本開示は、望ましくない化学経路を遮断する新しい電池設計を提供する。アノード及びカソードのコーティングは、劣化メカニズムに直接的に対処することができる。コーティングのいくつかの例としては、表面金属カチオンドーピング、金属酸化物又はカーボンゾル-ゲルコーティング、スパッタコーティング、及び金属酸化物原子層堆積(ALD)コーティングが挙げられる。これらのうち、ALDコーティングは、その薄さ(インクリメンタルな原子層)、完全性(コーティングされていない表面は残さない)、及び電気的に活性な物質を除去しないために、優れた結果を提供する。対照的に、Mnカチオンを置換するカチオンの表面ドーピングは、Mnインターカレーション中心を除去することによって容量を減少させる。ゾル-ゲルコーティングは、不均一な厚さ及び程度のコーティングを与え、より厚い領域は高い抵抗を有し、非コーティング領域は劣化を経験する。しかし、ALD被覆アノード及び/又はカソードは、一般的に、電池において、容量、電圧又は電力の減衰を示さない。粒子上の適切なALDコーティングは未被覆表面を残さないので、電解質の酸化、カソードカチオンの溶解、及びSEI前駆体のシャトリングを完全に妨げることができる。さらに、二元金属酸化物及びスピネル相の核生成及び成長が表面から開始するので、ALDコーティングによるカソード表面の完全な被覆は、全ての核生成サイトを除去し、したがって、カソード再構成を防止する。残念なことに、ALDコーティングは、より低いレート能力及び電力、限られたスケーラビリティ及び高コストなどの他の周知の制限を導入することが知られている。さらに、大部分のコーティング作業はNMCに重点を置いており、ALDによって適用されたリジッドな金属酸化物コーティングは急速に破壊され、Siアノードに対して無効にされる。本開示は、ALDコーティングの特徴的な利点を提供するが、上記の制限の1つ以上を克服し得るALDコーティングの新規な改良型を導入する。開示された技術により、表面コーティングの改良を伴う高エネルギーの長寿命のセルは、大容量用途及び電気車両(electric vehicle)(EV)用途に実装することができる。
本開示は、以下の理論に限定されないが、電荷移動抵抗、電子抵抗、イオン移動抵抗及び濃度分極抵抗を減少させるために界面を変更することにより、そうでなければ抵抗を増加させる上述の成分が減少すると考えられる。本発明者らは、望ましくない化学経路を妨げ、副反応を低減することが望ましいと考えている。活物質表面の挙動を変え、その組成を調整して接触移動又は濃度分極抵抗を低減することによって、高エネルギー密度材料のサイクル寿命が改善され、電力減衰及び抵抗増加が低減される。
本発明の実施形態は、アノード活物質、カソード活物質又は固体電解質上にコーティングを堆積させる。このコーティングは、好ましくは薄く、連続的で、コンフォーマルで、電池の繰り返しサイクリング中に機械的に安定である。コーティングは、導電性又は非導電性であることができる。
様々な実施形態において、カソード、アノード又は固体電解質材料は、好ましくは、原子層堆積、分子層堆積;化学蒸着;物理蒸着;真空蒸着;電子ビーム堆積;レーザー堆積;プラズマ堆積;高周波スパッタリング;ゾル-ゲル、マイクロエマルジョン、連続イオン層堆積、水性堆積(aqueous deposition);メカノフュージョン;固体状態拡散、又はドーピングのうちの1又は2以上によって、ナノ加工コーティングで被覆される。ナノ加工コーティング材料は、電池の組み立て前又は完成した電池に形成工程が適用された後に、カソードの活物質、アノードの活物質又は固体電解質上に堆積されてもよい。ナノ加工コーティング材料は、以下のうちのいずれか1つ以上を含む群から選択される安定かつイオン伝導性の材料であることができる:(i)金属酸化物;(ii)金属ハロゲン化物;(iii)金属オキシハロゲン化物;(iv)金属リン酸塩;(v)金属硫酸塩;(vi)非金属酸化物;(vii)オリビン系材料;(viii)NaSICON構造体;(ix)ペロブスカイト構造体;(x)スピネル構造体;(xi)多金属イオン性構造体;(xii)金属有機構造体又は錯体;(xiii)ポリマー有機構造体又は錯体;(xv)ランダムに分布する官能基;(xvi)周期的に分布する官能基;(xvii)ブロック共重合体、(xviii)市松模様の微細構造を有する官能基;(xix)機能傾斜材料;(xx)2次元(2D)周期微細構造物、(xxi)3次元(3D)周期微細構造物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属酸炭化物、及び非金属有機構造物又は錯体。好適な金属は、アルカリ金属、遷移金属、ランタン、ホウ素、ケイ素、炭素、スズ、ゲルマニウム、ガリウム、アルミニウム及びインジウムから選択できるが、これらに限定されない。好適なコーティングは、上記の材料のうちの1又は2種以上を含むことができる。
本開示の実施形態は、これらの技術のうちの1又は2つ以上を使用して、カソード活物質、アノード活物質又は固体電解質上にナノ加工コーティングを堆積させる方法を含む。一実施形態において、電極材料を形成するために集電体に適用される活物質を形成するためにカソード材料粒子がスラリーに混合される前に、カソード材料粒子上にコーティングが堆積される。コーティングは、好ましくは、機械的に安定で、薄く、コンフォーマルで、連続的で、非多孔質で、及びイオン伝導性である。このようにしてコーティングされたカソード活物質と、アノードと、液体電解質とを使用して電池を製造することができる。
一実施形態において、電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間でイオン移動を提供するように構成された液体又は固体電解質と、固体電解質又は液体電解質が使用されるかどうかにかかわらず固体電解質又はアノードもしくはカソード活物質のいずれかに堆積された微視的及び/又はナノスケールのコーティングを含む。
本開示の特定の実施形態は、望ましくない副反応を抑制するために電池に使用するためのナノ加工コーティングを教示する。例えば、活物質及び/又は固体電解質上に原子又は分子コーティング層をコーティングすることによって、活物質から電極表面上に通常形成される不動態化層への、及び、電極細孔中への、電子移動を妨げることができる。結果として、望ましくない副反応を防止することができる。さらに、原子又は分子コーティング層は、セルがサイクリング中に経験する時間の経過とともに抵抗増加、容量減衰及び劣化を制限又は排除することができる。さらに、本開示の実施形態は、電解質の副反応又は活物質の固体状態反応、例えば相転移に起因する望ましくない構造変化を抑制することができる。本開示の実施形態の電池は、容量の増加及びサイクル寿命の増加をもたらすことができる。
本開示の特定の実施形態は、既存の設計より費用のかからない代替技術であるナノ加工コーティング技術を提供する。これらの技術は比較的高速であり、必要とする製造環境はあまり厳しくなく、例えば、真空中又は真空の外で、及び、様々な温度で、コーティングを適用することができる。
本開示の特定の実施形態の別の利点は、電池抵抗が減少し、サイクル寿命が長くなることである。本開示の特定の実施形態は、より高い容量及びより高い材料選択融通性をもたらす。本開示の特定の実施形態は、コーティング用途における均一性及び制御性の向上をもたらす。
本開示の他の利点としては、本開示に開示されるALDコーティングを使用することによって、電池の容量及びサイクル寿命を増加させることができることが挙げられる。電池は、開示されたコーティングによってより安全にすることができる。当該ALDコーティングは、また、高容量、高電圧、及び大きな体積変化の問題がある材料、及び以前は使用不可能な材料を可能にする。また、当該ALDコーティングは、ランダムプロセスで処理されるのではなく、特定の方法で加工されるため、当該ALDコーティングは、表面伝導率を増加させ、そして、SEI層をより機能的にする。
さらに、ここには、従来の液系電解質エネルギー貯蔵装置生産設備での使用に適した十分に安定したSSE系材料を製造するための2つの方法が開示されている。
第1の方法は、SSE粒子を含む粉末に適用される封入コーティング用の蒸着プロセスであって、酸素進入に対して適切な永久的、半永久的、犠牲的もしくは一時的バリア、又は、完成した層もしくはシステムにおいて隣接するコーティングされたもしくはコーティングされていない粒子に有益な他の永久的もしくは半永久的界面を提供する蒸着プロセスである。次に、封入された前記SSE粒子は、従来の製造装置において完成した電極上にフィルム(例えば、スラリーもしくは他の従来のアプローチ、又は例えば3D印刷によるなどのより先進的手法により)としてキャスト、印刷又はコーティングされ、半永久的もしくは一時的なバリアの機能が、材料及びそのフィルム、層又はコーティングが基材と実質的に異なる特定の環境にさらされる特定の時間スケールにわたって劣化を防止するのに十分なようにさらに設計(例えば、組成、厚さ又は他の物理化学的特性において)されている。最初に封入された材料を含む非不活性環境で製造された装置は、不活性環境で現行の固体技術を使用して製造された同等の装置と実質的に同様の性能を保持する。
第2の方法は、従来の柔軟な多孔質セパレーターシート又はウェブをテンプレートとして使用してSSE材料自体を製造する蒸着プロセスであり、これは、未処理(pristine)のセパレーターを組み込むための従来の装置製造プロセスを使用して組み込むことができる系を構成する柔軟なSSEを生じる。適切な固体電解質組成物の原子層堆積(ALD)化学及びステップ又はシーケンスは、例えばセパレーター、膜、フォーム、ゲル(例えば、エアロゲル又はキセロゲルなど)などの固定された又は移動している硬質、半硬質又は柔軟な微孔質基材上に堆積させることができる。例えば、リチウム源(例えば、アルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド又はリチウムt-ブトキシド)、硫黄源(例えば、H2S)及びリン源(例えば、H3P)を、他の有益な接着助剤、促進剤又はステップ(例えば、プラズマ暴露)とともに使用することによって、例えばxLi2S(1-x)P2S5(式中、xはモル比であり、約10~約90の範囲内にある)などの既知のSSE組成物を製造することができる。同様に、LixGeyPzS4(式中、x、y、zはモル濃度であり、2.3<x<4、0<y<1及び0<z<1である)を含む固体電解質層も、ゲルマニウム源(例えば、ゲルマニウムエトキシド)の暴露を割り込ませた上記前駆体の暴露の適切なシーケンス使用して容易に製造することができる。LLTO及びLiPONは、そのような基材にALD技術を使用して同様に適用することができる。さらに、ALDと同じ精度で基材上にハイブリッド無機/有機コーティングを生成する分子層堆積(MLD)技術も、先進SSE組み込みセパレーター(advanced SSE-incorporated separators)のために使用することができる。ハイブリッドポリマー/LiPONコーティングを、例えばエチレンジアミン、エタノールアミンなどの二官能性有機鎖分子を窒素源として使用して適用して、電池、燃料電池もしくは電解装置での使用に適したセパレーター、又は、反応もしくは分離を伴う様々な化学プロセスに使用される膜などの変形可能/柔軟な基材上に、高いイオン伝導率を有する柔軟な及び/又は圧縮可能なMLDコーティングを生成することができる。同様に、リチウム含有ポリマー又はALDコーティングは、リチウムを含まないコーティングよりも高いイオン伝導率を示すことができる。本発明の一実施形態の利点は、製造された柔軟なSSE組み込みセパレーターに適用される後続の封入プロセスであり、この封入プロセスは、系全体にわたって露出したSSE表面上に同様の封入コーティングを適用する。第1の方法と同様に、非不活性環境で製造された最初に封入されたSSE組み込みセパレーターを含む装置は、不活性環境で現在の固体状態技術を使用して製造された同等の装置と実質的に同様の性能を保持する。現在、粒子、スラリー及びセパレーターは、ドロップイン・レディ(drop-in ready)状態を維持しながら表面改質され得る、電池製造作業のための「ドロップイン・レディ」原材料群の一部とみなすことができる。
様々な組成のSSE組み込みセパレーターを使用することができ、特定の組成物又は装填物(セパレーターテンプレートに対して)を全ての固体状態のエネルギー貯蔵装置に使用することができ、他のものはハイブリッド液体-固体電解質ベースのエネルギー貯蔵装置(例えば、LiPF6などの従来の液体電解質、又は参照によりその全内容を本明細書に援用する国際公開第2015/030407号公報及び米国特許出願第14/421,055号明細書に記載されているような1もしくは2種以上のイオン性液体)に好適であることができる。各場合のいくつかの例では、カソードに面する界面及びアノードに面する界面のSSE材料に異なる封入コーティング組成物を適用するか、又は所与のコーティング層全体にわたってさらに勾配させて、システム適合性をさらに向上させることができる。SSE粒子がコーティングされる方法において、第1のSSE層を形成するために製造されたカソード上にカソード安定SSE封入コーティング(例えば、Al2O3もしくはTiO2、LiAlOxもしくはLiTiOx、LiAlPO4又はLiTiPO4、LiAlxTiyPO4又はLATP、LiPON)を構成する第1の層をキャストすることができ、アノード安定SSE封入コーティング(例えば、LiPON又は有益なMLDコーティング)を構成する第2の層を前記第1のSSE層と製造されたアノードとの間に挿入することができる。セパレーターに基づく方法では、カソード安定封入コーティングを、1つの蒸着プロセスを使用してカソードに面するように意図されたSSE組み込みセパレーターの側に適用することができ、アノード安定封入コーティングをアノードに面するように意図されたSSE組み込みセパレーターの側に適用(同時に又は逐次的に)することができる。
本発明の多くの実施形態の1つの態様は、それぞれが保護コーティングでコーティングされた固体電解質(SSE)粒子の集団に関し、保護コーティングは100nm以下の厚さを有し、原子層堆積(ALD)又は分子層堆積(MLD)を含む。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づく又はリン酸塩に基づく化合物、イオン伝導性ポリマー、リチウム又はナトリウム超イオン性伝導体、及び/又はイオン伝導性酸化物又はオキシフッ化物、及び/又はガーネット系材料、及び/又はLiPON、及び/又はLi-NaSICon、及び/又はペロブスカイト、及び/又はナシコン(NASICON)構造電解質(例えばLATPなど)、Naベータアルミナ、LLZOを含む。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、例えばSn、Ta、Zr、La、Ge、Ba、Bi、Nbなどのドーパントを有する及び有しない、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づく又はリン酸塩に基づく系、例えばLi2S-P2S5、Li2S-GeS2-P2S5、Li3P、LATP(リチウムアルミニウムチタンホスフェート)及びLiPONなど、イオン伝導性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド又はチオール化材料に基づくものなど、LiSiCON及びNaSICON型材料、及びイオン伝導性酸化物及びオキシフッ化物、例えばリチウムランタンチタネート、タンタレートもしくはジルコネート、リチウム化及び非リチウム化ビスマス又はニオブ酸化物及びオキシフッ化物など、リチウム化及び非リチウム化バリウムチタネート、及び高い絶縁強度を有する他の一般的に知られている材料、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体を含む。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、リチウムリン硫化物又はリチウムスズリン硫化物を含む。
SSEは、例えばボールミル、ゾル-ゲル、プラズマスプレーなどの様々な方法を使用して製造することができる。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、少なくとも約10-5Scm-1、もしくは少なくとも約10-4cm-1、もしくは少なくとも約10-3cm-3、もしくは少なくとも約10-2cm-3、もしくは約10-5cm-1~約10-1cm-1、又は約10-4cm-2~約10-2cm-1のイオン伝導率を有する材料を含む。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、約60μm以下、もしくは約1nm~約30μm、もしくは約2nm~約20μm、もしくは約5nm~約10μm、もしくは約10nm~約1μm、もしくは約10~500nm、又は約10~100nmの平均直径を有する。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、約0.01m2/g~約200m2/g、もしくは約0.01m2/g~約1m2/g、もしくは約1m2/g~約10m2/g、もしくは約10m2/g~約100m2/g、又は約100m2/g~約200m2/gの表面積をなす。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、噴霧熱分解プロセス、例えばプラズマスプレー、又は還元性火炎による火炎スプレーなどを使用して合成される。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属酸炭化物、金属炭窒化物、金属リン酸塩、金属硫化物、金属フッ化物、金属オキシハロゲン化物、非金属酸化物、非金属窒化物、非金属炭窒化物、非金属フッ化物、非金属有機構造体又は錯体、又は非金属オキシフッ化物を含む。いくつかの実施形態において、保護コーティングは、アルミナ又はチタニアを含む。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、約10-5Scm-1以下、もしくは約10-6Scm-1以下、もしくは約10-7Scm-1以下、又は約10-8Scm-1以下のイオン伝導率を有する材料を含む。
いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に1分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に2分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に5分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に10分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に30分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、周囲空気に60分間暴露された後、少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約90質量%、もしくは少なくとも約95質量%、もしくは少なくとも約98質量%、又は少なくとも約99質量%の封入された電解質材料を保持することができる。
いくつかの実施形態において、コーティング又は封入されたSSE粒子は、任意のサイズ又は形状又は形状因子のプレス加工又はキャスト電池に使用することができる。
本発明の多くの実施形態の別の態様は、本明細書に記載のSSE粒子を含む固体電解質層を含む固体電池に関する。
いくつかの実施形態において、固体電池は、固体電解質層と接触している(共用又は独立した)カソード複合材料層をさらに含む。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層は、導電性添加剤及びSSE(導電性添加剤もALDコーティングされていてもよい)と混合されたカソード活物質を含む。
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、リチウム金属酸化物、リチウム金属リン酸塩、硫黄、硫化物、例えば硫化リチウム、金属硫化物もしくはリチウム金属硫化物など、フッ化物、例えば金属フッ化物(例えばフッ化鉄)など、金属オキシフッ化物、リチウム金属フッ化物もしくはリチウム金属オキシフッ化物、又は上記化合物のナトリウム変種を含む。
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は1~10nmの厚さを有する保護コーティングによってコーティングされたカソード粒子を含む。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層中のカソード活物質の保護コーティングと固体電解質層中のSSE粒子の保護コーティングは同じ材料を含む。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層中の導電性添加剤は、導電性炭素系材料、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック及びグラファイトなど、並びにそれらの任意のコーティングされたものを含む。
いくつかの実施形態において、導電性添加剤は、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する保護コーティングによってコーティングされた粒子を含む。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層中の導電性添加剤の保護コーティングと固体電解質層中のSSE粒子の保護コーティングは同じ材料を含む。
