本発明の技術的思想は、あらゆる農業機械車両や建設機械車両にも適用することが可能である。
まず、トラクタ1について簡単に説明する。
図1は、トラクタ1を示している。図2は、図1の矢印Xから見た図であり、図3は、図1の矢印Yから見た図である。また、図4は、図1の矢印Zから見た図である。なお、図中には、トラクタ1の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
トラクタ1は、主に、シャシフレーム11と、エンジン12と、トランスミッション13と、フロントアクスル14と、リヤアクスル15と、で構成されている。また、トラクタ1には、オペレータを風雨から守るキャビン16のほか、エンジン12を風雨から守るボンネット2が設けられている。
シャシフレーム11は、トラクタ1の骨格をなす。以下に説明するエンジン12などは、シャシフレーム11に取り付けられる。
エンジン12は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。つまり、エンジン12は、燃料を燃やすことによって回転動力を生み出す。なお、エンジン12には、制御装置が接続されている。制御装置は、オペレータがアクセルペダルを操作すると、その操作に応じてエンジン12の運転状態を変更する。また、エンジン12には、排気浄化装置12Eが備えられている。排気浄化装置12Eは、排気に含まれる粒子(PM)や一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を酸化させる。
トランスミッション13は、エンジン12の回転動力をフロントアクスル14やリヤアクスル15に伝達する。トランスミッション13には、連結機構を介してエンジン12の回転動力が入力される。なお、トランスミッション13には、無段変速装置が備えられている。無段変速装置は、オペレータがシフトレバーを操作すると、その操作に応じてトランスミッション13の作動状態を変更する。
フロントアクスル14は、エンジン12の回転動力をフロントタイヤ141に伝達する。フロントアクスル14には、トランスミッション13を介してエンジン12の回転動力が入力される。なお、フロントアクスル14には、操舵装置が並設されている。操舵装置は、オペレータがハンドルを操作すると、その操作に応じてフロントタイヤ141の舵角を変更する。
リヤアクスル15は、エンジン12の回転動力をリヤタイヤ151に伝達する。リヤアクスル15には、トランスミッション13を介してエンジン12の回転動力が入力される。なお、リヤアクスル15には、PTO出力装置が設けられている。PTO出力装置は、オペレータがスイッチを操作すると、牽引する作業機械に回転動力を入力する。
次に、ボンネット2について説明する。
図5は、ボンネット2を示している。図6は、図5の矢印Xから見た図であり、図7は、図5の矢印Yから見た図である。また、図8は、図5の矢印Zから見た図である。なお、図中には、トラクタ1の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
ボンネット2は、アッパーカバー21と、一対のロワカバー22と、を有している。また、ボンネット2は、その前面にフロントグリル23を有している。
アッパーカバー21は、エンジン12の上方を覆う外装部品である。アッパーカバー21は、その前端点Uaから上方に盛り上がり、中点Ubから下方に折り込まれている。そして、開口部21hよりも後方では、後端点Ucにかけて滑らかな曲線を描いている。更に、アッパーカバー21は、その前端点Uaから側方に広がり、側端点Uwを最大幅部とした滑らかな曲線を描いている。なお、アッパーカバー21には、前端点Uaから中点Ubに至るまでキャラクターラインC1が形成され、中点Ubから側方に広がるようにキャラクターラインC2が形成されている。開口部21hは、二つのキャラクターラインC2の間に略楔形状に形成されている。そして、開口部21hは、デザインパネル41によって塞がれている。
ロワカバー22は、エンジン12の側方を覆う外装部品である。ロワカバー22は、その前端点Laから側方に広がり、側端点Lwを最大幅部とした滑らかな曲線を描いている。更に、ロワカバー22の上半部分は、外側へ膨らむ曲面を基調としているのに対し、ロワカバー22の下半部分では、内側へ窪む曲面を基調としている。なお、ロワカバー22には、前端点Laから側端点Lwを通るキャラクターラインC3が形成されている。開口部22haは、キャラクターラインC3の上側に略菱形状に形成され、開口部22hbは、キャラクターラインC3の下側に略菱形状に形成されている。加えて、ロワカバー22の前側上部は、ハイビームライトユニット24の形状に合わせて形成されている。また、ロワカバー22の前側下部は、ロービームライトユニット25の形状に合わせて形成されている。
