JP2013045695A - 導電体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高導電性の導電体、またその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】基材の片面に、親水性カーボンナノチューブと分散剤とを含む未処理導電層を形成し、該未処理導電層に0.02〜1.0質量%の塩化金酸水溶液を10〜60秒間接触させた後、乾燥させる、導電体の製造方法。また、基材の片面に親水性カーボンナノチューブと0価の金ナノ粒子と3価の金イオンと分散剤とを含む導電層を有し、親水性カーボンナノチューブが、導電層の導電面側のXPSスペクトルにおいて、82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]と89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]との比([C]/[D])が5〜20であり、かつ金元素に対応するピークの面積強度[E]と炭素元素に対応するピークの面積強度[F]との比が[E]/[F]=0.001〜0.05であるカーボンナノチューブからなる導電体。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電体およびその製造方法に関する。より詳細には、高導電性の導電体およびその簡便な製造方法に関する。本発明の導電体は、主に表面の平滑性が要求されるタッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として用いられる。
カーボンナノチューブは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、中でも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、それ自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
カーボンナノチューブを用いた導電体は公知である。カーボンナノチューブは合成時に金属性を有するものと半導体性を有するものとの混合物として得られる。高い導電性を得るには、金属性物質と半導体性物質の混合物として得られるカーボンナノチューブを分離する必要があるが、分離技術には技術的困難が多く現状では実現していない。
一方、半導体性カーボンナノチューブを金属性カーボンナノチューブに変化させることができれば、容易に導電性材料として利用することできる。そこで、カーボンナノチューブを化学的あるいは電気化学的にドーピングすることによって導電性を高める、ドーピング技術が注目されている。
ドープ処理された分散剤を用いることによって、カーボンナノチューブ薄膜の導電性を顕著に向上できることが報告されている(例えば特許文献1参照。)。
また、カーボンナノチューブをドーピング処理することによって電導度を改善できる方法が報告されている(例えば特許文献2参照。)。
また、金属ナノ粒子をCNT薄膜の表面上に形成することにより、カーボンナノチューブ電極の導電性を高める手法が報告されている(例えば特許文献3参照。)。
特開2008−103329号公報 特開2008−297196号公報 特開2009−001481号公報
特許文献1には、ドーピングの記載はあるものの、処理に要する時間が長いため、生産性に問題がある。特許文献2には、ドーピングの記載はあるものの、溶媒がニトロメタンなどの高沸点溶媒でありリンス処理が必須である点で生産性に問題がある。特許文献3には、ドーピングの記載はあるものの、上記処理時間・溶媒両面の課題があるため、同じく生産性に問題がある。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高導電性の導電体、またその簡便な製造方法を提供することである。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する過程において、親水性カーボンナノチューブと分散剤を有する導電体を塩化金酸水溶液に短時間接触させることで、カーボンナノチューブの導電性が向上することを見出すとともに、その効果を奏する範囲をX線光電子分光スペクトル(XPSスペクトル)により定量的に特定することにより、本発明に到ったものである。
すなわち本発明に係る導電体の製造方法は、基材の少なくとも片面に、親水性カーボンナノチューブと分散剤とを含む未処理導電層を形成し、該未処理導電層に0.02〜1.0質量%の塩化金酸水溶液を10〜60秒間接触させた後、乾燥させることを特徴とする方法からなる。
上記の導電体の製造方法における前記親水性カーボンナノチューブは、X線光電子分光スペクトルにおいて、284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A]と288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B]との比([A]/[B])が5〜100であるカーボンナノチューブからなることが好ましい。
また、本発明に係る導電体は、基材の少なくとも片面に親水性カーボンナノチューブと0価の金ナノ粒子と3価の金イオンと分散剤とを含む導電層を有し、前記親水性カーボンナノチューブが、前記導電層の導電面側のX線光電子分光スペクトルにおいて、82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]と89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]との比([C]/[D])が5〜20であり、かつ82〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[E]と284〜292eVにピークトップを含むピークの面積強度[F]との比([E]/[F])が0.001〜0.05であるカーボンナノチューブからなることを特徴とするものからなる。
上記の導電体における前記親水性カーボンナノチューブは、X線光電子分光スペクトルにおいて、284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A’]と288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B’]との比([A’]/[B’])が5〜100であるカーボンナノチューブからなることが好ましい。
