以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
(実施の形態1)
図1は、半導体ウェハWFのレイアウト構成を示す平面図である。図1に示すように、半導体ウェハWFは、略円盤形状をしており、内部領域に複数のチップ領域CRを有している。複数のチップ領域CRのそれぞれには、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子と配線を含む集積回路が形成されており、これらの複数のチップ領域CRは、スクライブ領域SCRによって区画されている。そして、半導体装置の製造工程では、スクライブ領域SCRに沿って、半導体ウェハWFをダイシングすることにより、複数のチップ領域CRを切断して、半導体ウェハWFから複数の半導体チップを取得することになる。
本実施の形態1における技術的思想は、半導体ウェハWFをダイシングする際に発生するおそれのあるクラックに起因して、半導体装置(半導体チップ)の信頼性が低下することを防止するために想到されたものである。以下では、まず、関連技術について説明するとともに、関連技術に存在する改善の余地について説明し、その後、関連技術を改善する工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。
<関連技術の説明>
図2は、図1に示す半導体ウェハWFの一部領域を拡大して示す図である。具体的に、図2は、図1の破線で囲まれた領域の拡大図を示している。図2においては、4つのチップ領域CRが示されており、これらの4つのチップ領域CRを区画するようにスクライブ領域SCRが形成されていることがわかる。そして、このスクライブ領域SCRに沿って、半導体ウェハWFをダイシングすることにより、図2に示す4つのチップ領域CRは、互いに独立した4つの半導体チップに個片化されることになる。
図3は、図2のA−A線で切断した断面図である。図3に示すように、チップ領域CRの外側にスクライブ領域SCRが形成されており、このチップ領域CRは、例えば、集積回路が形成された回路領域LRと、この回路領域LRの外側に形成されたリング領域RRを含むように構成されている。ここで、「外側」とは、境界線で区画される2領域のうち、個々のチップ領域CRの中心から離れている領域側を「外側」と定義し、個々のチップ領域CRの中心に近い領域側を「内側」と定義する。即ち、半導体チップのある断面において、半導体チップの切断面である半導体チップの外周に近い領域側を「外側」と定義し、半導体チップの外周から離れた領域側を「内側」と定義する。
図3に示す回路領域LRにおいては、半導体基板1Sにフィールド絶縁膜STIが形成されており、フィールド絶縁膜STIで区画されたアクティブ領域に、例えば、電界効果トランジスタTRが形成されている。そして、電界効果トランジスタTRを覆うように多層にわたる層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜には、電界効果トランジスタTRと接続されるプラグPLG1や、プラグPLG1と電気的に接続される配線WL1が形成されている。この配線WL1は、例えば、銅配線から構成され、層間絶縁膜に多層にわたって形成されている。最上層に形成された配線WL1上には、例えば、アルミニウム膜からなるパッドPDが形成されており、このパッドPDを覆うように表面保護膜PASが形成されている。そして、表面保護膜PASには、開口部が形成されており、この開口部からパッドPDの一部が露出している。露出しているパッドPDには、例えば、ワイヤボンディング工程において、金属線からなるワイヤが接続されることになる。
続いて、図3に示すリング領域RRにおいては、半導体基板1Sに接続するように、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、例えば、半導体基板1Sと接続するプラグPLG2と、プラグPLG2と接続される金属パターンMP1から構成されている。つまり、リング領域RRにおいても、半導体基板1S上に層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜にプラグPLG2および多層にわたる金属パターンMP1が形成され、積層方向に隣り合う金属パターンMP1同士はプラグで接続されている。
金属パターンMP1は、例えば、銅パターンから形成され、最上層の金属パターンMP1上には、例えば、アルミニウム膜からなる金属パターンAMPが形成されている。このように構成されているシールリングSRは、プラグPLG2、多層にわたる金属パターンMP1、金属パターン同士を繋ぐプラグ、および、金属パターンAMPからなり、一種の防護壁を構成している。したがって、リング領域RRの外部から浸入する水分は、防護壁として機能するシールリングSRによって、回路領域LRへの浸入が抑制される。すなわち、リング領域RRに形成されているシールリングSRは、外部から回路領域LRへの水分の浸入を防止する機能を有している。これにより、関連技術によれば、リング領域RRに形成されているシールリングSRによって、回路領域LRへの水分の浸入を抑制することができるので、半導体装置(半導体チップ)の信頼性を向上することができる。
さらに、関連技術においては、図3に示すように、シールリングSR上を含む層間絶縁膜上に表面保護膜PASが形成されており、この表面保護膜PASに層間絶縁膜に達する溝部DITが形成されている。すなわち、関連技術では、図3において、シールリングSRの外側に溝部DITが形成されている。そして、シールリングSRおよび溝部DITが形成されたリング領域RRの外側にスクライブ領域SCRが形成されている。
図3に示すスクライブ領域SCRにおいては、半導体基板1S上に層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜上に表面保護膜PASが形成されている。なお、スクライブ領域SCRには、例えば、TEGパターンが形成される場合がある。TEGパターンとは、素子レベルやIC(Integrated Circuit)レベルでの基本的な構造、物性、電気的特性、回路動作、信頼性、歩留りなどを評価するために作製された実験的サンプルからなるパターンを言う。ただし、本明細書では、スクライブ領域SCRに形成されるTEGパターンの図示は省略している。
関連技術は、上記のように構成されており、以下では、特に、リング領域RRに形成されている溝部DITの機能について説明する。図4は、半導体ウェハをダイシングする工程を模式的に示す断面図である。図4において、ダイシング工程では、スクライブ領域SCRをダイシングブレードDBによって切断する。
このとき、ダイシングブレードDBは、回転しながらスクライブ領域SCRを切断することになるが、回転するダイシングブレードDBが半導体ウェハに入るときには、半導体ウェハに下向きの力が加わり、回転するダイシングブレードDBが半導体ウェハから抜けるときには、半導体ウェハに上向きの力が加わる。
このため、ダイシングブレードDBで半導体ウェハのスクライブ領域SCRを切断する際、半導体ウェハに力が加わることから、半導体ウェハにクラックが入る可能性がある。
このようにして、スクライブ領域SCRにおいてクラックが発生すると、このクラックがスクライブ領域SCRからリング領域RRまで達し、リング領域RRに形成されているシールリングSRにまで達することが考えられる。この場合、シールリングSRが破壊される可能性があり、シールリングSRが破壊されると、回路領域LRへの水分浸入が防止できなくなる。この結果、回路領域LRに形成されている集積回路の不良を引き起こすことが懸念される。
そこで、関連技術においては、リング領域RR内に溝部DITを設けている。具体的には、リング領域RRに形成されているシールリングSRの外側に溝部DITを設けている。この場合、例えば、図4に示すように、ダイシング工程で発生するクラックCLK1は、溝部DITの底部を起点として、スクライブ領域SCR側へ延びるように形成されることになる。なぜなら、表面保護膜PASを除去することにより溝部DITが形成されているため、溝部DITにおいては、半導体ウェハの厚さが薄くなり、割れやすくなるからである。つまり、関連技術においては、表面保護膜PASに溝部DITを設けることにより、意図的に割れやすい部分を形成している。これにより、ダイシング工程で発生するクラックCLK1は、割れやすい溝部DITの底部を起点とする場合が多いと考えられ、この場合、図4に示すように、シールリングSRにはクラックCLK1が達しない。このことから、関連技術によれば、ダイシング工程で発生するクラックCLK1からシールリングSRを保護することができると考えられる。
ところが、本発明者が上述した関連技術を検討した結果、さらなる改善の余地が存在することが明らかとなった。以下では、関連技術に存在する改善の余地について説明する。
<関連技術に存在する改善の余地>
図5は、関連技術におけるダイシング工程での改善の余地を説明する断面図である。図5に示すように、例えば、スクライブ領域SCRをダイシングブレードDBで切断する際、半導体ウェハには力が加わることになる。このとき、関連技術においては、リング領域RRに形成されているシールリングSRの外側に溝部DITを設けている。
この場合、例えば、図5に示すように、ダイシング工程で発生するクラックCLK2は、意図的に割れやすいように形成した溝部DITの底部を起点として発生する場合が多いと考えられる。
ところが、溝部DITの底部を起点として発生したクラックCLK2は、リング領域RRの外側のスクライブ領域SCRに向かって進行する場合だけではなく、溝部DITの内側に配置されているシールリングSRに向かって進行する場合も考えられる。つまり、意図的に割れやすい溝部DITを設けても、この溝部DITの底部で発生したクラックCLK2の進行方向までは制御することができないのである。
したがって、例えば、図4に示すように、溝部DITの底部で発生したクラックCLK1がスクライブ領域SCRに向かって進行する場合は、シールリングSRにクラックCLK1が達することを防止できる。
一方、例えば、図5に示すように、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2がシールリングSRに向かって進行する場合は、シールリングSRにクラックCLK2が達して、シールリングSRが破壊される可能性がある。
さらには、ダイシング工程で半導体ウェハに加わる力(ストレス)が強すぎる場合には、例えば、図5に示すように、溝部DITの底部がクラックCLK3の発生の起点とならず、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となる場合がある。この場合、クラックCLK3がシールリングSRに向かって進行することになり、シールリングSRにクラックCLK3が達して、シールリングSRが破壊される可能性がある。
以上のことから、関連技術においては、ダイシング工程で発生したクラックが、リング領域RRに形成されているシールリングSRにまで達することを充分に防止することができず、この結果、シールリングSRがクラックで破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができないという改善の余地が存在する。すなわち、関連技術では、半導体装置の信頼性を向上する観点から、改善の余地が存在するのである。
ここで、例えば、図5において、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくすることが考えられる。なぜなら、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくすることにより、溝部DITを起点としてクラックCLK2が発生し、このクラックCLK2がシールリングSRに向かって進行する場合であっても、クラックCLK2がシールリングSRにまで達する可能性を低くすることができるからである。
さらに、例えば、図5に示すように、溝部DITの底部がクラックCLK3の発生の起点とならず、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となる場合でも、クラックCLK3の起点からシールリングSRまでの距離が大きくなるため、クラックCLK3がシールリングSRにまで達する可能性を低くすることができると考えられる。
しかし、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくするということは、リング領域RRのサイズを大きくすることを意味し、リング領域RRは、チップ領域CRの一部を構成していることから、リング領域RRが大きくなることは、チップ領域CRが大きくなることを意味する。このことから、1枚の半導体ウェハから取得される半導体チップの数が減少することになり、これによって、半導体装置の製造コストが上昇することになる。
このように、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくする構成は、クラックCLK2およびクラックCLK3がシールリングSRにまで達する可能性を低くできる観点から有用な構成と考えられる。ただし、クラックCLK2およびクラックCLK3のサイズが大きくなる場合には、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくしても、シールリングSRが破壊されるポテンシャルが存在することになり、確実にシールリングSRの破壊を防止する観点から、充分な対策ということはできないと考えられる。さらには、上述したように、シールリングSRと溝部DITとの間の距離L1を大きくする構成を採用すると、必然的に、リング領域RRを含むチップ領域CRのサイズの増大を招くことになり、半導体装置の製造コストを削減する観点からも、有効な対策ということができないと考えられる。
また、ダイシング工程においては、例えば、図4や図5に示すように、ダイシングブレードDBを使用して半導体ウェハを切断する方法の他に、例えば、図6に示すように、スクライブ領域SCRにレーザ光LARを照射することにより、半導体ウェハを切断する技術(レーザダイシング)も存在する。
図6は、レーザ光LARを半導体ウェハのスクライブ領域SCRに照射することにより、スクライブ領域SCRを切断するダイシング工程での改善の余地を示す断面図である。図6において、レーザダイシングと呼ばれる技術は、半導体ウェハにレーザ光LARを照射して、照射領域を加熱することにより、半導体ウェハの照射領域を燃焼させて切断する技術である。この場合、レーザ光LARを照射した領域だけでなく、照射領域の周辺領域も加熱されるため、この周辺領域においても、膜が燃焼し消失することになる。このとき、半導体ウェハに形成された膜の種類や加熱分布に起因して、膜の燃えやすさが相違する。このことから、例えば、図6に示すように、レーザダイシングによる切断面は、半導体ウェハに形成された膜の燃えやすさの相違に起因して凹凸形状となりやすい。この結果、凹凸形状をした切断面からは、異物(ゴミ)が発生しやすくなる。
特に、近年では、層間絶縁膜の寄生容量を低減するため、層間絶縁膜に、例えば、SiOC膜に代表される酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜が使用されることがある。例えば、SiOC膜の場合、膜中に炭素を含むため、燃えやすくなっている。したがって、層間絶縁膜の一部に低誘電率膜を使用している場合には、半導体ウェハ上に形成されている膜の燃えやすさに顕著な相違が見られ、これによって、レーザダイシングによる切断面の凹凸が顕著になると考えられる。
