JP6015649B2 - 二次電池電極用バインダ樹脂組成物、二次電池電極用スラリー、二次電池用電極、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
本願は、2012年1月11日に、日本に出願された特願2012−3209号、および2012年1月17日に、日本に出願された特願2012−7441号、に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
リチウムイオン二次電池用電極は、通常、粉体状の電極活物質材料(活物質)に結着剤(バインダ)を適当量添加した混合物に溶媒を混ぜて電極用スラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥後、圧着させて電極層を形成することで得られる。
一方、活物質やバインダ等の混合物をスラリーとするための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記する。)等のアミド類、ウレア類といった含窒素系有機溶媒が用いられる。
しかし、NMP等の含窒素系有機溶媒は、溶媒回収コストや、環境に対する負荷が高い等の問題があった。また、例えばNMPは、沸点が204℃と高いため、乾燥時や溶媒回収精製時に多くのエネルギーを必要とするという問題があった。
例えば特許文献1には、カルボキシメチルセルロースと高分子ラテックスとを含有する結着剤が開示されている。カルボキシメチルセルロースと高分子ラテックスとを含有する結着剤は、分散安定性および塗工性に優れ、集電体に対して密着性良好な電極層が得られる。
しかし、カルボキシメチルセルロースは天然物由来であるため、供給ロット毎の品質が安定しにくく、また、貯蔵安定性に劣るなどの問題があった。
例えば特許文献2には、アミド構造を有する繰り返し構造単位を含む重合体として、ポリN−ビニルアセトアミドを含む非水電池用正極ペーストが開示されている。ポリN−ビニルアセトアミドは、ペースト安定性、結着性、電気化学的安定性など、二次電池(特に非水二次電池)における要求性能を改善できるとしている。
また特許文献3には、バインダとして、ポリN−ビニルアセトアミドと、エチレンオキサイド(EO)およびプロピレンオキサイド(PO)の共重合体とを含む樹脂成分が開示されている。このバインダによれば、結着性、低温から室温環境下での電池特性に優れるとしている。
一方、負極では活物質に炭素系物質が多用されており導電性が確保されているため、導電助剤が添加されない場合が多い。そのため、負極用の電極用スラリー(負極用スラリー)はチキソ性が低く静置状態で活物質がすぐに沈降しやすく、安定性が悪い。この負極スラリーを集電体に塗布すると乾燥までの間に活物質が沈降してバインダが上部に偏在化し、電池特性、特に長期のサイクル特性に劣るという問題があった。
<1> 下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(A)と、水に不溶な粒子状の重合体(B−1)、または/および、水に可溶な重合体(B−2)とを含み、前記重合体(B−2)が酸性基または/およびその塩を有する、二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
<3> 前記重合体(A)と重合体(B−1)との質量比(重合体(A)/重合体(B−1))が5/95〜95/5である、<1>または<2>に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
<4> 下記柔軟性試験により電極の柔軟性の評価を行ったときに、電極層に変化がない、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
(柔軟性試験)
当該二次電池電極用バインダ樹脂組成物と水とを混練する。これに活物質を加えて混練し、さらに電極が正極の場合には導電助剤を加えて混練した後、塗工可能な粘度まで水で調整して電極用スラリーを得る。配合量は、活物質100質量部に対して、二次電池電極用バインダ樹脂組成物を2質量部とし、導電助剤を5質量部とする。
得られた電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥して、膜厚20〜200μmの電極層が集電体上に形成された電極を得る。
得られた電極を横3cm、縦5cmに切り出し、試験片とする。
得られた試験片の集電体面に直径5mmのマンドレルをあて、試験片の片側をテープで固定し、湿度10%以下の環境にて、集電体面が内側になるよう試験片を折り曲げたときの電極層の状態を観察し、電極の柔軟性を評価する。
<6> 前記重合体(A)と重合体(B−2)との質量比(重合体(A)/重合体(B−2))が5/95〜99.5/0.5である、<1>または<5>に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
<7> 前記重合体(A)の1質量%水溶液の粘度(α)と、該水溶液に前記重合体(B−2)を重合体(A)100質量部に対して10質量部となるように添加した溶液の粘度(β)との比(β/α)が5以上である、<1>、<5>、<6>のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
<9> 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、活物質と、<1>〜<7>のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物とを含有する、二次電池用電極。
<10> <9>に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
<11> 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、<8>に記載の二次電池電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥させて得られるものである、二次電池用電極。
<12> <11>に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
「第一の態様」
<二次電池電極用バインダ樹脂組成物>
本発明の第一の態様の二次電池電極用バインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という。)は、以下に示す重合体(A)と重合体(B−1)とを含む。
重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体であり、樹脂組成物に結着性を付与する成分である。
アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基などが挙げられる。
得られる重合体(A)の溶解性、粘度特性、酸化安定性の観点から、R1およびR2としては、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基が好ましい。
任意単位の由来源となる単量体(以下、「任意単量体」という。)としては、単量体(a)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリル等のシアン化ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体及びその塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体及びその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、ジフェニル((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のリン酸基を含有ビニル単量体及びその塩;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩若しくは四級アンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンが挙げられる。
