JP6244798B2 - 二次電池電極用バインダ樹脂組成物、二次電池電極用スラリー、二次電池用電極、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池用電極は、通常、粉体状の電極活物質材料(活物質)に結着剤(バインダ)を適当量添加した混合物に溶媒を混ぜて電極用スラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥後、圧着させて電極層を形成することで得られる。
一方、活物質やバインダ等の混合物をスラリーとするための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記する。)等のアミド類、ウレア類といった含窒素系有機溶媒が用いられる。
しかし、NMP等の含窒素系有機溶媒は、溶媒回収コストや、環境に対する負荷が高い等の問題があった。また、例えばNMPは、沸点が204℃と高いため、乾燥時や溶媒回収精製時に多くのエネルギーを必要とするという問題があった。
例えば特許文献1には、カルボキシメチルセルロースと高分子ラテックスとを含有する結着剤が開示されている。カルボキシメチルセルロースと高分子ラテックスとを含有する結着剤は、分散安定性および塗工性に優れ、集電体に対して密着性良好な電極層が得られる。
しかし、カルボキシメチルセルロースは天然物由来であるため、供給ロット毎の品質が安定しにくく、また、貯蔵安定性に劣るなどの問題があった。
<1> 下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(A)と、多価アルコール(B)を含み、前記多価アルコール(B)がグリセリンまたはグリセリンを含む重縮合体である、二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
(1)
(式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。)
<3> <1>〜<2>のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する、二次電池電極用スラリー。
<4> 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、活物質と、<1>〜<2>のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物とを含有する、二次電池用電極。
<5> <4>に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
<6> 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、<3>に記載の二次電池電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥させて得られるものである、二次電池用電極。
<7> <6>に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
<二次電池電極用バインダ樹脂組成物>
本発明の二次電池電極用バインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という。)は、以下に示す重合体(A)と多価アルコール(B)とを含む。
重合体(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む重合体であり、樹脂組成物に結着性を付与する成分である。
アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基などが挙げられる。
得られる重合体(A)の溶解性、粘度特性、酸化安定性の観点から、R1およびR2としては、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基が好ましい。
任意単位の由来源となる単量体(以下、「任意単量体」という。)としては、単量体(a)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリル等のシアン化ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体及びその塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体及びその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、ジフェニル((メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のリン酸基を含有ビニル単量体及びその塩;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩若しくは四級アンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンが挙げられる。
これら任意単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
重合体(A)の粘度平均分子量は、重合体(A)の水溶液の粘度から、ポリN−ビニルホルムアミド(以下、PNVFという。)を標準物質とした粘度換算分子量として算出される。粘度平均分子量の算出方法の例を以下に示す。
重合体(A)の水溶液の還元粘度(ηsp/C)と、Hugginsの式(ηsp/C=[η]+K’[η]2C)とから、固有粘度[η]を算出する。なお、上記式中の「C」は、重合体(A)の水溶液における重合体(A)の濃度(g/dL)である。重合体(A)の水溶液の還元粘度の測定方法は、後述のものである。
得られた固有粘度[η]、およびMark−Houwinkの式([η]=KMa)から、粘度平均分子量(式中の「M」)を算出する。
なお、1N食塩水において、PNVFのパラメータは、K=8.31×10−5、a=0.76、K’=0.31である。
まず、重合体(A)の濃度が0.1質量%となるように、1N食塩水に重合体(A)を溶解して、重合体(A)の水溶液を得る。得られた重合体(A)の水溶液について、オスワルド粘度計を用いて、25℃での流下時間(t1)を測定する。
別途、ブランクとして、1N食塩水についてオスワルド粘度計を用いて、25℃での流下時間(t0)を測定する。
得られた流下時間から、下記式(i)により還元粘度を算出する。
ηsp/C={(t1/t0)−1}/C ・・・(i)
(式(i)中、Cは、重合体(A)の水溶液における重合体(A)の濃度(g/dL)である。)
重合方法は特に限定されず、原料として用いる単量体や生成する重合体の溶解性などに応じて、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、光重合などの方法を採用すればよい。