いくつかの実施形態において、固体電池は、アノード層又はアノード複合材料層を含まない。
いくつかの実施形態において、固体電池は、固体電解質層と接触するリチウム金属アノード層をさらに含む。
いくつかの実施形態において、固体電池は、固体電解質層と接触するアノード複合材料層をさらに含む。
いくつかの実施形態において、アノード複合材料層は、導電性添加剤及びSSEと混合されたアノード活物質を含む。
いくつかの実施形態において、アノード活物質は、炭素系材料(例えば、グラファイトなど)、ケイ素、スズ、アルミニウム、ゲルマニウム、全てのリチウム変種(例えば、事前リチウム化されたケイ素など)、金属合金、酸化物(例えば、LTO MoO3、SiOなど)、及びそれらの混合物及び組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、アノード活物質は、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は1~10nmの厚さを有する保護コーティングによってコーティングされたアノード粒子を含む。
いくつかの実施形態において、アノード複合材料層中のアノード粒子の保護コーティングと固体電解質層中のSSE粒子の保護コーティングは同じ材料を含む。
いくつかの実施形態において、アノード複合材料層中の導電性添加剤は、導電性炭素系材料、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト及びカーボンエーロゲルなどを含む。
いくつかの実施形態において、導電性添加剤は、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する保護コーティングによりコーティングされた粒子を含む。
いくつかの実施形態において、アノード複合材料層中の導電性添加剤の保護コーティングと固体電解質層中のSSE粒子の保護コーティングは同じ材料を含む。
いくつかの実施形態において、カソード集電体、カソード複合材料層、固体電解質層、もしセパレーター層が存在する場合にはセパレーター層、もしアノード層又はアノード複合材料層存在する場合にはアノード層又はアノード複合材料層、及びアノード集電体の総質量に基づいて、固体電池の少なくとも約40質量%、もしくは少なくとも約50質量%、もしくは少なくとも約60質量%、もしくは少なくとも約70質量%、もしくは少なくとも約75質量%、もしくは少なくとも約80質量%、もしくは少なくとも約85質量%、もしくは少なくとも約90質量%、又は少なくとも約95質量%を占める。いくつかの実施形態において、セパレーター層とアノード層又はアノード複合材料層は、カソード集電体、カソード複合材料層、固体電解質層、セパレーター層が存在する場合にはセパレーター層、アノード層又はアノード複合材料層が存在する場合にはアノード層又はアノード複合材料層、及びアノード集電体の総質量に基づいて、固体電池の約15質量%以下、もしくは約10質量%以下、もしくは約5質量%以下、もしくは約3質量%、もしくは約2質量%以下、又は約1質量%その層を占める。
いくつかの実施形態において、固体電池は、固体電解質層中のSSE粒子が保護コーティングによりコーティングされていない対応する固体電池よりも少なくとも約20%高い、もしくは少なくとも約50%高い、もしくは少なくとも約100%高い、もしくは少なくとも約200%高い、又は少なくとも約500%高い第1サイクル放電容量を有する。ここで、本発明の固体電池と対応する固体電池は両方とも同じ環境(周囲O2含有量を含む非不活性環境)下で製造される。いくつかの実施形態において、固体電池は、材料の理論容量の約20%~500%、もしくは約20%~50%、もしくは約50%~100%、もしくは約100%~200%、又は約200%~500%で連続サイクリングすることを可能にする。いくつかの実施形態において、SSEの保護コーティングは、周囲空気中の「自然酸化物」が、約5nmを超える厚さに成長することを防止する。いくつかの実施形態において、SSEの保護コーティングは、周囲空気への約24時間暴露後に約5%以下の酸素含有量を維持する。いくつかの実施形態において、保護コーティングでコーティングされた固体電解質粒子は、周囲空気への約1時間暴露後に少なくとも10-6Scm-1、もしくは少なくとも10-5Scm-1、又は少なくとも10-4Scm-1のイオン伝導率を維持するように適合される。
いくつかの実施形態において、固体電池はリチウムイオン電池である。いくつかの実施形態において、固体電池はナトリウムイオン電池である。いくつかの実施形態において、固体電池はリチウム電池である。
本発明の多くの実施形態の別の態様は、SSEコーティングによってコーティングされた多孔性足場(porous scaffold)を含む固体電解質層であって、SSEコーティングが60μm以下の厚さを有する固体電解質層に関する。
いくつかの実施形態において、多孔質足場は多孔質セパレーターである。いくつかの実施形態において、多孔質セパレーターは、少なくとも約1cm2、もしくは少なくとも約10cm2、もしくは少なくとも約100cm2、又は少なくとも約1000cm2のサイズを有する。
いくつかの実施形態において、SSEコーティングは、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づく又はリン酸塩に基づく化合物、イオン伝導性ポリマー、リチウム又はナトリウム超イオン伝導体、あるいは、イオン伝導性酸化物及びオキシフッ化物を含む。いくつかの実施形態において、SSEコーティングは、例えばSn、Ta、Zr、La、Ge、Ba、Bi、Nbなどのドーパントを有する及び有しない、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づく又はリン酸塩に基づく系、例えばLi2S-P2S5、Li2S-GeS2-P2S5、Li3P、LATP(リチウムアルミニウムチタンホスフェート)及びLiPONなど、イオン伝導性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド又はチオール化材料に基づくものなど、LiSiCON及びNaSICON型材料、及びイオン伝導性酸化物及びオキシフッ化物、例えばリチウムランタンチタネート、タンタレートもしくはジルコネート、リチウム化及び非リチウム化ビスマス又はニオブ酸化物及びオキシフッ化物など、リチウム化及び非リチウム化バリウムチタネート、及び高い絶縁強度を有する他の一般的に知られている材料、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体、及び/又は、及び/又はガーネット系材料、及び/又はLiPON、及び/又はLi-NaSICon、及び/又はペロブスカイト、及び/又はナシコン(NASICON)構造電解質(例えばLATPなど)、Naベータアルミナ、LLZOを含む。いくつかの実施形態において、SSEコーティングは、リチウムリン硫化物又はリチウムスズリン硫化物を含む。
いくつかの実施形態において、SSEコーティングは、約60μm以下、もしくは約1nm~約30μm、もしくは約2nm~約20μm、もしくは約5nm~約10μm、もしくは約10nm~約1μm、もしくは約10~500nm、もしくは約10~100nm、又は、下は約0.1nmまでの厚さを有する。
いくつかの実施形態において、多孔質足場は、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する保護コーティングによりさらに被覆されている。いくつかの実施形態において、多孔性足場は、(導電性)SSE内側コーティングと、当該SSE内側コーティング上に配置された(非導電性)不動態化/保護外側コーティングとを含む。いくつかの実施形態において、多孔性足場は、(非導電性)不動態化/保護内側コーティングと、当該不動態化/保護内側コーティング上に配置された(導電性)SSE外側コーティングとを含む。いくつかの実施形態において、多孔質足場は、交互の、インターリーブされた、及び/又は多層構造の(導電性)SSEコーティング及び(非導電性)不動態化/保護コーティングを含む。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又は金属炭窒化物を含む。いくつかの実施形態において、保護コーティングは、アルミナ又はチタニアを含む。いくつかの実施形態において、リチウムに基づく活物質は、アルミナ及びチタニアの両方の混合物、又はアルミナ及びチタニアに基づく保護コーティングの多層を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、保護コーティング及びSSEコーティングの一方又は両方がALDによって得られる。いくつかの実施形態において、保護コーティング及びSSEコーティングの一方又は両方がMLDによって得られる。
本発明の多くの実施形態の他の態様は、固体電解質材料と混合されたカソード活物質を含む固体電池用のカソード複合材料層であって、カソード活物質が、第1の保護コーティングによりそれぞれコーティングされた複数のカソード粒子を含み、固体電解質材料が、第2の保護コーティングによりそれぞれコーティングされた複数のSSE粒子を含むカソード複合材料層に関する。いくつかの実施形態において、第1の保護コーティングと第2の保護コーティングは異なる。例えば、SSE粒子は伝導率の増加のためにTiNで被覆することができ、伝導性コーティングを保護するためにAl2O3で被覆することができるのに対して、カソード粒子は、LiPONだけで被覆することができ、LiPONは、伝導性と保護の目的の両方に役立つことができる。複数の層の任意の組み合わせの多層、例えばAl2O3、次にTiN、次にAl2O3、次にTiNなどであってもよい。
いくつかの実施形態において、第1の保護コーティング及び第2の保護コーティングは、それぞれ独立に、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又は金属炭窒化物を含む。いくつかの実施形態において、第1の保護コーティングと第2の保護コーティングは異なる。例えば、SSE粒子は伝導率の増加のためにTiNで被覆することができ、伝導性コーティングを保護するためにAl2O3で被覆することができるのに対し、カソード粒子はLiPONだけで被覆することができ、LiPONは伝導率と保護の目的の両方に役立つことができる。コーティングは、任意の組み合わせの複数の材料の多層、例えばAl2O3、次にTiN、次にAl2O3、次にTiNなどを含むことができる。
いくつかの実施形態において、第1の保護コーティング及び第2の保護コーティングは、それぞれ独立に、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの平均厚さを有する。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層は、カソード活物質及び固体電解質材料と混合された導電性添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、カソード活物質:固体電解質材料:導電性添加剤の比は、約5:30:3~約80:10:10、もしくは1:30:3~約95:3:2、又は、もしSSE ALD被覆カソード活物質が使用される場合には最大で97:3:0までである。
いくつかの実施形態において、第1の保護コーティング及び第2の保護コーティングの一方又は両方がALDによって得られる。いくつかの実施形態において、第1の保護コーティング及び第2の保護コーティングの一方又は両方がMLDによって得られる。
本発明の多くの実施形態の別の態様は、カソード複合材料層を含む固体電池に関する。いくつかの実施形態において、当該固体電池は、カソード集電体、アノード集電体、任意のリチウム金属アノード層又はアノード複合材料層、任意のセパレーター、及び任意の固体電解質層をさらに含む。
いくつかの実施形態において、カソード複合材料層は、カソード複合材料層、カソード集電体、アノード集電体、任意のリチウム金属アノード層又はアノード複合材料層、任意のセパレーター及び任意の固体電解質層の総質量に基づいて、固体電池の少なくとも約50質量%、もしくは少なくとも約60質量%、もしくは少なくとも約70質量%、もしくは少なくとも約80質量%、又は少なくとも約90質量%を構成する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、SSD粒子の環境安定性を改善する方法であって、ALD又はMLDによりSSE粒子上に保護コーティングを堆積させる工程を含み、当該保護コーティングは、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する方法に関する。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、約1~100回のALDサイクル、もしくは約2~50回のALDサイクル、又は約4~20回のALDサイクルによって得られる。
いくつかの実施形態において、上記方法は、保護コーティングでコーティングされたSSE粒子を固体電池に組み込むことをさらに含み、固体電池は、同じ環境(例えば、周囲O2含有量を含む非不活性環境)下で保護コーティングを有しない対応するSSE粒子を組み込むことにより得られた対応する固体電池よりも少なくとも約20%高い、もしくは少なくとも約50%高い、もしくは少なくとも約100%高い、もしくは少なくとも約200%高い、又は少なくとも約500%高い第1サイクル放電容量を有する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、固体電池用の固体電解質層の製造方法であって、ALD又はMLDにより多孔質足場上に第1のSSEコーティングを堆積させることを含み、固体電解質層が約60μm以下、もしくは約1nm~約30μm、もしくは約2nm~約20μm、もしくは約5nm~約10μm、もしくは約10nm~約1μm、もしくは約10~500nm、又は約10~100nmの厚さを有する方法に関する。
いくつかの実施形態において、上記方法は、ALD又はMLDにより多孔質足場上に第2の保護コーティングを堆積させるステップをさらに含み、当該保護コーティングは、約100nm以下、もしくは約0.1~50nm、もしくは約0.2~25nm、もしくは約0.5~20nm、又は約1~10nmの厚さを有する。
いくつかの実施形態において、保護コーティングは、約1~100回のALDサイクル、もしくは約2~50回のALDサイクル、又は約4~20回のALDサイクルによって得られる。
いくつかの実施形態において、上記方法は、固体電解質層を固体電池に組み込むことをさらに含み、固体電池は、同じ環境(例えば、周囲O2含有量を含む非不活性環境)下で保護コーティングを有しない対応するSSE粒子を組み込むことにより得られた対応する固体電池よりも少なくとも約20%高い、もしくは少なくとも約50%高い、もしくは少なくとも100%高い、もしくは少なくとも約200%高い、又は少なくとも約500%高い第1サイクル放電容量を有する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、ALDコーティングの前もしくは後のいずれかで、又は一連の反復ステップで、ALDコーティングと独立に又はインラインでの、SSEの熱処理に関する。SSEは、例えば、約200~300℃、約300~400℃、約400~500℃、約500~600℃、又は600℃超で熱処理することができる。いくつかの実施形態において、SSE粒子を最初に熱処理し、次にALDにより保護層でコーティングする。いくつかの実施形態において、まずSSE粒子をALDにより保護層でコーティングし、次いで熱処理する。いくつかの実施形態において、SSE粒子は、最初にALDにより第1の層でコーティングされ、次いで熱処理され、続いてALDにより第2の層でコーティングされる。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、Li-S固体電池のための炭素上への硫黄のALDコーティング、及び/又は、ハイブリッドSSE-S電解質電極を得るためのSSE上への硫黄のALDコーティングに関する。いくつかの実施形態において、SSE粒子を最初に硫黄でコーティングし、次に導電性材料でコーティングする。いくつかの実施形態において、SSE粒子を最初に硫黄でコーティングし、次に導電性材料でコーティングし、続いてSSE層又は3-in-1複合カソード材料で被覆する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、封入されたSSE粉末を使用して製造されたALD可能極端温度固体電池(ALD-enabled extreme-temperature solid state battery)に関する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様において、SSE一体型セパレーター(SSE-integrated separator)は、高温使用に適するように燃え尽きさせることができる。MLDコーティングは、多孔質構造を作製するために、後で燃え尽きさせることができる。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様は、ケイ素アノード用のアノードに面する側に1又は2以上のMLDコーティングを含むコーティングされたセパレーターに関する。
本発明の多くの実施形態のさらなる態様において、液体含有電解質系で使用された場合に起こり得る熱暴走事象を停止又はクエンチする方法として、セパレーター基材は、固有の難燃性を有する多孔質ポリマーを含むか、あるいは、添加された難燃性材料、例えば、ホウ酸亜鉛又はオキシ水酸化アルミニウム(これはAl2O3の低温ALDの天然副生成物であり得る)を含む。
本開示のさらなる利点は、以下の説明に部分的に記載されており、部分的には説明から明らかになり、又は本開示の実施によって習得されるであろう。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲において特に示した要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載のとおりの本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
本明細書に組み込まれており、そして本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の1つ以上の例示的な実施形態を示し、説明と共に、本開示の原理を例示する役割を果たす。
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。可能な限り、図面及び以下の説明で同じ又は類似の部分を参照するために同じ参照番号を使用することがある。詳細は、本明細書に記載の実施形態の理解を助けるために記載されている。場合によっては、これらの詳細なしで実施形態を実施することができる。他の点では、説明を複雑にすることを避けるために、周知の技術及び/又は構成要素を詳細に説明しないことがある。いくつかの例示的な実施形態及び特徴が本明細書に記載されているが、特許請求の範囲に記載のとおりの本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、変更、適合及び他の実施が可能である。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の適切な範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
本開示の実施形態は、電池のカソード活物質、アノード活物質又は固体電解質材料に適用されるナノ加工コーティングを含む。本開示の実施形態のナノ加工コーティングは、望ましくない化学的経路及び副反応を妨げることができる。本開示の実施形態のナノ加工コーティングは、様々な方法により適用することができ、様々な材料を含むことができ、様々な材料特性を含むことができ、その代表例が本開示で提示される。
図1は、10ナノメートル(10nm)のスケールで、コーティングされていない活物質粒子10を模式的に示す。活物質粒子10の表面30は、ナノ加工コーティングでコーティングされていない。コーティングが全くなければ、活物質粒子10の表面30は電解質15と直接接触している。
図2は、10ナノメートル(10nm)のスケールで、コーティングされた活物質粒子を模式的に示す。活物質粒子10の表面30に、ナノ加工ALDコーティング20などのコーティング20がコーティングされている。一実施形態において、図2に示されているように、コーティング20の厚さは約10nmである。他の実施形態において、コーティング20の厚さは、2nm~2000nm、2nm~20nm、5nm~20nmの範囲内の値などの他の値であってもよい。ナノ加工ALDコーティング20は、カソード又はアノード中に使用される活物質粒子10に適用されてもよい。図2に示すナノ加工コーティングは、活物質粒子の表面30に従う、薄く、均一で、連続的で、機械的に安定なコーティング層を形成することができる。いくつかの代替実施形態において、コーティングは不均一であってもよい。固体電解質が使用される場合、コーティングは固体電解質にコーティングされてもよいことが理解されるべきである。
