JP2014029841A - 透明導電体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明導電性に優れた透明導電体(透明基材上に、湿式コーティング法やドライコーティング法などにより基材とは異なる材料を少なくとも一層以上積層させたもの)を提供する。
【解決手段】シランカップリング処理やカチオン性ポリマー処理等の表面カチオン化処理が施された透明基材上に、0mV未満(例えば−70〜−40mV)のゼータ電位を有するカーボンナノチューブ分散液を塗布する塗布工程と、前記透明基材上の前記カーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する乾燥工程とを有することを特徴とする透明導電体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電体の製造方法に関する。より詳細には、透明導電性に優れる透明導電体の製造方法に関する。なお、本発明における透明導電体とは、透明基材上に、湿式コーティング法やドライコーティング法などにより基材とは異なる材料を少なくとも一層以上積層させたものを指す。
カーボンナノチューブは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、中でも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、それ自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
カーボンナノチューブを用いた透明導電体を作製するために、カーボンナノチューブを均一に分散液中に分散させる必要がある。良好な分散性を有したカーボンナノチューブの分散手法については今まで多くの検討がなされてきた。カーボンナノチューブの溶媒中への均一分散は比較的容易に達成でき、その分散性の評価法も各種検討されている。
例えば特許文献1には、走査型電子顕微鏡観察にて基材上のカーボンナノチューブのバンドル集合状態であるロープ形状を確認した例が記載されている。
また、特許文献2には、カーボンナノチューブ分散液のpHを塩基性にすることで、カルボン酸のイオン化による反発性基を利用した分散性向上した透明導電体の例が記載されている。
さらに、特許文献3には、走査型電子顕微鏡観察で観察したときのカーボンナノチューブのバンドル径を定量的に算出した例が記載されている。
さらに、非特許文献1には、カーボンナノチューブの表面改質処理とゼータ電位との関係について記載されている。
特開2008−108575号公報 特開2009−508292号公報 特開2009−029695号公報
Thermochimica Acta 497,67(2010)
しかしながら、特許文献1においては、好ましい基材上のバンドル径が20〜100nmと記載されており、均一なカーボンナノチューブ分散体としては不十分である。
特許文献2においては、好ましい基材上のバンドル径が20nm未満と記載されているが、具体的な達成手段は示されていない。
特許文献3においては、カーボンナノチューブのバンドル径の平均が20nm以下との記載があるが、走査型電子顕微鏡観察の際に基材上にコーティングしたカーボンナノチューブサンプルを用いておらず、基材上でのバンドル径を直接反映しているものではない。
本発明は、前記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その課題は、透明導電性に優れた透明導電体を提供することである。
カーボンナノチューブの真性の導電性を引き出すために、カーボンナノチューブ均一分散液を透明基材上にコーティングする際に起こると推定される、基材上でのカーボンナノチューブのバンドル(束)化を抑制することが必要との仮説の下、カーボンナノチューブの基材上でのバンドル化を抑制する手法、および基材上のカーボンナノチューブバンドル径を定量的に精密に分析する手法とを、共に鋭意検討を行い本発明に至ったものである。
すなわち、本発明に係る透明導電体の製造方法は、表面カチオン化処理が施された透明基材上に、0mV未満のゼータ電位を有するカーボンナノチューブ分散液を塗布する塗布工程と、前記透明基材上の前記カーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する乾燥工程とを有することを特徴とする方法からなる。
本発明に係る透明導電体の製造方法において、前記透明基材に、表面カチオン化処理としてシランカップリング処理、カチオン性ポリマー処理および酸処理からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理が施されていることが好ましい。
また、本発明に係る透明導電体の製造方法において、前記透明基材が、−10〜+60mVの固体表面ゼータ電位を有することが好ましい。
また、本発明に係る透明導電体の製造方法において、前記カーボンナノチューブ分散液が、−70〜−40mVのゼータ電位を有することが好ましい。
本発明によれば、表面カチオン化処理を施した透明基材とカーボンナノチューブ間の静電相互作用を利用することで、カーボンナノチューブを凝集させることなく、高分散状態で透明基材上に塗布することができるため、透明導電性の高い透明導電体を得ることができる。
