JP6274309B2 - カーボンナノチューブ分散液および導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はカーボンナノチューブ含有組成物を含む分散液および導電性フィルムの製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気伝導性、熱伝導性や力学強度などによって、様々な工業的応用が期待されている物質である。カーボンナノチューブの直径、層数および長さを制御することにより、性能向上および応用性の広がりが期待されている。カーボンナノチューブは、通常、層数の少ない方が高グラファイト構造を有する。単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは、高グラファイト構造を有しているために、導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。また、多層カーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
カーボンナノチューブの導電性を利用した用途として、例えば、クリーンルーム用部材や、ディスプレイ用部材、自動車用部材などがある。カーボンナノチューブは、これらの部材に、制電性、導電性、電波吸収性、電磁波遮蔽製、近赤外カット性などを付与するのに用いられる。カーボンナノチューブは、アスペクト比が高く、少量で導電パスを形成できるため、従来のカーボンブラック等の導電性微粒子と比べ、光透過性および耐脱落性に優れた導電性材料となり得る。例えば、カーボンナノチューブを用いた光学用透明導電性フィルムが公知である(特許文献1)。カーボンナノチューブを用いて光透過性に優れた導電性フィルムを得るには、数10本のカーボンナノチューブからなる太いバンドル(束)や強固な凝集を解し、カーボンナノチューブを高分散させ、少ないカーボンナノチューブの本数で効率良く導電パスを形成する必要がある。このような導電性フィルムを得る手段としては、例えばカーボンナノチューブを溶媒中に高分散させた分散液を基材に塗布する方法などが知られている。カーボンナノチューブを溶媒中に高分散させるためには、分散剤を用いて分散させる手法がある(特許文献1、2)。中でも、カーボンナノチューブをより高度に分散させるためには、水性溶媒中、水に親和性のある親水性基およびカーボンナノチューブと親和性の高い疎水性基をもつ分散剤を用いて分散させることが好適である(特許文献2)。
特開2009−012988号公報 特開2009−536911号公報
カーボンナノチューブの分散剤は、基本的に絶縁性物質であることが多いためにカーボンナノチューブと比較して導電性が低い。そのため、分散剤を多量に使用すると、この分散液を用いて導電性フィルムを作製した場合に、フィルムの導電性を阻害する原因となる場合がある。また、親水性基を有する分散剤が導電性フィルム中に残存していると、高温度・高湿度などの環境下で分散剤の吸湿および膨潤による導電性変化などが生じてしまい、抵抗値安定性が悪くなることがある。そのため、高導電性と耐湿熱性とを併せ持つ導電性フィルムを製造するためには、分散剤の使用量はできる限り少量とすることが求められる。
本発明は、上記のような事情を鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブの高分散性を維持しつつ、導電性成形体としたときに高い導電性および耐湿熱性を発揮することを可能とするカーボンナノチューブ分散液を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物を分散させる際に揮発性塩を共存させることにより、少ない分散剤量であっても高分散性を有する分散液が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブ含有組成物、重量平均分子量0.1万以上40万以下の分散剤、揮発性塩および水系溶媒を含むカーボンナノチューブ分散液であって、前記揮発性塩がアンモニウム塩であり、前記分散剤の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して10重量部以上500重量部以下であり、かつ、前記揮発性塩の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して50重量部以上2500重量部以下であるカーボンナノチューブ分散液である。
また本発明は、上記カーボンナノチューブ分散液を基材上に展開した後、乾燥させることにより、揮発性塩および水系溶媒を除去する導電性フィルムの製造方法である。
本発明のカーボンナノチューブ分散液を用いることにより、高導電性で耐湿熱性に優れた導電性成形体を得ることができる。
本発明では、導電性材料としてカーボンナノチューブ含有組成物を用いる。本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物とは、複数のカーボンナノチューブを含む総体を意味する。カーボンナノチューブ含有組成物中の、カーボンナノチューブの存在形態は、特に限定されず、それぞれが独立、束状、あるいは絡まり合うなどの形態あるいはこれらの混合形態で存在していてもよい。また、種々の層数または直径のものが含まれていてもよい。また、分散液や他の成分を配合した組成物中、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも、複数のカーボンナノチューブが含まれていれば、カーボンナノチューブ含有組成物が含まれていると解する。カーボンナノチューブ含有組成物には、カーボンナノチューブ製造法由来の不純物(例えば触媒やアモルファスカーボン)を含み得る。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。
カーボンナノチューブ含有組成物には、求められる用途特性に応じて、単層、2層および多層のいずれのカーボンナノチューブも用いることができる。単層〜5層と層数の少ないカーボンナノチューブを用いれば、導電性がより高く、光透過性も高い導電性成形体を得ることができる。2層以上のカーボンナノチューブを用いれば、光学特性において、光波長依存性の少ない導電性成形体を得ることができる。光透過性の高い導電性成形体を得るには、好ましくは、カーボンナノチューブ100本中、層数が単層から5層であるカーボンナノチューブが50本以上含まれることが好ましく、2〜5層カーボンナノチューブが100本中50本以上含まれることがさらに好ましく、特に2層カーボンナノチューブがカーボンナノチューブ100本中50本以上であると導電性ならびに分散性が極めて高く好ましい。6層以上の多層カーボンナノチューブは、一般に結晶化度が低く導電性が低いうえ、直径が太く導電層中のカーボンナノチューブ単位量あたりの接点数が小さくなり、導電性成形体の透明導電性が低くなる。