本開示の一実施形態において、カソード又はアノード活物質粒子10の表面は、ナノ加工ALDコーティング20でコーティングされる。コーティングされたカソード又はアノード活物質粒子10は、次に、混合され、スラリーに形成される。このスラリーを集電体上に適用し、電極(例えば、カソード又はアノード)を形成する。
図3は、本開示の一実施形態の電池100の概略図である。電池100は、Liイオン電池、あるいは、例えば鉛蓄電池、ニッケル金属水素化物、又は他の電気化学に基づく電池などの他の電池であってもよい。電池100は、それぞれ正端子及び負端子120及び130を有するケーシング110を含むことができる。ケーシング110内には、一連のアノード140及びカソード150が配置されている。アノード140はグラファイトを含んでもよい。いくつかの実施形態において、アノード140は様々な材料組成を有することができる。同様に、カソード150は、ニッケル-マンガン-コバルト(NMC)を含むことができる。いくつかの実施形態において、カソード150は、様々な材料組成を有することができる。
図3に示されているように、アノード140とカソード150として正極と負極の対が形成され、電池100に集成される。電池100は、アノード140とカソード150の対の間に挟まれたセパレーター及び電解質160を含み、電気化学セルを形成している。個々の電気化学セルは、電圧又は容量を構築するために、必要に応じて直列又は並列にバスバーによって接続され、正端子及び負端子120及び130と共にケーシング110内に配置されてもよい。電池100は、液体電解質又は固体電解質のいずれかを使用することができる。例えば、図3に示す実施形態において、電池100は、固体電解質160を使用する。固体電解質160は、アノード140とカソード150との間に配置され、アノード130とカソード140との間のイオン移動を可能にする。図3に示されているように、電解質160は、セラミック固体電解質材料を含むことができる。他の実施形態において、電解質160は、アノード140とカソード150との間のイオン移動を支援する他の適切な電解質材料を含むことができる。
図4A及び図4Bは、サイクリング前後のコーティングされていないカソード活物質粒子10を示す。図4Aに示されているように、サイクリング前のカソード粒子10の表面は比較的滑らかで連続的である。図4(B)は、サイクリング後のコーティングされていない粒子10を示し、孔食及び不規則な表面輪郭をもたらす実質的な腐食を示している。図5A及び図5Bは、図4A及び図4Bに示したもののような粒子10の高倍率図を示し、サイクリングの結果としてコーティングされていない粒子10の腐食後の不規則な表面を示している。
図6A及び図6Bは、コーティングされていない粒子10中の原子の転位を示す。特に、図6A及び図6Bは、逆格子の表現である。透過型電子顕微鏡(TEM)画像データのフーリエ変換によって逆格子を計算し、コーティングされていない粒子10中の個々の原子の位置を示す。図6Aは、サイクリング前のコーティングされていない粒子10中の原子の位置を示す。図6Bは、サイクリング後のコーティングされていない粒子10中の原子の位置を示す。サイクリング前後の原子の位置を比較すると、コーティングされていない粒子10の原子構造における望ましくない変化が明らかになる。図6Aの矢印は、格子内の原子の実際の位置を示す逆格子を示す。図6Bは、サイクリング後の同じ材料の粒子を示し、原子の位置が変化していることを示している。
図7A及び7Bは、コーティングされていない粒子のサイクル寿命に関する制限を示す。コーティングされていない粒子は、典型的には200~400サイクルを達成し、一般的に400サイクル未満に限られる。
図7Cは、C/3のサイクルレート及び4.35V~3Vの電圧窓での、ALDコートAl2O3あり及びなしのフルセルNMC811-グラファイトパウチセルについての試験結果を示す。横軸はサイクル数を示し、縦軸はC/3放電容量をアンペア時間(Ah)で示す。使用した活性カソード材料は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、例えば、LiNi0.8Mn0.1Co0.2O2(NMC811)である。実線(a)は、非修飾NMC811(すなわち、ALDコーティングなしのNMC811)についての結果を示し、破線(b)は、Al2O3でALDコーティングされたNMC811についての結果を示す。図7Cに示されているように、0.3Cサイクル寿命の傾向は、Al2O3 ALDコーティングによってサイクル寿命が向上することを示している。例えば、所与の放電容量(例えば、2.0Ah)では、未修飾NMC811のサイクル寿命は約675であるが、Al2O3でコーティングされたNMC811のサイクル寿命は約900である。このサイクル寿命の増加は、セルのカソード粒子上のAl2O3コーティングに起因する。
図8Aは、1Cのサイクルレート及び4.35V~3V電圧窓での、ALDコートAl2O3あり及びなしのフルセルNMC811-グラファイトパウチセルについての試験結果を示す。横軸はサイクル数を示し、縦軸は1C放電容量をアンペア時間(Ah)で示す。使用した活性カソード材料は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、例えば、LiNi0.8Mn0.1Co0.2O2(NMC811)である。実線(a)は、非修飾NMC811(すなわち、ALDコーティングなしのNMC811)についての結果を示し、破線(b)は、Al2O3でALDコーティングされたNMC811についての結果を示す。図8Aに示されているように、1Cサイクル寿命の傾向は、Al2O3コーティングによってサイクル寿命が向上することを示している。例えば、所与の放電容量(例えば、1.8Ah)では、未修飾NMC811のサイクル寿命は約525であり、Al2O3でコーティングされたNMC811 ALDのサイクル寿命は約725である。このサイクル寿命の増加は、セルのカソード粒子上のAl2O3コーティングに起因する。
図8Bは、1Cのサイクルレート及び4.35V~3Vの電圧窓での、ALDコートAl2O3あり及びなしのフルセルNMC811-グラファイトパウチセルについての試験結果を示す。横軸はサイクル数を示し、縦軸は電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって測定されたインピーダンスの電荷移動成分を示す。線(a)及び(b)は、NMC811のフレッシュな電極及びパウチセル(サイクル寿命試験結果を得るのに使用したものと同じパウチセル)でサイクルされた電極について、EISによって測定されたインピーダンスの電荷移動成分を示す。具体的には、線(a)は修飾なしのNMC811(すなわちALDコーティングなしのNMC811)についてのインピーダンスの電荷移動成分を示し、線(b)はAl2O3でコーティングされたNMC811についてのインピーダンスの電荷移動成分を示す。図8Bに示されているように、Al2O3を使用したALDコーティングでは、インピーダンスの電荷移動成分が減少した。例えば、サイクル数400において、インピーダンスの電荷移動成分は、線(a)(ALDコーティングなし)で約22.5オームであり、線(b)(ALDコーティングあり)で約7.5オームである。この1C/-1Cサイクルの寿命の傾向は、ALDコーティングが電池のインピーダンスを低減できることを示している。
図9Aは、1Cのサイクルレート及び4.4V~3Vの電圧窓での、ALDコートAl2O3又はTiO2あり及びなしのフルセルNCA-グラファイトパウチセルについての試験結果を示す。横軸はサイクル数を示し、縦軸は1C放電容量をアンペア時間(Ah)で示す。使用した活性カソード材料は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)である。実線(a)は未修飾NCA(すなわち、ALDコーティングなしのNCA)についての結果を示し、破線(b)はAl2O3でALDコーティングされたNCAについての結果を示し、点線(c)はTiO2でALDコーティングされたNCAについての結果を示す。図9Aに示されているように、1Cサイクル寿命の傾向は、サイクル寿命がAl2O3コーティング又はTiO2コーティングで向上することを示している。例えば、所与の放電容量(例えば、1.4Ah)において、未修飾NCAのサイクル寿命は約190であるが、Al2O3でALDコーティングされたNCAのサイクル寿命は約250であり、TiO2でALDコーティングされたNCAのサイクル寿命は約300である。サイクル寿命の増加は、セルのカソード粒子上のAl2O3又はTiO2コーティングに起因する。
図9Bは、1Cのサイクルレート及び4.4V~3Vの電圧窓での、ALDコートAl2O3又はTiO2を有する及び有しないフルセルNCA-グラファイトパウチセルについての試験結果を示す。使用した活性カソード材料は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)である。横軸はサイクル数を示し、縦軸はインピーダンスの電荷移動成分をオーム(Ohm)で示している。実線(a)は、未修飾NCA(すなわち、ALDコーティングを有しないNCA)を有するパウチセルについてのインピーダンスの電荷移動成分を示す。破線(b)は、NCAがAl2O3でALDコーティングされたパウチセルのインピーダンスの電荷移動成分を示す。点線(c)は、NCO2がTiO2でALDコーティングされたパウチセルのインピーダンスの電荷移動成分を示す。図9Bに示されているように、線(b)及び線(c)は、線(a)と比較してインピーダンスが低下している。換言すれば、両方のALDコーティング(Al2O3による及びTiO2による)は、電池のインピーダンスを低下させる。
図9Cは、Al2O3又はTiO被覆NCA粒子に対して4.4V~3Vの異なる放電レートでのフルセル(NCA/グラファイト)容量を示す。横軸は放電Cレートを示し、縦軸は放電容量をAhで示す。実線(a)は、未修飾NCA(すなわち、ALDコーティングなしのNCA)を有するパウチセルの放電レート能力の結果を示す。破線(b)は、Al2O3でALDコーティングされたNCAを有するパウチセルについての放電レート容量の結果を示す。点線(c)は、TiO2でALDコーティングされたNCAを有するパウチセルについての放電レート容量の結果を示す。図9Cは、Al2O3被覆粒子セル(破線(b))が1Cレートでコーティングされていない粒子セル(実線(a))よりも19%高い容量を有することを示す。図9Cは、TiO被覆粒子セル(点線(c))が1Cレートで非被覆粒子セル(実線(a))よりも11%高い容量を有することも示している。容量増加は、セル内のカソード粒子上のAl2O3及びTiO2コーティングに起因する。
Peukert係数は、図9Cに示す線(a)~(c)に基づいて計算される。Peukert係数は、ALDコーティングなしのNCAでは1.15、Al2O3でALDコーティングされたNCAでは1.04、TiO2でALDコーティングされたNCAでは1.03である。図9Cに示されているように、ALDコーティング(Al2O3による及びTiO2による)は、より高い放電Cレートの間に容量保持を助ける。例えば、1C放電レートでは、ALDコーティングを有するNCA(線(b)及び(c))は、コーティングなしのNCA(線(a))と比較してより高い放電容量を示す。
図10Aは、Al2O3及びLiPON被覆NMC粒子から作製された電極に対する、本開示の実施形態の4.8V~3V対Liの異なる放電レートでのハーフセル(NMC811/リチウム)容量を示す。実線(a)は、未修飾NMC811(すなわち、ALDコーティングなしのNMC811)を有するハーフセルについての放電レート(又は比)容量結果を示す。破線(b)は、Al2O3でALDコーティングされたNMC811を有するハーフセルについての放電レート容量の結果を示す。破線(c)は、LiPONでALDコートされたNMC811を有するハーフセルについての放電レート容量の結果を示す。図10Aは、Al2O3被覆粒子の電極(線(b))が、ほとんど全てのCレートで、コーティングされていない粒子の電極(実線(a))よりも高い容量を有することを示す。Al2O3被覆粒子は、C/5レートで同じ容量、C/3レートで8%高い容量、1Cレートで50%高い容量、5Cレートで1,000%高い容量を有する。図10Aは、LiPON被覆粒子電極(線(c))が、全てのCレートで、コーティングされていない粒子電極(実線(a))よりも高い容量を有することも示している。LiPON被覆粒子電極は、C/5レートで6%高い容量、C/3レートで17%高い容量、1Cレートで65%高い容量、5Cレートで1,000%高い容量を有する。容量増加は、セル内のカソード粒子上のLiPONコーティングに起因する。
Peukert係数は、図10Aに示す線(a)~(c)に基づいて計算される。Peukert係数は、ALDコーティングなしのNMC811では1.44、Al2O3でALDコーティングされたNMC811では1.08、LiPONでALDコーティングされたNMC811では1.06である。
図10Bは、LiPON被覆NMC粒子から作製された電極に対する、本開示の一実施形態の4.8V~3V対Liの異なる放電レートでのハーフセル(LMR-NMC/リチウム)容量を示す。図10Bは、LiPON被覆粒子電極(線(b))は、全てのCレートで、コーティングされていない粒子電極(線(a))よりも高い容量を有することを示している。LiPON被覆粒子は、C/5レートで5%高い容量、C/3レートで28%高い容量、1Cレートで234%高い容量、5Cレートで3,700%高い容量を有する。容量増加は、セル内のカソード粒子上のLiPONコーティングに起因する。
図10Cは、ALDコーティングあり及びなしのNMC811の粘度対せん断速度を示す。横軸はせん断速度を示し、縦軸は粘度を示す。線(a)は、未修飾NMC811(すなわち、ALDコーティングなしのNMC811)についての粘度対せん断速度を示す。線(b)は、Al2O3でALDコーティングされたNMC811についての粘度対せん断速度を示す。未修飾NMC811の等価なスラリーについてのより高い粘度、ならびに増加するせん断速度と減少するせん断速度との間のより大きなヒステリシスは、ゲル化の指標である。換言すれば、ALDコーティングにより、電池内のゲル化を低減又は防止することができる。
本開示の実施形態は、好ましくは、薄いコーティングを含む。ナノ加工コーティング20は、2~2000nmの厚さで適用されてもよい。一実施形態において、ナノ加工コーティング20は、2~10nm、2~20nm、5~15nm、10~20nm、20~5nmなどの厚さで堆積させることができる。
本開示の特定の実施形態において、コーティング20の厚さも実質的に均一である。しかしながら、ナノ加工コーティングを用いる全ての用途に均一性が要求されるわけではない。いくつかの実施形態において、コーティングは不均一であってもよい。本明細書に具体化されるように、薄いコーティング20は目標厚さの10%以内である。本開示の一実施形態において、薄いコーティング20の厚さは、目標の厚さの約5%以内である。そして、別の実施形態において、薄いコーティング厚さは、目標厚さの約1%以内である。原子層堆積などの本開示の特定の技術は、均一な薄いコーティングを提供するために、コーティング20の厚さに対してこの程度の制御を容易に提供することができる。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20の厚さは、コーティングが均一でないように変化してもよい。例えば、コーティング20の目標厚さの約10%を超えて厚さが変化するコーティング20は、不均一であるとみなすことができる。それにもかかわらず、厚さが10%を超えて変化するコーティングは、本発明の実施形態の不均一コーティングの範囲内にあると考えられる。
本明細書で具体化されるように、コーティング20は、活物質のスラリーを形成する前に活物質(例えば、カソード及びアノード)粒子10に適用することができる。好ましくは、電極を形成するためにスラリーを形成し塗布する前に、コーティング20を活物質の粒子10に適用する。同様に、コーティング20を固体電解質に適用することができる。種々の実施形態において、コーティング20は、液体又は固体電解質にかかわらず、電極活物質(例えば、カソード及び/又はアノード)と電解質との間に配置され、電気化学セルの副反応を抑制し容量を維持する。
本開示の一実施形態において、ナノ加工コーティング20は、活物質粒子10又は固体電解質160の表面に従う。コーティング20は、活物質又は固体電解質表面との連続接触を維持し、粒子間及び粒子内細孔構造間隙を充填することが好ましい。この構成では、ナノ加工コーティング20は、リチウム拡散バリアとして機能する。
特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、活物質からSEIへの電子移動を実質的に妨げるか又は防止することができる。別の実施形態において、ナノ加工コーティング20は導電性であってもよい。ナノ加工コーティング20は、人工的なSEIを形成する。本開示の一実施形態において、コーティング20は、電解質160が有害な副反応、例えば、酸化及び還元反応を経験しないように、電解質と活物質(例えば、カソード及び/又はアノード)との間の電気伝導を制限するとともに活物質と電解質との間のイオン移動を可能にする。特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、導電性であり、好ましくは、活物質よりも高い電気伝導率を有する。他の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、電気絶縁性であり、活物質よりも低い電気伝導率を有することができる。コーティング20は、粒子又は電極に適用することができ、イオン性の固体又は液体、又は共有結合した材料、例えばポリマー、セラミック、半導体又はメタロイドなどで作製することができる。
図14は、活物質(カソード及び/又はアノード)又は固体電解質上にコーティングを形成するための多段階適用プロセスの概略図である。図14に示されているように、ナノ加工コーティング20は、粒子10又は固体電解質160の表面30に適用される。コーティング20は、表面30上に離散的な連続コーティングを形成するように配合され適用される。コーティングは、表面30と非反応性であってもよく、表面30にナノ加工コーティングを形成する予測可能な方法で表面30と反応してもよい。好ましくは、コーティング20は、機械的に安定であり、薄く、均一で、連続的で、非多孔質である。図14に示すプロセスの詳細な説明は後述する。
本開示の特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、不活性物質を含むことができる。本発明者らは、コーティングされた活物質粒子のいくつかの配合が実行可能であると考えている。コーティングは、(i)金属酸化物;(ii)金属ハロゲン化物;(iii)金属オキシフッ化物;(iv)金属リン酸塩;(v)金属硫酸塩;(vi)非金属酸化物;(vii)オリビン系材料(複数可);(viii)NaSICON構造体(複数化);(ix)ペロブスカイト構造体(複数可);(x)スピネル構造体(複数可);(xi)多金属イオン性構造体(複数可);(xii)金属有機構造体(複数可)又は錯体(複数可);(xiii)多金属有機構造体(複数可)又は錯体(複数可);(xiv)周期的性質を有する構造体(複数可);(xv)ランダムに分布する官能基;(xvi)周期的に分布する官能基;(xvii)市松模様の微細構造である官能基;(xviii)2D周期配列;及び(ixx)3D周期配列を含む活物質前駆体粉末に適用することができる。適切な金属リン酸塩を形成することができる金属としては、アルカリ金属;遷移金属;ランタン;ホウ素;ケイ素;炭素;錫;ゲルマニウム;ガリウム;アルミニウム;及びインジウムが挙げられる。
適切なコーティングの選択は、少なくとも部分的には、それが適用されるコーティング20及び表面30の材料に依存する。上記のコーティング材料の全てが、潜在的なあらゆる活物質又は固体電解質材料上のコーティングされていない表面に対して向上した性能を提供するわけではない。具体的には、コーティング材料は、好ましくは、望ましくない副反応を抑制しながらイオン移動をもたらす機械的に安定なコーティング20を形成するように選択される。適切なコーティング材料は、コーティング20が表面30と反応して、下にある表面材料を予測不能に改変させないように選択することができる。好適なコーティング材料は、コーティング20が非多孔性であり、活物質の電解質への直接暴露を抑制するように選択することができる。
当業者は、コーティング20と表面30との望ましくない組み合わせは、「Hume-Rothery」の法則(H-R)として知られる基準により特定できることを理解している。これらの法則は、溶質と溶媒が固体状態で反応して固溶体を生じる場合の熱力学的基準を特定する。H-Rの法則は、コーティング20と表面30との間の望ましくない反応がいつ生じ得るかを特定するのを助けることができる。これらの法則は4つの基準を含む。これらの基準が満たされると、コーティングと下地の活物質との間の望ましくない制御されない反応が起こり得る。4つの基準の全てが満たされたとしても、コーティング20と基材30との特定の組み合わせは、それにもかかわらず、実行可能であり、すなわち、本開示のコーティングとして機械的に安定で有効であることができる。コーティング20と表面30との間の反応を開始させるためには、H-Rの法則に加えて他の熱力学的基準が必要とされることがある。4つのH-Rの法則はガイドラインである。副反応が起こるためには4つの基準の全てが満足される必要はなく、さらに、当該法則のサブセットのみが満たされていても副作用が生じる可能性がある。それにもかかわらず、上記法則は、コーティング20及び表面30の材料の適切な組み合わせを特定するのに有用であることができる。