本発明によれば、処理前と比較して表面抵抗値が50〜60%低い導電体を得ることができる。
カーボンナノチューブ塗布量2.5mg/mフィルムにおけるドーピング静置時間とドーピング処理前後の表面抵抗値の関係を示すグラフである。 カーボンナノチューブ塗布量4.1mg/mフィルムにおけるドーピング静置時間とドーピング処理前後の表面抵抗値の関係を示すグラフである。 カーボンナノチューブ塗布量2.5mg/mフィルムにおける塩化金酸濃度とドーピング処理前後の表面抵抗値の関係を示すグラフである。 カーボンナノチューブ塗布量4.1mg/mフィルムにおける塩化金酸濃度とドーピング処理前後の表面抵抗値の関係を示すグラフである。 実施例1および3、ならびに比較例1における金原子Au4f軌道の結合エネルギー75〜100eV付近のXPSスペクトルのデータである。 実施例1および5、ならびに比較例2における金原子Au4f軌道の結合エネルギー75〜100eV付近のXPSスペクトルのデータである。
基材の少なくとも片面に親水性カーボンナノチューブを含む導電体を、塩化金酸水溶液に接触させる。このような工程を経て導電体の製造を行うことにより、処理前と比較して表面抵抗値が50〜60%低い導電体を得ることができる。導電体の導電性を向上させる効果は、かかる製造方法を採用することにより、導電性を下げる要因である半導体性質を有するカーボンナノチューブを、塩化金酸によるドーピングにより金属性質を有するカーボンナノチューブへ変化させることにより達成可能となったものと考えられる。
[カーボンナノチューブ]
カーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた多層カーボンナノチューブのいずれもが適用できる。中でもカーボンナノチューブ全数のうち2層カーボンナノチューブを50%以上含むことが好ましい。2層カーボンナノチューブはグラファイトの1枚面を2層に巻いたカーボンナノチューブであり、これを50%以上含むとは、カーボンナノチューブ全100本中50本以上が2層カーボンナノチューブであることをいう。カーボンナノチューブ全数のうち2層カーボンナノチューブを50%以上含むとカーボンナノチューブの導電性ならびに塗布用分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなる。さらに好ましくは100本中75本以上、最も好ましくは100本中80本以上が二層カーボンナノチューブである。また、2層カーボンナノチューブの適用は、酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば以下のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に流通させ、メタンと前記触媒を500〜1200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理する。すなわち上記カーボンナノチューブの合成法により、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。
[カーボンナノチューブの親水化処理]
親水性カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブを製造した後、酸化処理を施すことによりカーボンナノチューブ表面上にカルボキシル基等の親水基を導入することで得られる。親水性の観点より、X線光電子分光スペクトルにおいて、284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A]と288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B]の比が[A]/[B]=5〜100であることが好ましい。さらに好ましくは、[A]/[B]=5〜50である。284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A]は、C−CまたはC=C成分の含有量と相関し、288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B]はCOO成分(エステル・カルボキシル基)の含有量と相関する。ガウス関数を用いて上記ピークを分割し、スムージング処理を行った後、各面積強度を算出する。酸化処理の方法は特に限定されないが、例えば、硝酸処理法により行われる。硝酸処理法の処理条件は特に限定されないが、140℃のオイルバス中で、5時間〜50時間の範囲で処理することが望ましい。親水化処理により、カーボンナノチューブと塩化金酸水溶液との濡れ性が向上し、従来法では困難であった塩化金酸水溶液による導電性の大幅な向上が達成可能になったものと考えられる。
[未処理導電層の形成方法]
未処理導電層は親水性カーボンナノチューブを含むものであれば特に限定されない。未処理導電層の形成方法として、例えば、基材上へのカーボンナノチューブ分散液の塗布法、基板上へのカーボンナノチューブ直接成長法、基材上へのカーボンナノチューブ膜の転写法などが挙げられる。その中でも、分散剤と分散媒を用いて簡便に分散液を得られることから、基材上へのカーボンナノチューブ分散液の塗布法が好ましい。なお、カーボンナノチューブ表面上に親水基を導入する親水化処理については前述のとおりである。
[分散剤]
分散剤は、本発明の分散性が得られる限りカーボンナノチューブの分散能があれば、低分子分散剤、高分子分散剤、またイオン性分散剤、非イオン性分散剤など種類を問わないが、分散性、分散安定性から高分子分散剤であることが好ましい。その中で、多糖類または芳香族の構造を骨格中に有するポリマーまたは低分子のアニオン性界面活性剤は、特に分散性に優れるため好ましい。以下、多糖類の構造を骨格中に有するポリマーを多糖類ポリマー、芳香族の構造を骨格中に有するポリマーを芳香族性ポリマー、低分子のアニオン性界面活性剤をアニオン性界面活性剤と記す。かかる分散剤がカーボンナノチューブを分散媒中に均一に孤立して分散させる理由は、次のように考えられる。カーボンナノチューブは、強固な束(バンドル)や、互いに絡まり合った強固な凝集体を形成するため、溶媒中に孤立して分散させることが非常に困難である。カーボンナノチューブを溶媒中で孤立分散させるためには、カーボンナノチューブのグラファイトとπ電子相互作用し束や凝集を解すること、もしくはカーボンナノチューブとの疎水性相互作用により束や凝集を解くことが必要である。より孤立したカーボンナノチューブ分散液を得るために、多糖類ポリマーや芳香族性ポリマーが有効に作用しているものと推測される。
