株式会社製)18ml、61%硝酸(小宗
化学株式会社製)1763mlの混合溶液で処理したとこ
ろ、エッチングレートは938Å/min.であった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正内容】
【0055】
【表1】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】このような方法でコーティングし、充分乾
燥させた後、加熱・焼成する。この焼成によって金属カ
ルボン酸塩とポリシラザンの反応物は架橋、縮合、ある
いは、焼成雰囲気によっては酸化、加水分解して硬化
し、強靱な被覆を形成する。上記焼成条件は金属カルボ
ン酸塩とポリシラザンの反応物の分子量や構造によって
異なる。昇温速度は特に限定しないが、0.5〜10℃
/分の緩やかな昇温速度が好ましい。好ましい焼成温度
は250℃〜350℃の範囲である。焼成雰囲気は酸素
中、空気中あるいは不活性ガス等のいずれであってもよ
いが、空気中がより好ましい。空気中での焼成により金
属カルボン酸塩とポリシラザンの反応物の酸化、あるい
は空気中に共存する水蒸気による加水分解が進行し、上
記のような低い焼成温度でSi−O結合あるいはSi−
N結合を主体とする強靱な被覆の形成が可能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主として一般式(I): 【化1】 (但し、R1 ,R2 ,R3 はそれぞれ独立に水素原子、
    アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリー
    ル基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭
    素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、ア
    ルコキシ基を表わす。ただし、R1 ,R2 ,R3 のうち
    少なくとも1つは水素原子である。)で表わされる単位
    からなる主骨格を有する数平均分子量が100〜5万の
    ポリシラザンとニッケル、チタン、白金、ロジウム、コ
    バルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イ
    リジウム、アルミニウムの群から選択される少なくとも
    一種の金属を含む、金属カルボン酸塩を反応させて得ら
    れる、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比が0.0
    00001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜
    50万の金属カルボン酸塩付加ポリシラザンを少なくと
    も含有するコーティング用組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のコーティング用組成物を
    基板に1回または2回以上繰り返し塗布した後、50℃
    以上の温度で焼成し珪素−窒素−酸素−金属元素系又は
    珪素−窒素−酸素−炭素−金属元素系セラミックスから
    成る被覆膜を形成させることを特徴とするコーティング
    方法。
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