フロントグリル23は、エンジン12の前方を覆う外装部品である。フロントグリル23は、グリルフレーム231にメタルメッシュ232を貼り合わせた構造となっている。グリルフレーム231は、その所定点Spから斜め上方へ延びるビーム部231L・231Rと、その所定点Spから下方へ延びるピラー部231Pと、を有する。ビーム部231L・231R及びピラー部231Pは、所定点Spから離れるに従って徐々に細くなり、フレーム部231Gにつながっている。メタルメッシュ232は、ビーム部231L・231Rとフレーム部231Gで囲まれた範囲のほか、ビーム部231Lとピラー部231Pとフレーム部231Gで囲まれた範囲、ビーム部231Rとピラー部231Pとフレーム部231Gで囲まれた範囲の三箇所を覆っている。加えて、フロントグリル23の上部両側は、ハイビームライトユニット24の形状に合わせて形成されている。また、フロントグリル23の下部両側は、ロービームライトユニット25の形状に合わせて形成されている。
更に、本ボンネット2は、以下の特徴を有する。即ち、アッパーカバー21の上部には、開口部21hを縦断するように略I字形状のセンターマーク31が配置されている。また、フロントグリル23の前面には、ビーム部231L・231Rとピラー部231Pを覆うように略Y字形状のシンボルマーク32が配置されている。なお、センターマーク31とシンボルマーク32は、光沢のあるメッキ処理が施されている。これは、優れたデザインを取り入れるとともに、第三者に強い印象を与えて被視認性を高めることを目的としている。
次に、センターマーク31とデザインパネル41について詳細に説明する。
図9は、センターマーク31とデザインパネル41を示している。図10は、図9の矢印Xから見た図であり、図11は、図9の矢印Yから見た図である。また、図12は、図9の矢印Zから見た図である。なお、図中には、トラクタ1の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
本トラクタ1において、センターマーク31は、デザインパネル41に固定されている。詳細に説明すると、センターマーク31は、その中心線31Lとデザインパネル41の中心線41Lが重なるように、該デザインパネル41に固定されている(図12参照)。そのため、センターマーク31は、デザインパネル41が所定の位置に取り付けられると、ボンネット2の中心線2Lに重なって配置されることとなる(図8参照)。ひいては、トラクタ1の中心線1Lに重なって配置されることとなる(図4参照)。
本トラクタ1において、センターマーク31は、金属形成部品である。センターマーク31は、その前端点Caから上方に盛り上がり、中点Cbにかけて徐々に緩やかになる曲線を描いている。そして、中点Cbよりも後方では、後端点Ccにかけて下方へ下る円弧状の曲線を描いている。つまり、前端点Caから後端点Ccに至るまでの稜線31Rは、上側に膨らんだ弧を描いている。なお、稜線31Rは、該稜線31Rから左右に下る二つの曲面31Sa・31Sbによって形成されている。そのため、センターマーク31は、キャビン16の中から見ると、上方へ尖った形状に見えることとなる(図13参照)。
本トラクタ1において、デザインパネル41は、樹脂形成部品である。デザインパネル41は、その前端点Daから上方に盛り上がり、後端点Dbにかけて緩やかな曲線を描いている。更に、デザインパネル41は、その前端点Daから側方に広がった略楔形状となっている。なお、デザインパネル41は、その裏側に複数の掛止爪41Cが設けられている。そのため、デザインパネル41は、アッパーカバー21の開口部21hに掛止爪41Cを引っ掛けた状態で取り付けられることとなる。加えて、デザインパネル41は、複数の貫通穴41hが設けられている。そのため、デザインパネル41は、ボンネット2の内部から外部へ、若しくは外部から内部へ空気を通すことが可能である(図16参照)。
次に、センターマーク31の機能について説明する。
図13は、オペレータの視界を示している。図14は、オペレータの視線を示している。なお、二点鎖線DHは、身長が高いオペレータの視線を表し、二点鎖線DLは、身長が低いオペレータの視線を表す。
上述したように、センターマーク31は、トラクタ1の中心線1Lに重なって配置されている。そのため、センターマーク31は、オペレータから見ると、常にトラクタ1の走行方向を指し示す。従って、オペレータは、目標ルートTrにセンターマーク31が重なるように操縦することで、走行方向を定めることができる。なお、センターマーク31は、上方へ尖った形状に見えるので、目標ルートTrの幅が狭くても重ね合わせることが容易である。例えば、畝rと畝rの細い隙間が目標ルートTrであっても、重ね合わせることが容易である。