分散剤に好ましく用いられる多糖類ポリマーとしては、例えばカルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロースおよびその誘導体、キシランおよびその誘導体が挙げられる。中でも、分散性の観点から、カルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体が好ましく、さらには、イオン性分散剤である、カルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体の塩の使用が、好ましい。分散剤として上記のカルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体の塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
分散剤に好ましく用いられる芳香族性ポリマーとしては、例えば芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ビニル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、ポリアニリン等の導電性ポリマー、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−α−メチルスチレンスルホン酸等のポリスチレンスルホン酸の誘導体が挙げられる。中でも、分散性の観点から、ポリスチレンスルホン酸もしくはその誘導体の使用が好ましく、さらには、イオン性分散剤である、ポリスチレンスルホン酸もしくはその誘導体の塩の使用が、好ましい。
分散剤に好ましく用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えばオクチルベンゼンスルホン酸塩、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、モノイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。中でも、分散性の観点から、コール酸ナトリウム、またはドデシルベンゼンスルホン酸塩の使用が好ましい。
非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましい。
上記の分散剤のうち、例えば溶媒として水を用いた場合、特に親水基であるカルボン酸基、スルホン酸基、水酸基が含まれたポリマーによってカーボンナノチューブを分散させることが好ましい。特に、多糖類ポリマーであるカルボキシメチルセルロースが好ましい。
カーボンナノチューブを分散媒中に均一に孤立に分散させる理由については、次のように考えられる。カーボンナノチューブは、強固なバンドルを形成し、互いに絡まり合い強固な凝集体を形成するため、分散媒中に孤立して分散させることが非常に困難である。カーボンナノチューブを分散媒中で孤立分散させるためには、カーボンナノチューブのグラファイトとπ電子相互作用しバンドルや凝集を解すこと、もしくはカーボンナノチューブとの疎水性相互作用によりバンドルや凝集を解くことが必要である。より孤立したカーボンナノチューブの分散液を得るために、多糖類ポリマーが有効に作用しているものと推測される。
カルボキシメチルセルロースの誘導体の塩を分散剤として用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
[分散剤の分子量]
分散剤の分子量は100以上が好ましい。分子量が100以上であればカーボンナノチューブとの相互作用が可能となりカーボンナノチューブの分散がより良好となる。カーボンナノチューブの長さにもよるが、分子量が大きいほど分散剤がカーボンナノチューブと相互作用し分散性が向上する。例えば、ポリマーの場合であれば、ポリマー鎖が長くなるとポリマーがカーボンナノチューブにからみつき非常に安定な分散が可能となる。しかし、分子量が大きすぎると逆に分散性が低下するので、分子量は好ましくは1000万以下であり、さらに好ましくは、100万以下である。最も好ましい分子量範囲は1万〜50万である。
[分散媒]
分散媒としては、上記分散剤を溶解できる水系、また非水系の分散媒を用いることができる。廃液の処理や環境や防災上の観点から、水が好ましい分散媒である。
非水系分散媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
[塗布用分散液]
塗布用分散液の調製方法は、特に限定されない。調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤を分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。中でも、超音波装置を用いて分散させる方法が、得られる塗布用分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
[基材]
以上のようにして得た塗布用分散液を基材上に塗布した後、乾燥させて未処理導電層を形成する。基材の素材としては、樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどを用いることができる。ガラスとしては、通常のソーダガラスを用いることができる。また、これらの複数の基材を組み合わせて用いることもできる。例えば、樹脂とガラスを組み合わせた基材、2種以上の樹脂を積層した基材などの複合基材を用いてもよい。樹脂フィルムにハードコートを設けたようなものであっても良い。基材の種類は上記に限定されることはなく、用途に応じて耐久性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。
[塗布用分散液の基材への塗布]