これら任意単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
重合体(A)の粘度平均分子量は、重合体(A)の水溶液の粘度から、ポリN−ビニルホルムアミド(以下、PNVFという。)を標準物質とした粘度換算分子量として算出される。粘度平均分子量の算出方法の例を以下に示す。
重合体(A)の水溶液の還元粘度(ηsp/C)と、Hugginsの式(ηsp/C=[η]+K’[η]2C)とから、固有粘度[η]を算出する。なお、上記式中の「C」は、重合体(A)の水溶液における重合体(A)の濃度(g/dL)である。重合体(A)の水溶液の還元粘度の測定方法は、後述のものである。
得られた固有粘度[η]、およびMark−Houwinkの式([η]=KMa)から、粘度平均分子量(式中の「M」)を算出する。
なお、1N食塩水において、PNVFのパラメータは、K=8.31×10−5、a=0.76、K’=0.31である。
まず、重合体(A)の濃度が0.1質量%となるように、1N食塩水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の水溶液を得る。得られた重合体(A)の水溶液について、オスワルド粘度計を用いて、25℃での流下時間(t1)を測定する。
別途、ブランクとして、1N食塩水についてオスワルド粘度計を用いて、25℃での流下時間(t0)を測定する。
得られた流下時間から、下記式(i)により還元粘度を算出する。
ηsp/C={(t1/t0)−1}/C ・・・(i)
(式(i)中、Cは、重合体(A)の水溶液における重合体(A)の濃度(g/dL)である。)
重合方法は特に限定されず、原料として用いる単量体や生成する重合体の溶解性などに応じて、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、光重合などの方法を採用すればよい。
水溶性アゾ化合物としては、例えば4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(N−(2−カルボキシエチル)アミジノ)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、水溶性の過酸化物が好ましく、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
水溶性無機過酸化物としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
なお、過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、硫酸鉄等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
これら重合用溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(B−1)は、実質的に水に不溶な粒子状の重合体であり、電極に柔軟性を付与し、電池に電池特性、特に長期のサイクル特性を付与する成分である。
なお、本発明において、「実質的に水に不溶」とは、25℃の水100gに対する溶解度(すなわち、25℃において水100gに対して溶解する限度)が0.5g未満のことをいう。溶解度は0.1g以下が好ましい。
グラフト共重合体中のゴム含有量は40〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。
なお、重合体(B−1)の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される体積平均1次粒子径である。
本発明の第一の態様の樹脂組成物における、重合体(A)と重合体(B−1)の質量比(重合体(A)/重合体(B−1))は、固形分換算で5/95〜95/5が好ましく、25/75〜75/25がより好ましく、25/75〜50/50が特に好ましい。重合体(A)と重合体(B−1)の質量比が上記範囲内であれば、樹脂組成物を用いて電極用スラリー(二次電池電極用スラリー)を調製して電極を製造する際に、電極用スラリーの取り扱い性、集電体への塗工性が良好となる。加えて、電極用スラリーより形成される電極層内部の均一性が高まる。
また、樹脂組成物は、重合体(A)と重合体(B−1)とからなるものでもよいが、後述する重合体(B−2)を含んでいてもよい。
よって、本発明の第一の態様の樹脂組成物は、結着性に優れ、かつ、柔軟性に優れた電極を形成でき、電池特性(特に長期のサイクル特性)に優れた電池が得られる。具体的には、下記柔軟性試験により電極の柔軟性の評価を行ったときに、電極層に変化がない電極を形成できる。
ここで、「電極層に変化がない」とは、光学顕微鏡で60倍の倍率で観察したときに電極層に割れ、欠け等の変化が見られないことを意味する。
当該二次電池電極用バインダ樹脂組成物と水とを混練する。これに活物質を加えて混練し、さらに電極が正極の場合には導電助剤を加えて混練した後、塗工可能な粘度まで水で調整して電極用スラリーを得る。配合量は、活物質100質量部に対して、二次電池電極用バインダ樹脂組成物を2質量部とし、導電助剤を5質量部とする。
得られた電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥して、膜厚20〜200μmの電極層が集電体上に形成された電極を得る。
得られた電極を横3cm、縦5cmに切り出し、試験片とする。
得られた試験片の集電体面に直径5mmのマンドレルをあて、試験片の片側をテープで固定し、湿度10%以下の環境にて、集電体面が内側になるよう試験片を折り曲げたときの電極層の状態を観察し、電極の柔軟性を評価する。
本発明の第一の態様の二次電池電極用スラリー(以下、「電極用スラリー」という。)は、上述した本発明の第一の態様の樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する。また、電極用スラリーは、重合体(A)および重合体(B−1)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等を含有していてもよい。また、電極用スラリーを正極用として用いる場合には、電極用スラリーに導電助剤を含有させてもよい。
電極用スラリー中の樹脂組成物の割合(すなわち、重合体(A)と重合体(B−1)の合計)は、活物質100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。樹脂組成物の割合が0.1質量部以上であれば、集電体への密着性、活物質間の結着性が良好となる。一方、樹脂組成物の割合が10質量部以下であれば、電極中の抵抗が悪化するのを抑制できる。
正極用の活物質(正極活物質)としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムを含有するリチウム含有金属複合酸化物が挙げられる。
一方、負極用の活物質(負極活物質)としては、例えば黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;前記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属、またはこれらの酸化物との複合物が挙げられる。
正極活物質および負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら導電助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の第一の態様の二次電池用電極(以下、「電極」という。)は、集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備える。