カーボンナノチューブの層数は、例えば以下のようにサンプルを作成し、測定できる。カーボンナノチューブ含有組成物が、媒体中に分散された組成物である場合、媒体が水系の場合は、組成物に水を加えてカーボンナノチューブが見えやすい濃度に適宜希釈し、コロジオン膜上に数μL滴下し、風乾させる。その後、直接透過型電子顕微鏡を用いてコロジオン膜上のカーボンナノチューブ含有組成物を観察する。媒体が非水系溶媒の場合は、一度乾燥により溶媒を除去した後、再度水中で分散させてから上記と同様にして、透過型電子顕微鏡で観察する。導電性成形体中のカーボンナノチューブの層数は、導電性成形体をエポキシ樹脂で包埋した後、ミクロトームなどを用いて0.1μm以下に薄く切断した切片を、透過型電子顕微鏡で観察することによって調べることができる。また、導電性成形体から、溶媒でカーボンナノチューブ含有組成物を抽出し、組成物の場合と同様にして透過型電子顕微鏡で観察することもできる。コロジオン膜上に滴下する液のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度は、カーボンナノチューブを一本一本観察できる濃度であればよいが、例えば0.001重量%である。
上記カーボンナノチューブの層数の測定は、例えば、次のようにして行う。透過型電子顕微鏡を用いて倍率40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で、視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を測定する。一つの視野中で100本のカーボンナノチューブの測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは、視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
カーボンナノチューブの直径は、特に限定されないが、上記好ましい範囲の層数のカーボンナノチューブの直径は1nm〜10nmであり、特に1〜3nmの範囲内であるものが好ましく用いられる。
カーボンナノチューブは表面や末端が官能基やアルキル基で修飾されていてもよい。例えば、カーボンナノチューブを酸中で加熱することにより、カルボキシル基、水酸基等の官能基を導入してもよい。また、アルカリ金属やハロゲンでドーピングされていても良い。カーボンナノチューブをドーピングすることにより、カーボンナノチューブの導電性が向上するので好ましい。
カーボンナノチューブの長さは、短すぎると効率的に導電性パスを形成できないため、平均長さが0.5μm以上であることが好ましい。また、カーボンナノチューブが長すぎると分散性が低下する傾向にあるため、平均長さは10μm以下であることが好ましい。
分散液中のカーボンナノチューブの平均長さは、後述するように原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調べることができる。カーボンナノチューブ含有組成物を測定する場合には、マイカ基板上に数μL滴下し、風乾させた後、原子間力顕微鏡で観察し、30μm四方の1視野の中で10本以上のカーボンナノチューブが含まれるところで写真を撮り、視野中から任意に抽出した各カーボンナノチューブの長さを長さ方向に沿って測定する。一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。合計100本のカーボンナノチューブについて長さを測定することによって100本中に含まれるカーボンナノチューブの長さとその本数を確認することができる。
長さが0.5μm以下の範囲にあるカーボンナノチューブが100本中30本以下であれば、接点抵抗を低減でき、光透過率を向上することができるので好ましい。さらに長さが1μm以下の範囲にあるカーボンナノチューブが100本中30本以下であるとより好ましい。さらに、長さが10μm以上の範囲にあるカーボンナノチューブが100本中30本以下であると分散性が向上でき好ましい。
また、透明導電性に優れた導電性成形体を得るには、結晶化度の高い高品質のカーボンナノチューブを用いることが好ましい。結晶化度の高いカーボンナノチューブは、それ自体電気伝導性に優れる。しかし、このような高品質のカーボンナノチューブは、結晶化度の低いカーボンナノチューブと比べ、より強固にバンドルや凝集体を形成しているため、一本一本を解し、安定に高分散させるのは非常に困難である。そのため、結晶化度の高いカーボンナノチューブを用いて、より導電性の高い導電性成形体を得るには、カーボンナノチューブの分散技術が非常に重要である。
カーボンナノチューブは、特に限定されないが、直線性があり結晶化度が高いカーボンナノチューブであることが、導電性が高く好ましい。直線性のよいカーボンナノチューブとは、欠陥が少ないカーボンナノチューブである。カーボンナノチューブの結晶化度は、ラマン分光分析法により評価が可能である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、532nmを利用する。ラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。すなわち、GバンドとDバンドのピーク高さの比であるG/D比が高いカーボンナノチューブほど、直線性および結晶化度が高く、高品質である。
G/D比は高いほど良いが、30以上であれば高品質カーボンナノチューブ含有組成物と言うことができる。好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。上限は特にないが、通常200以下である。また固体のラマン分光分析法は、サンプリングによって測定値がばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、異なる場所をラマン分光分析し、その相加平均をとるものとする。
カーボンナノチューブ含有組成物は、例えば以下のように製造される。
マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させる。該反応器内にメタンを鉛直方向に流通させ、メタンと上記触媒を500〜1200℃で接触させ、カーボンナノチューブを含む生成物を得る。該生成物をさらに酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を得ることができる。
酸化処理としては、例えば、酸化処理前の生成物を、硝酸、過酸化水素および混酸から選ばれた酸化剤で処理することが挙げられる。硝酸で処理する例としては、上記酸化処理前の生成物を、例えば市販の硝酸(40〜80重量%)中に、0.001重量%〜10重量%になるように混合し、60〜150℃の温度にて0.5〜50時間反応させることが挙げられる。過酸化水素で処理する例としては、酸化処理前の生成物を、例えば市販の34.5%過酸化水素水中に濃度0.001重量%〜10重量%になるように混合し、0〜100℃の温度にて0.5〜50時間反応させることが挙げられる。また混酸で処理する例としては、酸化処理前の生成物を、例えば濃硫酸(98重量%)/濃硝酸(40〜80重量%)(=3/1)混合溶液中に濃度0.001重量%〜10重量%になるように混合し、0〜100℃の温度にて0.5〜50時間反応させることが挙げられる。混酸の混合比としては、生成物中の単層カーボンナノチューブの量に応じて濃硫酸/濃硝酸の比を1/10〜10/1とすることも可能である。
このような酸化処理を行うことで、生成物中のアモルファスカーボンなどの不純物および耐熱性の低い単層CNTを選択的に除去することが可能となり、単層から5層、特に2層〜5層カーボンナノチューブの純度を向上することができる。それと同時にカーボンナノチューブの表面が官能基化されることにより、分散媒および添加剤との親和性が向上するため分散性が向上する。これらの酸化処理のなかでも、硝酸を用いて処理することが特に好ましい。