以上のことから、関連技術には、ダイシング工程を経て取得される半導体チップの信頼性を向上する観点から、半導体チップおよび半導体ウェハの構造に関して、改善の余地が存在することがわかる。そこで、本実施の形態1では、上述した関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
<実施の形態1における半導体装置の構成>
図7は、図1に示す半導体ウェハWFの一部領域を拡大して示す図である。具体的に、図7は、図1の破線で囲まれた領域の拡大図を示している。図7においては、4つのチップ領域CRが示されており、これらの4つのチップ領域CRを区画するようにスクライブ領域SCRが形成されていることがわかる。そして、このスクライブ領域SCRに沿って、半導体ウェハWFをダイシングすることにより、図7に示す4つのチップ領域CRは、互いに独立した4つの半導体チップに個片化されることになる。
図8は、図7に示す領域ARを拡大して示す平面図であり、チップ領域CRの角部CNR近傍の平面レイアウト構成を示す図である。図8に示すように、角部CNRを有するチップ領域CRには、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、角部CNR以外の領域においては、チップ領域CRの外周線に沿って延在するように配置され、角部CNRにおいては、角部CNRから離間するように配置されている。すなわち、シールリングSRは、図8に示すように、角部CNR以外の領域におけるチップ領域CRの外周線とシールリングSRの間の距離よりも、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が大きくなるように配置されている。
ここで、本明細書では、角部CNRにおけるシールリングSRの配置構成を傾斜パターンと呼ぶことにする。チップ領域CRの角部CNRにおいて、シールリングSRが傾斜パターンをしている理由を以下に述べる。すなわち、チップ領域CRの角部CNRにおいては、角部CNR以外の外周領域に比べて、クラックが発生しやすい。特に、角部CNRからチップ領域CRの内部に向かうクラックが発生しやすい。この場合、例えば、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が小さいと、角部CNRで発生したクラックが容易にシールリングSRに到達する。この結果、シールリングSRがクラックで破壊され、シールリングSRが水分防護壁としての機能を果たさなくなってしまう。これにより、シールリングSRの内側領域である回路領域にまで水分が浸入することになり、回路領域に形成されている集積回路の動作信頼性に悪影響を及ぼすことになる。
このことから、本実施の形態1では、チップ領域CRの角部CNRにおいて、シールリングSRが傾斜パターンを有するように構成している。この場合、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が大きくなるため、角部CNRにおいてクラックが発生し、このクラックがチップ領域CRの内部方向に進行しても、シールリングSRにまで到達することを抑制できる。この結果、クラックが発生しやすい角部CNRにおいて、たとえ、クラックが発生しても、シールリングSRがクラックによって破壊されるポテンシャルを低減することができる。すなわち、角部CNRにおいてクラックが発生しても、シールリングSRの水分防護壁としての機能を維持できるため、シールリングSRの内側領域である回路領域にまで水分が浸入することを防止できる。これにより、回路領域に形成されている集積回路の動作信頼性を向上することができる。
続いて、本実施の形態1では、チップ領域CRの外周線に沿って、溝部(スリット)DITが配置されている。具体的には、図8に示すように、角部CNRを含むチップ領域CRの外周線に沿って、溝部DITが延在している。このとき、溝部DITは、平面視において、シールリングSRの外側に配置されている。つまり、溝部DITは、平面視において、チップ領域CRの外周線と、シールリングSRに挟まれるように配置されている。
そして、本実施の形態1では、平面視において、溝部DITとシールリングSRの間にアウターリングOUR1が設けられており、このアウターリングOUR1もチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。さらに、本実施の形態1においては、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2が設けられており、このアウターリングOUR2もチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。特に、アウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なるように配置されている。
ここで、図8に示すように、シールリングSRの幅W1は、アウターリングOUR1の幅W2、および、アウターリングOUR2の幅W3よりも大きく、アウターリングOUR1の幅W2と、アウターリングOUR2の幅W3は同じ幅となっている。言い換えれば、アウターリングOUR1の幅W2、および、アウターリングOUR2の幅W3は、シールリングSRの幅W1よりも小さくなっている。本実施の形態1においては、アウターリングOUR1の幅W2と、アウターリングOUR2の幅W3は同じ幅としているが、シールリングSRの幅W1よりも小さい幅であれば、アウターリングOUR1の幅W2と、アウターリングOUR2の幅W3は、適宜、最適な幅を選択することができる。
また、角部CNR以外の領域において、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1は、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2よりも大きくなっている。言い換えれば、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2は、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1よりも小さくなっている。
同様に、角部CNRにおいても、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離Y1は、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離Y2よりも大きくなっている。言い換えれば、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離Y2は、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離Y1よりも小さくなっている。
このとき、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1や距離Y1は、シールリングSRの外周線とアウターリングOUR1の内周線の間の距離であり、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2や距離Y2は、アウターリングOUR1の外周線とアウターリングOUR2の内周線の間の距離である。
次に、図9は、図7のA−A線で切断した断面図である。図9に示すように、チップ領域CRの外側領域にスクライブ領域SCRが形成されており、このチップ領域CRは、例えば、集積回路が形成された回路領域LRと、この回路領域LRの外側に形成されたリング領域RRを含むように構成されている。
図9に示す回路領域LRにおいては、半導体基板1Sにフィールド絶縁膜STIが形成されており、フィールド絶縁膜STIで区画されたアクティブ領域に、例えば、電界効果トランジスタTRが形成されている。そして、電界効果トランジスタTRを覆うように多層にわたる層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜には、電界効果トランジスタTRと接続されるプラグPLG1や、プラグPLG1と電気的に接続される配線WL1が形成されている。この配線WL1は、例えば、銅配線から構成され、層間絶縁膜に多層にわたって形成されている。最上層に形成された配線WL1上には、例えば、アルミニウム膜からなるパッドPDが形成されており、このパッドPDを覆うように表面保護膜PASが形成されている。そして、表面保護膜PASには、開口部が形成されており、この開口部からパッドPDの一部が露出している。露出しているパッドPDには、例えば、ワイヤボンディング工程において、金属線からなるワイヤが接続されることになる。
続いて、図9に示すリング領域RRにおいては、半導体基板1Sに接続するように、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、例えば、半導体基板1Sと接続するプラグPLG2と、プラグPLG2と接続される金属パターンMP1から構成されている。つまり、リング領域RRにおいても、半導体基板1S上に層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜にプラグPLG2および多層にわたる金属パターンMP1が形成され、積層方向に隣り合う金属パターンMP1同士はプラグで接続されている。
金属パターンMP1は、例えば、銅パターンから形成され、最上層の金属パターンMP1上には、例えば、アルミニウム膜からなる金属パターンAMPが形成されている。このように構成されているシールリングSRは、プラグPLG2、多層にわたる金属パターンMP1、金属パターン同士を繋ぐプラグ、および、金属パターンAMPからなり、一種の防護壁を構成している。したがって、リング領域RRの外部から浸入する水分は、防護壁として機能するシールリングSRによって、回路領域LRへの浸入が抑制される。すなわち、リング領域RRに形成されているシールリングSRは、外部から回路領域LRへの水分の浸入を防止する機能を有している。これにより、本実施の形態1によれば、リング領域RRに形成されているシールリングSRによって、回路領域LRへの水分の浸入を抑制することができるので、半導体装置(半導体チップ)の信頼性を向上することができる。
さらに、本実施の形態1においては、図9に示すように、シールリングSR上を含む層間絶縁膜上に表面保護膜PASが形成されており、この表面保護膜PASに層間絶縁膜に達する溝部DITが形成されている。すなわち、本実施の形態1では、半導体基板1Sの主面側の上方から見た平面視において、シールリングSRの外側に溝部DITが形成されている(図8参照)。
また、本実施の形態1においては、図9に示すように、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1が形成されており、このアウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2が形成されている。詳細には、半導体基板1Sの主面側の上方から見た平面視において、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1が配置されており、溝部DITと重なるように、アウターリングOUR2が配置されている(図8参照)。このアウターリングOUR1、および、アウターリングOUR2は、図9に示すように、フィールド絶縁膜STIの上方に配置されており、かつ、フィールド絶縁膜STIとは離間して配置されている。即ち、アウターリングOUR1及びアウターリングOUR2は、フィールド絶縁膜STIとはプラグで接続されていない。
そして、アウターリングOUR1は、金属パターンMP2から構成されている。すなわち、半導体基板1Sにフィールド絶縁膜STIが形成されており、このフィールド絶縁膜STI上に層間絶縁膜が形成されている。そして、この層間絶縁膜に多層にわたる金属パターンMP2が形成され、積層方向に隣り合う金属パターンMP2同士はプラグで接続されている。同様に、アウターリングOUR2は、金属パターンMP3から構成されている。すなわち、半導体基板1Sにフィールド絶縁膜STIが形成されており、このフィールド絶縁膜STI上に層間絶縁膜が形成されている。そして、この層間絶縁膜に多層にわたる金属パターンMP3が形成され、積層方向に隣り合う金属パターンMP3同士はプラグで接続されている。このように、アウターリングOUR1は、平面視において重なるように積層配置された複数の金属パターンMP2と、積層方向に隣り合う金属パターンMP2同士を互いに接続する複数のプラグと、を含む積層構造体から構成されることになる。同様に、アウターリングOUR2は、平面視において重なるように積層配置された複数の金属パターンMP3と、積層方向に隣り合う金属パターンMP3同士を互いに接続する複数のプラグと、を含む積層構造体から構成されることになる。
次に、図9に示すように、シールリングSR、溝部DIT、アウターリングOUR1、および、アウターリングOUR2が形成されたリング領域RRの外側にスクライブ領域SCRが形成されている。
図9に示すスクライブ領域SCRにおいては、半導体基板1S上にフィールド絶縁膜STIが形成されており、このフィールド絶縁膜STI上に層間絶縁膜が形成されている。この層間絶縁膜上に表面保護膜PASが形成されている。なお、スクライブ領域SCRには、例えば、TEGパターンが形成される場合があるが、本実施の形態1では、TEGパターンの図示は省略している。
<実施の形態1における特徴>
本実施の形態1における半導体ウェハ(半導体装置)は上記のように構成されており、以下に、その特徴点について説明する。本実施の形態1の第1特徴点は、リング領域RRにおいて、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1を設け、このアウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2を設ける点にある。
これにより、例えば、リング領域RRの外側にあるスクライブ領域SCRをダイシングブレードで切断する際、クラックがリング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できる。つまり、本実施の形態1では、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けているため、クラックは、シールリングSRに達する前に、アウターリングOUR1やアウターリングOUR2に達して、そこで停止することになる。この結果、本実施の形態1によれば、ダイシング工程で発生するクラックが、リング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できるのである。
以下に、このことについて詳細に説明する。図10は、本実施の形態1における半導体ウェハをダイシングする工程を示す断面図である。図10においては、スクライブ領域SCRを回転するダイシングブレードDBによって切断する状態が示されている。
図10において、例えば、スクライブ領域SCRをダイシングブレードDBで切断する際、半導体ウェハには力が加わることになる。このとき、本実施の形態1における半導体ウェハにおいては、リング領域RRに形成されているシールリングSRの外側に溝部DITを設けている。この場合、例えば、図10に示すように、ダイシング工程で発生するクラックCLK2は、意図的に割れやすいように形成した溝部DITの底部を起点として発生することが多いと考えられる。