未処理導電層の形成工程では、上記方法により得た塗布用分散液を基材に塗布し、その後分散媒を乾燥させてカーボンナノチューブを基材上に固定して未処理導電層を形成する。
塗布用分散液を基材上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、ロールコーティングである。
[塗布厚みの調整]
塗布用分散液を基材上に塗布する際の塗布厚み(ウェット厚み)は塗布用分散液の濃度にも依存するため、所望の表面抵抗値が得るのに必要なカーボンナノチューブの塗布量を考慮して適宜調整すればよい。カーボンナノチューブの塗布量は、導電性を必要とする種々の用途を達成するために、適宜調整可能である。例えば、カーボンナノチューブの塗布量が1mg/m〜40mg/mであれば表面抵抗値は1×10〜1×10Ω/□とすることができる。さらに、塗布量を40mg/m以下とすれば表面抵抗値を1×10Ω/□以下とすることができる。塗布量を30mg/m以下とすれば表面抵抗値を1×10Ω/□以下とすることができる。さらに、塗布量が20mg/m以下であれば、1×10Ω/□以下、塗布量が10mg/m以下であれば1×10Ω/□以下とすることできる。
[濡れ剤]
塗布用分散液を基材上に塗布する際、塗布ムラを抑制するため、塗布用分散液中に濡れ剤を添加しても良い。導電体の製造では塗布用分散液の分散媒に水を選択しているので、非親水性の表面を有する基材上に塗布する場合には界面活性剤やアルコール等の濡れ剤を塗布用分散液に添加することで、基材上で前記塗布用分散液がはじかれることなく塗布用分散液を塗布することができる。濡れ剤としては、アルコールが好ましく、アルコールの中でもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールは揮発性が高いために塗布後の基材乾燥時に容易に除去可能である。場合によってはアルコールと水の混合液を用いても良い。
[塩化金酸水溶液]
塩化金酸水溶液をドーピング処理液として用いる。塩化金酸水溶液の濃度は0.02〜1.0質量%であることが好ましい。
[ドーピング方法]
塩化金酸水溶液を基材上に接触させる方法は特に限定されないが、浸漬もしくは塗布であることが好ましい。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、ロールコーティングである。
塩化金酸水溶液を基材上に接触させる際の時間は、10秒から60秒である。10秒未満では十分なドーピング効果が得られない恐れがあり、60秒超では生産性の観点から好ましくない。
塩化金酸水溶液を基材上に接触させる際の温度は、15〜30℃であることが好ましい。接触時に加熱をする必要はなく、常温での処理により十分なドーピング効果を得ることができる。なお、基材の耐久可能な200℃以下であれば、加熱をしても問題はない。
塩化金酸水溶液を基材に接触させた後は、15〜30℃、45〜85RH%で10〜60秒間乾燥させることが好ましい。温度については、常温から基材が耐えうる温度までの条件とすることが可能である。湿度については、特に限定されない。乾燥時間については、生産性の観点から10〜60秒であることが好ましい。
[ドーピング処理後の導電体]
ドーピング処理後の導電体は、塩化金酸溶液の溶媒が水であるため、基材の溶媒での洗浄などの後処理工程が不要である。
また、ドーピング処理後の導電性向上の度合いは、表面抵抗値の減少分より求めることができる。
[XPSスペクトル]
XPSとはX線光電子分光の略称であり、光電子分光の1種である。サンプル表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することで、サンプルの構成元素とその電子状態を分析することができる。物質にX線を照射すると、原子軌道の電子が励起され、光電子として外にたたき出される。この光電子はE=hν―E(Eは電子の結合エネルギー)にしたがったエネルギー値をもつため、X線のエネルギーが一定であれば、Eを求めることができる。一般に電子の結合エネルギーは各元素と酸化状態に固有の軌道エネルギーとなるから、この値から元素の種類と酸化状態がわかる。
[XPSスペクトルによる金の価数決定]
ドーピング処理液である塩化金酸に含まれる金原子の電子状態がわかる金原子Au4f軌道の結合エネルギー82〜92eV付近のスペクトルを詳細に分析することで、カーボンナノチューブへのドーピング状態を定量的に分析することができる。詳細には、82〜89eVは主に0価の金粒子由来のピークであり、一方、89〜92eVは3価の金イオン由来のピークである。これらのピーク強度の増減を相対的に比較することで、カーボンナノチューブ周囲に存在する金の価数比を定量的に算出することができる。
[XPSによるドーピングメカニズム分析]
上記の金の価数比を定量的に分析することで、塩化金酸によるドーピングのメカニズムを明らかにすることができる。ドーピングは次に示す2段階のプロセスを経て完了すると考えている。
ドーピングの1段階目では、水溶液中に存在する3価の金イオンが、カーボンナノチューブにより還元され0価の金粒子としてカーボンナノチューブ上に析出し、カーボンナノチューブにホールドープ(=カーボンナノチューブから電子を引き抜くこと)することで、導電性が向上する。反応式を下記(1)式に示す。
AuCl +3CNT→3CNT+Au+4Cl・・・(1)
ドーピングの2段階目は、0価の金粒子が十分にカーボンナノチューブ表面に析出した後に起こる。すなわち、3価の金イオンが、すでに0価の金粒子によりドープされたカーボンナノチューブにさらなるホールドープ(2段階目では電荷の分極が生じる。)を行うことで達成される。反応式を下記(2)式に示す。ここで、下記(2)式中の“CNTδ+---AuCl δ−”とは、電荷の分極により、CNTδ+とAuCl δ−がクーロン相互作用していることを示す。
CNT+AuCl →CNTδ+---AuCl δ−・・・(2)