本発明の一実施態様に係る方法によって製造された透明導電体を示す走査型電子顕微鏡像である。 本発明の他の実施態様に係る方法によって製造された透明導電体を示す走査型電子顕微鏡像である。 従来の方法によって製造された透明導電体を示す走査型電子顕微鏡像である。 本発明の一実施態様に係る方法によって製造された透明導電体について、走査型顕微鏡像より算出したバンドル径を示すヒストグラムである。 本発明の他の実施態様に係る方法によって製造された透明導電体について、走査型顕微鏡像より算出したバンドル径を示すヒストグラムである。 従来の方法によって製造された透明導電体について、走査型顕微鏡像より算出したバンドル径を示すヒストグラムである。
本発明の一実施態様に係る透明導電体の製造方法は、表面カチオン化処理を施した透明基材上に、ゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を塗布する塗布工程(以降、単に「塗布工程」と略記することもある。)と、前記透明基材上に塗布された前記カーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する乾燥工程(以降、単に「乾燥工程」と略記することもある。)とを有する。なお、塗布工程と乾燥工程とを総称して、「カーボンナノチューブ層形成工程」と呼ぶこともある。
前記表面カチオン化処理は、透明基材上の固体表面ゼータ電位を、−10〜+60mVに制御する処理である。表面カチオン化処理の方法として、生産性および表面カチオン化効果の観点から、シランカップリング処理、カチオン性ポリマー処理および酸処理などの化学的処理が特に好ましい。
前記塗布工程では、透明基材上にゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を塗布する。ゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を調製する方法としては、原料として使用するカーボンナノチューブの表面改質および/またはカーボンナノチューブの分散剤の選択により行うことができる。カーボンナノチューブ層を形成するためのカーボンナノチューブ分散液は分散剤を含むことが好ましい。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むカーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射電熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導電熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
一般にカーボンナノチューブ分散液中ではカーボンナノチューブの側壁間に働く高いπ電子相互作用によって、カーボンナノチューブの凝集が生じバンドル(束)状態となりやすい。かかる性質を「バンドル化が起こりやすい」と表現する場合もある。このバンドル状態を解消させ1本1本に分散させた分散液を塗布することで、得られるカーボンナノチューブ層の導電性が向上することが期待される。しかしながら、カーボンナノチューブ分散液を透明基材上に塗布後、乾燥させて作製する透明導電体においては、塗布後の乾燥時の分散液の濃度上昇や、カーボンナノチューブ分散液と透明基材との間に生じる静電反発力により、カーボンナノチューブのバンドル化が起こる恐れがあった。本実施態様では、分散液中においてカーボンナノチューブをマイナスに帯電させるとともに、かかるカーボンナノチューブ分散液を、固体表面ゼータ電位が−10〜+60mVの透明基材上に塗布して乾燥させることにより、カーボンナノチューブ分散液中に分散したカーボンナノチューブが透明基材に静電吸着され、透明基材上での乾燥時に起こっていたカーボンナノチューブのバンドル化を抑制することができることが見出された。これにより、従来と比較して透明導電性に優れた透明導電体を得ることができた。
[透明基材]
本実施態様に用いられる透明基材の素材としては、樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどを用いることができる。ガラスとしては、通常のソーダガラスを用いることができる。また、これらの複数の素材を組み合わせて用いることもできる。例えば、樹脂とガラスを組み合わせた透明基材、2種以上の樹脂を積層した透明基材などの複合透明基材であってもよい。樹脂フィルムにハードコートを設けたようなものであってもよい。透明基材の種類は前記に限定されることはなく、用途に応じて耐久性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。透明基材の厚みは特に限定されるものではないが、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極に用いる場合、10μm〜1,000μmの間にあることが好ましい。
[表面カチオン化処理]
本実施態様においては、前記透明基材に表面カチオン化処理を施すことで、固体表面ゼータ電位を−10〜+60mVに制御する。表面カチオン化処理方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理処理、酸処理やアルカリ処理、カチオン性ポリマー処理、金属塩処理、およびシランカップリング処理などの化学的処理によるカチオン性官能基の表面修飾が好ましい。生産性および表面カチオン化効果の観点から、カチオン化ポリマー処理、シランカップリング処理および酸処理などの化学的処理が特に好ましい。