また、オペレータは、目標ルートTrからセンターマーク31が外れたときに、走行方向がズレたことを認識できる。このとき、オペレータは、再び目標ルートTrにセンターマーク31が重なるように操縦することで、適宜に走行方向のズレを修正できる。なお、センターマーク31は、上方へ尖った形状に見えるので、目標ルートTrの幅が狭くてもセンターマーク31が外れたことがわかりやすい。例えば、畝rと畝rの細い隙間が目標ルートTrであっても、センターマーク31が外れたことがわかりやすい。
このように、本発明に係るボンネット2は、アッパーカバー21の上部に配置されるセンターマーク31を具備している。そして、センターマーク31は、オペレータが走行方向を定めるための照準器となる。これにより、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、走行方向を定めやすく、適宜に走行方向のズレを修正できる。従って、本トラクタ1は、操縦が容易となる。
加えて、トラクタ1は、センターマーク31の延長線上にオペレータが搭乗する。そのため、センターマーク31は、目標ルートTrを見るオペレータの視線に沿って配置されているといえる。従って、オペレータは、自然な体勢でセンターマーク31を見ることができる。なお、センターマーク31は、稜線31Rが上側に膨らんだ弧を描いているので、該センターマーク31を見る角度が異なっても上方へ尖った形状に見える。具体的に説明すると、センターマーク31は、身長が高いオペレータには点Raを頂点とした尖った形状に見え、身長が低いオペレータには点Rbを頂点とした尖った形状に見える。
このように、センターマーク31は、目標ルートTrを見るオペレータの視線に沿って配置されている。そして、その稜線31Rは、上側に膨らんだ弧を描いている。これにより、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、オペレータの身長の高低に関わらず、センターマーク31の延長線上に目標ルートTrを捉えやすくなる。
次に、センターマーク31の他の機能について説明する。
図15は、デザインパネル41の脱着作業を示している。脱着作業とは、製造時における取付作業のほか、整備時における取外作業及び取付作業を指す。
上述したように、センターマーク31は、デザインパネル41に固定されている。また、デザインパネル41は、アッパーカバー21の開口部21hに掛止爪41Cを引っ掛けた状態で取り付けられる。そのため、センターマーク31とデザインパネル41は、一体となった状態で、アッパーカバー21に対して脱着自在となっている。このとき、作業者は、センターマーク31を摘んで脱着作業を行なうことができる。
このように、本発明に係るボンネット2は、開口部21hを塞ぐデザインパネル41を具備している。そして、センターマーク31は、デザインパネル41に固定されている。これにより、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、センターマーク31が把手となるので、デザインパネル41の脱着作業が容易となる。
加えて、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、センターマーク31が把手となるので、製造時や整備時における作業効率が向上する。また、センターマーク31やデザインパネル41が破損した場合でも、容易に交換することができる。更に、センターマーク31やデザインパネル41が汚れた場合でも、容易に清掃することができる。
次に、デザインパネル41の機能について説明する。
図16は、ボンネット2における空気の流れを示している。なお、図中の矢印Fa・Fbは、ボンネット2へ供給される空気の流れを表し、図中の矢印Fc・Fdは、ボンネット2から排出される空気の流れを表す。
上述したように、デザインパネル41は、複数の貫通穴41hが設けられている。そのため、デザインパネル41は、ボンネット2の内部から外部へ、若しくは外部から内部へ空気を通すことが可能である。なお、本デザインパネル41において、貫通穴41hは、直径が小さい丸穴(直径2mmの丸穴)であるが、これに限定するものではない。例えば、四角穴や三角穴でもよい。また、貫通穴41hの数は、一つでも複数でもよい。つまり、デザインパネル41は、空気を通すことができればよい。
このように、デザインパネル41は、一つ又は複数の貫通穴41hが設けられている。これにより、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、デザインパネル41が通風路となるので、エンジン12の熱がこもりにくくなる。
加えて、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、デザインパネル41が通風路となるので、エンジン12のヒートバランス性能が向上する。これにより、潤滑油温度が適正に保たれてエンジン12の耐久性が向上する。また、燃料温度が適正に保たれてエンジン12の出力低下を防止できる。なお、デザインパネル41は、デザインに凝った設計がなされている。これは、優れたデザインを取り入れるとともに、第三者に強い印象を与えて被視認性を高めることを目的としている。