ただし、溝部DITの底部を起点として発生したクラックCLK2は、リング領域RRの外側のスクライブ領域SCRに向かって進行する場合だけではなく、溝部DITの内側に配置されているシールリングSRに向かって進行する場合も考えられる。つまり、意図的に割れやすい溝部DITを設けても、この溝部DITの底部で発生したクラックCLK2の進行方向までは制御することができないのである。この結果、図10に示すように、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2が、シールリングSRに向かって進行する場合が考えられる。
この点に関し、本実施の形態1では、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1を設けている。このため、たとえ、図10に示すように、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2が、シールリングSRに向かって進行する場合であっても、クラックCLK2は、シールリングSRに達する前に必然的に、アウターリングOUR1に達することになる。すなわち、本実施の形態1では、溝部DITよりもシールリングSR側の内側領域にアウターリングOUR1を設けている。これにより、クラックCLK2の進行は、アウターリングOUR1に到達した段階で停止することになる。
つまり、本実施の形態1によれば、意図的に割れやすいように形成した溝部DITの底部を起点としたクラックCLK2が、シールリングSR側に進行する場合であっても、シールリングSRに到達する前に、障壁となるアウターリングOUR1で停止する。このため、クラックCLK2によるシールリングSRの破壊を防止することができる。
したがって、本実施の形態1によれば、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1を設けることにより、クラックCLK2に起因するシールリングSRの破壊を効果的に防止することができる。この結果、本実施の形態1によれば、シールリングSRがクラックCLK2で破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができ、これによって、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
このように本実施の形態1では、シールリングSRの外側であって、溝部DITの内側にアウターリングOUR1を設ける点に特徴がある。例えば、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1を設けても、このアウターリングOUR1が溝部DITよりも外側に形成されている場合には、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックCLK2に対して、アウターリングOUR1は、何らの障壁にもならないのである。これに対し、本実施の形態1のように、アウターリングOUR1がシールリングSRの外側であって、かつ、溝部DITの内側に形成されてこそ、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックCLK2に対して、アウターリングOUR1が、シールリングSRへのクラックCLK2の進行を停止させる障壁として機能するのである。すなわち、シールリングSRの外側で、かつ、溝部DITの内側にアウターリングOUR1を設けることによって、初めて、シールリングSRへのクラックCLK2の到達に起因するシールリングSRの破壊を防止することができるのである。
続いて、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側であって、平面視において、溝部DITと重なるように、アウターリングOUR2を設けている。これにより、以下に示す利点も得られる。すなわち、ダイシング工程で半導体ウェハに加わる力(ストレス)が強すぎる場合には、例えば、図10に示すように、溝部DITの底部がクラックCLK3の発生の起点とならず、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となる場合がある。この場合、クラックCLK3がシールリングSRに向かって進行することになり、シールリングSRにクラックCLK3が達すると、シールリングSRが破壊される可能性がある。
この点に関し、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2を設けている。このため、たとえ、図10に示すように、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となるクラックCLK3が発生した場合であっても、クラックCLK3は、シールリングSRに達する前に必然的に、アウターリングOUR2に達することになる。すなわち、本実施の形態1では、シールリングよりも外側にアウターリングOUR2を設けている。これにより、クラックCLK3の進行は、アウターリングOUR2に到達した段階で停止することになる。
したがって、本実施の形態1によれば、シールリングSRの外側にアウターリングOUR2を設けることにより、クラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊を効果的に防止することができる。この結果、本実施の形態1によれば、シールリングSRがクラックCLK3で破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができ、これによって、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
ここで、シールリングSRの外側で、かつ、溝部DITの内側に、アウターリングOUR1を設けている主な理由は、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックCLK2がシールリングSRにまで到達することを防止するためである。さらに、このアウターリングOUR1には、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となるクラックCLK3が発生した場合であっても、このクラックCLK3のシールリングSR側への進行を防止する機能も有していると考えられる。つまり、アウターリングOUR1を設ければ、アウターリングOUR2を設ける必要性はないのではないかと考えることができる。
しかし、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2を設けている。以下に、この理由について説明する。例えば、ダイシング工程で半導体ウェハに加わる力(ストレス)が強すぎる場合には、溝部DITの底部がクラックCLK3の発生の起点とならず、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となる場合がある。すなわち、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となって発生するクラックCLK3は、強いストレス(力)に起因することが多いと考えられる。この場合、クラックCLK3は、大きくなり、アウターリングOUR1を設けただけの構成だけでは、大きなクラックCLK3がアウターリングOUR1を突き破り、アウターリングOUR1の内側にあるシールリングSRにまで達して、シールリングSRを破壊する可能性が高まる。
そこで、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2を設けているのである。この場合、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となって発生するクラックCLK3は、まず、スクライブ領域SCRからリング領域RRに進行して、アウターリングOUR2に達する。この段階で、クラックCLK3が停止すればよいが、クラックCLK3の大きさによっては、アウターリングOUR2を突き破ることが想定される。しかし、本実施の形態1では、アウターリングOUR2の内側にアウターリングOUR1が設けられている。この結果、本実施の形態1によれば、たとえ、クラックCLK3が、アウターリングOUR2を突き破ったとしても、アウターリングOUR2の内側に配置されているアウターリングOUR1に到達して、アウターリングOUR1で停止することになると考えられる。すなわち、本実施の形態1では、比較的強いストレスで発生するクラックCLK3を、第1の障壁であるアウターリングOUR2と、第2の障壁であるアウターリングOUR1のいずれかで停止させるように構成されているのである。つまり、本実施の形態1では、比較的強いストレスで発生するクラックCLK3であっても、アウターリングOUR2とアウターリングOUR1の2重の障壁構造によって、アウターリングOUR1の内側に形成されているシールリングSRにまで到達しにくくなるように構成されているのである。このことから、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2を設ける構成は、比較的強いストレスで発生するクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊を防止する観点から有用な構成である。
上述した理由から、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側に、アウターリングOUR2を設けている。そして、このアウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なるように配置されている。
以下に、この理由について説明する。例えば、溝部DITの外側にアウターリングOUR2を配置する場合には、リング領域RRにおいて、溝部DITの外側にアウターリングOUR2を配置するスペースを確保する必要がある。このことは、リング領域RRの幅が大きくなることを意味し、リング領域RRを含むチップ領域CRのサイズが増大することになってしまう。そこで、本実施の形態1では、リング領域RRのサイズを小さくするため、溝部DITと平面視において重なる領域にアウターリングOUR2を設けているのである。この場合、アウターリングOUR2を設けることによるリング領域RRのサイズの増大を抑制することができるのである。
一方、アウターリングOUR1とともに、アウターリングOUR2も溝部DITの内側に配置することも考えられる。つまり、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1とアウターリングOUR2を設けることが考えられる。この場合、アウターリングOUR2と、スクライブ領域SCRとリング領域RRの間の境界線との間の距離が大きくなってしまう。この結果、例えば,図10に示すように、ダイシングブレードDBと半導体ウェハの接触領域が起点となって発生するクラックCLK3の進行は、アウターリングOUR2で停止することになるが、上述した境界線とアウターリングOUR2の間の距離が大きくなると、ダイシング工程により、チップ領域CRが半導体チップに個片化された後も、半導体チップ内(リング領域RR内)にクラックCLK3の一部が残存することになる。半導体チップは、その後の工程においてパッケージングされるが、パッケージング工程に加わる熱負荷や応力によって、残存するクラックCLK3が成長し、最終的には、シールリングSRにまで到達してしまいシールリングSRを破壊することも考えられる。したがって、半導体チップ内に残存するクラックCLK3は、なるべく小さいことが望ましいのである。このことから、アウターリングOUR2は、上述した境界線になるべく近く配置することが有用である。なぜなら、上述した境界線とアウターリングOUR2の間の距離が小さくなればなるほど、個片化された半導体チップ内(リング領域内)に残存するクラックCLK3のサイズが小さくなるとともに、残存するクラックCLK3とシールリングSRとの間の距離も大きくなる。この結果、その後のパッケージング工程における熱負荷や熱応力が加わったとしても、成長したクラックCLK3が、シールリングSRに到達する可能性を低くすることができるからである。このため、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側に、アウターリングOUR2を設け、かつ、このアウターリングOUR2を、平面視において、溝部DITと重なるように配置しているのである。
以上のことから、本実施の形態1では、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1を設けることにより、クラックCLK2に起因するシールリングSRの破壊を効果的に防止することができる。さらに、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の外側に、アウターリングOUR2を設け、かつ、このアウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なるように配置されている。これにより、本実施の形態1によれば、比較的強いストレスで発生するクラックCLK3が、第1の障壁であるアウターリングOUR2と、第2の障壁であるアウターリングOUR1のいずれかで停止する可能性を大きくすることができる。このことから、本実施の形態1によれば、比較的強いストレスで発生するクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊も防止することができる。この結果、本実施の形態1では、シールリングSRがクラックCLK2やクラックCLK3で破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができ、これによって、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
さらに、本実施の形態1によれば、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊を防止しながら、リング領域RRを含むチップ領域CRのサイズを小さくすることができる。例えば、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けない構成の場合には、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックCLK2に起因するシールリングSRの破壊を防止するため、図10に示す距離L1を大きくする必要がある。このことは、リング領域RRのサイズを大きくすることを意味し、リング領域RRは、チップ領域CRの一部を構成することから、最終的に、チップ領域CRのサイズが大きくなってしまう。この結果、1枚の半導体ウェハから取得される半導体チップの数が減少することになり、これによって、半導体装置の製造コストが上昇することが懸念される。