表面カチオン化処理の塗布方法は、特に限定されない。既知の塗布方法として、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。
カチオン化を十分に進行させるために、処理温度は25℃〜100℃、処理時間は10秒〜1時間であることが好ましい。
[カーボンナノチューブ]
本実施態様において用いられるカーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できる。中でもグラファイトの1枚面を2層に巻いた特に2層カーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が2層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が2層カーボンナノチューブが適用可能である。なお、2層カーボンナノチューブが100本中に50本含まれていることを、2層カーボンナノチューブの割合が50%と表示することもある。また、2層カーボンナノチューブは、酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれにくい点から好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは、製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は、例えば硝酸処理する方法により行われる。硝酸はカーボンナノチューブに対するドーパントとして作用するため、硝酸処理する方法は好適に適用できる。ここでドーパントとは、カーボンナノチューブに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、カーボンナノチューブの導電性を向上させるものである。硝酸処理の具体的操作法は本実施態様のカーボンナノチューブが得られる限り特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。処理時間は特に限定されないが、5時間〜50時間の範囲であることが好ましい。
本実施態様において用いることのできるカーボンナノチューブの分散剤としては、界面活性剤、各種分散剤(水溶性分散剤等)等を用いることができるが、分散性が高いイオン性分散剤を用いることが好ましい。イオン性分散剤としてはアニオン性分散剤やカチオン性分散剤、両性分散剤がある。カーボンナノチューブ分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、分散性、および分散保持性に優れることから、アニオン性分散剤を用いることが好ましい。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩は、カーボンナノチューブ分散液においてカーボンナノチューブを効率的に分散することができるので、好ましい。
本実施態様において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を調製する方法としては、原料として使用するカーボンナノチューブの表面改質および/またはカーボンナノチューブの分散剤の選択により行われる。
カーボンナノチューブ分散液のゼータ電位を調整するためのカーボンナノチューブ表面改質処理の方法は特に限定されないが、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理処理、酸処理やアルカリ処理などの化学的処理により、カルボキシル基、ヒドロキシル基等のアニオン性基をカーボンナノチューブ側壁に導入することが好ましい。
非特許文献1によると、カーボンナノチューブの表面改質処理を施していない場合、ゼータ電位の範囲は0〜20mVである一方で、表面改質処理を施すことによって、−10〜−40mVに変化させることが可能であるとの記載がある。表面改質処理条件を検討することで、−40〜−70mVの範囲にすることが可能であると考えられる。以上より、ゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を調製する方法として、原料として使用するカーボンナノチューブの表面改質が重要であることが示された。
カーボンナノチューブ分散液のゼータ電位を調整するためのカーボンナノチューブの分散剤としては、カーボンナノチューブ分散能が高く、分散性を保持できるもので有ればどの種類も用いることができる。中でも、分散剤として、上記記載のアニオン性分散剤が最も好ましい。アニオン性分散剤を使用した場合、カーボンナノチューブ分散液のpHが5.5〜11であると、カーボンナノチューブ表面を修飾しているカルボン酸など酸性官能基や、カーボンナノチューブの周りに位置している分散剤に含まれるカルボン酸などの酸性官能基の電離度が向上し、その結果、カーボンナノチューブ、あるいはカーボンナノチューブ周りの分散剤がマイナス電荷を帯びる。より具体的には、表面改質を行ったカーボンナノチューブを、また分散剤としてカルボキシメチルセルロースを使用した場合、pH=4.0では−20mVであるのに対して、pH=5.5〜11の範囲では−40〜−70mVである。以上より、ゼータ電位がマイナスのカーボンナノチューブ分散液を調製する方法として、静電反発を利用するために、アニオン性のイオン性分散剤を選択することが最も好ましい。また、前項に示すように、カーボンナノチューブ表面改質を組み合わせることで、アニオン性分散剤に限らず、カチオン性分散剤および両性分散剤も用いることができる。