以下に、ボンネット2の構造について説明する。
図17から図25は、ボンネット2の組立工程を示している。また、図26は、ボンネット2が完成した状態を示している。図27は、図26の矢印Mから見た図であり、図28は、図26の矢印Nから見た図である。更に、図29は、図28のA−A断面を示している。なお、ここでは、主な工程についてのみ説明する。また、工程の順序については、限定するものではない。
第一工程は、センターピラー51にサイドフレーム52とアンダースペーサ53を取り付ける工程である(図17参照)。詳細に説明すると、センターピラー51にサイドフレーム52を取り付け、該サイドフレーム52にアンダースペーサ53を取り付ける工程である。サイドフレーム52は、センターピラー51の下端にボルト52Bを用いて固定される。アンダースペーサ53は、サイドフレーム52の下面にボルト53Bを用いて固定される。
第二工程は、第一工程で組み立てられたモジュールM1にフロントグリル23とシンボルマーク32を取り付ける工程である(図18参照)。詳細に説明すると、センターピラー51にフロントグリル23を取り付け、該フロントグリル23にシンボルマーク32を取り付ける工程である。フロントグリル23は、センターピラー51の前面にボルト23Bを用いて固定される。シンボルマーク32は、フロントグリル23の前面にボルト32Bを用いて固定される。
第三工程は、第二工程で組み立てられたモジュールM2にハイビームライトユニット24とロービームライトユニット25を取り付ける工程である(図19参照)。詳細に説明すると、フロントグリル23にハイビームライトユニット24を取り付け、同じくフロントグリル23にロービームライトユニット25を取り付ける工程である。ハイビームライトユニット24は、フロントグリル23の裏面にボルト24Bを用いて固定される。ロービームライトユニット25も、フロントグリル23の裏面にボルト25Bを用いて固定される。なお、ロービームライトユニット25は、ハイビームライトユニット25の後面にもネジ25Sを用いて固定される。
第四工程は、アッパーカバー21にチップメンバ61とミドルメンバ62とエンドメンバ63を取り付ける工程である(図20参照)。詳細に説明すると、アッパーカバー21にチップメンバ61を取り付け、同じくアッパーカバー21にミドルメンバ62を取り付け、同じくアッパーカバー21にエンドメンバ63を取り付ける工程である。チップメンバ61は、アッパーカバー21の先端部裏面に接着剤を用いて固定される。ミドルメンバ62は、アッパーカバー21の中途部裏面に接着剤とファスナ62F(図29参照)を用いて固定される。エンドメンバ63は、アッパーカバー21の後端部裏面に接着剤とファスナ63F(図29参照)を用いて固定される。なお、エンドメンバ63には、予めセンタービーム631が溶接されている。センタービーム631は、ミドルメンバ62の下面にボルト631Bを用いて固定される。
第五工程は、第四工程で組み立てられたモジュールM4にサポートプレート64とボンネットヒンジ65を取り付ける工程である(図21参照)。詳細に説明すると、アッパーカバー21にサポートプレート64を取り付け、エンドメンバ63にボンネットヒンジ65を取り付ける工程である。サポートプレート64は、アッパーカバー21の後端部裏面に接着剤とファスナ64F(図27参照)を用いて固定される。ボンネットヒンジ65は、エンドメンバ63の下面にボルト65Bを用いて固定される。なお、ボンネットヒンジ65は、センタービーム631の下面にもボルト65Bを用いて固定される。
第六工程は、第三工程で組み立てられたモジュールM3と第五工程で組み立てられたモジュールM5を合体させる工程である(図22参照)。詳細に説明すると、モジュールM3を構成するセンターピラー51とモジュールM5を構成するチップメンバ61を連結し、一のモジュールM6とする工程である。センターピラー51とチップメンバ61は、ボルト51Bを用いて連結される。
第七工程は、第六工程で組み立てられたモジュールM6にロワカバー22を取り付ける工程である(図23参照)。詳細に説明すると、アッパーカバー21やサイドフレーム52、エンドメンバ63などにロワカバー22を取り付ける工程である。ロワカバー22は、アッパーカバー21やサイドフレーム52、エンドメンバ63にファスナ22Fを用いて固定される。なお、ロワカバー22は、ハイビームライトユニット24にもナット22N(図29参照)を用いて固定される。また、ロワカバー22は、ロービームライトユニット25にもファスナ22F(図29参照)を用いて固定される。更に、ロワカバー22は、アンダースペーサ53にもファスナ22F(図28、図29参照)を用いて固定される。