また、カーボンナノチューブの酸化処理は、例えば焼成処理する方法により行うこともできる。焼成処理の温度は、特に限定されないが、通常、300〜10000℃の範囲で選択される。酸化温度は雰囲気ガスに影響されるため、酸素濃度が高い場合には比較的低温で、酸素濃度が低い場合には比較的高温で焼成処理することが好ましい。焼成処理としては、例えば大気下、カーボンナノチューブの燃焼ピーク温度±50℃の範囲内、より好ましくはカーボンナノチューブの燃焼ピーク温度±15℃の範囲内で焼成処理をする方法が挙げられる。酸素濃度が大気よりも高い場合は低い温度範囲、酸素濃度が低い場合にはこれよりも高い温度範囲を選択することが好ましい。
これら酸化処理は、カーボンナノチューブの合成直後に行っても良いし、別の精製処理後に行っても良い。例えば触媒として鉄/マグネシアを用いる場合、先に塩酸等の酸により触媒除去のための精製処理を行った後に酸化処理を行ってもよいし、酸化処理を行った後に触媒除去のための精製処理を行っても良い。
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、用いる分散剤が比較的少量であるにも関わらず、カーボンナノチューブが高度に分散していることが特徴である。出願人らは、カーボンナノチューブ分散液について鋭意検討した結果、分散剤に加えて揮発性塩を共存させて分散させることにより、カーボンナノチューブの分散性を低下させることなく分散剤の使用量を減少させることができることを見出した。また、そのことにより、該カーボンナノチューブ分散液を用いて製造された導電性成形体が湿度の影響を受けにくくなるため、導電性成形体の耐湿熱性が向上することも見出した。
本発明における揮発性塩とは、酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンが結合した化合物であって、100〜150℃程度の加熱によって熱分解し、揮発する化合物のことである。具体例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましい例として挙げられる。本発明では特に炭酸アンモニウムが好ましい。炭酸アンモニウムは、水溶液中ではアルカリ性を示すためにカーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの分散性が向上しやすい。また、分解温度が約58度であることから、カーボンナノチューブ分散液を用いて導電性成形体を製造する際に、分解除去しやすい。
添加する揮発性塩の量としては、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して、50重量部以上、2500重量部以下であることが好ましい。揮発性塩の量は、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して、100重量部以上であることがさらに好ましい。また、揮発性塩の量は、1000重量部以下であることがさらに好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の分散液は、分散剤として、ポリマー系分散剤を使用する。これはポリマー系分散剤の使用によりカーボンナノチューブを溶液中で高度に分散できるためである。このとき分散剤の分子量が小さすぎると、分散剤とカーボンナノチューブの相互作用が弱まるためにカーボンナノチューブのバンドルを十分に解すことができない。一方、分散剤の分子量が大きすぎると、カーボンナノチューブのバンドル間への侵入が難しくなる。そのため分散処理において、バンドルが解する前にカーボンナノチューブの切断が進行してしまう。本発明では、重量平均分子量が0.1万以上40万の分散剤を用いることで、分散時にカーボンナノチューブ間の隙間に分散剤が入りやすくなり、カーボンナノチューブの分散性が向上する。さらに基材上に塗布したとき、カーボンナノチューブの基材上での凝集も抑制されるため、得られる導電性成形体の導電性と透明性が両立できる。分散剤の量が少なくても良好な分散性が得られることから、分散剤の重量平均分子量の範囲は0.5万以上6万以下であることがさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールを標準サンプルとして作成した校正曲線と対比させて算出された重量平均分子量を指す。
重量平均分子量が上記範囲の分散剤は、重量平均分子量の範囲がこの範囲になるように合成しても良いし、より高分子量の分散剤を加水分解などの方法で低分子量化することで得ても良い。分散剤がカルボキシメチルセルロースの場合は、重量平均分子量が6万より大きく50万以下のカルボキシメチルセルロースを100℃以上で加水分解反応した後に、透析膜で透析することが好ましい。カルボキシメチルセルロースを分散剤とする場合、エーテル化度が0.4〜1のものを用いることが好ましい。
分散剤の種類としては、合成高分子、天然高分子などから選択できる。合成高分子としては、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸およびその誘導体から選択したポリマーが好ましい。天然高分子としては、多糖類であるアルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロースおよびそれらの誘導体から選択したポリマーが好ましい。誘導体とは、前述のポリマーのエステル化物、エーテル化物、塩などを意味する。これらの中でも特に多糖類を用いることが分散性向上の点から好ましい。分散剤は、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。分散性の良い分散剤を用いることで、カーボンナノチューブのバンドルを解して透明導電性を向上させることができる。分散性の点から、分散剤としては、イオン性高分子が好ましく用いられる。中でも、スルホン酸基やカルボン酸基などのイオン性官能基を持つものが、分散性および導電性が高くなるため好ましい。イオン性高分子としては、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの誘導体から選ばれたポリマーが好ましい。特にイオン性官能基を有する多糖類であるカルボキシメチルセルロースおよびその誘導体から選ばれたポリマーが最も好ましい。誘導体としては塩が好ましい。
カーボンナノチューブ分散液に含まれる分散剤の量は、カーボンナノチューブに吸着される量より多く、かつ、導電性を阻害しない量であることが好ましい。本発明では、分散剤と揮発性塩を共存させることにより、従来よりも分散剤の使用量を大幅に減少させても、カーボンナノチューブを充分に分散できることを見出した。その理由は明らかではないが、以下のように考えられる。分散剤がカーボンナノチューブを分散させるとき、分散剤はカーボンナノチューブ表面への吸着と溶媒中への脱離を繰り返していると考えられる。そのため、カーボンナノチューブが十分に分散した分散液を作製するためには、カーボンナノチューブに吸着される分散剤の量に加えて、溶媒中での平衡を保つための分散剤の量が必要になる。ところが、揮発性塩を少量加えることで、静電遮蔽によってカーボンナノチューブ表面上に吸着されている分散剤間の反発が抑制されるために、カーボンナノチューブ表面への分散剤の吸着が起こりやすくなる。そのため、分散剤の吸着脱離の平衡がカーボンナノチューブ表面への分散剤の吸着側へシフトして、分散液全体として必要な分散剤の量が減少すると考えられる。