電極層は、活物質と、バインダとして本発明の第一の態様の樹脂組成物とを少なくとも含有する層であり、必要に応じて、重合体(A)および重合体(B−1)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
活物質、他のバインダ樹脂、粘度調整剤としては、本発明の第一の態様の電極用スラリーの説明において先に例示した活物質、他のバインダ樹脂、粘度調整剤が挙げられる。
導電助剤としては、本発明の第一の態様の電極用スラリーの説明において先に例示した導電助剤が挙げられる。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
また、重合体(A)を水に溶解した水溶液と、重合体(B−1)を溶媒に分散した分散液と、活物質とを混合して電極用スラリーを調製してもよい。この際、重合体(A)の水溶液と重合体(B−1)の分散液を予め混合してから、これらと活物質とを混合してもよいし、重合体(A)の水溶液と活物質とを混合した後、重合体(B−1)の分散液を混合してもよいが、活物質の分散が良好となり均質な電極用スラリーを調製することができる点で、重合体(A)の水溶液と活物質とを混合した後、重合体(B−1)の分散液を混合する方が好ましい。
混錬方法としては、樹脂組成物と活物質とを十分に混練できる方法であれば特に限定されないが、例えば自公転攪拌機、プラネタリミキサ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル等の各種分散機で混練する方法が挙げられる。
塗布方法は、電極層の厚みが0.1〜500μmとなるように電極用スラリーを集電体に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えばバーコート法、ドクターブレード法、ナイフ法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、カーテン法、浸漬法、ハケ塗り法などが挙げられる。
除去方法としては、溶媒を除去できれば一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
除去条件は、溶媒が十分に除去可能で、かつ重合体(A)および重合体(B−1)が分解しない条件であれば特に限定されないが、40〜120℃、好ましくは60〜100℃で、1分間〜10時間、加熱処理することが好ましい。この条件であれば、重合体(A)および重合体(B−1)が分解することなく、活物質と集電体、あるいは活物質間の高い密着性を付与することができる。また、集電体が腐食しにくい。
さらに、必要に応じて、得られた電池用電極を任意の寸法に切断してもよい(スリット加工工程)。
本発明の第一の態様の電極は、リチウムイオン二次電池用の電極として好適である。
本発明の第一の態様のリチウムイオン二次電池は、本発明の第一の態様の電極を備える。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と負極とを、透過性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して配置し、これに非水系の電解液を含浸させた非水系二次電池;集電体の両面に電極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に電極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回した巻回体が、電解液と共に有底の金属ケーシングに収容された筒状の非水系二次電池などが挙げられる。
リチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bなどが挙げられる。
一方、非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などが挙げられる。
電解液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、筒状の場合は以下のようにして得られる。
まず、集電体の両面に電極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に電極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回して巻回体とする。得られた巻回体を有底の金属ケーシング(電池缶)に収容し、負極を負極端子に、正極を正極端子に接続する。ついで、金属ケーシングに電解液を含浸させた後、金属ケーシングを封止することにより筒状のリチウムイオン二次電池とする。
<二次電池電極用バインダ樹脂組成物>
本発明の第二の態様の二次電池電極用バインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という。)は、以下に示す重合体(A)と重合体(B−2)とを含む。
重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体である。
本発明の第二の態様の樹脂組成物に用いる重合体(A)は、本発明の第一の態様の樹脂組成物に用いる重合体(A)と同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
重合体(B−2)は、実質的に水に可溶な高分子体(重合体)であり、酸性基または/およびその塩を有するものである。重合体(B−2)は、二次電池電極用スラリー(電極用スラリー)に適度な粘度を付与し、電極用スラリーの安定性や電池特性、特に長期のサイクル特性を付与する成分である。
なお、本発明において、「実質的に水に可溶」とは、25℃の水100gに対する溶解度(すなわち、25℃において水100gに対して溶解する限度)が0.5g以上のことをいう。溶解度は1g以上が好ましい。
酸性基の塩としては、酸性基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩などが挙げられる。
アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
アルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
置換アンモニウムとしては、例えば脂式アンモニウム類、環式飽和アンモニウム類、環式不飽和アンモニウム類などが挙げられる。
また、重合体(B−2)としては、下記一般式(2)で表される、スルホン酸基または/およびカルボキシル基を有するアニリン系ポリマーも好適に使用可能である。
本発明の第二の態様の樹脂組成物における、重合体(A)と重合体(B−2)の質量比(重合体(A)/重合体(B−2))は、固形分換算で5/95〜99.5/0.5が好ましく、50/50〜99/1がより好ましく、60/40〜99/1がさらに好ましく、80/20〜99/1が特に好ましい。重合体(A)と重合体(B−2)の質量比が上記範囲内であれば、電極用スラリーの安定性が向上し、樹脂組成物を用いて電極用スラリーを調製して電極を製造する際に、電極用スラリーの取り扱い性、集電体への塗工性が良好となる。加えて、電極用スラリーより形成される電極層内部の均一性が高まる。
本発明の第二の態様の樹脂組成物における、重合体(A)の1質量%水溶液の粘度(α)と、該水溶液に重合体(B−2)を重合体(A)100質量部に対して10質量部となるように添加した溶液の粘度(β)との比(β/α)は、5以上が好ましく、7以上が好ましい。β/αが5以上であれば、電極用スラリーの安定性が向上し、集電体への塗工性および集電体への電極層の密着性が高まる。β/αの上限値については、電極用スラリーの取り扱い性が良好となる点で、1000以下が好ましく、700以下がより好ましい。