第八工程は、第七工程で組み立てられたモジュールM7にウェザストリップ66・67・68・69を取り付ける工程である(図24参照)。詳細に説明すると、アンダースペーサ53やロワカバー22、エンドメンバ63などにウェザストリップ66・67・68・69を取り付ける工程である。ウェザストリップ66は、アンダースペーサ53とロワカバー22の下辺に嵌め込まれる。ウェザストリップ67は、ロワカバー22の内側のリブに嵌め込まれる。更に、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63の後辺(ボンネットヒンジ65よりも右側のみ)に嵌め込まれる。そして、ウェザストリップ69は、サポートプレート64の後辺(ボンネットヒンジ65よりも左側のみ)に嵌め込まれる。
第九工程は、第八工程で組み立てられたモジュールM8にデザインパネル41を取り付ける工程である(図25参照)。詳細に説明すると、アッパーカバー21の開口部21hにデザインパネル41を取り付ける工程である。上述したように、デザインパネル41は、アッパーカバー21の開口部21hに掛止爪41Cを引っ掛けた状態で取り付けられる。なお、デザインパネル41には、予めセンターマーク31が固定されている。
こうして、ボンネット2は、完成するのである(図26、図27、図28、図29参照)。
次に、本ボンネット2の構造上の特徴について述べる。
第一の特徴として、本ボンネット2は、センターピラー51を有している。センターピラー51は、ボンネット2を構成する各部品又は部品群(上記では「モジュール」とした)の組付基準となる。以下に説明するサイドフレーム52などは、センターピラー51に直接的若しくは間接的に取り付けられる。
第二の特徴として、サイドフレーム52は、センターピラー51に取り付けられる(図17参照)。つまり、サイドフレーム52は、組付基準であるセンターピラー51に直接的に取り付けられる。
このように、本発明に係るボンネット2は、サイドフレーム52を有している。そして、サイドフレーム52は、センターピラー51に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、センターピラー51に対してサイドフレーム52の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。
第三の特徴として、アンダースペーサ53は、サイドフレーム52に取り付けられる(図17参照)。詳細に説明すると、本ボンネット2は、組付基準であるセンターピラー51にサイドフレーム52が取り付けられている。そして、アンダースペーサ53は、サイドフレーム52に取り付けられる。つまり、アンダースペーサ53は、組付基準であるセンターピラー51に間接的に取り付けられる。
このように、本発明に係るボンネット2は、アンダースペーサ53を有している。そして、アンダースペーサ53は、サイドフレーム52に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、サイドフレーム52に対してアンダースペーサ53の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。ひいては、センターピラー51に対してアンダースペーサ53の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。なお、アンダースペーサ53は、センターピラー51に直接的に取り付けられるとしてもよい。この場合においても、同様の効果を奏する。
第四の特徴として、フロントグリル23は、センターピラー51に取り付けられる(図18参照)。つまり、フロントグリル23は、組付基準であるセンターピラー51に直接的に取り付けられる。
このように、本発明に係るボンネット2は、フロントグリル23を有している。そして、フロントグリル23は、センターピラー51に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、センターピラー51に対してフロントグリル23の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。
第五の特徴として、ハイビームライトユニット24とロービームライトユニット25は、フロントグリル23に取り付けられる(図19参照)。詳細に説明すると、本ボンネット2は、組付基準であるセンターピラー51にフロントグリル23が取り付けられている。そして、ハイビームライトユニット24とロービームライトユニット25は、フロントグリル23に取り付けられる。つまり、ハイビームライトユニット24とロービームライトユニット25は、組付基準であるセンターピラー51に間接的に取り付けられる。