第1に、溶質(solute)原子と溶媒(solvent)原子の原子半径は15%以下で異なっていなければならない。この関係は、式4によって定義される。
第2に、溶媒と溶質の結晶構造が一致しなければならない。
第3に、溶媒と溶質が同じ原子価を有する場合、完全な溶解性が生じる。金属は、より価数の低い金属中に溶解するよりも、より高い価数の金属中に溶解する。
第4に、溶質及び溶媒は、同様の電気陰性度を有するべきである。電気陰性度の差が大きすぎると、金属は固溶体の代わりに金属間化合物を形成する傾向がある。
一般的に、コーティング材料を選択する場合、下地の活物質に溶解しない機械的に安定で、薄く、均一で連続的なコーティング層を形成するコーティングを特定するのを助けるためにH-Rの法則を使用することができる。したがって、活物質とコーティングとがより熱力学的に異なるほど、コーティングがより安定になりやすい。
特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20の材料組成は、1つ以上の電池性能特性を満たすことができる。特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、電気絶縁性であることができる。他の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、電気絶縁性であることはできない。ナノ加工コーティング20は、電解質表面30又はカソードもしくはアノード活物質表面30とのより強い化学結合を支援して、表面30の変質又は劣化に多かれ少なかれ抵抗することができる。望ましくない構造変化又は劣化としては、割れ(cracking)、金属分布の変化、不可逆的な体積変化、及び結晶相変化が挙げられる。別の実施形態において、ナノ加工コーティングは、表面割れを実質的に防止することができる。
例1
本発明の一実施形態を、NMC811上にアルミナコーティングを使用して作製した。活物質NMC811粉末を、原子層堆積によって処理して、NMC811の活物質粒子上にAl2O3のコーティングを堆積させた。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で実施される。NMC811粉末は、NMC活物質粒子上にAl2O3の10nmコーティングを堆積させるのに十分な条件下でALDプロセスによってコーティングした。次いで、コーティングされた粒子を使用して活物質ペーストのスラリーを形成し、これを集電体に適用して電極を形成した。次いで、電極を用いて電池を作製し、コーティングされていない活物質に対して試験した。
コーティングされた材料は、図7Cに示されているように、C/3サイクルレートで33%のフルセル周期寿命の改善をもたらし、図8Aに示されているように、1Cサイクルレートで38%改善した。コーティングされた材料は、また、図10Aに示されているように、より高い電圧でのハーフセルレート能力試験で改善を示した。図10Aに示されているように、Al2O3被覆粒子は、4.8V対Liに充電された場合に、コーティングされていない材料と比較したときに、C/3レートで8%高い容量、1Cレートで50%高い容量、5Cレートで1,000%高い容量を有する。
X線光電子分光法を使用して、修飾及び未修飾NMC811カソードを用いたパウチセル内で1C/-1Cでサイクルされたグラファイトアノードの表面上のSEIを分析した。アノードサンプルを、コーティングされていないNMC811、Al2O3でコーティングされたNMC811、及びTiO2でコーティングされたNMC811の3種の異なるカソードを用いて、パウチセルから分析した。深さプロファイリングの結果は、コーティングされていないNMC811を用いてサイクルされたグラファイトのSEIの表面1nmがリンに富んでいたが、Al2O3及びTiO2被覆NMC811を用いてサイクルされたグラファイトサンプルの場合にはリン含有量は深さによらず一定であることを示した。結果は、また、MnがコーティングされていないNMC811を用いてサイクルされたグラファイトのSEI中に存在することを示したが、Al2O3及びTiO2被覆NMC811を用いてサイクルされたグラファイトサンプルの場合にはMnは検出されなかった。
例2
本発明の実施形態を、NCA上にアルミナコーティングを使用して作製した。活物質NCA粉末を、原子層堆積により処理して、NCAの活物質粒子上にAl2O3のコーティングを堆積させた。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で実施される。NCA粉末は、NCA活物質粒子上にAl2O3の10nmのコーティングを堆積させるのに十分な条件下でALDプロセスによってコーティングした。次いで、コーティングされた粒子を使用して活物質ペーストのスラリーを形成し、これを集電体に適用して電極を形成した。次いで、電極を用いて電池を作製し、コーティングされていない活物質に対して試験した。
コーティングされた材料は、図9Aに示されているように、1Cサイクルレートで31%のフルセルサイクル寿命の改善をもたらした。コーティングされた材料は、また、図9Cに示されているように、1C放電レートで19%の容量の改善を示した。
例3
本発明の実施形態を、NCA上にチタニアコーティングを使用して調製した。活物質NCA粉末を、原子層堆積により処理して、NCAの活物質粒子上にTiO2のコーティングを堆積させた。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で実施される。NCA粉末は、NCA活物質粒子上にTiO2の10nmコーティングを堆積させるのに十分な条件下でALDプロセスによってコーティングした。次いで、コーティングされた粒子を使用して活物質ペーストのスラリーを形成し、これを集電体に適用して電極を形成した。次いで、電極を用いて電池を作製し、コーティングされていない活物質に対して試験した。
コーティングされた材料は、図9Aに示されているように、1Cサイクルレートで57%のフルセルサイクル寿命の改善をもたらした。コーティングされた材料は、また、図9Cに示されているように、1C放電率で11%の容量の改善を示した。
例4
本発明の実施形態を、NMC811上にLiPONコーティングを使用して作製した。活物質NMC811粉末を、原子層堆積により処理して、NMC811の活物質粒子上にLiPONのコーティングを堆積させた。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で実施される。NMC811粉末は、NMC811活物質粒子上にLiPONの10nmコーティングを堆積させるのに十分な条件下でALDプロセスによってコーティングした。次いで、コーティングされた粒子を使用して活物質ペーストのスラリーを形成し、これを集電体に適用して電極を形成した。次いで、電極を用いて電池を作製し、コーティングされていない活物質に対して試験した。
コーティングされた材料は、高い電圧で、ハーフセルレート能力試験で改善を示した。図10Aに示されているように、LiPON被覆粒子電極は、4.8V対Liに充電された場合に、コーティングされていない材料と比較したときに、C/5レートで6%高い容量、C/3レートで17%高い容量、1Cレートで65%高い容量、5Cレートで1000%高い容量を示した。
例5
本発明の実施形態を、LMR-NMC上にLiPONコーティングを使用して作製した。活物質LMR-NMC粉末を、原子層堆積により処理して、LMR-NMCの活物質粒子上にLiPONのコーティングを堆積させた。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で行われる。LMR-NMC粉末は、LMR-NMC活物質粒子上にLiPONの10nmコーティングを堆積させるのに十分な条件下でALDプロセスによってコーティングした。次いで、コーティングされた粒子を使用して活物質ペーストのスラリーを形成し、これを集電体に適用して電極を形成した。次いで、電極を用いて電池を作製し、コーティングされていない活物質に対して試験した。
コーティングされた材料は、高い電圧で、ハーフセルレート能力試験で改善を示した。図10Bに示されているように、LiPON被覆粒子は、4.8V対Liに充電された場合に、コーティングされていない材料と比較したときに、C/5レートで5%高い容量、C/3レートで28%高い容量、1Cレートで234%高い容量、及び5Cレートで3,700%高い容量を示した。
特定の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、カソード金属の溶解、酸化、及び再分布を実質的に防止することができる。図4Aは、サイクリング前のコーティングされていない活物質を示す。図4Aに示されているように、表面は非多孔質で、密に詰まっており、均一である。図4Bは、カソード金属溶解、酸化及び再分布を経験した後の、図4Aのカソード材料を示す。表面は多孔質で、粗く、不均一に見える。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、相転移を緩和することができる。例えば、図4B及び図5Bに示されているもののようなコーティングされていない材料では、活物質のサイクリングは、層状NMCのスピネルNMCへの相転移をもたらす。このスピネル形態は、より低い容量を有する。この転移は、逆格子点の位置の変化として、図6A及び図6Bに示されている。本開示の被覆材料において、Al2O3のアルミナコーティングは、約10nmの厚さでカソード活物質粒子に適用される。コーティングされた活物質のサイクリングによって、SEM画像のピークに変化は見られない。また、サイクリング後の格子及び表面の劣化は観察されない。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、カソードにおけるリチウムイオン伝導性及びリチウムイオン溶媒和を高めることができる。図8B及び9Bは、コーティングされていない活物質よりもインピーダンスの低い電荷移動成分を示すALD被覆によるサイクル性能を示す。これは、サイクリングにわたって高いまま保たれるLiイオン伝導性に起因する。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、他の原子及び/又は分子の通過を、それらのサイズに基づいてフィルターすることができる。いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20の材料組成は、イオン及び分子拡散におけるサイズ選択性を支援するように調整される。例えば、コーティング20は、リチウムイオンが自由に拡散することを可能にすることができる、カソード金属及び電解質種などの分子のようなより大きなカチオンがブロックされる。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、弾性又はアモルファスである材料を含む。代表的なコーティング20は、アルミニウムカチオンとグリセロールとの錯体、アルミニウムカチオンとグルコースとの錯体を含む。これらの実施形態のいくつかでは、コーティング20は、膨張していても活物質表面とのコンフォーマル接触を維持する。特定の実施形態において、コーティング20が適用された表面30が元の形状又は構成に戻ることをコーティング20が支援することができる。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、電解質160からコーティング20へのインターカレーションイオンの拡散が、活物質のコーティングされていない表面30への拡散よりも低いエネルギー障壁を有するような材料を含む。これらは、例えば、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のアルミナコーティングを含むことができる。いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、界面を横切るコーティングから活物質への自由なインターカレーションイオン輸送を促進し、それにより活物質表面30との結合を促進することができる。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、表面30で活物質と固体状態反応を経て、新規な機械的に安定な構造を生じる材料を含む。例示的な材料としては、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物のチタニアコーティングが挙げられる。
いくつかの実施形態において、電解質160は化学的に安定であることができ、コーティング20は、チタン酸リチウム上にアルミナ又はチタニアコーティング20を含むことができる。
ナノ加工コーティング20で使用することができる材料の完全に網羅されていないリストとしては、Al2O3、ZnO、TiO2、SnO2、AlF3、LiPON、LixFePO4、B2O3、NaxV2(PO4)3、Li10GeP2S12、LaCoO3、LixMn2O4、アルコン(Alucone)、Rh4(CO)12、Mo6Cl12、B12H12、Li7P3S11、P2S5、ブロック共重合体、ゼオライトが挙げられる。
当業者は、ナノ加工コーティング20の前述の例示的な材料組成を、単独で又は互いに組み合わせて使用して、あるいは別の1又は複数の材料と組み合わせて使用して、複合ナノ加工コーティング20を形成してもよいことを理解するであろう。
本開示の実施形態の電池は、原動力又は定置電力用途に使用することができる。図11及び図12は、本開示の例示的な実施形態の電池100を有する電気車両1100を示す概略図である。図11に示されているように、車両1100は、ハイブリッド電気車両であることができる。内燃エンジン(ICE)200は、モータージェネレーター300に連結されている。電気トラクションモーター500は、車両のホイール600にエネルギーを供給するように構成されている。トラクションモーター500は、電力インバーター400を介して電池100又はモータージェネレーター300のいずれかから電力を受け取ることができる。いくつかの実施形態において、モータージェネレーター300は、ホイールハブ内に配置され、トラクションモーター500に直接連結されてもよい。いくつかの実施形態において、モータージェネレーター300は、ホイール600にパワーを供給するように構成されたトランスミッションに直接的又は間接的にリンクされていてもよい。いくつかの実施形態において、モータージェネレーター300がホイール600からもパワーを受け取るように、回生制動機が車両1100に組み込まれている。図12に示されているように、ハイブリッド電気車両1100は、電池100を制御するように構成された高電圧パワー回路700などの他の構成要素を含むことができる。高電圧パワー回路700は、電池100とインバーター400との間に配置されてもよい。ハイブリッド電気車両1100は、ジェネレーター800及びパワースプリット装置900を含むことができる。パワースプリット装置900は、内燃エンジン200からのパワーを2つの部分に分割するように構成することができる。パワーの一部をホイール600を駆動するために使用することができ、パワーの他の部分を使用して、ジェネレーター800を駆動し、内燃エンジン200からのパワーを使用して発電することができる。ジェネレーター800によって生成された電気は、電池100に蓄えられてもよい。
図11及び図12に示されているように、本開示の実施形態は、電池100に使用されてもよい。図11及び図12に示されているように、電池100は、リチウムイオン電池パックであってもよい。他の実施形態において、電池100は、他の電気化学又は多重電気化学であってもよい。「Hybrid Battery System for Electric and Hybrid Electric Vehicles(電気及びハイブリッド電気車両のためのハイブリッド電池システム)」についてのDharらの米国特許出願公開第2013/0244063号公報、及び「Energy Storage Device for Loads Having Variable Power Rates(可変パワーレートを有する負荷のためのエネルギー貯蔵装置)」についてのDasguptaらの米国特許出願公開第2008/0111508号公報参照。これらの両方が、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。車両1100は、ハイブリッド電気車両又は全電気車両であることができる。
図13は、電池100によって電力供給される定置電力用途1000を示す。施設1200は、オフィス用、商業用、工業用又は住宅用の建物を含む任意のタイプの建物であることができる。例示的な実施形態において、エネルギー貯蔵ラック1300は、電池100を含む。電池100は、ニッケルカドミウム、ニッケル-金属水素化物(NiMH)、ニッケル亜鉛、亜鉛-空気、鉛酸、もしくは他の電気化学型、又は複数の電気化学型のものであることができる。図13に示されているように、エネルギー貯蔵ラック1300は、分配ボックス1350に接続されていることができる。施設1200用の電気システムは、配電ボックス1350につながれていて、配電ボックス1350によって給電されてもよい。例示的な電気システムとしては、電源コンセント、照明、及び加熱、換気及び空調システムが挙げられる。
本開示の実施形態のナノ加工コーティング20は、いくつかの方法のうちのいずれかで適用することができる。図14、15、16及び17は、いくつかの代替の適用方法を概略的に示す。図14は、原子層堆積(ALD)を使用して、カソード活物質、アノード活物質又は固体電解質材料表面の表面30をコーティングするプロセスを示す。図14に示されているように、このプロセスは、(i)表面30と反応する前駆体蒸気(A)に表面30が曝されるステップと、(ii)表面30と前駆体蒸気(A)との間の反応により表面30上に前駆体分子の第1の層が生じるステップと、(iii)修飾された表面30が第2の前駆体蒸気(B)に曝されるステップと、(iv)表面30と前駆体蒸気(A)及び(B)との間の反応により、化合物AXBY、AX又はBYを含む、第1の層に結合した第2の層が生じるステップを含む。
本開示では、原子層堆積及び分子層堆積は、同義的かつ互換的に用いられる。
いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20は、分子層堆積(例えば、有機骨格、例えばアルミニウムグリセリドなどによるコーティング)によって適用される。表面30は、限定されるわけではないが、その中に電解質を有するチャンバに蒸気を加えること;前駆体蒸気(A)及び/又は(B)を放出するために材料を攪拌すること;及び/又は前駆体蒸気(A)及び/又は(B)を生成させるために電解質の表面を攪拌することを含む様々な方法のいずれによっても前駆体蒸気(A)及び(B)に暴露することができる。
特定の実施形態において、原子層堆積は、好ましくは、流動床システムで行われる。代替的に又は追加的に、表面30は静止状態で保持され、前駆体蒸気(A)及び(B)が粒子10の表面30の間の細孔に拡散させることができる。いくつかの実施形態において、電解質表面と前駆体蒸気との間の接触を改善するために、表面30を活性化、例えば加熱又は触媒で処理することができる。原子層堆積は、典型的には、室温から300℃超にわたる温度で、及び、良好な処理量を提供しながら満足できるコーティングを確実に得るのに十分な堆積速度で行われる。他の実施形態において、原子層堆積は、より高い又はより低い温度、例えば室温(又は70°F)より低い温度又は300℃を超える温度で行われてもよい。例えば、原子層堆積は、ポリマー粒子の場合は25℃~100℃の温度で、金属/合金粒子の場合は100℃~400℃の温度で行うことができる。
別の実施形態において、表面30は、前駆体A及び/又はBに加えて前駆体蒸気に暴露されてもよい。例えば、触媒は、原子層堆積により表面30に適用されてもよい。他の実施形態において、触媒は、本明細書に記載した様々な堆積技術を含むが、それらに限定されない別の堆積技術によって適用されてもよい。例示的な触媒前駆体としては、1又は2種以上の金属ナノ粒子、例えばAu、Pd、Ni、Mn、Cu、Co、Fe、Pt、Ag、Ir、RhもしくはRu又は金属の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の触媒としては、例えばPdO、NiO、Ni2O3、MnO、MnO2、CuO、Cu2O、FeO、Fe3O4、SnO2が挙げられる。
別の実施形態において、原子層堆積は、「Lithium Ion Battery and Method for Manufacturing of Such a Battery(リチウムイオン電池及びそのような電池の製造方法)」に関するReynoldsらの米国特許第8,956,761号明細書に開示されているステップのうちのいずれか1つを含むことができる。米国特許第8,956,761号明細書は、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、参照によりその全内容を本明細書に援用する。他の実施形態において、原子層堆積は、表面30上にナノ加工コーティング20を堆積させる前に、前駆体蒸気(A)及び/又は(B)を流動化するステップを含むことができる。「Method for Covering Particles, Especially Battery Electrode Material Particles, and Particles Obtained with Such Method and A Battery Comprising Such Particle(粒子、特に電池電極材料粒子及び粒子を被覆する方法」に関するKelderらの米国特許第8,993,051号明細書を、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、参照によりその全内容が本明細書に援用する。代替の他の実施形態において、任意の前駆体(例えば、A又はB)を固体状態で適用することができる。