カーボンナノチューブ分散液に含まれる分散剤の含有量としては、具体的にはカーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して分散剤が10重量部以上500重量部以下であることが好ましい。分散剤の含有量は、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して30重量部以上であることがより好ましい。また、含有量は、200重量部以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が10重量部よりも少ない場合はカーボンナノチューブの束が十分に解れないために分散性が低くなりやすい。含有量が、500重量部よりも多いと、過剰な分散剤によって導電パスが阻害されるために導電性が悪化し、分散剤に親水性官能基が存在する場合は高温・高湿度といった環境変化に対して分散剤の吸湿などによる導電性の変化が起こりやすくなる。
本発明ではカーボンナノチューブ含有組成物、分散剤、揮発性塩および水系溶媒を用いてカーボンナノチューブ分散液を調製する。分散液は、液体状でもペーストやゲルのような半固形状でもかまわないが、液体状が好ましい。分散液は、目視において沈降物や凝集物がなく、少なくとも24時間静置後においても目視において沈降物や凝集物がないことが好ましい。また、分散液全体に対するカーボンナノチューブ含有組成物の含有量は0.01重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。含有量は、0.05重量%以上であることがより好ましい。また含有量は、10重量%以下であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ含有組成物の含有量が0.01質量%より小さいと、分散時にカーボンナノチューブ含有組成物へのエネルギー照射が大きくなり、カーボンナノチューブの切断を促進してしまう。また含有量が20質量%より大きいと分散時のエネルギーが十分に照射されず、カーボンナノチューブ含有組成物の分散が困難になる。
水系溶媒とは、水または水と混和する有機溶媒である。分散剤が溶解し、かつ、カーボンナノチューブが分散するものであれば用いることができる。水と混和する有機溶媒としては、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
これらのなかでも特に、水、アルコール、エーテルおよびそれらを組み合わせた溶媒を含有することがカーボンナノチューブ分散性から好ましい。さらに好ましくは水である。
カーボンナノチューブ含有組成物の分散液の調製方法としては、カーボンナノチューブ含有組成物と分散剤および溶媒を、塗装製造用の一般的な混合分散機、例えば振動ミル、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等、を用いて混合分散する方法を用いることができる。中でも、超音波ホモジナイザーを用いて分散すると、カーボンナノチューブ含有組成物の分散性が向上するので好ましい。
揮発性塩を含む状態で分散させるため、分散液調製時の発熱により揮発性塩が分解揮発してしまうことが懸念される。従って分散液を調製する際には、分散液を十分に冷却するなどして揮発性塩が分解揮発しない温度を保つことが好ましい。分散液調製時の液温は、50℃以下に保つことが好ましく、30℃以下に保つことがより好ましい。また、分散液調製後に、揮発性塩が分解揮発せずに必要量含まれていることを確認することも好ましい。分散液中の揮発性塩量の確認方法に限定はないが、例えば、揮発性塩がアンモニウム塩である場合は、JIS K0102:2013の第42項アンモニウムイオンに記載された方法に準拠して分散液中のアンモニウムイオンを定量することにより、揮発性塩量を定量することができる。分散液調製後の揮発性塩含有量としては、分散液調製時の添加量の9割以上が残存することが好ましい。
カーボンナノチューブ含有組成物の分散液は、上記分散剤、カーボンナノチューブ含有組成物以外に、例えば界面活性剤、導電性高分子、非導電性高分子など各種高分子材料等をその他の添加剤として、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもかまわない。
本発明のカーボンナノチューブ分散液を、後述の方法により基材に塗布することにより、カーボンナノチューブ含有組成物を含む導電層が基材上に形成された導電性成形体を形成することができる。
基材としては、カーボンナノチューブ分散液が塗布でき、得られる導電層が固定できれば形状、サイズ、および材質は特に限定されず、目的とする用途によって選択できる。具体的には、例えばフィルム、シート、板、紙、繊維、粒子などが挙げられる。基材の材質は、例えば、有機材料であれば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、セルロース、トリアセチルセルロース、非晶質ポリオレフィンなどの樹脂から選択できる。無機材料であれば、ステンレス、アルミ、鉄、金、銀などの金属;ガラスおよび炭素材料等から選択できる。
基材として樹脂フィルムを用いた場合、接着性、延伸追従性および柔軟性に優れた導電性フィルムを得ることができるので好ましい。その際の好ましい基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、約1〜約1000μmの間の厚さとし得る。好ましい実施形態では、基材の厚さは約5〜約500μmである。さらに好ましい実施形態では、基材の厚さは約10〜約200μmである。
基材は、必要に応じ、コロナ放電処理、オゾン処理やグロー放電等の表面親水化処理を施してあってもよい。あるいはアンダーコート層を設けてあっても良い。アンダーコート層の材料としては、親水性の高い材料が好ましい。
基材としては、カーボンナノチューブ分散液を塗布する反対面に耐摩耗性、高表面硬度、耐溶剤性、耐汚染性、耐指紋性等を付与したハードコート処理が施されているものも用いることができる。
基材として透明性がある基材を用いることにより、透明性および導電性に優れた導電性成形体を得ることができるので好ましい。ここで、透明性がある基材とは、全光線透過率が50%以上であることを示す。
カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布して導電性成形体を形成した後、カーボンナノチューブを含む導電層の上に、さらにバインダー材料を用いてオーバーコート層を形成することも好ましい。オーバーコート層は、電荷の分散や移動に効果的である。
また、カーボンナノチューブ分散液中にバインダー材料を含有させ、基材に塗布後、必要により加熱して、バインダー材料の乾燥ないし焼付(硬化)を行ってもよい。その際の加熱条件は、バインダー材料に応じて設定する。バインダーが光硬化性または放射線硬化性の場合には、加熱硬化ではなく、塗布後、塗膜に光または放射線を照射することにより塗膜を硬化させる。放射線としては電子線、紫外線、X線、ガンマー線等のイオン化性放射線が使用できる。照射線量はバインダー材料に応じて決定する。
上記バインダー材料としては、導電性塗料に使用されるものであれば特に制限はなく、各種の透明な無機ポリマーまたはその前駆体(以下「無機ポリマー系バインダー」と称する場合もある)、または有機ポリマーまたはその前駆体(以下「有機ポリマー系バインダー」と称する場合もある)が使用できる。