これらの反応の進行は、スペクトルの変化によっても裏付けられている。すなわち、82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]は、Au4f7/2の含有量と相関し、89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]はAu3+4f5/2の含有量と相関するので、図5、6に示す導電面側のXPSスペクトルから、82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]と89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]を比較することで、導電面上に存在する金の価数を見積もることができる。ドーピング条件が十分でない場合、89〜92eV付近のピークは見られず、一方ドーピング条件が十分である場合、89〜92eV付近のピークは見られた。これは、上記のメカニズムで1段階目のプロセスまでしか進行しない場合と、2段階目まで進行したことを裏付ける結果であると考えられる。なお、ガウス関数を用いて上記ピークを分割し、スムージング処理を行った後、各面積強度を算出する。
[XPSによる炭素と金の元素比定量分析]
導電体上に存在する炭素と金の元素比を、XPSにより定量分析することが可能である。すなわち、XPSスペクトルで得られた炭素C1sと金Au4fのそれぞれに対応するピークの面積強度比を計算することで炭素と金の元素比を算出可能である。すなわち、C1sに対応するピークは、284〜292eVにピークトップを有し、Au4fに対応するピークは、82〜92eVにピークトップを有する。従って、82〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[E]は金原子の数と相関し、また284〜292eVにピークトップを含むピークの面積強度[F]は炭素原子の数と相関するため、その比[E]/[F]を比較することで、導電面上に存在する炭素原子数に対する金原子数を評価することができる。
[導電性]
導電体の導電性について、表面抵抗値が1×10〜1×10Ω/□であることが好ましい。より好ましくは、表面抵抗値が1×10〜1×10Ω/□であることが好ましい。かかる表面抵抗値の範囲は、カーボンナノチューブの塗布量により調整することができる。表面抵抗値がこの範囲内にあることで、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどの導電膜付き基材として好ましく用いることができる。すなわち、1×10Ω/□以上であれば、上記の基材として消費電力を少なくすることができ、1×10Ω/□以下であれば、タッチパネルの座標読み取り時における誤差の影響を小さくすることができる。
[用途]
本発明の導電体は、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。なお、特にn数を示していないものは、n=1で測定を行っている。
(1)表面抵抗値
1cm×1cmにサンプリングした導電体の導電面の中央部を4端子法により室温下で以下に示すプローブを導電層側に密着させて、ドーピング処理前後の抵抗値を測定した。用いた測定器はダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、4探針プローブはダイアインスツルメンツ(株)製MCP−TPO3Pである。
(2)XPS測定
導電体を専用のホルダーにカーボンテープを用いて貼り付け、高真空中でXPS測定を行った。用いた装置は(PHI 5800 ESCA System)であり、X線源としてAlKα線(1486.6eV)を用い、各サンプル20分の積算時間で測定を行った。測定後の解析は(PHI MultiPak)を用い、ガウス関数を用いて上記ピークを分割し、スムージング処理を行った後、面積強度を算出した。
[アンダーコート層作製例]
約30nmの親水シリカ微粒子とポリシリケートを含むシリカ膜作製用塗液((株)菱和社製 メガアクア親水DMコート DM―30―26G―N1)を用いた。ワイヤーバー#8を用いて厚さ188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム 東レ(株)製“ルミラー” U46上に塗布した。塗布後、80℃乾燥機内で1分間乾燥させた。この操作によりポリシリケートをバインダーとし、30nmのシリカ微粒子が表出する親水シリカアンダーコート層を作製した。
[カーボンナノチューブ用触媒調製例]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業(株)社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業(株)社製MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10L(リットル)のオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分から篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュの範囲の粒径のものを回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mL(ミリリットル)であった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39質量%であった。
[カーボンナノチューブ含有組成物製造工程]
触媒調製例に従い調製した固体触媒体132gを、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラーを用いて窒素ガスを16.5L(リットル)/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラーを用いてメタンガスを0.78L(リットル)/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の質量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169min・g/L(リットル)、メタンを含むガスの線速は6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L(リットル)/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物(以降、この組成物を触媒付きカーボンナノチューブ組成物と記す。)を取り出した。