まず、重合体(A)の濃度が1質量%となるように、イオン交換水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の1質量%水溶液を得る。得られた重合体(A)の1質量%水溶液について、B型粘度計を用いて、25℃での粘度を測定する。使用するローターおよび回転数は、測定可能な粘度範囲を考慮して決定すればよい。
まず、重合体(A)の濃度が1質量%となるように、イオン交換水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の1質量%水溶液を得る。この水溶液に、重合体(B−2)を重合体(A)100質量部に対して10質量部となるように添加して溶液を得る。得られた溶液について、重合体(A)の1質量%水溶液と同様にして粘度を測定する。
また、樹脂組成物は、重合体(A)と重合体(B−2)とからなるものでもよいが、上述した重合体(B−1)を含んでいてもよい。
よって、本発明の樹脂組成物を用いると、安定性に優れた電極用スラリーが得られ、活物質やバインダの偏在が少なく均一性に優れた電極層を備えた電極を形成でき、電池特性(特に長期のサイクル特性)に優れた電池が得られる。
本発明の第二の態様の二次電池電極用スラリー(以下、「電極用スラリー」という。)は、上述した本発明の第二の態様の樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する。また、電極用スラリーは、重合体(A)および重合体(B−2)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等を含有していてもよい。また、電極用スラリーを正極用として用いる場合には、電極用スラリーに導電助剤を含有させてもよい。
電極用スラリー中の樹脂組成物の割合(すなわち、重合体(A)と重合体(B−2)の合計)は、活物質100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。樹脂組成物の割合が0.1質量部以上であれば、集電体への密着性、活物質間の結着性が良好となる。一方、樹脂組成物の割合が10質量部以下であれば、電極中の抵抗が悪化するのを抑制できる。
本発明の第二の態様の二次電池用電極(以下、「電極」という。)は、集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備える。
電極層は、活物質と、バインダとして本発明の第二の態様の樹脂組成物とを少なくとも含有する層であり、必要に応じて、重合体(A)および重合体(B−2)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
活物質としては、本発明の第一の態様の電極用スラリーの説明において先に例示した活物質が挙げられる。
他のバインダ樹脂、粘度調整剤としては、本発明の第二の態様の電極用スラリーの説明において先に例示した他のバインダ樹脂、粘度調整剤が挙げられる。
導電助剤としては、本発明の第一の態様の電極用スラリーの説明において先に例示した導電助剤が挙げられる。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
混錬方法としては、樹脂組成物と活物質とを十分に混練できる方法であれば特に限定されないが、例えば自公転攪拌機、プラネタリミキサ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル等の各種分散機で混練する方法が挙げられる。
塗布方法は、電極層の厚みが0.1〜500μmとなるように電極用スラリーを集電体に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えばバーコート法、ドクターブレード法、ナイフ法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、カーテン法、浸漬法、ハケ塗り法などが挙げられる。
除去方法としては、溶媒を除去できれば一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
除去条件は、溶媒が十分に除去可能で、かつ重合体(A)および重合体(B−2)が分解しない条件であれば特に限定されないが、40〜120℃、好ましくは60〜100℃で、1分間〜10時間、加熱処理することが好ましい。この条件であれば、重合体(A)および重合体(B−2)が分解することなく、活物質と集電体、あるいは活物質間の高い密着性を付与することができる。また、集電体が腐食しにくい。
さらに、必要に応じて、得られた電極を任意の寸法に切断してもよい(スリット加工工程)。
本発明の第二の態様の電極は、リチウムイオン二次電池用の電極として好適である。
本発明の第二の態様のリチウムイオン二次電池は、本発明の第二の態様の電極を備える。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と負極とを、透過性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して配置し、これに非水系の電解液を含浸させた非水系二次電池;集電体の両面に電極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に電極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回した巻回体が、電解液と共に有底の金属ケーシングに収容された筒状の非水系二次電池などが挙げられる。
リチウム塩、非水系有機溶媒としては、本発明の第一の態様のリチウムイオン二次電池の説明において、先に例示したリチウム塩、非水系有機溶媒が挙げられる。
また、筒状の場合は、本発明の第一の態様のリチウムイオン二次電池の説明において先に例示した方法により得られる。
<重合体(A)の製造>
(製造例1:N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の製造)
脱イオン水70質量部に対し、N−ビニルホルムアミド30質量部を混合した単量体水溶液を、リン酸によりpH=6.3となるよう調節し、単量体調節液を得た。この単量体調節液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後、4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)12質量%水溶液を0.4質量部添加し、次いで、tert−ブチルハイドロパーオキサイド10質量%水溶液および亜硫酸水素ナトリウム10質量%水溶液をそれぞれ0.1質量部添加して重合を行った。内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出しミートチョッパーで粉砕した後、60℃で10時間乾燥し、得られた固体を粉砕し、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)を得た。
シクロヘキサン95質量部、脱イオン水5質量部の溶液に対して、乳化剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル1.5質量部を混合した水溶液を55℃に加温し、1時間窒素曝気を行った。その後、重合開始剤として4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)の12質量%水溶液0.8質量部を添加した。ついで、N−ビニルアセトアミド75質量%水溶液30質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間保温した後に冷却し、重合体懸濁液を得た。得られた重合体懸濁液をろ過し、得られた固体を真空下60℃で乾燥させ、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を得た。