本実施態様では、表面カチオン化処理を施した透明基材上とカーボンナノチューブ間の静電相互作用を利用するために、カーボンナノチューブ分散液中に存在するアニオン性を有するカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ分散液と比較してカチオン性を有する透明基材上の表面に引き寄せられ、静電吸着により高分散状態が実現できたと考えられる。よって、カーボンナノチューブ分散液中に存在するカチオン性を有するカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ分散液と比較してアニオン性を有する透明基材上の表面に引き寄せられ、静電吸着により高分散状態を実現する態様も、本発明の実施態様に含まれる。
分散剤の重量平均分子量は100以上であることが好ましい。重量平均分子量が100以上であればカーボンナノチューブとの相互作用が可能となりカーボンナノチューブの分散がより良好となる。カーボンナノチューブの長さにもよるが、重量平均分子量が大きいほど分散剤がカーボンナノチューブと相互作用し分散性が向上する。例えば、ポリマーの場合であれば、ポリマー鎖が長くなるとポリマーがカーボンナノチューブにからみつき、非常に安定的な分散が可能となる。しかし、重量平均分子量が大きすぎると逆に分散性が低下するので、重量平均分子量は好ましくは1,000万以下であり、さらに好ましくは、100万以下である。最も好ましい重量平均分子量範囲は1万〜50万である。
カーボンナノチューブ分散液のpHは、アレニウスの定義による酸性物質や塩基性物質をカーボンナノチューブ分散液に添加することで調整できる。酸性物質として、例えば、プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。さらに、有機カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ショウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸などが挙げられる。この中でも好ましいのは、塗布乾燥時に揮発する揮発酸であり、例えば塩酸、硝酸などである。
塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。この中でも好ましいのは、塗布乾燥時に揮発する揮発塩基であり、例えばアンモニアである。
カーボンナノチューブ分散液のpH調整は、pHを測定しながら、上記酸性物質および/または塩基性物質を所望のpHとなるまで添加することで行う。pH測定法としては、リトマス試験紙などのpH試験紙を用いる方法、水素電極法、キンヒドロン電極法、アンチモン電極法、ガラス電極法などが挙げられるが、この中でもガラス電極法が簡便であり、必要な精度を得られるため好ましい。また、酸性物質、あるいは、塩基性物質を過剰に添加して所望のpH値を越えてしまった場合には、逆の特性を持つ物質を添加してpHを調整すればよい。かかる調整に適用する酸性物質としては硝酸が、塩基性物質としてはアンモニアが好ましい。
本実施態様において用いられるカーボンナノチューブ分散液の調製に用いる分散媒は、前記分散剤を安全に溶解できる点、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
本実施態様において用いるカーボンナノチューブ分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にカーボンナノチューブを0.003〜0.15質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。
本実施態様において、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比は10以下であることが好ましい。かかる好ましい範囲であると、均一に分散させることが容易である一方、導電性低下の影響が少ない。質量比は0.5〜9であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、質量比が2〜3であれば、高い透明導電性を得ることができるので特に好ましい。調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤を分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、振動ボールミルで予備的に分散を行った後、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
[カーボンナノチューブ層の形成方法]
本実施態様において、カーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブ分散液を透明基材に塗布する塗布工程と、その後分散媒を除去する乾燥工程を経て形成される。塗布工程では、前記方法により得た分散液を、前記表面カチオン化処理を施した透明基材に塗布するときカーボンナノチューブ分散液中に存在するアニオン性を有するカーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ分散液と比較してカチオン性を有する透明基材上の表面に引き寄せられ、静電吸着されると考えられる。