このように、本発明に係るボンネット2は、ライトユニット(ハイビームライトユニット24及びロービームライトユニット25)を有している。そして、ライトユニット(24・25)は、フロントグリル23に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、フロントグリル23に対してライトユニット(24・25)の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。ひいては、センターピラー51に対してライトユニット(24・25)の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。なお、ライトユニット(24・25)は、センターピラー51に直接的に取り付けられるとしてもよい。この場合においても、同様の効果を奏する。
第六の特徴として、アッパーカバー21は、センターピラー51によって支持される(図22参照)。つまり、アッパーカバー21は、組付基準であるセンターピラー51によって直接的に支持される。
このように、本発明に係るボンネット2は、アッパーカバー21を有している。そして、アッパーカバー21は、センターピラー51によって支持される。これにより、かかるボンネット2は、センターピラー51に対してアッパーカバー21の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。
第七の特徴として、ロワカバー22は、少なくともアッパーカバー21とサイドフレーム52に取り付けられる(図23参照)。詳細に説明すると、本ボンネット2は、組付基準であるセンターピラー51にアッパーカバー21が支持されている。また、組付基準であるセンターピラー51にサイドフレーム52が取り付けられている。そして、ロワカバー22は、少なくともアッパーカバー21とサイドフレーム52に取り付けられる。つまり、ロワカバー22は、組付基準であるセンターピラー51に間接的に取り付けられる。
このように、本発明に係るボンネット2は、ロワカバー22を有している。そして、ロワカバー22は、アッパーカバー21とサイドフレーム52に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、アッパーカバー21とサイドフレーム52に対してロワカバー22の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。ひいては、センターピラー51に対してロワカバー22の取付位置がズレにくく、組立精度が向上する。なお、本ボンネット2において、ロワカバー22は、ライトユニット(24・25)やアンダースペーサ53にも取り付けられる。これは、ロワカバー22の剛性を高めるためである。
以下に、ボンネット2を開閉自在とした構造について説明する。
図30は、ボンネット2を開けた状態を示している。図31は、ボンネット2を閉じた状態を示している。また、図32は、図31における領域Pを拡大した図である。そして、図33は、閉じた状態のボンネット2をオペレータが見た光景を示している。
ボンネット2の内部には、エアカットプレート26が納められる。エアカットプレート26は、ボンネット2の後端を塞ぐように配置されており、エンジン12の熱や騒音がキャビン16へ伝わるのを防いでいる。また、エアカットプレート26は、ボンネットヒンジ65を支持する役割を有している。
更に、ボンネット2の内部には、サイドビーム27が納められる。サイドビーム27は、エアカットプレート26に対して垂直に配置されており、エンジン12の熱交換器12Rが振動するのを防いでいる。また、サイドビーム27は、遮熱板12Hを支持する役割を有している。
加えて、ボンネット2の内部には、ガススプリング28が納められる。ガススプリング28は、その一端部がサイドビーム27に取り付けられている。また、ガススプリング28は、その他端部がミドルメンバ62に取り付けられている。そして、ガススプリング28は、ミドルメンバ62を上方へ押し上げる方向に荷重を掛ける。そのため、ボンネット2は、軽く押し上げてやれば開けることができる。
ところで、アッパーカバー21には、自重によって下方へ回動しようとするモーメントM1が作用している(図30参照)。反対に、アッパーカバー21には、ガススプリング28によって上方へ回動しようとするモーメントM2が作用している(図30参照)。従って、アッパーカバー21は、相対する二つのモーメントM1・M2によっても歪まない剛性が求められる。また、アッパーカバー21の剛性が低い場合、上質な操作感を得られないことが知られている。例えば、ボンネット2を閉じたときに該ボンネット2が細かく振動したり、ボンネット2を閉じたときの音質が悪くなったりするのである。
次に、本ボンネット2の構造上の特徴について述べる。
第一の特徴として、センタービーム631は、ミドルメンバ62とエンドメンバ63を連結している(図20参照)。つまり、センタービーム631は、その一端がミドルメンバ62に取り付けられ、その他端がエンドメンバ63に取り付けられている。