別の実施形態において、第1及び第2の前駆体蒸気(例えば、図14のA、B)を導入するサイクルを繰り返すことにより、材料の第2の単層を表面30上に加えることができる。前駆体蒸気は、気相の前、間又は後に混合することができる。
原子層堆積のための例示的な好ましいコーティング材料としては、金属酸化物、自己組織化2D構造体、遷移金属、及びアルミニウムが挙げられる。
図15は、化学蒸着によって表面30にコーティング20を施すプロセスを示す。この実施形態において、化学蒸着が表面30上のウェハに適用される。ウェハは、揮発性前駆体50に暴露されて、表面30上で反応又は分解し、それによって表面30上にナノ加工コーティング20を堆積させる。図15は、単一の電解質又は複数の電解質に同時に適用することができるホットウォール熱化学蒸着操作を示す。加熱要素が、チャンバ60の上部及び下部に配置される。加熱は、前駆体50にエネルギーを与えるか、又は前駆体50が表面30と接触することをもたらす。他の実施形態において、ナノ加工コーティング20は、他の化学蒸着技術、例えばプラズマ支援化学蒸着によって適用することができる。
図16は、電子ビーム蒸着によって表面30にコーティング20を適用するプロセスを示す。表面30及び添加剤55は、真空チャンバ70内に配置される。添加剤55に電子ビーム80によって。添加剤55の原子は、気相に変換され、表面30上に析出する。電子ビーム80は、電源90に取り付けられた装置88によって分配される。
図17は、真空蒸着(VD)を使用して表面30にコーティング20を適用するプロセスを示す。ナノ加工コーティング20は、高温真空チャンバ210内で適用される。リザーバ230に貯蔵された添加剤220は、高温真空チャンバ210に供給され、添加物220は蒸発して表面30上に凝縮する。弁240は、チャンバ210内への添加剤220の流れを制御する。ポンプ250は、チャンバ210内の真空圧力を制御する。
ナノ加工コーティング20を表面30に適用する前述の例示的な方法のいずれも、表面30上にナノ加工コーティング20を堆積させるために、単独で、又は別の方法と組み合わせて使用することができる。表面30の一部分は、特定の材料組成のナノ加工コーティング20でコーティングすることができるが、表面30の別の部分は、同じ又は異なる材料組成のナノ加工コーティング20でコーティングすることができる。
電解質表面へのナノ加工コーティング20の適用は、本明細書に例示又は議論した実施形態に限定されない。いくつかの実施形態において、ナノ加工コーティング20をパターン形成で適用して、高イオン伝導率を有する領域と高弾性又は機械的強度を有する領域との交互領域を提供することができる。いくつかの実施形態のナノ加工コーティング20の例示的な材料選択としては、POSS(多面体オリゴマーシルセスキオキサン)構造体、ブロックコポリマー構造体、エネルギー場もしくは最低エネルギー状態下で自己集合する2D及び3D構造体、例えばエネルギー最小値のないガラスなどが挙げられる。NECは、これらの実施形態において、ランダムに又は周期的に分布させることができる。
ナノ加工コーティングを適用するために本明細書に例示又は議論したもの以外の他の適用技術を使用してもよい。例えば、他の実施形態において、ナノ加工コーティング適用プロセスとしては、レーザー堆積、プラズマ堆積、高周波スパッタリング(例えば、LiPONコーティングによる)、ゾル-ゲル(例えば、金属酸化物、自己組織化2D構造体、遷移金属又はアルミニウムコーティングによる)、マイクロエマルジョン、連続イオン層堆積、水性堆積、メカノフュージョン、固体状態拡散、ドーピング又は他の反応が挙げられる。
本開示の実施形態は、固体電池を含む任意のタイプの電池で実施することができる。電池は、様々な電気化学物質、例えば、亜鉛-水銀酸化物、亜鉛-銅酸化物、塩化アンモニウム又は塩化亜鉛電解質とともに亜鉛-二酸化マンガン、アルカリ電解質とともに亜鉛-二酸化マンガン、カドミウム-水銀酸化物、銀-亜鉛、銀-カドミウム、リチウム-炭素、Pb-酸、ニッケル-カドミウム、ニッケル-亜鉛、ニッケル-鉄、NiMH、リチウム化学物質(例えばリチウム-コバルト酸化物、リチウム-鉄リン酸、及びリチウムNMCのような)、燃料電池又は銀-金属水素化物電池を有することができる。本開示の実施形態は、本明細書に具体的に記載される電池のタイプに限定されないことを強調する。本開示の実施形態は、任意の電池タイプで使用することができる。
例えば、上述したナノ加工コーティング20は、鉛酸(Pb酸)電池(鉛蓄電池)に適用することができる。典型的な鉛酸電池では、電極での反応の生成物は硫酸鉛である。充電時に、硫酸鉛が、正極でPbO2に変換され、負極でスポンジ状鉛金属に変換される。
PbO2及び鉛は良好な半導体であるが、硫酸鉛は不導体である。同様に、負極側では、PbSO4は不導体である。充電の生成物、すなわちPbは良好な金属導体である。電極が放電される際、アノードでPbO2が、カソードでPbが硫酸鉛に変換され、抵抗がかなり増加する。実現可能な電力は抵抗に依存するので、抵抗の増加は望ましくない。この問題は、負極において、絶縁性の硫酸鉛の形成にもかかわらず抵抗を低く保つ導電性添加剤を添加することによって部分的に解決された。例えば、高表面積導電性炭素をアノード混合物に添加することができる。この添加は、2つの重要な働きをする。大きな表面積の増加によって、有効動作電流密度が低く保たれ、それによりカソード電極分極は最小限に抑えられる。さらに、カソード混合物中の炭素の存在は、充電又は放電中の混合物の有効伝導率を改善する。添加剤が水素の過電圧に影響を与えないよう、炭素のタイプの選択は重要である。添加剤が水素の過電圧に影響を与える場合、望ましくないガス発生の問題が発生する。当然のことながら、適切な炭素を使用すれば、水素発生を遅らせ、ガスの発生を最小限に抑えることができる。鉛酸電池の負極が動作する電位では、炭素が腐食又は消滅しないようにカソード保護されている。これは、鉛蓄電池の機能において非常に重要である。
さらに、硫酸鉛と二酸化鉛と鉛金属の体積に有限の変化がある。硫酸鉛の形成に起因するこの体積の増加は、鉛蓄電池の主な関心事である。体積変化は電極に応力を生じ、電極の成長を促進する。硫酸鉛は酸性媒体中にわずかしか溶解しないので、成長はいくらか永続的になる。充放電のサイクルごとに、硫酸鉛の二酸化鉛及び鉛金属への変換は可逆的であると考えられている。効率の問題のために、セルが老化するにつれて、変換プロセスはますます可逆的になる。通常の電池動作では、その成長を元に戻すことはできない。
硫酸鉛の成長の別の結果は、電極の抵抗の増加である。集電体と活物質との接着は、硫酸鉛の存在により弱まる。また、内部応力は、グリッド/活物質界面を屈曲させ、潜在的な離層をもたらす。基材と活物質との間の接着が弱くなると、電解質が隙間に入って基材を攻撃し始め、硫酸鉛の成長をもたらす。これが起こると、抵抗は増加し続ける。
よりパワフルで低コストの電池を求める自動車産業の要求が増しているため、モジュール/セル抵抗を低減する他の手段を探すことが不可欠である。アノードの抵抗は、この問題に取り組むための1つの論理的選択肢であると思われる。カソード側に加えて電極のアノード側に同様の技術を採用することは、うまく機能しないことがある。これは、主に、アノードが作用する電位による。また、約60~70%の電荷入力後、アノード化学の熱力学は、酸素発生が活物質充電を伴うことを決定づける。このアノード電位及び初期の酸素発生では、抵抗を減少させるための炭素の添加は、炭素が酸化されるため、有用ではない。アノードの伝導率を改善するための他の添加剤は、電位と強酸性環境のために、潜在的に機能しなくなるおそれがある。
これらの問題を解決する1つの方法は、原子層堆積技術を使用して炭素粒子を被覆し、粒子が直面するアノード電位で酸化又は分解することなく混合物に伝導性を付与することである。
開示される実施形態と矛盾しないで、活物質は、電池パック内のそれらの位置及び幾何学的配置に従ってそれらの機能を促進するように設計されてもよい。電極に組み込むことができる機能としては、電極機能(例えば、より遅い/より速い反応速度)に合わせた化学組成、地球重力場による勾配を有することになる電極の重量、電極スタックの中央部とコーナー部での反応速度の差を補償することを可能にする電極のポロシティ(porosity)の勾配が挙げられる。
さらに、よりパワフルで低コストの電池を求める自動車産業の要求が増しているため、高パワー能力が達成されるように硫酸鉛の成長をできるだけ低く保つ方法を探すことが望ましい。コストの観点から、現在、鉛酸電池システムは、停止始動用途にとって最も実行可能な選択肢である。
他の再充電可能な電池システム及び特定の燃料電池においても、電極成長、活物質の腐食、基材の腐食、添加剤の腐食などが存在する。これらのシステムで使用される活物質の多くは、体積変化を受けるか、もしくはそれらが暴露される環境によって攻撃されるか、又は反応の生成物によって腐食される。例えば、ニッケル金属水素化物電池に用いられる金属水素化物電極や、ニッケル亜鉛電池もしくはニッケル-空気電池に用いられる亜鉛電極や、Ni-Fe電池に用いられる鉄電極は全て、腐食に加え、徐々に不可逆的な体積変化を起こす。水素化物電極の劣化、水素化物合金からのコバルト及びアルミニウムの腐食、ならびに基材と活物質との間の結合が損なわれることは、ニッケル金属水素化物電池に存在する故障メカニズムのいくつかである。同様に、「形状変化」及び不可逆成長は、ニッケル亜鉛及び亜鉛空気電池の故障に寄与する。鉄電極の腐食、ガス発生、鉄電極から溶出した溶出物による正極の被毒は、Ni-Fe電池で懸念される事項である。全てのニッケルに基づく正極も体積変化を受け、その後のソフトショート(soft shorts)及び活物質の脱落を起こす。これらのシステムの全てで、炭素がこれらの正電極の動作電位で酸化されるので、導電性を改善し、腐食を低減するためにカソードに炭素添加剤を組み込むことも困難である。アルカリ又は酸性ポリマー電解質に基づく燃料電池も同様の酸化の問題を有する。これらの場合、導電性を高め、表面積を増大させ、反応物ガスを分配する手段を提供するために炭素が使用される。アルカリ燃料電池の場合、カソードでさえ、炭素は望ましくない。炭素が安定であると考えられるカソード電位であるにもかかわらず、酸素還元は、炭素添加剤及び基材と反応してその安定性を損なう過酸化物イオンを生成する。
開示される実施形態と矛盾しないで、ALD/MLD技術は、形成、成長及び腐食を含むけれども、基本の電流生成反応を損なわない材料(例えば、ナノ加工コーティング材料)で正及び負の活物質をコーティングすることができる。ALD及びMLDによって製造されたフィルムは非常に薄く、活物質を保護しながら反応を進行させることを保つのに十分な量のナノ細孔を有する。例えば、原子層堆積技術を使用して、粒子がそれらが直面するアノード電位で酸化又は分解することなく、粒子が混合物に導電性を付与するように、炭素粒子を被覆することができる。
開示される実施形態と矛盾しないで、活物質を、保護コーティングで被覆することにより、封じ込められた活物質の成長能によりそれらの機能を増進することができる。ALD/MLDコーティングは、性能に影響を与えずにリチウム電池のSEI層形成を防止/遅延させるのに有効であることが証明された。ALD/MLDコーティングは、鉛酸電池やニッケル金属水素化物電池などの市販の再充電可能な電池システムの大部分を含む他の電池にも適用できる。
鉛酸電池(又は他の電池)の活物質を被覆するために、適切な前駆体が、電池システムの正及び負の活物質(例えば、鉛酸電池システム)上のALDコーティングを効果的に被覆するように選択される。
開示される実施形態と矛盾しないで、電極材料のコストを過度に増加させずに機能性を保持する新規な技術を使用して、様々なコーティングを適用して電極を構築することができる。
本発明者らは、保護コーティングにより活物質の過度の成長を低減し、電池内の実際の存在状況におけるその有効性を評価するというプログラムに直面している。この問題を解決するために、ナノ加工コーティングを活物質に適用する開示される実施形態は、正極の全体的な抵抗を本質的に減少させ、カソード活物質への導電性添加剤のバルク添加をもたらるす。これは、より高い比出力値の達成を促進する。開示される実施形態の利点としては、電極のより低い抵抗、パック内での均一な熱及び均一な化学反応速度/ガス発生プロセスの分布、及びより高い比出力の実現が挙げられる。サイクル寿命も向上させることができる。
いくつかの既存の電池では、コーティングを負極に適用することができる。正極の場合、ナノカーボン添加剤及びシングルウォール(single walled)及びマルチウォール(multi walled)ナノカーボン添加剤が使用されている。しかし、これらは高価な添加剤であり、その寿命を改善する必要がある。開示される実施形態と矛盾しないで、鉛蓄電池(及び他の電池)の活物質ならびに添加剤に低コストの保護コーティングを適用することができる。
開示される実施形態と矛盾しないで、鉛蓄電池において、原子層堆積(ALD)を使用して酸化防止コーティングを炭素粒子上に堆積させることができる。ALDコーティングは、様々な用途のために表面にコーティングを提供するために開発されたより最近の技術のうちの1つである。この技術は、電池(例えば、鉛酸電池、リチウムイオン電池、及び他の適切な電池)の活物質をコートし、電池の性能及びサイクル寿命の大幅な改善を達成するために使用することができる。これらのコーティングは、熱暴走の状況からある程度の保護を提供することもできる。この技術に関してより顕著なことは、コーティングが0.1ミクロン未満であり、通常はナノスケールであることである。
開示される実施形態のいくつかの利点としては、正の活物質(positive active material)(PAM)及び負の活物質(negative active material)(NAM)電極の抵抗を下げ、モジュールの全体的な抵抗を低下させ、比出力を改善し、サイクル寿命を向上させることが挙げられる。
図18は、他の技術に対する原子層堆積を示す。図18に示されているように、原子層堆積及び分子層堆積は、約0.05ミクロン~約500ミクロンの範囲のサイズを有する粒子を使用し、約0.001ミクロン~約0.1ミクロンの範囲の厚さを有するフィルムを生成することができる。化学気相堆積法は、約1ミクロン~約80ミクロンの範囲のサイズを有する粒子を使用することができ、約0.1ミクロン~約10ミクロンの範囲の厚さを有するフィルムを生成することができる。パンコーティング、ドラムコーター、流動床コーティング、噴霧乾燥、溶媒蒸発及びコアセルベーションのような他の技術は、約80ミクロン~10000ミクロンの範囲のサイズを有する粒子を使用することができ、約5ミクロン~約10000ミクロンである。図18に示す範囲は、概略的かつ例示的なものに過ぎず、正確な縮尺ではない。
ALDは、コーティング厚さのサブナノメートル制御による気相堆積技術である。堆積プロセスを繰り返すことにより、より厚いコーティングを所望通りに構築することができる。これらのコーティングは、水素、リチウム、Pb-酸などのイオンの輸送に対して透過性であるが、より大きなイオンを許容しない。これは、望ましくない副作用の発生を防止する上で重要である。開示される実施形態は、炭素粒子をALDコーティングで被覆し、ALDでコーティングされた炭素粒子を正の活物質(PAM)混合物の添加剤として使用することを含むことができる。炭素の添加は混合物の全体的な導電性を改善するが、電極電位による炭素の酸化、及び酸素の発生は、コーティングのおかげで起こらなくなる。PAM/溶液界面には電極表面上のALDコーティングのみが見え、腐食は起こらなくなる。
開示される実施形態と矛盾しないで、ALD/MLDコーティングは、溶液中の他のイオンへのアクセスが所望されるか否かに依存して、個々のクラスターとして、又は連続フィルムとしてコーティングすることができる。クラスター間の空き領域(open area)の制御は、クラスターのサイズによって制御することができる。言い換えれば、コーティングは、活物質上でナノフィルターとして機能するが、依然として反応サイトへのアクセスを提供する。クラスター細孔よりもはるかに大きいPAM酸素分子上の炭素粒子上のALDコーティングの場合、炭素基材は酸化されないが、他の電気化学反応は依然として進行することができる。
本発明者らは、ALDコーティングについて試験を行った。試験結果から、ALDコーティングでは、電池のサイクル寿命が向上し、抵抗が減少することが判った。さらに、ALDコーティングを有する電池では、相転移が阻害され、ゲル化又はゲル化が妨げられ又は抑制される。混合物中に過剰な水及び熱が存在する場合に、電池内でゲル化が生じる。混合物はゲルになり、流動しない。ゲルは、電池製造プラント内の内部パイプを詰まらせる可能性がある。目詰まりしたパイプは、清掃又は交換する必要がある。電池の活物質及び/又は固体電解質を被覆することにより、ゲル化の問題を抑制することができる。図10Cに示す試験結果は、ALDコーティングがゲル化を防止又は低減できることを実証している。
本開示の一態様は、NMC粒子表面からLiOH種を除去することを含む。本開示の別の態様は、粒子表面と、PVDF又はPTFEなどのバインダー添加剤との間の相互作用を制御することも含む。本開示のさらなる態様は、表面酸性度もしくは塩基性度又はpHを制御することを含む。本開示は、水又はNMPのような特定の溶媒、あるいは、PVDF又はPTFEなどの特定のバインダー添加物を含む態様をさらに含む。開示されるALDコーティングは、Ni、Mn、Co、Al及び他の遷移金属の合計の50%より多いNi含有量を有する材料に対して特に重要である。
本開示の1つの態様は、いくつかの順序で、いくつかの組み合わせで、制御された水の吸収もしくは吸着又は低減された吸収もしくは吸着のための層、活物質構造安定性のための層、他の層をドーピングするための原子を提供する層、活物質をドーピングするための原子を提供する層、及び/又は電解質の酸化を低減させるためもしくは制御された電解質の分解及びSEI形成のための層を含む。
本開示の1つの態様は、釘刺し、短絡、圧潰、高電圧、過充電及び他の事象といった事象中の向上した電池の熱安定性を含む。アノード、カソード、固体電解質、これらの特定の組み合わせ、又はこれらの全てをコーティングすることによって、電池の熱安定性を改善することができる。本教示は、様々な電気システム、例えば電気車両(electric vehicles)、施設エネルギー貯蔵、グリッドストレージ及び安定化、再生可能エネルギー源、ポータブル電子デバイス及び医療機器を支えるための電池に適用することができ、中でも、本開示で使用される「電気車両」としては、電気によって完全に又は部分的に駆動される車両を含むが、それらに限定されない。開示される実施形態は、電気車両、ハイブリッド電気車両又はプラグインハイブリッド電気車両に使用される(ナノ加工コーティングでコーティングされた)鉛酸電池のための道を開く改良された比出力性能をもたらす。
表面コーティング及び高スループット蒸着法は、高効率かつ低コストで全固体二次電池のための安定化された基材を含む適合された組成物を製造するための手段である。蒸着技術の例としては、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)、分子層堆積(MLD)、気相エピタキシー(VPE)、原子層化学蒸着(ALCVD)、イオン注入又は類似の技術が挙げられる。これらの各々において、コーティングは、気相(例えば、CVDの場合)又は基板の表面(例えば、ALD及びMLDにおけるように)のいずれかで反応する反応性前駆体に移動している粉末又は基材を暴露することによって形成される。これらのプロセスは、さらに、コーティング/封入プロセスを基材に適合させるためにプラズマ、パルスもしくは非パルスレーザ、RFエネルギー、及び電気アーク又は類似の放電技術を組み込むことによって促進することができる。
固体電解質(SSE)層は、これらの材料を含む固体二次電池が、液体電解質を含む系と同等の性能を有する初期特性を示すことを潜在的に可能にするのに十分なイオン伝導率(10-4~10-2Scm-1のオーダ)を最初に有する様々な組成のSSE基材を使用して製造することができる。例えばSn、Ta、Zr、La、Ge、Ba、Bi、Nbなどのドーパントを有する及び有しない、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づく又はリン酸塩に基づく系、例えばLi2S-P2S5、Li2S-GeS2-P2S5、Li3P、LATP(リチウムアルミニウムチタンホスフェート)及びLiPONなど、イオン伝導性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド又はチオール化材料に基づくものなど、LiSiCON及びNaSICON型材料、及び/又はガーネット型材料、及び/又はLiPON、及び/又はLi-NaSICon、及び/又はペロブスカイト、及び/又はナシコン(NASICON)構造電解質(例えばLATPなど)、Naベータアルミナ、LLZO、さらに、イオン伝導性の酸化物及びオキシフッ化物、例えばリチウムランタンチタネート、タンタレートもしくはジルコネート、リチウム化及び非リチウム化ビスマス又はニオブ酸化物及びオキシフッ化物など、リチウム化及び非リチウム化バリウムチタネート、及び高い絶縁強度を有する他の一般的に知られている材料、並びにこれらの類似の材料、組み合わせ及び誘導体は全て本発明においてSSE基材として適している。これらの系は、米国特許第9,903,707号明細書及び米国特許出願第13/424,017号明細書に記載されており、それらの全内容は参照により本明細書に援用される。これらの材料は、電極製造の前に(従来の配合技術又は種々のミリング技術を使用して)アノード及びカソード材料と組み合わせてもよく、さもなければ固体、液体電解質又はハイブリッド固体液体電解質電池のコンポーネント全体に導電性添加剤として使用してもよい。