本実施態様において、分散液を透明基材上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。最も好ましい塗布方法は、グラビアコーティング、バーコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むカーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射電熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導電熱乾燥などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は、乾燥速度が大きいため好ましい。
[カーボンナノチューブ層の厚みの調整]
カーボンナノチューブ分散液を透明基材上に塗布する際の塗布厚み(ウェット状態の厚み)は、カーボンナノチューブ分散液の濃度にも依存するため、望む表面抵抗値が得られるように適宜調整すればよい。本実施態様におけるカーボンナノチューブ塗布量は、導電性を必要とする種々の用途を達成するために、容易に調整可能である。例えば、塗布量が1mg/m〜40mg/mであれば表面抵抗値は1×10〜1×10Ω/□とすることができるので好ましい。本実施態様では、表面カチオン化処理を施した透明基材上によるカーボンナノチューブのバンドル化の抑制により、従来よりもカーボンナノチューブを効果的に用いることができ、カーボンナノチューブの塗布量を減らした状態で高い導電性を達成することが可能となった。
[オーバーコート処理]
本実施態様においてはカーボンナノチューブ層形成後、オーバーコート処理を行ってもよい。オーバーコート処理を行うことにより、カーボンナノチューブ層内のカーボンナノチューブの間の空間にマトリックスが形成されたり、あるいは、カーボンナノチューブ層の上面に被膜が形成され、さらに透明導電性や耐熱性安定性、耐湿熱安定性が向上できるため好ましい。以下、オーバーコート処理により形成されるマトリックスや被膜を総称して、オーバーコートと記す。
オーバーコートに用いる材料としては有機材料、無機材料ともに用いることができるが、抵抗値安定性の観点から無機材料が好ましい。無機材料としては、シリカ、酸化錫、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物が挙げられるが、抵抗値安定性の観点からシリカが好ましい。
本実施態様において、オーバーコート処理を行う方法は特に限定されない。既知の湿式コーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また、乾式コーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。またオーバーコート処理を行う操作は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の方法を組み合わせてもよい。好ましい方法は、湿式コーティングであるグラビアコーティング、バーコーティングである。
湿式コーティングを用いてシリカ層を形成する方法として、有機シラン化合物を用いることが好ましく、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシランなどの有機シラン化合物を加水分解して作製したシリカゾルを溶媒に溶解したものを塗布液として、前記湿式コーティングを行い、溶媒乾燥時に、シラノール基同士の脱水縮合を生じさせ、シリカ薄膜を形成させる方法が挙げられる。
オーバーコートの付着量は、塗布液中のシリカゾル濃度および塗布時の塗布厚みを調整することで制御する。
[透明導電性]
上述のようにして透明導電性に優れる透明導電体を得ることができる。透明導電性とは透明性と導電性を兼ね備えていることを示す。
本実施態様において、透明性の指標として、カーボンナノチューブ層光吸収率が挙げられる。カーボンナノチューブ層光吸収率は、波長550nmにおける次式で表される指標である。
カーボンナノチューブ層光吸収率(%)=100%−光透過率(%)−導電面光反射率(%)−導電面逆面光反射率(%)
導電性の指標としては表面抵抗値が用いられ、表面抵抗値が低い方が導電性は高い。表面抵抗値は、1×10〜1×10Ω/□の範囲にあることが好ましい。より好ましくは表面抵抗値が1×10〜1×10Ω/□の範囲である。
かかる導電性(表面抵抗値)、及び、透明性(全光線透過率等)は、カーボンナノチューブ塗布量により調整することができる。しかしながら、カーボンナノチューブ塗布量が少ないと、導電性は低くなる一方、透明性は高くなり、塗布量が多いと導電性は高くなる一方、透明性は低くなる。すなわち、両者はトレードオフの関係にあり、両者を共に満たすことは困難である。かかる関係があるため、透明導電性を比較するためには、どちらかの指標を固定化してその上でもう一方の指標を比較する必要がある。本実施態様において、カーボンナノチューブ層光吸収率5%における表面抵抗値を指標とする。本実施態様により得られる透明導電体は、走査型電子顕微鏡で観察した透明基材上におけるカーボンナノチューブバンドル径の平均が5nm以下であり、それによりカーボンナノチューブ層光吸収率5%における表面抵抗値が1.1×10Ω/□以下となるものである。