(平均粒子径の測定)
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて重合体(B−1)の体積平均1次粒子径を測定し、これを重合体(B−1)の平均粒子径とした。
得られた電極について、以下の方法で剥離強度を評価した。
各例の正極または負極を幅2cmに切り出し、試験片1とした。この試験片1を両面テープ(積水化学工業株式会社製、「#570」)でポリカーボネート板(2.5cm×10cm×厚さ1mm)に貼着して、測定用試験片を得た。この際、電極層がポリカーボネート板に接するように、正極または負極をポリカーボネート板に貼着した。
テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製、「RTC−1210A」)を用い、集電体を測定用試験片から剥離した際の荷重を測定した。5個の試験片について測定を行い、その平均値を剥離強度とした。測定条件は、剥離速度10mm/分、剥離角度180°、環境温度23℃、環境湿度40%RHとした。剥離強度が大きいほど、電極層が集電体により強固に結着していることを意味する。
得られた電極について、以下の方法で柔軟性を評価した。
各例の正極または負極を横3cm、縦5cmになるように切り出し、試験片2とした。この試験片2について、JIS K−5600−5−1:1999(ISO 1519:1973)の塗料一般試験方法耐屈曲性(円筒形マンドレル法)を参考にして柔軟性を評価した。
正極の柔軟性を評価する場合、得られた試験片2の集電体面に直径5mmのマンドレルをあて、試験片2の片側をテープで固定し、湿度10%以下の環境にて、集電体面が内側になるよう試験片2を折り曲げたときの電極層の状態を60倍のマイクロスコープ(スリー・アールシステム株式会社製、「ワイヤレスデジタル顕微鏡」)を用いて観察し、以下の評価基準にて正極の柔軟性を評価した。
負極の柔軟性を評価する場合、得られた試験片2の集電体面に直径3mmのマンドレルをあてた以外は、正極の場合と同様にして評価した。
○:電極層に割れ、欠け等の変化が見られない。
×:電極層に割れ、欠け等の変化が見られた。
得られた電極について、以下の方法で、電池特性を評価した。
各例の正極および市販の金属リチウム電極(負極)、または各例の負極および市販の金属リチウム電極(正極)を、セパレータ(セルガード♯2400)を介して対向させた。電解液として1Mの六フッ化リン酸リチウム(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比))を用いて、2032型コイン電池を作製した。
得られた2032型コイン電池について、60℃で充放電レートを0.5Cとし、定電流法(電流密度:0.6mA/g−活物質)で試験した。
各例の正極を用いた2032型コイン電池の場合、4.2Vに充電し、3Vまで放電する充放電を50回繰り返し、50サイクル目の電池容量を測定した。
各例の負極を用いた2032型コイン電池の場合、3.0Vに充電し、0Vまで放電する充放電を50回繰り返し、50サイクル目の電池容量を測定した。
1サイクル目の電池容量に対する50サイクル目の電池容量の割合を百分率で表し、これを容量維持率とした。
(正極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を50質量部(固形分換算で2質量部)と、脱イオン水40質量部とを計量し、これにコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)100質量部と、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)5質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。十分に混錬した後、重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)を4質量部(固形分換算で2質量部)添加し、自公転攪拌機で攪拌しながら、塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、正極用スラリーを得た。
正極用スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極用スラリーを集電体(アルミニウム箔、19cm×25cm、厚み20μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(アルミニウム箔)上に形成された正極を得た。
得られた正極について、剥離強度を測定し、柔軟性および電池特性を評価した。結果を表2に示す。
軟膏容器に、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を25質量部(固形分換算で1質量部)と、脱イオン水40質量部とを計量した以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、評価測定・結果を表2に示す。
実施例1−3は参考例である。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックスの代わりに、ブチルアクリレート成分およびポリオルガノシロキサン成分からなる複合ゴムに、メチルメタクリレートをグラフト重合して得られるアクリルシリコーンラテックス(平均粒子径166nm、固形分25質量%)を8質量部(固形分換算で2質量部)用いた以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックスの代わりに、懸濁重合によって得られたポリアクリロニトリル粉体を水に分散させ、湿式微粒化装置によって強制的に乳化させて得られたポリアクリロニトリルラテックス(平均粒子径400nm、固形分7.5質量%)を27質量部(固形分換算で2質量部)用いた以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
(負極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を50質量部(固形分換算で2質量部)と、脱イオン水50質量部とを計量し、これに天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)100質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。十分に混錬した後、重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)を4質量部(固形分換算で2質量部)添加し、自公転攪拌機で攪拌しながら、塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、負極用スラリーを得た。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた負極用スラリーを集電体(銅箔、19cm×25cm、厚み18μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(銅箔)上に形成された負極を得た。
得られた負極について、剥離強度を測定し、柔軟性および電池特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例1−7は参考例である。