水溶性アゾ化合物としては、例えば4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)2,2’−アゾビスプロパン)二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)2,2’−アゾビスプロパン)二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス(2−(N−(2−カルボキシエチル)アミジノ)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、水溶性の過酸化物が好ましく、例えばtert−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
水溶性無機過酸化物としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
なお、過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、硫酸鉄等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。
これら重合用溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、多価アルコール(B)は、グリセリンまたはグリセリンを含む重縮合体である。本発明の多価アルコール(B)は、電極に可とう性を付与する成分である。
本発明のグリセリンを含む重縮合体には、例えば、グリコール、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イノシトール、キシロース、グルコース、スクロース、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(酢酸ビニルなどのビニルエステル、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含む)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ベンゼントリオール、ヘキサヒドロキシベンゼン等の多価アルコールと、グリセリンとを重縮合体としたものが含まれる。
また乾燥工程での蒸発を考慮すると水以上の沸点が好ましく、より好ましくは250℃以上の沸点が好ましい。さらに好ましくは300℃以上の沸点が好ましい。
本発明の多価アルコール(B)と重合体(A)との質量比(重合体(A)/(B))は、50/50〜99/1であり、好ましくは、60/40〜95/5である。重合体(A)と多価アルコール(B)の質量比が上記範囲内であれば、樹脂組成物を用いて電極用スラリー(二次電池電極用スラリー組成物)を調製して電極を製造する際に、電極用スラリーの取り扱い性、集電体への塗工性が良好となる。更に得られた電極の可撓性が高まり、集電体に対する密着性も得られる。
本発明の二次電池電極用スラリー(以下、「電極用スラリー」という。)は、上述した本発明の樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する。また、電極用スラリーは、重合体(A)、多価アルコール(B)以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等を含有していてもよい。また、電極用スラリーを正極用として用いる場合には、電極用スラリーに導電助剤を含有させてもよい。
電極用スラリー中の樹脂組成物の割合(すなわち、重合体(A)多価アルコール(B)の合計)は、活物質100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましい。樹脂組成物の割合が0.1質量部以上であれば、集電体への密着性、活物質間の結着性が良好となる。一方、樹脂組成物の割合が20質量部以下であれば、電極中の抵抗が悪化するのを抑制できる。
正極用の活物質(正極活物質)としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムを含有するリチウム含有金属複合酸化物が挙げられる。
一方、負極用の活物質(負極活物質)としては、例えば黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;前記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属、またはこれらの酸化物との複合物が挙げられる。
正極活物質および負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ただし、集電体への密着性や電極合剤層の可撓性を考慮すると、バインダ樹脂中、重合体(A)、多価アルコール(B)の合計の含有量は、樹脂固形分(100質量%)に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
バインダ樹脂における重合体(A)、多価アルコール(B)の合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。すなわちバインダ樹脂が重合体(A)、多価アルコール(B)からなるものであってもよい。
これら導電助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の二次電池用電極(以下、「電極」という。)は、集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備える。
電極層は、活物質と、バインダとして本発明の第一の態様の樹脂組成物とを少なくとも含有する層であり、必要に応じて、重合体(A)、多価アルコール(B)の以外のバインダ樹脂(他のバインダ樹脂)や、粘度調整剤、結着性向上剤、分散剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
活物質、他のバインダ樹脂、粘度調整剤としては、本発明の電極用スラリーの説明において先に例示した活物質、他のバインダ樹脂、粘度調整剤が挙げられる。
導電助剤としては、本発明の電極用スラリーの説明において先に例示した導電助剤が挙げられる。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
本発明の電極は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、本発明の樹脂組成物と、活物質と、必要に応じて他のバインダ樹脂や、粘度調整剤、導電助剤等の添加剤とを溶媒に分散して二次電池電極用スラリー組成物(電極用スラリー)を調製し(スラリー調製工程)、該電極用スラリーを集電体に塗布し(塗布工程)、溶媒を除去して(溶媒除去工程)、本発明の樹脂組成物で活物質等を保持した層(電極層)が集電体上に形成された電極を得る。
スラリー調製工程は、本発明の態様の樹脂組成物と、活物質と、必要に応じて他のバインダ樹脂や、粘度調整剤、導電助剤等の添加剤とを溶媒に分散して電極用スラリーを得る工程である。このとき、上述した重合体(A)、多価アルコール(B)は予め混合して樹脂組成物としておいてもよいし、スラリー調製工程において重合体(A)と多価アルコール(B)とを活物質などと共に溶媒に分散してもよく、重合体(A)、多価アルコール(B)の活物質等の溶媒への分散のタイミングは特に限定されない。