無機ポリマー系バインダーの例としては、シリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、あるいは該無機ポリマーの前駆体となる加水分解性または熱分解性の有機金属化合物(有機リン化合物、有機ボロン化合物、有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物など)がある。加水分解性または熱分解性の有機金属化合物の具体的例は、金属アルコキシドまたはその部分加水分解物;酢酸金属塩などの低級カルボン酸塩;アセチルアセトンなどの金属錯体である。
これらの無機ポリマー系バインダーを焼成すると、金属酸化物または複合酸化物からなる無機ポリマーの透明被膜もしくはマトリックスを形成することができる。無機ポリマーは、一般にガラス質であり、高硬度で耐擦過性に優れ、透明性も高い。
有機ポリマー系バインダーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、あるいは紫外線、電子線などの放射線硬化性ポリマーなど、種類を問わない。適当な有機バインダーの例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6,10等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、シリコーン樹脂、ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ポリケトン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、セルロース系ポリマー、蛋白質類(ゼラチン、カゼイン等)、キチン、ポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチドなどの有機ポリマー、ならびにこれらのポリマーの前駆体(モノマーまたはオリゴマー)がある。これらは単に溶剤の蒸発により、あるいは熱硬化または光もしくは放射線照射による硬化により、透明被膜もしくはマトリックスを形成することができる。
有機ポリマー系バインダーとして好ましいのは、放射線によりラジカル重合硬化可能な不飽和結合を有する化合物、すなわちビニル基ないしビニリデン基を有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。この種のモノマーとしては、スチレン誘導体(スチレン、メチルスチレン等)、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体(アルキルアクリートもしくはメタクリレート、アリルアクリレートもしくはメタクリレート等)、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イタコン酸等がある。オリゴマーあるいはポリマーは、主鎖に二重結合を有する化合物または直鎖の両末端にアクリロイルもしくはメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。この種のラジカル重合硬化性バインダーは、高硬度で耐擦過性に優れ、透明度の高い被膜もしくはマトリックスを形成することができる。
バインダーの使用量は、オーバーコート層を形成するのに十分な量、もしくは、分散液中に配合する場合には塗布に適した粘性を得るのに十分な量であればよい。少なすぎると塗布がうまくいかず、多すぎても導電性を阻害し良くない。
カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布する方法は、特に限定されない。公知の塗布方法、例えばマイクログラビアコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、ドクターナイフコーティング、キスコーティング、スリットコーティング、スリットダイコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティング、押出コーティングや;スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、パット印刷等の印刷などが利用できる。また塗布は、何回行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、マイクログラビアコーティング、ダイコーティングおよびワイヤーバーコーティングから選ばれた方法である。
カーボンナノチューブ分散液の好ましい塗布厚み(ウェット厚)は、分散液の濃度にも依存するため、望む導電性が得られれば特に限定されない。しかしその中でも0.01μm〜50μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.1μm〜20μmである。
カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布した後、乾燥させることにより、揮発性塩および溶媒を除去し、導電層を形成する。乾燥工程で分散液に含まれていた揮発性塩が分解し、揮発するため、基材上にカーボンナノチューブ含有組成物および分散剤からなる3次元網目構造を有する導電層が固定化された導電性成形体が形成される。すなわち、本発明では揮発性塩を用いることにより、カーボンナノチューブ分散液中で高度に分散された状態を維持したまま、導電層に残留する分散量を減少させた導電性成形体を製造することが可能になったのである。溶媒を除去する方法としては、加熱による乾燥が好ましい。乾燥温度は、揮発性塩および溶媒が除去可能であり基材の耐熱温度以下であればよい。基材が樹脂製基材の場合は、乾燥温度は、好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは、80℃〜150℃である。
乾燥後のカーボンナノチューブ含有組成物を含む導電層の好ましい厚み(ドライ厚み)は、望む導電性が得られれば限定はないが、好ましくは、0.001μm〜5μmである。
本発明のカーボンナノチューブ分散液を塗布して得られる導電性成形体は、導電層中のカーボンナノチューブが十分に分散されているために少量のカーボンナノチューブで十分な導電性を示すことから、透明性のある基材を用いた場合、優れた透明性を有する。導電性成形体の全光線透過率は、少なくとも50%であることが好ましい。
また、本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブが高分散していることから、これを塗布して得られる導電性成形体は、高い透明性を維持したまま優れた導電性を示す。光線透過率と表面抵抗値は、光線透過率を上げるためにカーボンナノチューブ分散液の塗布量を減らすと表面抵抗値が上昇し、表面抵抗値を下げるために塗布量を増やすと光線透過率が減少するといった、相反する値である。本発明のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの分散性を維持しつつ、導電層の表面抵抗値を減少させることができるため、優れた導電性および透明性を有する導電性成形体が得られる。その結果、表面抵抗値が1〜10000Ω/□であり、かつ、全光透過率が50%以上である導電性成形体を得ることも可能である。導電性成形体の全光線透過率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が最も好ましい。導電性成形体の表面抵抗値は、さらに好ましくは10〜1000Ω/□である。