上記の材料又は組成物の小さなサブセットは、CVD、PVDや、あまり頻繁には行われないALDのような蒸着技術(例えばドープ及び未ドープのLiPON、LLTO、LATP、BTO、Bi2O3、LiNbO3など)を使用して、固体電解質材料の利点を、電極と電解質(液体、固体、ハイブリッド液体-固体もしくは半固体のガラス又はポリマー)界面との間の相溶化コーティングとして組み込むための経路である。このようなコーティング及び材料の例は、米国特許第13/651,043号明細書及び米国特許第8,735,003号明細書に記載されており、これらの全内容を参照により本明細書に援用する。ALD及びMLDのような蒸着プロセスでは、粒子を2種以上の異なる反応物と連続的に接触させ、前記反応物接触ステップは、自己制限する(self-limiting)かもしくはしない、自己終了する(self-terminating)かもしくはしない、又はそれらの制限又は非制限を促進もしくは妨げるように設計された条件で優先的に行われてもよい。さらに、任意の2つの逐次的自己制限反応は、各工程を受け入れ、それによってそのような効率の値を得るために、サイクル工程間の任意の適切な反応器の加熱又は冷却を必要とする異なる温度で最も効率的に起こり得る。結局、蒸着技術を使用して最低コストでコーティング及びコーティングされた材料を製造するには、蒸着前駆体の制御を維持する、基材のための輸送手段を提供する高スループットシステムが、製造される材料の単位当たりの最低コストをもたらす。かかるシステムは、せいぜい、コーティングされる各基材のための再循環手段を提供し、時間ベースの処理ステップを使用するバッチシステムに起因する「時間的」技術に比して、「空間的」技術と呼ばれることが多くなってきている。空間敵ALDは、時間的ALDプロセスとは全く異なるシーケンスを採用するかかる技術の1つである。粒子や、シート、箔、フィルム又はウェブを移動させるためのロール・ツー・ロール・システムに対する空間的ALDに適した処理アプローチ及び装置の例は、米国特許出願第13/169,452号、第11/446,077号及び第12/993,562号明細書並びに米国特許第7,413,982号明細書に記載されており、これらの全内容を参照により本明細書に援用する。
固体エネルギー貯蔵システムが市販の液体電解質に基づく対応物とコスト競争力を有するようになるには、一般的な装置でのかかる物質の製造可能性及び加工性が望ましい。したがって、グローブボックスのような酸素及び水分制御された環境ではなく、乾燥室などの湿度制御された環境でサブコンポーネント及び/又はデバイスの製造が可能であることが重要である。湿分感受性及び/又は酸素感受性の基材に対する封入コーティングは、かかる製造可能性のための手段を提供することができ、従来の処理装置で前記材料をすぐ利用できる状態にすることができる。予め製造されたSSE層と予め製造された電極との間の界面を安定化させるためにALDを利用する方法は、米国特許出願第14/471,421号明細書に記載されており、これは、米国特許出願第13/424,017号明細書に記載されているSSE材料と界面で接合されたカソード粉末のALDコーティングへの代替的なアプローチである。しかし、これらの教示のいずれも、かかるバルクSSE層の形成前にSSE粒状材料を安全にもしくは確実に取り扱うことができるという目的、又は電極層中で電気的に活性な粉末と均質に同一場所にもしくは混合されていることが意図されるかかる材料を混合することができるという目的を達成しない。米国特許出願第14/471,421号で適用されるALDバリアは、電解質層と電極層との間の直接的な接触を確実にするために優先的に研磨され、そのため、ALDプロセスは、相互に直接接触する界面を保護する物理化学的バリア膜フィルムとして機能するというよりもむしろ、主として、これらの界面におけるボイド空間を満たす目的を果たすようである。さらに、本発明は、電気活性カソード粒子の界面に適用された10回のAl2O3 ALDサイクルが固体電池における性能の低下を引き起こし始める米国特許出願第13/424,017号明細書の教示に対して予想外の結果をもたらす。本発明を使用すると、対照的に、10を超え、時には20~40を超えるALDサイクルの総数を含むネットインターフェースは、依然として、未処理(pristine)の電極及びSSE粉末並びにそれらの界面に比べて向上した性能改善を提供する。例として、図24は、4.2V及び4.5Vのトップ・オブ・チャージ(top of charge)の両方で、NCA及びLPSのSSE粉末の界面における約15回のALDサイクルが、どのようにして、同じセル構成で同じ電圧に充電された未処理の材料に対して約10倍の容量の増加を示すかを示している。成長速度及びALD条件に応じて、この界面層の厚さは7.5nm以上であってもよい。これはまた、2nmを超えるAl2O3 ALDフィルムが、液体電解質を使用する従来のリチウムイオン電池の性能を低下させ始めることが示された。
Liイオン電池の製造に使用されている従来のスラリーベースのコーティング手法での使用に適した封入された又は不動態化されたSSE材料は、固体電池を製造するコスト及び複雑さを低減する。イオン伝導性SSE材料にそのような安定性を付与してそれを従来の乾燥室内での処理に適するものとする封入コーティングはまだ開発されておらず、実証もされていない。他の分野で硫化物に基づくホスト材料上にバリアフィルムとして使用されるコーティングさえもない。例として、米国特許第7,833,437号明細書は、ZnSベースのエレクトロルミネッセンス蛍光体材料を封入し、それらを酸素及び水分に対して不浸透性にするために、どのようにALD法を使用するかを教示しているが、厚すぎて非導電性である傾向があるこのようなコーティングの厚さは、SSE材料に使用するのには不適当である。
固体状態合成技術(例えば、適切な条件下で適切な化学量論でLi2S、P2S5及びGeS2前駆体粉末を熱処理する)を使用して製造された多くの従来のSSE材料は、直径10~250μmのサイズ範囲にある傾向があり、粉砕及び他の一般的な方法)が、時にはSSE材料のサイズを0.5~20μmに減少させるために使用され、時には最大直径で5μmまで減少させる。しかし、SSE粒子は、ボトムアップ合成手法、例えば、硫化物のような酸素を含まない材料を生成するように設計された米国特許第7,211,236号明細書に記載されているフレーム溶射プロセスの改良法、又は、優先的に、米国特許第7,081,267号明細書に記載されているようプラズマ溶射プロセスを少なくとも部分的に組み込んだプロセス、もしくは類似のプロセスによって、より小さくすることができ、本発明の封入プロセスは、かかるSSE粒子を製造した後、米国特許出願第13/169,452号明細書に記載されている装置を使用して直接インラインで行うことができる。より一般的には、本発明に従って封入される粒子は、公知のイオン導電性粒子製造プロセスを使用して製造される任意のタイプのものであることができる。本発明の封入プロセスは、粒子を製造するための製造工程と、直接的又は間接的に続く本発明のコーティングプロセスによって、一体化した製造プロセスの一部として実施することができる。最終的には、封入されたSSE材料は、アノードとカソードとの間に配置されたバルクSSE層の一部として、ならびに電気活性物質、バインダー、導電性添加剤又は他の材料の均質ブレンドの形態で使用されることが一般的に意図されているため、本明細書に記載の封入されたSSE材料は、バルク電解質層、アノード層又はカソード層に近接しているが界面ではない電解質層の部分、電解質及び各電極と実際に接触している界面、電気活性粉末とブレンドされたSSE材料、電極及びそのそれぞれの集電体とインタフェースするSSE材料の層、又は封入されたSSEが製造されたデバイスに価値を提供する任意の他の有用な場所で使用された場合に、様々なコーティング組成又は厚さを有することができる。例として、高エネルギー密度用に設計されたセルに見られるような、比較的狭いサイズ分布を有する平均直径が5μmのALDコーティングあり又はなしのカソード粒子と共に使用する場合、プラズマ溶射法を使用して得られたALD封入100nmのSSE粉末と組み合わさったこの材料の均質ブレンドは、封入された5μmのSSE粉末よりも良好な均一分布及び格子間ボイド空間の蓄積をもたらすことができる。他の場合には、高出力用途のために設計された電池に対しては火炎又はプラズマ溶射に誘導された50~500nmの電気活性粒子が望ましい場合があり、これらの粒子を均質化することは、20~30μmの封入SSE粉末と組み合わされた場合、実質的により容易である。
各封入化学種の最適なALD厚さ及び組成は、異なる状況で実質的に異なると求められた。そのような均質化に適していることができる1つのプロセス及び装置は、米国特許第7,658,340号明細書及び米国特許出願第13/651,977号明細書に記載されている流動床反応器であり、流動床反応器は、米国特許第8,439,283号明細書に記載されている、均質化を促進するために振動、撹拌又はマイクロジェットの組み込みを使用することによってさらに有利である。米国特許出願第13/424,017号明細書に教示されているSSE基材材料及びALD被覆カソード粒子に有利であることが示されている熱処理を、このような乾式均質化工程中に使用してもよい。SSE材料及びALD被覆電気活性物質は、所望の特性(典型的には均質性、伝導率、界面組成、固体、ガラス質固体又は他の擬固溶体を形成するコーティング/基材化学種の拡散、材料の硫化、結晶サイズの変更、又は固体電池の性能に有益であると理解されている他の現象)を得るために、不活性又は還元性雰囲気中で、200℃~600℃、好ましくは300℃~550℃で、例えば1~24時間の時間、熱処理することができる。
カソード粉末と共に配置されたSSE粉末を封入する前記ALDコーティングは、TiO2、TiN、Ti3N4、酸窒化物、TiCなどに見られるTi3+又はTi4+に基づくALDコーティング、硫化チタン又はリン化チタン相を形成する硫黄の相乗的組み込みから利益を得ることができる。同様に、GeO2含有ALDコーティングは、固体電池におけるカソード材料の存在下でのゲルマニウムの潜在的により高い安定性のために、カソード材料にとって特に有益であることができる。周期表のほとんどのものはALDを使用して堆積させることができるため、これらはSSE材料において有用と考えられる多くのカチオンのうちの2つであり、その具体的な言及は決して他の適切な材料の適用性を制限するものではない。
本発明の1つの特徴は、コーティング材料の典型的な伝導率が、電解質材料、例えば1×10-6Scm-1未満の伝導率を有するものとしての使用には不十分であることが知られているSSE粒子の表面又はSSE表面上に制御された量の材料を堆積させる能力に依存する。これは、ALDコーティングの厚さが増加することによってもたらされる保護効果の典型的な増加、及び、同様に厚さの増加による意図された役割での基材の有用性の典型的な減少に由来する。本発明は、さらに、SSE材料を層状に溶媒キャスト可能とするため、異なるコーティング特性を有するコーティングされたSSE材料を利用することによって複数の層の組成を調整し、それによってこれらの複数の層をまとめて見たときに勾配を生じるという特徴がある(例えば、空気保護層、キャスティングのための犠牲層、及び電池の性能及び倍数を改善するための界面層)。同様に、材料が、噴霧乾燥、プラズマ溶射プロセスなどを使用して移動している基材上に直接気相堆積される場合、下流で堆積される材料は、上流で堆積されるものとは異なる組の組成又は特性を有することができる。
このような予備粒子製造工程で製造された粒子のいずれも、好都合な連続流動プロセスを使用して粒子製造プロセスで直接製造することができ、絞り弁(回転エアロック又は同様のもの)を使用して計量バッチングシステムに供給することができ、本発明で記載したプロセスに入ることができる。
分子層堆積(MLD)プロセスも同様の方法で行われ、有機又は無機有機ハイブリッドコーティングを適用するのに有用である。MLD法の例は、例えば、参照によりその全内容を本明細書に援用する米国特許第8,124,179号明細書に記載されている。
ALD及びMLD技術は、1反応サイクル当たり約0.1~5オングストロームの厚さのコーティングの堆積を可能にし、したがって、コーティングの厚さに対して極めて細かい制御の手段を提供する。より厚いコーティングは、所望のコーティング厚さが達成されるまで、コーティング材料の追加の層を順次堆積させるために反応シーケンスを繰り返すことによって作製することができる。
ALD及びMLDなどの気相堆積プロセスにおける反応条件は、主に3つの基準を満たすように選択される。第1の基準は、試薬が反応条件下で気体であることである。従って、温度及び圧力条件は、反応前駆体が各反応工程において粉末と接触するときに反応物が揮発するように選択される。第2の基準は反応性の1つである。条件、特に温度は、反応性前駆体と粒子表面との間の所望の反応が商業的に妥当な速度で起こるように選択される。第3の基準は、基材が化学的観点及び物理的観点から、熱的に安定であることである。プロセスの初期段階で反応性前駆体の1つとの表面官能基の起こりうる反応を除いて、基材はプロセス温度で分解又は反応すべきではない。同様に、基材は、処理温度で溶融又は軟化すべきでないので、基材の物理的形状、特に細孔構造が維持される。反応は、一般的に、約270~1000K、好ましくは290~450Kの温度で行われる。
反応性前駆体の連続的な投与の間に、粒子を、反応生成物及び未反応の試薬を除去するのに十分な条件にさらすことができる。これは、例えば、各反応ステップの後、例えば約10-5トル(Torr)以上の高真空に粒子をさらすことによって行うことができる。工業的用途のためにより容易に適用可能な、これを達成する別の方法は、反応ステップ間で不活性パージガスにより粒子を清掃(sweep)することである。不活性ガスによるこの清掃は、粒子が装置内の1つの反応器から次の反応器へ移送されている間に実施することができる。真空下であろうとなかろうと、高密度及び希薄相技術は、本明細書に記載された機能付与プロセスによって充分に役割を果たすであろう多種多様な工業的に関連する粒子の空気輸送に適していることが知られている。
出発粉末(starting powder)は、堆積反応の条件下で化学的及び熱的に安定である任意の材料であることができる。「化学的に」安定であるとは、粉末粒子が、場合によっては適用されたコーティングへの結合以外は、堆積プロセス中に望ましくない化学反応を起こさないことを意味する。「熱的に安定」とは、粉末が、堆積反応の条件下で、溶融、昇華、揮発、分解、あるいは、その物理的状態を変えないことを意味する。
適用されたコーティングは、約1オングストローム(約1回のALDサイクルに対応する)程度の薄さであり、100nm又はそれ以上の厚さであることもできる。好ましい厚さ範囲は2オングストローム~約25nmである。
全固体リチウムイオン電池(1913)とALD被覆全固体リチウムイオン電池(1915)が図19に示されている。全固体リチウムイオン電池(1913)は、アノード集電体(1904年)に接触している、アノード活物質(1905)、導電性添加剤(1906)及び固体電解質(1907)の組み合わせを含むアノード複合材料層(1901)を含む。同様に、カソード複合材料層(1903)は、カソード活物質(1908)、導電性添加剤(1906)及び固体電解質(1907)の組み合わせを含み、カソード集電体(1909)と接触している。アノード複合材料層(1901)とカソード複合材料層(1903)の2つの層は、完全に固体電解質(1907)で構成されていることができる固体電解質層(1902)によって分離されている。固体電解質(1907)は、例えば異なる固体電解質材料上への固体電解質材料のALDコーティングとして、もしくは2層の固体電解質材料、もしくはコーティングされた電解質(例えば、セラミック、電解質、伝導性材料によりコーティングされた)、又は固体電解質材料の組み合わせ(例えば、2種の異なる固体電解質、一方はアノードに接触しており、もう一方はカソードに接触しており、それぞれ必要に応じて異なるALDコーティングをその上に有する)として、1つの固体電解質材料もしくは複数の材料から構成されたものであることができる。
図19に示されているように、全固体リチウムイオン電池(1913)を、アノード活物質(1905)、導電性添加剤(1906)、及び固体電解質(1907)、及び/又はカソード活物質(1908)の粒子を封入するために原子層堆積が使用される原子層堆積(1914)プロセスによってALD被覆全固体リチウムイオン電池(1915)に変換することができる。いくつかの実施形態において、アノード活物質(1905)はアノードALDコーティング(1910)を有し、導電性添加剤(1906)は導電性添加剤ALDコーティングを有し、固体電解質(1907)は固体電解質ALDコーティング(1911)を有し、カソード活物質(1908)はカソードALDコーティング(1912)を有する。いくつかの実施形態において、アノード活物質(1905)、導電性添加剤(1906)、及び固体電解質(1907)並びにカソード活物質(1908)は同じコーティングを有し、アノードALDコーティング(1910)、導電性添加剤ALDコーティング、固体電解質ALDコーティング(1911)、及びカソードALDコーティング(1912)は、ALDによって適用された同じ材料である(しかし、異なる層/厚さであることができる)。別の実施形態において、アノードALDコーティング(1910)、導電性添加剤ALDコーティング、固体電解質ALDコーティング(1911)、及びカソードALDコーティング(1912)は、(異なる厚さの)異なるコーティングである。
アノード活物質(1905):導電性添加剤(1906):固体電解質(1907)の比及びカソード活物質(1908):導電性添加剤(1906):固体電解質(1907)の比は、セルの所望の性能に大きく依存する。従来の液体電解質電池の電極と同様に、固体電極は、活物質(AM)、導電性添加剤(CA)及び電解質から作られた複合材料であってもよい。例えばカソード用のLiCoO2及び/又はアノード用のグラファイトなどの活物質は、充電及び放電中に電池を通って移動するリチウムを貯蔵する。通常、例えばアセチレンブラック又はカーボンナノチューブなどの炭素材料である導電性添加剤は、電極を通って集電体への迅速な電子輸送を確実にする手段として作用する。電解質は、全体として電極に入る及び電極から出る迅速なイオン輸送を確保するために、電極内に必要である。しかし、液体電解質電池とは異なり、固体電解質電池は、固体電解質をセパレーターと電解質の両方として利用するため、電極間にポリマー系セパレーターを必要とする液体電解質電池と比較してシステムを単純化する。さらに、固体電解質をセパレーターとして作用させることにより、電極との密接な接触、及びイオン伝導のための途切れない経路が確保される。さらに、固体電解質による電極の物理的分離のために、例えば、液体電解質を介しての間接的接触によりグラファイトベースのアノードで寄生損失をもたらすことが判っているMn含有カソード材料を用いた電池のように、一方の電極での反応が、他方の電極で間接的に問題を引き起こすということはない。
固体電池のもう1つの重要な利点は、リチウム電池を形成するためのアノードとして作用するアノード複合材料又はバルクリチウム金属箔が存在しない「リチウムフリー」電池を構築する能力である。Liフリー電池では、第1の充電サイクル中に、金属リチウムが固体電解質と薄膜集電体との間に電気めっきされるように電池が構成される。一方、この設計は高エネルギー密度が可能なLi金属電池の概念に従っている。かかる電池は、穿刺すると危険な状態をもたらしうる過剰なLiが存在しないために安全である。この設計は、カソードにおける高い配合量の活物質、集電体及びセパレーターの実質的な除去、及び固体構造による高いパッキング効率に起因する実現可能なエネルギー密度の顕著な改善をもたらす。
電池を最初から設計する際には、可能な限り高いエネルギー密度を維持するために、活物質の相対質量が最も高くなるようにする必要がある。理想的には、電池は、100%活物質であるカソードと、100%活物質であるアノードのみを含む。しかし、活物質は、典型的にはリチウム貯蔵のために設計されるのであって、イオン/電子伝導のために設計されるわけではないので、より速い電子/イオン伝導により目標性能指標を確保するために、導電性添加剤と固体電解質を有する複合材料電極を生成させることが望ましい。導電性添加剤と固体電解質の両方の過剰な割合は、より速い電子/イオン輸送で粉末密度を増加させるために使用することができるが、そのように使用すると、電極内の活物質の相対比を減少させ、それにより電池が達成できる細孔エネルギー密度が減少する。