N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用いた以外は、実施例1−6と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックスの代わりに、ブチルアクリレート成分及びポリオルガノシロキサン成分からなる複合ゴムに、メチルメタクリレートをグラフト重合して得られるアクリルシリコーンラテックス(平均粒子径166nm、固形分25質量%)を8質量部(固形分換算で2質量部)用いた以外は、実施例1−6と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックスの代わりに、懸濁重合によって得られたポリアクリロニトリル粉体を水に分散させ、湿式微粒化装置によって強制的に乳化させて得られたポリアクリロニトリルラテックス(平均粒子径400nm、固形分7.5質量%)を27質量部(固形分換算で2質量部)用いた以外は、実施例1−6と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
ポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。
正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用い、かつポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。
正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
ポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例1−6と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用い、かつポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例1−6と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
・PVDF−Em:ポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)。
・アクリルシリコーン:実施例1−4で得られたアクリルシリコーンラテックス(平均粒子径166nm、固形分25質量%)。
・PAN−Em:実施例1−5で得られたポリアクリロニトリルラテックス(平均粒子径400nm、固形分7.5質量%)。
・LCO:コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)。
・MPGC16:天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)。
・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)
また、比較例1−1の正極を備えた電池は実施例1−1、1−5に比べて、比較例1−2で得られた正極を備えた電池は実施例1−3に比べて、それぞれ容量維持率が低く、電池特性に劣っていた。比較例1−3の負極を備えた電池は実施例1−6、1−8、1−9に比べて、比較例1−4で得られた負極を備えた電池は実施例1−7に比べて、それぞれ容量維持率が低く、電池特性に劣っていた。
<重合体(A)の製造>
試験1の製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)を製造した。
(粘度の測定)
100mLねじ口ガラス瓶に、樹脂組成物の水溶液を入れ、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M型粘度計」)を用いて粘度を測定した。ローターはM4またはM2を使用し、回転速度3rpm、6rpm、20rpmのいずれかでの粘度を読み取った。
まず、重合体(A)の濃度が1質量%となるように、イオン交換水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の1質量%水溶液を得た。得られた重合体(A)の1質量%水溶液について、B型粘度計を用いて、25℃での粘度を測定し、その値を粘度(α)とした。
別途、重合体(A)の濃度が1質量%となるように、イオン交換水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の1質量%水溶液を得た。この水溶液に、重合体(B−2)を重合体(A)100質量部に対して10質量部となるように添加して溶液を得た。得られた溶液について、重合体(A)の1質量%水溶液と同様にして粘度を測定し、その値を粘度(β)とした。
上記方法により測定した粘度(α)と粘度(β)との比(β/α)を算出した。
得られた負極用スラリーについて、以下の方法でスラリーの安定性を評価した。
各例の負極用スラリーを24時間放置した後、スラリーの分離や活物質の沈降などがないかを目視で確認し、以下の評価基準にてスラリーの安定性を評価した。
○:分離、沈降がない。
×:分離または沈降していた。
得られた電極について、試験1の剥離強度の測定方法と同様にして、剥離強度を測定した。
得られた電極について、試験1の電池特性の評価方法と同様にして、電池特性を評価した。
(樹脂組成物の調製)
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)2質量部と、重合体(B−2)としてポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)水溶液(固形分5質量%)4質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水94質量部とを計量し、十分に溶解して樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた樹脂組成物の水溶液について、粘度を測定した。なお、ローターはM4を使用し、回転速度3rpmでの粘度を読み取った。また、粘度比を算出した。測定結果を表3に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)2質量部と、重合体(B−2)としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(東ソー有機化学株式会社製、「ポリナス PS−5」、固形分20質量%)1質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水97質量部とを計量し、十分に溶解して樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた樹脂組成物の水溶液について、粘度を測定した。なお、ローターはM4を使用し、回転速度6rpmでの粘度を読み取った。また、粘度比を算出した。測定結果を表3に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)2質量部と、重合体(B−2)としてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)5質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水93質量部とを計量し、十分に溶解して樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた樹脂組成物の水溶液について、粘度を測定した。なお、ローターはM4を使用し、回転速度6rpmでの粘度を読み取った。また、粘度比を算出した。測定結果を表3に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)2質量部と、重合体(B−2)としてポリアクリル酸リチウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)5質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水93質量部とを計量し、十分に溶解して樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた樹脂組成物の水溶液について、粘度を測定した。なお、ローターはM4を使用し、回転速度6rpmでの粘度を読み取った。また、粘度比を算出した。測定結果を表3に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)2質量部と、脱イオン水98質量部とを計量し、十分に溶解して樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた樹脂組成物の水溶液について、粘度を測定した。なお、ローターはM2を使用し、回転速度20rpmでの粘度を読み取った。測定結果を表3に示す。