カーボンナノチューブのバンドル化の抑制により、従来の技術によるものに比較してカーボンナノチューブを効果的に用いることができ、カーボンナノチューブの塗布量を減らした状態で高い導電性を達成することが可能となった。さらに、バンドル径の低下によりカーボンナノチューブ層の表面平滑性が向上する。よって、表面平滑性を必要とする有機エレクトロルミネッセンス等への用途の透明電極に好ましく使用できる。カーボンナノチューブ基材上のバンドル径の測定手法としては、測定精度の観点から、金属を蒸着することなく観察可能な走査型電子顕微鏡を用いることが好ましい。バンドル径を測定する際のカーボンナノチューブ層の厚みについては特に限定はないが、カーボンナノチューブ密度の観点より、カーボンナノチューブ層光吸収率5%厚み時のバンドル径を測定することが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。特に断らない限り、測定n数は2とし、平均値を採用した。
(1)表面抵抗値
5cm×10cmにサンプリングした透明導電体のカーボンナノチューブ層側の中央部にプローブを密着させて、4端子法により室温下で抵抗値を測定した。使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TPO3Pである。
(2)カーボンナノチューブ層光吸収率
(2−1)導電面反射率、導電面逆面反射率
測定面の反対側表面を60°光沢度(JIS Z 8741(1997年))が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色した。測定面を(株)島津製作所製の分光光度計“UV−3150”にて、測定面から5°の入射角で、550nmでの導電面反射率および導電面逆面反射率の測定を行った。
(2−2)光透過率
(株)島津製作所製の分光光度計UV−3150にて、導電面から光を入射させて550nmにおける光透過率測定を行った。
(2−3)カーボンナノチューブ層の光吸収率
(2−1)、(2−2)で測定した導電面反射率、導電面逆面反射率および光透過率から下記式を用いて導出した。
カーボンナノチューブ層の光吸収率(%)=100%−光透過率(%)−導電面光反射率(%)−導電面逆面光反射率(%)
(3)カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値
オーバーコート処理後のカーボンナノチューブ層の光吸収率5%以上のサンプルと、5%未満のサンプルを、後述する[カーボンナノチューブ層の形成]の項に示した方法で少なくともそれぞれ1水準以上作製し、各々の表面抵抗値、カーボンナノチューブ層の光吸収率を測定、カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値を内挿して算出した。
(4)カーボンナノチューブ分散液のゼータ電位
カーボンナノチューブ分散液から、1mLサンプリングし、カーボンナノチューブの含有率が0.003質量%となるように希釈した。希釈液のカーボンナノチューブ分散液のゼータ電位を大塚電子(株)製ELS−Z2を用いて測定した。その際、水の屈折率、粘度をあらかじめ入力し、25℃設定で3回測定を行い、その平均値を求めた。
(5)固体表面ゼータ電位
セルサイズに合うようにサンプリングした透明基材の固体表面ゼータ電位を、大塚電子(株)製ELS−Z2を用いて測定した。その際、水の屈折率、粘度をあらかじめ入力し、25℃設定で3回測定を行い、その平均値を求めた。
(6)水接触角
室温25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、透明基材表面に1〜4μLの水をシリンジで滴下した。接触角計(協和界面化学社製、接触角計CA−X型)を用いて、液滴を水平断面から観察し、液滴端部の接線と透明基材平面とのなす角を求めた。
(7)透明基材上におけるバンドル径測定
オーバーコート処理前のカーボンナノチューブ層光吸収率5%のサンプルを、金属を蒸着することなく観察可能な走査型電子顕微鏡(Hitachi,SU8000)を用いて、加速電圧2.0kV,100,000倍で2視野観察した。各視野ごとに得られた顕微鏡像を横方向に4等分する縦方向の線を3本引き、該3本の線との交点に存在するカーボンナノチューブのバンドル径をすべて測定した。なお、前記3本の線との交点に存在するカーボンナノチューブが50本に満たない場合は、上記の3本の線の中間に前記3本の線と平行に4本の線を引き、それらの4本の線との交点に存在するカーボンナノチューブのバンドル径についても測定した。この様にして測定対象のカーボンナノチューブを1視野あたり50本以上とし、2視野すべてについて平均値を算出した。
[アンダーコート層形成例]
以下の操作によりポリシリケートをバインダーとし、直径約30nmのシリカ微粒子が表出する親水シリカアンダーコート層を形成した。
直径約30nmの親水シリカ微粒子とポリシリケートを含む(株)菱和製メガアクア親水DMコート DM−30−26G−N1をシリカ膜形成用塗液として用いた。
ワイヤーバー#3を用いて厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム 東レ(株)製“ルミラー”U46上に前記シリカ膜形成用塗液を塗布した。塗布後、80℃の乾燥機内で1分間乾燥させた。
[表面カチオン化処理例1]