本発明のカーボンナノチューブ分散液を塗布して得られた導電性成形体は、高導電性であり、制電靴や、制電板などのクリーンルーム用部材や、電磁波遮蔽材、近赤外カット材、透明電極、タッチパネル、電波吸収材などのディスプレイ用部材および自動車用部材として使える。中でも主に表面の平滑性が要求されるタッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の透明電極として、特に優れた性能を発揮する。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例における評価方法は以下のとおりである。
<カーボンナノチューブ含有組成物の評価>
[燃焼ピーク温度の分析]
約1mgの試料を示差熱分析装置(島津製作所製 DTG−60)に設置し、50ml/分の空気供給量、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときのDTA曲線から発熱による燃焼ピーク温度を読みとった。
[G/D比の分析]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。G/D比の測定に際しては、サンプルの異なる3ヶ所について分析を行い、その相加平均を求めた。
[カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察]
カーボンナノチューブ含有組成物1mgをエタノール1mLに入れて、15分間、超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に数滴滴下し、乾燥した。このように試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察は、倍率40万倍で行った。
<カーボンナノチューブ分散液の評価>
[原子間力顕微鏡によるカーボンナノチューブ分散液に含まれるカーボンナノチューブ束の平均直径測定]
カーボンナノチューブの濃度を0.003質量%に調整したカーボンナノチューブ分散液30μLをマイカ基板上に滴下し、回転数3000rpmで60秒間スピンコートしたのち、原子間力顕微鏡((株)島津製作所社製、SPM9600M)により、ランダムに100本のカーボンナノチューブ束の直径を測定し、算術平均してカーボンナノチューブ束の平均直径を算出した。
[カーボンナノチューブ分散液に含まれる揮発性塩の定量]
JIS K0102:2013の第42項に準拠し、カーボンナノチューブ分散液に含まれるアンモニウムイオンの定量を行った。揮発性塩が炭酸アンモニウムである場合、まずアンモニウムイオン標準液として炭酸アンモニウムの2〜10μg/ml溶液を調製し、規定の反応を行って発生させたインドフェノールの630nmの吸光度を測定することにより検量線を作成した。次に、測定するカーボンナノチューブ分散液を、液中の炭酸アンモニウムが2〜10μg/ml程度となるように適宜希釈し、規定の反応を行い、630nmの吸光度から炭酸アンモニウム量を算出した。分散剤としてアンモニウムイオンを含む分散剤を用いた場合は、分散剤中アンモニウムイオン由来の吸収との差を炭酸アンモニウム由来の吸収とした。
<導電性成形体の評価>
[全光線透過率測定]
導電性フィルムの全光線透過率は、導電性フィルムをヘイズメーター(日本電色工業(株)製、 NDH4000)に装填し、測定した。
[表面抵抗測定]
表面抵抗値は、JIS K7194(1994年12月制定)準処の4探針法に従い、ロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)を用いて行った。高抵抗測定の際は、ハイレスターUP MCP−HT450(ダイアインスツルメンツ製、10V、10秒)を用いて測定した。
(参考例1)カーボンナノチューブ含有組成物の製造
(触媒調製)
24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。容器を密閉した状態で160℃に加熱し、6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物を120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分を、篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、10〜20メッシュの範囲の粒径の触媒体を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.32g/mLであった。また、前記の吸引濾過により濾別された濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ、鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは、全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39wt%であった。
(カーボンナノチューブ含有組成物の製造)
上記の触媒を用い、カーボンナノチューブ含有組成物を合成した。上記の固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を形成した。反応管内温度が860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気させ、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却して、触媒付きカーボンナノチューブ組成物を得た。この触媒付きカーボンナノチューブ組成物129gを、4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで、触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液を濾過した後、濾取物を再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し、脱MgO処理をした後、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブ組成物を得た。
(カーボンナノチューブの酸化処理)
上記のカーボンナノチューブ組成物を300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay 60〜61%)に添加した。その後、140℃のオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有組成物の平均外径を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、1.7nmであった。また2層カーボンナノチューブの割合は90%であり、波長532nmで測定したラマンG/D比は80であり、燃焼ピーク温度は725℃であった。
(参考例2)
[カルボキシメチルセルロースの加水分解]
10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン(登録商標)5A(重量平均分子量:80000、分子量分布(Mw/Mn):1.6、エーテル化度:0.7))水溶液500gをナス型フラスコに加えて、1級硫酸(キシダ化学(株)社製)を用いて、水溶液をpH2に調整した。この容器を120℃に昇温したオイルバス中に移し、加熱還流下で攪拌しながら9時間加水分解反応を行った。ナス型フラスコを放冷後、28%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いて、水溶液をpH7に調整し、反応停止した。加水分解後のカルボキシメチルセルロースナトリウムを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用いて測定し、ポリエチレングリコールを標準サンプルとして作成した校正曲線と対比させて分子量を算出した。その結果、重量平均分子量は約35000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。収率は97%であった。