この触媒付きカーボンナノチューブ組成物115gを4.8Nの塩酸水溶液2000mL(ミリリットル)中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mL(ミリリットル)に投入し脱MgO処理をし、再度濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブ組成物(以降、この組成物を、触媒除去カーボンナノチューブ組成物と記す。)を得た。この触媒除去カーボンナノチューブ組成物を約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業(株)社製 1級 Assay60〜61%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後のカーボンナノチューブを含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブを保存した(以降、このウェット状態のボンナノチューブを単に、カーボンナノチューブ組成物と記す。)。このカーボンナノチューブ組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、含まれるカーボンナノチューブの全数に対し2層カーボンナノチューブの割合は90%であった。
[カーボンナノチューブ分散液の調製]
カーボンナノチューブ25mg(乾燥質量換算で25mgのカーボンナノチューブを含有する前記で得られたカーボンナノチューブ組成物)、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5A(質量平均分子量8万))水溶液7.5g、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、トレセラム、ビーズサイズ:0.8mm)6.7gを容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整した。この分散液中の分散剤/カーボンナノチューブの質量比は3である。この容器を振動ミルを用いて2時間振盪させ、カーボンナノチューブペーストを調製した。
次にこのカーボンナノチューブペーストをカーボンナノチューブの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザーで出力20W、1.5分間、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心処理し、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。
[カーボンナノチューブ分散液塗布]
前記分散液にイオン交換水を添加して、0.055質量%に調整後、前記アンダーコート層を設けた基材またはPETフィルム基材にワイヤーバー#3、#5を用いて塗布、80℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した(以降、カーボンナノチューブ組成物を固定化したフィルムを、カーボンナノチューブ塗布フィルムと記す。)。なお、各ワイヤーバーに対応するカーボンナノチューブの塗布量はそれぞれ2.5mg/m、4.1mg/mと算出された。塗布量が2.5mg/mのカーボンナノチューブ塗布フィルムを(A)、塗布量が4.1mg/mのカーボンナノチューブ塗布フィルムを(B)とする。
(実施例1)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液(和光純薬製塩化金酸を純水に溶解して調製した。以下同じ)100μL(マイクロリットル)を滴下し、10秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(実施例2)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の0.1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、10秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(実施例3)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の0.05質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、10秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(実施例4)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の0.02質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、10秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(比較例1)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の0.01質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、10秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(実施例5)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、30秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(実施例6)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、60秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値の測定を行った。
(比較例2)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、1秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値、XPSの測定を行った。