また、重合体(A)を水に溶解した水溶液と、多価アルコール(B)を溶媒に溶解させた溶液または分散させた分散液と、活物質とを混合して電極用スラリーを調製してもよい。この際、重合体(A)の水溶液と多価アルコール(B)の溶液または分散液を予め混合してから、これらと活物質とを混合してもよいし、重合体(A)の水溶液と活物質とを混合した後、多価アルコール(B)の溶液または分散液を混合してもよい。
混錬方法としては、樹脂組成物と活物質とを十分に混練できる方法であれば特に限定されないが、例えば自公転攪拌機、プラネタリミキサ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル等の各種分散機で混練する方法が挙げられる。
塗布工程は、スラリー調製工程で得られた電極用スラリーを集電体に塗布する工程である。
塗布方法は、電極層の厚みが0.1〜500μmとなるように電極用スラリーを集電体に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えばバーコート法、ドクターブレード法、ナイフ法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、カーテン法、浸漬法、ハケ塗り法などが挙げられる。
溶媒除去工程は、集電体に塗布した電極用スラリー中の溶媒を除去する工程である。
除去方法としては、溶媒を除去できれば一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
除去条件は、溶媒が十分に除去可能で、かつ重合体(A)、多価アルコール(B)が分解しない条件であれば特に限定されないが、40〜120℃、好ましくは60〜100℃で、1分間〜10時間、加熱処理することが好ましい。この条件であれば、重合体(A)、多価アルコール(B)が分解することなく、活物質と集電体、あるいは活物質間の高い密着性を付与することができる。また、集電体が腐食しにくい。
さらに、必要に応じて、得られた電池用電極を任意の寸法に切断してもよい(スリット加工工程)。
本発明の電極は、リチウムイオン二次電池用の電極として好適である。
本発明の第一の態様のリチウムイオン二次電池は、本発明の第一の態様の電極を備える。
リチウムイオン二次電池としては、例えば、正極と負極とを、透過性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して配置し、これに非水系の電解液を含浸させた非水系二次電池;集電体の両面に電極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に電極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回した巻回体が、電解液と共に有底の金属ケーシングに収容された筒状の非水系二次電池などが挙げられる。
リチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bなどが挙げられる。
一方、非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などが挙げられる。
電解液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、筒状の場合は以下のようにして得られる。
まず、集電体の両面に電極層が形成された負極/セパレータ/集電体の両面に電極層が形成された正極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回して巻回体とする。得られた巻回体を有底の金属ケーシング(電池缶)に収容し、負極を負極端子に、正極を正極端子に接続する。ついで、金属ケーシングに電解液を含浸させた後、金属ケーシングを封止することにより筒状のリチウムイオン二次電池とする。
(製造例1:N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の製造)
脱イオン水70質量部に対し、N−ビニルホルムアミド30質量部を混合した単量体水溶液を、リン酸によりpH=6.3となるよう調節し、単量体調節液を得た。この単量体調節液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後、4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)12質量%水溶液を0.4質量部添加し、次いで、tert−ブチルハイドロパーオキサイド10質量%水溶液および亜硫酸水素ナトリウム10質量%水溶液をそれぞれ0.1質量部添加して重合を行った。内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出しミートチョッパーで粉砕した後、60℃で10時間乾燥し、得られた固体を粉砕し、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)を得た。
シクロヘキサン95質量部、脱イオン水5質量部の溶液に対して、乳化剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル1.5質量部を混合した水溶液を55℃に加温し、1時間窒素曝気を行った。その後、重合開始剤として4、4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(和光純薬工業株式会社製、「V−501」)の12質量%水溶液0.8質量部を添加した。ついで、N−ビニルアセトアミド75質量%水溶液30質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間保温した後に冷却し、重合体懸濁液を得た。得られた重合体懸濁液をろ過し、得られた固体を真空下60℃で乾燥させ、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を得た。
(剥離強度の測定)
得られた電極について、以下の方法で剥離強度を評価した。
各例の正極または負極を幅2cmに切り出し、試験片1とした。この試験片1を両面テープ(積水化学工業株式会社製、「#570」)でポリカーボネート板(2.5cm×10cm×厚さ1mm)に貼着して、測定用試験片を得た。この際、電極層がポリカーボネート板に接するように、正極または負極をポリカーボネート板に貼着した。
テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製、「RTC−1210A」)を用い、集電体を測定用試験片から剥離した際の荷重を測定した。5個の試験片について測定を行い、その平均値を剥離強度とした。測定条件は、剥離速度10mm/分、剥離角度180°、環境温度23℃、環境湿度40%RHとした。剥離強度が大きいほど、電極層が集電体により強固に結着していることを意味する。