上記のように作製したシリカアンダーコートに対して、4質量%の3−アミノプロピルトリエトキシシランを含む2−プロパノール溶液に1時間浸漬し、エタノールで洗浄した。80℃乾燥機内で2時間乾燥させたのち、0.1M塩酸に10分浸漬し、純水にて洗浄後、窒素ブローで乾燥し、基材の表面カチオン化処理を実施した。
[表面カチオン化処理例2]
上記のように作製したシリカアンダーコートに対して、2質量%のポリ(塩化ジアリルメチルアンモニウム)水溶液に10分浸漬し、純水で洗浄、窒素ブローで乾燥し、基材の表面カチオン化処理を実施した。
[表面カチオン化処理例3]
上記のように作製したシリカアンダーコートに対して、0.1M塩酸に1分浸漬し、純水で洗浄、窒素ブローで乾燥し、基材の表面カチオン化処理を実施した。
[基材表面処理例]
東レ(株)製“ルミラー” U46に、コロナ表面改質評価装置(春日電機株式会社,TEC−4AX)を用い、電極と透明基材間に1mmの距離を隔てた上で出力100W、速度6.0m/分で電極を移動させる操作を5回行った。この処理により基材表面の親水性が増し、水接触角が56°から43°に低下した。
[触媒調製例:マグネシアへの触媒金属塩の担持]
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業(株)製)2.46gをメタノール(関東化学(株)製)500mLに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業(株)製MJ−30)を100.0g加え、撹拌機で60分間、激しく撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮乾固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。得られた触媒体に含まれる鉄含有量は0.38質量%であった。また、かさ密度は、0.61g/mLであった。上記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
[カーボンナノチューブ集合体製造例:カーボンナノチューブ集合体の合成]
触媒調製例で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラーを用いて窒素ガスを16.5L/分で供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラーを用いてメタンガスを0.78L/分で60分間にわたり導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の質量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169分・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/秒であった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/分通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
[カーボンナノチューブ集合体の精製および酸化処理]
カーボンナノチューブ集合体製造例で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の質量は102.7gであった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.12質量%)。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥質量分に対して、約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業(株)製、1級、Assay60〜61質量%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ集合体を得た。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の質量は3.351gであった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.29質量%)。
[カーボンナノチューブ分散液の調製]
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ集合体(乾燥質量換算で25mg)、6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、セロゲン7A(重量平均分子量:19万))水溶液1.04g、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、トレセラム、ビーズサイズ:0.8mm)6.7gを容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)製)を用いてpH10に調整した。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、カーボンナノチューブペーストを調製した。