(参考例3)
[アンダーコート層を設けた基材の作製]
以下の操作により、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、ポリシリケートをバインダーとし、直径30nmの親水シリカ微粒子が表出する分散剤吸着層をアンダーコート層として有する基材を作製した。
約30nmの親水シリカ微粒子およびポリシリケートを固形分濃度で1質量%含むメガアクア親水DMコート((株)菱和社製、DM―30―26G―N1)をシリカ膜作製用塗液として用いた。ワイヤーバー#4を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)上に前記シリカ膜作製用塗液を塗布した。塗布後、120℃の乾燥機内で1分間乾燥させた。
(参考例4)
[オーバーコート層作製]
100mLポリ容器中に、エタノール20gを入れ、n−ブチルシリケート40gを添加し30分間撹拌した。その後、0.1N塩酸水溶液を10g添加し、2時間撹拌を行った後、4℃で12時間静置した。この溶液をトルエンとイソプロピルアルコールとメチルエチルケトンの混合液で固形分濃度が1wt%となるように希釈した。この塗液をワイヤーバー#8を用いてカーボンナノチューブ層上に塗布後、125℃乾燥機内で1分間乾燥させた。
(実施例1)
20mlの容器に参考例1で得られたカーボンナノチューブ含有組成物15mg(乾燥重量換算)、参考例2で得られた10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム加水分解物水溶液150mg、炭酸アンモニウム(和光純薬工業(株)社製)90mg(カーボンナノチューブ/分散剤/炭酸アンモニウム重量比=1/1/6)を量りとり、蒸留水を加え10gにした。この分散前の液のpHは9.2であった。次に、超音波ホモジナイザーを用いて、氷冷下で出力20W、1.5分間分散し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。超音波照射時のカーボンナノチューブ分散液の液温は常に25℃以下であった。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理した後、上清9gを取得して、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。上清取得後の残液にも目視でわかる大きさの沈殿は見られなかった。
この分散液に含まれるカーボンナノチューブ束の平均直径を、AFMにより測定したところ、カーボンナノチューブ束の平均直径は1.7nmであった。高分解能透過型電子顕微鏡で任意に抽出した100本のカーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値1.7nmと一致していたことから、カーボンナノチューブは孤立分散していると考えられる。
次に、分散液に含まれる炭酸アンモニウムを定量したところ、添加した炭酸アンモニウムの96%が残存していた。このことから、分散操作における炭酸アンモニウムの分解はほとんど起こっていないことがわかった。
[カーボンナノチューブ分散液塗布]
前記分散液にイオン交換水を添加して、カーボンナノチューブの濃度を0.055質量%に調整後、参考例3で得られたアンダーコート層を設けた基材にワイヤーバー#7を用いて全光線透過率が87±1%となるように塗布し、140℃乾燥機内で1分間乾燥させ、カーボンナノチューブ含有組成物を固定化して導電層を形成した(以降、カーボンナノチューブ含有組成物を固定化したフィルムを、カーボンナノチューブ塗布フィルムと記す)。
[端子電極の作製]
上記カーボンナノチューブ塗布フィルムを50mm×100mmのサイズにサンプリングした。このサンプルの両短辺に沿って幅5mm長さ50mmの範囲で銀ペースト電極(太陽インキ製造(株)製 ECM−100 AF4820)を塗布し、90℃、30分乾燥させ、端子電極を形成した。
[抵抗値変化観測]
上記のようにして得た端子電極付きフィルムについて、端子電極間抵抗値をカードハイテスター(日置電機(株)製 3244)を用いて測定したところ、178Ωであった。この値を初期端子電極間抵抗値Rとした。その後、上記フィルムを60℃、90%RHの環境下で5日間放置し、5日後の端子電極間抵抗値Rを測定したところ224Ωであった。放置前後の端子電極間抵抗値から抵抗値変化率(R−R)/Rを算出したところ、抵抗値変化率は26%であった。
(実施例2)
上記実施例1において、カーボンナノチューブ塗布フィルム作製後、さらに参考例4に従ってオーバーコート層を作製した。その後、実施例1と同様に端子電極を作製し、60℃、90%RHの環境下5日間放置前後の端子電極間抵抗値を測定したところ、R=168Ω、R=220Ωであり、抵抗値変化率は31%であった。
(比較例1および比較例2)
上記実施例1の分散液について、炭酸アンモニウムを添加せず、カルボキシメチルセルロースナトリウム加水分解物水溶液を375mgとし、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いて分散前の液をpH9.2に合わせたこと以外は同様にしてカーボンナノチューブ分散液を作製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理した後、上清9gを取得して、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。上清取得後の残液にも目視でわかる大きさの沈殿は見られなかった。この分散液に含まれるカーボンナノチューブ束の平均直径をAFMにより測定したところ、カーボンナノチューブ束の平均直径は1.7nmであった。高分解能透過型電子顕微鏡で任意に抽出した100本のカーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値1.7nmと一致していたことから孤立分散していると考えられる。
次にこの分散液を用いて実施例1および実施例2と同様にフィルムを作製したものをそれぞれ比較例1および比較例2とする。それぞれのフィルムについて60℃、90%RHの環境下5日放置前後の端子電極間抵抗値を測定したところ、比較例1のフィルムでは、R=169Ω、R=259Ωであり、抵抗値変化率は53%であった。また、比較例2のフィルムでは、R=185Ω、R=270Ωであり、抵抗値変化率は46%であった。
以上の結果より、炭酸アンモニウムを添加せず、その代わりに分散剤量を増量した場合には、カーボンナノチューブは十分に分散するために高導電性の導電性成形体を得ることはできるものの、分散剤量増加によって耐湿熱性が悪化してしまうことがわかった。
(比較例3)