活物質:固体電解質:導電性添加剤の比は、アノード及びカソード複合材料の両方について、約5:30:3~約80:10:10、又は約1:30:3~約95:3:2であり、もしSSE ALD被覆カソード活物質が使用される場合には、最大で97:3:0までである。ある場合には、リチウムアノードを有するリチウム電池を得ることができる。別の場合には、初期サイクルが後のサイクルのためのリチウムを析出するリチウムフリー電池を得ることができる。いくつかの実施形態において、未処理(pristine)の活物質及び/又はコーティングされた活物質の粉末を使用して、スラリー噴霧熱分解システムを通って流れる固体電解質材料の前駆体を含むスラリーを調製する。言い換えれば、完成した粒子を混合するというよりもむしろ、複合材料を生成させ、次いで、最終的な保護コーティングを適用することができる。
本明細書に記載の電池のいくつかの実施形態において、複合カソードは、平均電圧4.7Vで3.5~5.0Vの間でサイクルされた場合に147Ah kg-1の最大容量を有し、高電圧リチウムマンガンニッケル酸化物スピネル(例えばLiMn1.5Ni0.5O4(LMNO))を含むことができ、LMNOに基づくリチウム電池の最大エネルギー密度は690Wh kg-1となる。いくつかの実施形態において、複合カソードは、さらに、最大10-2Scm-1までの高いイオン伝導率を有する硫黄に基づく固体電解質(例えば、Li10SnP2S12(LSPS))と、液体電解質電池においてLMNOと良好な結果を示した導電性添加剤(例えばSuper C65)を含む。LMNOは、4.45g cm-3の理論密度を有し、これから3.4g cm-3の推定実現可能ペレット密度を類似の材料についての以前の検証から得ることができる。2.25g cm-3の密度を有するLSPSによりペレット中の残りの間隙を完全に充填すると仮定すると、質量比87:13のLMNO及びLSPSを得ることができる。固体複合材料電池では、以下のとおり82%の理論エネルギー密度が達成される:
0.87×0.99×0.95÷1.09=82%
ここで、0.95は、パウチセルでしばしば達成される充填効率からのものであり、0.99は、1質量%のCAであり、1.09は、電池のカソード、電解質及びアノード層の合計厚さ110μmに対する9μmのLSPS電解質からのものである。その結果、固体Li電池のエネルギー密度は、
690Wh kg-1×82%=565Wh kg-1
から565Wh kg-1になると予測される。
LMNOは、充電及び放電に2C/2Cの公称サイクルレートを使用して、高いレートで147Ah kg-1のその高い容量を維持するため、全固体リチウムイオン電池の最小出力密度を計算すると、1kW kg-1を超えると計算された:
565Wh kg-1×2C h-1=1130W kg-1。
表1は、提案される全固体リチウムイオン電池の一例と最先端のLiイオン電池との比較を示す。典型的な最先端のリチウムイオン電池は、多孔質ポリマーセパレーター、金属箔集電体、及びエネルギー貯蔵に寄与しないパッケージング及び安全装置などの多数の不活性な材料を含む。これらの不活性なコンポーネントは、電池セルの総質量の37%を占める(表1参照)。さらに、各電極は最高12.5%のポリマーバインダーを含み、これは、達成可能な最高エネルギー密度をさらに低くする。本明細書に記載の固体複合材料電池は、電解質及び集電体を薄膜形態で使用することを可能にし、不活性質量の大部分を排除する。さらに、固体複合材料電極の設計により可能となった電極中の活物質の高い配合量、及び、固体構造による高い充填効率は、本明細書に記載の全固体状態の実現可能なエネルギー密度をさらに改善する。
以下の実施例は、本発明の組成物の製造に適用可能なコーティングプロセスを説明するために提供される。これらの例は、本発明の範囲を限定するものではない。全ての部及び百分率は、他に断らない限り、質量基準である。
実施例1-材料処理
SE材料のALDコーティング: 10gの未処理(pristine)のSE(LPS、NEI Corp.)サンプルをAr雰囲気下で標準的なステンレス鋼流動床反応器に装填し、PneumatiCoat PCR反応器に接続してALDを行った。実証実験のために、高スループットシステムの代わりに流動床システムを使用して少量のSE粉末をALDコーティングした。100sccmのN2をALDプロセスの全体にわたって流した最小限の流動化条件下にサンプルを置いた。ALDプロセス中にSEが追加の熱処理及び反応を起こさないように、ALDを150℃で実施した。Al2O3の前駆体であるTMA/H2O及びTiO2の前駆体であるTiCl4/H2O2とのSEの潜在的な反応性のため、Al2O3及びTiO2のそれぞれの4、8及び20層を適用するために時間スケジュールを使用した。Al2O3コーティングの場合には、TMAを15分間適用し、H2Oを7.5分間適用し、間に10分間の真空パージ工程を行った。TiO2コーティングの場合、TiCl4を10分間適用し、H2O2を20分間適用し、間に15分間の真空パージステップを行った。
電極サンプル1のALDコーティング: 1.5kgのリチウムニッケルマンガン酸化物(LMNO)粉末(SP-10、NEI Corp.)をPCT高スループット反応器により処理して2、4及び8サイクルAl2O3被覆材料の250gのサンプルバッチを製造した。この高スループットプロセスの間、トリメチルアルミニウム(TMA)を前駆体Aとして使用し、脱イオン水(H2O)を第2前駆体(前駆体B)として使用した。各前駆体は、処理される粒子の比表面積及び量を使用して決定される適切な量で、特許取得済みのPCT半連続反応器システムを使用して連続して適用した。同様に、前駆体Aとして四塩化チタン(TiCl4)及び前駆体Bとして過酸化水素(H2O2)を使用して、2、4及び8サイクルTiO2 ALD被覆LMNOサンプルを生成させた。全てのサンプルは、120℃で真空オーブン内で乾燥させ、後の処理のためにアルゴン充填グローブボックス中に移動させる前に、空気中で取り扱った。
電極材料2のALDコーティング: 1kgの未処理(pristine)のリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)粉末(NCA-7150、Toda America)をPCT高スループット反応器により処理して、2、4、6及び7サイクルAl2O3被覆材料の250gのサンプルを製造した。同様に、前駆体Aとして四塩化チタン(TiCl4)及び前駆体Bとして過酸化水素(H2O2)を使用して、2、4及び8サイクルTiO2 ALD被覆NCAサンプルを生成させた。全てのサンプルは、120℃で真空オーブン内で乾燥させ、後の処理のためにアルゴン充填グローブボックス中に移動させる前に、空気中で取り扱った。
実施例2-材料特性
SE材料の伝導率: ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ダイ(φ=0.5インチ)と、ペレット化のためと、作用電極及び対電極の両方のための集電体としての両方のためにチタン金属棒とを使用し、200mgのSE粉末を8トンまでコールドプレスすることによって電解質ペレットを形成した。次いで、Li箔(MTI、厚さ0.25mm)を電解質の両面に取り付けて電池構成を得た。電気化学インピーダンス分析(EIS)を、1MHz~2Hzの周波数範囲及び10mVのAC振幅でSolartron 1280インピーダンスアナライザを使用して実施した。全てのプレス及び試験操作は、Ar充填グローブボックス内で行った。
SE材料のサイクリックボルタンメトリー: ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ダイ(φ=0.5インチ)と、ペレット化のためと、作用電極及び対電極の両方のための集電体としての両方のためにチタン金属棒とを使用し、200mgのSE粉末を8トンまでコールドプレスすることによって電解質ペレットを形成した。次いで、Li箔(MTI、厚さ0.25mm)を電解質の片面に取り付け、1mV/sの走査速度で5サイクルで-0.5V及び5.0Vのカットオフ電圧を使用してSolartron 1280によりサイクリックボルタンメトリーを実施した。全てのプレス及び試験操作は、Ar充填グローブボックス内で行った。
SE材料の空気/水分安定性: 1gのSEを、Ar充填グローブボックス内の小型流動床反応器中に装填し、残存ガス分析器(RGA)(Vision 2000-P、MKS Instruments)を備えたPCR反応器に接続した。意図しない空気/水分が反応器に入るのを最小限に抑えるために、試験前に全ての大気条件をシステムから入念に除去した。十分な真空条件が満たされたら、反応器を真空下に5分間置いてArを除去した。パージに続いて、反応器を、5トルの圧力上昇に等しい流量の乾燥圧縮空気の適用によって空気/水分に曝露し、気化したH2Oを様々な圧力で加えた。
電気化学セルの製造及び試験: 複合カソードは、活物質(AM)としてLMNO粉末又はNCA粉末、高速リチウムイオン伝導のための固体電解質(SE)、及び電子伝導のための導電性添加剤(CA)としてアセチレンブラック(MTI)を、それぞれ、AM:SE:CAの質量比1:30:3で混合することにより作製した。SE及びCAを乳鉢及び乳棒を使用して完全に混合し、続いてAMを混合した。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ダイ(φ=0.5インチ)と、ペレット化のためと、作用電極及び対電極の両方のための集電体としての両方のためにチタン金属棒とを使用し、100mgのSE粉末を0.2トンまでプレスすることによってSEペレットを形成した。次いで、複合カソード材料の5mg層をSE層の片面に均一に塗布し、2層セルを1分間のコールドプレス(8トン)によりペレット化した。次に、Li箔(MTI、厚さ0.25mm)を電解質の反対側に取り付け、ハンドプレスした。定電流充放電サイクリングは、LMNOについては2.5~4.5V及び2.5~5.0Vのカットオフ電圧で、NCAについては2.5~4.2V及び2.5~4.5Vの電圧で行い、ALDコーティングによって付与された安定性の差を調べた。サイクリングは、最初の10サイクルの間C/20の電流で行い、残りのサイクルはC/10で行った。全てのプレス及び試験操作は、Ar充填グローブボックス内で行った。
実施例3-結果
SEをより空気/水分耐性の高いものにするとともに電気化学的効果を観察するために、ALDをSEに対して行った。SEに適用されるコーティングの化学物質としてAl2O3及びTiO2を使用することによって、4サイクル(2nm)、8サイクル(4nm)、及び20サイクル(10nm)の3つの異なるレベルのコーティングを目標とした。1サイクルの各ALDコーティングが固体電解質の粒子の周りの厚さ約0.1~1.0nmのシェルにほぼ相当する。これらの初期試験では、基材粉末にALDを適用するための最も一般的に受け入れられている前駆体であるため、TMA及びH2Oを前駆体として使用した。粉末へのH2Oの暴露を避けるためにTMA及びイソプロピルアルコール(IPA)前駆物質を使用することに初期的検討を行ったが、商業的規模でこれらのコーティングを製造するために、最も実行可能な高スループットの候補が調査されるべきである。TiO2コーティングの場合、TiCl4及びH2O2を使用した。電解質の一般的な感受性のためにH2O2がSEと不利(negatively)に反応する傾向が高いため、H2O2の使用を避けることに初期的検討を行った。Al2O3を適用するための第2前駆体としてのH2Oの正当化と同様に、最もよく理解され、実証実験のための最も複雑でない方法を使用することが決定された。
これらのALD被覆サンプルの伝導率の観測結果を図22(A)に示す。Al2O3のサイクル数が少ないほど伝導率の増加を示した。しかし、Al2O3被覆サンプルのサイクル数が多いほど、伝導率の低下を示した。これは、ALDのサイクル数が多いほどセラミックでコーティングした場合に抵抗が増加するが、薄いシェルは、薄いために、薄いシェルが過度のインピーダンスを与えないAl2O3から得られる保護により改善された材料特性をもたらすからである。興味深いことに、TiO2被覆SEサンプルについて、より多い回数のALDサイクルも、TiO2被覆SEの伝導率の著しい増加を示すという予想外の結果が見出された。具体的には、図22(B)に示されているように、20サイクルのTiO2サンプルでは、未処理(pristine)の電解質と比較して、ほぼ2桁の伝導率の増加が観察された。
空気と水分に対するSEの感受性を低下させると同時にセル性能を改善するALDの能力を調べた。SEを空気に対して安定させることによって、不活性環境を必要とせずにSEを処理して使用することができる現実的な商業化の道が可能になり、既存の電池製造装置に対応できるようになる。図23は、空気及び水分にさらされた場合の未処理(pristine)及びコーティングされたSEの反応を示す。Al2O3被覆SEがH2Sガスの濃度の著しい減少をもたらしたことが観察された。SE上に堆積したAl2O3のサイクル数が増加すると、H2Sガスアウトプットの全濃度の減少及び反応時間の遅れという2つの改善がもたらされるという、強い相関が観察された。これらのデータは、SE上でALDを使用することによって得られる肯定的な利点を示す優れた指標である。
ALDコーティングを介して全固体電池に並外れた利益を実現するために高容量のNCAを使用した。実証実験のために、7サイクルAl2O3被覆NCAのみが示されている。しかし、図24及び図25に示されているように、7サイクルAl2O3被覆NCAを入手可能な被覆SEのパネルで試験することは、ALDからの大きな利点を示している。ここで、未処理(pristine)のSE及び未処理(pristine)のNCAで製造されたセルは良好に機能せず、4.2V及び4.5Vのカットオフ電圧の両方について5mAh/g未満の第1サイクル放電容量しか達成しなかったことが観察される。しかし、Al2O3被覆SEを導入すると、サイクル挙動の著しい改善が達成された。はるかに高い達成可能な可逆放電容量及び高電圧サイクリングなどの複数の有益な効果を電気化学的サイクルから引き出すことができる。例えば、図24のP/7A 4.2、4A/7A 4.2及び8A/7A 4.2曲線を比較すると、5mAh/gから、それぞれ、57mAh/gまで、100mAh/gまでの第1サイクル放電容量の改善が観察される。同様に、4A/7A 4.2及び4A/7A 4.5曲線と8A/7A 4.2及び8A/7A 4.5曲線の両方を比較すると、より高いカットオフ電圧による容量増加だけでなく、より高いカットオフ電圧は、SE及びNCA上のAl2O3コーティングが安定化されたより高い電圧サイクルを可能にすることを示すことが判る。材料上のAl2O3被覆によって高電圧が維持される場合、このシステムによって達成することができる全エネルギー密度は劇的に増加する。
本明細書で使用される場合、単数の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明示されていない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、化合物への言及は、文脈が他を明示しない限り、複数の化合物を含むことができる。
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「実質的に」及び「約」という用語は、小さな変化を説明及び説明するために使用される。事象又は状況とともに使用される場合、その用語は、事象又は状況が正確に発生する事例と、事象又は状況が厳密に近似して起こる事例を意味することができる。例えば、これらの用語は、±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下を意味する。
さらに、量、比率、及び他の数値は、本明細書では時々、範囲の形式で提示される。このような範囲の形式は、便宜及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に指定された数値のみならず、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲が、あたかも各数値と部分範囲が明示的に特定されているかのように含むと柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1及び約200の明示的に記載された限界値を含むと理解されるべきであり、約2、約3及び約4などの個々の比や、約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
本発明の好ましい実施形態は、一般的に、
実施形態1:電池に使用するためのカソード活物質、アノード活物質、又は固体電解質のためのイオン伝導性コーティング、
を含む電気化学セルに関する。
コーティングは、電池のカソード活物質、アノード活物質、又は固体電解質の表面上に配置されたコーティング材料の層を含む。コーティング材料の層は、
金属、多金属(polymetallic)又は非金属:(i)酸化物、炭酸塩、炭化物もしくは酸炭化物、窒化物もしくは酸窒化物、又は酸炭窒化物;(ii)ハライド、オキシハライド、カルボハライド又はニトロハライド;(iv)リン酸塩、ニトロリン酸塩又はカルボリン酸塩、あるいは(v)硫酸塩、ニトロ硫酸塩、カルボ硫酸塩又は硫化物、のうちの1種以上を含む。
上記のアニオン性の組合せについての説明は、各結合アニオンの0.1%~99.5%、もしくは1%~95%、5%~15%、35%~65%、又は約50%を表すことができる。例として、多金属酸窒化物は、窒素-ニオブ-チタン酸化物として表すことができ、ここで、酸素と窒素の比は0.1:99.9、5:95、35:65又は50:50であることができ、金属ニトロリン酸塩は、LiPON、AlPON又はBPONを含むことができる。非金属酸化物は、リン酸化物を含むことができる。多金属酸化物は、リチウム-ランタン-チタン酸化物又はリチウム-ランタン-ジルコニウム酸化物を含むことができ、後者は、Li-O、La-O、Zr-Oの交互の層で堆積することができる。ある種の順序、比率又は好ましい組成で、TiPO4、Al2O3及びLi2O、もしくはLiPO4、TiO2、AlPO4もしくはLi2O、TiPO4及びAlPO4の交互層を使用して、多金属リン酸塩、リチウム-アルミニウム-チタン-リン酸塩を堆積させることができる。
コーティング材料の1つ又は複数の層は、コーティング材料の各層がその上に配置される任意のカソード活物質、アノード活物質又は固体電解質材料に対して、優先的に類似又は異なることができ、電気化学セル自体の任意の形成工程の後で、現場(in situ)で製造することができる。
コーティング材料の各層は、(vi)アモルファス;(vii)オリビン;(viii)NaSICON又はLiSICON;(ix)ペロブスカイト;(x)スピネル;(xi)多金属イオン構造、及び/又は(xii)優先的に周期的又は非周期的な特性を含む構造を有するとしてさらに記述できる。コーティング材料(i)~(v)の1又は2つ以上を(vi)~(xii)の1又は2つ以上によって記載することができる構造と組み合わせたコーティング層の好ましい実施形態は、さらに、(xiii)ランダムに分布する官能基、(xv)周期的に分布する官能基、(xv)市松模様の微細構造である官能基、(xvi)2D周期配列、又は(xvii)3D周期配列を含むことができるが、全ての好ましい実施形態において、コーティング材料の層は、組成、構造、機能性又は配置が、電気化学セルの製造前、電気化学セルの形成工程中、又は電気化学セルの有効寿命全体にわたって、化学的に変化するかどうかにかかわらず、基材材料とコーティングとの間の界面において機械的に安定である。
コーティング材料の層は、アルカリ金属;遷移金属;ランタン;ホウ素;ケイ素;炭素;錫;ゲルマニウム;ガリウム;アルミニウム;チタン;及びインジウムからなる群から選ばれた1又は2以上の金属をさらに含む実施形態1のコーティング。コーティング材料の層が約2,500nm以下、もしくは約2nm~約2,000nm、もしくは約10nmの厚さ、又は約5nm~15nmの厚さを有する実施形態1のコーティング。コーティング材料の層が表面上で均一又は不均一であり、表面に従い、及び/又は任意の基材の表面上で優先的に連続的又は不連続的にランダム又は周期的に存在する、実施形態1のコーティング。
いくつかの実施形態において、厚さ、均一性、連続性及び/又はコンフォーマリティ(conformality)は、電子顕微鏡を使用して測定することができ、任意の又は全てのコーティング材料にわたって、最大40%まで、最も頻繁に20%、及び時には10%以下の公称値からのずれ(deviation)を有する。実施形態1のさらなる予想外の観察結果は、カソード、アノード又は固体電解質材料上にコーティングされた上記(i)~(xvi)のうちの1又は2つ以上を含むいくつかの又は全ての層の特徴及び利点が、不均一、不連続及び/非コンフォーマルな層でも、少なくとも40%のばらつき(variation)、最も頻繁には80%のばらつき、しばしば最大で100%までのばらつき、さらに最大で400%までのばらつきで達成できたことである。周波数、標準偏差、再現性、及び/又はランダム誤差に関して、本明細書に記載されるばらつきの観察は、一般的に、少なくとも95%の時間に当てはまる。