これに対し、本実施の形態1では、図10に示すように、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1を設け、かつ、アウターリングOUR1の外側であって、溝部DITと平面的に重なるようにアウターリングOUR2を設けている。このアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、クラックCLK2およびクラックCLK3の進行を停止して、クラックCLK2およびクラックCLK3がシールリングSRにまで達して、シールリングSRが破壊されることを防止する機能を有している。すなわち、シールリングSRの破壊を効果的に防止する観点からは、シールリングSRと溝部DITの間の距離L1を大きく確保することが望ましいが、本実施の形態1では、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けているため、図10に示す距離L1を小さくしても、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊を充分に防止することができるのである。
つまり、本実施の形態1と関連技術において、シールリングSRが破壊される確率を同じにする場合には、本実施の形態1における半導体ウェハ(あるいは半導体装置)では、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設ける構成を採用しているため、本実施の形態1では、関連技術に比べて、上述した距離L1を小さくすることができるのである。このことは、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因するシールリングの破壊を効果的に防止しながら、リング領域RRのサイズを小さくできることを意味し、最終的に、チップ領域CRのサイズを小さくできることを意味する。この結果、本実施の形態1によれば、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊を防止しながら、かつ、1枚の半導体ウェハに形成できるチップ領域CRの数を増加させることができることになる。すなわち、本実施の形態1における技術的思想によれば、半導体ウェハおよび半導体装置の信頼性を向上しながら、半導体装置の製造コストを低減できるという顕著な効果を得ることができるのである。
逆の見方をすれば、本実施の形態1において、シールリングSRと溝部DITの間の距離L1を関連技術と同程度の長さに維持する場合には、距離L1が大きくなる効果と、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2による障壁効果の相乗効果によって、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因してシールリングSRが破壊される確率を大幅に低減することができる。
以上のことから、本実施の形態1における技術的思想によれば、シールリングSRの破壊確率を低減するとともに、半導体装置の製造コストを低減する観点を優先する観点からは、シールリングSRと溝部DITの間の距離L1を関連技術よりも小さくする構成を採用することができる。一方、クラックCLK2およびクラックCLK3に起因するシールリングSRの破壊確率を大幅に低減して、半導体装置のさらなる信頼性向上を優先する観点からは、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設ける一方、シールリングSRと溝部DITの間の距離L1を関連技術と同程度に設定する構成を採用することができる。このように、本実施の形態1における技術的思想は、目的に応じた設計自由度の向上も図ることができるという顕著な効果が得られる。
なお、本実施の形態1において、シールリングSRと、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、ともに防護壁として機能する積層構造体から構成される点で共通する。ただし、シールリングSRと、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2とにおいては、そもそも、機能が相違する。
すなわち、シールリングSRは、リング領域RRの内側に存在する回路領域LRに水分が浸入することを防止する防護壁としての機能を有する。したがって、水分の浸入を効果的に防止する観点から、クラックCLK2およびクラックCLK3によるシールリングSRの破壊を防止することが必要である。つまり、シールリングSRは、破壊されないことを前提として設けられる構成要素である。なぜなら、シールリングSRが破壊されると、リング領域RRから回路領域LRへの水分の浸入を防止することができなくなり、これによって、回路領域LRに形成されている集積回路の動作信頼性に悪影響を及ぼし、最終的には、半導体装置の信頼性の低下を招くことになるからである。
これに対し、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、クラックCLK2およびクラックCLK3の進行を停止させる機能を有する。したがって、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、クラックCLK2およびクラックCLK3の進行を停止させることができれば、アウターリングOUR1自体およびアウターリングOUR2自体が破壊されても構わないのである。なぜなら、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2で、クラックCLK2およびクラックCLK3の進行が停止できれば、アウターリングOUR1の内側に配置されているシールリングSRにまで、クラックCLK2およびクラックCLK3が到達することはなくなり、シールリングSRの破壊が防止されるからである。
このことから、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、破壊されても構わない構成要素である点で、破壊されないことを前提とするシールリングSRと相違することになる。以上のように、シールリングSRと、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、同じ積層構造体からなる構成をしている一方、上述した機能の相違から、さらなるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2に特有の特徴がある。以下に、この特徴点について説明する。
本実施の形態1における第2特徴点は、アウターリングOUR1の上面の高さが、アウターリングOUR2の上面の高さよりも高く構成されている点である。具体的に、図10に示すように、例えば、アウターリングOUR1は、平面視において重なる第1層の金属パターンMP2〜第6層の金属パターンMP2と、積層方向において互いに隣り合う金属パターンMP2を接続するプラグとを含む積層構造体から構成されている。一方、アウターリングOUR2は、平面視において重なる第1層の金属パターンMP3〜第5層の金属パターンMP3と、積層方向において互いに隣り合う金属パターンMP3を接続するプラグとを含む積層構造体から構成されている。したがって、アウターリングOUR1の上面は、第6層の金属パターンMP2の上面であり、アウターリングOUR2の上面は、第5層の金属パターンMP3の上面であることから、アウターリングOUR1の高さは、アウターリングOUR2の高さよりも高くなる。
ここで、アウターリングOUR1の上面の高さを高くする理由について説明する。例えば、図10において、表面保護膜PASには、溝部DITが形成されており、この溝部DITの底部が起点となってクラックCLK2が発生する。このとき、アウターリングOUR1の上面の高さが低く構成されている場合には、アウターリングOUR1の上方を、クラックCLK2が通過し、このクラックCLK2がシールリングSRにまで到達する可能性が高まる。すなわち、アウターリングOUR1の上面の高さが低い場合には、溝部DITとアウターリングOUR1の上面の間の隙間が大きくなり、この隙間をクラックCLK2が通過しやすくなる。言い換えれば、アウターリングOUR1の上面の高さが低くなると、アウターリングOUR1が,溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側にクラックCLK2が進行しやすくなるのである。つまり、アウターリングOUR1の上面の高さが低い場合には、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2のシールリングSR側への進行を防止する効果が薄まるのである。
そこで、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の上面の高さを高くしているのである。すなわち、アウターリングOUR1の上面を第6層の金属パターンMP2の上面とすることにより、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2のシールリングSR側への進行を効果的に防止することができるのである。
なお、ここで考えられることは、アウターリングOUR1の上面を高くするのであれば、第6層の金属パターンMP2だけでなく、金属パターンAMPと同層の金属パターンも含むようにアウターリングOUR1を構成することが考えられる。しかし、本実施の形態1では、シールリングSRの最上層に形成されている金属パターンAMPと同層の金属パターンを含むようにアウターリングOUR1を構成してはいない。
これは、以下に示す理由による。すなわち、例えば、第2層の金属パターンMP2〜第6層の金属パターンMP2は、ダマシン法により形成された微細な銅パターンから構成されている。一方、シールリングSRの最上層に形成されている金属パターンAMPは、アルミニウム膜をパターニングすることにより形成される。そして、シールリングSRの最上層に形成されている金属パターンAMPと同層には、回路領域LRに形成されるパッドPDなどや電源配線など比較的サイズの大きなラフパターンで形成される配線が形成される。したがって、シールリングSRの最上層に形成されるアルミニウム膜のパターニングは、ダマシン法で下層に形成される微細な銅パターンよりも緩やかな精度で実施される。つまり、シールリングSRの最上層に形成される金属パターンAMPのサイズは、下層に形成される銅パターンのサイズよりも遥かに大きくなっている。
このことから、例えば、金属パターンAMPと同層の金属パターンも含むようにアウターリングOUR1を構成する場合には、アウターリングOUR1の最上層の金属パターンの幅も、第1層の金属パターンMP2〜第6層の金属パターンMP2の幅よりも遥かに大きくなるのである。
このことは、アウターリングOUR1の幅が大きくなることを意味し、これによって、図10に示すシールリングSRと溝部DITの間の距離L1が大きくなることを意味する。この結果、リング領域RRのサイズが大きくなり、リング領域RRは、チップ領域CRの一部を構成することから、最終的に、チップ領域CRのサイズが大きくなってしまう。これにより、1枚の半導体ウェハから取得される半導体チップの数が減少することになり、これによって、半導体装置の製造コストが上昇することが懸念される。したがって、本実施の形態1では、リング領域RRのサイズの増大を抑制する観点から、シールリングSRの最上層に形成されている金属パターンAMPと同層の金属パターンを含むようにアウターリングOUR1を構成していないのである。
以上のことから、本実施の形態1においては、溝部DITの底部で発生したクラックCLK2のシールリングSR側への進行を充分に防止しつつ、リング領域RRのサイズの増大を抑制する構成を採用している。具体的に、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1は、例えば、図10に示すように、平面視において重なる第1層の金属パターンMP2〜第6層の金属パターンMP2と、積層方向において互いに隣り合う金属パターンMP2を接続するプラグとを含む積層構造体から構成している。言い換えれば、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1は、表面保護膜PASと直接接触しないように構成されていることになる。
続いて、本実施の形態1では、アウターリングOUR2の上面の高さを、アウターリングOUR1の上面の高さよりも低くしている。以下に、この理由について説明する。例えば、アウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なるように配置されている(図8参照)。このため、例えば、図10において、アウターリングOUR2の上面の高さを高くすると、溝部DITの底面からアウターリングOUR2の上面が露出することが考えられる。この場合、溝部DITとアウターリングOUR2が直接接触することになる。
ここで、溝部DITは、ダイシング工程の際、溝部DITの底部を起点としたクラックCLK2が発生しやすいようにする目的で設けられている。
ところが、アウターリングOUR2の上面の高さが高くなって、溝部DITの底部からアウターリングOUR2の上面が露出するように構成すると、溝部DITの底部をクラックCLK2の発生する起点とすることができないのである。つまり、溝部DITの底部をクラックCLK2の起点とするためには、溝部DITの底部と、アウターリングOUR2の上面とが離間しており、この離間領域に層間絶縁膜が介在している必要があるのである。言い換えれば、溝部DITをクラックCLK2の起点とするためには、溝部DITの底部からアウターリングOUR2の上面が露出しないように構成することが必要なのである。
特に、溝部DITの底面と、アウターリングOUR2の上面との離間距離は、例えば、100nm程度は必要とされる。このことから、本実施の形態1におけるアウターリングOUR2は、例えば、図10に示すように、平面視において重なる第1層の金属パターンMP3〜第5層の金属パターンMP3と、積層方向において互いに隣り合う金属パターンMP3を接続するプラグとを含む積層構造体から構成している。この結果、本実施の形態1におけるアウターリングOUR2の上面の高さは、アウターリングOUR1の上面の高さよりも低くなる。
次に、本実施の形態1における第3特徴点は、例えば、図10に示すように、リング領域RRにおいて、シールリングSRは半導体基板1Sと接続するように構成されているのに対し、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、半導体基板1Sに形成されたフィールド絶縁膜STIの上方に配置され、かつ、フィールド絶縁膜STIとは離間して配置されている点にある。
具体的に、シールリングSRには、プラグPLG2が含まれ、このプラグPLG2によって、シールリングSRと半導体基板1Sが接続されている。このようにシールリングSRと半導体基板1SとをプラグPLG2で接続する理由について説明する。すなわち、シールリングSRは、回路領域LRへの水分の浸入を防止する機能を有している。したがって、シールリングSRは、水分の浸入する隙間のない防護壁として構成されることが必要とされる。このことから、シールリングSRには、プラグPLG2が含まれ、このプラグPLG2によって半導体基板1Sと接続するように構成している。これにより、半導体基板1Sの表面からの水分の浸入は、シールリングSRの一部を構成するプラグPLG2で遮断されることになる。以上のことから、本実施の形態1におけるシールリングSRは、回路領域LRへの水分の浸入を効果的に防止する観点から、半導体基板1Sと接続されるように構成されている。このとき、例えば、シールリングSRとプラグPLG2を介して接続される半導体基板1Sの半導体領域には、基準電位が供給されている場合があり、この場合、シールリングSRには、基準電位が印加されることになる。