上記実施例1の分散液について、炭酸アンモニウムを添加せず、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いて分散前の液をpH9.2に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を作製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理したところ、目視でわかる大きさの沈殿が見られた。この分散液に含まれるカーボンナノチューブ束の平均直径をAFMにより測定したところ、カーボンナノチューブ束の平均直径は4.4nmであった。高分解能透過型電子顕微鏡で任意に抽出した100本のカーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値1.7nmよりも太いことから、比較例3のカーボンナノチューブ分散液はバンドル状で分散していると考えられる。
次にこの分散液を用いて実施例1と同様にフィルムを作製し端子電極間抵抗値を測定したところR=396Ωと実施例1のフィルムよりも2倍以上抵抗値が高いことがわかった。
以上の結果より、分散剤量が少なく、かつ揮発性塩が共存しない場合には、カーボンナノチューブが十分に均一に分散しておらず、高導電性の導電性成形体を得ることができないことがわかった。
(実施例3および比較例4)
上記実施例1において、の種類を、それぞれ炭酸水素アンモニウムおよび炭酸水素ナトリウムとした以外は同様にして、実施例3および比較例4のカーボンナノチューブ分散液を作製した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理した後、上清9gを取得して、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。いずれの例においても、上清取得後の残液に目視でわかる大きさの沈殿は見られなかった。
次に、実施例1、実施例3および比較例4のカーボンナノチューブ分散液にイオン交換水を添加してカーボンナノチューブの濃度を0.04質量%に調整後、参考例3で得られたアンダーコート層を設けた基材に全光線透過率が89%となるように塗布し、140℃乾燥機内で1分間乾燥させ、カーボンナノチューブ塗布フィルムを得た。これらのフィルムの表面抵抗値を測定したところ、揮発性塩である炭酸アンモニウム、または炭酸水素アンモニウムを添加した実施例1、3の分散液を用いたフィルムでは、それぞれ430Ω/□、480Ω/□であったのに対し、揮発性塩ではない炭酸水素ナトリウムを添加した比較例4の分散液を用いたフィルムでは770Ω/□と抵抗値が高くなることがわかった。これは、炭酸水素ナトリウムが揮発性ではないためにフィルム上に残存してしまい、導電性を悪化させていると考えられる。
以上の結果より、揮発性塩を用いない場合には、高導電性の導電性成形体を得ることができないことがわかった。
(実施例4および実施例5)(ただし、実施例5は、現在は比較例である)
上記実施例1において、炭酸アンモニウムの添加量を15mgとした以外は同様にして実施例4のカーボンナノチューブ分散液を作製した。また、分散液調製時に氷冷しなかった以外は実施例4と同様にして実施例5を行った。実施例4において超音波照射時のカーボンナノチューブ分散液の液温は常に25℃以下であったが、実施例5では超音波照射時のカーボンナノチューブ分散液の液温は最大61℃まで上昇した。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理したところ、実施例4の分散液は目視でわかる大きさの沈殿は見られなかったが、実施例5の分散液には目視でわかる大きさの沈殿が見られた。また、分散液に含まれるアンモニウムイオンを定量したところ、実施例4の分散液中には添加した炭酸アンモニウムの98%が残存していたが、実施例5の分散液中には添加した炭酸アンモニウムの45%しか残存していないことがわかった。

次に、実施例4および実施例5のカーボンナノチューブ分散液にイオン交換水を添加してカーボンナノチューブの濃度を0.04質量%に調整後、参考例3で得られたアンダーコート層を設けた基材に全光線透過率が89%となるように塗布し、140℃乾燥機内で1分間乾燥させ、カーボンナノチューブ塗布フィルムを得た。これらのフィルムの表面抵抗値を測定したところ、分散時氷冷した実施例4の分散液を用いたフィルムでは440Ω/□であったのに対し、分散時氷冷しなかった実施例5の分散液を用いたフィルムでは630Ω/□と抵抗値がやや高くなることがわかった。実施例5においては、超音波照射時の発熱によって炭酸アンモニウムが分解揮発してしまったために導電性が低くなったと考えられる。
本発明のカーボンナノチューブ分散液を用いることで、高導電性で耐湿熱性性に優れた透明導電性フィルムが得ることができる。得られた透明導電性フィルムは、表面の平滑性が要求されるタッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の透明電極として好ましく用いることができる。

Claims (10)

  1. カーボンナノチューブ含有組成物、重量平均分子量0.1万以上40万以下の分散剤、揮発性塩および水系溶媒を含むカーボンナノチューブ分散液であって、前記揮発性塩がアンモニウム塩であり、前記分散剤の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して10重量部以上500重量部以下であり、かつ、前記揮発性塩の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して50重量部以上2500重量部以下であるカーボンナノチューブ分散液
  2. 前記揮発性塩が炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムである請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  3. 前記分散剤の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して10重量部以上500重量部以下である請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  4. 前記分散剤の含有量が、カーボンナノチューブ含有組成物100重量部に対して30重量部以上200重量部以下である請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  5. 前記分散剤が多糖類である請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液。
  6. 前記分散剤がカルボキシメチルセルロースおよびその塩から選ばれたポリマーである請求項に記載のカーボンナノチューブ分散液。
  7. 前記分散剤の重量平均分子量が0.5万以上6万以下である請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液。
  8. 前記カーボンナノチューブ含有組成物に含有される全てのカーボンナノチューブに対する2層カーボンナノチューブの割合が、カーボンナノチューブ100本中50本以上である請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液。
  9. 請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布した後、乾燥させることにより、揮発性塩および水系溶媒を除去する導電性成形体の製造方法。
  10. 得られる導電性成形体が、全光線透過率が70%以上、かつ、表面抵抗値が10〜10000Ω/□である請求項に記載の導電性フィルムの製造方法。
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