(比較例3)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の塩化金酸水溶液1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、3秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値の測定を行った。
(比較例4)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、6秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値の測定を行った。
(比較例5)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、120秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値の測定を行った。
(比較例6)
上記カーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)に、25℃の1質量%の塩化金酸水溶液100μL(マイクロリットル)を滴下し、180秒静置した。静置後、3000rpmで60秒間回転させることにより処理に用いた塩化金酸水溶液を除去、乾燥した。その後、表面抵抗値の測定を行った。
以上、発明の実施例について述べてきたが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことができる。
実施例、比較例について、表1、2にカーボンナノチューブ塗布フィルム(A)(B)別に、ドーピング前(R)とドーピング後(R)の表面抵抗値とドーピング処理後の表面抵抗値の減少率((1−R/R)×100)、またXPS測定の結果(82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]と89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]との比である[C]/[D]、82〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[E]と284〜292eVにピークトップを含むピークの面積強度[F]との比である[E]/[F])をまとめた。
Figure 2013045695
Figure 2013045695
なお、実施例1〜6、比較例1〜6において、カーボンナノチューブの塗布量がそれぞれ2.5mg/m、4.1mg/mと同じであるのにもかかわらず抵抗値に変化が生じているのは、ワイヤーバーによるハンドコートによる実験誤差の影響である。
図1は、実施例1、5、6、比較例2〜5における、ドーピング静置時間を横軸に、カーボンナノチューブ塗布量2.5mg/mのフィルムのドーピング処理前後の表面抵抗値を縦軸、にとったグラフである。▲がドーピング前、△がドーピング後のデータを示す。
図2は、実施例1、5、6、比較例2〜5における、ドーピング静置時間を横軸に、カーボンナノチューブ塗布量4.1mg/mのフィルムのドーピング処理前後の表面抵抗値を縦軸、にとったグラフである。◆がドーピング前、◇がドーピング後のデータを示す。
図3は、実施例1〜4、比較例1における、塩化金酸濃度を横軸に、カーボンナノチューブ塗布量2.5mg/mのフィルムのドーピング処理前後の表面抵抗値を縦軸にとったグラフである。▲がドーピング前、△がドーピング後のデータを示す。
図4は、実施例1〜4、比較例1における、塩化金酸濃度を横軸に、カーボンナノチューブ塗布量4.1mg/mのフィルムのドーピング処理前後の表面抵抗値を縦軸にとったグラフである。◆がドーピング前、◇がドーピング後のデータを示す
図5は、実施例1,3、比較例1における金原子Au4f軌道の結合エネルギー75〜100eV付近のXPSスペクトルのデータである。塩化金酸の濃度が0.01質量%の場合のみ、91eVにピークが見られず、ドーピングが十分でないことが分かった。
図6は、実施例1,5、比較例2における金原子Au4f軌道の結合エネルギー75〜100eV付近のXPSスペクトルのデータである。ドーピング静置時間が1秒の場合のみ、91eVにピークが見られず、ドーピングが十分でないことが分かった。
本発明に係る導電体は、各種の導電性材料として利用することができる。

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも片面に、親水性カーボンナノチューブと分散剤とを含む未処理導電層を形成し、該未処理導電層に0.02〜1.0質量%の塩化金酸水溶液を10〜60秒間接触させた後、乾燥させることを特徴とする導電体の製造方法。
  2. 前記親水性カーボンナノチューブが、X線光電子分光スペクトルにおいて、284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A]と288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B]との比([A]/[B])が5〜100であるカーボンナノチューブからなる、請求項1記載の導電体の製造方法。
  3. 基材の少なくとも片面に親水性カーボンナノチューブと0価の金ナノ粒子と3価の金イオンと分散剤とを含む導電層を有し、前記親水性カーボンナノチューブが、前記導電層の導電面側のX線光電子分光スペクトルにおいて、82〜89eVにピークトップを含むピークの面積強度[C]と89〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[D]との比([C]/[D])が5〜20であり、かつ82〜92eVにピークトップを含むピークの面積強度[E]と284〜292eVにピークトップを含むピークの面積強度[F]との比が[E]/[F]=0.001〜0.05であるカーボンナノチューブからなることを特徴とする導電体。
  4. 前記親水性カーボンナノチューブが、X線光電子分光スペクトルにおいて、284〜285eVにピークトップを含むピークの面積強度[A’]と288〜289eVにピークトップを含むピークの面積強度[B’]の比が[A’]/[B’]=5〜100であるカーボンナノチューブからなる、請求項3記載の導電体。
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