(負極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を50質量部(固形分換算で2質量部)と、重合体(B−2)としてポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)水溶液(固形分5質量%)4質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水40質量部とを計量し、これに天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)100質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「あわとり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。十分に混練した後、塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、負極用スラリーを得た。
負極用スラリーの配合組成を表4に示す。また、得られた負極用スラリーの安定性を評価した。評価結果を表5に示す。
得られた負極用スラリーを集電体(銅箔、19cm×25cm、厚み18μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(銅箔)上に形成された負極を得た。
得られた負極について、剥離強度を測定し、電池特性を評価した。結果を表5に示す。
重合体(B−2)としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(東ソー有機化学株式会社製、「ポリナス PS−5」、固形分20質量%)1質量部(固形分換算で0.2質量部)を用いた以外は、実施例2−5と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表4に示す。また、測定・評価結果を表5に示す。
重合体(B−2)としてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)5質量部(固形分換算で0.2質量部)を用い、導電助剤としてアセチレンブラック1質量部を用いた以外は、実施例2−5と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表4に示す。また、測定・評価結果を表5に示す。
重合体(B−2)としてポリアクリル酸リチウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)5質量部(固形分換算で0.2質量部)を用い、導電助剤としてアセチレンブラック1質量部を用いた以外は、実施例2−5と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表4に示す。また、測定・評価結果を表5に示す。
重合体(B−2)としてポリアニリンスルホン酸水溶液を用いなかった以外は、実施例2−5と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表4に示す。また、測定・評価結果を表5に示す。
・MPGC16:天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)。
・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)
このことは表5のスラリー安定性の評価結果からも明らかである。重合体(A)と重合体(B−2)を用いた実施例2−5〜2−8は、重合体(B−2)を用いなかった比較例2−2と比較して、負極用スラリーの安定性が向上している。すなわち重合体(A)と重合体(B−2)を含む本発明の樹脂組成物を用いた電極用スラリーは安定性に優れる。
なお、比較例2−1である重合体(A)の水溶液は、2質量%程度の濃度の場合、粘度が剪断速度に依存しないニュートン流体に近いことが分かっており、B型粘度計による測定において回転速度を3rpm乃至6rpmに変えた場合においても、20rpmと同等の粘度が測定値として示されるものと思われる。
一方、重合体(B−2)を用いずに形成された比較例2−2の負極は剥離強度が低く、この負極を備えた電池は実施例2−5〜2−8に比べて容量維持率が低く、電池特性に劣っていた。
<重合体(A)の製造>
試験1の製造例1と同様にして、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)を製造した。
(スラリー安定性の評価)
得られた負極用スラリーについて、試験2のスラリー安定性の評価方法と同様にして、スラリーの安定性を評価した。
得られた電極について、試験1の剥離強度の測定方法と同様にして、剥離強度を測定した。
得られた電極について、試験1の柔軟性の評価方法と同様にして、柔軟性を評価した。
得られた電極について、試験1の電池特性の評価方法と同様にして、電池特性を評価した。
(正極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を50質量部(固形分換算で2質量部)と、重合体(B−2)としてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)を5質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水40質量部とを計量し、これにコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)100質量部と、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)5質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。十分に混錬した後、重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)を4質量部(固形分換算で2質量部)添加し、自公転攪拌機で攪拌しながら、塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、正極用スラリーを得た。
正極用スラリーの配合組成を表6に示す。
得られた正極用スラリーを集電体(アルミニウム箔、19cm×25cm、厚み20μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(アルミニウム箔)上に形成された正極を得た。
得られた正極について、剥離強度を測定し、柔軟性および電池特性を評価した。結果を表7に示す。