コーティング材料の層が、アルミニウム、リチウム、リン、ホウ素、チタン又は錫カチオンと、ヒドロキシル、アミン、シリル又はチオール官能基を有する有機化学種との錯体であって、特にグリコール、グリセロール、グルコース、スクロース、エタノールアミン又はジアミンから誘導された錯体の1又は2種以上をさらに含む、実施形態1のコーティング。コーティング材料の層が、アルミナ、チタニア、窒素-ニオブ-チタン酸化物、又はLiPONをさらに含み、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(NMC)表面、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(NCA)表面、又はリチウム、マンガン、コバルト、アルミニウム、ニッケル又は酸素が富化された又は不足しているNMC又はNCA表面上にコーティングされている実施形態1のコーティング。ここで、「富化」又は「不足」という用語は、一般的に、化学量論からのずれが、0.1%~50%、時には0.5%~45%、しばしば5%~40%、及び最も頻繁には10%~15%、20%~25%、又は35%~40%であることを意味する。
コーティング材料の層は、グラファイト、チタン酸リチウム、ケイ素、ケイ素合金、リチウム、錫、モリブデン含有表面のうちの1又は2つ以上を含む材料上にコーティングされているか、炭素系導電性添加剤、ポリマーバインダー材料、電気化学セルのコーティングされたカソード活物質、アノード活物質又は固体電解質材料のいずれかと一緒に使用される集電体上の堆積させることができる実施形態1のコーティング。
実施形態1の材料を使用して電池を作製した場合、アノード活物質又はカソード活物質の表面に堆積した材料の層は、電池に、より長い寿命、多くの充放電サイクル数でより高い容量、構成コンポーネントの劣化の低減、放電レート容量の増加、安全性の向上、熱暴走が生じる温度の上昇を付与することができ、自然又は不自然な現象又は事象中のより安全な、より高電圧の動作を可能にする。
実施形態1の1又は2つ以上の堆積された材料層を含む電池は、前記堆積された材料層を欠く電池よりも0.1低い、もしくは1.1以下、又はその両方のPeukert係数を示すことができる。前記アノード活物質又は前記カソード活物質の表面に堆積された前記材料の層は、4.05V以上、時には4.10V以上、時には4.20V以上の電圧で電池が釘刺し試験に合格することを可能にする実施形態1の電池。実施形態1の電池は、構成電気活物質の表面上に1又は2つ以上の堆積された層材料を欠く電池に対して、少なくとも25℃高い、最も頻繁には35℃高い、しばしば50℃高い又はそれより高い熱暴走温度で、より高い熱暴走を示すこともできる。
いくつかの実施形態において、コーティングされる少なくとも1種のカソード活物質又はアノード活物質を混合して、少なくとも2Ah、最も頻繁には少なくとも15Ah、しばしば少なくとも30Ah、時には40Ah以上のサイズであるセルを得るための電極キャスティング用のスラリーを形成する前に、カソード活物質又はアノード活物質の少なくとも1つの上に材料の層がコーティングされる。材料の層は、電池製造プロセス中のゲル化の現象及び発生を軽減する。この実施形態において、活物質スラリーの粘度は、2s-1から10s-1のせん断速度のせん断速度範囲にわたって常に10Pa・s未満である。コーティングされていない材料を使用したスラリー粘度は、せん断速度5s-1で10Pa・sより高く、又はせん断速度20s-1以上で5Pa・sよりも高いが、スラリー粘度は、所与のせん断速度で少なくとも10%の減少、最も頻繁に20%の減少、しばしば30%の減少、時には40%の粘度低下を示す。さらに、増加するせん断速度対減少するせん断速度での測定粘度の差によって求められるヒステリシス挙動は、所与のせん断速度で少なくとも10%低く、最も頻繁に20%低く、しばしば30%低く、時には40%低い。
特定の実施形態において、特定の組成、構造、機能性、厚さ又は順序を有する2又は3つ以上の別個のコーティング層材料を使用して、電池に対する特性改善を同様に強化することができるが、多層の多機能コーティングとして組み合わされた又は被覆された場合には、多層コーティング中の層は、互いに対して類似の又は異なる特性又は機能を提供する所定の組合せ及び所定の順序で配置され、その結果、コーティング全体は、任意の単一の別個のコーティングにより形成されたコーティングよりも多くの又はより優れた特性を有する。
特定の実施形態において、材料の層は、コーティング原子と表面酸素との間に強い結合を形成する。特定の実施形態において、1.5m2/gより大きいBET及び5μmより小さい活物質の粒子サイズを有する活物質の使用のために、アノード又はカソード活物質の少なくとも1つの上に材料層をコーティングする。いくつかの実施形態において、材料層は、アノード又はカソード活物質の少なくとも1つの上にコーティングされて、コーティングされた活物質以外の添加剤を含まない及び/又は電解質添加剤をほとんど又はまったく有しない電解質を利用した電極を形成する。
いくつかの実施形態において、制御された表面の酸性度、塩基性度及びpHの少なくとも1つのために、アノード又はカソードの活物質の少なくとも1つの上に材料の層がコーティングされ、ここで、コーティング材料の前記層を有する活物質基材のpHは、コーティング材料の層を欠く活物質基材のものよりも少なくとも0.1高い又は低い。コーティング材料の層を含む活物質からキャストされた電極は、水性、UV、マイクロ波、又は電子ビームスラリー調製及び電極、硬化及び/又は乾燥キャスティングにとってより有利になり得るので、表面及び組成物のpH及び他の特徴に対する制御は実際的な効果を有する。
一層のコーティング材料を含む材料は、製造プロセスにおける1工程において、処理、硬化、乾燥その他を実施するのに必要なエネルギー入力又は時間を、少なくとも5%、最も頻繁に少なくとも10%、しばしば少なくとも15%、時には少なくとも20%低減することができる。さらに、材料の層がアノード又はカソード活物質のうちの少なくとも1つにコーティングされる特定の実施形態は、環境湿度制御なしでの電極及び電池の製造を提供する。
いくつかの実施形態において、材料の層が、電池製造のためのアノード又はカソード活物質の少なくとも1つにコーティングされ、形成工程が単純化又は除かれる。いくつかの実施形態において、形成時間もしくはエネルギー消費量又はそれらの両方が、前記材料の層なしでの電池製造に比べて少なくとも10%低減される。他の実施形態において、材料の層は、電解質による電極の濡れ性を高めるためにアノード又はカソード活物質の少なくとも1つの上にコーティングされ、接触角を少なくとも2°、最も頻繁には5°、時には10°以上変化させる。
いくつかの実施形態において、材料の層は、コーティング原子と表面酸素との間の強い結合を形成する。本発明で具体化されるように、材料の層は、1.5m2/gを超えるBETを有する活物質の使用のために、アノード又はカソード活物質のうちの少なくとも1つの上にコーティングすることができ、ガス発生を少なくとも1%、最も頻繁には5%、時には10%、更には25%以上さらに低減するために使用することができる。
さらに、本明細書で開示される様々な実施形態の要素又はコンポーネントは、他の実施形態の他の要素又はコンポーネントと共に使用されてもよい。
本明細書及び実施例は、例示的なものとしてのみ考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって示される。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
電池において使用するためのカソード活物質、アノード活物質又は固体電解質のためのイオン伝導性コーティングであって、
前記カソード活物質、前記アノード活物質又は前記固体電解質の表面上に配置されたコーティング材料層を含み、
前記コーティング材料層が、
(i)金属酸化物;
(ii)金属ハロゲン化物;
(iii)金属オキシフッ化物;
(iv)金属リン酸塩;
(v)金属硫酸塩;
(vi)非金属酸化物;
(vii)オリビン系材料;
(viii)NaSICON構造体;
(ix)ペロブスカイト構造体;
(x)スピネル構造体;
(xi)多金属イオン性構造体;
(xii)金属有機構造体又は錯体;
(xiii)多金属有機構造体又は錯体;
(xiv)周期的性質を有する構造;
(xv)ランダムに分布する官能基;
(xvi)周期的に分布する官能基;
(xvii)市松模様の微細構造である官能基;
(xviii)2次元周期配列;及び
(xix)3次元周期配列;
のうちの1又は2つ以上を含み、
前記コーティング材料層は機械的に安定である、イオン伝導性コーティング。
[態様2]
前記コーティング材料層が、アルカリ金属;遷移金属;ランタン;ホウ素;ケイ素;炭素;錫;ゲルマニウム;ガリウム;アルミニウム;チタン;及びインジウムから成る群から選択された1又は2種以上の材料をさらに含む、態様1に記載のコーティング。
[態様3]
前記コーティング材料層が、約2,500nm以下の厚さ、もしくは約2nm~約2,000nmの厚さ、もしくは約10nmの厚さ、又は約5nm~15nmの厚さを有する、態様1に記載のコーティング。
[態様4]
電池であって、
アノード;
カソード;
前記アノードと前記カソードとの間でのイオン移動をもたらすように構成された電解質;及び
前記アノード活物質及び/又はカソード活物質の表面に堆積された材料層;
とを含み、
前記材料層は、
(i)金属酸化物;
(ii)金属ハロゲン化物;
(iii)金属オキシフッ化物;
(iv)金属リン酸塩;
(v)金属硫酸塩;
(vi)非金属酸化物;
(vii)オリビン系材料;
(viii)NaSICON構造体;
(ix)ペロブスカイト構造体;
(x)スピネル構造体;
(xi)多金属イオン性構造体;
(xii)金属有機構造体又は錯体;
(xiii)多金属有機構造体又は錯体;
(xiv)周期的性質を有する構造;
(xv)ランダムに分布する官能基;
(xvi)周期的に分布する官能基;
(xvii)市松模様の微細構造である官能基;
(xviii)2次元周期配列;及び
(xix)3次元周期配列;
のうちの1又は2つ以上を含む、電池。
[態様5]
前記材料層が、アルカリ金属;遷移金属;ランタン;ホウ素;ケイ素;炭素;錫;ゲルマニウム;ガリウム;アルミニウム;チタン;及びインジウムから成る群から選択された1又は2種以上の材料をさらに含む、態様4に記載のコーティング。
[態様6]
前記材料層が、約2,500nm以下、もしくは約2nm~約2,000nm、又は約0.1nm~15nmの測定された公称厚さを有するか、あるいは、約10nmである、態様4に記載のコーティング。
[態様7]
前記カソード活物質上に堆積された前記材料層は、測定された公称厚さで0.1nm~15nmであり、前記アノード活物質上に堆積された前記材料層は、測定された公称厚さで2nm~2000nmである、態様4に記載の電池。
[態様8]
測定された公称厚さの変動が、測定された厚さの少なくとも95%で基準測定公称厚さから40%を超えない、態様6に記載の電池。
[態様9]
前記材料層が、ヒドロキシル、アミン及び/又はチオール基から選択された少なくとも2つの官能基を含む有機分子と錯化したリチウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、リン又は錫のうちの1又は2種以上のカチオンをさらに含む、態様4に記載の電池。
[態様10]
前記材料層は、酸化アルミニウム、二酸化チタン又はリチウムリン酸窒化物のうちの1又は2種以上をさらに含み、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物、リチウム-マンガン酸化物、リチウム-コバルト酸化物、グラファイト、ケイ素又はリチウム-チタン酸化物表面のうちの1又は2以上の上にコーティングされている、態様4に記載の電池。
[態様11]
前記アノード活物質又は前記カソード活物質の表面上に堆積された前記材料層が、放電レート容量を増加させ、前記電池に、
前記材料層が堆積されなかった電池よりも0.1低いPeukert係数か、
1.1以下であるPeukert係数か、あるいは、
前記材料層が堆積されなかった電池よりも0.1低く、かつ、1.1以下のPeukert係数、
を付与する、
態様4に記載の電池
[態様12]
前記アノード活物質又は前記カソード活物質の表面上に堆積された前記材料層は、前記電池が4.05V以上の電圧での釘刺し試験に合格することを可能にする、態様4に記載の電池。
[態様13]
前記材料層が、カソード活物質又はアノード活物質のうちの少なくとも1つの上に、2Ah以上のバッテリー用の電極キャスティングのための活物質スラリーを形成するためにカソード又はアノード活物質のうちのコーティングされる前記少なくとも1つを混合する前に堆積され、
前記材料層が、電池製造プロセス中のゲル化の現象及び発生を軽減し、
前記活物質スラリーの粘度が、2s-1~10s-1のせん断速度の範囲にわたって常に10Pa・s未満である、
態様4に記載のバッテリー。
[態様14]
前記材料層が多層多機能コーティングを含み、前記多層コーティング内の複数の層が、所定の組み合わせ及び所定の順序で配置されていて、互いに比べて類似又は異なる特性又は機能を提供し、コーティング全体が等しい厚さの任意の単一の層により形成されたコーティングよりも高い又はより優れた特性を有する、態様4に記載の電池。
[態様15]
熱暴走開始温度が前記材料層を有しない電池よりも少なくとも25℃高い、態様4に記載の電池。
[態様16]
前記材料層は、制御された表面の酸性度、塩基性度及びpHの少なくとも1つのために、前記アノード又はカソード活物質の少なくとも1つの上に堆積されており、
前記材料層でコーティングされた活物質の表面pHが、コーティングされていない活物質に対して少なくとも0.1異なる、
態様4に記載の電池。
[態様17]
前記材料層は、水性、UV、マイクロ波又は電子ビームスラリー調製並びに電極のキャスティング、硬化及び/又は乾燥のために、前記アノード又はカソード活物質のうちの少なくとも1つの上に堆積されている、態様4に記載の電池。
[態様18]
前記材料層は、形成ステップが単純化又は除かれた電池製造のための前記アノード又はカソード活物質のうちの少なくとも1つの上に堆積され、
前記形成時間もしくはエネルギー消費量又はその両方が、前記材料層なしでの電池の製造と比較して少なくとも10%低減される、
態様4に記載の電池。
[態様19]
電池であって、
アノード;
カソード;
前記アノードと前記カソードとの間でのイオン移動をもたらすように構成された電解質;
前記アノード、カソード及び電解質のうちの少なくとも1つの中に位置する固体電解質材料;及び
前記アノード活物質、前記カソード活物質及び/又は前記固体電解質材料の表面上に堆積された1又は複数の材料層;
とを含み、
前記材料層は、
(i)金属酸化物;
(ii)金属ハロゲン化物;
(iii)金属オキシフッ化物;
(iv)金属リン酸塩;
(v)金属硫酸塩;
(vi)非金属酸化物;
(vii)オリビン系材料;
(viii)NaSICON構造体;
(ix)ペロブスカイト構造体;
(x)スピネル構造体;
(xi)多金属イオン性構造体;
(xii)金属有機構造体又は錯体;
(xiii)多金属有機構造体又は錯体;
(xiv)周期的性質を有する構造;
(xv)ランダムに分布する官能基;
(xvi)周期的に分布する官能基;
(xvii)市松模様の微細構造である官能基;
(xviii)2次元周期配列;及び
(xix)3次元周期配列;
のうちの1又は2つ以上を含む、電池。
[態様20]
前記固体電解質材料は、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づくもしくはリン酸塩に基づく化合物、イオン伝導性ポリマー、リチウムもしくはナトリウム超イオン伝導体、イオン伝導性の酸化物もしくはオキシフッ化物、リチウムリン酸窒化物、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウムランタンチタネート、リチウムランタンジルコネート、LiもしくはNaベータアルミナ、ガーネット構造体、LiSICONもしくはNaSICON構造体、あるいは、ペロブスカイト構造体のうちの少なくとも1種を含む、態様19に記載の電池。
[態様21]
前記材料層が、アルカリ金属;遷移金属;ランタン;ホウ素;ケイ素;炭素;錫;ゲルマニウム;ガリウム;アルミニウム;チタン;及びインジウムから成る群から選択された1又は2種以上の材料をさらに含む、態様19に記載の電池。
[態様22]
前記材料層は、約2,500nm以下、もしくは約2nm~約2,000nm、又は約0.1nm~15nmの測定された公称厚さを有するか、あるいは、約10nmである、態様19に記載の電池。
[態様23]
前記固体電解質上に堆積された材料層が0.2nm~100nmであり、前記電池が、前記アノード活物質上に堆積された材料層であって、測定された公称厚さで2nm~2000nmである材料層と、測定された公称厚さで0.1nm~15nmであるカソード活物質上に堆積された材料層とを含む、態様19に記載の電池。
[態様24]
前記アノードが、100nm以下の厚さを有する材料層でコーティングされたリチウム金属粒子を含む、態様19に記載の電池。
[態様25]
表面上に1つ又は複数の材料層が堆積されていない対応する電池よりも少なくとも100%高い第1サイクル放電容量を有し、前記電池及び前記対応する電池は両方ともその他の点では同じ条件下で製造されたものである、態様19に記載の電池。
[態様26]
前記固体電解質材料上の前記材料層が、周囲空気中での前記固体電解質材料の表面における自然酸化物の成長を厚さ約5nm以下まで制御し、及び/又は、固体電解質粒子の酸素含有量を周囲空気に24時間の暴露後に約5%以下に維持する、態様19に記載の電池。
[態様27]
前記固体電解質材料上の前記材料層は、周囲空気に1時間暴露後に少なくとも10-6Scm-1のイオン伝導率を維持するように適合されたものである、態様19に記載の電池。
[態様28]
電池のカソード活物質、アノード活物質又は固体電解質材料をコーティングする方法であって、
前記電池の前記カソード活物質、アノード活物質又は前記固体電解質材料の表面上に、原子層堆積;化学蒸着;真空蒸着;電子ビーム堆積;レーザー堆積;プラズマ堆積;高周波スパッタリング;ゾル-ゲル;マイクロエマルジョン;連続イオン層堆積;水性堆積;メカノフュージョン;固体状態拡散;又はドーピングのうちの1又は2以上によって、材料層を堆積させる工程を含み、
前記材料層が、
(i)金属酸化物;
(ii)金属ハロゲン化物;
(iii)金属オキシフッ化物;
(iv)金属リン酸塩;
(v)金属硫酸塩;
(vi)非金属酸化物;
(vii)オリビン系材料;
(viii)NaSICON構造体;
(ix)ペロブスカイト構造体;
(x)スピネル構造体;
(xi)多金属イオン性構造体;
(xii)金属有機構造体又は錯体;
(xiii)多金属有機構造体又は錯体;
(xiv)周期的性質を有する構造;
(xv)ランダムに分布する官能基;
(xvi)周期的に分布する官能基;
(xvii)市松模様の微細構造である官能基;
(xviii)2次元周期配列;及び
(xix)3次元周期配列;
のうちの1又は2つ以上を含む、方法。
[態様29]
前記固体電解質材料が、さらに、原子層堆積;化学蒸着;真空蒸着;電子ビーム堆積;レーザー堆積;プラズマ堆積;高周波スパッタリング;ゾル-ゲル;マイクロエマルジョン;連続イオン層堆積又は水性堆積のうちの1又は2以上によって、多孔質の柔軟な足場上に60μm以下の厚さを有する第1の固体電解質コーティングを堆積させる工程を含む方法を使用して製造され、
前記固体電解質材料は、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づくもしくはリン酸塩に基づく化合物、イオン伝導性ポリマー、リチウムもしくはナトリウム超イオン伝導体、イオン伝導性の酸化物もしくはオキシフッ化物、リチウムリン酸窒化物、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウムランタンチタネート、リチウムランタンジルコネート、LiもしくはNaベータアルミナ、ガーネット構造体、LiSICONもしくはNaSICON構造体、あるいは、ペロブスカイト構造体のうちの少なくとも1種を含む、態様28に記載の方法。
[態様30]
電池であって、
アノード;
カソード;
前記アノードと前記カソードとの間でのイオン移動をもたらすように構成された柔軟な固体電解質;及び
前記アノード活物質、前記カソード活物質及び/又は前記固体電解質材料の表面上に堆積された1又は複数層の材料層;
とを含み、
各材料層は、
(i)金属酸化物;
(ii)金属ハロゲン化物;
(iii)金属オキシフッ化物;
(iv)金属リン酸塩;
(v)金属硫酸塩;
(vi)非金属酸化物;
(vii)オリビン系材料;
(viii)NaSICON構造体;
(ix)ペロブスカイト構造体;
(x)スピネル構造体;
(xi)多金属イオン性構造体;
(xii)金属有機構造体又は錯体;
(xiii)多金属有機構造体又は錯体;
(xiv)周期的性質を有する構造;
(xv)ランダムに分布する官能基;
(xvi)周期的に分布する官能基;
(xvii)市松模様の微細構造である官能基;
(xviii)2次元周期配列;及び
(xix)3次元周期配列;
のうちの1又は2つ以上を含み、
前記固体電解質材料は、多孔質の柔軟な足場の上に堆積されており、リチウム伝導性の硫化物に基づく、リン化物に基づくもしくはリン酸塩に基づく化合物、イオン伝導性ポリマー、リチウムもしくはナトリウム超イオン伝導体、イオン伝導性の酸化物もしくはオキシフッ化物、リチウムリン酸窒化物、リチウムアルミニウムチタンホスフェート、リチウムランタンチタネート、リチウムランタンジルコネート、LiもしくはNaベータアルミナ、ガーネット構造体、LiSICONもしくはNaSICON構造体、あるいは、ペロブスカイト構造体のうちの少なくとも1種を含む、電池。