このように、本発明に係るボンネット2は、センタービーム631を具備している。そして、センタービーム631は、ミドルメンバ62とエンドメンバ63を連結する。これにより、かかるボンネット2は、アッパーカバー21の剛性が向上するので、ボンネット2に歪みが生じない。更に、ボンネット2の上質な操作感を実現することができる。
第二の特徴として、ボンネットヒンジ65は、エンドメンバ63とセンタービーム631に取り付けられている(図21参照)。つまり、ボンネットヒンジ65は、その一端がエンドメンバ63に取り付けられ、その他端がセンタービーム631に取り付けられている。
このように、本発明に係るボンネット2は、ボンネットヒンジ65を具備している。そして、ボンネットヒンジ65は、エンドメンバ63とセンタービーム631に取り付けられる。これにより、かかるボンネット2は、モーメントM1・M2による応力がエンドメンバ63の近傍に集中せずにミドルメンバ62の近傍に分散されるので、ボンネット2に歪みが生じない。
第三の特徴として、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63に取り付けられ、該エンドメンバ63の近傍に配置されるエアカットプレート26に接する(図27、図32参照)。つまり、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63に取り付けられた状態で、該エンドメンバ63とエアカットプレート26の隙間を塞ぐ。なお、エアカットプレート26は、ボンネットヒンジ65の右側と左側で前後方向の位置が異なる(図27参照)。エアカットプレート26におけるボンネットヒンジ65の右側を「エアカットプレート26R」とした場合、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63とエアカットプレート26Rの隙間を塞ぐ。
このように、本発明に係るボンネット2は、ウェザストリップ68を具備している。そして、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63に取り付けられ、該エンドメンバ63の近傍に配置されるエアカットプレート26(26R)に接する。これにより、かかるボンネット2は、ウェザストリップ68の取付位置が明確であり、該ウェザストリップ68の取付作業が容易となる。また、オペレータがアッパーカバー21の内側を覗き込んでも、ウェザストリップ68によって遮蔽されているのでエンジン12などが見えず、ボンネット2の上質な外観を実現することができる(図33参照)。
加えて、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、ウェザストリップ68の形状を考慮することにより(ウェザストリップ68の長さを短くして意図的に隙間を設けるなどにより)、所望の位置から空気を通すことができる。これにより、エンドメンバ63とエアカットプレート26(26R)の隙間が通風路となるので、エンジン12の熱がこもりにくくなる。この場合、アッパーカバー21に通風路を設けたものよりも、水や埃がボンネット2の内部に侵入しない。
第四の特徴として、ウェザストリップ69は、サポートプレート64に取り付けられ、該サポートプレート64の近傍に配置されるエアカットプレート26に接する(図27、図32参照)。つまり、ウェザストリップ69は、サポートプレート64に取り付けられた状態で、該サポートプレート64とエアカットプレート26の隙間を塞ぐ。なお、エアカットプレート26は、ボンネットヒンジ65の右側と左側で前後方向の位置が異なる(図27参照)。エアカットプレート26におけるボンネットヒンジ65の左側を「エアカットプレート26L」とした場合、ウェザストリップ68は、エンドメンバ63とエアカットプレート26Lの隙間を塞ぐ。
このように、本発明に係るボンネット2は、ウェザストリップ69とサポートプレート64を具備している。そして、ウェザストリップ69は、サポートプレート64に取り付けられ、該サポートプレート64の近傍に配置されるエアカットプレート26(26L)に接する。これにより、かかるボンネット2は、ウェザストリップ69の取付位置が明確であり、該ウェザストリップ69の取付作業が容易となる。また、オペレータがアッパーカバー21の内側を覗き込んでも、ウェザストリップ69によって遮蔽されているのでエンジン12などが見えず、ボンネット2の上質な外観を実現することができる(図33参照)。
加えて、かかるボンネット2を備えたトラクタ1は、ウェザストリップ69の形状を考慮することにより(ウェザストリップ69の長さを短くして意図的に隙間を設けるなどにより)、所望の位置から空気を通すことができる。これにより、サポートプレート64とエアカットプレート26(26L)の隙間が通風路となるので、エンジン12の熱がこもりにくくなる。この場合、アッパーカバー21に通風路を設けたものよりも、水や埃がボンネット2の内部に侵入しない。