得られた電極について、以下の方法で柔軟性を評価した。
各例の正極または負極を横3cm、縦5cmになるように切り出し、試験片2とした。この試験片2について、JIS K−5600−5−1:1999(ISO 1519:1973)の塗料一般試験方法耐屈曲性(円筒形マンドレル法)を参考にして柔軟性を評価した。
正極の柔軟性を評価する場合、得られた試験片2の集電体面に直径8mm、5mm、3mmのマンドレルをあて、試験片2の片側をテープで固定し、湿度10%以下の環境にて、集電体面が内側になるよう試験片2を折り曲げたときの電極層の状態を60倍のマイクロスコープ(スリー・アールシステム株式会社製、「ワイヤレスデジタル顕微鏡」)を用いて観察し、以下の評価基準にて正極の柔軟性を評価した。
○:電極層に割れ、欠け等の変化が見られない。
×:電極層に割れ、欠け等の変化が見られた。
(正極用スラリーの調製)
軟膏容器に、重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を45質量部(固形分換算で1.8質量部)とジグリセリン(B:阪本薬品工業株式会社製 ジグリセリンS)0.2部を計量し、これにコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)100質量部と、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)5質量部を加え、自公転攪拌機(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。塗工可能な粘度になるまで脱イオン水を用いて粘度調節し、正極用スラリーを得た。
正極用スラリーの配合組成を表1に示す。
得られた正極用スラリーを集電体(アルミニウム箔、19cm×25cm、厚み20μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、循環式熱風乾燥機中60℃で30分間乾燥させ、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間減圧乾燥させて、膜厚80μmの電極層が集電体(アルミニウム箔)上に形成された正極を得た。
得られた正極について、剥離強度と柔軟性を評価した。結果を表2に示す。
軟膏容器に、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を40質量部(固形分換算で1.6質量部)とジグリセリン(B)0.4部を計量した以外は、実施例2と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、評価測定・結果を表2に示す。
軟膏容器に、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の4質量%水溶液を35質量部(固形分換算で1.4質量部)とジグリセリン(B)0.6部を計量した以外は、実施例1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、評価測定・結果を表2に示す。
重合体(A)として、N−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)の4質量%を35質量部(固形分換算で質量1.4部)用いた以外は、実施例1−1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
ジグリセリン(B)の代わりに、ポリグリセリン#500(C:商品名:阪本薬品工業(株)ポリグリセリン平均分子量500)を0.6質量部用いた以外は、実施例1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
ジグリセリンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。
正極用スラリーの配合組成を表1に示す。また、測定・評価結果を表2に示す。
重合体(A)としてN−ビニルホルムアミド重合体(A1)の代わりに、N−ビニルアセトアミド重合体(A2)を用い、かつジグリセリンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして正極用スラリーを調製し、正極を作製し、各種測定・評価を行った。
正極用スラリーの配合組成、測定・評価結果を表1に示す。
・LCO:コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、「セルシードC−5H」)。・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)
・ジグリセリン:ジグリセリンS(阪本薬品工業株式会社製)
・ポリグリセリン#500(商品名):ポリグリセリン平均分子量500(阪本薬品工業株式会社製)
本発明の二次電池電極用スラリー組成物は、二次電池電極用バインダ樹脂組成物を用いて得られるものであり、柔軟性に優れた電極を形成でき、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れた電池が得られる。
本発明の二次電池用電極は、柔軟性に優れる。そのため該電極を備えたリチウムイオン二次電池によれば、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れる。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表される構造単位を有する重合体(A)と、多価アルコール(B)を含み、前記多価アルコール(B)がグリセリンまたはグリセリンを含む重縮合体である、二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
(1)
(式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。) - 前記重合体(A)と前記多価アルコール(B)との質量比((A)/(B))が50/50〜99/1である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する、二次電池電極用スラリー。
- 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、活物質と、請求項1または2のいずれか一項に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物とを含有する、二次電池用電極。
- 請求項4に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
- 集電体と、該集電体上に設けられた電極層とを備え、前記電極層は、請求項3に記載の二次電池電極用スラリーを集電体に塗布し、乾燥させて得られるものである、二次電池用電極。
- 請求項6に記載の二次電池用電極を備える、リチウムイオン二次電池。
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