一方、図10に示すように、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、半導体基板1Sに形成されたフィールド絶縁膜STIの上方に配置され、かつ、フィールド絶縁膜STIとは離間して配置されている。
以下に、この理由について説明する。すなわち、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、ダイシング工程で発生するクラックCLK2あるいはクラックCLK3のシールリングSR側への進行を防止することを主目的としている。つまり、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、シールリングSRと異なり、回路領域LRへの水分の浸入を防止することを主目的とするものではない。このため、本実施の形態1におけるアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、半導体基板1Sに形成されたフィールド絶縁膜STIの上方に配置され、かつ、フィールド絶縁膜STIとは離間して配置されているのである。ただし、特に、クラックCLK3のシールリングSR側への進行を抑制する観点からは、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2も、例えば、プラグを介して半導体基板1Sと接続されていたほうがいいように思われる。
ところが、例えば、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2も半導体基板1Sと接続するように構成する場合、リング領域RRにおいては、シールリングSRの下層から、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2の下層にわたって、半導体基板1Sの表面が均一なフラット面を形成することになる。つまり、リング領域RRにおいて、半導体基板1Sの表面がフラットになる。この場合、特に、水分や異物は、フラットな面に沿って浸入しやすくなるため、回路領域LRへの水分の浸入を効果的に抑制する観点からは、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2も半導体基板1Sと接続するように構成することは回避すべきである。
そこで、本実施の形態1では、リング領域RRにおいて、半導体基板1Sの表面が均一なフラット面になることを回避するため、シールリングSRを半導体基板1と接続する構成を採用する一方、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2の下層には、フィールド絶縁膜STIを形成している。この場合、フィールド絶縁膜STIの表面は、半導体基板1Sの表面とは異なる高さとなるため、リング領域RRにわたって均一なフラット面が形成されることを抑制できるのである。すなわち、本実施の形態1では、リング領域RRにおいて、互いに高さの異なる半導体基板1Sの表面とフィールド絶縁膜STIの表面とによって、均一なフラット面ではなく、凹凸形状の表面が形成される。このため、本実施の形態1によれば、水分や異物の回路領域LRへの浸入を効果的に抑制することができるのである。このように本実施の形態1においては、リング領域RRにおいては、半導体基板1Sの表面とフィールド絶縁膜STIの表面が混在することになる。特に、半導体基板1Sの表面からの水分や異物の浸入を効果的に防止する観点からは、フィールド絶縁膜STIの内部に島状に半導体基板1Sの表面が露出する領域を設けてもよい。この場合、フィールド絶縁膜STIの表面にさらなる凹凸形状が形成されるため、水分や異物の回路領域LRへの浸入を効果的に防止することができる。本実施の形態1においては、フィールド絶縁膜STIの表面が半導体基板1Sの表面よりも高く形成されることで、フラットな面が形成されることを抑制している。しかし、この高さの関係に限定されず、フィールド絶縁膜STIの表面が半導体基板1Sの表面よりも低く形成されることで、フラットな面が形成されることを抑制することも可能である。
ここで、本実施の形態1では、均一なフラット面を形成しない観点から、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2の下層にフィールド絶縁膜STIを形成するように構成している。この点に関し、さらに、上述した構成を前提として、特に、クラックCLK3のシールリングSR側へ進行するルートを遮断する観点から、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を、例えば、プラグでフィールド絶縁膜STIと接続する構成が考えられる。
ところが、この構成の場合、例えば、エッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールに導電材料を埋め込むことで、プラグを形成することになる。
このとき、例えば、シールリングSRのように、半導体基板1S上の層間絶縁膜にコンタクトホールをエッチング技術で形成する場合には、層間絶縁膜を構成する絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜)と半導体基板1S(シリコン)の材料が相違することから、エッチング選択比を確保することができる。このため、半導体基板1S上にコンタクトホールを形成する場合、複数のコンタクトホールの底部は、半導体基板1Sの表面に揃うことになる。この結果、シールリングSRの一部を構成するプラグPLG2は、精度良く形成することができる。
これに対し、例えば、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2のように、フィールド絶縁膜STI上の層間絶縁膜にコンタクトホールをエッチング技術で形成する場合、層間絶縁膜を構成する絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜)とフィールド絶縁膜(酸化シリコン膜)の材料が同種類であることから、エッチング選択比を確保することができなくなる。このため、フィールド絶縁膜STI上にコンタクトホールを形成する場合、複数のコンタクトホールの底部は、フィールド絶縁膜STIの内部にまで達して、ばらつくことになる。この結果、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2とフィールド絶縁膜STIとを接続するプラグは、製品によって寸法が異なることになり、製品間の均一性が損なわれることになる。したがって、本実施の形態1では、製品間の均一性を確保する観点から、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を、例えば、プラグでフィールド絶縁膜STIと接続する構成は採用していないのである。
以上のことから、本実施の形態1では、リング領域RRにおいて、シールリングSRは半導体基板1Sと接続するように構成しているのに対し、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、半導体基板1Sに形成されたフィールド絶縁膜STIの上方に配置され、かつ、フィールド絶縁膜STIとは離間して配置するように構成している。
続いて、本実施の形態1における第4特徴点は、例えば、図8に示すように、アウターリングOUR1の幅W2およびアウターリングOUR2の幅W3が、シールリングSRの幅W1よりも小さくなっている点である。これにより、チップ領域CR内にアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けたとしても、チップ領域CRのサイズの増大を最小限に抑制することができる。例えば、シールリングSRは、回路領域への水分や異物の浸入を防止するための防護壁としての機能を有していることから、シールリングSRの幅W1は、ある程度大きくする必要がある。これに対し、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、クラックのシールリングSRへの側の進行を停止できればよく、水分や異物の浸入を防止する機能を主目的としていない。それよりも、アウターリングOUR1の幅W2やアウターリングOUR2の幅W3を大きくすると、チップ領域CRの増大に繋がることになる。このことから、本実施の形態1では、アウターリングOUR1の幅W2およびアウターリングOUR2の幅W3を、シールリングSRの幅W1よりも小さくしているのである。具体的に、例えば、図10に示すように、シールリングSRは、ラフパターンとして形成される金属パターンAMPを含むように構成されている。これに対し、アウターリングOUR1は、微細パターンとして形成される第1層の金属パターンMP2〜第6層の金属パターンMP2を含む一方、シールリングSRの一部を構成する金属パターンAMPと同層の金属パターンは含まないように構成されている。同様に、アウターリングOUR2は、微細パターンとして形成される第1層の金属パターンMP3〜第5層の金属パターンMP3を含む一方、シールリングSRの一部を構成する金属パターンAMPと同層の金属パターンは含まないように構成されている。
なお、図8に示すシールリングSRの幅W1とは、図10に示すシールリングSRを構成する金属パターンのうち、最も幅の広い金属パターンの幅として定義される。例えば、図10に示すシールリングSRにおいて、最上層に形成される金属パターンAMPの幅が最も大きくなるため、図8に示すシールリングSRの幅W1は、図10に示す金属パターンAMPの幅を意味することになる。
一方、図8に示すアウターリングOUR1の幅W2とは、図10に示すアウターリングOUR1を構成する金属パターンのうち、最も幅の広い金属パターンの幅として定義される。例えば、図10に示すアウターリングOUR1において、第1層から第6層の金属パターンMP2の幅は同じであるため、図8に示すアウターリングOUR1の幅W2は、図10に示す第1層から第6層のいずれかを構成する金属パターンMP2の幅を意味することになる。
同様に、図8に示すアウターリングOUR2の幅W3とは、図10に示すアウターリングOUR2を構成する金属パターンのうち、最も幅の広い金属パターンの幅として定義される。例えば、図10に示すアウターリングOUR2において、第1層から第5層の金属パターンMP3の幅は同じであるため、図8に示すアウターリングOUR2の幅W3は、図10に示す第1層から第5層のいずれかを構成する金属パターンMP3の幅を意味することになる。
次に、本実施の形態1における第5特徴点は、例えば、図8に示すように、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1が、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2よりも大きい点である。言い換えれば、本実施の形態1における第5特徴点は、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2が、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1よりも小さい点ということもできる。さらには、アウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なっていることから、上述した第5特徴点において、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1が、アウターリングOUR1と溝部DITの間の距離よりも大きいということもできる。また、図8に示すように、本実施の形態1では、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1は、アウターリングOUR1と、チップ領域CRの外周線との間の距離よりも大きくなっている。
これは、シールリングSRが、回路領域LRに対して、より確実に水分や異物の浸入を防止し、クラックによる破壊を防止する必要があることから、チップ領域CRの外周線よりもなるべく離れた回路領域LRに近い領域に配置することが望ましいことを考慮した結果である。さらには、アウターリングOUR1が、クラックのシールリングSR側への進行を防止する機能を有することから、クラックの発生した早い段階で進行を停止させる必要性を考慮したものである。以上のことから、本実施の形態1では、上述した第5特徴点の関係が成立するように、シールリングSR、アウターリングOUR1、アウターリングOUR2、および、溝部DITが配置されることになる。以上の関係については、チップ領域CRの角部CNR以外の領域で説明したが、以下では、チップ領域CRの角部CNRにおける関係について説明する。
図8において、角部CNRにおいても、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離Y1は、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離Y2よりも大きくなっている。ただし、図8に示すように、角部CNRにおけるシールリングSRとアウターリングOUR1の間の第1スペースは、角部CNR以外におけるシールリングSRとアウターリングOUR1の間の第2スペースよりも遥かに大きくなっている。
これは、角部CNRにおいては、クラックが発生しやすいことを考慮したものである。すなわち、チップ領域CRの角部CNRにおいては、角部CNR以外の外周領域に比べて、クラックが発生しやすい。特に、角部CNRからチップ領域CRの内部に向かうクラックが発生しやすい。この場合、例えば、角部CNRとシールリングSRとの間の距離Y1が小さいと、角部CNRで発生したクラックが容易にシールリングSRに到達する。この結果、シールリングSRがクラックで破壊され、シールリングSRが水分防護壁としての機能を果たさなくなってしまう。これにより、シールリングSRの内側領域である回路領域にまで水分が浸入することになり、回路領域に形成されている集積回路の動作信頼性に悪影響を及ぼすことになる。
このことから、本実施の形態1では、チップ領域CRの角部CNRにおいて、シールリングSRが傾斜パターンを有するように構成している。この場合、角部CNRとシールリングSRとの間の距離Y1が大きくなるため、角部CNRにおいてクラックが発生し、このクラックがチップ領域CRの内部方向に進行しても、シールリングSRにまで到達することを抑制できる。この結果、クラックが発生しやすい角部CNRにおいて、たとえ、クラックが発生しても、シールリングSRがクラックによって破壊されるポテンシャルを低減することができる。すなわち、角部CNRにおいてクラックが発生しても、シールリングSRの水分防護壁としての機能を維持できるため、シールリングSRの内側領域である回路領域LRにまで水分が浸入することを防止できる。これにより、回路領域LRに形成されている集積回路の動作信頼性を向上することができる。