次にこのカーボンナノチューブペーストをカーボンナノチューブの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)製、VCX−130)の出力を20Wとし、1.5分間(1kW・分/g)、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分遠心処理し、カーボンナノチューブ分散液9gを得た。
[カーボンナノチューブ層の形成]
前記カーボンナノチューブ分散液にイオン交換水を添加して、0.03質量%〜0.04質量%に調整後、前記透明基材上にワイヤーバーを用いて塗布、80℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。光線透過率の調整は前記カーボンナノチューブ濃度とワイヤーバーの番手を調整して行った。
[オーバーコート処理例]
100mLポリ容器中に、エタノール20gを入れ、n−ブチルシリケート40gを添加し30分間撹拌した。その後、0.1N塩酸水溶液を10g添加した後2時間撹拌を行い4℃で12時間静置した。この溶液をトルエンとイソプロピルアルコールとメチルエチルケトンの混合液で固形分濃度が0.1質量%となるように希釈した。
この塗液をワイヤーバー#8を用いてカーボンナノチューブ層上に塗布後、125℃乾燥機内で1分間乾燥させた。
(実施例1)
[表面カチオン化処理例1]に従って、透明基材に表面カチオン化処理を施した。透明基材上にカーボンナノチューブ分散液を用いて、カーボンナノチューブ層を形成した。カーボンナノチューブ層上に[オーバーコート処理例]の手法でオーバーコートを設け、透明導電体を作製した。なお、「(3)カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値」を求めるために用いた2種の光吸収率のサンプルについて、オーバーコート処理前にバンドル径を測定したところ、いずれの光吸収率のサンプルについてもバンドル径の平均値は4.4nmであり、差が見られなかった。
(実施例2)
[表面カチオン化処理例2]に従って、透明基材に表面カチオン化処理を施した。透明基材上にカーボンナノチューブ分散液を用いて、カーボンナノチューブ層を形成した。カーボンナノチューブ層上に[オーバーコート処理例]の手法でオーバーコートを設け、透明導電体を作製した。なお、「(3)カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値」を求めるために用いた2種の光吸収率のサンプルについて、オーバーコート処理前にバンドル径を測定したところ、いずれの光吸収率のサンプルについてもバンドル径の平均値は4.2nmであり、差が見られなかった。
(実施例3)
[表面カチオン化処理例3]に従って、透明基材に表面カチオン化処理を施した。透明基材上にカーボンナノチューブ分散液を用いて、カーボンナノチューブ層を形成した。カーボンナノチューブ層上に[オーバーコート処理例]の手法でオーバーコートを設け、透明導電体を作製した。なお、「(3)カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値」を求めるために用いた2種の光吸収率のサンプルについて、オーバーコート処理前にバンドル径を測定したところ、いずれの光吸収率のサンプルについてもバンドル径の平均値は4.8nmであり、差が見られなかった。
(比較例1)
[基材表面処理例]に従って、透明基材に表面処理を施した。透明基材上にカーボンナノチューブ分散液を用いて、カーボンナノチューブ層を形成した。カーボンナノチューブ層上に[オーバーコート処理例]の手法でオーバーコートを設け、透明導電体を作製した。なお、「(3)カーボンナノチューブ層の光吸収率5%での表面抵抗値」を求めるために用いた2種の光吸収率のサンプルについて、オーバーコート処理前にバンドル径を測定したところ、いずれの光吸収率のサンプルについてもバンドル径の平均値は6.1nmであり、差が見られなかった。
Figure 2014029841
以上、実施例1、2、3および比較例1の、透明基材組成、基材上バンドル径、固体表面ゼータ電位、およびカーボンナノチューブ層光吸収率5%での表面抵抗値を表1に示す。
本発明の透明導電体は、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の電極として好ましく用いることができる。

Claims (4)

  1. 表面カチオン化処理が施された透明基材上に、0mV未満のゼータ電位を有するカーボンナノチューブ分散液を塗布する塗布工程と、前記透明基材上の前記カーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する乾燥工程とを有することを特徴とする透明導電体の製造方法。
  2. 前記透明基材に、表面カチオン化処理としてシランカップリング処理、カチオン性ポリマー処理および酸処理からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理が施されている、請求項1記載の透明導電体の製造方法。
  3. 前記透明基材が、−10〜+60mVの固体表面ゼータ電位を有する、請求項1または2に記載の透明導電体の製造方法。
  4. 前記カーボンナノチューブ分散液が、−70〜−40mVのゼータ電位を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電体の製造方法。
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