以下に、ボンネット2のコストを低減できるとした構造について説明する。
図34は、二つのロワカバー22A・22Bを示している。図35は、ロワカバー22Aを取り付ける工程を示し、図36は、ロワカバー22Bを取り付ける工程を示している。そして、図37は、各ボンネット2が完成した状態を示している。
ロワカバー22は、下方へ延びたスカート部22Sを有している。本ロワカバー22においては、スカート部22Sが長いものと、スカート部22Sが短いものが存在する。ここでは、スカート部22Sが長いものを「ロワカバー22A」とし(図34の(A)参照)、スカート部22Sが短いものを「ロワカバー22B」とする(図34の(B)参照)。
ロワカバー22Aは、スカート部22Sが長く、該スカート部22Sの下辺がアンダースペーサ53の下辺と同じ高さになっている。換言すると、ロワカバー22Aは、その下辺がアンダースペーサ53の下辺から延長される仮想線Lvに接する。従って、かかるロワカバー22Aを用いて構成されるボンネット2は、アンダースペーサ53が不可欠である。従って、ロワカバー22Aを取り付ける工程においては、フロントグリル23の下方にアンダースペーサ53が配置されている(図35参照)。
ロワカバー22Bは、スカート部22Sが短く、該スカート部22Sの下辺がフロントグリル23の下辺と同じ高さになっている。換言すると、ロワカバー22Bは、その下辺がフロントグリル23の下辺から延長される仮想線Lvに接する。従って、かかるロワカバー22Bを用いて構成されるボンネット2は、アンダースペーサ53が不必要となる。従って、ロワカバー22Bを取り付ける工程においては、フロントグリル23の下方にアンダースペーサ53が配置されていない(図36参照)。
以上より、アッパーカバー21とフロントグリル23は、少なくとも二つの機種で兼用できる。詳細に説明すると、アッパーカバー21とフロントグリル23のほか、ライトユニット(24・25)についても、少なくとも二つの機種で兼用できる(図37参照)。更に、ボンネット2を構成するセンターピラー51やサイドフレーム52についても、当然に兼用できる。
次に、本ボンネット2の特徴について述べる。
第一の特徴として、アッパーカバー21とフロントグリル23は、ロワカバー22におけるスカート部22Sの長さを変えることにより、少なくとも二つの機種で兼用できる(図34から図37参照)。従って、アッパーカバー21とフロントグリル23は、少なくとも二つの機種で共通して使用されるので、生産量が増えてコストの低減が見込める(量産効果という)。
このように、アッパーカバー21とフロントグリル23は、ロワカバー22におけるスカート部22Sの長さを変えることにより、少なくとも二つの機種で兼用できる。これにより、かかるボンネット2は、アッパーカバー21とフロントグリル23の量産効果により、コストの低減が可能となる。
第二の特徴として、スカート部22Sが長い場合、フロントグリル23の下方にアンダースペーサ53を配置する。そして、ロワカバー22Aは、その下辺がアンダースペーサ53の下辺から延長される仮想線Lvに接する(図34参照)。従って、ボンネット2の高さ寸法が大きくなるので、大きなエンジン12が搭載される機種にも適することとなる。
このように、スカート部22Sが長い場合、ロワカバー22(22A)は、その下辺がアンダースペーサ53の下辺から延長される仮想線Lvに接する。これにより、かかるボンネット2は、大きなエンジン12が搭載される機種に外観を損なうことなく対応でき、アッパーカバー21やフロントグリル23を兼用できる。
第三の特徴として、スカート部22Sが短い場合、フロントグリル23の下方にアンダースペーサ53を配置しない。そして、ロワカバー22Bは、その下辺がフロントグリル23の下辺から延長される仮想線Lvに接する(図34参照)。従って、ボンネット2の高さ寸法が小さくなるので、小さなエンジン12が搭載される機種にも適することとなる。
このように、スカート部22Sが短い場合、ロワカバー22(22B)は、その下辺がフロントグリル23の下辺から延長される仮想線Lvに接する。これにより、かかるボンネット2は、小さなエンジン12が搭載される機種に外観を損なうことなく対応でき、アッパーカバー21やフロントグリル23を兼用できる。
第四の特徴として、アンダースペーサ53は、一つ又は複数の貫通穴53hが設けられている(図35、図37参照)。従って、アンダースペーサ53は、ボンネット2の内部から外部へ、若しくは外部から内部へ空気を通すことが可能である。
このように、アンダースペーサ53は、一つ又は複数の貫通穴53hが設けられている。これにより、かかるボンネット2は、アンダースペーサ53が通風路となるので、エンジン12の熱がこもりにくくなる。