一方、図8に示すように、角部CNRにおいて、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、シールリングSRと異なり、角部CNR近傍まで配置されている。これは、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2が、クラックの進行を停止する機能を有し、かつ、破壊されてもクラックが停止すれば問題ないことに起因するものである。すなわち、角部CNRで発生したクラックを早期に停止させるため、角部CNRにおいても、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、角部CNRの近傍にまで配置されているのである。これにより、本実施の形態1によれば、角部CNRにおいても、クラックの進行をアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2で早期に停止させることができるため、クラックに起因するシールリングSRの破壊を防止することができる。この結果、本実施の形態1によれば、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
なお、本実施の形態1では、図8に示すように、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の距離X1は、シールリングSRの外周線と、アウターリングOUR1の内周線との間の距離として定義される。同様に、アウターリングOUR1とアウターリングOUR2の間の距離X2は、アウターリングOUR1の外周線と、アウターリングOUR2の内周線の間の距離として定義される。さらに、図8には示していないが、アウターリングOUR1と溝部DITの間の距離は、アウターリングOUR1の外周線と、溝部DITの内周線の間の距離として定義される。
<実施の形態1における半導体装置の製造方法>
続いて、本実施の形態1における半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。まず、図11に示すように、例えば、シリコン単結晶からなる半導体基板1Sを用意する。この半導体基板1Sは、図1に示す略円盤形状の半導体ウェハであり、複数のチップ領域CRを有し、複数のチップ領域CRは、スクライブ領域SCRで区画されている。なお、図11に示すように、チップ領域CRは、回路領域LRとリング領域RRを有しており、リング領域RRの外側にスクライブ領域SCRが形成されている。
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、半導体基板1Sに溝DIT1を形成する。そして、図13に示すように、溝DIT1を形成した半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜からなる絶縁膜を堆積し、その後、堆積した絶縁膜に対して化学的機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を使用することにより、不要な絶縁膜を研磨する。この結果、図13に示すように、フィールド絶縁膜STIを形成することができる。このとき、半導体基板1Sの表面は、フィールド絶縁膜STIの表面よりも低くなり、半導体基板1Sとフィールド絶縁膜STIの間に段差が形成される。
その後、図14に示すように、回路領域LRに電界効果トランジスタTRを形成する。具体的には、半導体基板1S上に、例えば、酸化シリコン膜や、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜からなるゲート絶縁膜を形成し、このゲート絶縁膜上に、例えば、ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する。そして、イオン注入法を使用して、ゲート電極に整合した半導体基板1S内に導電型不純物を導入することにより、ソース領域およびドレイン領域を形成する。このようにして、回路領域LRに電界効果トランジスタTRを形成することができる。
続いて、図15に示すように、電界効果トランジスタTRを形成した半導体基板1S上に層間絶縁膜IL1を形成する。この層間絶縁膜IL1は、チップ領域CRおよびスクライブ領域SCRを含む半導体基板1Sの主面の全面に形成される。
次に、図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、回路領域LRとリング領域RRにコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールに、例えば、タングステンからなる導電材料を埋め込むことにより、プラグPLG1およびプラグPLG2を形成する。例えば、回路領域LRに形成されるプラグPLG1は、電界効果トランジスタTRのソース領域やドレイン領域と接続され、リング領域RRに形成されるプラグPLG2は、半導体基板1Sと接続される。
その後、図17に示すように、プラグPLG1およびプラグPLG2を形成した層間絶縁膜IL1上に導体膜を形成し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、この導体膜をパターニングする。これにより、回路領域LRにプラグPLG1と接続される配線WL1を形成する。同様に、リング領域RRにプラグPLG2と接続される金属パターンMP1を形成するとともに、リング領域RRに形成されているフィールド絶縁膜STIの上方に金属パターンMP2および金属パターンMP3を形成する。配線WL1および金属パターンMP1〜MP3は、同層で形成される。
続いて、図18に示すように、配線WL1および金属パターンMP1〜MP3を形成した層間絶縁膜IL1上に、層間絶縁膜IL2を形成する。そして、図19に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL2に溝DIT2を形成する。この溝DIT2は、回路領域LRとリング領域RRに形成され、回路領域LRにおいて、溝DIT2は、配線WL1の表面の一部を露出するように形成される。同様に、リング領域RRにおいても、溝DIT2は、金属パターンMP1〜MP3の表面の一部を露出するように形成される。
次に、図20に示すように、溝DIT2を形成した層間絶縁膜IL2上に、例えば、銅膜を形成し、溝DIT2の内部に銅膜を埋め込む。その後、層間絶縁膜IL2の表面上に形成されている不要な銅膜をCMP法で除去する。これにより、回路領域LRにおいては、第1層の配線WL1と接続する第2層の配線WL1を形成することができる。同様に、リング領域RRにおいては、第1層の金属パターンMP1と接続する第2層の金属パターンMP1と、第1層の金属パターンMP2と接続する第2層の金属パターンMP2と、第1層の金属パターンMP3と接続する第2層の金属パターンMP3を形成することができる。
その後、図21に示すように、同様の工程を繰り返すことにより、回路領域LRにおいては、層間絶縁膜ILに、第1層の配線WL1から第6層の配線WL1を形成する。一方、リング領域RRにおいては、第1層の金属パターンMP1から第6層の金属パターンMP1を形成する。さらに、リング領域RRにおいては、第1層の金属パターンMP2から第6層の金属パターンMP2を形成し、第1層〜第6層の金属パターンMP2からなるアウターリングOUR1が形成される。同様に、リング領域RRにおいては、第1層の金属パターンMP3から第6層の金属パターンMP3を形成し、第1層〜第5層の金属パターンMP3からなるアウターリングOUR2が形成される。
そして、図22に示すように、層間絶縁膜IL7を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、回路領域LRに形成されている層間絶縁膜IL7に開口部OP1を形成し、リング領域RRに形成されている層間絶縁膜IL7に開口部OP2を形成する。開口部OP1は、第6層の配線WL1の表面の一部を露出するように形成され、開口部OP2は、第6層の金属パターンMP1の表面の一部を露出するように形成される。
続いて、図23に示すように、開口部OP1および開口部OP2を形成した層間絶縁膜IL7上に、例えば、アルミニウム膜AFからなる導体膜を形成する。その後、図24に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、アルミニウム膜AFをパターニングする。これにより、回路領域LRにおいては、第6層の配線WL1と接続されるパッドPDが形成され、リング領域RRにおいては、第6層の金属パターンMP1と接続される金属パターンAMPが形成される。この結果、リング領域RRにおいては、プラグPLG2、第1層〜第6層の金属パターンMP1、および、第6層の金属パターンMP1の上層に形成される金属パターンAMPを含むシールリングSRが形成される。
その後、図25に示すように、パッドPDおよび金属パターンAMPを形成した層間絶縁膜IL上に表面保護膜(パッシベーション膜)PASを形成する。そして、図9に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して表面保護膜PASを加工することにより、回路領域LRにおいては、パッドPDの表面の一部を露出し、リング領域RRにおいては、表面保護膜PASを貫通する溝部DITを形成する。この溝部DITは、アウターリングOUR1の外側で、かつ、平面視において、アウターリングOUR2と重なる位置に形成される。以上のようにして、本実施の形態1における半導体ウェハを製造することができる。
次に、半導体ウェハに形成されているスクライブ領域SCRを、例えば、回転するダイシングブレードで切断することにより、複数のチップ領域CRを個片化して、複数の半導体チップを取得する。このとき、本実施の形態1では、リング領域RRの外側にあるスクライブ領域SCRをダイシングブレードで切断する際、クラックがリング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できる。つまり、本実施の形態1では、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けているため、クラックは、シールリングSRに達する前に、アウターリングOUR1やアウターリングOUR2に達して、そこで停止することになる。この結果、本実施の形態1によれば、ダイシング工程で発生するクラックが、リング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できるのである。この結果、本実施の形態1によれば、たとえ、ダイシング工程に起因してクラックが発生しても、このクラックによるシールリングSRの破壊を防止することができる。これにより、本実施の形態1によれば、シールリングSRによって、回路領域LRへの水分や異物の浸入を抑制できるため、半導体チップの信頼性を向上することができる。その後は、パッケージング工程を経ることにより、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、アウターリングOUR2の幅が溝部DITの幅よりも大きく、かつ、アウターリングOUR2の外周線が、溝部DITの外周側面よりも内側にある例について説明する。
図26は、本実施の形態2における半導体ウェハの構成を示す断面図である。図26において、本実施の形態2における半導体ウェハは、図9に示す前記実施の形態1における半導体ウェハとほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
本実施の形態2の特徴は、図26に示すように、アウターリングOUR2の幅L2が、溝部DITの幅L3よりも大きい点にある。このとき、アウターリングOUR2は、第1層〜第5層の金属パターンMP3を含むように構成されており、この金属パターンMP3の幅がアウターリングOUR2の幅L2となっている。そして、図26に示すように、本実施の形態2では、アウターリングOUR2の幅L2が、溝部DITの幅L3よりも大きいことを前提として、アウターリングOUR2の外周線が、溝部DITの外周側面よりも内側に配置されている。
これにより、例えば、ダイシング工程において、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックが、幅L2の大きいアウターリングOUR2にぶつかって停止する可能性を高くすることができる。すなわち、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックは、主に、溝部DITの内側に配置されているアウターリングOUR1で停止する可能性が高いが、さらに、本実施の形態2では、平面視において、溝部DITと重なるアウターリングOUR2が、溝部DITの内側にはみ出している。このため、アウターリングOUR2によっても、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックを停止させることができるのである。つまり、本実施の形態2の構成では、アウターリングOUR1だけでなく、アウターリングOUR2によっても、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックを停止させる可能性が高くなるため、クラックに起因するシールリングSRの破壊を効果的に防止することができる。
さらに、本実施の形態2では、アウターリングOUR2を構成する第1層〜第5層の金属パターンMP3の幅を大きくしていることから、例えば、積層方向に隣り合う層に配置されている金属パターンMP3同士を複数のプラグで接続することも可能となる。このことは、第1層〜第5層の金属パターンMP3、および、積層方向に隣り合う金属パターンMP3同士を接続する複数のプラグから構成される積層構造体の強度が向上することを意味する。この場合、例えば、ダイシング工程で半導体ウェハに加わる力(ストレス)が強すぎて、ダイシングブレードと半導体ウェハの接触領域が起点となって発生するクラックに対しても、強度の高められたアウターリングOUR2でクラックの進行を停止することができる。つまり、本実施の形態2によれば、アウターリングOUR2の構造強度が向上している点と、アウターリングOUR2とアウターリングOUR1の2重防護壁構造の相乗効果によって、クラックのシールリングSRへの到達確率を大幅に低減できるため、クラックに起因するシールリングSRの破壊を効果的に防止することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3では、アウターリングOUR1を第1層〜第6層の金属パターンMP2と、積層方向に隣り合う層の金属パターンMP2を接続するプラグだけでなく、さらに、第6層の金属パターンMP2の上層の金属パターンも含むように構成する例について説明する。
図27は、本実施の形態3における半導体ウェハの構成を示す断面図である。図27において、本実施の形態3における半導体ウェハは、図9に示す前記実施の形態1における半導体ウェハとほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
図27において、本実施の形態3の特徴は、アウターリングOUR1が、金属パターンAMP2も含むように構成されている点にある。つまり、アウターリングOUR1は、回路領域LRに形成されているパッドPDやシールリングSRの最上層を構成する金属パターンAMPと同層で形成された金属パターンAMP2を含むように構成されている。
この場合、アウターリングOUR1は、金属パターンAMP2によって、表面保護膜PASと直接接触するように構成されることになる。そして、本実施の形態3では、アウターリングOUR1の上面は、最上層の金属パターンAMP2の上面となることから、アウターリングOUR1の上面は、溝部DITの底面よりも高くなる。この結果、本実施の形態3によれば、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックが、アウターリングOUR1によって遮られて停止する確率を大きくすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態4では、溝部DITが表面保護膜PASを貫通して層間絶縁膜の途中まで形成されている例について説明する。