(負極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を50質量部(固形分換算で2質量部)と、重合体(B−2)としてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製、分子量100万、固形分4質量%)を5質量部(固形分換算で0.2質量部)と、脱イオン水40質量部とを計量し、これに天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学(株)製、「MPGC16」)100質量部とアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)1質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「あわとり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。十分に混練した後、重合体(B−1)としてポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)を4質量部(固形分換算で2質量部)添加し、自公転攪拌機で攪拌しながら、塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、負極用スラリーを得た。
負極用スラリーの配合組成を表6に示す。また、得られた負極用スラリーの安定性を評価した。評価結果を表7に示す。
得られた負極用スラリーを集電体(銅箔、19cm×25cm、厚み18μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて80℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(銅箔)上に形成された負極を得た。
得られた負極について、剥離強度を測定し、柔軟性および電池特性を評価した。結果を表7に示す。
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液およびポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例3−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。
正極用スラリーの配合組成を表6に示す。また、測定・評価結果を表7に示す。
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液およびポリフッ化ビニリデンラテックスを用いなかった以外は、実施例3−2と同様にして負極用スラリーを調製し、負極を作製し、各種測定・評価を行った。
負極用スラリーの配合組成を表6に示す。また、測定・評価結果を表7に示す。
・PVDF−Em:ポリフッ化ビニリデンラテックス(アルケマ社製、平均粒子径127nm、固形分49.6質量%)。
・LCO:コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)。
・MPGC16:天然の黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)。
・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)
さらに、重合体(A)と、重合体(B−1)および重合体(B−2)を用いた実施例3−1、3−2の電極を備えた電池は、50サイクル目の電池容量が1サイクル目の電池容量の92%以上を維持しており、電池特性にも優れていた。
一方、重合体(B−1)および重合体(B−2)を用いずに形成された比較例3−2の負極を備えた電池は実施例3−2に比べて容量維持率が低く、電池特性に劣っていた。
本発明の第一の態様の二次電池電極用スラリーは、第一の態様の二次電池電極用バインダ樹脂組成物を用いて得られるものであり、柔軟性に優れた電極を形成でき、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れた電池が得られる。
本発明の第一の態様の二次電池用電極は、柔軟性に優れる。そのため該電極を備えたリチウムイオン二次電池によれば、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れる。
本発明の第二の態様の二次電池電極用スラリーは、第二の態様の二次電池電極用バインダ樹脂組成物を用いて得られるものであり、負極に用いる場合でも安定性に優れ、活物質やバインダの偏在を抑制した電極を形成でき、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れた電池が得られる。
本発明の第二の態様の二次電池用電極は、活物質やバインダが偏在しにくい。そのため該電極を備えたリチウムイオン二次電池によれば、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れる。
Claims (12)
- 前記重合体(B−1)の平均粒子径が10〜1000nmである、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 前記重合体(A)と重合体(B−1)との質量比(重合体(A)/重合体(B−1))が5/95〜95/5である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 下記柔軟性試験により電極の柔軟性の評価を行ったときに、電極層に変化がない、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
(柔軟性試験)
当該二次電池電極用バインダ樹脂組成物と水とを混練する。これに活物質を加えて混練し、さらに電極が正極の場合には導電助剤を加えて混練した後、塗工可能な粘度まで水で調整して電極用スラリーを得る。配合量は、活物質100質量部に対して、二次電池電極用バインダ樹脂組成物を2質量部とし、導電助剤を5質量部とする。
得られた電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥して、膜厚20〜200μmの電極層が集電体上に形成された電極を得る。
得られた電極を横3cm、縦5cmに切り出し、試験片とする。
得られた試験片の集電体面に直径5mmのマンドレルをあて、試験片の片側をテープで固定し、湿度10%以下の環境にて、集電体面が内側になるよう試験片を折り曲げたときの電極層の状態を観察し、電極の柔軟性を評価する。 - 前記酸性基または/およびその塩が、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、リン酸基およびリン酸基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 前記重合体(A)と重合体(B−2)との質量比(重合体(A)/重合体(B−2))が5/95〜99.5/0.5である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 前記重合体(A)の1質量%水溶液の粘度(α)と、該水溶液に前記重合体(B−2)を重合体(A)100質量部に対して10質量部となるように添加した溶液の粘度(β)との比(β/α)が5以上である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する、二次電池電極用スラリー。
- 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、
前記電極層は、活物質と、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物とを含有する、二次電池用電極。 - 請求項9に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
- 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、
前記電極層は、請求項8に記載の二次電池電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥させて得られるものである、二次電池用電極。 - 請求項11に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
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