図28は、本実施の形態4における半導体ウェハの構成を示す断面図である。図28において、本実施の形態4における半導体ウェハは、図9に示す前記実施の形態1における半導体ウェハとほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
図28において、本実施の形態4の特徴は、溝部DITが表面保護膜PASを貫通し、層間絶縁膜の途中まで形成されている点にある。この結果、本実施の形態4では、アウターリングOUR1の上面が、溝部DITの底面よりも高くなる。これにより、本実施の形態4によれば、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックが、アウターリングOUR1によって遮られて停止する確率を大きくすることができる。
ここで、本実施の形態4の構成と前記実施の形態3の構成は、アウターリングOUR1の上面を溝部DITの底面よりも高くする点で共通するが、チップ領域CRの増大を抑制する観点を考慮すると、本実施の形態4の構成は、前記実施の形態3の構成よりも優位性を有する。
すなわち、前記実施の形態3では、アウターリングOUR1の最上層に金属パターンAMP2を形成することにより、アウターリングOUR1の上面を溝部DITの底面よりも高くしている。この金属パターンAMP2は、パッドPDと同層のアルミニウム膜で形成される寸法の大きなパターンであり、この寸法の大きな金属パターンAMP2を含むようにアウターリングOUR1を構成すると、必然的に、リング領域RRのサイズが大きくなってしまうのである。
これに対し、本実施の形態4では、微細な第6層の金属パターンMP2でアウターリングOUR1の最上層を構成する一方、溝部DITを層間絶縁膜の途中まで深く形成することにより、アウターリングOUR1の上面を溝部DITの底面よりも高くしている。このように、本実施の形態4では、前記実施の形態3に比べて、アウターリングOUR1の幅を小さくしながら、アウターリングOUR1の上面を溝部DITの底面よりも高くすることができる。この結果、本実施の形態4によれば、リング領域RRを含むチップ領域CRのサイズの増大を抑制しながら、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側へ進行するクラックを、アウターリングOUR1によって停止させる確率を大きくすることができるのである。
(実施の形態5)
本実施の形態5では、前記実施の形態4よりも、さらに、溝部DITの深さを深くする例について説明する。
図29は、本実施の形態5における半導体ウェハの構成を示す断面図である。図29において、本実施の形態5における半導体ウェハは、図9に示す前記実施の形態1における半導体ウェハとほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
図29において、本実施の形態5の特徴は、前記実施の形態4よりも、溝部DITの深さを深くしている点にある。具体的に、図28に示す前記実施の形態4では、第1層〜第5層の金属パターンMP3を含むアウターリングOUR2の上方に溝部DITの底部が位置している。これに対して、図29に示す本実施の形態5では、第1層〜第4層の金属パターンMP3を含むアウターリングOUR2の上方に溝部DITの底部が位置している。したがって、本実施の形態5における溝部DITの底部は、前記実施の形態4における溝部DITの底部に比べて、およそ1層分だけ深く形成されていることになる。
このように構成されている本実施の形態5においても、前記実施の形態4と同様に、アウターリングOUR1の上面が、溝部DITの底面よりも高くなる。これにより、本実施の形態5によっても、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックが、アウターリングOUR1によって遮られて停止する確率を大きくすることができる。
ここで、本実施の形態5では、前記実施の形態4に比べて、溝部DITの深さが深くなっているため、溝部DITの底部からクラックが発生しやすい構成となっている。すなわち、本実施の形態5の溝部DITの底部からは、前記実施の形態4の溝部DITの底部よりもクラックが発生しやすくなっている。この点に関し、溝部DITは、溝部DITの底部から意図的にクラックを発生させるために設けられているが、だからといって、クラックの発生確率を高める必要性はない。つまり、クラックが発生しなければ、シールリングSRがクラックによって破壊される可能性はないのであるから、わざわざ、クラックの発生確率を高める必要はないのである。すなわち、溝部DITが他の領域よりも割れやすくなる程度で溝部DITの深さを規定すればよいのであり、必要以上に溝部DITの深さを深くして、わざわざ、クラックの発生確率を高める必要性はないのである。このことを考慮すると、本実施の形態5よりも前記実施の形態4のほうが、クラックの発生確率を低減する観点から優位性を有しているということができる。
ただし、本実施の形態5では、溝部DITの底部を起点とするクラックが発生しやすくなるが、アウターリングOUR1の上面と、溝部DITの底面との高さの差が大きくなるため、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックが、アウターリングOUR1によって遮られて停止する確率を大きくすることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態6では、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2がフィールド絶縁膜STIと接続されている例について説明する。
図30は、本実施の形態6における半導体ウェハの構成を示す断面図である。図30において、本実施の形態6における半導体ウェハは、図9に示す前記実施の形態1における半導体ウェハとほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
図30において、本実施の形態6の特徴は、アウターリングOUR1が、プラグPLG3によって、フィールド絶縁膜STIと接続され、かつ、アウターリングOUR2が、プラグPLG4によって、フィールド絶縁膜STIと接続されている点にある。
この場合、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2によって、回路領域LRへの水分や異物の浸入を効果的に防止することができる。つまり、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2は、クラックの進行を停止させることを主目的で形成されているが、本実施の形態6では、さらに、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2が、水分や異物の浸入を防止する効果を高めることになる。特に、本実施の形態6では、シールリングSRが設けられている点と、シールリングSRが接続している半導体基板1Sの表面と、フィールド絶縁膜STIの表面との間に段差が形成されている点と、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2がフィールド絶縁膜STIに接続されている点との相乗効果により、回路領域LRへの水分の浸入を効果的に防止することができる。
ただし、前記実施の形態1で説明したように、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2とフィールド絶縁膜STIとをプラグPLG3およびプラグPLG4で接続する場合、製品によってプラグPLG3およびプラグPLG4の寸法が異なることになり、製品間の均一性が損なわれることになる。このため、本実施の形態6の構成は、多少、製品間の均一性が損なわれても、回路領域LRへの水分や異物の浸入を確実に防止して、半導体装置の信頼性向上を優先させる場合に特に有用な構成である。
なお、例えば、半導体装置の製造技術では、例えば、SAC(Self Align Contact)と呼ばれる技術がある。このSACと呼ばれる技術では、電界効果トランジスタTRを形成した後、電界効果トランジスタTRを覆うように、窒化シリコン膜を形成し、その後、この窒化シリコン膜上に層間絶縁膜となる酸化シリコン膜を形成する。したがって、このSACと呼ばれる技術を使用する場合、図30において、リング領域RRのフィールド絶縁膜STI上にも窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜が形成される。したがって、まず、層間絶縁膜である酸化シリコン膜をエッチングしてコンタクトホールを形成する場合、下層に存在する窒化シリコン膜はエッチングストッパとなる。引き続き、窒化シリコン膜をエッチングする場合、窒化シリコン膜の下層に存在するフィールド絶縁膜STIは、酸化シリコン膜から形成されているため、このフィールド絶縁膜STIがエッチングストッパとなる。このことから、SACと呼ばれる技術を使用する場合には、層間絶縁膜と窒化シリコン膜を貫通するコンタクトホールは、フィールド絶縁膜STIまでエッチングされにくくなる。このことは、アウターリングOUR1とフィールド絶縁膜STIとを接続するプラグPLG3、および、アウターリングOUR2とフィールド絶縁膜STIとを接続するプラグPLG4の寸法の均一性を高めることができることを意味する。つまり、SACと呼ばれる技術を使用する場合には、製品間の均一性が損なわれることなく、アウターリングOUR1とフィールド絶縁膜STIをプラグPLG3で接続し、アウターリングOUR2とフィールド絶縁膜STIをプラグPLG4で接続することができる。この結果、製品間の均一性を高めながら、回路領域LRへの水分や異物の浸入を防止する効果を向上させることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態7では、平面視において、シールリングSRとアウターリングOUR1の間に、ダミーパターン、あるいは、コーナ補強用パターンを設ける例について説明する。
図31は、チップ領域CRの角部CNR近傍の平面レイアウト構成を示す図である。図31に示すように、角部CNRを有するチップ領域CRには、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、角部CNR以外の領域においては、チップ領域CRの外周線に沿って延在するように配置され、角部CNRにおいては、角部CNRから離間するように配置されている。すなわち、シールリングSRは、図31に示すように、角部CNR以外の領域におけるチップ領域CRの外周線とシールリングSRの間の距離よりも、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が大きくなるように配置されている。
続いて、本実施の形態7では、チップ領域CRの外周線に沿って、溝部(スリット)DITが配置されている。具体的には、図31に示すように、角部CNRを含むチップ領域CRの外周線に沿って、溝部DITが延在している。このとき、溝部DITは、平面視において、シールリングSRの外側に配置されている。つまり、溝部DITは、平面視において、チップ領域CRの外周線と、シールリングSRに挟まれるように配置されている。
そして、本実施の形態7では、平面視において、溝部DITとシールリングSRの間にアウターリングOUR1が設けられており、このアウターリングOUR1もチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。さらに、本実施の形態7においては、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2が設けられており、このアウターリングOUR2もチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。特に、アウターリングOUR2は、平面視において、溝部DITと重なるように配置されている。
ここで、本実施の形態7の特徴は、図31に示すように、角部CNR以外の領域においては、平面的に見て、シールリングSRとアウターリングOUR1との間の第2スペースに複数のダミーパターンDMY2が配置されている点にある。さらに、本実施の形態7の特徴は、角部CNR近傍において、平面的に見て、シールリングSRとアウターリングOUR1と間の第1スペースに、複数のコーナ補強用パターンLSSが配置されている点にある。このとき、図31に示すように、第1スペースの面積は、第2スペースの面積よりも大きくなっている。そして、平面視において、第2スペースに配置されているダミーパターンDMY2は、略正方形形状をしており、チップ領域CRの外周線に沿って並んで配置されている。一方、第1スペースに配置されているコーナ補強用パターンLSSは、線分形状をした線分構造体を構成している。第1スペースに配置されている複数の線分構造体(図31では8個)が、角部CNRの二等分線に対して交差(直交)しながら二等分線の延在方向に並んで形成されている。
このように構成されている本実施の形態7によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、角部CNRでは、角部CNR以外の辺の領域よりもクラックが発生しやすく、特に、角部CNRからチップ領域CRの内部へ向かう方向に進行するクラックが、半導体装置の信頼性に悪影響を及ぼすおそれが高い。このため、本実施の形態7では、角部CNRからチップ領域CRの内部に向かう領域(第1スペース)に、平面的に見て、ダミーパターンDMY2よりも面積が大きく、かつ、角部CNRの二等分線と交差するように並んで配置された線分構造体からなるコーナ補強用パターンLSSを形成している。特に、本実施の形態7では、できるだけ線分構造体からなるコーナ補強用パターンLSSを大きく形成することにより、角部CNRにおけるクラック耐性を向上させることができる。一方、角部CNRほどではないが、角部CNR以外においてもクラック耐性を向上させるため、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の第2スペースに複数のダミーパターンDMY2を配置している。これにより、本実施の形態7によれば、チップ領域CRの外周線全体にわたって、クラックの内部方向への浸入を抑制することができる。
図32は、図31のA−A線で切断した断面図である。図32において、シールリングSRとアウターリングOUR1との間にダミーパターンDMY2が形成されていることがわかる。このダミーパターンDMY2は、第1層の金属パターンMP4〜第6層の金属パターンMP4から構成されている。このとき、第1層から第6層の金属パターンMP4は、同じ幅のパターンから構成されているが、異なる幅のパターンで構成してもよい。
図32に示すように、例えば、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側へ進行するクラックは、アウターリングOUR1で停止すると考えられる。ただし、本実施の形態7では、さらに、シールリングSRとアウターリングOUR1の間に、クラックの進行を妨げる機能を有するダミーパターンDMY2が形成されているため、たとえ、アウターリングOUR1でクラックの進行が停止しなかった場合であっても、ダミーパターンDMY2でクラックを停止させることができる。このことから、本実施の形態7によれば、クラックに起因するシールリングSRの破壊を、さらに防止することができる。
図33は、図31のB−B線で切断した断面図である。図33に示すように、角部においては、シールリングSRとアウターリングOUR1の間に8個のコーナ補強用パターンLSSが並んで配置されていることがわかる。そして、個々のコーナ補強用パターンLSSは、第1層〜第6層の金属パターンMP5と、積層方向において隣り合う層の金属パターンMP5同士を接続するプラグから構成されている。
このように構成されている角部においては、第1の障壁であるアウターリングOUR2と、第2の障壁であるアウターリングOUR1のいずれかで停止することができないクラックであっても、さらに内側に8個ものコーナ補強用パターンLSSが設けられているため、これらのコーナ補強用パターンLSSで確実にクラックの進行を停止することができる。この結果、特に角部CNRで発生しやすい大きなクラックに起因するシールリングSRの破壊も確実に防止することができる。これにより、本実施の形態7では、シールリングSRがクラックで破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができ、これによって、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態8では、コーナ補強用パターンLSSの外側にも、複数のダミーパターンDMY1を配置する例について説明する。本実施の形態8の構成は、前記実施の形態7とほぼ同様であるため、相違点を中心に説明する。
図34は、チップ領域CRの角部CNR近傍の平面レイアウト構成を示す図である。図34において、本実施の形態8の特徴は、角部CNRにおいて、シールリングSRとアウターリングOUR1の間の第1スペースに、複数のコーナ補強用パターンLSSを設けるとともに、コーナ補強用パターンLSSとアウターリングOUR1の間にも、複数のダミーパターンDMY1を設ける点にある。
このように構成されている本実施の形態8によれば、以下に示す効果が得られる。すなわち、前記実施の形態7では、角部CNR全体の補強をすることができるが、コーナ補強用パターンLSSは、ダミーパターンDMY2よりも平面的に面積が大きい。このため、角部CNRの第1スペースにおいても、チップ領域CRの辺の近くまでコーナ補強用パターンLSSを形成することが困難な場合も考えられる。そこで、角部CNRの第1スペースにおいても、チップ領域CRの辺の近くを保護し、角部CNRにおいても、できるだけクラックをシールリングSRから離れた位置で停止させるため、角部CNRにおいて、複数のダミーパターンDMY2をコーナ補強用パターンLSSの外側に配置する。これにより、本実施の形態8によれば、角部CNRにおいて、コーナ補強用パターンLSSとダミーパターンDMY1を組み合わせることで、角部CNR全体を補強し、かつ、角部CNR近傍の辺の近くも補強することができる。
図35は、図34のA−A線で切断した断面図である。図35において、シールリングSRとアウターリングOUR1との間にダミーパターンDMY2が形成されていることがわかる。このダミーパターンDMY2は、第1層の金属パターンMP4〜第6層の金属パターンMP4から構成されている。このとき、第1層から第6層の金属パターンMP4は、同じ幅のパターンから構成されているが、異なる幅のパターンで構成してもよい。
また、図36は、図34のB−B線で切断した断面図である。図36に示すように、角部においては、シールリングSRとアウターリングOUR1の間に7個のコーナ補強用パターンLSSが並んで配置されていることがわかる。そして、個々のコーナ補強用パターンLSSは、第1層〜第6層の金属パターンMP5と、積層方向において隣り合う層の金属パターンMP5同士を接続するプラグから構成されている。そして、最も外側に配置されているコーナ補強用パターンLSSとアウターリングOUR1の間に、ダミーパターンDMY1が形成されていることがわかる。このダミーパターンDMY1は、第1層の金属パターンMP4〜第6層の金属パターンMP4から構成されている。このとき、第1層から第6層の金属パターンMP4は、同じ幅のパターンから構成されているが、異なる幅のパターンで構成してもよい。
本実施の形態8では、アウターリングOUR1およびアウターリングOUR2を設けるとともに、コーナ補強用パターンLSS、ダミーパターンDMY1およびダミーパターンDMY2を設けることによる相乗効果により、シールリングSRがクラックで破壊されることに起因する回路領域LRへの水分の浸入を確実に防止することができる。この結果、本実施の形態8によれば、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
(実施の形態9)
本実施の形態9では、アウターリングOUR1を設ける一方、アウターリングOUR2を設けない例について説明する。
図37は、チップ領域CRの角部CNR近傍の平面レイアウト構成を示す図である。図37に示すように、角部CNRを有するチップ領域CRには、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、角部CNR以外の領域においては、チップ領域CRの外周線に沿って延在するように配置され、角部CNRにおいては、角部CNRから離間するように配置されている。すなわち、シールリングSRは、図37に示すように、角部CNR以外の領域におけるチップ領域CRの外周線とシールリングSRの間の距離よりも、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が大きくなるように配置されている。
そして、本実施の形態9では、チップ領域CRの外周線に沿って、溝部(スリット)DITが配置されている。具体的には、図37に示すように、角部CNRを含むチップ領域CRの外周線に沿って、溝部DITが延在している。このとき、溝部DITは、平面視において、シールリングSRの外側に配置されている。つまり、溝部DITは、平面視において、チップ領域CRの外周線と、シールリングSRに挟まれるように配置されている。さらに、本実施の形態9では、平面視において、溝部DITとシールリングSRの間にアウターリングOUR1が設けられており、このアウターリングOUR1もチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。
図38は、図37のA−A線で切断した断面図である。図38に示すように、本実施の形態9では、リング領域RRにおいて、シールリングSRと溝部DITの間にアウターリングOUR1が設けられているが、溝部DITと平面的に重なるアウターリングOUR2は設けられていない。
このような本実施の形態9の構成においても、例えば、リング領域RRの外側にあるスクライブ領域SCRをダイシングブレードで切断する際、クラックがリング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できる。つまり、本実施の形態9でも、シールリングSRの外側にアウターリングOUR1を設けているため、クラックは、シールリングSRに達する前に、アウターリングOUR1に達して、そこで停止することになる。この結果、本実施の形態9によれば、ダイシング工程で発生するクラックが、リング領域RRに存在するシールリングSRにまで達することを防止できる。
ここで、シールリングSRの外側で、かつ、溝部DITの内側に、アウターリングOUR1を設けている主な理由は、溝部DITの底部を起点として、シールリングSR側に進行するクラックがシールリングSRにまで到達することを防止するためである。さらに、このアウターリングOUR1には、ダイシングブレードと半導体ウェハの接触領域が起点となるクラックが発生した場合であっても、このクラックのシールリングSR側への進行を防止する機能も有している。したがって、本実施の形態9のように、アウターリングOUR1の外側にアウターリングOUR2が設けられていない場合であっても、アウターリングOUR1によって、溝部DITの底部を起点とするクラックとともに、ダイシングブレードと半導体ウェハの接触領域が起点となるクラックに起因するシールリングSRの破壊を防止することができる。この結果、本実施の形態9においても、半導体ウェハおよび半導体ウェハをダイシングすることによって得られる半導体チップ(半導体装置)の信頼性を向上することができる。
(実施の形態10)
本実施の形態10では、ダイシング工程をレーザダイシングで実施する場合の構成について説明する。
図39は、チップ領域CRの角部CNR近傍の平面レイアウト構成を示す図である。図39に示すように、角部CNRを有するチップ領域CRには、シールリングSRが形成されている。このシールリングSRは、角部CNR以外の領域においては、チップ領域CRの外周線に沿って延在するように配置され、角部CNRにおいては、角部CNRから離間するように配置されている。すなわち、シールリングSRは、図39に示すように、角部CNR以外の領域におけるチップ領域CRの外周線とシールリングSRの間の距離よりも、角部CNRとシールリングSRとの間の距離が大きくなるように配置されている。
そして、本実施の形態10では、平面的に見て、チップ領域CRの外周線とシールリングSRの間にアウターリングOUR1が設けられており、このアウターリングOUR1はチップ領域CRの外周線に沿って、延在している。このとき、アウターリングOUR1の幅は、シールリングSRの幅よりも小さくなっている。
図40は、図39のA−A線で切断した断面図である。図40に示すように、本実施の形態10では、シールリングSRとリング領域RRの外周線の間にアウターリングOUR1が設けられている。このアウターリングOUR1は、例えば、なるべく、リング領域RRの外周線に近い領域に配置されている。具体的には、リング領域RRの外周線とアウターリングOUR1の間の距離は、アウターリングOUR1とシールリングSRの間の距離よりも小さくなっている。
これにより、以下に示す効果が得られる。すなわち、図40では、レーザ光LARを半導体ウェハのスクライブ領域SCRに照射することにより、スクライブ領域SCRを切断するダイシング工程が示されている。図40において、レーザダイシングと呼ばれる技術は、半導体ウェハにレーザ光LARを照射して、照射領域を加熱することにより、半導体ウェハの照射領域を燃焼させて切断する技術である。この場合、レーザ光LARを照射した領域だけでなく、照射領域の周辺領域も加熱されるため、この周辺領域においても、膜が燃焼し消失することになる。このとき、例えば、半導体ウェハに形成された膜の種類や加熱分布に起因して、膜の燃えやすさが相違する。
このことから、例えば、アウターリングOUR1が形成されていない場合には、レーザダイシングによる切断面は、半導体ウェハに形成された膜の燃えやすさの相違に起因して凹凸形状となりやすい。この結果、凹凸形状をした切断面からは、異物(ゴミ)が発生しやすくなる(図6参照)。
これに対し、本実施の形態10では、図40に示すように、アウターリングOUR1がリング領域RRの外周線の近くに配置されている。この結果、図40に示すように、半導体ウェハに形成された膜の燃えやすさを反映する前にアウターリングOUR1の外側で膜の消失が停止する。これにより、図40に示すように、レーザダイシングによる切断面は、アウターリングOUR1を設けない図6の場合に比べて均一形状(フラット形状)となる。このことから、本実施の形態10によれば、切断面が滑らかになるため、切断面が凹凸形状の場合に比べて、異物(ゴミ)の発生を低減することができる。
このように本実施の形態10において、アウターリングOUR1は、レーザダイシングによる切断面を平滑化する目的で形成されることになる。言い換えれば、レーザダイシングの場合は、ダイシングブレードによる機械的な切断の場合と異なり、ダイシング工程でのクラックの発生はないと考えられる。このことから、図40に示すように、レーザダイシングを前提とした場合には、表面保護膜PASに溝部DITも設けられていなく、かつ、アウターリングOUR1は、できるだけ、リング領域RRの外周線に近づくように形成される。このような実施の形態10の構成は、レーザダイシングを前提とした構成であるが、この場合も、異物の発生に起因する半導体装置の信頼性低下を抑制することができる。
以上のことから、前記実施の形態1〜9のように、ダイシングブレードによる機械的な切断の場合だけでなく、本実施の形態10のように、レーザダイシングを前提する場合でも、リング領域RRにアウターリングOUR1を設ける構成は、半導体装置の品質を向上させる観点から有用な技術的思想であることがわかる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
実施の形態は、以下に示す態様を含む。
(付記1)
半導体チップを備え、
前記半導体チップは、
集積回路が形成された回路領域と、
前記回路領域の外側に形成されたリング領域と、を有し、
前記リング領域には、
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成されたシールリングと、
(c)前記シールリングの外側に形成されたアウターリングと、
が形成され、
前記シールリングは、前記半導体基板と接続し、
前記アウターリングは、前記半導体基板に形成されたフィールド絶縁膜の上方に配置され、かつ、前記フィールド絶縁膜とは離間して配置される、半導体装置。
(付記2)
付記1に記載の半導体装置において、
前記シールリングと接続する前記半導体基板の表面高さは、前記アウターリングの下方に位置する前記フィールド絶縁膜の表面高さと異なる、半導体装置。
(付記3)
付記1に記載の半導体装置において、
前記リング領域には、さらに、
(d)前記シールリング上に形成された表面保護膜と、
(e)前記表面保護膜に形成された溝部であって、前記シールリングの外側に形成された前記溝部と、
が形成され、
前記アウターリングは、前記シールリングと前記溝部の間に形成されている、半導体装置。
(付記4)
付記1に記載の半導体装置において、
前記半導体チップは、角部を有し、
前記角部における前記シールリングと前記アウターリングの間の第1スペースは、前記角部以外における前記シールリングと前記アウターリングの間の第2スペースよりも大きい、半導体装置。
(付記5)
付記4に記載の半導体装置において、
前記リング領域の外端部と前記アウターリングの間の距離は、前記アウターリングと前記シールリングの間の距離よりも小さい、半導体装置。
(付記6)
付記5に記載の半導体装置において、
前記アウターリングの幅は、前記シールリングの幅よりも小さい、半導体装置。
(付記7)
複数のチップ領域と、
前記複数のチップ領域を区画するスクライブ領域と、を含み、
前記複数のチップ領域のそれぞれは、
集積回路が形成された回路領域と、
前記回路領域の外側に形成されたリング領域と、を有し、
前記リング領域の外側にスクライブ領域が存在する半導体ウェハであって、
前記リング領域には、
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成されたシールリングと、
(c)前記シールリングの外側に形成されたアウターリングと、
が形成され、
前記シールリングは、前記半導体基板と接続し、
前記アウターリングは、前記半導体基板に形成されたフィールド絶縁膜の上方に配置され、かつ、前記フィールド絶縁膜とは離間して配置される、半導体ウェハ。